連載小説
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3.少年期
レスカティエ城下町の近郊には、恵みの森という場所がある

あまりに奥に進みすぎなければ魔物はでることもなく、危険な毒を持った動植物なども存在しない
自然の恵みに富んだ森は、果実や薬草などの恵みを採取することは生態系を崩すとされ禁止されているが、国に認められた猟師ギルドの人々や、一部貴族などには狩りの許可が出されている


そんな森の一画、一匹の猪に近づく三人の子供がいた

「レ、レイ…もしかしてその短剣で…?」
少し怯えた様子の男の子が隣の男の子、レイに話しかける

「ああ」
「い、いくらレイでもそんな短剣で猪は倒すなんて危ないわ!大人でも下手したら…!」

当たり前といった様子で返事をするレイに、泡を食ったように反論する女の子
レイは静かに指を口に当て、マリーを落ち着かせる

「マリー、静かに。逃げられるぞ」

…猪は三人に気づかなかったようだ

「俺一人でやる。任しとけって」
レイは自信ありげに腕をまくると近くの木に一足で飛び乗り、猪に近づくように木から木へ音も出さずに飛び移る


「あ、あんなこと大人でも出来る人いる?」
「す、すごい…」
「もう、アル?変な顔になってるわよ?」
「マ、マリーこそ…」

残された二人は口をポカンとあけて彼の背中を見送るしかなかった






一方、猪の真上まで移動したレイは、静かに短刀を…構えなかった

「(結構大きいな、頭に衝撃を与えて昏倒させたほうが楽そうだ)」

思考してからのレイの行動は流れるように早かった

静かに木から飛び降りるとその勢いのまま空中で体を捻り、反動をつける
空中で二回転ほどして勢いの乗った踵が吸い込まれるように猪の頭にジャストヒットした


「プゴッ!?」

ゴッ!!っという蹴りとは思えない音と共に、猪は短い悲鳴を上げてあっさりと昏倒した
あれだけ綺麗に入っていれば、絶命していてもおかしくないほどの鮮やかな一撃だった

ふぅ、と軽く息をつくレイに、先ほどの二人、マリーとアルが駆け寄ってくる

「はぁ…ほんと、手伝うことなんてなにもなかったね」
「はは、悪い悪い」
「マリーだって最初から手伝う必要ないのわかってただろう」


レイと親しげに話す二人の名前はウィルマリナ・ノースクリムとアルバート・バードウェイ
ウィルマリナ、通称マリーは親が男爵の位を持つ貴族の娘であり、アルバート、通称アルはノースクリム家に仕える使用人の息子だ

マリーは肩くらいにまでかかった美しい銀髪を可愛らしいカチューシャでまとめており、凛とした蒼い瞳と相まってまだ幼い子どもだというのに人形のような、神秘的な美しさを醸し出している
アルは焦げた茶色の髪を後ろで束ねており、目尻の垂れた緑色の瞳が特徴的な優しい顔をした男の子だ


「大っきいわね…これ、いつもどうやって持ち帰ってるの?」
まじまじと仕留めた猪を見て、呟くマリー

「今から血抜きしてそのまま担いでいくつもりだけど」
「「えっ?!」」
マリーとアルの声が重なる


恐る恐るアルが尋ねる
「ねえレイ、これ…何キロくらいあるの…??」
「んー…ぱっと見だけど、150キロはあると思う」

「「150!?」」

またも二人の声が重なる

「ははは、お前ら仲いいよなほんと」
「マ、マリー…150キロなんて、持てる?」
「………ま、魔法を使えば…なんとか………」


驚く二人をよそに、レイはてきぱきと血抜きを進めながら二人に話しかける

「すごい便利だよな、魔法ってさ。俺結構前試したんだけどさ、全く才能ないって言われちゃったよ」




「「((レイの体のほうがある意味凄いよ…))」」



心の中でも息がピッタリなマリーとアルだった


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俺、レイ・ファランクスは七歳になった

体は毎日鍛えており、かなり強靭になってきたと思う

鍛錬の内容は、一歳の頃は体中に闘気を巡らせてそれを発散させる、それをまず繰り返した
これだけでもかなり肉体的にはきつく、最初は失神して母さんを泣かせてしまった

闘気とは、どんな人間にも宿っている言わば魔力と似たものでもある

俺は専門家じゃないし詳しくは知らないが、ある一定の基準まで鍛えた武人ならば誰でも無意識に闘気を纏って戦っている
だが魔力とは似て非なるもの
魔力は自然エネルギーで鍛えるのに限度があり、闘気は精神エネルギーで鍛えるのに限度がないとかなんとか…まあそんなとこだ

闘気を自在に操れるようになれば闘技と言う技も自ずと使えるようになる
闘技には先人の編み出した物から俺自身のオリジナルもある

この身体じゃまだ難しいがな…

今まで活発の外に出ていたのに突然部屋に籠もりだして両親はかなり心配していたが、ご飯時には部屋を出て元気な姿を見せるので怪しまれてはいなかったと思いたい

そんな生活を俺は五歳まで続けたが、これだけでは感覚が鈍ると思いたち、そんなときに両親の紹介で、マリーとアルに出会った
マリーやアルの両親はとても優しく、平民の俺にも息子同然に接してくれた
マリーの両親からは、どうかマリーと仲良くしてあげて欲しい…と、少し悲しい顔をしていた
理由はわからないが、なにか事情があるのかもしれない

二人は俺と同い年で、すぐに仲良くなった
俺たちは基本的にノースクリムのお屋敷でしか会えなかったが、それでもお屋敷は広く、どんな遊びでもできた

そのノースクリムのお屋敷で俺はお抱えの猟師、ガリルさんと知り合った

ガリル・ウィンティア
四十歳前半には見えない鷹のように鋭い目つきと立派に蓄えられた真っ白な口ひげが特徴な屈強な男性だ
古くからレスカティエの近郊で猟師をしており、レスカティエ近辺のことをなんでも教えてくれた

そこで俺は外にでるチャンスと思い俺は両親とガリルさんに相談して、ガリルさん行動するならと森にでて狩りを初めた

父さんと母さんは俺からやりたいと言い出したことにはかなり寛容で、なんでも挑戦することを良しとしてくれた
ガリルさんも快く承諾してくれた

狩りは初めてではなく、おぼろげな記憶ではほとんど毎日野宿で動物を狩って食べていたと思う
ガリルさんには事前に、実は狩りの経験があると伝えておいた


ガリルさんは最初は半信半疑であったが、俺の狩りの腕を見て鋭い目が見開かれ、これはたまげたと猟師ギルドに推薦してくれた
ガリルさんはレスカティエでは名の知れた猟師さんだったらしく、ガリルさんが直接、狩猟ギルドに推薦してくれたのもあって、二つ返事で俺の狩猟許可証を発行してくれた

そこからは少しの間はガリルさんと共に狩りをしていたが、別々でも問題ないとガリルさんが父さんと母さんに太鼓判を押してくれたため、すぐに俺は一人で狩りをするようになった
俺の行動範囲は飛躍的に伸び、外で鍛錬することが増えるようになった

狩猟制限があるため毎日は狩りをすることはできないので、適当に五日に一回ほど猪や兎を取って、ギルドに持って行っていた
それ以外の時間は全て鍛錬に当てたり、ノースクリム家に遊びに行き、マリーとアルと三人で街中を出歩いたりしていた




そんな生活を続けていたらあっという間に年月が経ち、俺は七歳になっていたのだった…


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レスカティエ城下町

戦争の最前線に近いレスカティエは物資の出入りが激しく、戦争で一旗揚げようという冒険者や傭兵、戦争に乗じてお金を得ようとする商人など、様々な思惑と絡み合い、多くの人々が集う街である
外部の人間も多いためか、いざこざが絶えないが、それでもかなり治安は良い
さすがに教団の威光が強く、非常に世界的にも権力が強い国なので、あまり街中で問題が起こすのはマズイと理解しているのだ


そんな人通りの多い街中で、異彩を放つ光景が広がっていた

「な、なんか凄い見られてるわ…」
「め、目立つもんね、こんな大きな猪担いでたら」
「もう慣れちゃったな」

自分の背丈よりもデカイ猪を担いで平気な顔して歩く子供
確かに目立つがジロジロ物珍しそうに見てるのは少数で、この街にきたばかりの人たちばかりだ

この通りは狩りから帰るときにいつも通るので、大半の住人はレイのことを知っている

「おうレイじゃないかい!また今日も立派な猪を狩ってきたねぇ!」
「こんにちはケリーさん、今から狩猟ギルドで硬貨に変えてもらいにいくんだ」

恰幅のいい女性、あのレイの出産の時にも立ち会ったケリーがレイに話しかけてきた
ケリーは近くで魔法道具屋を営んでおり、ラークやメリルが懇意にしてる
たまにファランクス家にも遊びに来るので、レイも顔なじみである

肝っ玉の座った気持ちのいいおば…おねえさんである


「そうかいそうかい。ノースクリムのお嬢さんとアルも今日は一緒だったんだね!レイの狩りはどうだった?凄かっただろう!」

マリーとアルにも笑顔で話しかける
「はい、とても勉強になりました。レイには驚かされてばかりです」
「ほんと、びっくりしたよ。いつものことだけどさ…」

「レイはいつも驚くことするからねぇ、おっと、みんな引き止めて悪かったね!今度うちの店に遊びにいらっしゃい!いつでも歓迎するよ!」
はいと返事をする三人を見て、ケリーは笑顔で去っていった


…台風のような女性だ


「さて、ギルドに向かうか」




太陽はそろそろ中天を通過しようとしていた


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ギルド

世界には様々な種類のギルドが存在してる
冒険者ギルド、魔法ギルド、商人ギルド、職人ギルド等が代表的だ
基本的にギルドの立ち上げにはお金と複数人の代表者が必要になる
それらを用意した上でギルド連盟に申請、受理されることで初めてギルドを名乗ることができる

今回、レイがお世話になるのは狩猟ギルド
狩猟が盛んな地域なら必ずあり、期間内に狩っていい獲物の数や獲物の種類などは全てギルドで決められる
狩猟許可証を得るのに年齢は関係ないが、年齢や実績、地位が考慮された上で考査されるので、レイでは大したものを狩ることはできないし、数もたかが知れている


「お、きたかレイ、今日も随分と大物だなおい」
「こんにちはトムさん、換金をお願いしに来ました」
「おうおう子供の癖に礼儀正しいねえ、少し時間がかかるから、飯でも食って待ってな」

トムがチリンと鈴を鳴らすと、屈強な大男が一人で猪を裏に運んでいく
裏で解体をして部位ごとに値段をつけるのだ

レイは大男にお礼を言うと、おう、とぶっきらぼうに応えてくれた


レイはマリーとアルに向き直る
「これであとは硬貨もらって終わりだ、ちょっと時間かかるから俺の家で飯食べようぜ」

この発言にマリーとアルはパッと表情を明るくする
「さんせー!メリルさんのご飯食べたい!」
「僕も食べたい!!」
「じゃ、決まりだな」


三人は意気揚々とフォランクス家へと向かった




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「おかえり!おにーちゃん!!」

三人がファランクス家の前につくと、元気に出迎えてくれる小さな女の子がいた

「ただいま、リン。大人しくしてたか?」
「うん!!」

彼女の名前はリン・ファランクス
レイの妹であり、ファランクス家の長女にあたる 現在五歳
両親と同じ金髪碧眼の元気いっぱいの女の子
腰まで伸びた髪の毛を後ろで束ね、犬の尻尾のように元気いっぱいに振り回している

リンは昔からお転婆で、レイに懐いており、レイの行くところにはどこでもついてきたがる

「マリーとアルもいらっしゃい!」
「こんにちは、リンちゃん」
「やあリンちゃん、元気だった?この前あったばっかりだけど」
うん!と元気よく返事するリンの後ろから、妙齢の美しい美女が姿を表した

「あら、いらっしゃい、マリーちゃん、アルくん」
彼女がにっこりと微笑むとマリーとアルは少し顔を赤くする
「こ、こんにちはメリルさん」
「こここここんにちはメリリュッ、メリルさん!!!」

緊張する二人を見てうふふと口元を抑えるメリル
「今日はゆっくりしていってね?すぐ昼食を用意するから、レイ、リビングに案内してあげてね」
「わかった」

メリルはレイの返事に頷くとキッチンへ戻っていった
その後姿をアルはじっと見つめている

「はぁ〜…、いつ見ても綺麗だよねメリルさん…」
「アル、お前いっつもそれだな…」
「いやいやいや!レイは近くにいるから気づかないだけだよ!!」
呆れたように言うレイに慌てて反論するアル

「ほんと…綺麗な人だなあ……」
アルはメリルの消えた方向を見つめてボーッとしていた

「………ちょっと、そんなのほっといて早く行こうよ、レイ」
「ん?マリー、あんま気にするなよ、行こうか」
そんなアルを見てか、少し不機嫌になったマリーを慰めるレイ

「うっ…べ、別に私は…」
「リンも行こう。おいアル、いくぞ!」
うん!と返事をするリンと、心ここにあらずなアルを引きずって四人はリビングに向かった


「(はぁ…身近にいるから気づかないのはお前のほうだぞ、アル)」



レイは、心の中でそう思わずにいられなかった
15/09/16 13:45更新 / S.wf
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■作者メッセージ
もう寝るので4月6日の分ということで…

誤字脱字あれば修正します

読み返すと文法おかしいと自分でもわかる箇所多いので修正は後々していきます
ある程度大筋決めてばーっと書いてしまっているので結構適当ですすみません

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