2.幼年期
「おやすみ、レイ」
「おやすみ、母さん」
そういってメリルはレイと呼ばれた金髪の子に軽く口づけをし、しばらくして静かな寝息を立て始めた
向かい合って横に眠るメリルの寝息を確認すると、レイは寝返りを打って、ふぅ、と軽く息を吐き出す
俺が赤ん坊とになってから、二年が経過した
レイってのは俺の名前だ
状況を簡単に頭の中で整理する
俺は父・ラーク・ファランクスと母・メリル・ファランクスの間に産まれた長男らしい
名は、レイ・ファランクス
父はお城に仕える騎士だそうで、父さんのかっこいいところを見せてやると母に抱えられながら稽古を見学したが、がっしりとした体躯からも想像していた通り、かなり腕が立つようだ
性格は優しいが、優しすぎるきらいがあり、頼みごとを断れず、損な役回りをすることも少なくない
だが、それ故に友人は多く、非常に信頼されている
金色に輝く髪は短く切り揃えられており、サファイアを彷彿とさせる蒼い瞳と凛々しく整った顔立ちから、相当モテるであろうことが伺える
母は昔は治癒魔法師だったが、引退し、子育てに注力してくれている
ラークに対しては冗談で軽い口をたたくこともあるが、常に穏やかで争いを好まず、女神のように優しく微笑む姿は、男ならまず恋に落ちると噂されるほどらしい
ラークと同じく金髪碧眼で抜群のスタイルの美女であり腰の辺りまで伸びた髪がたなびくたびに周りの男達はため息をつく
そして一言「でもラークには勝てねぇよ…」と呟くまでがお約束である
そんな美男美女の間に産まれたのが俺だ
「(所謂、生まれ変わりってやつなのかな)」
俺が赤ちゃんになったということが夢でもなんでもないことはすぐに分かったし、まあいいかとすぐに切り替えた
なぜそんなに早く気持ちを切り替えられたのかというと、俺の以前の記憶がかなり消えており、自分の名前すら思い出せなかったからだ
思い出せるのは…ただ、毎日、毎日戦い続けた記憶のみである
なぜ戦っていたかも、なにと戦っていたかも曖昧だ
なんで赤ちゃんになったかなんて全く思い出せない
そんなわけで、思い出せないなら仕方ない、と切り替えた俺は、とりあえず情報を集めるべきだと結論を出し、この二年間、家中の至る所を這いずり回り、一人で歩けるようになり、喋れるようになってからは、メリルにおねだりしてよく城下町に連れて行ってもらった
そしてこの二年で分かったことは
まず一つ目、魔物についてだ
なにやら数百年前に魔王が世代交代し、世界中の魔物に異変が起きたらしい
詳しい異変については教団と言われる団体が秘密にしているようだ
その徹底された情報規制により、本などからは情報を得られなかったが、父ラークが言うには、「そのうち絶対に知る時が来る。否が応でもね。」とのことだ
なんで魔物と戦争してるのにその魔物の情報を隠すのか心底疑問であるが…
教団とは、主神という神を崇めて、世界中の人々の信仰を集める宗教であり、魔物は絶対悪、滅ぼすべきだと説いているようだ
教団教えは聞いたが、概ね正しいと思う
俺の曖昧な記憶の中にも、戦った相手に魔物がいた気がする
竜種なんかは頭が良かったと思うが、あいつらも人を餌か害虫程度にしか思っていない
まぁ、それが間違えてるとは思わない
俺たちだって生きる糧として家畜は殺すし、この世界は弱肉強食、弱い者は生きていけない
戦争をしているというなら俺も人として体を鍛え、魔物と戦いたいと思っている
俺はこの二年間、ずっと言葉通り、父と母におんぶに抱っこで過ごしてきた
それはまだ数年続くだろうし、俺はラークもメリルも嫌いじゃない。人間として尊敬している
産んでもらった恩もある
記憶が戻るにしろ戻らないにしろ俺は生涯をラークとメリル…父と母に捧げてもいいと思ってる
だから最低でも、父と母の幸せを守れるくらいには強くならねばならない
幸い戦闘に関する知識はかなり記憶にある
はぁ、戦った記憶しか残らないなんて、どうせ思い出してもろくなもんじゃなさそうだよな…
閑話休題
二つ目、レスカティエについて
レスカティエは教団の信仰が根強い宗教国家であり、相当に高い軍事力を有しているらしい
勇者と呼ばれる生まれついてから強力な力を持つ人間が多く現れるらしく、様々な国から支援を受けているそうだ
軍事的にも人類にとっては重要な拠点であり、様々な人々が出入りする世界有数の都市である
三つ目、これは大変嬉しいことに、父は騎士、母は元治癒魔法師だったためか、ファランクス家はかなり裕福で、本は高級品であるため中々一般家庭では手に入らないというのに、父さんの書斎に数冊置いてあるのを見つけ、是非読みたい!と俺は勝手に父さんの書斎に入り込み、本を読んでいた
当然二人にバレたが、もう本が読めるのか!やっぱりうちの子は天才だ!!と親バカを発揮してくれて、むしろ本を買い与えてくれた
買い与えてくれた本はどれも有用で、世界の見識を多く広げることができた
教団のことや、レスカティエ教国が強力な軍事国家であることなども本からの情報だ
親バカ様様である
まとめると、
・数百年前、魔物に異変があったということ
・人と魔物が戦争しているということ
・俺の住む街は大陸の西を治めるレスカティエ教国という宗教国家の首都であること
・父と母は平民ながら、かなり裕福な暮らしをしているということ
ざっとこんなところか
俺の今後の方針は、父と母を守れるくらいに強くなることかな
レイ・ファランクスとして生きることにためらいや後悔はない
「(ま、やりたいこと見つけるにしても2歳では大したこともできないしな)」
少し頭で情報を整理していたら程よい眠気が襲ってきた
俺は母さんに小さくおやすみというと、まもなくして、眠りに落ちた…
「おやすみ、母さん」
そういってメリルはレイと呼ばれた金髪の子に軽く口づけをし、しばらくして静かな寝息を立て始めた
向かい合って横に眠るメリルの寝息を確認すると、レイは寝返りを打って、ふぅ、と軽く息を吐き出す
俺が赤ん坊とになってから、二年が経過した
レイってのは俺の名前だ
状況を簡単に頭の中で整理する
俺は父・ラーク・ファランクスと母・メリル・ファランクスの間に産まれた長男らしい
名は、レイ・ファランクス
父はお城に仕える騎士だそうで、父さんのかっこいいところを見せてやると母に抱えられながら稽古を見学したが、がっしりとした体躯からも想像していた通り、かなり腕が立つようだ
性格は優しいが、優しすぎるきらいがあり、頼みごとを断れず、損な役回りをすることも少なくない
だが、それ故に友人は多く、非常に信頼されている
金色に輝く髪は短く切り揃えられており、サファイアを彷彿とさせる蒼い瞳と凛々しく整った顔立ちから、相当モテるであろうことが伺える
母は昔は治癒魔法師だったが、引退し、子育てに注力してくれている
ラークに対しては冗談で軽い口をたたくこともあるが、常に穏やかで争いを好まず、女神のように優しく微笑む姿は、男ならまず恋に落ちると噂されるほどらしい
ラークと同じく金髪碧眼で抜群のスタイルの美女であり腰の辺りまで伸びた髪がたなびくたびに周りの男達はため息をつく
そして一言「でもラークには勝てねぇよ…」と呟くまでがお約束である
そんな美男美女の間に産まれたのが俺だ
「(所謂、生まれ変わりってやつなのかな)」
俺が赤ちゃんになったということが夢でもなんでもないことはすぐに分かったし、まあいいかとすぐに切り替えた
なぜそんなに早く気持ちを切り替えられたのかというと、俺の以前の記憶がかなり消えており、自分の名前すら思い出せなかったからだ
思い出せるのは…ただ、毎日、毎日戦い続けた記憶のみである
なぜ戦っていたかも、なにと戦っていたかも曖昧だ
なんで赤ちゃんになったかなんて全く思い出せない
そんなわけで、思い出せないなら仕方ない、と切り替えた俺は、とりあえず情報を集めるべきだと結論を出し、この二年間、家中の至る所を這いずり回り、一人で歩けるようになり、喋れるようになってからは、メリルにおねだりしてよく城下町に連れて行ってもらった
そしてこの二年で分かったことは
まず一つ目、魔物についてだ
なにやら数百年前に魔王が世代交代し、世界中の魔物に異変が起きたらしい
詳しい異変については教団と言われる団体が秘密にしているようだ
その徹底された情報規制により、本などからは情報を得られなかったが、父ラークが言うには、「そのうち絶対に知る時が来る。否が応でもね。」とのことだ
なんで魔物と戦争してるのにその魔物の情報を隠すのか心底疑問であるが…
教団とは、主神という神を崇めて、世界中の人々の信仰を集める宗教であり、魔物は絶対悪、滅ぼすべきだと説いているようだ
教団教えは聞いたが、概ね正しいと思う
俺の曖昧な記憶の中にも、戦った相手に魔物がいた気がする
竜種なんかは頭が良かったと思うが、あいつらも人を餌か害虫程度にしか思っていない
まぁ、それが間違えてるとは思わない
俺たちだって生きる糧として家畜は殺すし、この世界は弱肉強食、弱い者は生きていけない
戦争をしているというなら俺も人として体を鍛え、魔物と戦いたいと思っている
俺はこの二年間、ずっと言葉通り、父と母におんぶに抱っこで過ごしてきた
それはまだ数年続くだろうし、俺はラークもメリルも嫌いじゃない。人間として尊敬している
産んでもらった恩もある
記憶が戻るにしろ戻らないにしろ俺は生涯をラークとメリル…父と母に捧げてもいいと思ってる
だから最低でも、父と母の幸せを守れるくらいには強くならねばならない
幸い戦闘に関する知識はかなり記憶にある
はぁ、戦った記憶しか残らないなんて、どうせ思い出してもろくなもんじゃなさそうだよな…
閑話休題
二つ目、レスカティエについて
レスカティエは教団の信仰が根強い宗教国家であり、相当に高い軍事力を有しているらしい
勇者と呼ばれる生まれついてから強力な力を持つ人間が多く現れるらしく、様々な国から支援を受けているそうだ
軍事的にも人類にとっては重要な拠点であり、様々な人々が出入りする世界有数の都市である
三つ目、これは大変嬉しいことに、父は騎士、母は元治癒魔法師だったためか、ファランクス家はかなり裕福で、本は高級品であるため中々一般家庭では手に入らないというのに、父さんの書斎に数冊置いてあるのを見つけ、是非読みたい!と俺は勝手に父さんの書斎に入り込み、本を読んでいた
当然二人にバレたが、もう本が読めるのか!やっぱりうちの子は天才だ!!と親バカを発揮してくれて、むしろ本を買い与えてくれた
買い与えてくれた本はどれも有用で、世界の見識を多く広げることができた
教団のことや、レスカティエ教国が強力な軍事国家であることなども本からの情報だ
親バカ様様である
まとめると、
・数百年前、魔物に異変があったということ
・人と魔物が戦争しているということ
・俺の住む街は大陸の西を治めるレスカティエ教国という宗教国家の首都であること
・父と母は平民ながら、かなり裕福な暮らしをしているということ
ざっとこんなところか
俺の今後の方針は、父と母を守れるくらいに強くなることかな
レイ・ファランクスとして生きることにためらいや後悔はない
「(ま、やりたいこと見つけるにしても2歳では大したこともできないしな)」
少し頭で情報を整理していたら程よい眠気が襲ってきた
俺は母さんに小さくおやすみというと、まもなくして、眠りに落ちた…
15/09/16 13:38更新 / S.wf
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