カクテルとお前とオレと大人(後編)
エレーヌの泣き声を聞いてオレは身体を起こした。
うう、やっぱりちょっとめまいがする・・・
「うう、本当はあたしも可憐な淑女に憧れたりしたわよ・・・マリンさんみたいなおしとやかな人になりたいと思ったりもしたわよ・・・」
それは無理だという言葉を必死で飲みこみ、オレはエレーヌの言葉に耳を傾ける。
そして初めて知った。
どうもエレーヌは酔うと泣き上戸になるらしい。
そう言えば、互いにベロンベロンになるまで飲んだことがなかったな・・・
オレに背を向けた状態でエレーヌは肩を震わせて泣きながら続ける。
「でも無理だった・・・ぐすっ、メロウの本能のせいで猥談を封じるなんてことができなかったの・・・ひぐっ」
本当に本能のせいで抑えられないのかと疑問に思うけど、それも飲み込む。
それでも・・・可憐な淑女に憧れていたと言うのは本音なのかもしれない。
エレーヌは親しみやすい性格しているのに、日常会話でもエロい言葉を混ぜる、魔物娘でもドン引きなほどの破廉恥ぶりなので、あまり友人は多いほうではない。
普段はメロウらしく明るく振舞っているが、意外と気にしていたようだ。
「うう・・・ぐすん、ううう・・・」
エレーヌが泣いている・・・彼女を慰めたくて、何か言ってあげたくてオレはフラフラと近寄り、後ろから抱きしめた。
「はうっ!? ユ、ユウタ・・・?」
「エレーヌ・・・」
口を開いて何か言おうとするが、酔っていて頭が働かず、何も言えない。
くそっ、酔っていると大胆なことができるが、こう言うときに何もできなくなってしまうのが難点だ。
「その・・・なんだ。みんな多分エレーヌのことを良く知らないだけだと思うんだ・・・」
いつも破廉恥なことばかり言っているように見えるエレーヌだが、実際はそうではない一面を多く持っていることをオレは知っている。
娘のユリアの世話をしているときのエレーヌは普段も真剣だ(もっとも、子守唄や話しかけている内容は破廉恥だけど)
教団の理不尽な行動のニュースに怒りを示しているときも、その怒りは真剣だ。
そして・・・『桃色恋愛話―コイバナ―』にかけている想いと執筆しているときの態度は真剣そのものだ。
「だからさ・・・あの本を成功させて、ただエロいだけじゃなくて、それを表現してみんなに届けることができるところを魅せないか?」
「ん・・・うん、そうだね。ちょっと酔いすぎちゃったみたい。ありがとう、ゆうた」
涙を流しながらエレーヌはにこりと笑った。
普段では見られないその姿に不謹慎ながらも胸がときめく。
「ねぇ・・・」
そんないつもとちがう、泣きはらして濡れているエメラルド色の瞳でオレを見ながらエレーヌがささやく。
「・・・抱いて、エッチして、セックスして」
・・・いくら泣き上戸でも、酔うとエッチになるのはエレーヌも変わらなかった。
「ん・・・はふ、あむっ、んちゅる・・・ユウタ・・・・ユウタぁ・・・」
キスをしながら切なげな声でエレーヌがオレを呼ぶ。
互いに、くちびるの端からよだれを垂らしながら激しく相手のくちびるをむさぼる。
キスの激しさは2年前、初めてエッチしたときと変わらない。
だが、キスの技術は2年前と比べてだいぶ上達したと思う。
昔は舌をからませたり歯列をなぞったりするだけだったが、今はそれだけではなく、舌同士をつつき合わせたり相手の舌を吸ってくちびるでしごいたり、くちびるは重ねずに舌だけを絡め合わせたり相手のくちびるを甘噛みしたり・・・
こんなふうにすることになったのも、二人でいろいろ「検証」したからだ。
エロに関して二人の意見が食い違ったときに俺達は「検証」と言って実際にそれを互いに試したりしている。
そうして互いの弱点やイイトコロを探っていった。
もちろん、「エロに関して」と言った通り、検証したのはキスだけじゃない。
抱きしめるために背中にまわしていた腕に仕事をさせる。
さわっと5本の指先でエレーヌの背中を撫でる。
「ふぅんっ!?」
ビクッとエレーヌの身体が震えた。
一見するとくすぐったがっているだけのように見えるが、実際はそうじゃないことを何度も身体を重ねたオレは知っている。
構わずオレは背中を撫で、もう一方の手はエレーヌの耳裏を撫でた。
「ふああっ・・・ユウタぁ、そんなにしちゃ・・・ああぁん・・・」
荒く、甘く、切ない吐息をつきながらエレーヌはオレの腕の中で悶える。
その悶えるしぐさがもっと見たくて、その可愛らしくも妖しい吐息をもっと聞きたくてオレはさらに大胆に動いた。
くちびる以外のところにくちづけを落としていく。
白くてすらりとした首筋に、ピンク色のソバージュの髪に、そして頬に・・・
今までエレーヌが流していた涙に吸い付き、さらに舐め上げる。
「んぅ・・・あり・・・がとう・・・」
涙をぬぐってくれたのが嬉しかったのかエレーヌが感謝の言葉を漏らす。
「妻が流した涙を放っておけるかっての」
そう言いながらオレはもう一方の頬あった涙の跡をキスでぬぐう。
頬にくちづけをしたら、次は耳にうつった。
「ん・・・はふ・・・エレーヌ・・・」
わざと音を立てて舌とくちびるでエレーヌの耳を愛撫し、さらに吐息を吹きかけたり彼女の名前を囁いたりする。
・・・こんなこと、AVとかを見ているだけじゃ全然思いつかない愛撫だったな・・・
これも「検証」の成果だったりする。
だけど、やっぱり喜ぶのは・・・
「ひゃ、あん・・・♪」
背中を撫でる動きからさりげなくビキニのブラを取り去り、母親となって一段と大きくなった胸を愛撫する。
エレーヌの口から甘く、甲高い嬌声が上がった。
吐息のあえぎ声とはまた違う色っぽい反応に押され、オレはさらにエレーヌを攻めた。
可愛らしく立ちあがり、早く触ってと自己主張している頂点を指先でいじる。
「あっ♪ ああっ・・・そんな、ダメェ」
ダメと言っても身体は正直だ。
だが、今の「ダメ」はもうひとつ意味を含んでいる。
「ユウタ・・・私にもさせて・・・」
エレーヌがオレの股間をズボンの上から撫でた。
「んふふ・・・もうこんなにビンビンにしちゃって♪」
「仕方がないだろう。エレーヌのそんなエッチな姿を見てたんだから・・・」
「まぁ、これで無反応だったら悔しすぎるもんね〜♪」
先ほどまで泣いていた姿はどこへやら、エレーヌは明るい口調でオレのズボンを脱がせにかかる。
エレーヌが脱がせやすいようにオレは身体を動かして調整した。
こう言うときは相手に脱がせるのがオレ達の間でのお約束だ。
下着も取り去ったエレーヌが眼をキラキラさせてオレのシンボルを見つめる。
「あんまり見ないでくれ。ちょっと恥ずかしい・・・」
「何をいまさら言っているのよ・・・んふふ、こんなに大きくなってる♪」
「エレーヌだって・・・」
胸の愛撫を止め、エレーヌの下腹部に手をやる。
表面を撫で上げただけでぬちゅっとオレの指に粘液が絡みつく。
見えないけど・・・
「すごく濡れている・・・」
「ん・・・ユウタが上手いからだよ♪」
そう言われると男として嬉しい。
「まぁ、二人でいろいろ『検証』したもんな・・・くっ」
「そうね・・・ん・・・あん♪」
互いの性器をいじり合い、そこから走る快感に声を上げる。
しばらくそうしていたが突然エレーヌが起き上がり、オレの下腹部に顔を寄せた。
「エレーヌ、お前だけがそれをしなくても・・・」
「いいの、させて・・・」
それだけ言ってエレーヌはそっとオレのモノにくちづけし、そのまま咥えこんだ。
「くっ・・・」
快楽に声を上げ、半身を起こすが止めはしない。
だがその間何もしないわけではなく、エレーヌのピンクのソバージュヘアを撫でたり耳を撫でたり、すべすべの背中を撫でたりする。
「んっ、んっ、んんっ♪」
くぐもった声をあげながらエレーヌはオレに口唇愛撫を続けた。
エレーヌと交わり始めたころはすぐにでも止めさせてシックスナインをしようとしたが、今はそのようなことをせず、エレーヌに任せたりすることもある。
昔は「自分ばかりではなく、相手にも気持ち良くなって欲しい」という気持ちが強かった。
その気持ちに嘘偽りはないけど、今思い返してみると、相手に尽くされることにどこか恐怖を感じていたように思える。
自分にここまでされる資格や魅力があるだろうか・・・なさそうだから、それが申し訳なく感じるから、相手のことも愛撫する・・・そんな気持ちがあった。
だが今なら・・・エレーヌに愛されているという実感がオレに自信と余裕を持たせていた。
たぶん、エレーヌも同じ気持ちだと思う。
互いに昔だったら「一方的だ」という相手の行為を、今はある程度受け入れられている。
アルコールが飲めるようになったとかそれだけじゃなく、大人に近づけたのだろうと思う。
「んっ♪ じゅっぷじゅっぷ・・・れろ・・・じゅるり・・・」
行為だけじゃない。
内容も余裕が出てきた。
昔は相手の気持ちいいところをいじってとにかく気持ち良くしようと思っていた。
だが今では互いに気持ちいい時間を楽しもうとしている。
オレは髪や背中を撫でることを楽しみ、エレーヌもそれを嬉しそうに目を細めて受けていた。
「くすっ、ユウタの顔がとろけてる♪ 気持ちいい?」
そう笑いかけてエレーヌは再びオレの肉棒に口を這わせた。
舌が柔らかく亀頭へと絡み、いたわるように締めつけ、くちびるは竿をぬるりとしごく。
舌もくちびるもまったりとした甘いフェラチオ・・・
オレはその甘い恍惚感を楽しみ、エレーヌもそんなとろけたオレの痴態を観賞しながら自分の秘所をくちゅくちゅといじっている。
時々腰がピクピクと跳ね上がり、サラサラな粘液を魚の下半身を伝い落ちているところを見ると、小さな絶頂を何度も味わっているようだ。
いつまでもこんな時間を味わうのも悪くないのだが・・・
「んっ、見て・・・」
エレーヌが今まで自分をいじっていた手をオレの前でかざす。
「あたしの手、こんなになっちゃった・・・ユウタのを咥えているだけで何度もイッているのよ・・・」
そう言って舌を突き出し、自分の愛液を舐めとって見せる。
その表情はとても淫らで、2年前にはなかった大人な妖艶さがあった。
「じゃあ、ユウタにもそろそろイッてもらうわね♪」
またオレのモノがエレーヌの口の中に消える
「くっ、うあ・・・!」
エレーヌへの手の愛撫を止め、のけぞりながらオレは声を上げる。
エレーヌの口の中ではオレのモノが激しく愛撫されていた。
何度も夫婦として肌を重ね、何度も愛撫し、弱点を知り尽くした舌がオレを攻める。
舌だけじゃない。
口内粘膜もくちびるも、オレを射精させようと激しく蠢く。
甘いフェラチオもいいが、その戯れもおしまいだ。
「エレーヌ、もう・・・!」
オレの言葉にエレーヌはいいよと言うようにこくこくと首を縦に振った。
それを見た瞬間、オレの背筋にゾクゾクと痺れが走る。
腰に溜まっていた快感が弾け、その勢いに白濁液がオレのモノからエレーヌの口の中へと出される。
「んぅ、んんんっ♪」
エレーヌは嬉しそうに目を細めながらそれを一滴もこぼすことなく飲み下していく。
「んっ・・・ぷはっ♪ うふふ、ユウタのミルクセーキ、全部飲んじゃった。濃くてとってもおいしい・・・♪」
全部飲みほしたことを見せつけるかのようにエレーヌはくちびるをなめて見せる。
その色っぽい仕草にオレのモノは再び力を取り戻していく。
学生の性欲をなめるな、なんて言っていた2年前だったけど、学生じゃなくなっても性欲は高校生のときと変わっていないようだ。
『それだけ、エレーヌが好きってことか』
思わず笑みがこぼれる。
それはエレーヌも同じようだった。
「ねぇユウタ・・・あなたが欲しいの・・・」
「おう。オレも・・・エレーヌが欲しい」
半身を起し、エレーヌをゆっくりと押し倒す。
そしてオレのモノをエレーヌのものに当て、腰を沈めていった。
「はっ、はああああぁん♪」
「うっ、くっ」
のびやかな嬌声と切羽詰まった声が絡み合う。
エレーヌのそこは昔と変わらず熱くてどろどろしていてぐちゅぐちゅで、それでいて力強くきつく、オレのモノを締めあげ、オレを求めていた。
「ユウタぁ、気持ちいい、気持ちいいよぅ♪ ふああああっ」
動いてもいないのにエレーヌがあられもない嬌声をあげて乱れる。
「エレーヌ・・・オレも、気持ちいいよ・・・とけて、しまいそ・・・うだ」
さっきフェラチオで出したばかりだと言うのに、歯を食いしばっていないとあっという間に果ててしまいそうだ。
そのくらいエレーヌの身体は良かった。
オレは他の女を知らないけど、オレにはこれ以上相性のいい女性は考えられない。
相性がいいのは身体だけではない。
「・・・んっ、ちゅる・・・ん、ユウタぁ・・・あむっ、んちゅ」
「ちゅ・・・んはっ、エレーヌ・・・んっ、ちゃ、ちゅる・・・」
何も言わなくても激しく腰を動かさず、繋がったまま互いのくちびるを求める。
互いに繋がりあい、肌を重ねている時間を楽しむ。
オレがちょっと冗談を言うとエレーヌがくすくすと笑い、その振動がオレに伝わるのが心地いい。
「重くないか、エレーヌ」
「ううん、大丈夫よ。でも、髪が砂まみれになるのはちょっと・・・ね」
「あ・・・」
そう言えばここはベッドじゃなくて砂浜だった。
砂浜にじかに後頭部をつけているエレーヌは、オレからは見えないが砂まみれになっているだろう。
「ちょっと待ってくれ」
そう言ってオレはエレーヌの頭の後ろに左腕を回す。
そして抜かずにエレーヌと一緒に身体を左側に回転させ、互いに横向きに横たわるようにした。
ちょうど腕枕をしながら二人一緒に向き合って、交わっている感じだ。
「んふふ♪ 腕枕しながらっていいわね。 んっ、あっ、はぅ・・・」
腕枕の感触に嬉しそうにしていたエレーヌだったがオレが緩やかに腰を動かすと目をトロンとさせ、口を半開きにしてあえいだ。
「エレーヌ・・・すごく、エッチな顔をしている・・・」
そんなエレーヌにオレは耳を撫でたり背中を撫でたりする。
エレーヌも目を閉じ、口を軽く開けて言葉にならない言葉を浮かべていた。
こうまったりとするのも悪くない。
互いにつながり、互いのぬくもりと重みを感じ、互いの気持ちを感じ合う・・・
しばらくオレ達はそうしていたが・・・
でも・・・
「ねぇユウタ・・・上に乗っていい? もう・・・我慢できない♪」
魔物娘は精を、男も魔物娘も快楽の果ての絶頂を、そして・・・それらを抜きにして二人は互いを激しく求める。
「なんか今日、オレが受け身にばかりなっている気がするけど・・・」
「い〜の♪ レストランもカクテルもみんなユウタのサービスだったんだから、今日はゆっくりしていて・・・そして、一緒に気持ち良くなろう?」
そう言いながらエレーヌは身体をひねって俺の上に跨った。
そして激しく腰を弾ませる。
「んあっ! いいっ♪ いいのぉ! ユウタのおちんちんいいのぉ!」
先ほどのとろけた声とは一転、エレーヌは髪を振り乱して大きな声であられもない言葉を叫ぶ。
「あたし・・・あたしっ! ユウタとセックス・オン・ザ・ビーチを飲んで浜辺でエッチしているのぉ! 大好きなユウタと浜辺でエッチが出来て幸せなのぉ♪」
そう言えば、ここに来てSex on the Beachを飲んでいたんだったなとオレはちらっと思い出す。
と言うか、このためにここに来たんだった・・・
だが思い出していた間はほんの少しだけ・・・エレーヌの「幸せ」と言う言葉にオレも胸がいっぱいになっていた。
その気持ちに突き動かされるように、オレは腰を突き上げる。
「あっ!? あああ♪ ユウタも下から突いてくれているぅ♪ ふああん♪ 気持ち良すぎて・・・おかしくなっちゃう・・・!」
エレーヌがオレの後頭部へと腕を回し、オレの頭を掻き抱き、さらにオレの半身を起こした。
そのまま大事そうに、抱え込むようにしてオレを抱きしめる。
「ふぁあっ! ユウタ、ユウタぁ・・・あたしのダイスキな・・・大切なユウタぁ♪」
「っ・・・エレーヌ、オレの・・・大切な・・・スキな・・・!」
互いの声が切羽詰まっている。
エレーヌもそうだろうが、オレももうそろそろ限界だった。
「ふああっ! ユウタのがあたしの中でまた大きくなって・・・出そうなんだよね? いいよ、出してっ・・・! あたしの子宮にどぴゅどぴゅって・・・ああん! あたしも・・・もう・・・我慢できない・・・!」
オレを離すまいとするようにエレーヌの腕に力がこもり、締めつけられる。
だが締めつけてくるのは腕だけでなく、エレーヌの性器もそうだった。
「ひゃっ! ふああぁあああぁぁああ♪」
ぎゅぎゅぎゅっとエレーヌの膣がオレの精を搾りだそうと激しく締めつけ、律動する。
「っく・・・!」
それに耐えかね、どくん、どくんとオレのモノが脈打ち、精液を愛しい人の中に気持ちをぶちまけるように吐き出していく。
「んぅ・・・出てりゅ・・・だいしゅきなユウタのせーえきが・・・」
呂律が回らない舌でエレーヌは幸せそうにそうつぶやき、震える身体でオレの精液を受け止めて行く。
しばらくオレたちはそのままの状態で硬直していたが、やがて二人同時に糸が切れた人形のように砂浜に崩れ落ちた。
「はぁ、はぁ・・・ねぇ、ユウタ・・・」
「エレーヌ・・・」
互いの名前を呼ぶ。
そして幾度となく交わした言葉をまた交わす。
「「ダイスキ・・・」」
そして見つめ合って口づけを交わした。
翌朝・・・
「〜〜〜〜っ」
オレはビーチのサービスの朝食を断った。
二日酔いとまでいかなくても昨日の酒が残っていて、食欲が出なかったのだ。
あのあと、二回戦三回戦・・・五回から先は覚えていない。
そのくらい激しかった・・・
強いアルコールを摂取してあんなにハッスルしたらいつも以上に酒が回るっての・・・
意図せず残った、Sex on the Beachの材料のパイナップルジュースで朝食を済ませる。
「も〜う、情けないぞぉ♪」
そんなオレの様子を苦笑して見ながらエレーヌは朝食をオレの分まで食べていた。
う〜む、元いた世界では空手をやっていて、体力などには自信があったけど、お酒の強さはエレーヌの方が上だったようだ。
「でも、大丈夫? 気分悪い? 記憶はある?」
「気分はちょっと悪いが、記憶はある。忘れるはずないじゃないか」
「・・・あ、いや。ちょっと忘れて欲しいかも」
食事の手を止め、エレーヌがぽつりとつぶやく。
「あのね、ゆうた・・・その・・・」
少し恥ずかしそうにしているエレーヌが、蚊の泣くような小さな声で言う。
「・、・・が・・」
「今なんと?」
「ううん! 何でもない!」
照れ隠しをするようにエレーヌはバターロールにかぶりつく。
だが・・・
訊き返したけど、エレーヌがつぶやいた言葉はちゃんとオレの耳に届いていた。
『ありがとう』
いいえ、どういたしまして。
泣いている妻を助け、癒すのは夫として・・・いや、男として当然だろう?
最近、水の都=シアーズに限らず、親魔物領で大流行の本がある。
『桃色恋愛物語―コイバナ―』
とあるメロウが書いた、さまざまな恋愛話の載った一冊である。
恋をしたことのない人、恋をしている魔物娘、また愛し合っているカップル必見のこの本。
著者がメロウなためかもちろん年齢制限はついているが、その分を差引いたとしても内容は多くのものが共感、感動できるもののため、大流行のようだ。
しかし現実は小説より奇かな、内容のごく一部は著者と、彼女の赤い帽子をかぶった夫の現実にあった話である。
それを推測できる者も多いらしいが、どの話がそれなのかを見抜けている人は皆無である・・・
「ほうら・・・こんなので気持ち良くされてみじめじゃないの?」
「あひぃ!」
「・・・ちょっと、さっきからあえぎ声が全部『あひぃ!』じゃない?」
「いや、とあるドMの勇者のあえぎ声はこれがデフォルトと聞いたからさ・・・」
「あははっ! 何それ? でもそれをわざわざ持ってくると言うことは・・・こういうプレイは嫌い?」
「まぁなぁ・・・一方通行な無理やり系は男からだろうと女からだろうと、ちょっと勘弁」
「ん〜・・・やっぱりアイデアに詰まるといいものが出てこないわね。」
「だからって変にシチュエーションやらプレイをこだわるのもなぁ・・・ 執筆作業一旦休んだらどうだ?」
「でも好きでしょ? ほら、こんなのとか」
「あっ、く・・・エレーヌ・・・っ」
「ほぅら、ユウタの本気のあえぎ声が出てきた♪ 可愛い♪」
「エレーヌだって・・・」
「あぁんっ♪ 積極的ぃ・・・♪」
「するのも好きだけど、されるのも好きだろう?」
「ええ、とってもスキよ♪」
「そりゃよかった。ん。」
「んんっ♪」
うう、やっぱりちょっとめまいがする・・・
「うう、本当はあたしも可憐な淑女に憧れたりしたわよ・・・マリンさんみたいなおしとやかな人になりたいと思ったりもしたわよ・・・」
それは無理だという言葉を必死で飲みこみ、オレはエレーヌの言葉に耳を傾ける。
そして初めて知った。
どうもエレーヌは酔うと泣き上戸になるらしい。
そう言えば、互いにベロンベロンになるまで飲んだことがなかったな・・・
オレに背を向けた状態でエレーヌは肩を震わせて泣きながら続ける。
「でも無理だった・・・ぐすっ、メロウの本能のせいで猥談を封じるなんてことができなかったの・・・ひぐっ」
本当に本能のせいで抑えられないのかと疑問に思うけど、それも飲み込む。
それでも・・・可憐な淑女に憧れていたと言うのは本音なのかもしれない。
エレーヌは親しみやすい性格しているのに、日常会話でもエロい言葉を混ぜる、魔物娘でもドン引きなほどの破廉恥ぶりなので、あまり友人は多いほうではない。
普段はメロウらしく明るく振舞っているが、意外と気にしていたようだ。
「うう・・・ぐすん、ううう・・・」
エレーヌが泣いている・・・彼女を慰めたくて、何か言ってあげたくてオレはフラフラと近寄り、後ろから抱きしめた。
「はうっ!? ユ、ユウタ・・・?」
「エレーヌ・・・」
口を開いて何か言おうとするが、酔っていて頭が働かず、何も言えない。
くそっ、酔っていると大胆なことができるが、こう言うときに何もできなくなってしまうのが難点だ。
「その・・・なんだ。みんな多分エレーヌのことを良く知らないだけだと思うんだ・・・」
いつも破廉恥なことばかり言っているように見えるエレーヌだが、実際はそうではない一面を多く持っていることをオレは知っている。
娘のユリアの世話をしているときのエレーヌは普段も真剣だ(もっとも、子守唄や話しかけている内容は破廉恥だけど)
教団の理不尽な行動のニュースに怒りを示しているときも、その怒りは真剣だ。
そして・・・『桃色恋愛話―コイバナ―』にかけている想いと執筆しているときの態度は真剣そのものだ。
「だからさ・・・あの本を成功させて、ただエロいだけじゃなくて、それを表現してみんなに届けることができるところを魅せないか?」
「ん・・・うん、そうだね。ちょっと酔いすぎちゃったみたい。ありがとう、ゆうた」
涙を流しながらエレーヌはにこりと笑った。
普段では見られないその姿に不謹慎ながらも胸がときめく。
「ねぇ・・・」
そんないつもとちがう、泣きはらして濡れているエメラルド色の瞳でオレを見ながらエレーヌがささやく。
「・・・抱いて、エッチして、セックスして」
・・・いくら泣き上戸でも、酔うとエッチになるのはエレーヌも変わらなかった。
「ん・・・はふ、あむっ、んちゅる・・・ユウタ・・・・ユウタぁ・・・」
キスをしながら切なげな声でエレーヌがオレを呼ぶ。
互いに、くちびるの端からよだれを垂らしながら激しく相手のくちびるをむさぼる。
キスの激しさは2年前、初めてエッチしたときと変わらない。
だが、キスの技術は2年前と比べてだいぶ上達したと思う。
昔は舌をからませたり歯列をなぞったりするだけだったが、今はそれだけではなく、舌同士をつつき合わせたり相手の舌を吸ってくちびるでしごいたり、くちびるは重ねずに舌だけを絡め合わせたり相手のくちびるを甘噛みしたり・・・
こんなふうにすることになったのも、二人でいろいろ「検証」したからだ。
エロに関して二人の意見が食い違ったときに俺達は「検証」と言って実際にそれを互いに試したりしている。
そうして互いの弱点やイイトコロを探っていった。
もちろん、「エロに関して」と言った通り、検証したのはキスだけじゃない。
抱きしめるために背中にまわしていた腕に仕事をさせる。
さわっと5本の指先でエレーヌの背中を撫でる。
「ふぅんっ!?」
ビクッとエレーヌの身体が震えた。
一見するとくすぐったがっているだけのように見えるが、実際はそうじゃないことを何度も身体を重ねたオレは知っている。
構わずオレは背中を撫で、もう一方の手はエレーヌの耳裏を撫でた。
「ふああっ・・・ユウタぁ、そんなにしちゃ・・・ああぁん・・・」
荒く、甘く、切ない吐息をつきながらエレーヌはオレの腕の中で悶える。
その悶えるしぐさがもっと見たくて、その可愛らしくも妖しい吐息をもっと聞きたくてオレはさらに大胆に動いた。
くちびる以外のところにくちづけを落としていく。
白くてすらりとした首筋に、ピンク色のソバージュの髪に、そして頬に・・・
今までエレーヌが流していた涙に吸い付き、さらに舐め上げる。
「んぅ・・・あり・・・がとう・・・」
涙をぬぐってくれたのが嬉しかったのかエレーヌが感謝の言葉を漏らす。
「妻が流した涙を放っておけるかっての」
そう言いながらオレはもう一方の頬あった涙の跡をキスでぬぐう。
頬にくちづけをしたら、次は耳にうつった。
「ん・・・はふ・・・エレーヌ・・・」
わざと音を立てて舌とくちびるでエレーヌの耳を愛撫し、さらに吐息を吹きかけたり彼女の名前を囁いたりする。
・・・こんなこと、AVとかを見ているだけじゃ全然思いつかない愛撫だったな・・・
これも「検証」の成果だったりする。
だけど、やっぱり喜ぶのは・・・
「ひゃ、あん・・・♪」
背中を撫でる動きからさりげなくビキニのブラを取り去り、母親となって一段と大きくなった胸を愛撫する。
エレーヌの口から甘く、甲高い嬌声が上がった。
吐息のあえぎ声とはまた違う色っぽい反応に押され、オレはさらにエレーヌを攻めた。
可愛らしく立ちあがり、早く触ってと自己主張している頂点を指先でいじる。
「あっ♪ ああっ・・・そんな、ダメェ」
ダメと言っても身体は正直だ。
だが、今の「ダメ」はもうひとつ意味を含んでいる。
「ユウタ・・・私にもさせて・・・」
エレーヌがオレの股間をズボンの上から撫でた。
「んふふ・・・もうこんなにビンビンにしちゃって♪」
「仕方がないだろう。エレーヌのそんなエッチな姿を見てたんだから・・・」
「まぁ、これで無反応だったら悔しすぎるもんね〜♪」
先ほどまで泣いていた姿はどこへやら、エレーヌは明るい口調でオレのズボンを脱がせにかかる。
エレーヌが脱がせやすいようにオレは身体を動かして調整した。
こう言うときは相手に脱がせるのがオレ達の間でのお約束だ。
下着も取り去ったエレーヌが眼をキラキラさせてオレのシンボルを見つめる。
「あんまり見ないでくれ。ちょっと恥ずかしい・・・」
「何をいまさら言っているのよ・・・んふふ、こんなに大きくなってる♪」
「エレーヌだって・・・」
胸の愛撫を止め、エレーヌの下腹部に手をやる。
表面を撫で上げただけでぬちゅっとオレの指に粘液が絡みつく。
見えないけど・・・
「すごく濡れている・・・」
「ん・・・ユウタが上手いからだよ♪」
そう言われると男として嬉しい。
「まぁ、二人でいろいろ『検証』したもんな・・・くっ」
「そうね・・・ん・・・あん♪」
互いの性器をいじり合い、そこから走る快感に声を上げる。
しばらくそうしていたが突然エレーヌが起き上がり、オレの下腹部に顔を寄せた。
「エレーヌ、お前だけがそれをしなくても・・・」
「いいの、させて・・・」
それだけ言ってエレーヌはそっとオレのモノにくちづけし、そのまま咥えこんだ。
「くっ・・・」
快楽に声を上げ、半身を起こすが止めはしない。
だがその間何もしないわけではなく、エレーヌのピンクのソバージュヘアを撫でたり耳を撫でたり、すべすべの背中を撫でたりする。
「んっ、んっ、んんっ♪」
くぐもった声をあげながらエレーヌはオレに口唇愛撫を続けた。
エレーヌと交わり始めたころはすぐにでも止めさせてシックスナインをしようとしたが、今はそのようなことをせず、エレーヌに任せたりすることもある。
昔は「自分ばかりではなく、相手にも気持ち良くなって欲しい」という気持ちが強かった。
その気持ちに嘘偽りはないけど、今思い返してみると、相手に尽くされることにどこか恐怖を感じていたように思える。
自分にここまでされる資格や魅力があるだろうか・・・なさそうだから、それが申し訳なく感じるから、相手のことも愛撫する・・・そんな気持ちがあった。
だが今なら・・・エレーヌに愛されているという実感がオレに自信と余裕を持たせていた。
たぶん、エレーヌも同じ気持ちだと思う。
互いに昔だったら「一方的だ」という相手の行為を、今はある程度受け入れられている。
アルコールが飲めるようになったとかそれだけじゃなく、大人に近づけたのだろうと思う。
「んっ♪ じゅっぷじゅっぷ・・・れろ・・・じゅるり・・・」
行為だけじゃない。
内容も余裕が出てきた。
昔は相手の気持ちいいところをいじってとにかく気持ち良くしようと思っていた。
だが今では互いに気持ちいい時間を楽しもうとしている。
オレは髪や背中を撫でることを楽しみ、エレーヌもそれを嬉しそうに目を細めて受けていた。
「くすっ、ユウタの顔がとろけてる♪ 気持ちいい?」
そう笑いかけてエレーヌは再びオレの肉棒に口を這わせた。
舌が柔らかく亀頭へと絡み、いたわるように締めつけ、くちびるは竿をぬるりとしごく。
舌もくちびるもまったりとした甘いフェラチオ・・・
オレはその甘い恍惚感を楽しみ、エレーヌもそんなとろけたオレの痴態を観賞しながら自分の秘所をくちゅくちゅといじっている。
時々腰がピクピクと跳ね上がり、サラサラな粘液を魚の下半身を伝い落ちているところを見ると、小さな絶頂を何度も味わっているようだ。
いつまでもこんな時間を味わうのも悪くないのだが・・・
「んっ、見て・・・」
エレーヌが今まで自分をいじっていた手をオレの前でかざす。
「あたしの手、こんなになっちゃった・・・ユウタのを咥えているだけで何度もイッているのよ・・・」
そう言って舌を突き出し、自分の愛液を舐めとって見せる。
その表情はとても淫らで、2年前にはなかった大人な妖艶さがあった。
「じゃあ、ユウタにもそろそろイッてもらうわね♪」
またオレのモノがエレーヌの口の中に消える
「くっ、うあ・・・!」
エレーヌへの手の愛撫を止め、のけぞりながらオレは声を上げる。
エレーヌの口の中ではオレのモノが激しく愛撫されていた。
何度も夫婦として肌を重ね、何度も愛撫し、弱点を知り尽くした舌がオレを攻める。
舌だけじゃない。
口内粘膜もくちびるも、オレを射精させようと激しく蠢く。
甘いフェラチオもいいが、その戯れもおしまいだ。
「エレーヌ、もう・・・!」
オレの言葉にエレーヌはいいよと言うようにこくこくと首を縦に振った。
それを見た瞬間、オレの背筋にゾクゾクと痺れが走る。
腰に溜まっていた快感が弾け、その勢いに白濁液がオレのモノからエレーヌの口の中へと出される。
「んぅ、んんんっ♪」
エレーヌは嬉しそうに目を細めながらそれを一滴もこぼすことなく飲み下していく。
「んっ・・・ぷはっ♪ うふふ、ユウタのミルクセーキ、全部飲んじゃった。濃くてとってもおいしい・・・♪」
全部飲みほしたことを見せつけるかのようにエレーヌはくちびるをなめて見せる。
その色っぽい仕草にオレのモノは再び力を取り戻していく。
学生の性欲をなめるな、なんて言っていた2年前だったけど、学生じゃなくなっても性欲は高校生のときと変わっていないようだ。
『それだけ、エレーヌが好きってことか』
思わず笑みがこぼれる。
それはエレーヌも同じようだった。
「ねぇユウタ・・・あなたが欲しいの・・・」
「おう。オレも・・・エレーヌが欲しい」
半身を起し、エレーヌをゆっくりと押し倒す。
そしてオレのモノをエレーヌのものに当て、腰を沈めていった。
「はっ、はああああぁん♪」
「うっ、くっ」
のびやかな嬌声と切羽詰まった声が絡み合う。
エレーヌのそこは昔と変わらず熱くてどろどろしていてぐちゅぐちゅで、それでいて力強くきつく、オレのモノを締めあげ、オレを求めていた。
「ユウタぁ、気持ちいい、気持ちいいよぅ♪ ふああああっ」
動いてもいないのにエレーヌがあられもない嬌声をあげて乱れる。
「エレーヌ・・・オレも、気持ちいいよ・・・とけて、しまいそ・・・うだ」
さっきフェラチオで出したばかりだと言うのに、歯を食いしばっていないとあっという間に果ててしまいそうだ。
そのくらいエレーヌの身体は良かった。
オレは他の女を知らないけど、オレにはこれ以上相性のいい女性は考えられない。
相性がいいのは身体だけではない。
「・・・んっ、ちゅる・・・ん、ユウタぁ・・・あむっ、んちゅ」
「ちゅ・・・んはっ、エレーヌ・・・んっ、ちゃ、ちゅる・・・」
何も言わなくても激しく腰を動かさず、繋がったまま互いのくちびるを求める。
互いに繋がりあい、肌を重ねている時間を楽しむ。
オレがちょっと冗談を言うとエレーヌがくすくすと笑い、その振動がオレに伝わるのが心地いい。
「重くないか、エレーヌ」
「ううん、大丈夫よ。でも、髪が砂まみれになるのはちょっと・・・ね」
「あ・・・」
そう言えばここはベッドじゃなくて砂浜だった。
砂浜にじかに後頭部をつけているエレーヌは、オレからは見えないが砂まみれになっているだろう。
「ちょっと待ってくれ」
そう言ってオレはエレーヌの頭の後ろに左腕を回す。
そして抜かずにエレーヌと一緒に身体を左側に回転させ、互いに横向きに横たわるようにした。
ちょうど腕枕をしながら二人一緒に向き合って、交わっている感じだ。
「んふふ♪ 腕枕しながらっていいわね。 んっ、あっ、はぅ・・・」
腕枕の感触に嬉しそうにしていたエレーヌだったがオレが緩やかに腰を動かすと目をトロンとさせ、口を半開きにしてあえいだ。
「エレーヌ・・・すごく、エッチな顔をしている・・・」
そんなエレーヌにオレは耳を撫でたり背中を撫でたりする。
エレーヌも目を閉じ、口を軽く開けて言葉にならない言葉を浮かべていた。
こうまったりとするのも悪くない。
互いにつながり、互いのぬくもりと重みを感じ、互いの気持ちを感じ合う・・・
しばらくオレ達はそうしていたが・・・
でも・・・
「ねぇユウタ・・・上に乗っていい? もう・・・我慢できない♪」
魔物娘は精を、男も魔物娘も快楽の果ての絶頂を、そして・・・それらを抜きにして二人は互いを激しく求める。
「なんか今日、オレが受け身にばかりなっている気がするけど・・・」
「い〜の♪ レストランもカクテルもみんなユウタのサービスだったんだから、今日はゆっくりしていて・・・そして、一緒に気持ち良くなろう?」
そう言いながらエレーヌは身体をひねって俺の上に跨った。
そして激しく腰を弾ませる。
「んあっ! いいっ♪ いいのぉ! ユウタのおちんちんいいのぉ!」
先ほどのとろけた声とは一転、エレーヌは髪を振り乱して大きな声であられもない言葉を叫ぶ。
「あたし・・・あたしっ! ユウタとセックス・オン・ザ・ビーチを飲んで浜辺でエッチしているのぉ! 大好きなユウタと浜辺でエッチが出来て幸せなのぉ♪」
そう言えば、ここに来てSex on the Beachを飲んでいたんだったなとオレはちらっと思い出す。
と言うか、このためにここに来たんだった・・・
だが思い出していた間はほんの少しだけ・・・エレーヌの「幸せ」と言う言葉にオレも胸がいっぱいになっていた。
その気持ちに突き動かされるように、オレは腰を突き上げる。
「あっ!? あああ♪ ユウタも下から突いてくれているぅ♪ ふああん♪ 気持ち良すぎて・・・おかしくなっちゃう・・・!」
エレーヌがオレの後頭部へと腕を回し、オレの頭を掻き抱き、さらにオレの半身を起こした。
そのまま大事そうに、抱え込むようにしてオレを抱きしめる。
「ふぁあっ! ユウタ、ユウタぁ・・・あたしのダイスキな・・・大切なユウタぁ♪」
「っ・・・エレーヌ、オレの・・・大切な・・・スキな・・・!」
互いの声が切羽詰まっている。
エレーヌもそうだろうが、オレももうそろそろ限界だった。
「ふああっ! ユウタのがあたしの中でまた大きくなって・・・出そうなんだよね? いいよ、出してっ・・・! あたしの子宮にどぴゅどぴゅって・・・ああん! あたしも・・・もう・・・我慢できない・・・!」
オレを離すまいとするようにエレーヌの腕に力がこもり、締めつけられる。
だが締めつけてくるのは腕だけでなく、エレーヌの性器もそうだった。
「ひゃっ! ふああぁあああぁぁああ♪」
ぎゅぎゅぎゅっとエレーヌの膣がオレの精を搾りだそうと激しく締めつけ、律動する。
「っく・・・!」
それに耐えかね、どくん、どくんとオレのモノが脈打ち、精液を愛しい人の中に気持ちをぶちまけるように吐き出していく。
「んぅ・・・出てりゅ・・・だいしゅきなユウタのせーえきが・・・」
呂律が回らない舌でエレーヌは幸せそうにそうつぶやき、震える身体でオレの精液を受け止めて行く。
しばらくオレたちはそのままの状態で硬直していたが、やがて二人同時に糸が切れた人形のように砂浜に崩れ落ちた。
「はぁ、はぁ・・・ねぇ、ユウタ・・・」
「エレーヌ・・・」
互いの名前を呼ぶ。
そして幾度となく交わした言葉をまた交わす。
「「ダイスキ・・・」」
そして見つめ合って口づけを交わした。
翌朝・・・
「〜〜〜〜っ」
オレはビーチのサービスの朝食を断った。
二日酔いとまでいかなくても昨日の酒が残っていて、食欲が出なかったのだ。
あのあと、二回戦三回戦・・・五回から先は覚えていない。
そのくらい激しかった・・・
強いアルコールを摂取してあんなにハッスルしたらいつも以上に酒が回るっての・・・
意図せず残った、Sex on the Beachの材料のパイナップルジュースで朝食を済ませる。
「も〜う、情けないぞぉ♪」
そんなオレの様子を苦笑して見ながらエレーヌは朝食をオレの分まで食べていた。
う〜む、元いた世界では空手をやっていて、体力などには自信があったけど、お酒の強さはエレーヌの方が上だったようだ。
「でも、大丈夫? 気分悪い? 記憶はある?」
「気分はちょっと悪いが、記憶はある。忘れるはずないじゃないか」
「・・・あ、いや。ちょっと忘れて欲しいかも」
食事の手を止め、エレーヌがぽつりとつぶやく。
「あのね、ゆうた・・・その・・・」
少し恥ずかしそうにしているエレーヌが、蚊の泣くような小さな声で言う。
「・、・・が・・」
「今なんと?」
「ううん! 何でもない!」
照れ隠しをするようにエレーヌはバターロールにかぶりつく。
だが・・・
訊き返したけど、エレーヌがつぶやいた言葉はちゃんとオレの耳に届いていた。
『ありがとう』
いいえ、どういたしまして。
泣いている妻を助け、癒すのは夫として・・・いや、男として当然だろう?
最近、水の都=シアーズに限らず、親魔物領で大流行の本がある。
『桃色恋愛物語―コイバナ―』
とあるメロウが書いた、さまざまな恋愛話の載った一冊である。
恋をしたことのない人、恋をしている魔物娘、また愛し合っているカップル必見のこの本。
著者がメロウなためかもちろん年齢制限はついているが、その分を差引いたとしても内容は多くのものが共感、感動できるもののため、大流行のようだ。
しかし現実は小説より奇かな、内容のごく一部は著者と、彼女の赤い帽子をかぶった夫の現実にあった話である。
それを推測できる者も多いらしいが、どの話がそれなのかを見抜けている人は皆無である・・・
「ほうら・・・こんなので気持ち良くされてみじめじゃないの?」
「あひぃ!」
「・・・ちょっと、さっきからあえぎ声が全部『あひぃ!』じゃない?」
「いや、とあるドMの勇者のあえぎ声はこれがデフォルトと聞いたからさ・・・」
「あははっ! 何それ? でもそれをわざわざ持ってくると言うことは・・・こういうプレイは嫌い?」
「まぁなぁ・・・一方通行な無理やり系は男からだろうと女からだろうと、ちょっと勘弁」
「ん〜・・・やっぱりアイデアに詰まるといいものが出てこないわね。」
「だからって変にシチュエーションやらプレイをこだわるのもなぁ・・・ 執筆作業一旦休んだらどうだ?」
「でも好きでしょ? ほら、こんなのとか」
「あっ、く・・・エレーヌ・・・っ」
「ほぅら、ユウタの本気のあえぎ声が出てきた♪ 可愛い♪」
「エレーヌだって・・・」
「あぁんっ♪ 積極的ぃ・・・♪」
「するのも好きだけど、されるのも好きだろう?」
「ええ、とってもスキよ♪」
「そりゃよかった。ん。」
「んんっ♪」
11/07/20 20:45更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
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