…目が覚めたのは、日が沈みかけた頃だった。

頭がくらくらする。寝不足の時と似ている…、若干、気持ち悪い。
ぼぅ…としたまま、無作為な視線。窓…テーブル…床…自分の身体。

あぁ、と思った。よくわからない感情が、鈍い頭を刺激する。それでも覚めない。
ひどく客観的に、それを見、手を伸ばし、触れ、思う。
乾いたそれはパリパリと砕けて、欠片しか摘むことができない。
身体の上に落ちないよう捨て、その手で下腹部をゆっくり押さえる。
あたたかい。いつもの私のおなか。いつも通りなことに、違和感を感じる。

…一番気にしていたことが、混乱していた内に終わってしまった。
村にいる頃は、きっと、一生できないんじゃないか、って考えがあった。
それでも、夢の中ではそうじゃなかった。はすむかいのお姉さん。
いじめられていた私に、いつも優しくしてくれた人。憧れだった。
自分を慰めるときも、お姉さんは、やさしく、あたたかい人で。
丁寧に教えてくれて…でも、たまに大胆なこともしてくれて。
だから…だから、そうなりたいって、考えもちゃんとあった。
魔物とでも、そうなれたらいい…っていう淡い気持ちがあった。

でも、今あるのは悪い気持ちじゃないのも確かで。
あのサキュバスは強引で、無理やりで、…でも、やさしくて、あたたかかった。
もしかしたら、そんな風に思わせるのも魔物の力かもしれないけれど。
………うれしかった。

……………

………

…

お風呂に入って、ご飯を食べたら、調子もだいぶ元通りになってきた。
ポジティヴ、前向き、楽観的が私の良いところ。自画自賛して良いところ。

我が家は部屋がいっぱいある。
特に地下がスゴイ。地下室に、そのまた地下室があって、もひとつおまけにあって。
各階に５部屋。全部寝室。いくつか、藁のベッドや卒塔婆が置いてある変な部屋があった。
たぶん魔物を飼っていたのかもしれない。でも１５部屋は多すぎると思う。
そのうち最下層は物置とかにしてしまおうと考える。
地上は１階、客間とキッチンが同じ部屋、玄関を背に、左手これまた寝室が３部屋。
右手はトイレとお風呂。物置もあるけれど、ここだけ壁の傷みがひどいので、
使えそうなもの…斧とか、麺棒とかを取り出して寄せておいてある。
ただ、私は麺を打てないから、きっとつっかえ棒的な活躍になると思う。

私の部屋は、地上の寝室、出入り口から一番奥。
寝室は地下も含めて、ほぼ間取りも家具も変わらない。変な部屋を除いて。
でも地上には窓があるし、私は隅っこが好き。太陽も月も良く見える奥の部屋を選んだ。

ぼふっ、とベッドに倒れ込む。
身体をもぞもぞと動かして、電灯の影にならず、寝やすい、丁度良い具合を探す。
その間にも図鑑をパラパラとめくり、お目当てのページも探した。

…サキュバス。
現魔王時代となる以前から、人間と交わり、魔力を奪ってきた魔物。
他の魔物と違って、古くからの種としてか、誘惑方法等は単純。でも強力。
見た目も人間にとても似ていて、ちょっとした変装だけで簡単に誤魔化せる。
そして、人間を…男性ならインキュバス、女性ならレッサーサキュバスと、
魔物に変えてしまう力も持つ、魔物の中の魔物といった感じ。
………性交相手のアレで名前を記す、的なことはどこにも書いてなかった。

指を挟んで本を閉じ、しばし宙を見る。
自分も魔物にならなかったワケは、ほんの少しだけわかる。
教団の魔術師曰く「私の考えに間違えがなければ、キミは魔物にならない」と言っていた。
その…内容は全く知らない考えが、間違えていなかったんだろう。それだけ。
でも、『魔物になってしまうんじゃないか』という不安は幾分か薄れた。よかった。

本を開き直し、またお目当てのページを探す。
魔物の研究というのは、少なくとも、今日のようなことじゃない。
変な発見はあったけれど、ああいうことじゃなくて、もっと具体的な。
例えば、ナイトメアの生息地はどこなのか…とか。
ネレイスが住む海底はどのような環境なのか…とか。
簡単に言えば、この図鑑に載るような『魔物の生態』を知りたいのだ。

それはとても大変なことで、魔物とお近付きにならなければいけないのが大前提。
そして、魔物の誘惑に負けない強い精神力と魔力が、逆に負かす技量が、堕ちない条件。
私は…運が良いのか、この堕ちない条件は無条件でパスされている。
でも、それは堕ちないだけであって、単に犯されてるだけで、研究になっていない。
強い精神力と魔力、技量はどうしても必要になってくる。

本をめくる指が止まる。
それらを鍛えるにはどうすればいいか？ 一番効率の良い方法。
…魔物との性交、だと思う。ただ、サキュバスみたいな強い魔物はダメ。
技量も磨かなきゃいけないから、ある程度従順な魔物じゃなきゃいけない。
その条件に合う魔物を、明日買いに行こう。幸い、近くの町でも飼われている。
魔物の名は、ホルスタウロス。

……………

………

…

「わあっ、ここがご主人様のお家ですかぁ？」

物珍しそうに、我が家の外観を見回す魔物。
身体が動くたびに、私の目の前でサキュバス以上のものがぷるぷる揺れる。
手を繋いでいるせいで、余計に近い。昨日に引き続き、少しへこむ。

「ご主人様〜、中に入りましょう〜♪」

スローペースな声と歩みと共に、手を引かれる。
町で買ってから、何故かここまで、ずっとこのまま。
気分としては良いものだけど、並ぶと私が妹か子供にしか見えないと思う。
並んで歩いているときはまだしも、今みたいな状況は余計に。
少し気恥ずかしい。

「…あれ、開かない…。……あ、引くんですね〜、これ」

牧場主さんによると、このコの名前は『もも』。ももちゃん。
ホルスタウロスは思った以上に高くて、一番安かったのがももちゃん。
お乳があまり出ないらしく、体格も他の子より小さいとのこと。
牧場育ちなので、依存性も野生のものと比べて低い…らしい。
私としては、それらはあまり気にしないところなので、そのまま買った。
どことなく人身売買っぽい後ろめたさはあるけれど、良い買い物だったと思う。

「わぁぁ〜っ…」

ももちゃんは変わらずマイペースに屋内探索。周りをきょろきょろ。
対して、肩が張る私。…小さな深呼吸、ひとつ。どうしても昨日のことがよぎる。
帰ったらすぐに練習しようと決めていた。なぁなぁになる前に。

「…？ ご主人様…？」

不意に立ち止まられたことで、振り向くももちゃん。
目の前にぶぉんっと胸が来たのに驚いて、少し後ずさり。これ恐い。

「………？」

…ももちゃんが首を傾げる。伝わっていない。
自分では、それっぽい雰囲気というか、オーラっぽいのを出しているつもり。
ももちゃんがおっとりしている…というのもあるけれど、たぶん悪いのは私だと思う。
ストレートに言える胆力もない。

「どうしたんですかぁ、ご主人様〜？」

目線の高さを合わせるももちゃんだけど、やっぱり伝わらない。
どうしよう。いや、どうしようも何もない。ポジティヴ、前向き、楽観的。
いこう。うん。いかなきゃ。ゴー！ ほら、ゴー！ いって！ がんばれ！
えいっ！ えいっ！ …えいっ！！

「きゃっ！？」

目を瞑って、思いっきりキスをした。
ファースト…じゃなかった、昨日奪われたんだった。
それに…これ、たぶん…唇に当たってない。ほっぺ？ ほっぺと唇の境目あたり…？

「…ご主人様…♥」

ももちゃんの囁きが耳を撫ぜると共に、手が右頬と後ろ首に添えられる。
導かれるまま位置が直り…唇が触れあった。やわらかい。とろけたグミ。

「んふ…ちゅっ……♥ あむ…はふ…♥」

舌がぬるんっと入ってくる。
サキュバスのそれとは違う…ねっとりとした、ひどく濃厚な味。
唾液がとろとろと口の中を、外をくすぐる。ほぼももちゃんのもの。
まだ始まったばかりなのに…もう、これだけで、挫けそう…。

「ごひゅひんひゃまぁ…♥ ごひゅひんひゃまぁぁ…♥」

少し顎が上がる。ももちゃんが膝立ちになったせいだ。
とろんと惚けた瞳と、押し付けられる胸に、考えが焦げる。
流れ込む唾液と、貪られる唇。猫がミルクを飲むような水音。
服の隙間を縫い、おへそにまで流れ落ちているのを感じる。

「ひゃあんっ♥♥♥ そ、そこぉ〜…♥♥」

唇が離れる。つぅっ…と、幾つもの糸はなお繋がっている。が、助かった。
危なかった………いや、今も十分危ない。どうなってもいいという気持ちが大きい。

「ごしゅじんさまぁ…♥ もっと…もんでぇ〜…♥」

ほぼ鷲掴みだが、胸を刺激したのが効いたらしい。図鑑を熟読していてよかった。
が、ももちゃんの胸は私の手で半分も覆えず、揉めない。大きすぎる。
揉もうとしても、むにゅうー…っと沈んで、どちらかといえば、押してる。
どうしよう…と思ったが、とりあえず回すように愛撫したら、喜んでくれた。よかった。

「やぁぁ〜…っ♥ ご、ごしゅじんさまぁ〜…♥♥」

…なんだろう、今になって、ももちゃんの呼び方がすごく気になってきた。
出会ってまだ数時間。２時間ちょっと。そう呼ばれてもピンと来ないはずなのに。
目とか、動きを見てると…とても、信頼されてる…気がする。その後押しで。
かわいくて、まもってあげたくなるような…もっとあまえてほしいような、気持ち。
だから、今、そんな呼び方をされると………ジンジン、する…。

「あっ…♥」

ぎゅ…と、押し倒すつもりだったが、体格差か胸に埋まって止まった。
でも、それもすぐ考えから押し出される。我慢できないところがある。
全身を押し付けて…ただ、自らずり下ろした下着の中から出たそれだけは…触れられなかった。
触れたい気持ちでいっぱいなのに。

「…ごしゅじんさまぁ…♥」

期待と艶の混じった声。かわいい。
…それでも、動けない。………恐い…。何故かは全然分からない。
でも、無性に恐い。触れちゃいけない気がする。何故かは。でも。恐い。
………ももちゃん…。

「んっ…ここですぅ、ごしゅじんさま…♥」

―………ぁっ。

「あっ♥」

ぬるっとして…きゅっとした感覚が、男の子の部分に広がる。
ももちゃんが、私のをやさしく入れてくれた。やさしく。

「はぅ、あっ、うんんっ♥♥ き、きゅうにぃ…だめですぅ…ぅっ♥」

瞬間、もう、ももちゃんと、自分を悦ばせることでいっぱいになった。
下手な愛無でも、小さなあれでも、ももちゃんはこんなに悦んでくれる。
もっと悦ばせたい。もっとエッチな声が聞きたい。もっと愛してほしい。
腰が痛いけど、止まらない。止めたくない。

「ひゃああぁぁぅぅぅっ♥♥♥♥♥」

ももちゃんの、ももちゃんの、乳首。服越しでも分かる。汗ばんで、うっすらピンク。
吸う。私も唾液をとろとろにして。口からこぼして。滴があそこに落ちて。
沁み出てる。口に甘いなにか。吸い付いて、舐めとって。ミルク。

「ごっ…ごひゅひっ…、ひゃま…ぁぁ♥♥ わたし……もっ…ぉ…〜っ♥♥♥」

ももちゃんっ……っ………っ…っ…っっっ。

―うぁ………っぁ♥♥♥♥♥

「ごひゅひ……っ、あ、ああぁぁぅぅぅっ〜♥♥♥♥♥」

「…っごひゅひんひゃまのみる、…くぅ…♥♥ のんでるぅ…♥」

………とろ、とろ。あそこが。ごくごく、されてる…。

「ふぁ〜っ…♥ ぁっ…♥ …はぁ……っ♥………あむ、あむ…♥」

首をあまがみしてくるももちゃん。くすぐったい。かわいい。
ふとももに触れる、ふさふさの毛も、くすぐったい。しっぽはおどってる。
耳は…みえない。みたいな。でも、ぎゅっとしていたい。

「きもちよくて…おちちも、いっぱいぃ…♥」

…もう、おわったのかな。わからない。ぬきたくないな。
もうでないのかな。もっとしたいな。もっとよろこばせてあげたい。
きもちよかったかな、ももちゃん。だったら、いいな。うれしい。

「………♥」

…だいじなこと、わすれてる気がするけれど。

「…ごしゅじんさま…♥」

今は、ももちゃんが、いちばんだいじ。

……………

………

…