連載小説
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第ニ章 アンバー
 アンバーとメープルはイルトスト王国のそれなりに名の知れた魔術師の家に双子として生を受けた。両親ともに優秀な魔法使いゆえ、アンバーもメープルもさぞ強力な魔法使いになるだろうと期待されていた。
 確かに数刻遅れて生まれたメープルは優秀な魔法使いに育った。しかしアンバーは……勉学こそできたが、魔術に関してはあまり優秀とは言えなかった。両親にも失望され、周囲からも陰口を叩かれた。
 数少ない味方が幼馴染で勇者候補であったセインだった。双子の妹のメープルも味方ではいてくれていたのだが、優秀なメープルはアンバーにとって眩しすぎて接しづらかったのだ。
 両親に邪険に扱われ、家の使用人に嘲笑われ、級友にいじめられ、辛くなって我慢できなくなったとき、アンバーはいつも自分の屋敷の裏手にある林に逃げていた。それに付き添ってくれたのがセインだった。
「なんでわたしだけこんな目に遭わないといけないのでしょうか?」
セインは何も言わずにただ黙って聞いてくれた。
「私だってメープルと同じように魔法を使いたいです……」
「そうか」
「でも、いくら練習したってダメ……ダメなんです! もう、どうしたらいいのか分からないです!」
 普段の落ち着いた調子を保てない悲痛なアンバーの悲鳴。
「そうだね……」
「もう嫌です! なんでわたしばっかり辛い思いをしなくちゃいけないのですか!?」
 そう叫んでわんわん泣くアンバーをセインは抱き寄せて頭を撫でた。そして落ち着いたあたりでメープルが迎えに来る。この流れがお約束だった。
 最終的にアンバーは家を飛び出して聖職者にでもなろうかと考えて主神教団の教会を訪ねた。そこでアンバーは魔術には適正はないが、それを補って余るように神聖なる魔法に関しては優れていることが分かった。
 世を捨てるというなげやりな気持ちではなく、神聖魔法を物にして人の役に立つ……その気持ちでアンバーは改めて主神教団の門を叩いたのであった。すぐに彼女は頭角を現し、首席で学校を卒業できた。その彼女を自分のことのように喜んでくれたのが、双子の妹のメープルと、やはりセインであった。
 その頃にはセインも勇者候補から勇者へと認められつつあり、魔王討伐の旅に準備しようとしているところであった。
「よかったら、アンバーにも一緒に来てほしいんだけど……ちゃんと守るからさ」
 優秀な妹のメープルも眩しかったが、手を差し伸べるセインも眩しかった。その眩しさはとても心地よく、迷わずアンバーはその手を握ったのであった……
「ふふっ、本当は私から声をかけたかったのに、先を越されてしまいましたね……」



「あーらら、みんなお姉さんを置いて逃げちゃったよ? 良かったの?」
 セインやメープル、サフィが逃げて後にはアンバーと、彼女を挟み撃ちにして包む二人のダークスライムが残った。
「貴女達こそいいのですか? 女の私には用はないでしょう。離してください」
 意地悪そうに言うプラムにアンバーは冷たく言う。彼女の中では勝算があった。魔物娘は番となる男を求めて襲いかかってくる存在。女であれば興味はないはず。だからこそサフィもメープルも、そして自分も男のセインをかばうようにして前に出て戦い、そして今回、レスクチェンジでセインと入れ替わりでわざと捕まった。すぐにダークスライムたちは自分を捨て置き、セインを追跡するだろうとアンバーは踏んでいた。
 しかし、二人のダークスライムは顔を見合わせてクスクスと笑い出した。獲物を逃して狼狽する様子は見受けられない。
「っ、何がおかしいのですか?」
 強気に訊ねるアンバー。しかし、目の前で慌てることなく笑っているダークスライムの不気味さに声が震えていた。
「確かに、一番欲しいのはあのお兄さんなんだけどね〜」
「女に用がないというのは間違いね」
「神官のお姉さん、魔物娘の勉強はちょっとしたみたいだけどぉ……」
「私達ダークスライムのことは勉強不足だったみたいね?」
「……どういうことですか」
 努めて冷静に訊ねるアンバーだが、冷や汗が止まらない。自分たちはなにか盛大な勘違いをしていたのではないだろうか。
 そんなアンバーにダークスライムたちは答えを明かす。
「私達ダークスライムはね、人間の女性を襲ってダークスライムに変える能力があるんだよ♡」
「たっぷりと気持ちよくして、心も身体もとろとろにして、本当にとろとろになってダークスライムに……♡」
 心臓を冷たい手で鷲掴みにされたような気分だった。自分が襲われるばかりか、変えられる? 人間をやめて、このみだらな魔物娘に……!?
 逃したセインたちに助けを求めるべく声をあげようとしたアンバーであったが、それより先にプラムがその空いた口に自らの触手をねじ込んだ。甘い、ぶどうのような味が口いっぱいに広がる。
「んんっ!? んんんんっ!?」
 吐き出そうにも口いっぱいにねじ込まれているので叶わない。そのまま飲み込まざるを得ない。胃に落ちたスライムの一部はすぐに吸収され、身体全身へと回り、熱くする。徐々にアンバーのもがく力が弱くなっていった。
「そぉれ♪」
 プラムのスライム触手がアンバーの神官服の襟元から張り込んで強引に服を破く。やや幼い顔立ちとは裏腹に、たわわに実った乳房がぷるんと飛び出した。プラムが目を輝かせる。
「わぁ、おっきい♪」
「神官服だと分からなかったけど、立派ね」
「……!」
 自分の身体がいやらしいと言われた気分になり、アンバーは頬を赤く染める。しかし、彼女が頬を赤らめた理由は他にもあった。
「こっちはどうなっているかしら? そぅれ!」
 アンバーが気づいて抵抗するより先にフランがスカートを、さらに下着を一息に剥ぎ取った。とうとうアンバーが身につけているものは聖職者であることを示す聖印と帽子だけになってしまう。
 そしてフランがいう"こっち"に、ダークスライムの手が這わされる。すなわち、アンバーの性器……そこはフランが触れる前からダークスライムの粘液とはまた違った液体でぬめっていた。割れ目を静かにゆっくりとなぞりながらフランが笑う。
「あらら? もうこんなに濡れているの? 期待していたのかしら? やっぱり聖職者って意外とエッチなものよね」
「ち、ちがう……! 私はそんな……!」
 アンバーは否定するが、その言葉には力がない。男を知らないし自分を慰めた経験もないアンバーだが、それでも自分が今どういう状況に置かれているかくらいは分かるのだ。今の状況が聖職者にとってふさわしくないことを。
 だから彼女は必死になって否定したのだが……
「ふーん?」
 フランはわざとらしく首を傾げてみせる。
「でも、ここはそうは言っていないわよ? だらしなーくよだれみたいにエッチなお汁がぽたぽたと……」
「うわー、本当だぁ♪」
 プラムまで愛撫に加わってきた。フランは割れ目をゆっくりとなぞる程度であったがプラムは入り口に少しだけ指を入れてかき混ぜてくる。くちゅくちゅと卑猥な水音がたった。
 自慰すら知らない少女であるが、彼女の本能は理解している。これは快感なのだと。それは今まで感じていたものとは全く違う種類のものだったが、確かに快楽であった。
(ダメなのにぃっ! こんな魔物なんかの手で気持ちよくなってるなんてぇ!!)
 先程まではあんなにも嫌だったはずなのに、今は触ってほしいと思ってしまう。もっと激しく弄ってくれればどんなに気持ちいいだろう……。そんな思いを振り払うように頭を振ったアンバーだったが、それを見透かしたかのようにフランが耳元で囁いた。
「もっと気持ちよくなりたいでしょう? 魔物になればもっと気持ちよくなれるわよ……」
「だめぇ……私はセインと一緒に……」
 言いかけて慌てて口を噤んだが遅かった。そしてプラムとフランは聞き逃していなかった。お互いに顔をキョトンとした顔で見たあと、ニンマリと笑う。
「へえぇ、神官のお姉さんもあのお兄さんに気があったんだぁ?」
「ねえねえ、詳しく聞かせてくれないかしら?
 この思いは胸の奥にしまうつもりだった……アンバーはセインに特別な感情を抱いていた。何度も裏山で心を救ってもらった時から……
 そしてこれ以上はしゃべるつもりはない。アンバーは固く口を閉じた。そんなアンバーにプラムとフランはますます笑みを広がる。
「ふぅん。黙っちゃうんだ? じゃあ……」
「気持ち良くなって素直になってもらおうかしら?」
「えっ? あ、ふあああんっ!」
 閉じていた口から伸びやかな嬌声が上がった。プラムが後ろからアンバーに覆いかぶさるようにして胸を手で多い、フランが下からアンバーを包み込み、さらにその濡れた股間もスライムで覆う。そして変化自在なスライムはその身体を流動させてアンバーの全身を愛撫し始めたのだ。
「やめっ、やめてください! これダ……メ……んんんんっ!」
 先程の膣への愛撫が児戯と思い知らされる強烈な刺激だった。コリコリに勃起した乳首とクリトリスがぬるぬると撫でられる。秘裂からは止めどなく愛液が流れ出てスライムによって吸い取られていった。
「へへーん、気持ちいいでしょう?」
「こ、こんなことに……私は負けません……!」
「あらら、意地を張っちゃうのかしら? ほぉら、これだけで……」
「んひゃぁああ!?」
 クリトリスを軽く転がされただけで強がっていたアンバーの口から喜びの悲鳴が上がり、強気な言葉が紡ぎ出せなくなる。
「まずは一回くらいイッてもらおうかしら?」
「ああああっ! ダメっ、だめぇえ!」
 首を激しく振り、ダークスライムの愛撫から逃れようとするアンバー。しかし粘体の身体はしっかりとアンバーの身体を包み込んでおり、逃さない。
 大きな胸をこね回され、太ももを撫で回され、膣口とクリトリスをくちゅくちゅといじられ……
「やああっ! 何か来るっ! 来ちゃいます!」
 高いところからぶら下げられているような不安定感がアンバーを襲う。しかしそれは恐怖と同時に、大きな期待を彼女に抱かせていた。追い詰めたことを確信した二人のダークスライムはニヤリと笑う。
「それがイクってことだよ。とっても気持ちいいよぉ〜♡」
「ということでイッちゃいなさい!」
 変化自在なスライムの身体はキュッと、口を使ってもいないのにアンバーの乳首とクリトリスを吸い上げる。その刺激で、アンバーは達した。ダークスライムに包まれたまま、身体を弓なりに反らせる。
 絶頂後の身体は常温下に置いたバターのように柔らかく、力が入らない。
「気持ちよかったでしょ〜?」
「はぁ……はあ……だ、誰が……」
 ぐったりと背後のプラムに身体を預けるアンバーと、そのアンバーの耳元にささやくプラム。アンバーの未だに強がる姿勢にプラムとフランは感心しつつも苦笑する。
「まだそんなこと言える気力あるんだ?」
「これは本格的にとろとろにしなきゃダメみたいね」
「え……」
 まだ本気を出していなかったのかとアンバーは恐怖を覚える。そしてその先のことを考えて背筋が寒くなった。まさか、本格的な陵辱を……つまり自分の処女を奪うつもりではないのかと。必死に脚を寄せようとする。
「ふふっ、大丈夫よ。あなたの初めてはあのお兄さんのためにとっておいてあげる」
「サービスでファーストキスもとっておいてあげる〜」
 しかし、アンバーに人間をやめさせることは彼女達の中で決定事項だ。
 オーガズムの余韻まだ冷めやらぬ身体に再び、人外の愛撫が施される。一度絶頂しても再び燃え上がるのが女の身体だ。
「やっ、やぁあああ! またっ、またっ!」
「あれれ? またイッちゃいそう? さっきまでの威勢はどこ行ったのかな?」
「何回もイッていいからね、うふふ……さあ、とろとろになりましょう?」
 ダークスライムの愛撫がさらに激しくなる。それでいながら、宣言どおり、膣内に挿入せず、入り口をほぐし撫でるだけにとどめていた。
 悲鳴を上げながらアンバーはその愛撫から逃げようと腰を左右にゆする。だがもはや男を誘っているようにしか見えない。そして下半身の愛撫から逃れられたとしても、胸の愛撫からは逃げられない。
「んぁあああああっ!」
 びくんとアンバーの身体が跳ね、痙攣し、今度はぐんにゃりと前側に倒れ込んだ。フランがいたため倒れ伏すことはなかったが、いなかったらそのまま倒れてしまうくらい、身体に力が入らない。
 そのアンバーに間髪入れずにプラムとフランは愛撫を続ける。
「らめっ、らめぇえ……おかしくなりましゅ……またイッちゃいましゅ……」
「おおっ? 早速『イク』って言葉を覚えたね。さすが勉強熱心な神官さん♪」
「おかしくなっていいわよ。主神の教えも魔法も全部忘れて、気持ちいいことと……彼のことだけを考えましょ?」
 強烈な快感を叩き込まれて桃色に染まり、とろけはじめたアンバーの脳裏に、セインの姿が浮かび上がってくる。
『ああ、セイン……』
 辛いときにそばにいてくれたセイン、自分を守ってくれると言ったセイン、メープルにも優しく自分にも優しくしてくれたセイン、セイン、セイン……
 アンバーの腰が再び揺れる。それは今度は快感から逃れるものではなく、切なさゆえのものであった。膣奥がうずく。聖職者として恥ずべきことがないよう清く禁欲的に生きてきたアンバーでも分かる。セインとつながって思いっきり奥を突いてほしい……!
「…〜〜〜ッ♡」
 ダークスライムの愛撫に加え、想像だけで達してしまった。何度も。主神の教えに反することでも止められない。
「やっと素直になってきたわね」
「さあ、お固いのはやめてもっととろとろになろうねぇ♪」
 フランとプラムのささやき声が子守唄のように聞こえる。視界が暗くなっていき、身体に力が入らなくなっていった。考えるのも億劫になってきたが、そんな中でもセインの眩しい笑顔だけははっきりと感じられる。
『セイン……』
 意識を失い人間をやめる直前にアンバーが彼に思ったのは、勇者の仲間として並ぶことができなくなる謝罪の言葉ではなく……
『今度は私から誘う番ですからね?』
 彼との交合を望む魔物の言葉であった。
22/03/20 22:00更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
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■作者メッセージ
 はい、そんなわけで一番手は女神官のアンバーさんでした。
 ヒロインとして考えついたのは実は最後の子です。ただ、背負わせる過去に関しては思いついたらそれなりに早く考えつきました。ここからメープルとの嫉妬と愛憎がうずまくどろどろを……とやるのが王道なのでしょうが、私はそこまでビターにできないので、こんな感じになりました。いかがだったでしょうか? オカズになりましたら幸いです。
 さて、一人が仆れましたが次は誰が捕まるのか!? 次回はエロシーンなしの章ですが、お楽しみにしていただけましたら幸いです。

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