風歌の夜
「んっ、く……! ふぅう!」
深夜のアパートの一室……押し殺したような声とぴちゃぴちゃという水音が部屋に響いている。
声を上げているのはケンタウロスの風歌だ。
左手はシーツを握り締め、右手は口に人差し指を噛ませて声が漏れないようにしている。
そんな彼女の人間側の下腹部あたりに顔を寄せているのは、彼女の恋人、高橋 賢吾だ。
二人は高校時代からの付き合いであり、硬式テニス部の先輩と後輩で風歌の方が先輩だ。
風歌は部活の中では結構な実力で大会にも何度か出たことがあったが、引っ込み思案でおとなしく運動音痴な賢吾はずっと球拾いばかりしていた。
そんな賢吾をなぜか風歌は気に入り、アプローチをかけ、自分から告白し、自分から性行為を誘い……そして今に至る。
種族の特性もあって強気な上に先輩だった風歌と、気弱で後輩な賢吾……高校・大学を卒業した今でも風歌の方が主導権を握っている恋愛だ。
いつも賢吾の上に立ち、引っ張ってきたからだろうか。
彼女は何事も主導権を握ろうとし、勝とうとする。
今も風歌は気持ちいいのに声を漏らすまいとしていた。
まるで声を出したら賢吾に負けるとでも言うかのように。
本番の際も声こそ出すが、彼女は意地でも賢吾より先に果てようとしない。
「んくっ……賢吾、もういい。そろそろ挿れてくれ……」
もう少しでイクと言うところで風歌は賢吾にクンニリングスを中止させる。
名残惜しそうな様子をかすかに見せたが、すぐに言われたとおり賢吾は口唇愛撫を止めた。
「今日は……どっちがいいですか?」
賢吾が前の膣に挿入するか後ろの膣に挿入するかを訊ねる。
男なら女の気持ちを察するか、あるいはたまには強気に出て自分の気分を優先させればいいものを、賢吾は風歌の希望を訊ねる。
別に嫌味でもわざわざ口に出させる攻めでもなく、機嫌を伺うかのように訊ねるのだ。
引っ込み思案らしい彼の問いに風歌は眉を軽く寄せながら口を開く。
「今日は、そうだな……」
少し考えた風歌だが、何かを思い出したようにハッとした。
ちょっと待っていろと言って、風歌はハンドバッグを漁る。
目的の物はすぐに取り出せた。
それは小瓶で、中にぶどうジュースのような濃い紫色の液体が入っている。
「何ですか、それは……?」
「実は……」
訝しげな顔をする賢吾に風歌は説明する。
風歌もまた玲奈と別れた後、ファスネット・サバトの魔女に声をかけられていた。
そして今持っている小瓶も玲奈と同様、サンプルとして渡されたものだ。
「という訳で賢吾。飲むんだ」
「こ、これをですか? すっごく怪しいですけど……」
「大丈夫だ。あのファスネット・サバトの商品だぞ? そんな危ない物は売ってないはずだ……それとも、私の薬が飲めないか?」
風歌の目が少し鋭くなる。
賢吾の背筋がピンと伸びた。
「いえ、はい! 飲みます! ぐっ、ごく……んっ!? んぐぐ!?」」
小瓶の蓋を開け、一息に飲み干した賢吾だったが、瓶を空にしたと同時に胸を押さえて苦悶の声を上げた。
薬が不味かったわけでも、気管に入った訳でもない。
「お、おい! 大丈夫か!?」
ファスネット・サバトの商品なのに危険な物だったのか、あるいはアレルギーでも起こしたのか、風歌の胸に不安感がよぎる。
だが薬は確かに正常に効いていた。
幸か不幸か。
「ぐおおおおおおおおお!」
今まで聞いたことのないような咆哮を賢吾が上げた。
それと同時に賢吾の身体がメキメキと音を立てて変化する。
「きゃあああああ!?」
直後に風歌の尋常でない悲鳴が長く響いた。
「な、何よこれぇ!?」
風歌がパニックに陥った悲鳴を上げる。
彼女は今、両手と馬の四つの脚を縛られて宙に持ち上げられ、自由を奪われていた。
その手脚を縛っているのは、薬と同じような紫色をした、ぬめぬめと妖しげな光りを放つ長いもの……触手。
そう、賢吾が飲んだ物は触手薬……服用者を一時的に魔界に存在する触手植物に変化させる薬だったのだ。
自分の恋人がそのような異形の物と化したらパニックに陥りそうなものだが……
『あ……でもこの触手から、賢吾の臭いがする……』
精に敏感な魔物である風歌はこの触手と賢吾が姿こそ違えで同じ存在であると認識できていた。
その臭いが風歌を少し落ち着かせていた。
とは言え、状況は静観できるような物ではない。
風歌を縛っている他にも彼女の周りで幾本もの触手がうねうねと、自己の存在を主張するかのように蛇のようにうねっている。
常に淫らなことを考えている魔物娘がひしめくところに生息する触手、そして薬の影響でそれと同じ存在になった賢吾……これから起こりうることは一つだ。
『私、これからこの触手に犯されるんだ……』
一見、触手に陵辱されると言う絶望的な状況であるのだが、その触手が賢吾であるという認識が出来ているからだろうか。
風歌の中には恐怖と同時に期待が沸き起こっていた。
にゅるにゅると触手が胸を這う。
触手は乳房にくびれを作るかのように巻き付き、上下に揺するようにして動いた。
その動きにあわせて風歌の胸もぷるぷると動く。
「はっ、あ……ふああっ」
その快感はまだ緩やかなものだが、一度触手への恐怖で醒めかけた興奮がまた呼び戻すのには十分であった。
胸への攻めはそれだけでは終わらない。
乳房を攻めていた二本の触手が、花の蕾のような先端を風歌の顔へと見せつけるように向ける。
花開くかのように先端がくぱっと五つに分かれて開いた。
内側はうねうねと溝がたくさんある粘膜が張られており、粘液を滴らせている。
さらに奥からは薄紅色のなめくじのような軟体が覗いた。
パーツだけだと判断が難しいが、その軟体物質に風歌は見覚えがあった。
『もしかして、賢吾の舌?』
風歌の考えを肯定するかのように、その舌のような軟体がレロレロと何かを舐めるように蠢いた。
「ひ、ひぃっ……」
その動きを見て風歌は直感する。
この触手はこれから自分の乳首を攻めるつもりなんだと……
「はぅ!? ふあああっ!」
それを今やられた。
開いた先端がピッタリと胸の先端に吸い付く。
そして中の軟体がにゅるにゅると乳首を這い回った。
びくびくと風歌の身体が跳ね、前も後ろも蜜壷内を熱くしとどに濡らしていく。
「やっ、あっ! なんで……なんでこんなのに胸をなめられて気持ちよくなっているの、私!? くっ、ふあああっ!」
動き自体は普段、賢吾が風歌の胸を口で愛撫するときにする動きと同じ……風歌が一番気持ちいい胸への攻め方だ。
加えてそれを今しているのは同じ賢吾と言えど異形の姿をしている触手であること、そして普通ではありえない左右同時への攻めをされていることが風歌をいつも以上に興奮させた。
むにゅ……
突然、双丘が寄せられて深い谷間が作られる。
「な、何っ!? 何するのっ!?」
意図の読めない賢吾の行動に風歌は戸惑いの声を上げる。
次の瞬間、その双丘の間を下から強引に触手が割って入り、にゅるりと谷間から風歌の顔の前へと姿を表した。
触手が、まるで自分が胸を支配しているのをアピールするかのようにくねくねと動く。
そうしてから、胸の谷間の出入りを始めた。
風歌の意思とは無関係に触手を両胸で挟んで胴体部分を愛撫する形になる。
言うなれば、強制パイズリ……
風歌の頭に血が上った。
普段、勝気でリードしたがる風歌が胸で賢吾に奉仕することは稀である。
なのでこの状況は風歌としては屈辱的なもののはずなのだが……
『やだっ、なんでおっぱい犯されているのにこんなに気持ちいいのっ!?』
触手が胸を撫でる感触は、この状況がとても心地よかった。
とは言え、恥ずかしいのも事実だ。
「いや、いやああっ! こんなのって……ん、んぐぅっ!?」
また悲鳴を上げた風歌にうるさいと言わんばかりに、胸の谷間を出入りしていた触手が風歌の口の中に入り込んできた。
その触手からも賢吾の精の臭いが漂ってくる。
太さも賢吾のペニスに近かった。
『まるで、賢吾に無理やりフェラをさせられているみたい……』
精の臭いにとろけたか、強引なことをされながらも風歌はどこかのんきにそんなことを考えていた。
ねじ込まれた触手がじゅっじゅっと音を立てながら口を出入りする。
喉の奥を突いたりこそしないが、触手は風歌の様子などお構いなしに口内を文字通り犯していた。
「んんっ、んぐ、んご……んふぅ! ふぅーっ!」
風歌の喉の奥と鼻から熱い息が漏れる。
無理やりされているというのに、賢吾らしくない強引な攻めが風歌の身体を高ぶらせていた。
じゅる、にゅるにゅる……
他の触手が動き始める。
先端と幹の部分を器用に使いながら、風歌の人間部分の背中や馬の部分の背中や腹部、下腹部を這い回った。
触手全体が何かぬめった粘液に包まれており、その粘液が風歌の裸体に擦り付けられていく。
擦り付けられた粘液はローションのようにぬるぬるしていて、触手が這い回る感触を増幅させていた。
「ふぅん! ん、ん、んん〜〜〜っ!」
女性の性感帯というものは全身に散っている。
風歌もまたそうだった。
人間部分も馬体部分も背筋が弱かったり、耳が弱かったり、実はへその周りも弱かったりする。
そして今はこのような姿だが、この触手は賢吾であるため風歌の弱点も熟知していた。
ぬるぬると触手に全身を這われ、先端でつつかれて風歌は悶える。
しかし触手は大事なところ、前の膣と後ろの膣にだけは触れていない。
それだというのにそこはとろとろと汗や触手の粘液とは異なる液体を垂れ流していた。
「んんっ、んふっ、くぅ……んちゅ、んんんんっ!」
着実に高まっていて限界はすぐそこだが、肝心なところを攻められていないじれったさに風歌は声を上げる。
それどころか無意識のうちに口で銜えている触手に舌を這わせていた。
賢吾も限界が近くなったのだろうか。
触手の動きが速くなってきた。
それをきっかけに一気に風歌の絶頂が身体に迫ってくる。
『だ、だめっ! 今そんなに激しく動かれると、アソコを触られていないのに……!』
賢吾に負けたくないと言う風歌の意地がそれを拒もうとするが、意地はあっさりと壊された。
「んっ! んっ! んんん〜〜〜!」
口を触手で塞がれ、手脚を拘束された状態で、風歌は達した。
触手で宙に持ち上げられている身体がぴくんぴくんと痙攣する。
それと同時に触手の賢吾も達した。
口の中にあるものをはじめとした数本の触手が、肉棒とまったく同じように先端から白濁液を吐き出す。
風歌の顔が、髪が、胸が、腹が、馬の背が、馬の尻が、全てがドロドロと白い液体にまみれた。
『んんっ、これって……賢吾の精液……』
エクスタシーに達していた風歌の顔がさらに恍惚としたものになる。
そう、その白濁液は確かに賢吾の精液であった。
触手薬の影響でこのような姿になろうと、複数の触手から吐き出されようと、その体液が服用者の精液であるのは変わらない。
『すごい、すごいぃい……体中、賢吾の精液まみれでべとべと……こんなのって……』
風歌の身体がぐにゃりと空中で弛緩した。
絶頂と、大量に吐き出された精の臭いの影響で身体に力が入らない。
ずるり……
風歌の口を犯していた触手が抜け、身体から離れていった。
だが身体を拘束している触手は、それを解く様子はない。
「んはっ……はーっ、はーっ……ん、んんぅ……」
口を塞ぐものがなくなり、触手で宙に持ち上げられたまま、風歌は荒い息をつく。
そんな風歌に別の触手が二本、にゅるにゅると伸びてきた。
一本は風歌の前に周り、蛇が鎌首をもたげるかのように先端を彼女に向ける。
もう一方は風歌の脚の間をとおり、後ろに向かった。
そう、これで終わりではない……むしろこれからが本番だ。
前の触手と後ろの触手が、それぞれの目の前にある割れ目をぬるりと撫で上げる。
「あっ、あっ、はあうぅ……な、にを……?」
ぶるりと身体を震わせながら風歌の口から喘ぎ声が漏れる。
肉体はこれから何をされるか理解していて期待にうち震えていたが、頭はそれについていけなかった。
ぐちゅ、ぬちゅ
卑猥な水音を立てて、二本の触手がそれぞれの風歌の膣穴に潜り込んだ。
「ふわああああああっ!!」
前も後ろも貫かれる感触に風歌は空中で仰け反った。
しかも貫いているのは、異形の物になっているとはいえ、まぎれもなく賢吾の身体……
『ああ、これって……』
目がくらむほどの快感の中で、風歌は考える。
今の状況は、自分が少し前まで望んでいたこと……
前も後ろも、愛しい男に貫かれること……
じゅん……
既に燃え上がっている身体がさらに反応する。
身体にまとわりついている触手をさらに心地よく感じることができ、触手を銜えこんでいる膣はさらに愛液をにじませた。
じゅっじゅぶっぬぷっじゅっじゅる……!
膣内に潜り込んでいる触手が抽送を始める。
動き方は、賢吾の性器が自分の中を抉るのと同じ動きだ。
それが前後同時にされている。
「あ、あああっ! いい! そこっ、いいぃ!!」
いつもは賢吾に突かれても、イク前でもない限り声を押さえ込む風歌だが、今回はそんな余裕がなかった。
前も後ろも同時に攻められるのは単純に二倍の快楽ではなかったのだ。
しかも今は他の触手がにゅるにゅると這い周り、風歌の身体を愛撫しながら先程吐き出した精液を体中に塗り広げている。
「だ、だめぇ……くっ、あ、あああ……体中ぬるぬるってぇえ……にゅるにゅるされ、てぇ……っっあああっ!」
口から自分の様子を実況するいやらしい言葉が自然と漏れる。
そんな彼女をもっと気持ちよくしてやろうと言わんばかりに、触手の動きが早くなった。
ぐじゅぐじゅと音を立てて触手が陰唇を捲り上げながら引き抜かれて押し込まれる……そのたびに、触手に与えられる刺激で風歌の尻がビクンと跳ねる。
びくんと身体を跳ねさせ、風歌は目を剥いた。
「あっ!? ああああっ! そ、そんなにしたら私……私っ……!」
だが触手は動きを休めることなく、風歌を絶頂に導こうと抽送を繰り返していた。
身体を引いたりして逃げようにも手脚をすべて拘束されて宙に吊り上げられていては逃げられない。
そして触手が狙った通り、彼女はアクメに達する。
「イく……イクううぅうっ!」
空中で再び風歌の身体が痙攣し、やがて弛緩する。
だらしなく開けた口からはだらりと涎が溢れていた。
しかし触手は……賢吾はまだ達していない。
「ひいいいっ!?」
風歌が声を上げる。
自分はまだ満足していない……それをアピールするかのように、触手がうねったのだ。
そのうねる動きが、達したばかりで敏感な風歌の身体を刺激する。
「ちょ、ダメっ! 休ませ、てっ……くっ、んあああああ!」
いくら性に貪欲な魔物娘でも、絶頂直後は少しくらい休みたい。
少なくとも風歌はそうだった。
そして普段の賢吾もそのことを気遣って、たとえ自分が達していなくても大人しく風歌を撫でたり抱きしめたりするだけにとどめていた。
だが今の賢吾はそんな風歌の状態などお構いなしに自分の獣性を優先してくる。
蛇のように触手はうねうねと動いた。
そのたびに風歌の前後の膣からはグチュグチュと淫らな音を立て、端からねっとりとした汁を溢れさせる。
中は中で苛烈な攻めが行われていた。
先端は子宮口をこねくり回すかのようにぐねぐねと動く。
「だ、ダメぇっ! そんなに中を……こねくり、回さ……あっ、あああぁぁっ!」
いつもの賢吾の動きが風歌にとって最高の動きだったが、通常の男性器ではできない動きもまた風歌を悶えさせた。
肉孔を掻き回すわけだから、イヤらしい音が立つ。
例えるならば、食事中に口を開けて食べるような、行儀の悪い破裂音……
だが触手の立てる音はそれより遥かに行儀が悪く、そしていやらしかった。
「いやっ、いやあああっ! こんな音、恥ずかしい……あっ、あぁんっ! ふああああっ!」
耳を塞ぎたかったが、手を拘束されていたはそんなことは許されない。
風歌は自分の前後の膣から響くにちゃにちゃと卑猥な音を聴かされ続ける羽目になった。
「そんな……っ! ひぐっ、私のアソコから……あっ、あひぅ! こ、こんなイヤらしい音がするなんて……す、る……なんて……やっあっ! そこおぉ!」
ぐちゅりと後ろの膣に潜り込んでいる触手が、彼女の弱点を抉っていた。
頭がスパークし、その感覚が脊髄を通して全身に伝わり、びくんびくんと馬の腰が暴れ馬のように跳ね上がる。
また達していた。
その瞬間、風歌の頭から羞恥心や触手への恐怖感、恋人との普段のセックスとの違和感などが全て吹き飛んだ。
後に残ったのは魔物娘としての本能……快楽を貪りたい、愛しい男にあらゆる意味で愛されたい、愛しい男の精を受けたい……それだけに染まる。
「もっとっ! もっとぉ! んんうぅ! あぁあんっ!」
風歌の馬の腰が、快感による反射だけでなく自分の意思によって、淫らにくねりはじめた。
いやらしくくねる腰の動きにあわせて触手の抽送とうねりが繰り返される。
ぐちゃぐちゃと結合部から響く音がさらに大きくなった。
彼女の膣から分泌された愛液が触手を伝い、下にあるベッドのシーツに滴り落ちて染みを作る。
だがそんなことが気にならないくらい風歌は快感に喘ぎ、普段では言わないような隠語をわめき散らした。
ビクビクッ
風歌の膣内の触手が今までとは違う、細かな動きをする。
それを膣壁で感じ取った風歌は一瞬、攻め方を変えたのかと風歌は快感で乱れきった頭で考えたが、すぐに似たような動きを思い出した。
「んっ、あん! 賢吾? 射精……うぅんっ! し、しそうなの?」
応えは返って来なかったが、風歌はなんとなくそうだと言うことが分かった。
「まだ、まだ出さないでぇっ! 一緒に……一緒にぃ!」
目もくらむような快感だったが、自分がまた絶頂に達するのにもう少し時間が必要そうだった。
風歌は腰をくねらせより深い結合を促す。
触手もそれに応えるかのようにぐいぐいと子宮口を抉りに来た。
また、彼女の身体の周囲でうねっていた触手が赤く充血した肉芽をつつく。
女の身体でもっとも敏感なところをつつかれてはたまらない。
触手を銜え込む秘裂が前も後ろもギュッと収縮する。
それに逆らうかのように触手がうねり、ぶくりと膨れ上がった。
「く……る……ぅあああああああっ!!」
そして風歌は果てた。
身体を仰け反らせて硬直させ、ぶるぶると痙攣する。
同時に触手も爆ぜた。
膣内に潜り込んでいた触手が勢い良く、熱い粘液を吐き出したのを風歌は絶頂に達している身体で感じる。
射精したのは膣内の触手だけではない。
周囲でうねっていた触手もまた射精していた。
熱い白濁液が風歌の身体をめがけてびゅるびゅると再び放たれる。
もう風歌の身体で賢吾の精液に染まっていない部位はない。
「あ、あぅう……賢吾ぉ……」
全身を愛する恋人の精液に包まれ、恍惚とした表情を顔に浮かべて、風歌はそのまま気を失った。
「……うかさん、ふう……風歌さん!」
名前を呼ばれ、肩を揺さぶられる感覚に風歌はゆっくりと意識を覚醒させる。
目を開けてみると、元通りの姿に戻った賢吾が心配そうに風歌をのぞき込んでいた。
『あ、賢吾……元に戻って、良かった……』
信頼できるファスネット・サバトの薬とは言え、もし彼が触手のままだったらどうしようかと不安だったが、杞憂に終わったようだ。
風歌が目を開けたのを見て賢吾もホッとした顔つきになる。
「良かった! このまま……目を覚まさないんじゃないかと、心配しましたよ……」
『大袈裟。魔物娘がそんなことで潰れるほどヤワなはずがないじゃない』
賢吾の言葉を聞いて風歌が苦笑を漏らす。
だがやはり疲労はしていたためか、言葉は出なかった。
そして疲労していたのは賢吾も同じだったようだ。
「あ、安心したら眠気が……」
どさりとベッドの上に倒れ込み、そのまま寝息を立て出した。
無理もない。
自分の身体を作り替え、自分の身体を駆使して風歌を攻め抜き、そしてあれだけ射精すれば、薬による体力の底上げがあったとしても身体にかなりの負担がかかったはずだ。
そしてどれだけの時間眠っていたかは分からないが、おそらく風歌が起きるまで、ずっと自分の疲労をおして彼女に呼びかけていたのだろう。
彼女が起きることを確認するや否や彼が意識を手放したのは当然と言えた。
「……ぅう」
何度も絶頂した上に今も賢吾の精液まみれで、身体が心地良い疲労と情欲でフワフワする。
そんな身体を引きずって風歌は賢吾に近づき、顔をのぞき込んだ。
彼は穏やかな表情で寝息を立てている。
『自分の欲を抑圧してしまう、良くも悪くも優しい奴だと思っていたんだけどな……』
賢吾は先ほどやっていたように、自分が疲れているのを我慢して風歌のことを気づかいもする。
また、薬を飲む前の様子の通り、彼はいつも風歌の顔色を伺うような言動をする。
そこのところが、風歌が彼のことを好きなところであり、苛立つところでもあった。
だが……
『そんなこいつが……触手で私にあんなことやこんなことを……』
先程まで触手となっていた賢吾は、風歌のことを気遣うことなく、獣性の赴くまま彼女の身体を嬲っていた。
彼にもそんな強引な要素が眠っていたらしい。
触手に変化したことと展開が急だったのには少々驚いたが、彼の新たな一面が、男らしい一面が見られて、風歌は嬉しくもあった。
きゅっと口角が釣り上がり、仏頂面のことが多い風歌の顔が珍しく笑顔になる。
「おやすみ、賢吾……」
愛しい恋人の額にひとつキスをして、彼の身体を抱き寄せ、目を閉じた。
一度追いやられた眠気はすぐに戻ってきて、風歌を眠りの世界に誘う。
賢吾と同様、風歌も情事後の惰眠に堕ちていった。
深夜のアパートの一室……押し殺したような声とぴちゃぴちゃという水音が部屋に響いている。
声を上げているのはケンタウロスの風歌だ。
左手はシーツを握り締め、右手は口に人差し指を噛ませて声が漏れないようにしている。
そんな彼女の人間側の下腹部あたりに顔を寄せているのは、彼女の恋人、高橋 賢吾だ。
二人は高校時代からの付き合いであり、硬式テニス部の先輩と後輩で風歌の方が先輩だ。
風歌は部活の中では結構な実力で大会にも何度か出たことがあったが、引っ込み思案でおとなしく運動音痴な賢吾はずっと球拾いばかりしていた。
そんな賢吾をなぜか風歌は気に入り、アプローチをかけ、自分から告白し、自分から性行為を誘い……そして今に至る。
種族の特性もあって強気な上に先輩だった風歌と、気弱で後輩な賢吾……高校・大学を卒業した今でも風歌の方が主導権を握っている恋愛だ。
いつも賢吾の上に立ち、引っ張ってきたからだろうか。
彼女は何事も主導権を握ろうとし、勝とうとする。
今も風歌は気持ちいいのに声を漏らすまいとしていた。
まるで声を出したら賢吾に負けるとでも言うかのように。
本番の際も声こそ出すが、彼女は意地でも賢吾より先に果てようとしない。
「んくっ……賢吾、もういい。そろそろ挿れてくれ……」
もう少しでイクと言うところで風歌は賢吾にクンニリングスを中止させる。
名残惜しそうな様子をかすかに見せたが、すぐに言われたとおり賢吾は口唇愛撫を止めた。
「今日は……どっちがいいですか?」
賢吾が前の膣に挿入するか後ろの膣に挿入するかを訊ねる。
男なら女の気持ちを察するか、あるいはたまには強気に出て自分の気分を優先させればいいものを、賢吾は風歌の希望を訊ねる。
別に嫌味でもわざわざ口に出させる攻めでもなく、機嫌を伺うかのように訊ねるのだ。
引っ込み思案らしい彼の問いに風歌は眉を軽く寄せながら口を開く。
「今日は、そうだな……」
少し考えた風歌だが、何かを思い出したようにハッとした。
ちょっと待っていろと言って、風歌はハンドバッグを漁る。
目的の物はすぐに取り出せた。
それは小瓶で、中にぶどうジュースのような濃い紫色の液体が入っている。
「何ですか、それは……?」
「実は……」
訝しげな顔をする賢吾に風歌は説明する。
風歌もまた玲奈と別れた後、ファスネット・サバトの魔女に声をかけられていた。
そして今持っている小瓶も玲奈と同様、サンプルとして渡されたものだ。
「という訳で賢吾。飲むんだ」
「こ、これをですか? すっごく怪しいですけど……」
「大丈夫だ。あのファスネット・サバトの商品だぞ? そんな危ない物は売ってないはずだ……それとも、私の薬が飲めないか?」
風歌の目が少し鋭くなる。
賢吾の背筋がピンと伸びた。
「いえ、はい! 飲みます! ぐっ、ごく……んっ!? んぐぐ!?」」
小瓶の蓋を開け、一息に飲み干した賢吾だったが、瓶を空にしたと同時に胸を押さえて苦悶の声を上げた。
薬が不味かったわけでも、気管に入った訳でもない。
「お、おい! 大丈夫か!?」
ファスネット・サバトの商品なのに危険な物だったのか、あるいはアレルギーでも起こしたのか、風歌の胸に不安感がよぎる。
だが薬は確かに正常に効いていた。
幸か不幸か。
「ぐおおおおおおおおお!」
今まで聞いたことのないような咆哮を賢吾が上げた。
それと同時に賢吾の身体がメキメキと音を立てて変化する。
「きゃあああああ!?」
直後に風歌の尋常でない悲鳴が長く響いた。
「な、何よこれぇ!?」
風歌がパニックに陥った悲鳴を上げる。
彼女は今、両手と馬の四つの脚を縛られて宙に持ち上げられ、自由を奪われていた。
その手脚を縛っているのは、薬と同じような紫色をした、ぬめぬめと妖しげな光りを放つ長いもの……触手。
そう、賢吾が飲んだ物は触手薬……服用者を一時的に魔界に存在する触手植物に変化させる薬だったのだ。
自分の恋人がそのような異形の物と化したらパニックに陥りそうなものだが……
『あ……でもこの触手から、賢吾の臭いがする……』
精に敏感な魔物である風歌はこの触手と賢吾が姿こそ違えで同じ存在であると認識できていた。
その臭いが風歌を少し落ち着かせていた。
とは言え、状況は静観できるような物ではない。
風歌を縛っている他にも彼女の周りで幾本もの触手がうねうねと、自己の存在を主張するかのように蛇のようにうねっている。
常に淫らなことを考えている魔物娘がひしめくところに生息する触手、そして薬の影響でそれと同じ存在になった賢吾……これから起こりうることは一つだ。
『私、これからこの触手に犯されるんだ……』
一見、触手に陵辱されると言う絶望的な状況であるのだが、その触手が賢吾であるという認識が出来ているからだろうか。
風歌の中には恐怖と同時に期待が沸き起こっていた。
にゅるにゅると触手が胸を這う。
触手は乳房にくびれを作るかのように巻き付き、上下に揺するようにして動いた。
その動きにあわせて風歌の胸もぷるぷると動く。
「はっ、あ……ふああっ」
その快感はまだ緩やかなものだが、一度触手への恐怖で醒めかけた興奮がまた呼び戻すのには十分であった。
胸への攻めはそれだけでは終わらない。
乳房を攻めていた二本の触手が、花の蕾のような先端を風歌の顔へと見せつけるように向ける。
花開くかのように先端がくぱっと五つに分かれて開いた。
内側はうねうねと溝がたくさんある粘膜が張られており、粘液を滴らせている。
さらに奥からは薄紅色のなめくじのような軟体が覗いた。
パーツだけだと判断が難しいが、その軟体物質に風歌は見覚えがあった。
『もしかして、賢吾の舌?』
風歌の考えを肯定するかのように、その舌のような軟体がレロレロと何かを舐めるように蠢いた。
「ひ、ひぃっ……」
その動きを見て風歌は直感する。
この触手はこれから自分の乳首を攻めるつもりなんだと……
「はぅ!? ふあああっ!」
それを今やられた。
開いた先端がピッタリと胸の先端に吸い付く。
そして中の軟体がにゅるにゅると乳首を這い回った。
びくびくと風歌の身体が跳ね、前も後ろも蜜壷内を熱くしとどに濡らしていく。
「やっ、あっ! なんで……なんでこんなのに胸をなめられて気持ちよくなっているの、私!? くっ、ふあああっ!」
動き自体は普段、賢吾が風歌の胸を口で愛撫するときにする動きと同じ……風歌が一番気持ちいい胸への攻め方だ。
加えてそれを今しているのは同じ賢吾と言えど異形の姿をしている触手であること、そして普通ではありえない左右同時への攻めをされていることが風歌をいつも以上に興奮させた。
むにゅ……
突然、双丘が寄せられて深い谷間が作られる。
「な、何っ!? 何するのっ!?」
意図の読めない賢吾の行動に風歌は戸惑いの声を上げる。
次の瞬間、その双丘の間を下から強引に触手が割って入り、にゅるりと谷間から風歌の顔の前へと姿を表した。
触手が、まるで自分が胸を支配しているのをアピールするかのようにくねくねと動く。
そうしてから、胸の谷間の出入りを始めた。
風歌の意思とは無関係に触手を両胸で挟んで胴体部分を愛撫する形になる。
言うなれば、強制パイズリ……
風歌の頭に血が上った。
普段、勝気でリードしたがる風歌が胸で賢吾に奉仕することは稀である。
なのでこの状況は風歌としては屈辱的なもののはずなのだが……
『やだっ、なんでおっぱい犯されているのにこんなに気持ちいいのっ!?』
触手が胸を撫でる感触は、この状況がとても心地よかった。
とは言え、恥ずかしいのも事実だ。
「いや、いやああっ! こんなのって……ん、んぐぅっ!?」
また悲鳴を上げた風歌にうるさいと言わんばかりに、胸の谷間を出入りしていた触手が風歌の口の中に入り込んできた。
その触手からも賢吾の精の臭いが漂ってくる。
太さも賢吾のペニスに近かった。
『まるで、賢吾に無理やりフェラをさせられているみたい……』
精の臭いにとろけたか、強引なことをされながらも風歌はどこかのんきにそんなことを考えていた。
ねじ込まれた触手がじゅっじゅっと音を立てながら口を出入りする。
喉の奥を突いたりこそしないが、触手は風歌の様子などお構いなしに口内を文字通り犯していた。
「んんっ、んぐ、んご……んふぅ! ふぅーっ!」
風歌の喉の奥と鼻から熱い息が漏れる。
無理やりされているというのに、賢吾らしくない強引な攻めが風歌の身体を高ぶらせていた。
じゅる、にゅるにゅる……
他の触手が動き始める。
先端と幹の部分を器用に使いながら、風歌の人間部分の背中や馬の部分の背中や腹部、下腹部を這い回った。
触手全体が何かぬめった粘液に包まれており、その粘液が風歌の裸体に擦り付けられていく。
擦り付けられた粘液はローションのようにぬるぬるしていて、触手が這い回る感触を増幅させていた。
「ふぅん! ん、ん、んん〜〜〜っ!」
女性の性感帯というものは全身に散っている。
風歌もまたそうだった。
人間部分も馬体部分も背筋が弱かったり、耳が弱かったり、実はへその周りも弱かったりする。
そして今はこのような姿だが、この触手は賢吾であるため風歌の弱点も熟知していた。
ぬるぬると触手に全身を這われ、先端でつつかれて風歌は悶える。
しかし触手は大事なところ、前の膣と後ろの膣にだけは触れていない。
それだというのにそこはとろとろと汗や触手の粘液とは異なる液体を垂れ流していた。
「んんっ、んふっ、くぅ……んちゅ、んんんんっ!」
着実に高まっていて限界はすぐそこだが、肝心なところを攻められていないじれったさに風歌は声を上げる。
それどころか無意識のうちに口で銜えている触手に舌を這わせていた。
賢吾も限界が近くなったのだろうか。
触手の動きが速くなってきた。
それをきっかけに一気に風歌の絶頂が身体に迫ってくる。
『だ、だめっ! 今そんなに激しく動かれると、アソコを触られていないのに……!』
賢吾に負けたくないと言う風歌の意地がそれを拒もうとするが、意地はあっさりと壊された。
「んっ! んっ! んんん〜〜〜!」
口を触手で塞がれ、手脚を拘束された状態で、風歌は達した。
触手で宙に持ち上げられている身体がぴくんぴくんと痙攣する。
それと同時に触手の賢吾も達した。
口の中にあるものをはじめとした数本の触手が、肉棒とまったく同じように先端から白濁液を吐き出す。
風歌の顔が、髪が、胸が、腹が、馬の背が、馬の尻が、全てがドロドロと白い液体にまみれた。
『んんっ、これって……賢吾の精液……』
エクスタシーに達していた風歌の顔がさらに恍惚としたものになる。
そう、その白濁液は確かに賢吾の精液であった。
触手薬の影響でこのような姿になろうと、複数の触手から吐き出されようと、その体液が服用者の精液であるのは変わらない。
『すごい、すごいぃい……体中、賢吾の精液まみれでべとべと……こんなのって……』
風歌の身体がぐにゃりと空中で弛緩した。
絶頂と、大量に吐き出された精の臭いの影響で身体に力が入らない。
ずるり……
風歌の口を犯していた触手が抜け、身体から離れていった。
だが身体を拘束している触手は、それを解く様子はない。
「んはっ……はーっ、はーっ……ん、んんぅ……」
口を塞ぐものがなくなり、触手で宙に持ち上げられたまま、風歌は荒い息をつく。
そんな風歌に別の触手が二本、にゅるにゅると伸びてきた。
一本は風歌の前に周り、蛇が鎌首をもたげるかのように先端を彼女に向ける。
もう一方は風歌の脚の間をとおり、後ろに向かった。
そう、これで終わりではない……むしろこれからが本番だ。
前の触手と後ろの触手が、それぞれの目の前にある割れ目をぬるりと撫で上げる。
「あっ、あっ、はあうぅ……な、にを……?」
ぶるりと身体を震わせながら風歌の口から喘ぎ声が漏れる。
肉体はこれから何をされるか理解していて期待にうち震えていたが、頭はそれについていけなかった。
ぐちゅ、ぬちゅ
卑猥な水音を立てて、二本の触手がそれぞれの風歌の膣穴に潜り込んだ。
「ふわああああああっ!!」
前も後ろも貫かれる感触に風歌は空中で仰け反った。
しかも貫いているのは、異形の物になっているとはいえ、まぎれもなく賢吾の身体……
『ああ、これって……』
目がくらむほどの快感の中で、風歌は考える。
今の状況は、自分が少し前まで望んでいたこと……
前も後ろも、愛しい男に貫かれること……
じゅん……
既に燃え上がっている身体がさらに反応する。
身体にまとわりついている触手をさらに心地よく感じることができ、触手を銜えこんでいる膣はさらに愛液をにじませた。
じゅっじゅぶっぬぷっじゅっじゅる……!
膣内に潜り込んでいる触手が抽送を始める。
動き方は、賢吾の性器が自分の中を抉るのと同じ動きだ。
それが前後同時にされている。
「あ、あああっ! いい! そこっ、いいぃ!!」
いつもは賢吾に突かれても、イク前でもない限り声を押さえ込む風歌だが、今回はそんな余裕がなかった。
前も後ろも同時に攻められるのは単純に二倍の快楽ではなかったのだ。
しかも今は他の触手がにゅるにゅると這い周り、風歌の身体を愛撫しながら先程吐き出した精液を体中に塗り広げている。
「だ、だめぇ……くっ、あ、あああ……体中ぬるぬるってぇえ……にゅるにゅるされ、てぇ……っっあああっ!」
口から自分の様子を実況するいやらしい言葉が自然と漏れる。
そんな彼女をもっと気持ちよくしてやろうと言わんばかりに、触手の動きが早くなった。
ぐじゅぐじゅと音を立てて触手が陰唇を捲り上げながら引き抜かれて押し込まれる……そのたびに、触手に与えられる刺激で風歌の尻がビクンと跳ねる。
びくんと身体を跳ねさせ、風歌は目を剥いた。
「あっ!? ああああっ! そ、そんなにしたら私……私っ……!」
だが触手は動きを休めることなく、風歌を絶頂に導こうと抽送を繰り返していた。
身体を引いたりして逃げようにも手脚をすべて拘束されて宙に吊り上げられていては逃げられない。
そして触手が狙った通り、彼女はアクメに達する。
「イく……イクううぅうっ!」
空中で再び風歌の身体が痙攣し、やがて弛緩する。
だらしなく開けた口からはだらりと涎が溢れていた。
しかし触手は……賢吾はまだ達していない。
「ひいいいっ!?」
風歌が声を上げる。
自分はまだ満足していない……それをアピールするかのように、触手がうねったのだ。
そのうねる動きが、達したばかりで敏感な風歌の身体を刺激する。
「ちょ、ダメっ! 休ませ、てっ……くっ、んあああああ!」
いくら性に貪欲な魔物娘でも、絶頂直後は少しくらい休みたい。
少なくとも風歌はそうだった。
そして普段の賢吾もそのことを気遣って、たとえ自分が達していなくても大人しく風歌を撫でたり抱きしめたりするだけにとどめていた。
だが今の賢吾はそんな風歌の状態などお構いなしに自分の獣性を優先してくる。
蛇のように触手はうねうねと動いた。
そのたびに風歌の前後の膣からはグチュグチュと淫らな音を立て、端からねっとりとした汁を溢れさせる。
中は中で苛烈な攻めが行われていた。
先端は子宮口をこねくり回すかのようにぐねぐねと動く。
「だ、ダメぇっ! そんなに中を……こねくり、回さ……あっ、あああぁぁっ!」
いつもの賢吾の動きが風歌にとって最高の動きだったが、通常の男性器ではできない動きもまた風歌を悶えさせた。
肉孔を掻き回すわけだから、イヤらしい音が立つ。
例えるならば、食事中に口を開けて食べるような、行儀の悪い破裂音……
だが触手の立てる音はそれより遥かに行儀が悪く、そしていやらしかった。
「いやっ、いやあああっ! こんな音、恥ずかしい……あっ、あぁんっ! ふああああっ!」
耳を塞ぎたかったが、手を拘束されていたはそんなことは許されない。
風歌は自分の前後の膣から響くにちゃにちゃと卑猥な音を聴かされ続ける羽目になった。
「そんな……っ! ひぐっ、私のアソコから……あっ、あひぅ! こ、こんなイヤらしい音がするなんて……す、る……なんて……やっあっ! そこおぉ!」
ぐちゅりと後ろの膣に潜り込んでいる触手が、彼女の弱点を抉っていた。
頭がスパークし、その感覚が脊髄を通して全身に伝わり、びくんびくんと馬の腰が暴れ馬のように跳ね上がる。
また達していた。
その瞬間、風歌の頭から羞恥心や触手への恐怖感、恋人との普段のセックスとの違和感などが全て吹き飛んだ。
後に残ったのは魔物娘としての本能……快楽を貪りたい、愛しい男にあらゆる意味で愛されたい、愛しい男の精を受けたい……それだけに染まる。
「もっとっ! もっとぉ! んんうぅ! あぁあんっ!」
風歌の馬の腰が、快感による反射だけでなく自分の意思によって、淫らにくねりはじめた。
いやらしくくねる腰の動きにあわせて触手の抽送とうねりが繰り返される。
ぐちゃぐちゃと結合部から響く音がさらに大きくなった。
彼女の膣から分泌された愛液が触手を伝い、下にあるベッドのシーツに滴り落ちて染みを作る。
だがそんなことが気にならないくらい風歌は快感に喘ぎ、普段では言わないような隠語をわめき散らした。
ビクビクッ
風歌の膣内の触手が今までとは違う、細かな動きをする。
それを膣壁で感じ取った風歌は一瞬、攻め方を変えたのかと風歌は快感で乱れきった頭で考えたが、すぐに似たような動きを思い出した。
「んっ、あん! 賢吾? 射精……うぅんっ! し、しそうなの?」
応えは返って来なかったが、風歌はなんとなくそうだと言うことが分かった。
「まだ、まだ出さないでぇっ! 一緒に……一緒にぃ!」
目もくらむような快感だったが、自分がまた絶頂に達するのにもう少し時間が必要そうだった。
風歌は腰をくねらせより深い結合を促す。
触手もそれに応えるかのようにぐいぐいと子宮口を抉りに来た。
また、彼女の身体の周囲でうねっていた触手が赤く充血した肉芽をつつく。
女の身体でもっとも敏感なところをつつかれてはたまらない。
触手を銜え込む秘裂が前も後ろもギュッと収縮する。
それに逆らうかのように触手がうねり、ぶくりと膨れ上がった。
「く……る……ぅあああああああっ!!」
そして風歌は果てた。
身体を仰け反らせて硬直させ、ぶるぶると痙攣する。
同時に触手も爆ぜた。
膣内に潜り込んでいた触手が勢い良く、熱い粘液を吐き出したのを風歌は絶頂に達している身体で感じる。
射精したのは膣内の触手だけではない。
周囲でうねっていた触手もまた射精していた。
熱い白濁液が風歌の身体をめがけてびゅるびゅると再び放たれる。
もう風歌の身体で賢吾の精液に染まっていない部位はない。
「あ、あぅう……賢吾ぉ……」
全身を愛する恋人の精液に包まれ、恍惚とした表情を顔に浮かべて、風歌はそのまま気を失った。
「……うかさん、ふう……風歌さん!」
名前を呼ばれ、肩を揺さぶられる感覚に風歌はゆっくりと意識を覚醒させる。
目を開けてみると、元通りの姿に戻った賢吾が心配そうに風歌をのぞき込んでいた。
『あ、賢吾……元に戻って、良かった……』
信頼できるファスネット・サバトの薬とは言え、もし彼が触手のままだったらどうしようかと不安だったが、杞憂に終わったようだ。
風歌が目を開けたのを見て賢吾もホッとした顔つきになる。
「良かった! このまま……目を覚まさないんじゃないかと、心配しましたよ……」
『大袈裟。魔物娘がそんなことで潰れるほどヤワなはずがないじゃない』
賢吾の言葉を聞いて風歌が苦笑を漏らす。
だがやはり疲労はしていたためか、言葉は出なかった。
そして疲労していたのは賢吾も同じだったようだ。
「あ、安心したら眠気が……」
どさりとベッドの上に倒れ込み、そのまま寝息を立て出した。
無理もない。
自分の身体を作り替え、自分の身体を駆使して風歌を攻め抜き、そしてあれだけ射精すれば、薬による体力の底上げがあったとしても身体にかなりの負担がかかったはずだ。
そしてどれだけの時間眠っていたかは分からないが、おそらく風歌が起きるまで、ずっと自分の疲労をおして彼女に呼びかけていたのだろう。
彼女が起きることを確認するや否や彼が意識を手放したのは当然と言えた。
「……ぅう」
何度も絶頂した上に今も賢吾の精液まみれで、身体が心地良い疲労と情欲でフワフワする。
そんな身体を引きずって風歌は賢吾に近づき、顔をのぞき込んだ。
彼は穏やかな表情で寝息を立てている。
『自分の欲を抑圧してしまう、良くも悪くも優しい奴だと思っていたんだけどな……』
賢吾は先ほどやっていたように、自分が疲れているのを我慢して風歌のことを気づかいもする。
また、薬を飲む前の様子の通り、彼はいつも風歌の顔色を伺うような言動をする。
そこのところが、風歌が彼のことを好きなところであり、苛立つところでもあった。
だが……
『そんなこいつが……触手で私にあんなことやこんなことを……』
先程まで触手となっていた賢吾は、風歌のことを気遣うことなく、獣性の赴くまま彼女の身体を嬲っていた。
彼にもそんな強引な要素が眠っていたらしい。
触手に変化したことと展開が急だったのには少々驚いたが、彼の新たな一面が、男らしい一面が見られて、風歌は嬉しくもあった。
きゅっと口角が釣り上がり、仏頂面のことが多い風歌の顔が珍しく笑顔になる。
「おやすみ、賢吾……」
愛しい恋人の額にひとつキスをして、彼の身体を抱き寄せ、目を閉じた。
一度追いやられた眠気はすぐに戻ってきて、風歌を眠りの世界に誘う。
賢吾と同様、風歌も情事後の惰眠に堕ちていった。
12/08/19 12:52更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
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