｢サラ？あなたが助けに来てくれたの!?｣
ラウエルの病人が集められている集会場の前で、ホルスタウロスの女の子が驚いたように目を丸くしていた。
｢助けるのはあたしじゃなくてこっちの方よ、エミー｣
サラとは古い付き合いのホルスタウロスのエミリアに、親指で背中のラティを指差す。
｢その人、ずっとサラの背中に乗ってきたの!?なら一休みしてから･･･｣
その声を制すると、ラティはヒラリと降りた。
つもりで、鞍に脚を引っ掛けて転がり落ちたが、めげずに立ち上がる。
｢･･･大丈夫です。サラが命懸けで作ってくれた時間を、無駄にしたくないですから｣
サラもエミリアも、大丈夫じゃないだろうと思ったが、ラティの顔には疲労が深く滲んでいるものの、目は生気を失っていない。
鞍に括り付けられていた荷物を解いて背中に担ぐ。
｢･･･休むのは診てからでも出来ます｣
道程を共にしてきたサラも、ラティにこういう骨っぽい一面がある事には気付かなかった。
｢分かりました。中で看病している子に伝えて来ます｣
エミリアが集会場に入っていくのを見送ると、ラティは手袋を脱いでサラに手を差し出した。
｢･･･ありがとう。本当に命懸けでここまで来てくれて｣
サラも手袋を脱いで握手を交わす。
｢背中に居たのがあなたじゃなかったら、吹雪の崖で一緒に落ちてた。それに･･･あなたが居なかったら、誰かの為なんて事を考えないまま、いつか命を落としてた｣
握手している手に思わず力が入る。
｢あたしこそ、ありがとう｣
互いの掌が暖かい。
｢無理しないでよ？｣
｢僕は医者だから｣
大丈夫という意味か、無理するのが当然という意味か、その辺はラティにも曖昧だった。
エミリアが看病をしていたホルスタウロスを連れてくると、ラティは彼女に案内されて集会場へと入っていった。
｢あなたの背中に乗って来て、立って歩いた人を初めて見たわ･･･｣
サラの案内の為に残ったエミリアが呟く。
｢あたしの命を助けてくれたくらいだから｣
｢あの雪山でサラを助ける!?人は見た目によらないのねぇ･･･｣
｢うん。見た目によらないと思う｣
｢惚れちゃった？｣
エミリアがニヤニヤしながらサラの方を見ていた。
｢･･･エミーってそんなに下世話だった？｣
｢ダーリンが帰ってこないから、欲求不満なのよ｣

ラティが診察したところでは、病気は想定していた通りだった。
自然に回復しつつある村人も居たが、悪化している者も少なくない。特に、子供と老人には悪化している者が多かった。
本隊が到着する時期を考えれば、無理矢理にでもラティを送り込んだ判断は正解だったと言える。
さしあたって、持ってきた薬を投与して経過を見るくらいしか、ラティにも打つ手が無いのではあるが。
村人の症状を見ながら微妙に薬の調合を変える必要があった為に、ラティが全ての患者に薬を投与し終わった頃には、既に日が傾きかけていた。
こうして、ラティの仕事にも当座の一区切りが付いたのである。

その後のラティの記憶は曖昧だった。
緊張が切れた為にぼんやりとしている頭のまま、出してもらった食事を取ってベッドへ倒れこみ、意識を取り戻した時には、なぜか自分が寝ているベッドにもたれ掛かる様にサラが寝ていた。
二人とも服はそのままだったので、よろしくない事にはならなかった様だが、ラティとしては既に十分よろしくない状況である。
纏められていた髪は既に解かれて、本来のウェーブがかった豊かな長い髪が、腰の辺りまで流れる様に曲線を描いていた。
つい今朝方まで、あの背中にラティは命を預けてきたのだ。
その事が無性に愛おしく、今は違う事が無性に寂しく、ラティはつい彼女の頬に指を触れてしまった。
山小屋で触れた時と同じ様に、吸い付く様に火照っている。
｢･･･キスの方がいいんだけど？｣
サラの声にラティは思わず手を引っ込めたが、その手首を柔らかく掴まれてしまう。
｢あたしは･･･撫でられるよりキスの方がいいんだけど｣
サラが身を乗り出してラティの瞳を覗く。
サラがラティの隣で寝ていたという事は、つまりは既にそういう事なのだ。
ラティはサラと唇を合わせた。
そのままラティは押し倒されてしまう。
ゆっくりと、しかし強く押し付けられたサラの唇は、すぐにラティの唇を抉じ開けて舌を入れてしまう。
ラティがサラの寝姿に、愛おしく寂しい思いを持った様に、サラもラティの事が無性に愛おしかった。
もっと抱きしめたい。
もっと体温を分けてあげたい。
ラティを中から暖めてあげたい。
その思いがラティの口内を愛撫していく。
二人が唇を放すと、トロリと唾がこぼれ落ち、シーツを汚した。
｢服･･･脱ご？｣
体温を分ける為には、互いの肌を隔てる物はいらない。
キスの熱さにぼんやりとしているラティの服を、一枚一枚丁寧に脱がしていく。
最後の一枚を脱がしてしまうと、サラの目の前には膨らみきった肉棒が姿を現した。
｢キスだけで、こうなってくれたんだ？｣
嬉しそうに微笑むと、自分も防寒服を脱いでいく。
山小屋で僅かに見えた乳房も、しなやかな腹筋も、ラティの目の前で晒されていく。
透ける様に白かった肌は微かに赤みが差し、淡いランプの灯りに照らされて一層火照っているように見える。
貴族とも労働者とも違う、無駄の無い均整の取れた身体。
｢･･･きれい｣
｢ありがと。でも、余計な肉が付く暇が無いだけよ｣
少し照れたように苦笑すると、サラはラティに抱きついた。ラティも応える様に抱きしめる。
山小屋で暖めてくれた時とも、吹雪の中で抱きしめていた時とも違う、サラの身体の熱さ。
抱きしめているだけでも、うっすらと汗ばんだ肌が互いを吸い付け合い、互いが熔けていきそうな錯覚の中で再びキスを交わす。
今度は互いを体温を交換する様に。
ただ抱き合ってキスをしているだけなのに、ラティの肉棒は更に硬さを増して、先走りを滲ませ始める。
それはサラも同じだ。秘部は何も触れていないのに、ヌルヌルになるほど熱を持って濡れている。
再び唇を離した時には、二人とも同じ気持ちで一杯になっていた。
｢サラ、サラの中に入りたい･･･｣
｢･･･あたしもラティに入ってきてほしい｣
ベッドの縁に腰かけて、ラティは膨れ上がった肉棒をサラの秘部に押し当てようとするが、ホワイトホーンの秘部の場所が中々つかめない。
サラが自分の秘部へそっと導くと、軽く触れあっただけでも、互いの熱が伝わってくる。
もう一回キスをすると、サラから進んでいく様に入れていく。
狭い肉の中へ肉棒が入っていく感触。その感触はラティにも伝わってくる。
｢サラ･･･初めて？｣
｢だって、山を駆け抜けた後にあたしが幾ら欲しくなっても、みんな気絶したりしてるから･･･｣
今になって恥ずかしくなって来たのか、サラは火照りとは違う理由で顔を赤くしていた。
あれだけストイックに山を駆けるサラも、その事だけは口に出せない不満だった。
彼女の孤高さは、どこまでも彼女を孤高へと追いやってしまっていたのだ。
｢･･･今までの分も僕が全部引き受けるよ｣
｢恥ずかしいよ･･･ばか｣
ラティはサラを抱き寄せると、ゆっくりと動かし始める。
秘部の狭さや絡み付く襞の感触。そういう物もラティに快感を与えてくれるが、それ以上に気持ちいいのはサラの中の暖かさだった。
中にいるラティを暖めてくれる様に熱く、歓迎してくれている様に暖かい。
互いの粘液が掻き混ざるほど、奥へ行けば行くほど、その熱は増していく。
サラの一番奥に肉棒の先端が触れると、そこは肉棒を融かしてしまうかと思うほど熱を帯びていた。
｢そこ、気持ちいい･･･｣
サラはラティを強く抱き寄せると、肉棒の先端に奥を押し付ける様に腰を動かす。
それが続けられると、敏感な先端を擦られるラティも、限界が近付いて来はじめていた。
｢サラ･･･このまま･･･いい？｣
サラは言葉も出せずに、激しく首を縦に振る。
一際強く奥に肉棒を押し付けると、サラの秘部がキュゥと引き締まる。それと同時にラティもサラの中へと大量の精を注ぎ込んでいた。

しばらくベッドに倒れたまま二人は重なっていたが、入ったままの肉棒はいつまでもサラの中に居たい様に、萎える気配が無かった。
｢･･･サラって暖かいんだ？｣
｢･･･ラティも熱かったけどね？｣
もう一回キスを交わす。
あの道程を生きて到着した二人にとっては、まだまだ足らない様だった。