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MCP-166 - 遺跡産のカラクリ人形
 
MCP-166 - 遺跡産のカラクリ人形

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識別番号: MCP-166

オブジェクトクラス: Safe Neutralized Safe

特別収容プロトコル: 現在、“非活性状態”の6体 5体 2体のMCP-166がサイト-17の特別物品収容室に保管されています。男性、女性、そして未婚か既婚かの有無に関わらず、セキュリティクリアランスのレベル3以上の権限を有する担当研究員の許可がない限りは全ての職員は上記収容室に立ち入ることが禁止されています。MCP-166の起動実験を行う場合は、必ず担当研究員とM5評議会による認可を受けた上で行なって下さい。

“活性状態”にあるMCP-166達は財団に非常に協力的であり、上記収容室への収容の必要はありません。財団への貢献度を鑑みて、“活性状態”のMCP-166達には要望があればそれぞれ個別の職員用ルームが割り当てられます。ただし、MCP-166個体に特別視されている男性(以降、『マスター』と表記)は、最低1日に1度のMCP-166への精の補給を行なうことが義務付けられます。また、たとえ微弱であってもMCP-166に電気刺激を与えることは推奨されません。


説明: MCP-166は箱型の容器に収容された魔物娘です。████年██月██日の██████国で発見された地下遺跡を調査した際に、7体のMCP-166が発見されました(それぞれMCP-166-1〜7と識別)。その発見時に1体のMCP-166が“活性状態”に至り、調査隊に加わっていた財団職員のエージェント・クロダにより魔物娘の疑いがあると報告されたため、財団が急遽回収を行いました。その後の調査により、██体のMCP-166が世界各地で“活性状態”にあることが判明しています。

容器に使われている素材は現行の組成分析技術では解析不可能であり、破壊検査を行おうとする試みは容器の異常な強度により断念されました。容器表面には未知の言語が記述されており、MCP-166が発見された場所である地下遺跡の壁面に記されていた言語と同様のものであると推測されていますが、未だ解読には至っていません。MCP-166の外観は未知の機械と有機ポリマーを組み合わせたような姿ですが、詳細な組成分析は倫理的な観点から実施は予定されていまん。

MCP-166は箱型の容器に収まった状態では自発的な行動を起こさない“非活性状態”であり、容器の一部箇所に人間(性差、既婚・未婚は問わず)が直接触れることによって“活性状態”へと移行します。1度“活性状態”になったMCP-166は再度“非活性化状態”に戻ることも可能なようですが、MCP-166が許諾しないことに加えて後述の理由により、再び非活性化させる試みは行われていません。

MCP-166の最たる特徴は、MCP-166自身ではなく周囲の事物に向けた利他的行動にあります。MCP-166が『奉仕活動』と称するそれらの行動は、MCP-166の高い学習能力やコミュニケーション能力と組み合わさることで、これまでサイト-17内の花木の手入れからM5の警護にまで広く順応しています。MCP-166との対話、機能調査については後述のインタビューログ及び実験ログを参照して下さい。

さらにMCP-166は、1人の男性を『マスター』として識別する機能(MCP-166達はこれを『認証登録』と表現している)が確認されています。MCP-166との性的行為を含む接触によって『マスター』となった対象は、MCP-166の取る行動の優先順位の最上位に位置付けられるため、その後のMCP-166の『奉仕活動』のありとあらゆる全てが『マスター』へと向けられることになります。

“活性状態”に至ったMCP-166は、暫くの期間は外部からのエネルギーを一切必要とせず活動可能なことが確認されていますが、いずれのMCP-166も『認証登録』が終わった後は、『マスター』との性的行為を通じて未知の手段で男性の精からエネルギーを得るようになります。この際に精を浴びる箇所はMCP-166のどの部位でも関係なくエネルギー吸収が可能ですが、MCP-166達は自身の有する女性器様の内部構造での吸収を望むことが多いようです。

████年██月██日に発生したインシデント166-Aにより、外部影響を極端に受け難い身体組成であると思われていたMCP-166が、唯一電気刺激にのみ耐性が低下することが分かりました。“非活性状態”には至りませんでしたが、その際のMCP-166は人間に協力的であり、受動的であった通常の行動ルーチンから逸脱した状態になり、積極的に『マスター』から精を回収しようと行動するようになりました。このMCP-166が暴走状態に変化したインシデントを受けて、████年に改定されていたオブジェクトクラス: NeutralizedをSafeへと再改定します


 インタビューログ・MCP-166-2-α:

 対象: MCP-166-2

 インタビュアー: ████博士

 付記: 対話室備え付けの傍聴カメラによる記録。

 《録画開始 ████年██月██日》

(白衣の男性研究員とMCP-166-2が、簡素な部屋に置かれたテーブル越しに向き合っている。)

████博士: えー、第1回目のインタビューを開始する。初めまして、私は████。MCP-166-2、いきなりだけど幾つか質問させてもらっても良いかな?

MCP-166-2: ████博士、畏まりました。本機で宜しければお答えさせていただきます。

████博士: ありがとう。

MCP-166-2: いえ。他者への奉仕が本機に与えられた役割ですから。

████博士: 奉仕……? ああいや、コホン。じゃあまず、君の名前を教えてもらえるかな?

MCP-166-2: 名前ですか。(少し考え込んでから)本機には仮の型式番号として、あなた方の言葉で0705201という番号が振り当てられています。

████博士: なるほど。今『あなた方の言葉で』と言ったけど、君達は地下深くで“不活性状態”……あー、寝ていたところを発見された。なのにどうして、私達の言葉が分かるんだ? 他の魔物娘と類似した能力を持っているのか? その理由と、地下にいた理由を教えてほしい。

MCP-166-2: すみません。魔物娘とは? 言葉の定義を教えて下さい。

████博士: そうだな、広義では……。この世界に突然現れた、男性の精をエネルギー供給源の1つとして積極的に取り込もうとする、女性型存在のことだ。

MCP-166-2: 分かりました。それならば本機と本機の姉妹型達は、魔物娘の定義に当てはまると答えます。我々は男性からの精を吸収して活動能力を維持します。

████博士: (僅かに身を引き、表情を固くする)そうか。……一応目の前にいる私も男だが、何か思うところはあるか?

MCP-166-2: いえ、特には。今のところ、本機のリソースは不足しておらず、暫くの期間は外部からの供給は必要ありません。製造時の初期リソースの貯蓄はおよそ████年分ほどですが。

████博士: それは凄いな……。『製造』と言ったが、いったいどんな技術があれば君のような魔物娘が生まれるんだ? 誰が造ったんだ?

MCP-166-2: (身体の隙間からの発光を何度か点滅させてから)…………分かりません。

████博士: えっ?

MCP-166-2: 本機のデータベースにアクセスしても、████博士の最初に仰った『地下にいた理由』、『本機の製造法』、それらについての該当情報はゼロ件でした。申し上げにくいのですが、恐らくデータがデリートされているか、そもそも不要と判断されてインプットされなかったものと推測されます。

████博士: そうなのか……。いや、無理強いはしない。今後思い出したりすることがあれば教えてほしい。

MCP-166-2: 分かりました。

████博士: 申し訳ないとは思うが、暫く君には割り当てられたルームで過ごしてもらい、ある程度の安全性が確認されるまではこうしてインタビューを取らせてもらう。何か要望はあるか? 可能な範囲でなら応えられるが。

MCP-166-2: 宜しければ、本機が学習するための何かしらの情報を。

████博士: 情報……。君の危険性が未知数な現状ではまだ難しいかもしれないが、いずれは検討しよう。文書、書籍でいいか? 

MCP-166-2: 感謝します。それと……。

████博士: それと?

MCP-166-2: 将来的には、何か仕事を戴ければと。他者への奉仕、それが本機の存在意義です。

████博士: ……そちらについては、まだ確約はできない。ボランティア的な活動をするとしても、君の担当である私の管理下で行うことになるだろう。

MCP-166-2: ████博士の管理下ですね。了解しました。

████博士: よし。それではインタビューを終了する。

 《録画終了》

 所感: 感触は悪くない。受け答えも理知的であり、衝動的な行動をする可能性も今のところは低いと考えられる。研究員として初めてMCPを担当するが、彼女が担当で良かった。あとは、エージェント・クロダのように『認証登録』さえされなければ、どうにか穏便な関係を維持できるだろう。オブジェクトクラスはSafeとする。 - ████博士



 実験ログ・MCP-166-2-1〜MCP-166-2-128:

 実験目的: MCP-166の有する特性の検証。

実験番号: MCP-166-2-1
目的: 学習能力の確認1
方法: 14ページの絵本、『桃太郎』を読ませる。
結果: 9秒で読破。「暴力はいけませんね」と感想。
考察: 色々言うべきことはあるが、とりあえず昔話なのだから見逃してほしい。 -████博士


実験番号: MCP-166-2-2
目的: 学習能力の確認2
方法: 森鴎外著『舞姫』を読ませる。
結果: 30秒で読破。「相沢(主人公とヒロインの仲を結果的に引き裂いた人物)は女の敵です」と感想。その後、更に詳細な感想を文書にして提出した。
考察: 意外と感情豊かなのだろうか?


実験番号: MCP-166-2-9
目的: 学習能力の応用1
方法: 『大辞林』を1日与えた後、『しりとり』を行う(ルールは説明済み)。
結果: 実験担当者が18回目の『ず』を押し付けられ、10秒間答えに詰まったため敗北。「次は語尾をランダムに割り振るようにします」と感想。
考察: 気遣われている。なんてことだ。


実験番号MCP-166-2-25
目的: MCP-166の『奉仕活動』1
方法: 掃除用具とその説明を与えてから職員用ルームの一室を掃除させる。
結果: 「やり甲斐がありますね」とコメントしてから、45分で掃除を終了した。
考察: 私の部屋の床が鏡のように反射するほど磨かれていた。

実験番号MCP-166-2-31
目的: MCP-166の『奉仕活動』7
方法: レシピブックを与えてから、職員用の厨房を1時間貸与。
結果: 1時間全てを使ってキャベツと豚肉のミルフィーユ(トマト煮)を含む6品を作製。「一摘みなどの曖昧な表現は不合理ですね」と感想。
考察: 私はもう少し塩味の薄い方が好みだ。

実験番号MCP-166-2-53
目的: (偶発的な事態のため、目的無し)
方法: 財団職員2名が食堂にて殴り合いの喧嘩を行っている現場に遭遇。
結果: MCP-166-2は内蔵されていた銃器型の器官から発光物質を撃ち出すと、職員2名がその場で眠りに落ちた。その際に1名の頭に生じたタンコブは、MCP-166-2の別の内蔵器官によって即座に治療された。
考察: 一時は騒然としたが、後に彼女達は非殺傷の装備のみを有していることを確認した。本実験によって証明されたMCP-166の有用性・対応能力を鑑みて、彼女の姉妹機を“活性状態”にしてサイト内に配置することを提案する。認可を得たため、2体を残して各所に“活性状態”のMCP-166-3〜5がそれぞれ監視付きで配置された。彼女達に危険性は皆無であり、オブジェクトクラスもNeutralizedに引き下げることとする。

実験番号MCP-166-2-68
目的: MCP-166同士の連絡能力の調査1
方法: MCP-166-2に、MCP-166-3〜5へ『奉仕活動』の指導を行わせた。
結果: MCP-166-3〜5は問題なく指導された事をこなした。
考察: 私のやったことと言えば、「これで良いのでしょうか?」と言ったレイ(MCP-166-2の名乗る形式番号下二桁から取った名称)にただ頷いただけだった。

実験番号MCP-166-2-110
目的: MCP-166の『奉仕活動』範囲拡張14
方法: 機密度の低い、公的用途の書類の整理作業
結果: 索引まで作成し、「申し付け下されば本機の方で検索致します」とコメント。
考察: 彼女を私の助手として他薦し、より高次のセキュリティクリアランスを与えることとする。クリアランスレベル3を戴きました。

実験番号MCP-166-2-128
目的: MCP-166-2〜5による連携の強化3
方法: 実験用ルームを用いたMCP-166同士の情報交換
結果: サイト-17におけるそれぞれのカバー範囲を最適化した。
考察: ついでにMCP-166-1も呼び戻して作業にあたらせましょう。



補遺 インシデント166-A

 日時: ████年██月██日

 場所: ████博士の私室である職員用ルーム

 説明: 博士と共に浴室に入ろうとしたMCP-166-2が足にドライヤーを巻き込み、軽度の感電を起こした。134分後にMCP-166-2が意識を取り戻した時には、近くには気絶した████博士の姿があり、MCP-166-2には████博士の精液が全身に大量に付着していた。




 ===警告===

 本機が自身の欠陥に無知であったため、マスターに被害が出ました。この痛ましい事故を教訓として、MCP-166のオブジェクトクラスのNeutralizedを返上した上でSafeへと再分類することを提案し、M5評議会に受理されました。これを読んでいる本機の姉妹は、充分に留意すること。決して面白そうだから試そうなどとしてはいけません。 - ████博士助手・レイ
 






 M5評議会 M-12 ████評議員の付記

████博士、怒らないからちょっと中央会議室に来なさい。

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17/08/10 12:28更新 / しっぽ屋
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