第六章 サフィ
サフィはイルトスト王国でもそれなりに名の知れた勇者の血の流れを組む家に生まれた。そう言うと聞こえは良いかも知れないが、実際はその家に仕えるメイドに主が手を出して生まれたのがサフィだ。幸い奥方は寛容な人で、サフィの母親は側室として迎え入れられるが、周囲の目は決して温かなものではなかった。
4年後、嫡子であるセインが生まれる。もっとも身近で年の近い異性としてセインはサフィに懐いたが……その頃にはサフィも物心がついており、自分がどのような存在であるかを認識していた。
子どもというのは多感なものだ。そんな多感な子どもが、自分が非嫡子であることを自覚し、自分や母親の陰口を耳にしたらどうなるだろう？ その心は穏やかではないだろう。非行に走る者もいよう。
サフィは逆に非常に堅い人間となった。自分が白い目を向けられる原因ともなっただらしない父を憎み、それに連なりあらゆる不正や不正義を許さない性格へと育った。一見、正義感のある子どもとも言えたが、同時にそれは融通の利かない頑固な性格とも言えた。
弟をいじめるような者がいたら徹底的に戦い、怪我すら負わせることもあった。遊びでルール違反をする者は徹底的に糾弾した。自分を始め悪口を言うメイドには面と向かって悪口を言うなとぶつかった。それゆえ、サフィは煙たがれることが多かった。それが彼女をなおさら堅く、孤高の存在としていった。唯一彼女が心を開いていたのが母親と、セインくらいか。
そんなサフィは、非嫡子とはいえ勇者の血の流れを組んでいたからか、武術、特に槍の扱いについては秘めた才能を持っていた。そのため彼女は訓練所に通うことになる。ここで鍛えられた者は国の兵士になったり、あるいは認められれば勇者にもなれる。勇者の卵と言われる者の多くがそこに通い、実際セインは勇者になった。
しかし、勇者の卵と言えど人格者であるとは限らない。サフィやセインの父親がそうではなかったのと同じように。そのような人間はサフィが一番嫌うタイプだ。彼女はよく訓練所内で衝突を起こした。当然、友達もできず孤立していく。
「姉さん、大丈夫？」
「この程度の傷、大したことない」
よく怪我をして帰ってくるサフィにセインは声をかける。サフィは笑って見せるが
「傷もそうだけど、姉さんが心配なんだよ……」
「……気にするな、私は私が正しいと思っていることをしているだけだ」
セインは口を開きかけるが何も言わない。サフィも言わんとすることは分かる。もう少し砕けても良いのではないかと。しかしそこを曲げると、自分が自分でなくなってしまうような気がする……だから曲げない。
セインもそれ以上は言わなかった。サフィの言うことも分かるし、サフィの方が正しいと思っているからだ。だからセインは不安を抱きつつも、話を聞くだけでそれ以上は言わない。
そして、セインの不安はかなり悪い形で的中してしまう。
サフィにいつも制裁され、正面切った試合でも勝てなかった勇者候補と言われていた男二人が共謀し、サフィを捉えて暴行したのだ。恐怖、破瓜の痛み、怒り、それでいながら抵抗できない屈辱……サフィの心は闇に支配されかけた。
そこに、次の年には訓練所に入り勇者になれると言われていたセインが現れた。状況を瞬時に理解した彼は……男達を半殺しにした。一人は再起不能なレベルであった。
セインによる救出は嬉しかったが、これは良くない。男達は、能力こそ大したことがないが親がそれなりの力を持っていて入ったような者であったので、かなり面倒なことになる。もしセインがそれで勇者になれなかったりしたら……
考えたサフィが出した答えは……男達を半殺しにしたのは自分だと名乗り出ることであった。それはサフィの初めての偽り・不正であった。
男達のしたことがしたことなので厳罰にはならなかったが、少なくともサフィは訓練所にはいられなくなり、去る事になった。我慢ならないのがセインだ。
「なんでだよ姉さん！？ 姉さんは何も悪くないじゃないか！ それに……」
「言うな、セイン……これが正しくはないけど良い手だ……だから……もう私は私ではない」
セインを守るためとはいえ、サフィは不正を働いた。自分を曲げた。それで自分が自分を許せなかった。
しかしでは後悔をしているかと言うと、それはなかった。セインを守れたのだから。幼い頃からの数少ない心を開ける弟は、将来を犠牲にしてでも自分を害している存在に怒って行動をしてくれた時に、弟以上の特別な存在になっていた。
そんな弟を守れたのならば、本望だ。もっとも、その気持ちがあるがゆえの不正であったので余計に自分が許せないのだが。
「……だからセイン。もう私を『姉さん』と呼ぶな……さらばだ、セイン。お前はお前がやりたいこと、お前が正しいと思ったことを……やっていけ」
「姉さん！」
呼ばれても返事をせずにサフィはセインに背を向けて歩き出した。
それからサフィは家も出てイルトスト王国のスラム街で、自警団などをして食いつないでいた。不正を働いたのはセインの時だけ。力と欲望が渦巻く汚らしい世界でサフィは相変わらず煙たがられながらも、その腕と厳正さで、サフィは恐れられていた。
3年後、サフィはとある勇者に、魔王討伐の一員として肩を叩かれた。
「探したよ、姉さん！」
「……人違いだ」
「はぁ……じゃあ、ダウンタウンのジャスティス、サフィ……僕たちと一緒に来てほしい。僕はそうしたいんだ」
手を差し伸べるセイン。その手をサフィは手を握った。内心、尻尾があったらちぎれんばかりに振りたい気持ちを苦笑して隠しながら。
「大丈夫だよ、サフィ姉」
「ゆっくり、ゆっくりですよー」
メープルとアンバーが語りかける。プラムやフランも一緒になって話かけた。
「こっちもゆっくりとほぐしてあげるからねー」
「大丈夫……すぐに良くなるわ」
四方を囲まれて囁かれるサフィ。いや、囲まれるを通り越して彼女の身体は四人のダークスライムに完全に包まれていた。どこまでがメープルたちの身体なのか境が分からない。そのダークスライムの海に、サフィは生まれたままの姿で埋もれていた。
サフィの身体は前衛だけあって引き締まっている。女性らしい脂肪も兼ね備えて入るが薄く、その先に引き締まった筋肉が見える。同時に彼女の胸はアンバーやメープルと比べるとかなり控えめであった。
思考能力を奪うほどの濃厚なダークスライムゼリーを飲まされた彼女の身体はすでに発情しきっていた。肌は敏感になっており、撫でられただけでゾクゾクとした快感が脊髄を通って脳へと伝わり、それはまた脊髄を降りて下半身を疼かせる。
そんな肌をスライムがくまなくつつみ、波打つようにして愛撫する。人間の手などではできない芸当にサフィは翻弄される。膣はじゅくじゅくと蜜を溜め込み、そしてどろりと外へとこぼしていく。
だが快感に脳をとろかされながらもサフィの心は堅い。メープルやアンバーがサフィの脚を撫でようとすると、ぐいっと彼女は力を込めて脚を閉じようとした。メープルとアンバーが悲しそうな顔をする。
「うん、そうだよね……怖いよね、サフィ姉」
「人間をやめるのもですけど……何があったか、私達は知っています」
サフィが訓練所を辞めることになった一件について、半殺しにされた男やその家族や訓練所は内々に処理して闇に葬り去りたかったのだが、やはりそうはならないのが世の常だ。メープルもアンバーも、その一件については大まかなことは知っていた。同じ女性として絶対許せない、その苦痛……
「だから、ちゃんと気持ちよくしてあげる」
「それでセインと気持ちよくセックスしましょう？」
「あ、あ……あああ」
セインの名前が出た時、サフィの反応があった。固く閉じようとしていた脚の抵抗が緩み、その中央の秘裂からとぷりと愛液がこぼれた。その反応ににんまりと双子のダークスライムは笑う。
「知っているよサフィ姉。サフィ姉もお兄ちゃんに惹かれていたこと」
「セインの前を去ったのは、腹違いとは言え実の姉弟だと結ばれないから踏ん切りをつけるため、って言うのもありましたよね？」
「うぅう……」
否定はできない。セインをかばおうと思ったあの日から、今まで清くあろうとしていた自分にも黒黒とした感情があることをサフィは思い知らされた。本来なら許されないであろうことでも特別な存在となった弟をモノにしたい気持ち……その気持ちがあるがゆえにセインを守るために不正を行おうとする気持ち……
だから彼女は逃げたのだ。すでにセインをかばうという不正を犯したが、それ以上犯すと本当にこれまでの自分の根底が、正義が覆されてめちゃくちゃになってしまう。
「あなた、いろいろ堅すぎるのよ」
フランがサフィの太ももや尻の膨らみをさすりながら言う。プラムが反対側から同じように下半身を攻めながら続けた。
「真面目なのはいいことだけどー……それじゃだけじゃダメだと思うよ？」
「あっ！あんっ！ や、やめ……！」
とうとう嬌声を堪えられなくなったサフィの身体がびくんっと跳ね上がる。メープルとアンバーがそれぞれ左右からサフィの小ぶりな胸を愛撫していた。スライムに包まれているサフィの胸は傍から見ると、ひとりでにむにゅむにゅと変形しているように見える。それだけでなく、粘体全体でちゅぱちゅぱと乳首や胸の膨らみをしゃぶっているように攻め立てていた。
全身を優しくしかし激しく愛撫されるサフィはあの時に感じなかったもの、快感と言うものを味わわされる。そしてその先のことが近づいてきた。
「や、やめろっ！ やめてくれ！ 何か……んあっ！ 何か来る！」
未知の感覚にサフィは恐怖する。少し前に味わった、高いところから落とされるような、鍛えた身体でもどうしようもない不安が彼女に寄っていた。
「それはイキそうになっているんだよ、サフィ姉。大丈夫、すっごく気持ちいいから」
「大丈夫ですよ、サフィさん。何も恐れることはありません。そのまま心も身体も委ねて……」
自慰の経験があるメープルと、少し前に何度もその感覚を味わわされたアンバーが、落ち着くようにサフィにささやきかけた。その間も容赦なく人外の愛撫がなさせる。
身体の中で膨れ上がっていく快感。男を知っていても快感を伴っていなかった経験ゆえ、サフィはその快感に抗う術を知らなかった。
「くぅううん……ッ！！」
びくんっと一際大きくサフィの身体が跳ね上がる。彼女の秘所から大量の液体が溢れ出し、紫色の粘体をうっすらと白く染めた。
「ふふっ、お堅い女剣士がこんな可愛らしい声を上げてイクなんて意外ね」
サフィのアクメをフランが笑うが、サフィにそれを気にする余裕はない。ぐったりと身体をダークスライムの海に沈ませている。ふにゃふにゃと身体に力が入らない。
「ふふふ〜、ほぐれてきたね〜♪ でももっととろとろになってもらわないとね〜♪」
プラムは笑ってメープルとアンバーに目配せをした。彼女たちはそれぞれ妖しい笑みを浮かべると、さらにサフィに顔を寄せた。
「次はここをもっととろとろにしないとね」
メープルの言葉とともにグッと股間に圧迫感をサフィは覚える。反射的に脚を閉じようとするが力が入らない。気持ちを察したのか、アンバーがささやく。
「大丈夫ですよ……セインを迎え入れるときのために、固くならないようにしましょうね……」
「あ……」
セインの名前が出て再びサフィの抵抗が緩む。いや、それ以上だ。今、アンバーはなんと言ったか。セインを迎え入れる？ つまり、自分とセインが交わるということか？
過去の陵辱を、本当に交わりたかった人との交接で塗りつぶす。本来では許されないが一番求めている姉と弟の性交で……サフィの心臓がどくんと拍打つ。それに押し出されるようにしてまた愛液が漏れた。
「うふふ……想像したらもっと濡れてきましたでしょう？」
メープルと同じように股間に自分の身体の一部を押し当てながらアンバーが微笑む。べっちょりと股間に張り付く張り付くメープルとアンバーのスライム。クリトリスも陰唇も、膣口も覆っている。その膣口の圧迫がさらに強くなった。
「それじゃ、ナカをとろとろにするためにちょっと入れるよ……」
「待って……！ あ、あ、ああああ……！」
人生で二度目の膣への挿入。しかし苦痛だけだった初めてのときより遥かに気持ちよかった。少し圧迫感がキツイが、それもまたマッサージのような心地よさもあった。
「気持ちいいでしょう？」
「セインのちんちんだともっと気持ちいいと思うよ？」
「あぁん！ あっ、うあっ、あああっ！」
フランとプラムが全身への愛撫を再開しながら囁く。先ほどまでよりも強い快感に、思わずサフィは返事もろくにできず。
（気持ちいい……）
サフィはもうすっかり快楽の虜になっていた。気持ちいいことしか考えられない。もっと気持ちよくなりたい。期待に答えるように、ダークスライムたちは笑って愛撫を続ける。
（スライムでもこんなに気持ちいいのに……もし本当にセインと交わったら）
思わずサフィは想像してしまう。自分の弟が昔のように「姉さん」と呼びながら、自分を組み伏せて挿入しようとする想像、あるいは自分に組み伏せられてあえいでいる想像……その想像だけでまたイッてしまった。
ぐんにゃりと脱力するサフィ。しかしその間もスライムたちの攻めは止まらない。
一見、ダークスライムたちは動いていない。しかし胸はひとりでにむにゅむにゅと変形して揉みしだかれており、膣内に潜り込んでいるメープルのスライムがにゅるにゅると膣内を出入りしてかき回し、アンバーのスライムがぷるぷると震えてクリトリスを刺激し、尻や太ももや背中を始め肌はぞわぞわと波打って刺激をしてくる。
「だめぇええッ、またイクぅうううッ！」
少し前にメープルとフランに教わった言葉が、自然と彼女の口からほとばしった。再びサフィの身体はオーガズムへと押し上げられる。そしてそこから戻って来られなかった。
「ひぃいいん！ も、やめ……」
サフィは連続で達した。やめるように懇願するが、その身体は逃げようとしない。いや、逃げられない。すでに彼女の身体はダークスライム化しつつあり、とろとろになり始めている。同時に彼女の頭にモヤがかかってくる。何も考えられなくなっていく……
『セイン……もう正しいことなんてどうでもいい……』
快感だけに染まる思考の中、最後まで残ったのは、愛しい弟の姿……
『私はお前を弟としてだけではなく、男として愛したいんだ……』
4年後、嫡子であるセインが生まれる。もっとも身近で年の近い異性としてセインはサフィに懐いたが……その頃にはサフィも物心がついており、自分がどのような存在であるかを認識していた。
子どもというのは多感なものだ。そんな多感な子どもが、自分が非嫡子であることを自覚し、自分や母親の陰口を耳にしたらどうなるだろう？ その心は穏やかではないだろう。非行に走る者もいよう。
サフィは逆に非常に堅い人間となった。自分が白い目を向けられる原因ともなっただらしない父を憎み、それに連なりあらゆる不正や不正義を許さない性格へと育った。一見、正義感のある子どもとも言えたが、同時にそれは融通の利かない頑固な性格とも言えた。
弟をいじめるような者がいたら徹底的に戦い、怪我すら負わせることもあった。遊びでルール違反をする者は徹底的に糾弾した。自分を始め悪口を言うメイドには面と向かって悪口を言うなとぶつかった。それゆえ、サフィは煙たがれることが多かった。それが彼女をなおさら堅く、孤高の存在としていった。唯一彼女が心を開いていたのが母親と、セインくらいか。
そんなサフィは、非嫡子とはいえ勇者の血の流れを組んでいたからか、武術、特に槍の扱いについては秘めた才能を持っていた。そのため彼女は訓練所に通うことになる。ここで鍛えられた者は国の兵士になったり、あるいは認められれば勇者にもなれる。勇者の卵と言われる者の多くがそこに通い、実際セインは勇者になった。
しかし、勇者の卵と言えど人格者であるとは限らない。サフィやセインの父親がそうではなかったのと同じように。そのような人間はサフィが一番嫌うタイプだ。彼女はよく訓練所内で衝突を起こした。当然、友達もできず孤立していく。
「姉さん、大丈夫？」
「この程度の傷、大したことない」
よく怪我をして帰ってくるサフィにセインは声をかける。サフィは笑って見せるが
「傷もそうだけど、姉さんが心配なんだよ……」
「……気にするな、私は私が正しいと思っていることをしているだけだ」
セインは口を開きかけるが何も言わない。サフィも言わんとすることは分かる。もう少し砕けても良いのではないかと。しかしそこを曲げると、自分が自分でなくなってしまうような気がする……だから曲げない。
セインもそれ以上は言わなかった。サフィの言うことも分かるし、サフィの方が正しいと思っているからだ。だからセインは不安を抱きつつも、話を聞くだけでそれ以上は言わない。
そして、セインの不安はかなり悪い形で的中してしまう。
サフィにいつも制裁され、正面切った試合でも勝てなかった勇者候補と言われていた男二人が共謀し、サフィを捉えて暴行したのだ。恐怖、破瓜の痛み、怒り、それでいながら抵抗できない屈辱……サフィの心は闇に支配されかけた。
そこに、次の年には訓練所に入り勇者になれると言われていたセインが現れた。状況を瞬時に理解した彼は……男達を半殺しにした。一人は再起不能なレベルであった。
セインによる救出は嬉しかったが、これは良くない。男達は、能力こそ大したことがないが親がそれなりの力を持っていて入ったような者であったので、かなり面倒なことになる。もしセインがそれで勇者になれなかったりしたら……
考えたサフィが出した答えは……男達を半殺しにしたのは自分だと名乗り出ることであった。それはサフィの初めての偽り・不正であった。
男達のしたことがしたことなので厳罰にはならなかったが、少なくともサフィは訓練所にはいられなくなり、去る事になった。我慢ならないのがセインだ。
「なんでだよ姉さん！？ 姉さんは何も悪くないじゃないか！ それに……」
「言うな、セイン……これが正しくはないけど良い手だ……だから……もう私は私ではない」
セインを守るためとはいえ、サフィは不正を働いた。自分を曲げた。それで自分が自分を許せなかった。
しかしでは後悔をしているかと言うと、それはなかった。セインを守れたのだから。幼い頃からの数少ない心を開ける弟は、将来を犠牲にしてでも自分を害している存在に怒って行動をしてくれた時に、弟以上の特別な存在になっていた。
そんな弟を守れたのならば、本望だ。もっとも、その気持ちがあるがゆえの不正であったので余計に自分が許せないのだが。
「……だからセイン。もう私を『姉さん』と呼ぶな……さらばだ、セイン。お前はお前がやりたいこと、お前が正しいと思ったことを……やっていけ」
「姉さん！」
呼ばれても返事をせずにサフィはセインに背を向けて歩き出した。
それからサフィは家も出てイルトスト王国のスラム街で、自警団などをして食いつないでいた。不正を働いたのはセインの時だけ。力と欲望が渦巻く汚らしい世界でサフィは相変わらず煙たがられながらも、その腕と厳正さで、サフィは恐れられていた。
3年後、サフィはとある勇者に、魔王討伐の一員として肩を叩かれた。
「探したよ、姉さん！」
「……人違いだ」
「はぁ……じゃあ、ダウンタウンのジャスティス、サフィ……僕たちと一緒に来てほしい。僕はそうしたいんだ」
手を差し伸べるセイン。その手をサフィは手を握った。内心、尻尾があったらちぎれんばかりに振りたい気持ちを苦笑して隠しながら。
「大丈夫だよ、サフィ姉」
「ゆっくり、ゆっくりですよー」
メープルとアンバーが語りかける。プラムやフランも一緒になって話かけた。
「こっちもゆっくりとほぐしてあげるからねー」
「大丈夫……すぐに良くなるわ」
四方を囲まれて囁かれるサフィ。いや、囲まれるを通り越して彼女の身体は四人のダークスライムに完全に包まれていた。どこまでがメープルたちの身体なのか境が分からない。そのダークスライムの海に、サフィは生まれたままの姿で埋もれていた。
サフィの身体は前衛だけあって引き締まっている。女性らしい脂肪も兼ね備えて入るが薄く、その先に引き締まった筋肉が見える。同時に彼女の胸はアンバーやメープルと比べるとかなり控えめであった。
思考能力を奪うほどの濃厚なダークスライムゼリーを飲まされた彼女の身体はすでに発情しきっていた。肌は敏感になっており、撫でられただけでゾクゾクとした快感が脊髄を通って脳へと伝わり、それはまた脊髄を降りて下半身を疼かせる。
そんな肌をスライムがくまなくつつみ、波打つようにして愛撫する。人間の手などではできない芸当にサフィは翻弄される。膣はじゅくじゅくと蜜を溜め込み、そしてどろりと外へとこぼしていく。
だが快感に脳をとろかされながらもサフィの心は堅い。メープルやアンバーがサフィの脚を撫でようとすると、ぐいっと彼女は力を込めて脚を閉じようとした。メープルとアンバーが悲しそうな顔をする。
「うん、そうだよね……怖いよね、サフィ姉」
「人間をやめるのもですけど……何があったか、私達は知っています」
サフィが訓練所を辞めることになった一件について、半殺しにされた男やその家族や訓練所は内々に処理して闇に葬り去りたかったのだが、やはりそうはならないのが世の常だ。メープルもアンバーも、その一件については大まかなことは知っていた。同じ女性として絶対許せない、その苦痛……
「だから、ちゃんと気持ちよくしてあげる」
「それでセインと気持ちよくセックスしましょう？」
「あ、あ……あああ」
セインの名前が出た時、サフィの反応があった。固く閉じようとしていた脚の抵抗が緩み、その中央の秘裂からとぷりと愛液がこぼれた。その反応ににんまりと双子のダークスライムは笑う。
「知っているよサフィ姉。サフィ姉もお兄ちゃんに惹かれていたこと」
「セインの前を去ったのは、腹違いとは言え実の姉弟だと結ばれないから踏ん切りをつけるため、って言うのもありましたよね？」
「うぅう……」
否定はできない。セインをかばおうと思ったあの日から、今まで清くあろうとしていた自分にも黒黒とした感情があることをサフィは思い知らされた。本来なら許されないであろうことでも特別な存在となった弟をモノにしたい気持ち……その気持ちがあるがゆえにセインを守るために不正を行おうとする気持ち……
だから彼女は逃げたのだ。すでにセインをかばうという不正を犯したが、それ以上犯すと本当にこれまでの自分の根底が、正義が覆されてめちゃくちゃになってしまう。
「あなた、いろいろ堅すぎるのよ」
フランがサフィの太ももや尻の膨らみをさすりながら言う。プラムが反対側から同じように下半身を攻めながら続けた。
「真面目なのはいいことだけどー……それじゃだけじゃダメだと思うよ？」
「あっ！あんっ！ や、やめ……！」
とうとう嬌声を堪えられなくなったサフィの身体がびくんっと跳ね上がる。メープルとアンバーがそれぞれ左右からサフィの小ぶりな胸を愛撫していた。スライムに包まれているサフィの胸は傍から見ると、ひとりでにむにゅむにゅと変形しているように見える。それだけでなく、粘体全体でちゅぱちゅぱと乳首や胸の膨らみをしゃぶっているように攻め立てていた。
全身を優しくしかし激しく愛撫されるサフィはあの時に感じなかったもの、快感と言うものを味わわされる。そしてその先のことが近づいてきた。
「や、やめろっ！ やめてくれ！ 何か……んあっ！ 何か来る！」
未知の感覚にサフィは恐怖する。少し前に味わった、高いところから落とされるような、鍛えた身体でもどうしようもない不安が彼女に寄っていた。
「それはイキそうになっているんだよ、サフィ姉。大丈夫、すっごく気持ちいいから」
「大丈夫ですよ、サフィさん。何も恐れることはありません。そのまま心も身体も委ねて……」
自慰の経験があるメープルと、少し前に何度もその感覚を味わわされたアンバーが、落ち着くようにサフィにささやきかけた。その間も容赦なく人外の愛撫がなさせる。
身体の中で膨れ上がっていく快感。男を知っていても快感を伴っていなかった経験ゆえ、サフィはその快感に抗う術を知らなかった。
「くぅううん……ッ！！」
びくんっと一際大きくサフィの身体が跳ね上がる。彼女の秘所から大量の液体が溢れ出し、紫色の粘体をうっすらと白く染めた。
「ふふっ、お堅い女剣士がこんな可愛らしい声を上げてイクなんて意外ね」
サフィのアクメをフランが笑うが、サフィにそれを気にする余裕はない。ぐったりと身体をダークスライムの海に沈ませている。ふにゃふにゃと身体に力が入らない。
「ふふふ〜、ほぐれてきたね〜♪ でももっととろとろになってもらわないとね〜♪」
プラムは笑ってメープルとアンバーに目配せをした。彼女たちはそれぞれ妖しい笑みを浮かべると、さらにサフィに顔を寄せた。
「次はここをもっととろとろにしないとね」
メープルの言葉とともにグッと股間に圧迫感をサフィは覚える。反射的に脚を閉じようとするが力が入らない。気持ちを察したのか、アンバーがささやく。
「大丈夫ですよ……セインを迎え入れるときのために、固くならないようにしましょうね……」
「あ……」
セインの名前が出て再びサフィの抵抗が緩む。いや、それ以上だ。今、アンバーはなんと言ったか。セインを迎え入れる？ つまり、自分とセインが交わるということか？
過去の陵辱を、本当に交わりたかった人との交接で塗りつぶす。本来では許されないが一番求めている姉と弟の性交で……サフィの心臓がどくんと拍打つ。それに押し出されるようにしてまた愛液が漏れた。
「うふふ……想像したらもっと濡れてきましたでしょう？」
メープルと同じように股間に自分の身体の一部を押し当てながらアンバーが微笑む。べっちょりと股間に張り付く張り付くメープルとアンバーのスライム。クリトリスも陰唇も、膣口も覆っている。その膣口の圧迫がさらに強くなった。
「それじゃ、ナカをとろとろにするためにちょっと入れるよ……」
「待って……！ あ、あ、ああああ……！」
人生で二度目の膣への挿入。しかし苦痛だけだった初めてのときより遥かに気持ちよかった。少し圧迫感がキツイが、それもまたマッサージのような心地よさもあった。
「気持ちいいでしょう？」
「セインのちんちんだともっと気持ちいいと思うよ？」
「あぁん！ あっ、うあっ、あああっ！」
フランとプラムが全身への愛撫を再開しながら囁く。先ほどまでよりも強い快感に、思わずサフィは返事もろくにできず。
（気持ちいい……）
サフィはもうすっかり快楽の虜になっていた。気持ちいいことしか考えられない。もっと気持ちよくなりたい。期待に答えるように、ダークスライムたちは笑って愛撫を続ける。
（スライムでもこんなに気持ちいいのに……もし本当にセインと交わったら）
思わずサフィは想像してしまう。自分の弟が昔のように「姉さん」と呼びながら、自分を組み伏せて挿入しようとする想像、あるいは自分に組み伏せられてあえいでいる想像……その想像だけでまたイッてしまった。
ぐんにゃりと脱力するサフィ。しかしその間もスライムたちの攻めは止まらない。
一見、ダークスライムたちは動いていない。しかし胸はひとりでにむにゅむにゅと変形して揉みしだかれており、膣内に潜り込んでいるメープルのスライムがにゅるにゅると膣内を出入りしてかき回し、アンバーのスライムがぷるぷると震えてクリトリスを刺激し、尻や太ももや背中を始め肌はぞわぞわと波打って刺激をしてくる。
「だめぇええッ、またイクぅうううッ！」
少し前にメープルとフランに教わった言葉が、自然と彼女の口からほとばしった。再びサフィの身体はオーガズムへと押し上げられる。そしてそこから戻って来られなかった。
「ひぃいいん！ も、やめ……」
サフィは連続で達した。やめるように懇願するが、その身体は逃げようとしない。いや、逃げられない。すでに彼女の身体はダークスライム化しつつあり、とろとろになり始めている。同時に彼女の頭にモヤがかかってくる。何も考えられなくなっていく……
『セイン……もう正しいことなんてどうでもいい……』
快感だけに染まる思考の中、最後まで残ったのは、愛しい弟の姿……
『私はお前を弟としてだけではなく、男として愛したいんだ……』
22/04/10 22:05更新 / 三鯖アキラ（旧：沈黙の天使）
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