その指先に温もりを
ほぼ計画通りの時間に、二人は中継点である山小屋に着く事が出来た。
雪が緩む時間帯を避ける為、そして、鞍上のラティの体力が不安な為、最初からここで休憩をとる予定でいたのだ。
ようやく休憩が取れると、小屋の前でラティは鞍から降りようとしたが、ストラップを掴み続けていた指がどうにも開かない。
サラに手伝ってもらってようやく鞍から降りれたが、そこで初めて自分の手足の先の感覚がおかしい事に気付いた。
「ちょっと、まさか凍傷?」
「いや、まだ動くからそこまで酷くはないと思うけど・・・」
小屋に入ってラティをとりあえず椅子に座らせると、サラは急いで火を起こした。
膝を着いてラティのミトンとその下の手袋、それにブーツを脱がせると、幸いにも凍傷という程の状態ではなかったが、明らかに血行障害が出かかっていた。
「こういうのを我慢しちゃ駄目って言うのは、お医者さんの仕事だと思うんだけど?」
サラは少し怒っていた。自分の無茶と他人の無茶は話が違うらしい。
「医者だから大丈夫だと判断したんだよ。持つと思ったから黙ってた」
「・・・判断は任せるけど、黙っているのは止めて。指を落としたらラウエルで役に立たなくなっちゃうでしょ?」
「・・・ごめん」
サラが腰の革ケースから木の入れ物を取り出すと、中身の軟膏をラティの手に塗り込む。
「凍傷避けの軟膏。最初に塗ってあげれば良かったかも」
足の指にも良く塗り込んでいく。
一通り軟膏を塗り終わると、サラは唐突に服のボタンを外し始める。
「まっ、待った、何する気なの?」
「手足の先をあたしで暖めるの。火にあたるより負担がかからないしね」
「・・・それは流石に色々と不味い気が・・・」
「雪山のホワイトホーンの一番重要な仕事は、人間を寒さから守る事だから、気にしなくて大丈夫よ?」
こっちが気にするんだ、とはラティも口には出来なかったので、結局はサラの為すがままになってしまう。
ボタンを外して大きく開いた防寒具からは、透けるような白い肌が覗いているのが見えたので、ラティは一応目を閉じている事にした。
凍えた指先と爪先では、柔らかい物に触れている事だけしか分からなかったのだが、徐々に血流が戻ってくるにしたがって、耐え難い痺れと痛みが指先と爪先に走り始める。
「ぃっっっ!!」
痛みに思わず目を開いてしまったが、サラの胸を見ている余裕など、とても無い。
「しばらくすれば治まるから」
サラにがっちり手首を掴まれているので逃げる事も出来ず、ラティはしばらくの間、痺れと痛みに耐え続ける羽目になったのであった。
痛みと痺れが少しずつ収まり、指の感覚が戻って来るにつれて、サラの身体の感触が指先と爪先から伝わってくる。
指先からは豊かで張りのある乳房の、爪先からはしなやかな腹筋の感触。
うっすらと汗で湿ったサラの肌は僅かに火照り、向こうから吸い付いているような柔らかさがある。
仕事柄、女性の裸は見るのも触るのも日常茶飯事だが、どうにもラティとしては、これは大変よろしくない状態だった。
気をそらす意味もあって、ラティは先程の違和感をサラにぶつけてみる事にした。
「・・・さっきの理不尽の話だけど、理解は出来るけど止めた方がいいと思う」
「こういう場所で自然と戦うのを止めたら、命を落とすだけよ?」
「無理に戦っていても、やっぱりいつかは命は落とすよ」
「それでもいいわよ。抗って負けたなら仕方ないもの」
何度も自らを死線に投げ出してきたサラの覚悟が、そう容易く変わるものではないのはラティにも分かっていた。
「・・・そうやってサラが命を落としたら、サラも周りの皆に理不尽な悲しみを与えてしまうと思うんだけど・・・」
「周りの迷惑になる事はするなって事?」
「そうじゃなくて、・・・一人で戦って一人で死んで、それで仕方なかった。って思えるほど、皆はサラに無関心じゃ無いんじゃないかな」
「・・・・・・」
サラは少し俯いて、考え込んでいるようだった。
「・・・余計な事を言ってごめん」
「・・・謝る事じゃないわ」
ラティの手足を服の中から引き抜くと、立ち上がって服のボタンを閉じていった。
「気が付いてはいたんだけどね。一度突っ張り始めたら、どうしても止められない性分だから」
肩の荷を下ろした様に伸びをすると、もう一度ラティの前で膝を着いた。
「ありがとう。無茶する時も、もう少し後先を考えてみる」
そう言うとサラはラティを抱きしめた。
ラティの額にサラの角がコツンと当たる。
互いの頬同士が触れ合った時、サラは頬も吸い付くように火照っているんだ、などとラティは思っていた。
雪が緩む時間帯を避ける為、そして、鞍上のラティの体力が不安な為、最初からここで休憩をとる予定でいたのだ。
ようやく休憩が取れると、小屋の前でラティは鞍から降りようとしたが、ストラップを掴み続けていた指がどうにも開かない。
サラに手伝ってもらってようやく鞍から降りれたが、そこで初めて自分の手足の先の感覚がおかしい事に気付いた。
「ちょっと、まさか凍傷?」
「いや、まだ動くからそこまで酷くはないと思うけど・・・」
小屋に入ってラティをとりあえず椅子に座らせると、サラは急いで火を起こした。
膝を着いてラティのミトンとその下の手袋、それにブーツを脱がせると、幸いにも凍傷という程の状態ではなかったが、明らかに血行障害が出かかっていた。
「こういうのを我慢しちゃ駄目って言うのは、お医者さんの仕事だと思うんだけど?」
サラは少し怒っていた。自分の無茶と他人の無茶は話が違うらしい。
「医者だから大丈夫だと判断したんだよ。持つと思ったから黙ってた」
「・・・判断は任せるけど、黙っているのは止めて。指を落としたらラウエルで役に立たなくなっちゃうでしょ?」
「・・・ごめん」
サラが腰の革ケースから木の入れ物を取り出すと、中身の軟膏をラティの手に塗り込む。
「凍傷避けの軟膏。最初に塗ってあげれば良かったかも」
足の指にも良く塗り込んでいく。
一通り軟膏を塗り終わると、サラは唐突に服のボタンを外し始める。
「まっ、待った、何する気なの?」
「手足の先をあたしで暖めるの。火にあたるより負担がかからないしね」
「・・・それは流石に色々と不味い気が・・・」
「雪山のホワイトホーンの一番重要な仕事は、人間を寒さから守る事だから、気にしなくて大丈夫よ?」
こっちが気にするんだ、とはラティも口には出来なかったので、結局はサラの為すがままになってしまう。
ボタンを外して大きく開いた防寒具からは、透けるような白い肌が覗いているのが見えたので、ラティは一応目を閉じている事にした。
凍えた指先と爪先では、柔らかい物に触れている事だけしか分からなかったのだが、徐々に血流が戻ってくるにしたがって、耐え難い痺れと痛みが指先と爪先に走り始める。
「ぃっっっ!!」
痛みに思わず目を開いてしまったが、サラの胸を見ている余裕など、とても無い。
「しばらくすれば治まるから」
サラにがっちり手首を掴まれているので逃げる事も出来ず、ラティはしばらくの間、痺れと痛みに耐え続ける羽目になったのであった。
痛みと痺れが少しずつ収まり、指の感覚が戻って来るにつれて、サラの身体の感触が指先と爪先から伝わってくる。
指先からは豊かで張りのある乳房の、爪先からはしなやかな腹筋の感触。
うっすらと汗で湿ったサラの肌は僅かに火照り、向こうから吸い付いているような柔らかさがある。
仕事柄、女性の裸は見るのも触るのも日常茶飯事だが、どうにもラティとしては、これは大変よろしくない状態だった。
気をそらす意味もあって、ラティは先程の違和感をサラにぶつけてみる事にした。
「・・・さっきの理不尽の話だけど、理解は出来るけど止めた方がいいと思う」
「こういう場所で自然と戦うのを止めたら、命を落とすだけよ?」
「無理に戦っていても、やっぱりいつかは命は落とすよ」
「それでもいいわよ。抗って負けたなら仕方ないもの」
何度も自らを死線に投げ出してきたサラの覚悟が、そう容易く変わるものではないのはラティにも分かっていた。
「・・・そうやってサラが命を落としたら、サラも周りの皆に理不尽な悲しみを与えてしまうと思うんだけど・・・」
「周りの迷惑になる事はするなって事?」
「そうじゃなくて、・・・一人で戦って一人で死んで、それで仕方なかった。って思えるほど、皆はサラに無関心じゃ無いんじゃないかな」
「・・・・・・」
サラは少し俯いて、考え込んでいるようだった。
「・・・余計な事を言ってごめん」
「・・・謝る事じゃないわ」
ラティの手足を服の中から引き抜くと、立ち上がって服のボタンを閉じていった。
「気が付いてはいたんだけどね。一度突っ張り始めたら、どうしても止められない性分だから」
肩の荷を下ろした様に伸びをすると、もう一度ラティの前で膝を着いた。
「ありがとう。無茶する時も、もう少し後先を考えてみる」
そう言うとサラはラティを抱きしめた。
ラティの額にサラの角がコツンと当たる。
互いの頬同士が触れ合った時、サラは頬も吸い付くように火照っているんだ、などとラティは思っていた。
17/02/10 19:20更新 / ドグスター
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