餓竜再び .7
ドラゴニアに入国して以来、ルイーザは酷く不愉快な感覚を感じ続けていた。
この国に充満する竜の魔力は、「竜殺し」の血が流れるルイーザの身を、絶えず竜の世界へ引きずり込もうとしている。
それを阻んでいるのは、一族に伝わる竜殺しの薬を元にした、竜の魔力への耐性をもたらす噛み薬だ。
しかし、噛み薬を噛み続けていてもなお、気を緩めれば秘所が湿り気を帯びてしまいそうな、扇情的に絡み付く違和感は消えない。
まるで毒入りの蜜を肌へ塗りたくられている様な不快な快楽が、微かとは言え絶え間なく続いていた。
それが自身を忌まわしい竜へと造り変えようとしている故の物だと理解しているからこそ、その感覚はルイーザにとって殊更に不快であった。
「・・・狩りの為とは言え、こんな場所には長居したくないわね」
窓際に座って外の細かな霧雨を見つめながら、ルイーザは傍らで武器を手入れしているルカに話し掛けた。
「バノッティのおじさんが腐れ竜を見付けてくれるまでの辛抱だよ、姉さん」
姉と同じ燃えるような赤毛を持つ少年は、床に座り細かな模様が幾重にも彫り込まれたドローイングナイフを丁寧に研ぎながら、姉の言葉に答えた。
ルカの雑な物の言い様は、対象を狩りの獲物としか見ていないシンプルさと、見付けてさえしまえばどうとでもなるという自信の、双方から来ている。
幼い頃から竜殺しの技術だけを教え込まれてきた彼には、その高い技術とは不釣り合いな、幼く単純で危ういメンタリティーが備わってしまっていた。
「あの男は本当に信用できるのか?金で動く鼠賊の類いだろう?」
ルカの言葉に部屋の奥で座っていた男が反応する。
金髪碧眼。まず眉目秀麗と言っていい品の良さそうな顔立ちである。
身なりも質素でありながら小綺麗にしており、育ちの良さが滲み出ている。
「大丈夫よ。お金で動く者ほど、仕事に関わる信用を失う訳にはいかないから」
育ちのいいお坊っちゃんには分からないでしょうけど、と言わんばかりのルイーザの言葉に、男は僅かに顔をしかめたが、言い分の正しさを理解するだけの冷静さは失っていなかった。
「・・・自分では出来ない事をやってくれている人間を、悪く言うものではなかったな」
「いいんじゃない?彼も自分の為にしてるんだから」
利害が一致している以上、バノッティがラスタバンの居場所を見つけ出す事に専念しているのは確かだろうと、ルイーザは考えていた。
少なくとも、四人の中では最も捜索に向いている男なのだから、探索は彼に任せた方が確実である。
ラスタバン捕獲を命じられた者達は、ドラゴニアの市街地から離れた空き家で、共に潜伏していた。
それぞれの雇い主は反目していたが、現場でまでそれを引きずるのは合理的ではない。
せめて、ラスタバンを捕獲する所までは協力しようという、緩やかで浅い協力関係が三者の間で出来上がっていた。
もっとも、それは一時的に争いを棚上げしているのに過ぎないのだが。
ルイーザとルカのティカル姉弟は、代々続くドラゴンスレイヤーの家系の末裔である。
竜殺しと人類の守り手という二つの矜恃を持ち続けてきた一族も、ドラゴンが人間の妻となる時代を迎えて以来、凋落の一途を辿っていた。
その一族の技術に目を付けた主神教団の一派が、彼等を雇い入れたのである。
ラスタバンを生け捕りにする事が出来れば、教団で竜殺しの技術を指導する師範職が彼等を待っていた。
それは、彼等の一族に栄光の時代を再びもたらす為の切っ掛けとなるに違いなかった。
金髪碧眼の男、ジュリアン・エイナウディは「元」勇者候補である。
下級とは言え貴族の家に生まれ、幼少の頃から文武両道に秀でていた彼が勇者の道へと進んだのは、ある意味当然の事とも言えた。
しかし、全てにおいて恵まれていた彼の洋々たる前途は、魔王軍によって閉ざされてしまう。
彼が勇者となる為に研鑽を積んでいたレスカティエは、魔王軍の手によって一晩にして魔界と化してしまったのである。
ジュリアンは運よく市街の外に居た為に難を逃れる事が出来たのだが、教団は却ってそれを問題視した。
勇者の資質がある者ならば、同胞を解放する為に立ち向かうべきであった。というのが教団の言い分である。
それはレスカティエに対して手出しが出来ない現実から来る苛立ち故の、教団の言い掛りも混じっていたのだが、どちらにせよ勇者として活躍するというジュリアンの未来は、そこで閉ざされてしまったのだ。
才能がありながら未来を失った者は、初めから何もない者より一層に惨めな思いをする。
表向きは有能な人材として扱われながらも、レスカティエから逃げ出した男というレッテルは、彼がどこで何をしようとも付きまとった。
その彼に与えられた失地回復の機会が、ラスタバンの捕獲である。
それを命じたのが、彼を殊更に糾弾した守旧派なのは実に皮肉な話であった。
ジュリアンは身勝手な理屈で自分の境遇を振り回す守旧派を憎悪すらしていたが、この機会を逃せば二度と汚名を漱ぐ事が出来ない事も、よく理解していた。
この場に居ないバノッティは金で雇われる職業スパイである。
銭金で雇われ、契約は必ず達成する。それが彼の全てである。
それが故に、それが出来なくなった時、彼は職と自身の拠り所を失ってしまうだろう。
この様に三者が自身の存在価値を賭けて、ラスタバンの身柄を奪い合う関係である以上、全員で仲良く凱旋するなどという事は出来る訳も無かった。
そして、全員が守旧派にとって使い捨てても惜しくない人材であるあたりが、この一件に対する守旧派のリスクの取り方を現してもいたのである。
その頃、狙われていた当のラスティはというと、
「三回目なのに味も匂いも濃くておいしい〜♥」
今までで一番充実した生活を送っていた。
立場上、頻繁に出歩く訳にもいかないので、隠れ家に籠りがちになるのだが、それは洞窟での生活と大して変わらず、彼女にとっては特に苦になる事ではない。
ドラゴニアの料理には魔界の産物も入っている事も多いので、自然とレオンとの交わりも濃厚になり、娘のエル共々、幸せな生活の真っ只中といった所であった。
「あのね、レオン?」
「ごめん、昼御飯ならもう少し待ってて」
ラスティに話し掛けられた時、レオンは器用にフライパンを捌きながら、肉と野菜を炒めていた。
熱せられた油とスパイスで、台所には香ばしく刺激的な匂いが充満している。
レオンは近所の料理屋に作り方を教えてもらって以来、ドラゴニア料理の練習がてら、イリーナも含めた全員の分の食事を作るのが日課となっていた。
「ん・・・じゃあ、お昼の時でいいかな〜」
「中々いい匂いをさせる様になったじゃない」
その声にラスティが振り向くと、後ろにはなぜかピーニャが居た。
二人の間から顔を出して、フライパンの中味を興味深そうに覗いている。
「・・・なんでピーニャさんが居るんですか〜?」
「料理の上達には味が分かる味見役が必要でしょうよ?」
「そういう意味では無くて〜」
ラスティは自分をからかう様な素振りを見せるピーニャが少々苦手だったのだが、そのピーニャといえば、それを知ってか知らずか何かと理由をつけて隠れ家へと顔を出すのであった。
彼女は世間知らずなドラゴンゾンビの親子を放っとけなかったし、何かあった時には一人でも魔物が近くにいた方が良いからというのもある。
彼女の手によって、地区の住人達が不自然に見えない範囲で見守っているので、彼女自身が頻繁に隠れ家へ来る理由は無いのだが、暇な身では無いのにも関わらずマメに顔を出すのは、母性的な優しさを持つワームの血がそうさせているのかもしれない。
「多目に作ってるから、ピーニャさんの分もありますよ?」
フライパンから料理を皿へ移しながら、レオンがピーニャに話しかける。
「そういう気遣いが出来る子は大好きよ?」
ピーニャがレオンの頭を誉める様に撫でると、それを見たラスティはまたむくれるのであった。
「良く出来てるけど、ドラゴニア料理としては少し味が優しいかな」
とはレオンの料理を食べたピーニャの感想である。
ピーニャ曰く、ドラゴニア料理の真髄は、作る者の情熱で食べる者の食欲を燃え上がらせて、熱狂的に食べさせる所、つまり情熱と食欲を共鳴させる所にあるのだという。
「料理も男女も、相手が我を忘れて食らい付いてくれるくらいが、一流って事かしらね」
行儀悪くフォークを指先でクルクルと回しながら、ピーニャが説明してくれる。
食と性が結び付いている辺りが、いかにも魔物娘らしい物言いだと思いながら、自分の料理に足らないのはそういう視点かともレオンは思ったりしていた。
「ところで、ラスティは何の用だったの?」
レオンは料理の最中にラスティに話し掛けられた事を思い出した。
「あ・・・あのね、エルと二人で『番いの首飾り』を作りたいから、外に出たいかな〜って思って〜」
「あたし達がレオンに贈れる物って、爪くらいしか無いから〜」
二人にしては珍しく控え目に提案しているのは、その言葉の意味が少々照れ臭いのかもしれない。
「そんな、無理して贈り物なんて考えなくても・・・」
「でも〜」
「レオン君」
ピーニャが少し不機嫌そうにレオンを見ていた。
「はい?」
「減点3」
「何が!?」
「今の減点は仕方無いですね・・・」
生真面目なイリーナまでも、ピーニャの判断に同意する。
「え、いや、だって・・・」
「ピーニャさんなら腕のいい職人さんを知ってるでしょうから、そこに行きましょうか?」
イリーナには珍しくレオンの困惑を無視して、どんどん話を進めてしまう。
「任せといてよ。この界隈はそういう職人には事欠かないからね。一番の腕の持主の所へ案内してあげるわ」
「でも〜レオンが・・・」
「いいのよ。女の子からのプレゼントを断る様な子に発言権は無いから」
「遠慮していい物と悪い物がありますよ?レオンさん」
一致団結して話を進めるピーニャとイリーナに、改めてレオンは自分の周りに魔物娘しか居ない事を実感したのだった。
この国に充満する竜の魔力は、「竜殺し」の血が流れるルイーザの身を、絶えず竜の世界へ引きずり込もうとしている。
それを阻んでいるのは、一族に伝わる竜殺しの薬を元にした、竜の魔力への耐性をもたらす噛み薬だ。
しかし、噛み薬を噛み続けていてもなお、気を緩めれば秘所が湿り気を帯びてしまいそうな、扇情的に絡み付く違和感は消えない。
まるで毒入りの蜜を肌へ塗りたくられている様な不快な快楽が、微かとは言え絶え間なく続いていた。
それが自身を忌まわしい竜へと造り変えようとしている故の物だと理解しているからこそ、その感覚はルイーザにとって殊更に不快であった。
「・・・狩りの為とは言え、こんな場所には長居したくないわね」
窓際に座って外の細かな霧雨を見つめながら、ルイーザは傍らで武器を手入れしているルカに話し掛けた。
「バノッティのおじさんが腐れ竜を見付けてくれるまでの辛抱だよ、姉さん」
姉と同じ燃えるような赤毛を持つ少年は、床に座り細かな模様が幾重にも彫り込まれたドローイングナイフを丁寧に研ぎながら、姉の言葉に答えた。
ルカの雑な物の言い様は、対象を狩りの獲物としか見ていないシンプルさと、見付けてさえしまえばどうとでもなるという自信の、双方から来ている。
幼い頃から竜殺しの技術だけを教え込まれてきた彼には、その高い技術とは不釣り合いな、幼く単純で危ういメンタリティーが備わってしまっていた。
「あの男は本当に信用できるのか?金で動く鼠賊の類いだろう?」
ルカの言葉に部屋の奥で座っていた男が反応する。
金髪碧眼。まず眉目秀麗と言っていい品の良さそうな顔立ちである。
身なりも質素でありながら小綺麗にしており、育ちの良さが滲み出ている。
「大丈夫よ。お金で動く者ほど、仕事に関わる信用を失う訳にはいかないから」
育ちのいいお坊っちゃんには分からないでしょうけど、と言わんばかりのルイーザの言葉に、男は僅かに顔をしかめたが、言い分の正しさを理解するだけの冷静さは失っていなかった。
「・・・自分では出来ない事をやってくれている人間を、悪く言うものではなかったな」
「いいんじゃない?彼も自分の為にしてるんだから」
利害が一致している以上、バノッティがラスタバンの居場所を見つけ出す事に専念しているのは確かだろうと、ルイーザは考えていた。
少なくとも、四人の中では最も捜索に向いている男なのだから、探索は彼に任せた方が確実である。
ラスタバン捕獲を命じられた者達は、ドラゴニアの市街地から離れた空き家で、共に潜伏していた。
それぞれの雇い主は反目していたが、現場でまでそれを引きずるのは合理的ではない。
せめて、ラスタバンを捕獲する所までは協力しようという、緩やかで浅い協力関係が三者の間で出来上がっていた。
もっとも、それは一時的に争いを棚上げしているのに過ぎないのだが。
ルイーザとルカのティカル姉弟は、代々続くドラゴンスレイヤーの家系の末裔である。
竜殺しと人類の守り手という二つの矜恃を持ち続けてきた一族も、ドラゴンが人間の妻となる時代を迎えて以来、凋落の一途を辿っていた。
その一族の技術に目を付けた主神教団の一派が、彼等を雇い入れたのである。
ラスタバンを生け捕りにする事が出来れば、教団で竜殺しの技術を指導する師範職が彼等を待っていた。
それは、彼等の一族に栄光の時代を再びもたらす為の切っ掛けとなるに違いなかった。
金髪碧眼の男、ジュリアン・エイナウディは「元」勇者候補である。
下級とは言え貴族の家に生まれ、幼少の頃から文武両道に秀でていた彼が勇者の道へと進んだのは、ある意味当然の事とも言えた。
しかし、全てにおいて恵まれていた彼の洋々たる前途は、魔王軍によって閉ざされてしまう。
彼が勇者となる為に研鑽を積んでいたレスカティエは、魔王軍の手によって一晩にして魔界と化してしまったのである。
ジュリアンは運よく市街の外に居た為に難を逃れる事が出来たのだが、教団は却ってそれを問題視した。
勇者の資質がある者ならば、同胞を解放する為に立ち向かうべきであった。というのが教団の言い分である。
それはレスカティエに対して手出しが出来ない現実から来る苛立ち故の、教団の言い掛りも混じっていたのだが、どちらにせよ勇者として活躍するというジュリアンの未来は、そこで閉ざされてしまったのだ。
才能がありながら未来を失った者は、初めから何もない者より一層に惨めな思いをする。
表向きは有能な人材として扱われながらも、レスカティエから逃げ出した男というレッテルは、彼がどこで何をしようとも付きまとった。
その彼に与えられた失地回復の機会が、ラスタバンの捕獲である。
それを命じたのが、彼を殊更に糾弾した守旧派なのは実に皮肉な話であった。
ジュリアンは身勝手な理屈で自分の境遇を振り回す守旧派を憎悪すらしていたが、この機会を逃せば二度と汚名を漱ぐ事が出来ない事も、よく理解していた。
この場に居ないバノッティは金で雇われる職業スパイである。
銭金で雇われ、契約は必ず達成する。それが彼の全てである。
それが故に、それが出来なくなった時、彼は職と自身の拠り所を失ってしまうだろう。
この様に三者が自身の存在価値を賭けて、ラスタバンの身柄を奪い合う関係である以上、全員で仲良く凱旋するなどという事は出来る訳も無かった。
そして、全員が守旧派にとって使い捨てても惜しくない人材であるあたりが、この一件に対する守旧派のリスクの取り方を現してもいたのである。
その頃、狙われていた当のラスティはというと、
「三回目なのに味も匂いも濃くておいしい〜♥」
今までで一番充実した生活を送っていた。
立場上、頻繁に出歩く訳にもいかないので、隠れ家に籠りがちになるのだが、それは洞窟での生活と大して変わらず、彼女にとっては特に苦になる事ではない。
ドラゴニアの料理には魔界の産物も入っている事も多いので、自然とレオンとの交わりも濃厚になり、娘のエル共々、幸せな生活の真っ只中といった所であった。
「あのね、レオン?」
「ごめん、昼御飯ならもう少し待ってて」
ラスティに話し掛けられた時、レオンは器用にフライパンを捌きながら、肉と野菜を炒めていた。
熱せられた油とスパイスで、台所には香ばしく刺激的な匂いが充満している。
レオンは近所の料理屋に作り方を教えてもらって以来、ドラゴニア料理の練習がてら、イリーナも含めた全員の分の食事を作るのが日課となっていた。
「ん・・・じゃあ、お昼の時でいいかな〜」
「中々いい匂いをさせる様になったじゃない」
その声にラスティが振り向くと、後ろにはなぜかピーニャが居た。
二人の間から顔を出して、フライパンの中味を興味深そうに覗いている。
「・・・なんでピーニャさんが居るんですか〜?」
「料理の上達には味が分かる味見役が必要でしょうよ?」
「そういう意味では無くて〜」
ラスティは自分をからかう様な素振りを見せるピーニャが少々苦手だったのだが、そのピーニャといえば、それを知ってか知らずか何かと理由をつけて隠れ家へと顔を出すのであった。
彼女は世間知らずなドラゴンゾンビの親子を放っとけなかったし、何かあった時には一人でも魔物が近くにいた方が良いからというのもある。
彼女の手によって、地区の住人達が不自然に見えない範囲で見守っているので、彼女自身が頻繁に隠れ家へ来る理由は無いのだが、暇な身では無いのにも関わらずマメに顔を出すのは、母性的な優しさを持つワームの血がそうさせているのかもしれない。
「多目に作ってるから、ピーニャさんの分もありますよ?」
フライパンから料理を皿へ移しながら、レオンがピーニャに話しかける。
「そういう気遣いが出来る子は大好きよ?」
ピーニャがレオンの頭を誉める様に撫でると、それを見たラスティはまたむくれるのであった。
「良く出来てるけど、ドラゴニア料理としては少し味が優しいかな」
とはレオンの料理を食べたピーニャの感想である。
ピーニャ曰く、ドラゴニア料理の真髄は、作る者の情熱で食べる者の食欲を燃え上がらせて、熱狂的に食べさせる所、つまり情熱と食欲を共鳴させる所にあるのだという。
「料理も男女も、相手が我を忘れて食らい付いてくれるくらいが、一流って事かしらね」
行儀悪くフォークを指先でクルクルと回しながら、ピーニャが説明してくれる。
食と性が結び付いている辺りが、いかにも魔物娘らしい物言いだと思いながら、自分の料理に足らないのはそういう視点かともレオンは思ったりしていた。
「ところで、ラスティは何の用だったの?」
レオンは料理の最中にラスティに話し掛けられた事を思い出した。
「あ・・・あのね、エルと二人で『番いの首飾り』を作りたいから、外に出たいかな〜って思って〜」
「あたし達がレオンに贈れる物って、爪くらいしか無いから〜」
二人にしては珍しく控え目に提案しているのは、その言葉の意味が少々照れ臭いのかもしれない。
「そんな、無理して贈り物なんて考えなくても・・・」
「でも〜」
「レオン君」
ピーニャが少し不機嫌そうにレオンを見ていた。
「はい?」
「減点3」
「何が!?」
「今の減点は仕方無いですね・・・」
生真面目なイリーナまでも、ピーニャの判断に同意する。
「え、いや、だって・・・」
「ピーニャさんなら腕のいい職人さんを知ってるでしょうから、そこに行きましょうか?」
イリーナには珍しくレオンの困惑を無視して、どんどん話を進めてしまう。
「任せといてよ。この界隈はそういう職人には事欠かないからね。一番の腕の持主の所へ案内してあげるわ」
「でも〜レオンが・・・」
「いいのよ。女の子からのプレゼントを断る様な子に発言権は無いから」
「遠慮していい物と悪い物がありますよ?レオンさん」
一致団結して話を進めるピーニャとイリーナに、改めてレオンは自分の周りに魔物娘しか居ない事を実感したのだった。
17/05/14 11:25更新 / ドグスター
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