第八話 ドラゴン襲来
ソルドを数日前に出発した俺達は今こうして小動物達が姿を見せるような湖の側で昼食を食べていた。
流石塩が特産物なだけあって干し肉とかの旨味が違う、塩辛いだけじゃなく甘みすら感じてしまう。
「むきゅ〜♪今日もお昼ごはんが美味しいんだよ♪」
「のんびりしてるわねぇ〜」
「そうだな、このまま旅もゆっくり進めばいいのになー」
あはははは、あはははは。
鳥の囀りや動物たちの鳴き声を聞きながらまったり・・・いいものだ。
...ぉぉぉ
ん？
「なぁ、今何か聞こえ...」
「二人共構えて！」
二ミュが強い口調でそんな事を言うということは面倒くさいことになりそうだ・・・。
直ぐ様弓を構え、ティナは火を消し周囲を警戒する。
次の瞬間、俺達の目の前に何かが落ちてきた。
「ぐへぇっ」
潰れたヒキガエルのような声を出しながら数度、地面をバウンドして止まったそれは人だった。
思わず目を丸くする俺達をヨソにそいつは直ぐに体制を立て直し剣を構えた。
俺達も武器を構える。
青の髪で身長は俺よりやや小さい、まだ二十歳も超えていないだろうその少年の気配は・・・勇者だった。
あいつと同じだ、神の加護を持っている。
・・・？なんか様子が少しおかしい。
「まったく、こんな所までとばすかね・・・げっ！？そこの人、ここは危険なので直ぐに逃げてください！」
「いきなり何言ってんだよ！？」
「早くっ！...くっ、もう来たか」
「だから説明し「スコッド、どうやらアレのことみたいよ」
ニミュが顔を向けている方を俺とティナも向く。
その向きは上空、斜め７０度。
太陽の光りに照らされるそれは巨大な翼に金色のロングヘアー、後頭部から生えている２本の角、蒼く輝くサファイヤ色の分厚い鱗で覆われた両腕両足そしてゆらゆらと揺れる太い尻尾。
何より、今まで感じたことのない驚異的な威圧感。
それは両腕を豊満な胸の下で組、じっと俺達を見下ろしていた。
「ドラゴン...なのか」
俺のつぶやきにドラゴンが答える。
「応よ雑草、オレこそは地上の王者、ドラゴンのフレイだ。どうした主？雑草等と話している暇はなかろう？」
優雅にその場で飛びとどまるドラゴンを視界に入れたまま勇者に小声で話す。
「なぁ、アレとアンタの関係と今の状況を手短に説明してくれ」
「アレ俺の妻スゲー強くて戦闘中性格悪い、俺貧弱、今地獄の特訓中、貴方達巻き込まれた」
「わかったような分からなかったような・・・」
その会話を聞いていたのかドラゴン・・・じゃなくてフレイが話しだす。
「そうだな、たまにはその場で出会った者との即興で協力するというのもいいかもしれんな・・・おいメス犬、青いハム、人間。我が主と共に攻めて来い」
「ん？犬、人間・・・むっかーー！！！誰が青いハムなんだよぉ！」
青いハム呼ばわりされたティナがブンブンと銛を振り回す、まぁ...寝転がってるところとか確かにハムっぽいかもしれんな。
「男を主って言ってるってことはもう夫婦なんでしょ？だったらそんなメストカゲにメス犬呼ばわりされたくないわね・・・」
なんかこっちもやる気になってるし、のんびりライフは何処へ・・・。
苛立っていたこっちの二人がドラゴンの次の言葉で歓喜の表情へ変わる。
「そうだな...オレを倒せたら先ほど仕留めた魔界豚を共に喰おうではないか」
「肉ぅぅ！！！」
「あぁ、いい塩で食べる焼き魚も美味しかったけど一番は鉄板の上で焼く分厚い肉に粗塩よね！」
おいこら肉食獣共！？
最早二人の目に映っているのは自分たちとは比べ物にならないほど強い、最上位魔物娘ドラゴン・・・ではなくその後ろにあるであろう魔界豚だった。
こうなったらやるしかねぇか！
「おい勇者、名前は？」
「クリスです、スコッドであっていますか？」
「それでいい。はっきり言っておくが俺達三人はコンビネーションとか以前に三人で戦うってことが今までなかった、俺はあんたを援護するから好き勝手やってくれ。こっちのアザラシは武器が銛、狼は蹴りが主だ」
「了解です」
手元にある矢は魔界銀と鉄の合金、魔界鉄の鏃の矢３０本。
それと俺の魔力矢、これが行動不能までとなると２０本。
構える、フレイに向ける・・・よし、手の震えは無いし手に血がべったり付く幻覚もない、コレなら行ける。
さて、勇者様の実力拝見させてもらいましょうかね。
・
・
・
お肉に釣られてつい構えてしまったけど、はっきり言って勝算はないしどうしたものか・・・。
なんて考えながらチラリとティナの方を向くと目を輝かせながら小声でおにくっおにくっなんて言っている、あぁこの子は正直で可愛いなぁ。
「よし、ちょっと小手試し行ってくる」
「気をつけろよニミュ」
愛する男に頷く。
私の武器は爪、鎖、脚力と蹴り、音による探知。
鎖に関しては相手は気づいていない、初手に使うのはやめておこう。
なら。
「ほぅ、まずはワン公か。目隠しをしていても見えているのと同じように扱うぞ？」
「とりあえず私の動きを見てから判断してもらいたいわね」
相手の独壇場に自分から入るのは嫌だけどまずは他のメンバーのことを考えてあいつを引きずり下ろさないといけない。
軽くジャンプし、フレイより少し高いところまで飛びまずはご挨拶。
カキィィンと甲高い音を立てながらぶつかる爪と鱗。
「硬っぁ！」
予想以上の硬度、傷をつけることも出来ず私の爪は弾かれる。
「爪は...こう使うものだ！」
振りかぶるドラゴンの爪、ワーウルフの物とは比べ物にならない程強靭で鋭い爪。
そこらの木程度なら軽く輪切りにしてしまうだろう。
それなら。
「くぅ・・・っ」
出来るかどうかアレだったけど空中でサマーソルトを放ち、フレイの腕を弾いて避けるがこっちの足が痺れて来る。
ワーウルフの足を痺れさせるとかどんだけ馬鹿力なのよ！？
もう落下も始まっているし一回戻るとする。
ずささと地面を軽く滑りながら着地、落ちるときに見ていたが追撃されそうになった所をスコッドが矢を放ち止めてくれた・・・後でフェラしてあげよ。
「すごいですね、陸上生物で空中でドラゴンと何撃かやり合う人を初めて見ました」
「やり合ったというよりこっちは弾かれて向こうの攻撃は弾いたらこっちの足がイカれそうになってるけどね・・・」
「それでもです」
さっきのスコッドとの会話を聞いていて把握はしているけど、アレの相手を毎回していると思うとこの男の事が少し気の毒になってくる。
さて、対策はよく知ってる人から聞かないとね。
「ねぇ、地面に引きずり下ろす方法ってない？」
「言えば降りてくれますが地に降りたフレイは腕の力だけじゃなく全身の力で爪を振るうので手が付けられないですよ」
「なんとなく理解したわ、でどうするのユウシャサマは」
腕の力だけでさっきの感じと考えると、全身を使っての一撃を考えたら・・・・左足が震えだす。
そんな時痺れを切らしたティナがぷんすか言いながらこっちに来た。
「むー！ごにょごにょ言ってないで早く行きたいんだよ！」
「いいや、幾らでも相談していいぞ。まぁ・・・あまり長すぎると痺れを切らして火を噴くかもしれんがな」
「ほらー、ドラゴンもあぁいってるんだよ！」
そんなこと言ってもねぇ・・・ただでさえこっちはドラゴンと比べてスペックが低いんだから作戦考えないと・・・。
「クリス、あのドラゴンは水の中ってどうだ？」
小声でスコッドがクリスに話す。
「分かりません、泳いでいる所を見たことがないので・・・羽が濡れたり動きにくくなるとは思います」
「よし、ティナ、ニミュ二人にも作戦を言っておく。はっきり言ってドラゴンとやり合うのはゴメンだがお前らの嬉しそうな顔見てるとやるしかあるまい」
・・・食い意地はった女とか思われていないか心配になった。
・
・
・
遊ばれているとしか言えない状況だった。
致命傷になりかねない攻撃は全て躱すか握りつぶして停める。
そもそもダメージにならない攻撃は放置して鱗に弾かれる。
ティナの銛は全て躱され、ニミュの爪は弾かれ、クリスの剣は防がれ、俺の矢は握りつぶされる。
「おいクリス！お前今まで1人でどうやっていたんだ！」
「コレより手加減されて、この状況と全く同じ状態です！」
「魔物娘の戦闘力化け物すぎるっつーの！！！」
「誰の嫁がバケモノですか！！」
「コイツめんどくせぇ！てか罵倒してねぇだろ！」
フェイント含め全て放った瞬間に何処に当たるのか理解しているようで鱗で弾くことが出来る物は放置、肌に当たるものは爪で木っ端微塵にされる。
実体矢あと１０本。
「すげー、あの二人口喧嘩しながらドラゴンとやり合ってるんだよ。しかも息ぴったり」
「男同士だからなのか、勇者と勇者を補佐してた弓兵だからなのか・・・さて、準備しようかティナ」
「あらほらさっさー」
ティナとニミュが作戦配置に着きそうなのを横目に見ながら自分たちで持たせることが出来る秒数を計算する。
そしてやりたくはないが思いつきの一発勝負の新技もヤらなければ持ちそうにない。
「ぐあああぁ！？」
「クリスッ！ちぃっ！」
不意を突かれたクリスがフレイの尻尾で突き飛ばされ１０ｍ程後方に。
となるとドラゴンの眼の前に居るのは俺だけで！？
「まず一人！」
大振りフルスイングの一発、だがドラゴンにかかればただの兵士がやる全力の剣速より何段も速い。
一か八かで弓を持っていない方の腕を振るう。
「っ！」
フレイは背を反らしバク転で俺から距離を取る。
その後の視線は俺の右腕を見ている。
「ほぅ、面白い芸だな...」
「付け焼き刃だ」
自分が握っているものを見る。
それは魔力で出来た短剣。
魔力矢と同じ原理でやればどうにかなると思ったが意外とうまくいくものだ。
だがこの短剣で魔力矢分の魔力が根こそぎ持って行かれてしまった。
んで、直ぐ様形を維持できなくなった短剣は霧散してしまう、見事な付け焼き刃だった。
「その技いいですね使わせてもらいます！」
ふっとばされたクリスが復帰して俺の前に出たかと思えば剣を握っていない左手に白い光が集まり、剣の様な形にする。
たった今俺がやった事をそのままやってのけたのだ。
「はぁ！？」
つい素っ頓狂な声を出してしまった俺を放置して、そのまま二刀流でフレイと打ち合うクリス。
勇者特有の辛うじて見えるレベルの攻撃をいなしながら俺に話しかけてくるフレイ。
「ふふっ、驚いたか？クリスは一度見た技を完璧に再現する能力を持っているのさ、クリスの技量で許せる限りでな！」
ということは魔力貧弱、更に思いつきの俺の技を魔力豊富で近接特化な勇者様が真似したら使える技になるってことか、このアイディア泥棒！
「だあああぁぁぁぁぁ...ぁ.........ぁ」
しかし二刀流になっても対して状況は変化せず、またふっとばされた。
しかも今度は見えなくなるくらい森の深くまで。
「まったく、もっと敵の動きを見ろとアレだけ言って居るのだがな」
いやいや、一撃必殺な両腕両足に加えて尻尾と翼と頭を使ってるのを捌けと言うのが無茶だと思うのは俺だけだろうか。
まぁいい時間は十分稼げた筈だ。
肺一杯に息を吸い込み、指笛を全力で鳴らす。
勝つための思いつく唯一の作戦の結構の鐘。
「はぁぁぁっ！！」
待機していた二ミュが気合の声と共に腕を振り上げるとフレイの足元の地面から二本の鎖が飛び出し二重螺旋状にフレイの身体に巻き付き、首から上と足元しか見えない程簀巻き状態にする。
パキンとニミュの手元で鎖が途切れ、ニミュ自身は自由になる。
「ほぅ、腕の鎖は飾りではなかったのだな」
余裕綽々な態度をしているがガチャガチャと鎖は擦れるばかりで砕ける気配は無い。
幾らドラゴンと言えど、朝にセックスして魔力が潤っているワーウルフが強度に魔力全振りした鎖で指も動かせない程がんじがらめにしているのだ、少し位は行動不能になって貰わないと泣けてくる。
後は・・・
「どおおおおおりゃぁぁぁ！」
人間代表、スコッド。
助走からの全力の飛び蹴り、あまり効かず。
何かの魔法か蹴った足に衝撃が返って来てしびれてくる。
「その程度か？」
「まだまだぁ！」
ワーウルフ代表、二ミュ。
全力でフレイの腹部にドロップキック、ズササと地面を削りながら僅かに後ずさる。
「足りんっ！」
本当に女かと言いたくなるような眼力で俺達を睨みつけてくるドラゴン。
「ちぃぃ！」
「俺を忘れられては困る！！」
俺たちが追撃しようとした瞬間、風が俺たちの間を吹き抜け、気がつけばクリスが宙を飛び・・・。
「どぉぅらっせぇぇぇぇ！」
「ぐほぉっ」
勇者代表、クリス。嫁の顔を見事な空中回し蹴りで蹴り飛ばす。
流石に気を使って鎖の上から蹴っていた俺と二ミュは予想外の酷い攻撃に唖然とする。
嫁の顔面蹴り飛ばすってそれでいいのか勇者様！？
「休むな！」
クリスの声に我に返った俺たち。
よく見ればフレイのバランスが崩れている、二ミュとアイコンタクトし、走り出してフレイに巻きついている鎖を俺たちで左右別々に掴み、足掛けて宙に浮かせ、 ぶん投げる！！！
フレイをぶん投げた先は、湖！
水柱を盛大に作り出しながら水中に沈んでいくフレイ。
後はあいつに任せるだけなのだが・・・。
「何も出来ないのが悔しいな」
「作戦発案者がそういう事言わないの、それにあの子だってスコッドに任せられたって喜んでいたし」
そう言ってもらえると少しは助かる。
「地上で王者ならば水中なら王者では無いですか・・・相手を自軍の有利な状況に引っ張り込む、覚えておきます」
「って、良いのかよ。嫁さん溺れたりしたら・・・」
コキッコキッと首の骨を鳴らしたりストレッチをしてのんびりしながらクリスは言う。
「大丈夫、縛られて水の中に投げ込まれたってどうこうなるヤワな子じゃないですから」
流石ドラゴン半端じゃねぇ。
そのまま座り、じっと水面を眺めしばらくすると深い溜息を吐いた。
「はぁぁ...４人掛かりでこの状態...勇者って一体...」
はっきり言って戦闘になればドラゴンが嫁ってだけでとんでもない士気向上の旗になってくれるんだがな、他人の技を見ただけで使えるなんて本人が修行すれば何処までも応用が効く特技なわけだし・・・伸びしろ自体はかなり有ると思う。
結構な人数の勇者を見てきた俺が言うんだから多分合ってると思いたい。
「で、さっきは短くしか聞けなかったけど修行でこんな事やってるのか？」
「ええ、勇者として未熟ですし妻の方が何段も上というのは男としてはアレですので。あとは国王命令で強くなるまで戻ってくるなと」
なんでもクリスの国は勇者がクリスしか居らず、周囲の国が反魔物国家だというのに旅好きな国王は魔物娘の事を知っていて本来の思考は親魔物国家なのに反魔物国家だと偽っているらしい。
側近しか国王が親魔物側思考ということは伝えていない。
それがバレると全方位から潰されかねないのでバレていない内にドラゴンに勇者を鍛えてもらおう、って話しらしいが・・・。
「ドラゴンと勇者が領土で一緒になっていると他の国に目をつけられるから旅をさせているって所かしら」
「そういう話です、いざとなればフレイが国王に渡した魔具で危機は伝えられる、とんだ新婚旅行ですよ」
「新婚旅行ねぇ、それにしてもあの言葉遣いはどうにかしてくれないか？流石に自分の恋人をメス犬とかハムとか言われるのはムッと来る」
「本来は気弱なんですけどね...戦闘時は唯我独尊なオレ様を演じていないと殴ることも出来ない子なんです、大目に見ていただけませんか？」
演技ねぇ・・・。
などと頬杖付きながら水中を覗きこんでいたら何か動きが合ったようだ、水面が揺れ始めた。
そして勢い良く飛んでくるナニか。
「むきゅぅぅっ！？」
「ティナ！」
ティナが水中から空中へと投げ出され、結構な高さから落下してきた所を何とか受け止めるが全身の骨が悲鳴を上げる。
むきゅうと唸りながら目を回しているティナをよく見ると毛皮に細かな傷が多く付いている、そしてティナが出てきたということは・・・。
「はぁ...はぁ...久しぶりに本気を出してしまったぞアザラシ」
肩で息をしながら陸に上がってきたフレイの全身の半分以上の鱗が僅かにだが欠けている。
それに拘束していたはずの鎖は無くなっている、ティナを下ろして弓を構える。
だがフレイ自身には戦う気はないようだ。
「今回はオレの負けだ、本気を出すなんて考えていなかったからな」
思わず息を吐く、ようやく終わりか。
周りを見れば木は数本程なぎ倒され、地面も表面を掘り返した様な状況になっている。
全部ドラゴンの腕を振っただけで起きた現象だ、恐ろしい。
「全く・・・水を得た魚とは正にあの事だな、男よアザラシに言っておいてくれ。狩りと戦いは違うと」
「あ、ああ・・・」
言葉の意味はよくわからなかったがとりあえず安心したという所だな、ティナも毛皮が少しボロボロになっているだけで怪我とかは無さそうだ。
それとは対照的にメラメラとなんか燃え上がっているクリス。
「おぉまぁえぇなぁ・・・」
「む、主よまだまだ踏み込みが足らぬし剣も軸がわずかにぶれている！先ほどの魔法は有用だから鍛えるとしてまた明日から基礎トレーニング・・・・だ・・・・ぞ・・・？」
「巻き込んじまったから仕方ないが加減とやる場所を考えろと毎回言ってるでしょう！いつもいつもその状態になると戦闘以外の事を考えられなくなって！このバカトカゲ！」
剣で掘り返した土と水を練って作った泥団子をフレイにぶつけるクリス。
「ぶふっ！？」
ナニか嫌な予感がして気絶しているティナを抱えて数歩離れる俺とニミュ。
泥団子をぶつけられたフレイがプルプルと震えだす。
火炎を吹き出しても逃げられるように構えておく・・・だが、その心配は必要がなかった。
「ふぁぁ...っ、どろぉ....」
ただ泥をぶつけられただけで発情し始めたのだ。
先程までの威圧感が消え去りメストカゲと成り下がったフレイの尻をクリスはべしべしと叩いていく。
あれはやり慣れている動きだ、尻肉の厚い所にスナップを効かせ痛みよりも音と衝撃を響かせる動き、それで普段からどんなプレイをしているのか手に取るように見える。
・・・あのドラゴン、マゾだったのか。
「どうせっ、こんな風にっ、叩かれてっ、感じるんだろ！」
「ひうっ、あひぃ...ごめんなさぃぃばかみたいに暴れるばかとかげでごめんなひゃいぃっまぞとかげでごめんなしゃいぃ！！」
四つん這いにさせたフレイに泥団子をぶつけながら右手で尻を叩き、左手で耳を引っ張る。
叩いたり引っ張るのと同時に鳴くドラゴンの姿はさながら生きた楽器だった。
「だめぇぇっ人にみられへるのにぃ♪いくっ、いっちゃうぅぅ♪」
「ちっとは反省しなさい！」
尻を叩いていた右手でフレイの尻尾を鷲掴み、先端を噛みちぎる勢いで噛み付くと雄叫びに近い嬌声を響かせ、足元に水たまりができるほど潮を噴きながら果てた。
のけぞりながらビクンビクンと痙攣しながらイク様にニミュを重ねてしまい、自分の顔が赤くなっていることに気づく。
服の裾を何かが掴み、見てみるとニミュが発情して膨らませた股間を俺に擦りつけていた、あとで処理してやらんと・・・。
「よ、夜はティナに独占させてあげるから....ね？」
エロい手つきで俺の身体を撫で回すもふもふの手を取り、俺達は近くの木の影に向かうことにした。
その後互いのパートナーを数時間かけて満足させた俺とクリスは約束通り魔界豚を捌きながらお互いの事を語り合った。
カガリビで見た魔界豚よりもデカイ個体で、俺達だけでは食べきれなかったため周りの魔物娘たちを巻き込んでの焼き肉パーティとなった。
「みきゅぅ♪でっかいお肉なんだよー！」
「沢山あるからねー」
「んふっ〜、フレイもたべるんだよぉ♪ニミュー...あらまうっとり顔だ。おーいニミュー」
「魔界豚・・・とろける油ぁ・・・♪」
クリスの言っていたことは本当で戦闘状態が終わったフレイはどちらかと言うとお淑やかだった。
ティナやニミュに言ったことを謝り、他の魔物娘達にも湖の周りをグチャグチャしたことを謝った。
魔界豚がある事とドラゴンから謝られたという事実で魔物娘たちは怒ろうとした気持ちが何処かへ行ってしまい荒事になることはなかった。
食い物関係で言えば、魔物娘達が山菜や果物、もちもちとした食感の花の実などを持ち寄ってくれたおかげでまだまだ知らない味を知ることが出来た。
部位によって旨味や食感が変わり、多少焦げ付いてもその苦味すら美味いと感じさせてくれる肉汁・・・もう心は魔界豚の肉の虜だ。
余裕があれば魔界豚の養殖とかもいいかもしれないな・・・。
そんな事を嬉しそうに肉の塊を丸齧りしているニミュとティナの姿を見ながら考えたりした。
いつの間にやらオーガやアマゾネスが持ち込んでいた酒で酔いつぶれた俺達が目を覚ました時にはクリスたちはすでに居なくなっていた。
またいつか会いましょう、というメモを残して。
次に合う時はあんな特訓に巻き込まないで欲しい物だ・・・それにしても一番の驚きは、水の中とは言えティナがドラゴン相手に表面だけはボロボロにしたというところだ。
今度話を聞いてみるか。
流石塩が特産物なだけあって干し肉とかの旨味が違う、塩辛いだけじゃなく甘みすら感じてしまう。
「むきゅ〜♪今日もお昼ごはんが美味しいんだよ♪」
「のんびりしてるわねぇ〜」
「そうだな、このまま旅もゆっくり進めばいいのになー」
あはははは、あはははは。
鳥の囀りや動物たちの鳴き声を聞きながらまったり・・・いいものだ。
...ぉぉぉ
ん？
「なぁ、今何か聞こえ...」
「二人共構えて！」
二ミュが強い口調でそんな事を言うということは面倒くさいことになりそうだ・・・。
直ぐ様弓を構え、ティナは火を消し周囲を警戒する。
次の瞬間、俺達の目の前に何かが落ちてきた。
「ぐへぇっ」
潰れたヒキガエルのような声を出しながら数度、地面をバウンドして止まったそれは人だった。
思わず目を丸くする俺達をヨソにそいつは直ぐに体制を立て直し剣を構えた。
俺達も武器を構える。
青の髪で身長は俺よりやや小さい、まだ二十歳も超えていないだろうその少年の気配は・・・勇者だった。
あいつと同じだ、神の加護を持っている。
・・・？なんか様子が少しおかしい。
「まったく、こんな所までとばすかね・・・げっ！？そこの人、ここは危険なので直ぐに逃げてください！」
「いきなり何言ってんだよ！？」
「早くっ！...くっ、もう来たか」
「だから説明し「スコッド、どうやらアレのことみたいよ」
ニミュが顔を向けている方を俺とティナも向く。
その向きは上空、斜め７０度。
太陽の光りに照らされるそれは巨大な翼に金色のロングヘアー、後頭部から生えている２本の角、蒼く輝くサファイヤ色の分厚い鱗で覆われた両腕両足そしてゆらゆらと揺れる太い尻尾。
何より、今まで感じたことのない驚異的な威圧感。
それは両腕を豊満な胸の下で組、じっと俺達を見下ろしていた。
「ドラゴン...なのか」
俺のつぶやきにドラゴンが答える。
「応よ雑草、オレこそは地上の王者、ドラゴンのフレイだ。どうした主？雑草等と話している暇はなかろう？」
優雅にその場で飛びとどまるドラゴンを視界に入れたまま勇者に小声で話す。
「なぁ、アレとアンタの関係と今の状況を手短に説明してくれ」
「アレ俺の妻スゲー強くて戦闘中性格悪い、俺貧弱、今地獄の特訓中、貴方達巻き込まれた」
「わかったような分からなかったような・・・」
その会話を聞いていたのかドラゴン・・・じゃなくてフレイが話しだす。
「そうだな、たまにはその場で出会った者との即興で協力するというのもいいかもしれんな・・・おいメス犬、青いハム、人間。我が主と共に攻めて来い」
「ん？犬、人間・・・むっかーー！！！誰が青いハムなんだよぉ！」
青いハム呼ばわりされたティナがブンブンと銛を振り回す、まぁ...寝転がってるところとか確かにハムっぽいかもしれんな。
「男を主って言ってるってことはもう夫婦なんでしょ？だったらそんなメストカゲにメス犬呼ばわりされたくないわね・・・」
なんかこっちもやる気になってるし、のんびりライフは何処へ・・・。
苛立っていたこっちの二人がドラゴンの次の言葉で歓喜の表情へ変わる。
「そうだな...オレを倒せたら先ほど仕留めた魔界豚を共に喰おうではないか」
「肉ぅぅ！！！」
「あぁ、いい塩で食べる焼き魚も美味しかったけど一番は鉄板の上で焼く分厚い肉に粗塩よね！」
おいこら肉食獣共！？
最早二人の目に映っているのは自分たちとは比べ物にならないほど強い、最上位魔物娘ドラゴン・・・ではなくその後ろにあるであろう魔界豚だった。
こうなったらやるしかねぇか！
「おい勇者、名前は？」
「クリスです、スコッドであっていますか？」
「それでいい。はっきり言っておくが俺達三人はコンビネーションとか以前に三人で戦うってことが今までなかった、俺はあんたを援護するから好き勝手やってくれ。こっちのアザラシは武器が銛、狼は蹴りが主だ」
「了解です」
手元にある矢は魔界銀と鉄の合金、魔界鉄の鏃の矢３０本。
それと俺の魔力矢、これが行動不能までとなると２０本。
構える、フレイに向ける・・・よし、手の震えは無いし手に血がべったり付く幻覚もない、コレなら行ける。
さて、勇者様の実力拝見させてもらいましょうかね。
・
・
・
お肉に釣られてつい構えてしまったけど、はっきり言って勝算はないしどうしたものか・・・。
なんて考えながらチラリとティナの方を向くと目を輝かせながら小声でおにくっおにくっなんて言っている、あぁこの子は正直で可愛いなぁ。
「よし、ちょっと小手試し行ってくる」
「気をつけろよニミュ」
愛する男に頷く。
私の武器は爪、鎖、脚力と蹴り、音による探知。
鎖に関しては相手は気づいていない、初手に使うのはやめておこう。
なら。
「ほぅ、まずはワン公か。目隠しをしていても見えているのと同じように扱うぞ？」
「とりあえず私の動きを見てから判断してもらいたいわね」
相手の独壇場に自分から入るのは嫌だけどまずは他のメンバーのことを考えてあいつを引きずり下ろさないといけない。
軽くジャンプし、フレイより少し高いところまで飛びまずはご挨拶。
カキィィンと甲高い音を立てながらぶつかる爪と鱗。
「硬っぁ！」
予想以上の硬度、傷をつけることも出来ず私の爪は弾かれる。
「爪は...こう使うものだ！」
振りかぶるドラゴンの爪、ワーウルフの物とは比べ物にならない程強靭で鋭い爪。
そこらの木程度なら軽く輪切りにしてしまうだろう。
それなら。
「くぅ・・・っ」
出来るかどうかアレだったけど空中でサマーソルトを放ち、フレイの腕を弾いて避けるがこっちの足が痺れて来る。
ワーウルフの足を痺れさせるとかどんだけ馬鹿力なのよ！？
もう落下も始まっているし一回戻るとする。
ずささと地面を軽く滑りながら着地、落ちるときに見ていたが追撃されそうになった所をスコッドが矢を放ち止めてくれた・・・後でフェラしてあげよ。
「すごいですね、陸上生物で空中でドラゴンと何撃かやり合う人を初めて見ました」
「やり合ったというよりこっちは弾かれて向こうの攻撃は弾いたらこっちの足がイカれそうになってるけどね・・・」
「それでもです」
さっきのスコッドとの会話を聞いていて把握はしているけど、アレの相手を毎回していると思うとこの男の事が少し気の毒になってくる。
さて、対策はよく知ってる人から聞かないとね。
「ねぇ、地面に引きずり下ろす方法ってない？」
「言えば降りてくれますが地に降りたフレイは腕の力だけじゃなく全身の力で爪を振るうので手が付けられないですよ」
「なんとなく理解したわ、でどうするのユウシャサマは」
腕の力だけでさっきの感じと考えると、全身を使っての一撃を考えたら・・・・左足が震えだす。
そんな時痺れを切らしたティナがぷんすか言いながらこっちに来た。
「むー！ごにょごにょ言ってないで早く行きたいんだよ！」
「いいや、幾らでも相談していいぞ。まぁ・・・あまり長すぎると痺れを切らして火を噴くかもしれんがな」
「ほらー、ドラゴンもあぁいってるんだよ！」
そんなこと言ってもねぇ・・・ただでさえこっちはドラゴンと比べてスペックが低いんだから作戦考えないと・・・。
「クリス、あのドラゴンは水の中ってどうだ？」
小声でスコッドがクリスに話す。
「分かりません、泳いでいる所を見たことがないので・・・羽が濡れたり動きにくくなるとは思います」
「よし、ティナ、ニミュ二人にも作戦を言っておく。はっきり言ってドラゴンとやり合うのはゴメンだがお前らの嬉しそうな顔見てるとやるしかあるまい」
・・・食い意地はった女とか思われていないか心配になった。
・
・
・
遊ばれているとしか言えない状況だった。
致命傷になりかねない攻撃は全て躱すか握りつぶして停める。
そもそもダメージにならない攻撃は放置して鱗に弾かれる。
ティナの銛は全て躱され、ニミュの爪は弾かれ、クリスの剣は防がれ、俺の矢は握りつぶされる。
「おいクリス！お前今まで1人でどうやっていたんだ！」
「コレより手加減されて、この状況と全く同じ状態です！」
「魔物娘の戦闘力化け物すぎるっつーの！！！」
「誰の嫁がバケモノですか！！」
「コイツめんどくせぇ！てか罵倒してねぇだろ！」
フェイント含め全て放った瞬間に何処に当たるのか理解しているようで鱗で弾くことが出来る物は放置、肌に当たるものは爪で木っ端微塵にされる。
実体矢あと１０本。
「すげー、あの二人口喧嘩しながらドラゴンとやり合ってるんだよ。しかも息ぴったり」
「男同士だからなのか、勇者と勇者を補佐してた弓兵だからなのか・・・さて、準備しようかティナ」
「あらほらさっさー」
ティナとニミュが作戦配置に着きそうなのを横目に見ながら自分たちで持たせることが出来る秒数を計算する。
そしてやりたくはないが思いつきの一発勝負の新技もヤらなければ持ちそうにない。
「ぐあああぁ！？」
「クリスッ！ちぃっ！」
不意を突かれたクリスがフレイの尻尾で突き飛ばされ１０ｍ程後方に。
となるとドラゴンの眼の前に居るのは俺だけで！？
「まず一人！」
大振りフルスイングの一発、だがドラゴンにかかればただの兵士がやる全力の剣速より何段も速い。
一か八かで弓を持っていない方の腕を振るう。
「っ！」
フレイは背を反らしバク転で俺から距離を取る。
その後の視線は俺の右腕を見ている。
「ほぅ、面白い芸だな...」
「付け焼き刃だ」
自分が握っているものを見る。
それは魔力で出来た短剣。
魔力矢と同じ原理でやればどうにかなると思ったが意外とうまくいくものだ。
だがこの短剣で魔力矢分の魔力が根こそぎ持って行かれてしまった。
んで、直ぐ様形を維持できなくなった短剣は霧散してしまう、見事な付け焼き刃だった。
「その技いいですね使わせてもらいます！」
ふっとばされたクリスが復帰して俺の前に出たかと思えば剣を握っていない左手に白い光が集まり、剣の様な形にする。
たった今俺がやった事をそのままやってのけたのだ。
「はぁ！？」
つい素っ頓狂な声を出してしまった俺を放置して、そのまま二刀流でフレイと打ち合うクリス。
勇者特有の辛うじて見えるレベルの攻撃をいなしながら俺に話しかけてくるフレイ。
「ふふっ、驚いたか？クリスは一度見た技を完璧に再現する能力を持っているのさ、クリスの技量で許せる限りでな！」
ということは魔力貧弱、更に思いつきの俺の技を魔力豊富で近接特化な勇者様が真似したら使える技になるってことか、このアイディア泥棒！
「だあああぁぁぁぁぁ...ぁ.........ぁ」
しかし二刀流になっても対して状況は変化せず、またふっとばされた。
しかも今度は見えなくなるくらい森の深くまで。
「まったく、もっと敵の動きを見ろとアレだけ言って居るのだがな」
いやいや、一撃必殺な両腕両足に加えて尻尾と翼と頭を使ってるのを捌けと言うのが無茶だと思うのは俺だけだろうか。
まぁいい時間は十分稼げた筈だ。
肺一杯に息を吸い込み、指笛を全力で鳴らす。
勝つための思いつく唯一の作戦の結構の鐘。
「はぁぁぁっ！！」
待機していた二ミュが気合の声と共に腕を振り上げるとフレイの足元の地面から二本の鎖が飛び出し二重螺旋状にフレイの身体に巻き付き、首から上と足元しか見えない程簀巻き状態にする。
パキンとニミュの手元で鎖が途切れ、ニミュ自身は自由になる。
「ほぅ、腕の鎖は飾りではなかったのだな」
余裕綽々な態度をしているがガチャガチャと鎖は擦れるばかりで砕ける気配は無い。
幾らドラゴンと言えど、朝にセックスして魔力が潤っているワーウルフが強度に魔力全振りした鎖で指も動かせない程がんじがらめにしているのだ、少し位は行動不能になって貰わないと泣けてくる。
後は・・・
「どおおおおおりゃぁぁぁ！」
人間代表、スコッド。
助走からの全力の飛び蹴り、あまり効かず。
何かの魔法か蹴った足に衝撃が返って来てしびれてくる。
「その程度か？」
「まだまだぁ！」
ワーウルフ代表、二ミュ。
全力でフレイの腹部にドロップキック、ズササと地面を削りながら僅かに後ずさる。
「足りんっ！」
本当に女かと言いたくなるような眼力で俺達を睨みつけてくるドラゴン。
「ちぃぃ！」
「俺を忘れられては困る！！」
俺たちが追撃しようとした瞬間、風が俺たちの間を吹き抜け、気がつけばクリスが宙を飛び・・・。
「どぉぅらっせぇぇぇぇ！」
「ぐほぉっ」
勇者代表、クリス。嫁の顔を見事な空中回し蹴りで蹴り飛ばす。
流石に気を使って鎖の上から蹴っていた俺と二ミュは予想外の酷い攻撃に唖然とする。
嫁の顔面蹴り飛ばすってそれでいいのか勇者様！？
「休むな！」
クリスの声に我に返った俺たち。
よく見ればフレイのバランスが崩れている、二ミュとアイコンタクトし、走り出してフレイに巻きついている鎖を俺たちで左右別々に掴み、足掛けて宙に浮かせ、 ぶん投げる！！！
フレイをぶん投げた先は、湖！
水柱を盛大に作り出しながら水中に沈んでいくフレイ。
後はあいつに任せるだけなのだが・・・。
「何も出来ないのが悔しいな」
「作戦発案者がそういう事言わないの、それにあの子だってスコッドに任せられたって喜んでいたし」
そう言ってもらえると少しは助かる。
「地上で王者ならば水中なら王者では無いですか・・・相手を自軍の有利な状況に引っ張り込む、覚えておきます」
「って、良いのかよ。嫁さん溺れたりしたら・・・」
コキッコキッと首の骨を鳴らしたりストレッチをしてのんびりしながらクリスは言う。
「大丈夫、縛られて水の中に投げ込まれたってどうこうなるヤワな子じゃないですから」
流石ドラゴン半端じゃねぇ。
そのまま座り、じっと水面を眺めしばらくすると深い溜息を吐いた。
「はぁぁ...４人掛かりでこの状態...勇者って一体...」
はっきり言って戦闘になればドラゴンが嫁ってだけでとんでもない士気向上の旗になってくれるんだがな、他人の技を見ただけで使えるなんて本人が修行すれば何処までも応用が効く特技なわけだし・・・伸びしろ自体はかなり有ると思う。
結構な人数の勇者を見てきた俺が言うんだから多分合ってると思いたい。
「で、さっきは短くしか聞けなかったけど修行でこんな事やってるのか？」
「ええ、勇者として未熟ですし妻の方が何段も上というのは男としてはアレですので。あとは国王命令で強くなるまで戻ってくるなと」
なんでもクリスの国は勇者がクリスしか居らず、周囲の国が反魔物国家だというのに旅好きな国王は魔物娘の事を知っていて本来の思考は親魔物国家なのに反魔物国家だと偽っているらしい。
側近しか国王が親魔物側思考ということは伝えていない。
それがバレると全方位から潰されかねないのでバレていない内にドラゴンに勇者を鍛えてもらおう、って話しらしいが・・・。
「ドラゴンと勇者が領土で一緒になっていると他の国に目をつけられるから旅をさせているって所かしら」
「そういう話です、いざとなればフレイが国王に渡した魔具で危機は伝えられる、とんだ新婚旅行ですよ」
「新婚旅行ねぇ、それにしてもあの言葉遣いはどうにかしてくれないか？流石に自分の恋人をメス犬とかハムとか言われるのはムッと来る」
「本来は気弱なんですけどね...戦闘時は唯我独尊なオレ様を演じていないと殴ることも出来ない子なんです、大目に見ていただけませんか？」
演技ねぇ・・・。
などと頬杖付きながら水中を覗きこんでいたら何か動きが合ったようだ、水面が揺れ始めた。
そして勢い良く飛んでくるナニか。
「むきゅぅぅっ！？」
「ティナ！」
ティナが水中から空中へと投げ出され、結構な高さから落下してきた所を何とか受け止めるが全身の骨が悲鳴を上げる。
むきゅうと唸りながら目を回しているティナをよく見ると毛皮に細かな傷が多く付いている、そしてティナが出てきたということは・・・。
「はぁ...はぁ...久しぶりに本気を出してしまったぞアザラシ」
肩で息をしながら陸に上がってきたフレイの全身の半分以上の鱗が僅かにだが欠けている。
それに拘束していたはずの鎖は無くなっている、ティナを下ろして弓を構える。
だがフレイ自身には戦う気はないようだ。
「今回はオレの負けだ、本気を出すなんて考えていなかったからな」
思わず息を吐く、ようやく終わりか。
周りを見れば木は数本程なぎ倒され、地面も表面を掘り返した様な状況になっている。
全部ドラゴンの腕を振っただけで起きた現象だ、恐ろしい。
「全く・・・水を得た魚とは正にあの事だな、男よアザラシに言っておいてくれ。狩りと戦いは違うと」
「あ、ああ・・・」
言葉の意味はよくわからなかったがとりあえず安心したという所だな、ティナも毛皮が少しボロボロになっているだけで怪我とかは無さそうだ。
それとは対照的にメラメラとなんか燃え上がっているクリス。
「おぉまぁえぇなぁ・・・」
「む、主よまだまだ踏み込みが足らぬし剣も軸がわずかにぶれている！先ほどの魔法は有用だから鍛えるとしてまた明日から基礎トレーニング・・・・だ・・・・ぞ・・・？」
「巻き込んじまったから仕方ないが加減とやる場所を考えろと毎回言ってるでしょう！いつもいつもその状態になると戦闘以外の事を考えられなくなって！このバカトカゲ！」
剣で掘り返した土と水を練って作った泥団子をフレイにぶつけるクリス。
「ぶふっ！？」
ナニか嫌な予感がして気絶しているティナを抱えて数歩離れる俺とニミュ。
泥団子をぶつけられたフレイがプルプルと震えだす。
火炎を吹き出しても逃げられるように構えておく・・・だが、その心配は必要がなかった。
「ふぁぁ...っ、どろぉ....」
ただ泥をぶつけられただけで発情し始めたのだ。
先程までの威圧感が消え去りメストカゲと成り下がったフレイの尻をクリスはべしべしと叩いていく。
あれはやり慣れている動きだ、尻肉の厚い所にスナップを効かせ痛みよりも音と衝撃を響かせる動き、それで普段からどんなプレイをしているのか手に取るように見える。
・・・あのドラゴン、マゾだったのか。
「どうせっ、こんな風にっ、叩かれてっ、感じるんだろ！」
「ひうっ、あひぃ...ごめんなさぃぃばかみたいに暴れるばかとかげでごめんなひゃいぃっまぞとかげでごめんなしゃいぃ！！」
四つん這いにさせたフレイに泥団子をぶつけながら右手で尻を叩き、左手で耳を引っ張る。
叩いたり引っ張るのと同時に鳴くドラゴンの姿はさながら生きた楽器だった。
「だめぇぇっ人にみられへるのにぃ♪いくっ、いっちゃうぅぅ♪」
「ちっとは反省しなさい！」
尻を叩いていた右手でフレイの尻尾を鷲掴み、先端を噛みちぎる勢いで噛み付くと雄叫びに近い嬌声を響かせ、足元に水たまりができるほど潮を噴きながら果てた。
のけぞりながらビクンビクンと痙攣しながらイク様にニミュを重ねてしまい、自分の顔が赤くなっていることに気づく。
服の裾を何かが掴み、見てみるとニミュが発情して膨らませた股間を俺に擦りつけていた、あとで処理してやらんと・・・。
「よ、夜はティナに独占させてあげるから....ね？」
エロい手つきで俺の身体を撫で回すもふもふの手を取り、俺達は近くの木の影に向かうことにした。
その後互いのパートナーを数時間かけて満足させた俺とクリスは約束通り魔界豚を捌きながらお互いの事を語り合った。
カガリビで見た魔界豚よりもデカイ個体で、俺達だけでは食べきれなかったため周りの魔物娘たちを巻き込んでの焼き肉パーティとなった。
「みきゅぅ♪でっかいお肉なんだよー！」
「沢山あるからねー」
「んふっ〜、フレイもたべるんだよぉ♪ニミュー...あらまうっとり顔だ。おーいニミュー」
「魔界豚・・・とろける油ぁ・・・♪」
クリスの言っていたことは本当で戦闘状態が終わったフレイはどちらかと言うとお淑やかだった。
ティナやニミュに言ったことを謝り、他の魔物娘達にも湖の周りをグチャグチャしたことを謝った。
魔界豚がある事とドラゴンから謝られたという事実で魔物娘たちは怒ろうとした気持ちが何処かへ行ってしまい荒事になることはなかった。
食い物関係で言えば、魔物娘達が山菜や果物、もちもちとした食感の花の実などを持ち寄ってくれたおかげでまだまだ知らない味を知ることが出来た。
部位によって旨味や食感が変わり、多少焦げ付いてもその苦味すら美味いと感じさせてくれる肉汁・・・もう心は魔界豚の肉の虜だ。
余裕があれば魔界豚の養殖とかもいいかもしれないな・・・。
そんな事を嬉しそうに肉の塊を丸齧りしているニミュとティナの姿を見ながら考えたりした。
いつの間にやらオーガやアマゾネスが持ち込んでいた酒で酔いつぶれた俺達が目を覚ました時にはクリスたちはすでに居なくなっていた。
またいつか会いましょう、というメモを残して。
次に合う時はあんな特訓に巻き込まないで欲しい物だ・・・それにしても一番の驚きは、水の中とは言えティナがドラゴン相手に表面だけはボロボロにしたというところだ。
今度話を聞いてみるか。
15/06/07 21:45更新 / ホシニク
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