うひゃらひゃほーい!
魔物が魔物娘の姿に変わり、冒険者という職業は危険性がグーンと減った。少なくとも「魔物に殺される」「魔物に食われる」の二つの死因がなくなったことは非常に大きい。即死級の罠さえなんとかすれば、冒険で命を落とすことは少なくなった。
よって、冒険という仕事は旧世代と比べて大きく変わった。もちろん、昔からある遺跡の調査などは今も行われている。だが、魔物娘や男たちが、相手を求めて冒険をする、あるいは遺跡などの謎解きを楽しむと言った要素が加わった。もちろん、一攫千金を夢見る人間の冒険者も少なくはないのだが。
今日も今日とて、とある小さな遺跡に三人組の冒険者が入り込んでいた。人間の男二人組と、魔物化したエルフだ。うち、軽装な革鎧で身を固め、腰に短剣を佩いている男とエルフは手を組んで歩いている。恋人同士なのだ。一方、傷だらけの金属鎧で身を固めている男は油断なく、腰の大剣に手をかけて周囲を見渡している。どこから襲撃者が現れても、罠があっても対処できるように。だが、襲撃者はいないし、罠はすべて革鎧の男やエルフが先に見つけてしまう。男は密偵(スカウト)、エルフはその寿命ゆえ知識も豊富で場数も踏んでいる。前衛としてひたすら剣を奮っている彼とは、専門分野が違うというものだ。それがより、彼を焦らせる。
「おいおいウォーレン、そう気張るなよ。帰るまでが冒険なんだぜ。そんなんだと帰る途中でバテるぞ?」
「……分かってるよチャンク」
軽い調子で言う革鎧の男に、ウォーレンと呼ばれた金属鎧の男は、鎧と同様に重たい口調で応えた。事情を知るエルフ、ライマは軽く眉を寄せた。
恋人、チャンクの言うことは最もだ。だいたい、ウォーレンは帰って金属鎧を脱ぐと疲労困憊でベッドに突っ伏してすぐ寝てしまう。金銭はともかく、肉体的にも精神的にも余裕のない生活だ。だが、彼をここまで駆り立てるものがあった。
ウォーレンの故郷は宗教国家、イルトスト王国の辺鄙な集落にある。人通りも少なく、物も届かない不便な場所だ。そんな集落のとある家で、ウォーレンは四人兄弟の長男として生まれた。生活は苦しかった。集落では当然仕事が少なく、その仕事をするべきであろう父は酒浸りの生活、母は過労でこの世を去った。母を失ってから貧しくなったウォーレンの家はより生活しづらくなり、ウォーレンの直下の弟と妹も夭折した。残るは病弱な末の妹だけ……父が"急死"してから、ウォーレンは病弱な妹のために故郷を飛び出して冒険者になったのであった。
斧を振るっており力もあったウォーレンは前衛として適していたが、戦いなれているわけではなかった。それゆえに生傷が耐えなかった。金属鎧の下の身体は傷だらけだ。彼が金属鎧を着ているのは、敵の攻撃を避けずに受けることが前提だからである。もっとも、妹の治療費のために金を稼ぎたいと思っていたウォーレンはその金属鎧すら買うのを当初はためらっていたのだが。もはや腐れ縁となったチャンクが強く奨めたために今の中古の鎧を使っている。
この事情を知っているライマはあまりウォーレンに気を抜くように言えなかった。今も彼の心の中には故郷の妹の存在があり、早く金を稼いで帰らねば、という焦りがある。
ウォーレンの焦りをよそに遺跡探索は順調に進む。トラップを越え、謎を解き、一行は遺跡の最深部に到達する。そこではなんとかウォーレンも活躍することができた。四方八方から転がってくる樽を破壊して一定時間耐えきり、自分の身を守る物であった。
遺跡の試練をすべて乗り越え、その褒美とも言うべき宝物庫の前に一行はたどり着いた。いくら、前時代と調子が変わったとは言え、仕事は手を抜かない。チャンクが仕掛けがないか慎重に扉を調べる。ライマも魔力がないか、目を閉じて瞑想をする。だが首を振った。
「宝物庫の扉とその周辺の壁は魔力を阻害する物で作られているわ。この先はどうなっているか分からない」
「だけど仕掛けはなさそうだぜ。開けて入ろうか?」
「……そうするしかあるまいよ」
二人の結果を聞いて、手持ち無沙汰だったウォーレンはぽつりと答えた。
押し黙りながら、チャンクは宝物庫の扉を開く。途端に一行の視界に飛び込んで来たのは……さんさんと輝く金貨の山や、無造作に転がっている宝玉、豪勢な装飾……まさに宝の山だ!
「おお、コイツはすごいな」
「これで故郷のクララも……!」
男どもは目を輝かせるが、ライマは眉を寄せている。何か違和感がある。何か良くない予感が……
その何かの答えを出す前に、駆け出した者がいた。金貨の山を目にして、欲のあまり矢も盾も止まらない。もともと貧しい家の出で、病気の妹のためとは言え金銭欲が強い者……ウォーレンが金属鎧を着ているとは思えないくらいの身軽さで山へ突進する。
「うひゃらひゃほーい!!」
「……! 待ってウォーレン! それは……!」
すべてに気づいたライマの制止の声が届くより先にウォーレンが宝の山に到達していた。直後、彼女の悪い予感が当たる。宝の山が一人でにもちあがり、人の形を形成する。
ライマが止まるように言った理由……それは、宝の山の一部がクリーピングコインという魔物娘だからだ。この魔物娘は宝箱や壺と同様、古から冒険者の目を引きやすい者、金貨に擬態して獲物を待つ魔物の一種だ。前時代では気づかずに飛びついた冒険者に火を浴びせる。哀れ火だるまになり苦しみぬいた冒険者は後を断たなかったったものだ。
では、新時代となりクリーピングコインはどうなったか? クリーピングコインもまた、魔物"娘"となった。
金貨の山は人の形を成し、それはさらに明確に女の姿へとなっていく。胸元ではその辺に転がっている宝玉と同様に丸く大きな膨らみが出来上がり、腰もまた同様に丸みを帯びる。それでいながら腹は砂時計のようにきゅっとくびれている。目はルビーのように赤く輝いており、なによりその身体は……黄金色に輝いていた。
「きゃうん!?」
驚きの悲鳴を上げたのは、まさかの正体を現したクリーピングコインだった。ウォーレンの突進の勢いが強すぎて、金属鎧の質量も相まって受け止めきれなかったのだ。一方のウォーレンは現れたクリーピングコインをひしっと大事そうに強く抱きしめる。
クリーピングコインは獲物がもともと持っていた金銭欲をそのまま自分への性欲・独占欲・好意に昇華することができるのだ。理由があるとは言え、ウォーレンの金銭欲は相当なものだったのだ。
倒されて驚いたクリーピングコインだったが、すぐにルビーの目がニイッと三日月型に笑った。
「にゃひひ、ちょっとびっくりしたけどこーんなに求められて、クローナ嬉しい〜♪」
下から腕を伸ばし、クローナと自らを名乗ったクリーピングコインはぎゅっとウォーレンを抱きしめ返す。だがすぐにその顔は少し不満げになった。
「でもぉ、せっかくこうして出会って一緒になるって言うのにぃ〜……その鎧は無粋すぎるよね? ちょっとどっかにやっちゃうね?」
パチンとクローナは指を鳴らす。それだけでウォーレンの鎧はまるで砂が風に浚われるかのように消えていき、下着一枚のみの姿になってしまう。魔物娘に個体差はあれど、このクローナは相当な魔力の持ち主だ。もっとも、獲物となったウォーレンにはそんなことはもはや関係ないのだが。金銭欲から昇華された、下着を押して突き上げている雄々しい勃起が、彼の今のすべてを物語っていた。
クローナがルビー色の目を輝かせる。
「うわぁ、おっきい〜♪ こんなにクローナのこと求めてくれてるのね? 嬉しい〜♪ じゃあ……いっぱいサービスしてあげるね?」
下着の上からクローナはすりすりと、ウォーレンのペニスを撫でる。クローナを抱きしめたまま、ウォーレンは物欲しげに腰を揺らした。ウォーレンの反応にクローナはにひひといたずらっぽく笑う。
「直接触って欲しい〜? いいよ〜、触って上げるぅ〜♪」
ぐいっと下着をずらすクローナ。今まで抑え込まれていたペニスがぶるんと音を立てて現れる。すかさずその肉棒をクローナは握り込み、いやらしく上下運動を始めた。
「にっひひひぃ〜♪ どのくらいザーメン出してくれるかなぁ〜? 出したら出しただけ魔界金を作って上げるからぁ〜、いっぱいザーメン出してね?」
「う、あ、あ……」
「あれれ〜? ちょっと擦っただけなのに、もうそんな声出しちゃうの〜? そんなに溜まっていたのぉ〜?」
溜まっていたかとなると溜まっていただろう。冒険から帰ってきたら、性欲も起こらないほど疲労して寝ていることが多かったのだ。チャンクとライマの嬌声を子守唄に。たまに夢精が起きたが、そんな程度で彼の身体に溜め込まれている精が枯れることなどありはしない。
そして自分で処理することなく、ましてや他者に触れたことがない性器は、敏感であった。ウォーレンの声が高ぶってくる。限界が近いことをクローナは察した。
「えー、もう出しちゃうのぉ? ちょっと弱々すぎない? ……でもいいよ♥ ぜーんぶクローナが受け止めてあげるよ♪ ほら、イッちゃえ♥」
くいっとまるで指揮者が演奏を終えるかのようにクローナは手首をひねった。それが止めとなった。ほぼ同時にウォーレンが射精する。どくどくと白濁液が肉棒からほとばしり、クローナの黄金色の肌を白く染めた。人ならざる魔物娘は、肌で受け止めた精液をじわじわと吸収していく。
「にゃひひ♪ いっぱい出したね〜♪ でもまだまだ、こんなもんじゃないよ。お兄さんをクローナの超絶テクでメロメロにしちゃうんだから♪」
一瞬、クローナの姿が崩れ、砂金のようになる。だがすぐに形を再形成する。次の瞬間にはクローナの腕はウォーレンの脚を拘束していた。その顔の目の前には、射精してなお勃起を保っているペニスが……
「いただきまぁ〜す♪ あーむっ♪」
そのペニスをためらいもなくクローナは口に収めた。そして緩やかに頭を動かす。黄金色の髪がそれに併せて揺れた。
射精直後の敏感な性器を攻められてウォーレンは悲鳴を上げる。だが、黙ってヤラれる程度の男ではない。彼の目の前にも、クローナの性器があった。脚が緩やかに広げられていて、さも誘っているかのようだ。
無遠慮にウォーレンはその股ぐらに、枕に突っ伏すかのように顔を埋めた。そしてその割れ目を舐め始める。
「きゃうん!?」
一瞬驚いて口を離したクローナだったが抵抗はしない。彼女だってそれを求めていたから。割れ目からはすぐにじわじわと愛液が滲み出し、ウォーレンの口周りを彼自身の唾液以外の液体で汚した。
「んふふ〜、舐めて舐めて〜♪ いっぱい気持ちよくしてくれたらぁ……クローナももーっと気持ちよくしてあげるね?」
そう言ってさらに腰を突き出してウォーレンにクンニリングスをさせながら、クローナはフェラチオに戻っていった。
宝物庫に二人のくぐもった嬌声と、互いの股間と口で立つびちゃびちゃという淫らな水音が、宝物庫に場違いに響く。
先に音を上げそうになったのはウォーレンだった。舌の動きが鈍くなり、ペニスがびくびくと脈打つ。
「だ〜め♪」
それを防ぐべく、クローナは口唇愛撫を中止した。ふーっと息を吹きかけて快感をと切らせないようにしつつ、おあずけをかます。
「クローナみたいなクリーピングコインにかんたんにハマっちゃうような冒険者さんにはおしおき♪ ちゃんとクローナをイカせてくれないとイカせてあげませーん♪ って、ヒャううう!」
意地悪そうに笑っていたクローナだったが、その口から嬌声が上がる。欲深き冒険者はその欲を満たすべく、その前段階の壁を乗り越えようと必死にもがく。
女身の尖りをなめころがし、溢れ出る蜜を音を立てて吸い、さらにその奥にまで舌を差し入れる。無遠慮なその攻めに、余裕そうだったクローナはあっという間に追い詰められる。
「ご、ごめん! ちょっと調子に乗ったからそれは……! あう、だめ、だめぇ! すぐイッちゃうからぁああ!」
許しを乞うも先程の突進のようにウォーレンの動きは止まらない。その勢いに突き上げられるかのようにクローナは達した。
潮を吹いてウォーレンの顔を汚すクローナ。絶頂後の快感が過ぎ去ったあとの身体は脱力し、だらりとだらしなく身体を金貨の山に投げ出す。
しかし、その一回だけで満足するような魔物娘ではない。のろのろと半身を起こした彼女は、手で自らの脚を掴み、それを引っ張って広げてみせる。中央に位置するのは今さっきオーガズムを迎えてほぐれ、だらだらとよだれを垂らしている魔物娘の柔らかで危険なアギト……
「はふぅ……ねぇ、キてぇ……♥ さっきのお預けチンポ、ちゃんとイカせてあげるからぁ……♥」
こんなふうに誘惑されて耐えられる男などいるはずがない。ましてや、クリーピングコインに魅了された男ならなおさら。
最初の勢いのようにウォーレンはクローナに覆いかぶさった。そのまま、股間の剣をクリーピングコインの肉壷に突き入れる。
「んふぁああああ♥」
「うっ!」
伸びやかな嬌声を上げるクローナに反して、ウォーレンは短い悲鳴を上げていた。ぎりぎりだったペニスは、魔物娘の極上の肉壷に入れただけで、達してしまったのだ。
彼の暴発に驚いたクローナだったが、悪い気持ちはない。ニヤニヤ笑いながら、彼の頭を撫でていたぶるように言う。
「にゃひひぃ、中出ししちゃったねぇ……魔物娘のナカに♪ もう逃さないもんね♪ これからはずっと一緒だよ……♥」
「う、うぅ……駄目だ……俺は帰って、妹に薬代を……」
射精直後、男は眠くなると同時に頭が冴える。今、一瞬だけウォーレンはクリーピングコインの魅了が解け、自分がなぜ冒険者を続けているかを思い出していた。
ウォーレンの言葉にクローナは目をパチクリさせる。そして全てを察した。
「そ、そう……そんなことがあったのね……えーっと、ちょっとちょっと、そこの二人!」
クローナは入り口に向かって声をかける。そこには事の展開に呆然としていたチャックとライマがいた。ライマはやや内股になっており、露出している太腿はなぜか濡れ光っている。
そんな二人にクローナはお願い事をする。
「この人の代わりに私の魔界金沢山持って帰って妹さんに渡してあげて! お願い!」
「え、あ、あー……引き受けたわ」
速やかに返事をしたのはライマ。魔物娘の交わりをわざわざ邪魔するのも無粋と考えたのだ。ものすごい勢いよく、クリーピングコインの魔力で作られた偽りのコイン、それでいながら本物の魔界金を、袋に詰められるだけ詰めて、後にする。残るはクリーピングコインと獲物となった哀れな冒険者のみ。
「さ、これで病気の妹さんも安心、幸せ! クローナもお兄さんも結ばれて幸せ! 落ち着いたら結婚報告のためにもお兄さんの故郷に帰りましょうねぇ。その頃には妹さんも元気になってるよ〜」
だがまずは腹ごしらえだ。乾いていた欲、性欲を満たすべく、クローナは上下入れ替わり、ウォーレンにまたがって腰を振る。彼女の動きは激しく、周囲の金貨がじゃらじゃらと音を立てた。
そして遺跡の最深部から数日は、嬌声が鳴り止まなかった。
かくして新世代になってもなお、形を変えてはいるが、クリーピングコインの犠牲になる冒険者は後を断たない。だが、その犠牲になった者はとても幸せそうであった。
少なくとも彼にとっては……
よって、冒険という仕事は旧世代と比べて大きく変わった。もちろん、昔からある遺跡の調査などは今も行われている。だが、魔物娘や男たちが、相手を求めて冒険をする、あるいは遺跡などの謎解きを楽しむと言った要素が加わった。もちろん、一攫千金を夢見る人間の冒険者も少なくはないのだが。
今日も今日とて、とある小さな遺跡に三人組の冒険者が入り込んでいた。人間の男二人組と、魔物化したエルフだ。うち、軽装な革鎧で身を固め、腰に短剣を佩いている男とエルフは手を組んで歩いている。恋人同士なのだ。一方、傷だらけの金属鎧で身を固めている男は油断なく、腰の大剣に手をかけて周囲を見渡している。どこから襲撃者が現れても、罠があっても対処できるように。だが、襲撃者はいないし、罠はすべて革鎧の男やエルフが先に見つけてしまう。男は密偵(スカウト)、エルフはその寿命ゆえ知識も豊富で場数も踏んでいる。前衛としてひたすら剣を奮っている彼とは、専門分野が違うというものだ。それがより、彼を焦らせる。
「おいおいウォーレン、そう気張るなよ。帰るまでが冒険なんだぜ。そんなんだと帰る途中でバテるぞ?」
「……分かってるよチャンク」
軽い調子で言う革鎧の男に、ウォーレンと呼ばれた金属鎧の男は、鎧と同様に重たい口調で応えた。事情を知るエルフ、ライマは軽く眉を寄せた。
恋人、チャンクの言うことは最もだ。だいたい、ウォーレンは帰って金属鎧を脱ぐと疲労困憊でベッドに突っ伏してすぐ寝てしまう。金銭はともかく、肉体的にも精神的にも余裕のない生活だ。だが、彼をここまで駆り立てるものがあった。
ウォーレンの故郷は宗教国家、イルトスト王国の辺鄙な集落にある。人通りも少なく、物も届かない不便な場所だ。そんな集落のとある家で、ウォーレンは四人兄弟の長男として生まれた。生活は苦しかった。集落では当然仕事が少なく、その仕事をするべきであろう父は酒浸りの生活、母は過労でこの世を去った。母を失ってから貧しくなったウォーレンの家はより生活しづらくなり、ウォーレンの直下の弟と妹も夭折した。残るは病弱な末の妹だけ……父が"急死"してから、ウォーレンは病弱な妹のために故郷を飛び出して冒険者になったのであった。
斧を振るっており力もあったウォーレンは前衛として適していたが、戦いなれているわけではなかった。それゆえに生傷が耐えなかった。金属鎧の下の身体は傷だらけだ。彼が金属鎧を着ているのは、敵の攻撃を避けずに受けることが前提だからである。もっとも、妹の治療費のために金を稼ぎたいと思っていたウォーレンはその金属鎧すら買うのを当初はためらっていたのだが。もはや腐れ縁となったチャンクが強く奨めたために今の中古の鎧を使っている。
この事情を知っているライマはあまりウォーレンに気を抜くように言えなかった。今も彼の心の中には故郷の妹の存在があり、早く金を稼いで帰らねば、という焦りがある。
ウォーレンの焦りをよそに遺跡探索は順調に進む。トラップを越え、謎を解き、一行は遺跡の最深部に到達する。そこではなんとかウォーレンも活躍することができた。四方八方から転がってくる樽を破壊して一定時間耐えきり、自分の身を守る物であった。
遺跡の試練をすべて乗り越え、その褒美とも言うべき宝物庫の前に一行はたどり着いた。いくら、前時代と調子が変わったとは言え、仕事は手を抜かない。チャンクが仕掛けがないか慎重に扉を調べる。ライマも魔力がないか、目を閉じて瞑想をする。だが首を振った。
「宝物庫の扉とその周辺の壁は魔力を阻害する物で作られているわ。この先はどうなっているか分からない」
「だけど仕掛けはなさそうだぜ。開けて入ろうか?」
「……そうするしかあるまいよ」
二人の結果を聞いて、手持ち無沙汰だったウォーレンはぽつりと答えた。
押し黙りながら、チャンクは宝物庫の扉を開く。途端に一行の視界に飛び込んで来たのは……さんさんと輝く金貨の山や、無造作に転がっている宝玉、豪勢な装飾……まさに宝の山だ!
「おお、コイツはすごいな」
「これで故郷のクララも……!」
男どもは目を輝かせるが、ライマは眉を寄せている。何か違和感がある。何か良くない予感が……
その何かの答えを出す前に、駆け出した者がいた。金貨の山を目にして、欲のあまり矢も盾も止まらない。もともと貧しい家の出で、病気の妹のためとは言え金銭欲が強い者……ウォーレンが金属鎧を着ているとは思えないくらいの身軽さで山へ突進する。
「うひゃらひゃほーい!!」
「……! 待ってウォーレン! それは……!」
すべてに気づいたライマの制止の声が届くより先にウォーレンが宝の山に到達していた。直後、彼女の悪い予感が当たる。宝の山が一人でにもちあがり、人の形を形成する。
ライマが止まるように言った理由……それは、宝の山の一部がクリーピングコインという魔物娘だからだ。この魔物娘は宝箱や壺と同様、古から冒険者の目を引きやすい者、金貨に擬態して獲物を待つ魔物の一種だ。前時代では気づかずに飛びついた冒険者に火を浴びせる。哀れ火だるまになり苦しみぬいた冒険者は後を断たなかったったものだ。
では、新時代となりクリーピングコインはどうなったか? クリーピングコインもまた、魔物"娘"となった。
金貨の山は人の形を成し、それはさらに明確に女の姿へとなっていく。胸元ではその辺に転がっている宝玉と同様に丸く大きな膨らみが出来上がり、腰もまた同様に丸みを帯びる。それでいながら腹は砂時計のようにきゅっとくびれている。目はルビーのように赤く輝いており、なによりその身体は……黄金色に輝いていた。
「きゃうん!?」
驚きの悲鳴を上げたのは、まさかの正体を現したクリーピングコインだった。ウォーレンの突進の勢いが強すぎて、金属鎧の質量も相まって受け止めきれなかったのだ。一方のウォーレンは現れたクリーピングコインをひしっと大事そうに強く抱きしめる。
クリーピングコインは獲物がもともと持っていた金銭欲をそのまま自分への性欲・独占欲・好意に昇華することができるのだ。理由があるとは言え、ウォーレンの金銭欲は相当なものだったのだ。
倒されて驚いたクリーピングコインだったが、すぐにルビーの目がニイッと三日月型に笑った。
「にゃひひ、ちょっとびっくりしたけどこーんなに求められて、クローナ嬉しい〜♪」
下から腕を伸ばし、クローナと自らを名乗ったクリーピングコインはぎゅっとウォーレンを抱きしめ返す。だがすぐにその顔は少し不満げになった。
「でもぉ、せっかくこうして出会って一緒になるって言うのにぃ〜……その鎧は無粋すぎるよね? ちょっとどっかにやっちゃうね?」
パチンとクローナは指を鳴らす。それだけでウォーレンの鎧はまるで砂が風に浚われるかのように消えていき、下着一枚のみの姿になってしまう。魔物娘に個体差はあれど、このクローナは相当な魔力の持ち主だ。もっとも、獲物となったウォーレンにはそんなことはもはや関係ないのだが。金銭欲から昇華された、下着を押して突き上げている雄々しい勃起が、彼の今のすべてを物語っていた。
クローナがルビー色の目を輝かせる。
「うわぁ、おっきい〜♪ こんなにクローナのこと求めてくれてるのね? 嬉しい〜♪ じゃあ……いっぱいサービスしてあげるね?」
下着の上からクローナはすりすりと、ウォーレンのペニスを撫でる。クローナを抱きしめたまま、ウォーレンは物欲しげに腰を揺らした。ウォーレンの反応にクローナはにひひといたずらっぽく笑う。
「直接触って欲しい〜? いいよ〜、触って上げるぅ〜♪」
ぐいっと下着をずらすクローナ。今まで抑え込まれていたペニスがぶるんと音を立てて現れる。すかさずその肉棒をクローナは握り込み、いやらしく上下運動を始めた。
「にっひひひぃ〜♪ どのくらいザーメン出してくれるかなぁ〜? 出したら出しただけ魔界金を作って上げるからぁ〜、いっぱいザーメン出してね?」
「う、あ、あ……」
「あれれ〜? ちょっと擦っただけなのに、もうそんな声出しちゃうの〜? そんなに溜まっていたのぉ〜?」
溜まっていたかとなると溜まっていただろう。冒険から帰ってきたら、性欲も起こらないほど疲労して寝ていることが多かったのだ。チャンクとライマの嬌声を子守唄に。たまに夢精が起きたが、そんな程度で彼の身体に溜め込まれている精が枯れることなどありはしない。
そして自分で処理することなく、ましてや他者に触れたことがない性器は、敏感であった。ウォーレンの声が高ぶってくる。限界が近いことをクローナは察した。
「えー、もう出しちゃうのぉ? ちょっと弱々すぎない? ……でもいいよ♥ ぜーんぶクローナが受け止めてあげるよ♪ ほら、イッちゃえ♥」
くいっとまるで指揮者が演奏を終えるかのようにクローナは手首をひねった。それが止めとなった。ほぼ同時にウォーレンが射精する。どくどくと白濁液が肉棒からほとばしり、クローナの黄金色の肌を白く染めた。人ならざる魔物娘は、肌で受け止めた精液をじわじわと吸収していく。
「にゃひひ♪ いっぱい出したね〜♪ でもまだまだ、こんなもんじゃないよ。お兄さんをクローナの超絶テクでメロメロにしちゃうんだから♪」
一瞬、クローナの姿が崩れ、砂金のようになる。だがすぐに形を再形成する。次の瞬間にはクローナの腕はウォーレンの脚を拘束していた。その顔の目の前には、射精してなお勃起を保っているペニスが……
「いただきまぁ〜す♪ あーむっ♪」
そのペニスをためらいもなくクローナは口に収めた。そして緩やかに頭を動かす。黄金色の髪がそれに併せて揺れた。
射精直後の敏感な性器を攻められてウォーレンは悲鳴を上げる。だが、黙ってヤラれる程度の男ではない。彼の目の前にも、クローナの性器があった。脚が緩やかに広げられていて、さも誘っているかのようだ。
無遠慮にウォーレンはその股ぐらに、枕に突っ伏すかのように顔を埋めた。そしてその割れ目を舐め始める。
「きゃうん!?」
一瞬驚いて口を離したクローナだったが抵抗はしない。彼女だってそれを求めていたから。割れ目からはすぐにじわじわと愛液が滲み出し、ウォーレンの口周りを彼自身の唾液以外の液体で汚した。
「んふふ〜、舐めて舐めて〜♪ いっぱい気持ちよくしてくれたらぁ……クローナももーっと気持ちよくしてあげるね?」
そう言ってさらに腰を突き出してウォーレンにクンニリングスをさせながら、クローナはフェラチオに戻っていった。
宝物庫に二人のくぐもった嬌声と、互いの股間と口で立つびちゃびちゃという淫らな水音が、宝物庫に場違いに響く。
先に音を上げそうになったのはウォーレンだった。舌の動きが鈍くなり、ペニスがびくびくと脈打つ。
「だ〜め♪」
それを防ぐべく、クローナは口唇愛撫を中止した。ふーっと息を吹きかけて快感をと切らせないようにしつつ、おあずけをかます。
「クローナみたいなクリーピングコインにかんたんにハマっちゃうような冒険者さんにはおしおき♪ ちゃんとクローナをイカせてくれないとイカせてあげませーん♪ って、ヒャううう!」
意地悪そうに笑っていたクローナだったが、その口から嬌声が上がる。欲深き冒険者はその欲を満たすべく、その前段階の壁を乗り越えようと必死にもがく。
女身の尖りをなめころがし、溢れ出る蜜を音を立てて吸い、さらにその奥にまで舌を差し入れる。無遠慮なその攻めに、余裕そうだったクローナはあっという間に追い詰められる。
「ご、ごめん! ちょっと調子に乗ったからそれは……! あう、だめ、だめぇ! すぐイッちゃうからぁああ!」
許しを乞うも先程の突進のようにウォーレンの動きは止まらない。その勢いに突き上げられるかのようにクローナは達した。
潮を吹いてウォーレンの顔を汚すクローナ。絶頂後の快感が過ぎ去ったあとの身体は脱力し、だらりとだらしなく身体を金貨の山に投げ出す。
しかし、その一回だけで満足するような魔物娘ではない。のろのろと半身を起こした彼女は、手で自らの脚を掴み、それを引っ張って広げてみせる。中央に位置するのは今さっきオーガズムを迎えてほぐれ、だらだらとよだれを垂らしている魔物娘の柔らかで危険なアギト……
「はふぅ……ねぇ、キてぇ……♥ さっきのお預けチンポ、ちゃんとイカせてあげるからぁ……♥」
こんなふうに誘惑されて耐えられる男などいるはずがない。ましてや、クリーピングコインに魅了された男ならなおさら。
最初の勢いのようにウォーレンはクローナに覆いかぶさった。そのまま、股間の剣をクリーピングコインの肉壷に突き入れる。
「んふぁああああ♥」
「うっ!」
伸びやかな嬌声を上げるクローナに反して、ウォーレンは短い悲鳴を上げていた。ぎりぎりだったペニスは、魔物娘の極上の肉壷に入れただけで、達してしまったのだ。
彼の暴発に驚いたクローナだったが、悪い気持ちはない。ニヤニヤ笑いながら、彼の頭を撫でていたぶるように言う。
「にゃひひぃ、中出ししちゃったねぇ……魔物娘のナカに♪ もう逃さないもんね♪ これからはずっと一緒だよ……♥」
「う、うぅ……駄目だ……俺は帰って、妹に薬代を……」
射精直後、男は眠くなると同時に頭が冴える。今、一瞬だけウォーレンはクリーピングコインの魅了が解け、自分がなぜ冒険者を続けているかを思い出していた。
ウォーレンの言葉にクローナは目をパチクリさせる。そして全てを察した。
「そ、そう……そんなことがあったのね……えーっと、ちょっとちょっと、そこの二人!」
クローナは入り口に向かって声をかける。そこには事の展開に呆然としていたチャックとライマがいた。ライマはやや内股になっており、露出している太腿はなぜか濡れ光っている。
そんな二人にクローナはお願い事をする。
「この人の代わりに私の魔界金沢山持って帰って妹さんに渡してあげて! お願い!」
「え、あ、あー……引き受けたわ」
速やかに返事をしたのはライマ。魔物娘の交わりをわざわざ邪魔するのも無粋と考えたのだ。ものすごい勢いよく、クリーピングコインの魔力で作られた偽りのコイン、それでいながら本物の魔界金を、袋に詰められるだけ詰めて、後にする。残るはクリーピングコインと獲物となった哀れな冒険者のみ。
「さ、これで病気の妹さんも安心、幸せ! クローナもお兄さんも結ばれて幸せ! 落ち着いたら結婚報告のためにもお兄さんの故郷に帰りましょうねぇ。その頃には妹さんも元気になってるよ〜」
だがまずは腹ごしらえだ。乾いていた欲、性欲を満たすべく、クローナは上下入れ替わり、ウォーレンにまたがって腰を振る。彼女の動きは激しく、周囲の金貨がじゃらじゃらと音を立てた。
そして遺跡の最深部から数日は、嬌声が鳴り止まなかった。
かくして新世代になってもなお、形を変えてはいるが、クリーピングコインの犠牲になる冒険者は後を断たない。だが、その犠牲になった者はとても幸せそうであった。
少なくとも彼にとっては……
20/09/04 01:25更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)