出会いと結婚
「もうこんな国イヤだ! 俺の良さが分からないヤツばかりの国なんて! 俺は外に行って、この俺を愛してくれる女を見つける!」
そう言って男、グナーは反魔物領の故郷を飛び出した。
一人旅というものは危険ではあるが、彼は国で兵士を何年か務めたこともあって腕にはそこそこ自信はある。
教会で勉強をしたので読み書きもできる。
声もなかなか綺麗なテノールで、見た目も悪くない。
しかし、彼には恋人らしい恋人はいなかった。
いや、それどころか友だちらしい友だちもいない。
彼は万能であらゆる能力を持っているのに。
だが軍も教会も女性もどの人も、彼を求めようとはしない。
この状況に我慢できなくなったグナーは故郷の村を捨てて旅に出た。
友だちがいない彼だったため、誰も止めはしなかった。
グナーは親魔物領を目指していた。
魔物は男であれば誰彼構わず交わる……と彼は故郷で聞いていた。
反魔物領での情報なので偏見が入っているが、一部はあっている。
そして……
『男と交わるのが好きなのであれば、この自分を求めてくれる魔物がいるに違いない!』
このグナーの考えもあながち間違ってはいなかった。
ともかく、グナーは親魔物領に向かっていた。
もう少しで親魔物領につくだろうと思われたとき、一人の魔物に出会った。
上半身は美しい女性で、下半身は馬の魔物……
その下半身は艶やかな黒色だ。
そして頭からは二本の角が生えていた。
バイコーンという魔物だ。
手に持っている籠には花が入っている。
おそらくこのあたりを散歩して、趣味で花を摘みに来たのだろう。
「あら、こんにちは」
グナーが通りかかったのをみて、バイコーンが挨拶をしてきた。
とろけるような笑顔と甘い声にグナーは背筋が震えた。
「こ、こ、こんにちは!」
女性と話すことはあったが、こんなに親しげに話されたことがなかったグナーは声が上ずっていた。
加えて、グナーは姦淫などには厳しい、反魔物領出身である。
そのバイコーンは、胸は下から乳首を少し隠している程度の服とも呼べないようなビスチェだったため、このような露出度の高い服を見たことがなかったグナーは驚きと緊張に声が上ずっていた。
「うふふ、そんなに固くなってしまって可愛いですわね」
「は、はい……俺、いや、僕は僕を求めてくれる人を探しにやってきたグナーです!」
普段使わないような一人称を無理やり使ってグナーは名乗った。
そのぎこちなさにバイコーンはクスクスと笑う。
「あら、失礼しました。私はスプモーニ家の三女、グレース=スプモーニと言いますわ。以後お見知りおきを……」
すっとグレースが手を差し伸べる。
グナーはその手をおずおずと握った。
「これも何かのご縁……今宵はどうぞ私の館にお泊りください」
「うぇ!? あ、は、はい。どうも……」
いきなり女性の、それも美女の家に誘われたことの嬉しさやそこまで大胆な彼女の行動への驚きなどがいなまぜになり、グナーは返事をするのが精一杯だった。
彼女の家、スプモーニ家は貴族然りとした大きな館であった。
グレースがエントランスから入ると、彼女と同じ下半身を持った艶やかな女性が出迎えた。
「おかえりなさい、グレース」
「お母様、ただいま戻りました。お父様は?」
出てきたバイコーンにグレースが挨拶をした。
彼女がグレースの母親なのだろう。
母親は答えた。
「父様は今は魔女のメディナと交わっているわ」
「あら、さすがハーレムを束ねているお父様ね、さすがですわ」
「ええ、私の自慢の夫ですから」
グレースの母親は軽く胸を反らして見せる。
そしてその視線をグナーに向けた。
「ところで、この殿方はもしや……?」
「ええ、私の花婿の候補、グナー様です」
グレースの答えを聞いて母親は顔を輝かせた。
「まぁ素敵! 今夜は盛大にお祝い……と言いたいところですが、あいにく夕食の準備がもうすでに整っているわね……」
「仕方ないですわ、お母様。お祝いはまた後日にでも」
「申し訳ないですわね、グレース。それにしても……」
母親はグナーに近寄り、すんすんと匂いを嗅ぐように鼻を鳴らした。
「この方、まだ……?」
「ええ、今はまだ”水”です。ですが、そこからいろいろブレンドして芳醇な”カクテル”にしようと思います」
「まぁ。”水”から仕立て上げるのもまた一興で面白いですわね、ほほほ……」
グレースと彼女の母親の会話にグナーは首をかしげていた。
水とかカクテルとか、もちろんグナーも知っている単語であるが、使っている意味が異なっているように感じる……
だが考えていたのも束の間、グレースがグナーに晩餐の席に付くように言った。
ダイニングのテーブルに豪華な料理が並んでいた。
鳥の丸焼き、さまざまなスパイスが混ぜられたスープ、珍しい芋をまた珍しい葉で包んだ蒸し料理……
やや葉物が多いのは、やはりここがバイコーンの館だからであろうか。
だがこの館にはバイコーン以外の魔物娘もいるとグレースは語った。
みんな父親の妻か、グレースの姉の夫の妻とのことだ。
「私たちバイコーンは他の魔物娘では少し珍しい、ハーレムを作ることを良しとする魔物なのです」
他にも、妻がいると分かっていながらその男を襲う魔物がいて結果ハーレムの一員となる魔物娘はいる。
だが積極的に一夫多妻のハーレムを作ろうとするのはおそらくバイコーンだけだろう。
「そ、そうなんですか……すごいですね」
「ええ、それだけお父様やお義兄様たちが求められているということですわ。ところで……」
ナプキンで軽く口元を拭いて、グレースがグナーに訊ねる。
「先程『自分を求めてくれる人を探している』とおっしゃいましたわね? 故郷にはいらっしゃらなかったのですか?」
「それがですよ……」
グナーは嘆息して故郷での有様を語った。
自分は剣の腕にはそこそこ自信はあり、文字の読み書きはできるので詩を読んだり書いたりすることもできること、歌もそれなりに自信があることを語った。
だが、彼に振り向いてくれる女性がいなかったことも話す。
そして、自分の故郷の領主やその息子は何も才能はないはずなのに側室や愛人がたくさんいることが不満だと漏らした。
「そうなのですか……」
気の毒そうにグレースはグナーを見た。
だがその視線は今までのとろけたものと何か異なり、あまり気持ち良くないものに感じる。
『何かまずいことを言ってしまったかな』
内心グナーは焦る。
だがグレースはすぐに初めて会ったときと同じとろけるような笑顔を浮かべて立ち上がり、グナーの側に寄った。
「でも、そんなあなたでもハーレムを作れますわ」
「えっ? う〜ん、本当ですか?」
今までどの女性にも求められなかったため、彼は自分がハーレムを築いている様子を上手く思い描けなかった。
そんなグナーにグレースは微笑みかけ、説明する。
普通は、魔物娘たちが夫に魔力を注ぎ込むと、その魔力は夫がその魔物娘のものである事を主張し、絶対とは言えないが他の魔物娘に狙われにくくなる効果を持つ。
だがバイコーンの魔力には、注いだ男の精の香りをより濃く強いものとし、他の未婚の魔物娘を引きつける効果があるのだ。
「ですから、ハーレムを作るきっかけにはなりますわよ」
「えっ……?」
グレースの説明を考えれば、バイコーンの魔力があればハーレムを作ることができるはずだ。
だが彼女は今”きっかけ”と言った。
『どういう意味だ……?』
グナーは考えようとしたが、その思考はすぐに乱された。
グレースが彼の手をとり、自分の胸元に引き寄せ、乳房に触れさせる。
その柔らかな感触にグナーはあっという間に虜になったのだった。
晩餐後は風呂に通され、そのまま就寝となった。
用意された部屋に向かう。
そこには先客がいた。
「ぐ、グレースさん!?」
「グレース、で構いませんわ」
くすりとグレースが笑う。
彼女はクイーンサイズのベッドに馬の下半身を横たえ、肘で上体を軽く起してグナーを待っていた。
出会ったときや晩餐時も露出度の高い服だったが、今はさらにレースなど凝った刺繍が施された服であちらこちらが透けた、さらに扇情的な黒い服を纏っている。
その露出度の高くて透けた服は、彼女の白くて滑らかな肌、平らなお腹、悩ましい曲線を描く胸の双丘を引き立てていた。
無意識のうちにグナーはごくりと喉を鳴らす。
そんなグナーをグレースはさらに挑発した。
バイコーンという種族は自ら無理やり男を犯すことは少ない。
だがそのぶん男を誘い、劣情を抱かせるすべに長けている。
「こんな風に、貴方の男の証を舐めまわし、銜えこみ、口の中で飴玉のように転がして、くちびるで扱き抜いて……ん、んちゅう……」
実際に自分の人差し指でグレースはそれを実践してみせた。
可愛らしくもいやらしい桃色の柔肉が人差し指に絡みつき、それが口内へと消えてぬちゅぬちゅと音を立て、かと思ったらその指がくちびるを擦りながら出し入れされる。
あの指が自分の性器だったら……思わず想像してしまい、寝巻きの中でグナーの肉棒がいきり立つ。
それを見越しているか、グレースはとどめと言わんばかりの誘いをかけた。
口に入れられていた人差し指が下腹部に向かう。
「そして、貴方のその初めての欲望の棒をここで受け入れて、その精を私に注いでくださいまし」
言葉と共に、人差し指と中指を開いてみせる。
そこには人間と同じような女性器があり、指によってくちゅりと開かれた。
今まで見たこともなかった、女の花園が蜜を垂らしているその淫靡な光景にグナーは血が上り、ふらふらとグレースに近寄って彼女を押し倒そうとする。
「うふふ……お気持ちは分かりますが、焦ってはいけません。ゆっくり楽しみましょう?」
押し倒そうとしてきたグナーをいなしてグレースは笑い、そのくちびるを奪った。
今まで友だちすらいなかったグナーのため、女性経験ももちろんない。
ただグレースの突然のキスに、目を白黒させることしかできなかった。
固まっているのをいいことにグレースの舌はグナーの口内を蹂躙する。
だが少しずつグナーの身体から力が抜けていき、ほぐれたころにはグナーもグレースもとろけていた。
「ああ、身体がさらに熱くなって来ました。脱がせてくれますか?」
上半身もベッドに横たえ、グレースは言う。
言われるがままグナーは彼女を脱がそうと手を伸ばす。
が、彼女の服の構造が分からず、手が止まってしまう。
「お困りですか? いっそのこと、破いてしまっても構いませんわよ?」
「いや、さすがにそれは……」
「ふふふ……背中にホックがありますわよ」
言葉のとおり、背中に腕を回してホックを外し、服を取り去る。
ぷるるんと水蜜桃のような乳房が揺れながら現れた。
レースに包まれた状態でも淫靡であったが、何もない無の状態もまた素晴らしかった。
胸も他の肌と同じく肌理細やかで、形は優美で綺麗な曲線を描いている。
男には絶対ないその美しい乳房をグナーは鷲掴みにした。
「あっんっ! ちょっとだけ痛いです……」
「す、すみません……」
謝って力は緩めたが、手は胸から離れない。
すこし遠慮がちながらも10本の指は乳房を揉みしだき、手はパン生地をこね回すかのように動いた。
さらにグレースの胸に顔を埋め、乳房を舐めまわし、吸い立てる。
「そんなに私の身体がお気に召しましたか? 光栄ですわ」
グナーの愛撫は稚拙ではあるが、グレースはその愛撫に快感を覚えており、なによりグナーが欲望の赴くまま自分の身体を求めているのが嬉しい様子だった。
その証拠にグレースの身体は、人間と馬の身体の境目にある前の膣も馬と同じ位置にある後ろの膣も先程以上に蜜を垂らし、馬体の毛をべっとりと濡らしていた。
「んっ、はふっ、胸もいいですが……こちらもお願いしますわ」
我慢できなくなったグレースはグナーの手をとり、その手を前の膣へと導いた。
くちゅりとグナーの手が熱くぬめった秘裂の表面に触れる。
誘われるように、グナーは指をおずおずとそのままグレースの秘部に押し入れて進めた。
「あ、あっ! 入って、来てる……! んっ、ゆっくりかき回して……あっ、くっ、そう……!」
身体をぴくぴくと震わせてグレースは喘ぐ。
だがそれでも彼女の方が優位だ。
グレースは自分から襲っておらずグナーが一方的にグレースを攻めているように見えるが、実際はグレースがグナーを巧みに誘導して攻めさせている。
グナーの動きはほとんど意思を持っておらず、本能とグレースのそれとない命令で動いている。
男を誘うのに長けているバイコーンならではといったところか。
「はぅっ! 私のオマンコ、ぐちょぐちょでしょう? ほら、んっ! よくご覧になって味わってくださいませ……」
卑猥な言葉も混ぜられて、それとなく要求されたクンニリングス……
命令口調ではないのにグナーはすんなりとその言葉に従う。
グナーの頭が下の方に降りていき、グレースの下腹部に近づく。
そして剥き出しになっていた秘裂にくちづけをする。
「ん、んんっ! あ、あああ!」
グレースの身体が二度跳ねる。
くちづけの次にグナーは舌をめいいっぱい伸ばして秘裂を舐めていた。
どこを舐めていいのか分からないため、彼の舌はあちこちを這い回る。
「あっ! グナー様! そこっ! 今舐められた、んっ、その上のほうの膨らんでいるところを……ああっ! はあんっ! いいっ! お上手です!」
男というものは単純なものである。
おだてられたグナーの舌はグレースに教えられた通り、クリトリスをこれでもかとばかりに舐め転がす。
勢いばかりの拙い舌使いとはいえ、敏感なところばかりを嬲られてグレースは悶えた。
グナーの頭を押さえつけるようにしてもっとと要求する。
男の舌が秘裂を撫で、愛液を掬いとるたびに新たな愛液が染み出てきた。
その愛液は男を受け入れるためのもの……
グレースはグナーに、挿れるように要求する。
「来てください、グナー様……」
ベッドに全身を横たえ、腕を広げてバイコーンは男を誘った。
グレースに向かい合うようにしてグナーは寝転び、亀頭を秘裂に宛てがう。
そのまま二人は真正面から互いに抱きしめあった。
二人の身体の距離が縮まっていき、肉棒は肉洞にずぶずぶとのめりこんでいく。
一瞬、グレースが苦しげな表情をしたのにグナーは気づかない。
彼はただただ、肉洞の熱いぬめりに気圧されていた。
そしてとうとう、二人の身体はピッタリと密着する。
二人の秘部もこれ以上にないくらい深く繋がりあっていた。
「んくっ、はぁ……全部、入りました……いかがですか、私の膣内は……?」
「あ、あああ……すごい、です……あったかくて、ぬるぬるしてて……どうにかなってしまいそうですっ!」
あまりの快感にぶるぶると身体を震わせながらグナーは答えた。
中は無数の襞があってグナーのペニスを根元まで包み込んでおり、キュキュっと収縮して刺激を与えてくる。
さらにたっぷりと淫蜜が肉壁から染みだしていて、グナーの肉棒にねっとりとまとわりつかせるグレースの雌器は極上の物であった。
そんな名器に女性経験のなかった男が耐えられるはずがない。
二人とも身体を横向きにしている体位は決して腰を動かしやすい体位ではなく現に二人ともほとんど腰を動かしていないが、それでもグナーは精を放ってしまいそうだった。
その様子をグレースは敏感に感じ取る。
「グナー様、もう射精してしまいそうですか?」
「ぐ、す、すみません……」
「ふふふ、気にしなくて結構ですよ。私たちはまだこれからなのでございますから」
「これ、から……?」
グレースの言葉を不思議そうにグナーは訊ね返す。
「ええ、私たちは夫婦になるのですから。グナー様はこれからハーレムの男として、私はその第一婦人として、末永く暮らしていくのです」
グレースは当たり前と言ったように微笑む。
あまりの話の速さにグナーは少々戸惑ったが、グレースのヴァギナからペニスにもたらされる快感に、何も考えることができなかった。
その彼の様子にグレースの口角が更に吊り上がる。
「さぁ、婚姻の証にその純粋な一番搾りの精を私にくださいませ……!」
グレースが下腹部にきゅきゅっと力を込める。
それと同時に肉壁も収縮してグナーの肉棒を締め付けた。
「あ、あ、あああっ!」
締め付けに耐えられず、グナーはグレースにしがみつくようにしてその身体に精を放った。
グレースもグナーを抱きしめながらそれを受け止める。
「ん、あっ……たくさん出ている……グナー様の、精が……」
「あ、あふぅ……」
彼女のつぶやきはほとんど彼は聞き取れなかった。
初めての女性経験の相手が魔物だったため、あまりの快感に頭が朦朧とする。
射精後の脱力感もあり、グナーの意識はそのまま闇に落ちていこうとしていた。
「お疲れでしょう、ゆっくりおやすみくださいませ……私たちには、まだまだ時間はありますから」
自身は達しなかった上、男の身勝手な行動にもグレースは文句ひとつ言わず、グナーの頭を撫でながらささやく。
「このせい……みずのよう……それがカクテ……ほうじゅんに……のしみですわ」
そう言って男、グナーは反魔物領の故郷を飛び出した。
一人旅というものは危険ではあるが、彼は国で兵士を何年か務めたこともあって腕にはそこそこ自信はある。
教会で勉強をしたので読み書きもできる。
声もなかなか綺麗なテノールで、見た目も悪くない。
しかし、彼には恋人らしい恋人はいなかった。
いや、それどころか友だちらしい友だちもいない。
彼は万能であらゆる能力を持っているのに。
だが軍も教会も女性もどの人も、彼を求めようとはしない。
この状況に我慢できなくなったグナーは故郷の村を捨てて旅に出た。
友だちがいない彼だったため、誰も止めはしなかった。
グナーは親魔物領を目指していた。
魔物は男であれば誰彼構わず交わる……と彼は故郷で聞いていた。
反魔物領での情報なので偏見が入っているが、一部はあっている。
そして……
『男と交わるのが好きなのであれば、この自分を求めてくれる魔物がいるに違いない!』
このグナーの考えもあながち間違ってはいなかった。
ともかく、グナーは親魔物領に向かっていた。
もう少しで親魔物領につくだろうと思われたとき、一人の魔物に出会った。
上半身は美しい女性で、下半身は馬の魔物……
その下半身は艶やかな黒色だ。
そして頭からは二本の角が生えていた。
バイコーンという魔物だ。
手に持っている籠には花が入っている。
おそらくこのあたりを散歩して、趣味で花を摘みに来たのだろう。
「あら、こんにちは」
グナーが通りかかったのをみて、バイコーンが挨拶をしてきた。
とろけるような笑顔と甘い声にグナーは背筋が震えた。
「こ、こ、こんにちは!」
女性と話すことはあったが、こんなに親しげに話されたことがなかったグナーは声が上ずっていた。
加えて、グナーは姦淫などには厳しい、反魔物領出身である。
そのバイコーンは、胸は下から乳首を少し隠している程度の服とも呼べないようなビスチェだったため、このような露出度の高い服を見たことがなかったグナーは驚きと緊張に声が上ずっていた。
「うふふ、そんなに固くなってしまって可愛いですわね」
「は、はい……俺、いや、僕は僕を求めてくれる人を探しにやってきたグナーです!」
普段使わないような一人称を無理やり使ってグナーは名乗った。
そのぎこちなさにバイコーンはクスクスと笑う。
「あら、失礼しました。私はスプモーニ家の三女、グレース=スプモーニと言いますわ。以後お見知りおきを……」
すっとグレースが手を差し伸べる。
グナーはその手をおずおずと握った。
「これも何かのご縁……今宵はどうぞ私の館にお泊りください」
「うぇ!? あ、は、はい。どうも……」
いきなり女性の、それも美女の家に誘われたことの嬉しさやそこまで大胆な彼女の行動への驚きなどがいなまぜになり、グナーは返事をするのが精一杯だった。
彼女の家、スプモーニ家は貴族然りとした大きな館であった。
グレースがエントランスから入ると、彼女と同じ下半身を持った艶やかな女性が出迎えた。
「おかえりなさい、グレース」
「お母様、ただいま戻りました。お父様は?」
出てきたバイコーンにグレースが挨拶をした。
彼女がグレースの母親なのだろう。
母親は答えた。
「父様は今は魔女のメディナと交わっているわ」
「あら、さすがハーレムを束ねているお父様ね、さすがですわ」
「ええ、私の自慢の夫ですから」
グレースの母親は軽く胸を反らして見せる。
そしてその視線をグナーに向けた。
「ところで、この殿方はもしや……?」
「ええ、私の花婿の候補、グナー様です」
グレースの答えを聞いて母親は顔を輝かせた。
「まぁ素敵! 今夜は盛大にお祝い……と言いたいところですが、あいにく夕食の準備がもうすでに整っているわね……」
「仕方ないですわ、お母様。お祝いはまた後日にでも」
「申し訳ないですわね、グレース。それにしても……」
母親はグナーに近寄り、すんすんと匂いを嗅ぐように鼻を鳴らした。
「この方、まだ……?」
「ええ、今はまだ”水”です。ですが、そこからいろいろブレンドして芳醇な”カクテル”にしようと思います」
「まぁ。”水”から仕立て上げるのもまた一興で面白いですわね、ほほほ……」
グレースと彼女の母親の会話にグナーは首をかしげていた。
水とかカクテルとか、もちろんグナーも知っている単語であるが、使っている意味が異なっているように感じる……
だが考えていたのも束の間、グレースがグナーに晩餐の席に付くように言った。
ダイニングのテーブルに豪華な料理が並んでいた。
鳥の丸焼き、さまざまなスパイスが混ぜられたスープ、珍しい芋をまた珍しい葉で包んだ蒸し料理……
やや葉物が多いのは、やはりここがバイコーンの館だからであろうか。
だがこの館にはバイコーン以外の魔物娘もいるとグレースは語った。
みんな父親の妻か、グレースの姉の夫の妻とのことだ。
「私たちバイコーンは他の魔物娘では少し珍しい、ハーレムを作ることを良しとする魔物なのです」
他にも、妻がいると分かっていながらその男を襲う魔物がいて結果ハーレムの一員となる魔物娘はいる。
だが積極的に一夫多妻のハーレムを作ろうとするのはおそらくバイコーンだけだろう。
「そ、そうなんですか……すごいですね」
「ええ、それだけお父様やお義兄様たちが求められているということですわ。ところで……」
ナプキンで軽く口元を拭いて、グレースがグナーに訊ねる。
「先程『自分を求めてくれる人を探している』とおっしゃいましたわね? 故郷にはいらっしゃらなかったのですか?」
「それがですよ……」
グナーは嘆息して故郷での有様を語った。
自分は剣の腕にはそこそこ自信はあり、文字の読み書きはできるので詩を読んだり書いたりすることもできること、歌もそれなりに自信があることを語った。
だが、彼に振り向いてくれる女性がいなかったことも話す。
そして、自分の故郷の領主やその息子は何も才能はないはずなのに側室や愛人がたくさんいることが不満だと漏らした。
「そうなのですか……」
気の毒そうにグレースはグナーを見た。
だがその視線は今までのとろけたものと何か異なり、あまり気持ち良くないものに感じる。
『何かまずいことを言ってしまったかな』
内心グナーは焦る。
だがグレースはすぐに初めて会ったときと同じとろけるような笑顔を浮かべて立ち上がり、グナーの側に寄った。
「でも、そんなあなたでもハーレムを作れますわ」
「えっ? う〜ん、本当ですか?」
今までどの女性にも求められなかったため、彼は自分がハーレムを築いている様子を上手く思い描けなかった。
そんなグナーにグレースは微笑みかけ、説明する。
普通は、魔物娘たちが夫に魔力を注ぎ込むと、その魔力は夫がその魔物娘のものである事を主張し、絶対とは言えないが他の魔物娘に狙われにくくなる効果を持つ。
だがバイコーンの魔力には、注いだ男の精の香りをより濃く強いものとし、他の未婚の魔物娘を引きつける効果があるのだ。
「ですから、ハーレムを作るきっかけにはなりますわよ」
「えっ……?」
グレースの説明を考えれば、バイコーンの魔力があればハーレムを作ることができるはずだ。
だが彼女は今”きっかけ”と言った。
『どういう意味だ……?』
グナーは考えようとしたが、その思考はすぐに乱された。
グレースが彼の手をとり、自分の胸元に引き寄せ、乳房に触れさせる。
その柔らかな感触にグナーはあっという間に虜になったのだった。
晩餐後は風呂に通され、そのまま就寝となった。
用意された部屋に向かう。
そこには先客がいた。
「ぐ、グレースさん!?」
「グレース、で構いませんわ」
くすりとグレースが笑う。
彼女はクイーンサイズのベッドに馬の下半身を横たえ、肘で上体を軽く起してグナーを待っていた。
出会ったときや晩餐時も露出度の高い服だったが、今はさらにレースなど凝った刺繍が施された服であちらこちらが透けた、さらに扇情的な黒い服を纏っている。
その露出度の高くて透けた服は、彼女の白くて滑らかな肌、平らなお腹、悩ましい曲線を描く胸の双丘を引き立てていた。
無意識のうちにグナーはごくりと喉を鳴らす。
そんなグナーをグレースはさらに挑発した。
バイコーンという種族は自ら無理やり男を犯すことは少ない。
だがそのぶん男を誘い、劣情を抱かせるすべに長けている。
「こんな風に、貴方の男の証を舐めまわし、銜えこみ、口の中で飴玉のように転がして、くちびるで扱き抜いて……ん、んちゅう……」
実際に自分の人差し指でグレースはそれを実践してみせた。
可愛らしくもいやらしい桃色の柔肉が人差し指に絡みつき、それが口内へと消えてぬちゅぬちゅと音を立て、かと思ったらその指がくちびるを擦りながら出し入れされる。
あの指が自分の性器だったら……思わず想像してしまい、寝巻きの中でグナーの肉棒がいきり立つ。
それを見越しているか、グレースはとどめと言わんばかりの誘いをかけた。
口に入れられていた人差し指が下腹部に向かう。
「そして、貴方のその初めての欲望の棒をここで受け入れて、その精を私に注いでくださいまし」
言葉と共に、人差し指と中指を開いてみせる。
そこには人間と同じような女性器があり、指によってくちゅりと開かれた。
今まで見たこともなかった、女の花園が蜜を垂らしているその淫靡な光景にグナーは血が上り、ふらふらとグレースに近寄って彼女を押し倒そうとする。
「うふふ……お気持ちは分かりますが、焦ってはいけません。ゆっくり楽しみましょう?」
押し倒そうとしてきたグナーをいなしてグレースは笑い、そのくちびるを奪った。
今まで友だちすらいなかったグナーのため、女性経験ももちろんない。
ただグレースの突然のキスに、目を白黒させることしかできなかった。
固まっているのをいいことにグレースの舌はグナーの口内を蹂躙する。
だが少しずつグナーの身体から力が抜けていき、ほぐれたころにはグナーもグレースもとろけていた。
「ああ、身体がさらに熱くなって来ました。脱がせてくれますか?」
上半身もベッドに横たえ、グレースは言う。
言われるがままグナーは彼女を脱がそうと手を伸ばす。
が、彼女の服の構造が分からず、手が止まってしまう。
「お困りですか? いっそのこと、破いてしまっても構いませんわよ?」
「いや、さすがにそれは……」
「ふふふ……背中にホックがありますわよ」
言葉のとおり、背中に腕を回してホックを外し、服を取り去る。
ぷるるんと水蜜桃のような乳房が揺れながら現れた。
レースに包まれた状態でも淫靡であったが、何もない無の状態もまた素晴らしかった。
胸も他の肌と同じく肌理細やかで、形は優美で綺麗な曲線を描いている。
男には絶対ないその美しい乳房をグナーは鷲掴みにした。
「あっんっ! ちょっとだけ痛いです……」
「す、すみません……」
謝って力は緩めたが、手は胸から離れない。
すこし遠慮がちながらも10本の指は乳房を揉みしだき、手はパン生地をこね回すかのように動いた。
さらにグレースの胸に顔を埋め、乳房を舐めまわし、吸い立てる。
「そんなに私の身体がお気に召しましたか? 光栄ですわ」
グナーの愛撫は稚拙ではあるが、グレースはその愛撫に快感を覚えており、なによりグナーが欲望の赴くまま自分の身体を求めているのが嬉しい様子だった。
その証拠にグレースの身体は、人間と馬の身体の境目にある前の膣も馬と同じ位置にある後ろの膣も先程以上に蜜を垂らし、馬体の毛をべっとりと濡らしていた。
「んっ、はふっ、胸もいいですが……こちらもお願いしますわ」
我慢できなくなったグレースはグナーの手をとり、その手を前の膣へと導いた。
くちゅりとグナーの手が熱くぬめった秘裂の表面に触れる。
誘われるように、グナーは指をおずおずとそのままグレースの秘部に押し入れて進めた。
「あ、あっ! 入って、来てる……! んっ、ゆっくりかき回して……あっ、くっ、そう……!」
身体をぴくぴくと震わせてグレースは喘ぐ。
だがそれでも彼女の方が優位だ。
グレースは自分から襲っておらずグナーが一方的にグレースを攻めているように見えるが、実際はグレースがグナーを巧みに誘導して攻めさせている。
グナーの動きはほとんど意思を持っておらず、本能とグレースのそれとない命令で動いている。
男を誘うのに長けているバイコーンならではといったところか。
「はぅっ! 私のオマンコ、ぐちょぐちょでしょう? ほら、んっ! よくご覧になって味わってくださいませ……」
卑猥な言葉も混ぜられて、それとなく要求されたクンニリングス……
命令口調ではないのにグナーはすんなりとその言葉に従う。
グナーの頭が下の方に降りていき、グレースの下腹部に近づく。
そして剥き出しになっていた秘裂にくちづけをする。
「ん、んんっ! あ、あああ!」
グレースの身体が二度跳ねる。
くちづけの次にグナーは舌をめいいっぱい伸ばして秘裂を舐めていた。
どこを舐めていいのか分からないため、彼の舌はあちこちを這い回る。
「あっ! グナー様! そこっ! 今舐められた、んっ、その上のほうの膨らんでいるところを……ああっ! はあんっ! いいっ! お上手です!」
男というものは単純なものである。
おだてられたグナーの舌はグレースに教えられた通り、クリトリスをこれでもかとばかりに舐め転がす。
勢いばかりの拙い舌使いとはいえ、敏感なところばかりを嬲られてグレースは悶えた。
グナーの頭を押さえつけるようにしてもっとと要求する。
男の舌が秘裂を撫で、愛液を掬いとるたびに新たな愛液が染み出てきた。
その愛液は男を受け入れるためのもの……
グレースはグナーに、挿れるように要求する。
「来てください、グナー様……」
ベッドに全身を横たえ、腕を広げてバイコーンは男を誘った。
グレースに向かい合うようにしてグナーは寝転び、亀頭を秘裂に宛てがう。
そのまま二人は真正面から互いに抱きしめあった。
二人の身体の距離が縮まっていき、肉棒は肉洞にずぶずぶとのめりこんでいく。
一瞬、グレースが苦しげな表情をしたのにグナーは気づかない。
彼はただただ、肉洞の熱いぬめりに気圧されていた。
そしてとうとう、二人の身体はピッタリと密着する。
二人の秘部もこれ以上にないくらい深く繋がりあっていた。
「んくっ、はぁ……全部、入りました……いかがですか、私の膣内は……?」
「あ、あああ……すごい、です……あったかくて、ぬるぬるしてて……どうにかなってしまいそうですっ!」
あまりの快感にぶるぶると身体を震わせながらグナーは答えた。
中は無数の襞があってグナーのペニスを根元まで包み込んでおり、キュキュっと収縮して刺激を与えてくる。
さらにたっぷりと淫蜜が肉壁から染みだしていて、グナーの肉棒にねっとりとまとわりつかせるグレースの雌器は極上の物であった。
そんな名器に女性経験のなかった男が耐えられるはずがない。
二人とも身体を横向きにしている体位は決して腰を動かしやすい体位ではなく現に二人ともほとんど腰を動かしていないが、それでもグナーは精を放ってしまいそうだった。
その様子をグレースは敏感に感じ取る。
「グナー様、もう射精してしまいそうですか?」
「ぐ、す、すみません……」
「ふふふ、気にしなくて結構ですよ。私たちはまだこれからなのでございますから」
「これ、から……?」
グレースの言葉を不思議そうにグナーは訊ね返す。
「ええ、私たちは夫婦になるのですから。グナー様はこれからハーレムの男として、私はその第一婦人として、末永く暮らしていくのです」
グレースは当たり前と言ったように微笑む。
あまりの話の速さにグナーは少々戸惑ったが、グレースのヴァギナからペニスにもたらされる快感に、何も考えることができなかった。
その彼の様子にグレースの口角が更に吊り上がる。
「さぁ、婚姻の証にその純粋な一番搾りの精を私にくださいませ……!」
グレースが下腹部にきゅきゅっと力を込める。
それと同時に肉壁も収縮してグナーの肉棒を締め付けた。
「あ、あ、あああっ!」
締め付けに耐えられず、グナーはグレースにしがみつくようにしてその身体に精を放った。
グレースもグナーを抱きしめながらそれを受け止める。
「ん、あっ……たくさん出ている……グナー様の、精が……」
「あ、あふぅ……」
彼女のつぶやきはほとんど彼は聞き取れなかった。
初めての女性経験の相手が魔物だったため、あまりの快感に頭が朦朧とする。
射精後の脱力感もあり、グナーの意識はそのまま闇に落ちていこうとしていた。
「お疲れでしょう、ゆっくりおやすみくださいませ……私たちには、まだまだ時間はありますから」
自身は達しなかった上、男の身勝手な行動にもグレースは文句ひとつ言わず、グナーの頭を撫でながらささやく。
「このせい……みずのよう……それがカクテ……ほうじゅんに……のしみですわ」
12/06/06 22:19更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
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