コペルは片足を浴槽の縁に掛けて一瞬躊躇う。
このお湯はルフューイの身体そのものと言える、それに全身で浸るのはルフューイの全身に密着する事に他ならない。
気恥かしさを覚えて動きが止まってしまったが、ルフューイの手が伸びてきてそんなコペルを浴槽に引っ張り込む。
ちゃぽん、と浸かると少し温めのお湯が全身を包んだ、気持ちいい。
「ふふ、お湯加減はどうですか？」
上半身だけになっているルフューイはコペルの両肩に手を乗せて微笑みかける。
「あ、ああ、丁度いい」
そう答えると両手でゆっくりとコペルの肩を撫で始める、ルフューイの体表の温度はお湯と同じくらいだが、
意外な事にその感触はすべすべとした人間の肌のものだった。
こうして触れてみるとつくづくルフューイの身体は不思議だ、液体なのか肉体なのか……。
性的な興味というよりは知的な興味をそそられて丁度水と体の境目である水面に触れてみる。
「やん♪」
ルフューイはくすぐったそうにするが嫌がっている様子では無い。
そっと水面から腰に手を滑らせてみると水の感触から徐々に濡れた人肌の感触へと移行していくのがわかる、やはり不思議だ。
「ふふっ、初めてそちらから触ってもらえましたね……それじゃあ、お返しです」
ルフューイはそう言って微笑むとぽちゃん、と水の中に身を沈めた。
身を沈めたと言っても潜ったというよりは全身を液体に戻した形なので完全に姿は見えなくなる。
「うっ？」
不安げな顔をしていたコペルは思わず声を上げる、全身を包む水の水圧が変わったのだ。
目に見えない何かに全身を抱き締められているようだ、何か、コペルの体の形を確かめるように。
改めて水に姿を変えたルフューイに包み込まれている事が実感されて気持ちいいのと同時に恥ずかしいと感じる。
（えへへ……お客さん凝ってますねー？）
どうやっているのか、頭の中に直接ルフューイの声が響いて聞こえた。その言葉と同時にコペルの肩に重点的に水圧が掛った。
（あっ……やだ、ホントに凝ってるじゃないですか）
ぐぐっと肩の水圧が強まる、痛みを感じるようなものでは無くちょうど肩の凝りを揉みほぐされるような感覚だ。
確かにずっと畑仕事に従事しているコペルは体のあちこちに痛んだ部分を抱えている、生来丈夫で慣れてもいるがやはり重労働は体に応えるものだ。
じわじわと肩の外側から内側へと水圧が移動し、また内側から外側に移動する、広い範囲に圧が掛るその感触は人間の手では決して再現出来ない物だ。
やがて肩だけではなく、その水圧のマッサージは背中から腰、肩から腕、腰から下半身に至るまで範囲を広げて行く。
「おお……」
思わず声を出してしまう、今や首から手足の指先に至るまで全身を同時にマッサージされている状態だ、それも強すぎず弱すぎずの絶妙な水圧と場所だ。
水の精霊ならではの水中全身マッサージである。
身を任せているうちにコペルはいつの間にか浴槽に仰向けに浮かんでいる状態になっていた。
普通ならば沈んでしまう所だがルフューイの水圧が彼の顔だけを水面に出すような状態でキープしている。
水中で完全に全身の力を抜く事が出来る状態というのは地面に寝転がるよりもさらに楽な姿勢だ、温めの温度も相まってまるで母の胎内に浮かんでいるような心地がする。
（気持ちいいですかー？）
「ああ……これはいい……」
余程心地良いのか、とろんとした目でコペルは答える。
そうした表情になると普段無愛想さで隠れている顔立ちの幼さが際立って見える。
（……）
そんなコペルを見てルフューイは急に黙り込む、心なしか湯の温度が上がる。
「……っちょ、ルフューイ？」
（……おっきぃ……）
コペルは我に返って声を上げる、湯の中で体格にそぐわないサイズのコペルの陰茎にじわじわと水圧がかかり始めたからだ。
「待ってくれ、まだ心の準備が……」
（ふふふ……あ、マスター、準備整いました？）
「ん」
いつもの如く不思議なほどに足音の立たない歩き方で浴室に入って来たイェンダを見てコペルは浴槽の中でひっくり返った。
「がぼっ」
（まあ♪どうしたんですか？コペルさん）
そのコペルの反応を予測していたのか引っくり返ったコペルをすぐさまお湯の中から救助しながらルフューイが悪戯気な声を掛ける。
「げほっごほっ、どうしたも何も……イェンダさんその服……ふ、服、なのか？」
イェンダの纏っている物は純白のレース生地で出来たワンピースだった、極薄のレースはイェンダの肢体を隠す役割を完全に放棄しており、むしろ薄っすらと透けさせる事により男の情欲を誘う役割を果たしている。
（ネグリジェって言うんですよ）
ルフューイの解説も耳に入らない様子でコペルは唖然とした表情でとイェンダの姿に見入る。
イェンダの裸体は一度だけ目にした事がある、森の湖で二人の水浴びを意図せずして目撃してしまった事があるのだ。
しかしその時に見た姿は名画のように美しく、芸術作品のように性を感じさせなかった。加えて慌てて逃げたのでしっかりと身体を見た訳ではない。
今、レースを通して見るイェンダの裸体もやはり芸術品のように美しい。触れたら溶けて消えてしまいそうに見える白い肌、その白の中に浮かび上がって見える薄いピンクの小さな乳首、エルフの体質なのか一本の体毛も生えていないその部分。
その肢体が自分に捧げられるために飾り付けられている、コペルは今更ながら自分は何という人と付き合っているのだろうと空恐ろしい気持ちさえ浮かんでくる。
「っぅあ！？」
唐突に陰茎にかかる水圧が強まった、丁度人間の手に握り締められたような感触だ。
（この姿は自在に刺激できる分、視覚効果に劣りますねー……）
頭に響く声はいつもの朗らかな声とは違う声だった、ねっとりとしたものをその裏に孕んでいる。
嫉妬、とまでは言わないがマスターに対する対抗心がめらめらと燃えているのが伺える。
と、コペルの浸かっている湯が渦を巻き始める、見る間に周囲のお湯が横になるコペルの目の前に集まり、気付けば人型に戻ったルフューイがコペルの前に座り込んでいた。
先ほど感じた感触通りに陰茎に指を絡ませ、いつもの笑顔からは想像できない蠱惑的な表情でコペルを見上げている。
その視線もそうだが、何よりルフューイの服装が刺激的だった。
こちらもワンピース型のネグリジェだが細かなフリルの施された肩紐の先は完全に乳房を露出させる構造になっている、むしろフリルで乳房を縁取りし、より強調するような形だ。
水を利用して自在に服装を変えられるルフューイならではの演出である。
「なっ……なんて恰好を」
「興奮しますか？……ふふっ言うまでもないですね、ここ、反応してます……」
爛々と目を輝かせて自分の手の中でずきんずきんと反応する立派な陰茎を見つめる。
「そ、そんなに見なんぷっ！？」
抗議しようとしたコペルの口に何かが押し付けられ、言葉が遮られる。
すべすべと肌触りのいい生地に包まれたぽよぽよと柔らかく、温かく、何とも言えないいい匂いがするもの……イェンダの乳房だった。
ルフューイに目を奪われている隙にいつの間にか接近されていたらしい、恋人への抱擁というより赤子に乳を与えようとするような動きでコペルの頭を浴槽の外から抱き込む。
「……」
「うぁ……」
優しい眼差しで見つめられコペルの方も母に抱かれる赤子のような心地になる、しかし下半身からの刺激ですぐに我に返らされる。
ルフューイが抱き抱えられるコペルを見上げながら握る手を上下に動かし始めたのだ。
生まれて初めての他人による陰茎への刺激に目を白黒させているうちにイェンダがするりとコペルの背後に身を滑り込ませた。
ネグリジェを脱がないまま入ったのでフリルが白い花のように湯の中に広がる。
イェンダは細身で小柄なのだがコペルが輪をかけて小さいので子供のように膝の上に乗せる事ができる。
そうして背後からイェンダに抱きすくめられ、投げだした足の間でルフューイがコペルに奉仕する形になる。
「だ、駄目だ……！こんなのは……！」
「駄目……？」
コペルから出た予想外の言葉にイェンダはちょん、と首を傾げる。
「は、初めてなのに……！こんな……！ふ、「ふしだら」……！だ……！」
ここにきて二人はコペルの心中を察する。
コペルは健全な男だった、しかし同時に本当に純真無垢な男だったのだ。
性行為とは神聖な命の営みであり、尊い行為なのだ。遊び半分に、または欲望に任せて行っていい物ではない。
そういったある意味農家の息子らしい古風な考えを持っていたのだ。
「……知らなかったんですか？」
「な、何を？」
イェンダがその白魚のような指先でコペルの首筋を犬にするようにくすぐってやりながら言う、コペルは快感に声を上擦らせる。
「私達は魔物なんですよ？」
「し、知ってる」
相変わらずゆるゆると陰茎を刺激しながらルフューイが言う、コペルは何を今更と思いながら答える。
「魔物ってすっごく……「ふしだら」なんですよ？」
ルフューイは「ふしだら」な笑みを浮かべるとあーん、と口を開けて舌を覗かせる。
「ま、待て！何を！」
「ぺろ」
「うわっ」
ルフューイが舌の先端を亀頭に触れさせると同時にイェンダもコペルの首筋に舌を這わせた。
「ぴちゃ、私も、ふしだら……」
「えろ、れろ……」
イェンダはコペルの首筋から頬にナメクジが這うような跡を残しながら舌を這わせて行く。
ルフューイは伸ばした舌に亀頭をなすりつけるように動かす。
二人とも美麗な顔立ちをはしたなく歪ませて舌を突き出している、それがコペルに何とも言えない背徳感を与える。
「ちゅむっ」
「ぱくっ」
イェンダがコペルの唇に辿り着くと同時にルフューイがコペルの陰茎を咥えてしまう。
これがイェンダとの初めてのキスであり、コペルの生まれて初めてのキスだった。
扇情的な衣装を纏った美しい魔物と精霊に挟まれ、一人に口淫を施されながらのキス。
何となく頭に思い描いていた少年時代の憧れのような情景とはかけ離れた余りに淫らな初体験。
唇を離し、イェンダはコペルに微笑みかける、普段の表情からは想像できないとろん、と蕩けた目をしている。
「私達は……神聖な存在では、ありません、清廉潔白な暮らしは諦めて下さい、淫らでふしだらで爛れた暮らしになる事を、覚悟して下さい」
「ちゅるるるぅ♪」
イェンダの熱に浮かされたような科白にルフューイが陰茎をしゃぶりながら同意する、コペルは快楽に表情を歪める。
「俺は……とんでもない悪人になった気分、だ……これでは教団の勇者に成敗されても文句は言えん」
確かに絵面をだけを見ると二人の美人に淫らな装いをさせ、風呂で強制的に奉仕させる極悪人に見えなくもない。
「んふふ、そんな空気読まない勇者さんなんて私が吹っ飛ばしてあげますから安心して悪行に身を委ねて下さい」
悪戯気に言ってルフューイはコペルのカリ首に跡が残るようなキスをする、コペルは思わず悲鳴を上げる。
その悲鳴を呑み込むようにイェンダが再び口付ける、いや、貪り付く。
小さな口を精いっぱいに開いてコペルの歯をこじ開け、小さな舌を潜り込ませてくる。
そんな筈はないのだがその唾液はどことなく蜂蜜を思わせる味を感じる、これが高嶺の花の蜜か、などと妙な事を思い浮かべる。
呼応するようにルフューイもより深くコペルを咥え込む。
「んんぅっんぅっうううううう〜〜〜〜〜！？」
唐突にコペルはくぐもった声を上げる。
陰茎に今まで感じたことも想像したこともないような感触に襲われたからだ。
顔はイェンダに固定されているため目線だけを下に向けるとルフューイがコペルを咥えこんでいる所が目に入る。
この刺激をどう表現したものか、全体が際限なく奥へ奥へと引き込もうとするような感触。
ルフューイの口内にはどうやら歯が無い、いや、物を食べる時にはあるのだろうからやはり自在に変えられるらしい。
今、ルフューイの口内は物を食べるためでも喋るためでも無い、コペルをしゃぶるためだけの器官と化しているのだ。
何より半透明なため、自分の陰茎がどうやって口内で愛撫されているのかが見えるというのがより興奮を煽る。
透明な舌が裏筋にぴったりと密着してうねうねと複雑な動きをしているのが見える。
コペルの視線に気付いたイェンダは名残惜しげに唇を解放し、コペルがルフューイの口淫の快楽に集中できるようにサポートに回る。
コペルの小柄ながら逞しい胸板を背後から指でゆるゆると愛撫し、水で濡れたネグリジェ越しにその膨らみを背中に擦り付ける。
ルフューイは喘ぐコペルを嬉しそうに見上げながら顔を上下させて本格的にしゃぶり始める。
その気になればもっと自在に刺激を与えられるのだが、人型の自分が口で奉仕しているという景色でコペルが興奮しているのを理解しているため、わざと自分の表情が歪む様を見せつける。
コペルはぎりぎりと歯を食い縛って耐える、本来ならばとっくに限界を超えるような快楽を与えられているのだがそれでも意地で耐える。
下らない男の意地だとはわかっていても容易く射精させられる訳にはいかないのだ。
予想以上に頑張るコペルにルフューイも責めを激しくしていく、ぐりぐりと捻りを加えた動きでコペルの亀頭をぞりぞり刺激していく。
それでもコペルは耐える、未経験の男にしては驚異的な粘りだ。
それを見たイェンダはそっとコペルの耳元に口を近付ける。
「コペルさん、我慢しないで……ルフューイのおくちまんこにご褒美あげて……」
「！？」
コペルの中で太い何かが切れるような音がした、イェンダの天から降るような声で囁かれた淫語は効果覿面だった。
「あぐっうぐああああああ！」
どびゅんっ
腰が跳ね上がり、陰茎がそのサイズに違わない量の精子を打ち出し始める。
「んもォっ！？……」
ルフューイは唐突に始まった射精に目を白黒させながらその白濁液を受け入れる。
動揺したのはその一瞬だけだった、ごきゅん、と精液が喉を通った瞬間にとろんと目が蕩ける。
「んぅ〜〜〜♪……ん〜〜〜〜〜〜っ♪ごきゅっごきゅっごきゅん、ごきゅん、ごきゅん」
打ち込まれる端から精子が飲み込まれて行く、ごくごくと喉を通る精子の様子までもが透けて見える。
その絵にまた興奮を煽られたコペルは射精の勢いが更に激しくなる。
イェンダはその様子をコペルの肩越しに目を大きく見開いて見ていた。
無意識にコペルの肩をぎゅうっと強く掴んでいる。
長い射精がようやく終わりを迎えると同時にルフューイがちゅぽん、と口を離す。
今まで経験が無い程の激しい快楽に息も絶え絶えになるコペル、しかし自分から離れたルフューイを見て思わず視線が釘付けになる。
「ん……んんぅ……」
口を閉じていてもその口内にたっぷりと白い精子が溜め込まれているのがわかる、それをルフューイはうっとりと夢見心地の表情でくちゅくちゅと咀嚼しているのだ、まるでワインでも味わうかのように。
「ん〜〜〜〜〜ん♪……ごっきゅん♪」
そしてコペルに見せつけるように飲み込む、口内にあった精液が喉を滑り落ちて行く。
そんな光景を見せられたものだから先程出したばかりだと言うのにコペルの陰茎はすぐに回復してしまう。
「お……おいし……おいしぃぃよぉぉ……♪」
ルフューイは文字通り蕩けるような顔をする、甘い物を食べた女の子のような反応だ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「ル、ルフューイ？大丈夫か？」
しかしどうも様子がおかしい、ルフューイは胸に手を当てて俯いたまま荒い呼吸を繰り返している。
心配したコペルが手を伸ばそうとした瞬間、その変化は起こった。
「きも……ち……い……♪」
「なっ……？」
違和感を感じてコペルは浴槽に目を落とす、温かく身を包んでいた湯の感触が変化したように感じたのだ。
手を水面から上げてみるとぬらりと糸を引いた、スライムのように粘度が増している。
「これは……？」
思わずイェンダの方を見てみるが、彼女も驚いた様子の表情をしている、どうやらこんな事態は初めてのようだ。
俯いていたルフューイが顔を上げるとその変化が顕著に分かる。
額の付近に今まで無かった黒い文様のようなものが浮かび上がっている、いや良く見ると額だけでは無く全身にその身体を飾るように禍々しい印象の文様が浮かんでいるのだ。
「うふふふふ……♪」
ルフューイは今まで以上に淫蕩な表情で微笑むと粘度の増した水面にちゃぷんと身を沈め、一瞬その姿を消す。
「っと」
「きゃっ……？」
二人の浸かるお湯……いや、粘液が水圧で二人を引き剥がす。と、イェンダの周辺の粘液が盛り上がり、両手に絡み付くと吊り上げるようにして拘束してしまう。
「んぁっ……ルフューイ……？」
戸惑いの声を上げるイェンダに背後から絡み付くような形でルフューイが姿を現す。
コペルは異常を感じながらもそのイェンダの艶姿に目を奪われてしまう、粘液状になったお湯でずぶ濡れになったレースはぴったりとイェンダの肌に張り付き、体のラインをはっきりと浮かび上がらせている。
加えてその白い肌に絡み付く粘液が意思をもったように蠢き、肌を弄っているのだ。
「あっ……やっ……やぁ……」
羞恥に身をくねらせるイェンダの肩越しにルフューイが囁く。
「さ、マスター……コペルさんに捧げましょうね……とびきりいやらしく……♪」