プロローグ〜故・霧島翔一の日々の数々〜
・・・・・・・・・今日は何曜日だろう・・・・・・・・・
そんな考えがよぎる。
俺、霧島翔一は現在夏休みを満喫していた。
正しくは、休みになり、課題を最初の三日に終わらしてしまいなにをするでもなく一日一日を無駄に過ごしていた。
あまりにも何もせずにすごしてきたため今日が何日の何曜日かわからないほどである。
意味もなく手を握ったり開いたりする。客観的に自分を見たらどんなやつに見えるだろう。そんなことを考えながら今日も一日無駄に費やしてゆく。
「・・・・・・いつものやつでもするか・・・・・・」
彼の言う「いつものやつ」とはずばり・・・妄想・・・
自分を物語の主人公にし、そのなかでどんな風に輝いているかを妄想する事が彼の暇つぶしであり「いつものやつ」なのである。
「・・・見える・・・俺にも見えるぞ!・・・はっ!とりゃ!そいや!!!」
NT(NEET)妄想中・・・・
「・・・ふぅ、今日の敵は手ごわかったが、まぁ俺様の敵じゃぁなかったな!!はーっはっはっはっはっはははははは・・・・・・はぁ〜」
こうやって俺は妄想と現実のギャップにまた苦悩し、怠惰な毎日を送っている。
「・・・むなしいなぁ・・・」
今日も一日無駄に終えた
翔一視点
くそ!町のリア充どもめが!全員鼻から脳みそ出して死にやがれ!!
町のカップルどもを見ているとそう思う。
こんな糞暑い日に手ぇつないだり腕組んだりしてこいつらは暑くないのだろうか?・・・あぁ、あれか!頭が弱すぎて暑さを感じ取れないのか!!全くなんてかわいそうな生物どもなんだ、ここはあいつらよりも知能の優れている俺が大人になって見逃してやろう。うんうん
・・・・・・俺って今すごくみじめなきがする
俺、霧島翔一は心の底から後悔した。
たまには休日を満喫しようと町にでた俺が目にしたのは、俺と同じ学生であろう者たちが町に徘徊していた。
俺と決定的に違う事は俺は一人で周りのやつはなぜか隣に人がいる。
俗に言う「かっぷる」と言うものだろう。これだから俗世は嫌になるのだよ。
・・・・・・・・・・・・・・・別に羨ましくなどないぞ!ほんとだぞ!
「うらやしくなんてないうらやましくなんてないうらやましくなんてない」
実際俺は女性が苦手だ。声をかけられるだけでもなにもできなくなる。そんな俺に彼女などいるはずもなく今日も町をぶらぶらするだけだ。
結局のところ家にいようと町に出ようとやってる事には変わりがないのだ。
(まだ十代の若者なのにこんなんでいいのかなぁ(笑)まぁ、いつかは俺のよさをわかってくれる女の人ができるはずさ!(泣))
悲しみに浸りながら帰路にさしかかろうとしたそのとき・・・
「はっ!」
背後に何者かの気配がする・・・まるで獣のようなオーラさえ感じる
(俺の背後をとるなんて・・・中々できる・・・)
しばらく無視をしそのまま数歩歩く、それに合わし後ろの気配もこちらに歩み寄ってくる
(全く、どこのドイツ人だかしらんが・・・俺をストーキングするなんぞ・・・)
「うらぁ!百年早いんじゃ!ボケェー!!」
振り向きざまに裏拳を繰り出す!あまりのすばやい動きに敵は反応することもできず地面に膝をつけr・・・・・・って・・・アレ?誰もいない?
俺のはなった裏拳は空をきり、道の真ん中で俺は硬直していた。
「おかしいなぁ、確かに何者かの気配がしたんだが・・・ん?」
足に擦り寄ってくる何かがあった。黒い毛玉のような生物・・・そう、こいつは!!
「にゃ〜〜ん」
猫だ!・・・・・・そう!猫だ!! 大事な事なので二回いいましたby翔一
「なんで猫が俺をストーキング?もしかして俺動物のフェロモンでもでてんのかなぁ」
そう思うと少し悲しくなってくる。まぁ実際この猫はさっきから俺の足に擦り寄ってくるので少なくとも嫌われてはないのだろう。
「お前どうしたんだ?迷子か?それとも俺に惚れたのか?」
迷子猫かと思うが首輪がない。しかし毛並みはよく、これだけ人になつくのだから野良でもないと思う。そんなどこの馬の骨ともわからんやつでも、一人さびしい俺によってきてくれた唯一の存在だと思うと少し嬉しくなってくる。
「よぉーしよし。おお!ゴロゴロいってらぁ!可愛いなぁお前」
「にゃ〜ん」
それから一時間ほどこの猫と遊び、なぜか今までにないほどの充実した一日のように感じて今日は帰った。
黒猫視点
・・・・・・・・・ここはどこだろう・・・また・・・夢の中にいるのだろうか・・・・・
いつもと変わらない一日を・・・・・また過ごすのだろうか・・・・・・
まわりの世界がぐるぐるせわしく周り・・・・・景色をかえてゆく・・・・・・
・・・・わたしは・・・・なにを求めてるのだろう・・・・・・わたしは・・・・・・・
・・・・・目の前に・・誰かいる?・・・あなたは・・・・だれなの?
・・・・・でも・・・なんだか・・・今日は・・・・気持ち・・・・・いい・・・
でもこれは夢の中・・・・あの人に・・・・わたしの意志は伝わらない・・・・・
・・・・それでも・・・・夢でもいいから・・・・・私はまた・・・・この人に会いたい
そう・・・・願った
翔一視点
「ありがとうございました」
店員の挨拶を聞き流し俺は昨日の猫を探しに町の方にいってみる。
なぜだか俺はあの猫にお礼をしたくて猫缶を買いまた会いにいこうとしている。もちろん、あの猫からしたら俺のことなど覚えてないかもしれないし、会える保証もない。
それなのに、俺はあの猫にただひたすら会いたかった。
「でも俺も酔狂なやつだよなぁ。ちょっと遊んだだけの猫にわざわざ缶詰やろうとしてんだからなぁ。」
そんなことをつぶやきながら昨日の猫と会った場所までやってきた。
当然のことながら猫はいなかったがその辺りをぐるぐるまわりながらさがしていると
「おっ!いたいた」
なぜか嬉しくなりその猫のもとまで走ってしまう。猫の方も逃げずにこちらに寄ってくる。
「にゃ〜ん?」
「おう!元気にしてたか?」
猫の鳴き声に当然のように挨拶をする。なぜだかこの猫は俺の言葉を理解しているような気がするからだ。
缶詰を開けついでに買った紙皿の上に盛ってやる。黒猫はお腹が空いていたのかあっという間に平らげてしまった。
「にゃ〜ん」
「そうかそうか、うまかったか」
さっきから猫は同じ鳴き方しかしてないのに、俺はやはりこの猫が俺に向かって何かをいっているように聞こえる。さすがに勘違いだろうが、それでも俺はそう思いたかった。
「・・・これがファンタジーの世界なら、この猫が恩返しなんかで俺に金銀財宝をよこしてくれたりするんだろうがなぁ〜」
「・・・にゃ〜ん」
まぁ、さすがにそれはないだろうが・・・そもそもメシを食わしただけでこいつにとっては恩でもなんでもないだろうからなぁ
しかし、見れば見るほど綺麗な猫である。
つやのある毛並みに真紅の瞳、吸い込まれそうなほど色の濃い黒い色がなんともいえない気品をかもしだしている。
猫のことをあまり知らないが、この猫がほかの猫にくらべずっといい猫だというのがよくわかる。
「うちで飼いたいなぁ、でも俺の家はアパートでペット禁止だし、どこかの飼い猫かも知れないからなぁ。」
いつの間にか、俺はこの猫と一緒に暮らしたいと思ってしまってた。
でも、現状で野良と判断できない以上飼うことはできないでいた。
「ま、このあたりにいることがわかったし、またここにこればいいかな。」
「にゃ〜ん」
・・・・ほんとにこの猫は俺の言葉に反応してくるなぁ。よっぽど頭がいいんだろうなと思いながら手を振り別れを告げる。
黒猫視点
・・・・またこの夢・・・・今日はあの人にあえるかな・・・・
・・・・・なぜかあの人が頭から離れない・・・・・・
・・・・・・この気持ちは何なのだろう・・・・・・・
・・ただひたすら・・・あの人に会いたい・・・・・夢でもかまわない・・・・
「お!いたいた」
・・・・・!・・・・きた、あの人だ・・・・・今日はなにかを持ってきてる・・・・・
・・・・・・わざわざ・・・来てくれたの?・・・・・・・・
「おう!元気にしてたか?」
・・・・・・なんだろう・・・・いいにおい・・・・・夢なのに・・・・とても・・おいしい
わざわざわたしに・・・・・・こんなおいしいものを持ってきてくれたんだ・・・
「そうかそうか、うまかったか」
「・・・これがファンタジーの世界なら、この猫が恩返しなんかで俺に金銀財宝をよこしてくれたりするんだろうがなぁ〜」
・・・・・・・・この人はわたしになにかをいっているのだろう・・・・
・・・・・でも・・・・・わたしはこの人に伝えれないし、伝わらない・・・・・
・・・・・それでもいい・・・・・わたしはこの人と一緒にいたいと思う・・・・・・
それがたとえ無駄な事だとしても・・・・意味を成さない事だとしても
・・・・・・・・・・そうか・・・・・・わたしは・・・・・
かれのことが
・・・・・・・・・・・好きなんだ
翔一視点
今日も朝から家を出て例の猫のとこに向かっている。どうやら俺は猫が好きなようだ。昨日買った猫缶を持ちまたあの猫に会いにいこうと軽快に歩いてゆく。
(・・・そうだ、あの猫に名前が無いんだよなぁ・・・なんて呼ぼうか・・・)
あの猫の特徴といえばなんといってもあの漆黒の毛並みだろう。なんて名前がいいかぶつぶついいながら歩く
「クロはいくらなんでも安直過ぎるなぁ・・・・・黒太郎・・黒衛門・・黒乃助・・う〜む・・・・・っていうか俺あいつの性別しんねぇや」
今度は雌雄どちらでも通じる名前を考えながら歩く。途中周りから指を指されてたような気がするが、気にせず歩く。
「そうだな・・・・黒の外国読みでどうだろうか・・・携帯でいっちょ調べてみるか・・・・」
黒・ブラック・シュヴァルッ・ネグロ・プレタ・・・・・・なかなかいいのがないなぁ
「安直にタマとかでいいかな・・・・と、これ結構いいんじゃないか?」
目にとまったのはイタリア語のネロという文字、いいかどうかは知らないが俺の中ではこれがあいつにはぴったりなきがした。
「よし、今日からあいつはネロだ!決定!!」
名前を勝手に決め、さらに足取りを速めて進むと道路の先にネロがいた。
「おぉ!今日もちゃんと見つけれた。」
内心ちょっと安心した時、目の前のネロもこちらに気づいたのか道路に飛び出した。
―――その刹那
俺に悪寒が走る・・・・・・
世界が一気に音を消し
視界の端に何かが見えた
俺は考えるより先に
体が動いていた
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目の前が霞む・・・・・
何が起こったのか良くわからない
今がいつで・・・・・さっきの出来事から何秒たったのかもわからない
手も足も動かない、動かせない
声も出ない、息もできない
手足の先から熱が引く感じがする
・・・・・そうか・・・・・・これが
死・・・・・・・か
なにも感じない世界の中、俺はこれが死の感覚だと知った。
怖かった、叫びたかった、涙を流したかった・・・・・・・
でも、できない。
俺は、死んだんだ。
薄れゆく意識の中
俺は・・・・・・・ネロの鳴き声を聞いたきがした
ネロ視点
・・・なにがあったのか・・・・・わからなかった
いつものように・・・・・・会うだけだった・・・・・・・・
・・・・目の前に・・・・・あの人だった物がある・・・・・・・・
・・・・・今日も会いにきてくれて・・・・・・・・うれしくて
ただ・・・・・うれしくて・・・・・・・でも・・・・・かれはしんだ・・・・・・・
・・・・・・・・わたしのせいで、わたしを助けるために・・・・・・
・・・・・・夢の中のことなのに・・・・・・すごく悲しい・・・・・・
・・・・・・夢の中のことなのに・・・・・・すごく切ない・・・・・・
・・・ただ・・・わたしはこういった
・・・・・・ごめんなさい・・・・・・
―――――――――
もし俺が死んで もしこれが夢で
輪廻をする事があるのなら 現実の世界があるのなら
ただひとつ願う だたひとつ願う
ほんとにかなえてほしい事 ほんとにかなえてほしい事
ほかにはもう何もいらない ほかにはもう何もいらない
ただ、願う ただ、願う
ネロに 彼に
もう一度、会いたい
10/10/10 14:55更新 / 理科総合A(改訂版)
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