堕落の工程
―魔物とは悪である。 それは敬虔な教会の信徒である両親を持つコンラッド・エバンスが生まれた時から当たり前に教えられてきた常識だった、 家庭教師が読み聞かせてくれた英雄譚でも勇者が勇ましく魔物と戦う場面に目を輝かせ、 その場面を何度もねだって繰り返し聞いた、自分もいつか人々を魔物から守る勇者になりたいと思い、高名な騎士だった父に幼いころから教えを請うて鍛錬に明け暮れた、 自分は将来勇者になるものと信じて疑わなかった、疑おうともしなかった。 その根拠のない自信が揺らいだのは騎士学校への入学に父が反対した時だった、 曰く「お前には戦士としての才覚はない、違う道を模索するべきだ」 今までの努力の全てを否定されたも同然だった、死に物狂いで反発し、騎士学校への入学以外の道をとる気はない事を訴えかけた、父は根負けする形で入学を認めた、しかし「先は見えている」と忠告もした。 必ず父を見返してやろうと息巻いたが、心の奥底では不安が芽吹いていた、 父は優秀な騎士であり、戦士であり、そして幼い頃からの師だ、その父に才能を見限られたのだ、はたしてその父の見込みを覆すことができるのだろうか? 果たして不安は的中することになる同期の生徒たちがめきめき実力を伸ばす中、人一倍の努力にも関わらずコンラッドの剣の腕は伸び悩み、たちまち周囲から取り残される事になった。 |
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