エル番外編「お姉ちゃんの約束」
「へぇー、あんたが新しい家族?本当に男の子なんだ〜」
「う、うん…」
今日、私の元に新しい家族がやってきた
大きい男の人と、私より小さな男の子だ
大きい男の人はママと結婚して、この小さな男の子は私たちの弟になる
「あんた、今日から私の弟になるのよ!私のことは…そうね、「ねぇねぇ」って呼びなさい!」
「…ねぇ、ねぇ?」
「よーし、それじゃあ今から遊びに行くよ!タク!」
「え、えぇっ?い、今から…?」
「何よ、いやなの?」
「い、嫌じゃなくて…まだ荷物とか片付けてないし、家事とか…」
「そんなもん大人に任せればいいの、子供は遊ぶのが仕事なのよ!さっ、行くわよー!」
私は嬉しくて、タクの手を引っ張って外へ遊びに行った
「何、あんた虫も捕まえられないの?…しょうがないなぁ、私が教えてあげる!」
楽しかった、ただ楽しかった
「いい?釣り餌の虫はこうやってつけると長持ちするのよ!」
誰かと一緒に遊ぶことが、すごい楽しくて仕方がなかった
たぶん、今までタクも外で思いっきりはしゃぐことがなかったのだと思う
タクは私のどんな話も真剣に聞いて、笑ってくれて…
「いいタク、私はお姉ちゃんです!お姉ちゃんの命令には弟は絶対に従わなくちゃいけません!」
「う、うん…分かった」
「じゃあ命令その1!お姉ちゃんにはちゃんと甘えること!変に遠慮しないで素直ないい子になることね!」
「ど、どうすればいいの?」
「うーん、とりあえずお姉ちゃんにしてほしいことがあったら言うの」
「…じゃあ、僕…ずっとねぇねぇと一緒にいたいな」
うん、そうだね…ずっと一緒にいようね
「命令その2!好き嫌いはしないこと!…ちゃんと色んなもの食べないと身体悪くしちゃうから、好き嫌いしないでよく食べるいい子になるのよ?」
「わかった、好き嫌いしないしちゃんと食べる!」
「タクは小食なんだもん、ちゃんといっぱい食べないと大きくなれないわ!」
「うん!」
「じゃあ最後は…大切な人ができたら、ちゃんと幸せにしてあげること」
「大切な人?母さんやねぇねぇとか?」
「うーん、ちょっと違うかな?」
タクには、まだ早いかも知れないけど…
「タクが、本当に好きで…愛する人ができたら、幸せにしなきゃダメなのよ?泣かせるなんて絶対にダメなんだから!」
「う、うん…」
「これは、命令じゃなくて…約束よ?」
「約束…分かった、僕約束ちゃんと守るよ!」
「よーし、じゃあ破ったら承知しないぞー?」
この時から、私はもうタクが大好きだった
だってこんな身近にいる男の子だよ?
好きにならないわけが無いよね
もし、もしだよ?
そんなタクが、私を選んでくれたら…こんなに嬉しいことはないの
いつしか私はそんなことを考えて…
「…ありゃ?夢か…」
夢だったのかぁ…懐かしい夢見ちゃったな
約束…か、私は忘れてないけど…タクは流石にもう覚えてないよね
「…zzz」
「ふふ、呑気にいびきなんかかいちゃってさ…」
「…ねぇ、ねぇ…zzz」
「あらやだ、夢にまで私が出てるの?ちょっと恥ずかしいな…」
…まったく、タクはお姉ちゃんっ子なんだから
「…ん、朝か…」
「おはよ、いい夢見れた?」
「え?うん、まぁいい夢やったけど…」
「えへへ〜、そうかそうか〜」
お姉ちゃんが出てる夢がいい夢だなんて、嬉しいから撫でてあげよう
「な、なんや朝から…?」
「んー、嬉しかったから」
「まぁええわ…朝ごはんの準備するわ」
「みんなそろそろ起きてくるしね」
本当はもうちょっとタクと一緒に寝たいんだけど、タクも家事をやらなくちゃいけないからなぁ…
「あ!そうやねぇねぇ」
「何、どうしたの?」
「今日さ、ちょっと二人で出掛けへんかなって…ほら、確か最近新しい遊園地が出来たから」
え、これってまさか…デートのお誘い!?
「ね、ねぇ…それってあれ?姉弟で楽しむんじゃなくて、恋人としての…で、でで、デートってこと!?」
「まぁ…そうなる、かなぁ」
ちょっとだけ恥ずかしそうに言うタク…まさかタクからこういうこと言ってくるなんて!
「それって、つまり私をデートに誘ってくれたの!?」
「あ、あぁ…デートに行こう、ねぇねぇ」
「う、うん!うん!行こう!」
…
そんなわけで俺はエルねぇねぇをデートに誘い、件の遊園地までやってきた
いつもねぇねぇに連れまわされてるからたまには自分から誘ってみたが喜んでもらえたみたいで良かった
あぁやって目に見えて喜んでもらえるとこっちも嬉しく思う
仕事のツテで新しく出来た遊園地のチケットをもらっておいて良かったな…いつも釣りとかアウトドアなことばっかりだから、たまには遊園地とかで遊ぶのもいいだろう
「ここかぁ、人いっぱいおるなぁ…」
「ねぇタク!その遊園地って最近オープンしたデートスポットに最適ってテレビでやってたやつでしょ!?人気で中々チケット取れないって話なのに良く取れたねー」
「え、そうなん?たしかこの前、研究の仕事で依頼主さんがくれたんやけど、ここでオーナーしてるって言うてな」
「…もしかしてお父さんやタクの研究所って、凄いところなの?」
「まぁ…一応、世界レベルで注目されてるとこやし…ぼちぼちいいとこなんちゃう?よく分からんし、あまり興味ないしなぁ」
親父や俺も含め研究員達は自分は何か研究して追及すること以外のことはあまり気にしないから、そういうことには疎いのだ
「ま、せっかくもらったチケットなんやから楽しもうや!せっかくのデートなんやからさ」
彼氏らしく、隣のねぇねぇの翼と俺の手を繋いでみる
「あっ…♪」
「なんかこのチケットで色々優遇してくれるみたいやで、なんやあまり待たずに済みそうやな」
「た、タクってば…なんだか今日は積極的だね?」
「いつもねぇねぇに引っ張られとるから、たまには弟やなくて彼氏らしいとこ見せたくてな」
「…もう、そんなこと気にしなくていいのに」
そういいながら、俺の腕に翼を絡ませてくるねぇねぇ
すると腕になにやら幸せな柔らかい感触が…
「うぁっ、ねぇねぇ…?」
「んふふ、お姉ちゃんから主導権を握ろうだなんて100年早いんだからね?」
あー、やっぱりダメか…たまには俺がねぇねぇを引っ張ってみたいんだけどなぁ
どうしてもねぇねぇから主導権を得ることは叶わない、たぶん姉としての力が強いんだろう
「んじゃ、入ろ?確かそれだと優先的に入れるんだよね?」
「あ、あぁ…せやで」
そうして遊園地へ入場する、結構大規模な遊園地のようだ
「遊園地かー!タク、なに乗ろうか!」
「せやなぁ…ねぇねぇは空とか飛んだりしてるから絶叫系には慣れてそうやから、なんかゆったりしたのにしようか?」
「ん〜、私は絶叫系でもいいけどやっぱり慣れてるからなぁ…あ、この「氷の館」とか言うのいいんじゃない、涼しそうだし!」
「せやな、最近暑いし丁度ええか」
パンフレットの地図を見ながら、目的地まで進む
「ようこそおいでいたしました、お二人様ですね?」
「はーい、お願いいたしまーす」
氷の館につくと、青い肌に雪のような髪の…雪女さんが出迎えてくれる、魔物のスタッフや客も多いらしい
「へー、結構長い通路になってるんだー…あ、クリオネだ!」
中の水槽にクリオネを見つけてはしゃぐねぇねぇ、楽しそうだ
「…ねぇねぇ、なんかやけに近くない?っていうか抱きついてない?」
「んー?いいじゃん、暑くないでしょ?」
い、いや…さすがに抱きつかれてると周りからの視線が…
「ほ、他の人もおるから…」
「しーらない、見せつけちゃえばいいじゃん♪」
「しゃあないなぁ…」
仕方なく諦めることにした、視線は気になるがそれでねぇねぇが離れるとは思えない
本当に仕方なくだから、俺が心地いいとかそういうんじゃないからね?
「わっ、頭割れて触手でた!?」
「あぁ、クリオネは捕食するときにバッカルコーンっていう触手を頭から伸ばすんやで」
「あんななや可愛かったのに、襲う時にはあんな風になるなんて…まるでタクみたいね♪」
「お、俺のはあんな凶悪やないから…」
「そうかな〜、結構凶悪だと思うよ?」
「ね、ねぇねぇ…恥ずかしい話は終わりや!も、もう出よう…な?」
「あ、照れてる!可愛いなぁ、もう♪」
周りの冷たい視線で凍りそうだったので、さっさと出ることにした
「あら、もうお行きになりますか?」
「え、えぇ…ちょっと寒くて」
「え、タクそうなの?じゃあ私があっためてあげる…ぎゅー♪」
また抱きついてくるねぇねぇ、いや気持ちいいんだけどさぁ
「あらあらお熱いですわ、溶けてしまいそうです」
「す、すいません!もう行きますから!」
「またのご来店お待ちしております♪」
急いで氷の館から出て外に出る、これ以上の羞恥プレイは俺が耐えられない
「あー…やばかった」
「そんなに寒かったの?」
「…それマジで言ってんならねぇねぇのこと尊敬するで…」
「えー?えへへ…そんな、照れちゃうよタク…♪」
「さー次は何処にしようかのー」
とりあえず思考を止めよう、ねぇねぇ相手だと頭が働かない
「あー!コーヒーカップあるよタクー!」
「コーヒーカップか…あまり回さんでくれよ、酔うから」
「大丈夫大丈夫!」
そんな感じで俺たちは遊園地を満喫した、なんだか久しぶりに羽目を外して遊んだなぁ
遊園地とか子供の頃以来だからな、確かあの時は家族みんなで行ったんだったか
「ふぅー…」
「いやー遊んだ遊んだ、ちょっと休憩しよっかー」
「せやな、じゃあちょっとそこで飲み物買ってくるで」
「ありがと、私ジュースねー」
…
流石に少しはしゃぎ過ぎて疲れたなぁ、でもすっごい楽しかった
「あー、このデートがずっと続けばなぁ…」
あ、でもずっと同じだと飽きちゃいそうだからまた別の場所もいいな
またタクといろんなところに行って…あぁ、考えるだけで心がわくわくしちゃう
「…でも、タクってばずっと私が振り回しちゃってるけど大丈夫かな…タクも疲れてると思うし」
それなのに私のためにジュースまで買って行ってくれたし…私も何かタクにしてあげたい
「…へ、へいそこの可愛いセイレーンさん!俺とお茶せえへん!?」
「…タク、何それ」
「あ、ダメ?行けると思ったんやけどなぁ」
戻ってきたタクがいきなりギャグをかましてきた
「タクにそんな歯の浮いたセリフ似合わないよー」
「せっかくのデートやから雰囲気だそうかと思ったんやけどなぁ」
「あれじゃただのナンパみたいだよ?」
「んー、難しいなぁ」
「じゃあお姉ちゃんが見本を見してあげよう!…ごくっ」
タクが買ってきてくれたジュースを一口だけ口に含む
「んっ…ちゅっ、じゅぅ…れろ…」
「わっ、ねぇね…んん、じゅぅ…ごくっ…!」
「ぷはっ…えへへ、どう?口移しで飲ませてあげるなんてデートっぽくない?」
「…よくもまぁこんな恥ずかしいことができるもんや、やっぱねぇねぇには勝てへんなぁ」
「弟が姉に勝とうということ自体がおこがましいんだよタク!恋人になったって、タクは私の弟なんだからね?」
「このままやと、ずっとねぇねぇの尻に敷かれそうやなぁ」
「いいのよ、それでさ。きっとそれがお互いの幸せなんだから」
そう、幸せなのが一番なんだから…
「…ねぇねぇ、今日は楽しかったか?」
「うん、誘ってくれてありがとね!すごい楽しかった、すごい幸せ!」
「…そっか、それなら良かったよかったわ…約束も守れたみたいやしな」
「え、約束?」
「…あぁ、ねぇねぇはもう覚えとらんかも知れんが小さい頃にねぇねぇと約束したんよ。愛する人ができたら、幸せにしてあげるって…」
た、タク…ちゃんと覚えててくれたんだ
「…覚えてるよ、ちゃんとね」
「え、ホンマに?」
「うん、お姉ちゃん命令じゃなくて…お姉ちゃんとの約束」
タクは私が覚えていたのが意外だったのが少し驚いている
いや、私もタクが忘れてると思ってたんだけどさ
「…なんや、結局昔と変わっとらんのな…俺らは」
「そうだねー、昔も今もこうやって一緒だから」
そう、きっとこれからもずっと
「ね、タク…最後に観覧車乗ろうよ」
「え?別にええけど…」
私はタクの手を引いて、観覧車のところまで行く
日も暮れてきて、辺りは茜色に染まっている
「なんやわざわざ観覧車乗らんでも、ねぇねぇは飛べるやろ?」
「夕日の観覧車、乗ってみたかったんだよね。デートの鉄板だよ?」
「そうなんか?…あ、そろそろテッペンや…意外と高いなぁ」
「タク、ちょっとこっち向いて…」
私はタクの顔を両の羽根でこちらへ向ける
「な、なんや…じっと見て…んっ!?」
「んっ…ちゅっ…ちぅぅ…じゅる…!」
観覧車がテッペンに差し掛かったところで、タクの唇を奪う
「タクぅ…ちぅ、れる…んっ、ちゅるる…はぁっ…!」
「ね、ねぇねぇ…急に激しいで…なんや急に」
「夕方の観覧車のテッペンでキスをするっていうのがテレビのデート特集でやってたから…やってみたんだけど、どう?」
「どうって…そりゃ気持ちい…って何言わせんのや、恥ずかしいわ」
「私ね、これからもずっとずぅーっとタクと一緒にいるからね…もっともっといろんなことして、タクを幸せにしてあげるから」
「そりゃ俺のセリフやろ、俺もねぇねぇを幸せにする…ずっとな。命令、やなくて…約束やから」
「うん…約束だからね」
「あぁ、約束や」
「破ったら、ひどいんだからね?」
「ねぇねぇ、俺はあり得ないことについては考えない主義でな…」
「ま、それもそっか♪」
私はタクを幸せにする、タクも私を幸せにしてくれる
それは今も昔も変わらなくて、これからもずっと変わらないことで…
「ね、タク…指切りしようよ」
「えぇ?指切りって…あの指切りか?」
「そうそう、小指出して!」
「はいはい、えーと…指切り拳万〜」
「約束破ったら干からびるまで搾り取るっ♪」
「指切った…って、えぇ!?」
「んふふ…せいぜい約束を破らないように頑張ってよね、タク?」
ま、タクだし心配はしてないけどね…あぁでもタクを干からびるまで搾り取るのはやってみたいかも
そろそろ子供も欲しいし…ね?
「う、うん…」
今日、私の元に新しい家族がやってきた
大きい男の人と、私より小さな男の子だ
大きい男の人はママと結婚して、この小さな男の子は私たちの弟になる
「あんた、今日から私の弟になるのよ!私のことは…そうね、「ねぇねぇ」って呼びなさい!」
「…ねぇ、ねぇ?」
「よーし、それじゃあ今から遊びに行くよ!タク!」
「え、えぇっ?い、今から…?」
「何よ、いやなの?」
「い、嫌じゃなくて…まだ荷物とか片付けてないし、家事とか…」
「そんなもん大人に任せればいいの、子供は遊ぶのが仕事なのよ!さっ、行くわよー!」
私は嬉しくて、タクの手を引っ張って外へ遊びに行った
「何、あんた虫も捕まえられないの?…しょうがないなぁ、私が教えてあげる!」
楽しかった、ただ楽しかった
「いい?釣り餌の虫はこうやってつけると長持ちするのよ!」
誰かと一緒に遊ぶことが、すごい楽しくて仕方がなかった
たぶん、今までタクも外で思いっきりはしゃぐことがなかったのだと思う
タクは私のどんな話も真剣に聞いて、笑ってくれて…
「いいタク、私はお姉ちゃんです!お姉ちゃんの命令には弟は絶対に従わなくちゃいけません!」
「う、うん…分かった」
「じゃあ命令その1!お姉ちゃんにはちゃんと甘えること!変に遠慮しないで素直ないい子になることね!」
「ど、どうすればいいの?」
「うーん、とりあえずお姉ちゃんにしてほしいことがあったら言うの」
「…じゃあ、僕…ずっとねぇねぇと一緒にいたいな」
うん、そうだね…ずっと一緒にいようね
「命令その2!好き嫌いはしないこと!…ちゃんと色んなもの食べないと身体悪くしちゃうから、好き嫌いしないでよく食べるいい子になるのよ?」
「わかった、好き嫌いしないしちゃんと食べる!」
「タクは小食なんだもん、ちゃんといっぱい食べないと大きくなれないわ!」
「うん!」
「じゃあ最後は…大切な人ができたら、ちゃんと幸せにしてあげること」
「大切な人?母さんやねぇねぇとか?」
「うーん、ちょっと違うかな?」
タクには、まだ早いかも知れないけど…
「タクが、本当に好きで…愛する人ができたら、幸せにしなきゃダメなのよ?泣かせるなんて絶対にダメなんだから!」
「う、うん…」
「これは、命令じゃなくて…約束よ?」
「約束…分かった、僕約束ちゃんと守るよ!」
「よーし、じゃあ破ったら承知しないぞー?」
この時から、私はもうタクが大好きだった
だってこんな身近にいる男の子だよ?
好きにならないわけが無いよね
もし、もしだよ?
そんなタクが、私を選んでくれたら…こんなに嬉しいことはないの
いつしか私はそんなことを考えて…
「…ありゃ?夢か…」
夢だったのかぁ…懐かしい夢見ちゃったな
約束…か、私は忘れてないけど…タクは流石にもう覚えてないよね
「…zzz」
「ふふ、呑気にいびきなんかかいちゃってさ…」
「…ねぇ、ねぇ…zzz」
「あらやだ、夢にまで私が出てるの?ちょっと恥ずかしいな…」
…まったく、タクはお姉ちゃんっ子なんだから
「…ん、朝か…」
「おはよ、いい夢見れた?」
「え?うん、まぁいい夢やったけど…」
「えへへ〜、そうかそうか〜」
お姉ちゃんが出てる夢がいい夢だなんて、嬉しいから撫でてあげよう
「な、なんや朝から…?」
「んー、嬉しかったから」
「まぁええわ…朝ごはんの準備するわ」
「みんなそろそろ起きてくるしね」
本当はもうちょっとタクと一緒に寝たいんだけど、タクも家事をやらなくちゃいけないからなぁ…
「あ!そうやねぇねぇ」
「何、どうしたの?」
「今日さ、ちょっと二人で出掛けへんかなって…ほら、確か最近新しい遊園地が出来たから」
え、これってまさか…デートのお誘い!?
「ね、ねぇ…それってあれ?姉弟で楽しむんじゃなくて、恋人としての…で、でで、デートってこと!?」
「まぁ…そうなる、かなぁ」
ちょっとだけ恥ずかしそうに言うタク…まさかタクからこういうこと言ってくるなんて!
「それって、つまり私をデートに誘ってくれたの!?」
「あ、あぁ…デートに行こう、ねぇねぇ」
「う、うん!うん!行こう!」
…
そんなわけで俺はエルねぇねぇをデートに誘い、件の遊園地までやってきた
いつもねぇねぇに連れまわされてるからたまには自分から誘ってみたが喜んでもらえたみたいで良かった
あぁやって目に見えて喜んでもらえるとこっちも嬉しく思う
仕事のツテで新しく出来た遊園地のチケットをもらっておいて良かったな…いつも釣りとかアウトドアなことばっかりだから、たまには遊園地とかで遊ぶのもいいだろう
「ここかぁ、人いっぱいおるなぁ…」
「ねぇタク!その遊園地って最近オープンしたデートスポットに最適ってテレビでやってたやつでしょ!?人気で中々チケット取れないって話なのに良く取れたねー」
「え、そうなん?たしかこの前、研究の仕事で依頼主さんがくれたんやけど、ここでオーナーしてるって言うてな」
「…もしかしてお父さんやタクの研究所って、凄いところなの?」
「まぁ…一応、世界レベルで注目されてるとこやし…ぼちぼちいいとこなんちゃう?よく分からんし、あまり興味ないしなぁ」
親父や俺も含め研究員達は自分は何か研究して追及すること以外のことはあまり気にしないから、そういうことには疎いのだ
「ま、せっかくもらったチケットなんやから楽しもうや!せっかくのデートなんやからさ」
彼氏らしく、隣のねぇねぇの翼と俺の手を繋いでみる
「あっ…♪」
「なんかこのチケットで色々優遇してくれるみたいやで、なんやあまり待たずに済みそうやな」
「た、タクってば…なんだか今日は積極的だね?」
「いつもねぇねぇに引っ張られとるから、たまには弟やなくて彼氏らしいとこ見せたくてな」
「…もう、そんなこと気にしなくていいのに」
そういいながら、俺の腕に翼を絡ませてくるねぇねぇ
すると腕になにやら幸せな柔らかい感触が…
「うぁっ、ねぇねぇ…?」
「んふふ、お姉ちゃんから主導権を握ろうだなんて100年早いんだからね?」
あー、やっぱりダメか…たまには俺がねぇねぇを引っ張ってみたいんだけどなぁ
どうしてもねぇねぇから主導権を得ることは叶わない、たぶん姉としての力が強いんだろう
「んじゃ、入ろ?確かそれだと優先的に入れるんだよね?」
「あ、あぁ…せやで」
そうして遊園地へ入場する、結構大規模な遊園地のようだ
「遊園地かー!タク、なに乗ろうか!」
「せやなぁ…ねぇねぇは空とか飛んだりしてるから絶叫系には慣れてそうやから、なんかゆったりしたのにしようか?」
「ん〜、私は絶叫系でもいいけどやっぱり慣れてるからなぁ…あ、この「氷の館」とか言うのいいんじゃない、涼しそうだし!」
「せやな、最近暑いし丁度ええか」
パンフレットの地図を見ながら、目的地まで進む
「ようこそおいでいたしました、お二人様ですね?」
「はーい、お願いいたしまーす」
氷の館につくと、青い肌に雪のような髪の…雪女さんが出迎えてくれる、魔物のスタッフや客も多いらしい
「へー、結構長い通路になってるんだー…あ、クリオネだ!」
中の水槽にクリオネを見つけてはしゃぐねぇねぇ、楽しそうだ
「…ねぇねぇ、なんかやけに近くない?っていうか抱きついてない?」
「んー?いいじゃん、暑くないでしょ?」
い、いや…さすがに抱きつかれてると周りからの視線が…
「ほ、他の人もおるから…」
「しーらない、見せつけちゃえばいいじゃん♪」
「しゃあないなぁ…」
仕方なく諦めることにした、視線は気になるがそれでねぇねぇが離れるとは思えない
本当に仕方なくだから、俺が心地いいとかそういうんじゃないからね?
「わっ、頭割れて触手でた!?」
「あぁ、クリオネは捕食するときにバッカルコーンっていう触手を頭から伸ばすんやで」
「あんななや可愛かったのに、襲う時にはあんな風になるなんて…まるでタクみたいね♪」
「お、俺のはあんな凶悪やないから…」
「そうかな〜、結構凶悪だと思うよ?」
「ね、ねぇねぇ…恥ずかしい話は終わりや!も、もう出よう…な?」
「あ、照れてる!可愛いなぁ、もう♪」
周りの冷たい視線で凍りそうだったので、さっさと出ることにした
「あら、もうお行きになりますか?」
「え、えぇ…ちょっと寒くて」
「え、タクそうなの?じゃあ私があっためてあげる…ぎゅー♪」
また抱きついてくるねぇねぇ、いや気持ちいいんだけどさぁ
「あらあらお熱いですわ、溶けてしまいそうです」
「す、すいません!もう行きますから!」
「またのご来店お待ちしております♪」
急いで氷の館から出て外に出る、これ以上の羞恥プレイは俺が耐えられない
「あー…やばかった」
「そんなに寒かったの?」
「…それマジで言ってんならねぇねぇのこと尊敬するで…」
「えー?えへへ…そんな、照れちゃうよタク…♪」
「さー次は何処にしようかのー」
とりあえず思考を止めよう、ねぇねぇ相手だと頭が働かない
「あー!コーヒーカップあるよタクー!」
「コーヒーカップか…あまり回さんでくれよ、酔うから」
「大丈夫大丈夫!」
そんな感じで俺たちは遊園地を満喫した、なんだか久しぶりに羽目を外して遊んだなぁ
遊園地とか子供の頃以来だからな、確かあの時は家族みんなで行ったんだったか
「ふぅー…」
「いやー遊んだ遊んだ、ちょっと休憩しよっかー」
「せやな、じゃあちょっとそこで飲み物買ってくるで」
「ありがと、私ジュースねー」
…
流石に少しはしゃぎ過ぎて疲れたなぁ、でもすっごい楽しかった
「あー、このデートがずっと続けばなぁ…」
あ、でもずっと同じだと飽きちゃいそうだからまた別の場所もいいな
またタクといろんなところに行って…あぁ、考えるだけで心がわくわくしちゃう
「…でも、タクってばずっと私が振り回しちゃってるけど大丈夫かな…タクも疲れてると思うし」
それなのに私のためにジュースまで買って行ってくれたし…私も何かタクにしてあげたい
「…へ、へいそこの可愛いセイレーンさん!俺とお茶せえへん!?」
「…タク、何それ」
「あ、ダメ?行けると思ったんやけどなぁ」
戻ってきたタクがいきなりギャグをかましてきた
「タクにそんな歯の浮いたセリフ似合わないよー」
「せっかくのデートやから雰囲気だそうかと思ったんやけどなぁ」
「あれじゃただのナンパみたいだよ?」
「んー、難しいなぁ」
「じゃあお姉ちゃんが見本を見してあげよう!…ごくっ」
タクが買ってきてくれたジュースを一口だけ口に含む
「んっ…ちゅっ、じゅぅ…れろ…」
「わっ、ねぇね…んん、じゅぅ…ごくっ…!」
「ぷはっ…えへへ、どう?口移しで飲ませてあげるなんてデートっぽくない?」
「…よくもまぁこんな恥ずかしいことができるもんや、やっぱねぇねぇには勝てへんなぁ」
「弟が姉に勝とうということ自体がおこがましいんだよタク!恋人になったって、タクは私の弟なんだからね?」
「このままやと、ずっとねぇねぇの尻に敷かれそうやなぁ」
「いいのよ、それでさ。きっとそれがお互いの幸せなんだから」
そう、幸せなのが一番なんだから…
「…ねぇねぇ、今日は楽しかったか?」
「うん、誘ってくれてありがとね!すごい楽しかった、すごい幸せ!」
「…そっか、それなら良かったよかったわ…約束も守れたみたいやしな」
「え、約束?」
「…あぁ、ねぇねぇはもう覚えとらんかも知れんが小さい頃にねぇねぇと約束したんよ。愛する人ができたら、幸せにしてあげるって…」
た、タク…ちゃんと覚えててくれたんだ
「…覚えてるよ、ちゃんとね」
「え、ホンマに?」
「うん、お姉ちゃん命令じゃなくて…お姉ちゃんとの約束」
タクは私が覚えていたのが意外だったのが少し驚いている
いや、私もタクが忘れてると思ってたんだけどさ
「…なんや、結局昔と変わっとらんのな…俺らは」
「そうだねー、昔も今もこうやって一緒だから」
そう、きっとこれからもずっと
「ね、タク…最後に観覧車乗ろうよ」
「え?別にええけど…」
私はタクの手を引いて、観覧車のところまで行く
日も暮れてきて、辺りは茜色に染まっている
「なんやわざわざ観覧車乗らんでも、ねぇねぇは飛べるやろ?」
「夕日の観覧車、乗ってみたかったんだよね。デートの鉄板だよ?」
「そうなんか?…あ、そろそろテッペンや…意外と高いなぁ」
「タク、ちょっとこっち向いて…」
私はタクの顔を両の羽根でこちらへ向ける
「な、なんや…じっと見て…んっ!?」
「んっ…ちゅっ…ちぅぅ…じゅる…!」
観覧車がテッペンに差し掛かったところで、タクの唇を奪う
「タクぅ…ちぅ、れる…んっ、ちゅるる…はぁっ…!」
「ね、ねぇねぇ…急に激しいで…なんや急に」
「夕方の観覧車のテッペンでキスをするっていうのがテレビのデート特集でやってたから…やってみたんだけど、どう?」
「どうって…そりゃ気持ちい…って何言わせんのや、恥ずかしいわ」
「私ね、これからもずっとずぅーっとタクと一緒にいるからね…もっともっといろんなことして、タクを幸せにしてあげるから」
「そりゃ俺のセリフやろ、俺もねぇねぇを幸せにする…ずっとな。命令、やなくて…約束やから」
「うん…約束だからね」
「あぁ、約束や」
「破ったら、ひどいんだからね?」
「ねぇねぇ、俺はあり得ないことについては考えない主義でな…」
「ま、それもそっか♪」
私はタクを幸せにする、タクも私を幸せにしてくれる
それは今も昔も変わらなくて、これからもずっと変わらないことで…
「ね、タク…指切りしようよ」
「えぇ?指切りって…あの指切りか?」
「そうそう、小指出して!」
「はいはい、えーと…指切り拳万〜」
「約束破ったら干からびるまで搾り取るっ♪」
「指切った…って、えぇ!?」
「んふふ…せいぜい約束を破らないように頑張ってよね、タク?」
ま、タクだし心配はしてないけどね…あぁでもタクを干からびるまで搾り取るのはやってみたいかも
そろそろ子供も欲しいし…ね?
15/05/25 22:31更新 / ミドリマメ
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