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まーた開いてー |
○種族:ワーウルフ
○特徴:2足歩行が可能な狼の亜人。 鋭い爪や毛皮など獣の特徴を色濃く残し、獰猛さは獣以上。 獣と違い単独での行動も多いが、獣と同様に群れ意識は強い。 「むーすーんーで、ひーらーいーて。」 「手ーをー打ーってー、むーすんでー。」 「まーたひらいてー、てーをーうーって。」 「そーのーてーをーうーえーにー。」 4者四様の歌声が響く。 彼女達は歌に合わせて手を掲げ、或いは下ろす。 儀式めいた仕草だが、牧歌的な音色は見る人の心を和ませる。 歌を歌っている彼女達が幼い子供ばかりだと知れば、なおのこと。 「ルーネ、だからー、そうじゃなくてー、手を上げるのー。」 間延びしている下っ足らずな声の主は茶色の探検者帽子を被っている少女。 ルーネと呼ばれた少女の手をとり、歌に合わせて動かしていく。 「んー。んー?」 よくわかっていないのか、彼女は首をかしげたまま自分の手を取っている少女にキスをする。 「んー、んむー!」 キスをされた少女は怒って離れようとするが、上手くいかなかった。 二人の手を結ぶように若緑のツルが絡み付いている。 ツルが絡み付いているのは手だけではない。二人の体全体を包むようにツルが絡まっている。 「んちゅ、ちゅ、ちゅる、ちゅ。」 「んー、んん、んちゅ、んふぅ、んっ。」 「ありゃー、二人とも何やってるんだよー。」 「ルーネったら、もう。」 「ねー、どうする、これ。」 唐突に始まった少女達の熱烈なキスに二人は顔を見合わせる。 片方は柔和な面立ちの女性。艶やかな髪と深い色合いの瞳。 普段はしっかり者で真面目な彼女だが、色事には弱く、キスをする二人を見て顔を真っ赤にしている。 熱くなった頬を冷ますように両手の平で挟む様は、年若い少女の様でもある。 もう一人の方はといえば、薄桃色の髪が特徴的なとてもちいさな少女。 木の実をあしらった髪留めを使って髪をツーテールに束ねている。 彼女はこういう事に慣れているようで、二人の甘い絡みも呆れて眺める余裕がある。 4者四様の少女達だが、彼女達は若い村娘のようで決定的に違う部分がある。 絡み合う少女の片方は頭部に小さな角を生やしている。 積極的に絡み付いている方の少女はといえば、体の色からして人間らしくない。 髪も体の色も若草色で、下半身は大きな花に埋まっている様に見える。 ツーテールの少女は背丈が2歳児ほどしかなく、背中には透明な虫の羽が生えている。 唯一人間らしい特徴を持っているのは、顔を赤らめながらも少女二人の様子を見守り続けている女性。 しかし彼女は魔法で一時的に姿を変えており、本来の姿は半人半魚である。 絡み合う二人は、ゴブリンとアルラウネの少女。 虫羽の少女はフェアリーで、半人半魚の彼女はマーメイド。 つまり、彼女達はみな人間ではない。 人々が恐れ、天敵としている存在。 魔物である。 「ぷはぁっ、こ、こらぁ、みてないで、早く何とかしてー!」 「ぷぅ、んー、もっとえっち、したい。」 4人の娘達が和気藹々と日常を楽しんでいる。 まるで分厚い窓越しの世界だ。 「あいつら、何やってるんだ。」 「楽しんでいるんだろうさ。ほら、手が止まっているぞ。」 「ち、鬱陶しいし暑苦しいぞ。」 手の力が抜けていく。無理やり歯を食い締めて力を込める。 だが、力尽きた。これ以上は手が動かない。 「まったく、非力すぎるぞ。」 「おっさんが体力無双過ぎるんだよ。」 手の力が抜けてべたんを地面に倒れこむ、というか寝そべる。 太陽熱で温まった草が体に絡み付いて気持ち悪いが、もうあんまり動きたくない。 全身から染み出る汗で、体中がべたついて仕方が無い。 洗濯がしやすいように今は薄着になっているが、それを差し引いても汗が鬱陶しい。 「普段からナイフなんて軽い物を扱っているからそうなる。俺を見てみろ?」 「馬鹿力なだけだろ。」 「力だけじゃあないぞ。なにせ、俺様はマリンさんを何度も、どわぁっ!?」 「色ボケするのは他所でやれっての。」 ガイツの方へ飛んで行ったナイフは、傍に置いていた木の板で防がれた。 最近、ガイツのナイフに対する対処が上手くなってきた。 「おい今の顔面に飛んできたぞ!」 「偶然だろ。俺は見てのとーりくたくたなんだ。手の力がねぇからすっぽ抜けただけだ。」 腕立て伏せ直後の腕は、心地悪い虚脱感で満たされている。 とてもじゃないがナイフを持って振り回すなんて出来るはずが無い。 「まったく、人のことを言えた義理か、このろりお、あぶねぇっ!!」 2本目も防がれた。残念だなぁ。 「やっぱり狙っているだろ!? 2本続けて同じ所に飛んできたぞ!」 「ぐうぜんだろ。」 「嘘つけ!」 ごろんと仰向けに寝転がる。 満点の青空、太陽の光が目にまぶしくて手をかざして影を作る。 遠く聞こえる鳥の声が、平和の象徴みたいに感じる。 「何時見ても飽きないねぇ、あんたたちは。」 聞こえる声は野太いおっさんの声じゃない。 若い娘の声だ。いや、低めの少女の声か。 声の主が誰かは良く知っている。 ここ数日、フェアリーと一緒に遊びに来ているワーウルフだ。 紺色の髪と瞳、毛皮を持つ少女。 名前は確か、何て言ったかな。 「おめぇさんもまぁ、よく飽きもせずこんなのを眺めているもんだよな。」 「魔物って言うのも暇な生き物でね。寝て起きて狩りをして。それ以外はする事が無いんだよ。」 「食事はどうした、狼娘。」 「やれやれ、少しはルーネぐらいの頻度で良いから名前で呼んで欲しいものだよ。」 名前を覚えていない事に気を悪くした風も無く、彼女は続ける。 「あたしはバゥルってんだよ。たまにゃ、アンタの恋人のゴブリンとまではいかなくても、少しくらい愛想よくしてくれてもいいだろう?」 「恋人が居るってのがわかるんなら、あんなことするなよな。」 「何を言っているんだい。キスくらいどうってこともないだろう?」 視界の端でふさふさの尻尾が揺れている。 いつも通り、何をするでも無く変に楽しそうに揺れている。 「その、キスっていうのは、夜中に全裸で行うのも、どうってことはないってのか?」 「いやー、元が獣だから、つい服を脱いじゃうんだよ。」 全く悪びれず、むしろ朗らかに笑っている。 お陰で俺がどんな目にあったと思っているんだ。 あんな目にあったなら俺だって警戒ぐらいするって。 「さぁ、休憩は終了だ。とっとと次に取り掛かれ、このモテ男。」 「うっせーぞおっさん。」 ちなみに先ほどから暑苦しいおっさんは、ガイツ。 木よりも熊を数多く切ってきたという樵。 いっそこのおっさんが熊なんじゃないかというほどでかくて馬鹿力。 ここ最近の俺の日課は、筋力トレーニングだ。 薬草取りとかや罠作りもしているけど、メインは肉体作り。 俺が非力なのかといえば、正直な話非力だ。 足腰の強さには自信があるものの、戦闘の際には腕の筋力も要るわけで。 これがからっきしな俺は、取っ組み合いになったらまず間違いなく負けてしまう。 そもそも扱う武器がナイフだけというのも心許無いらしい。 「いいか、小僧。ガキのケンカじゃねぇんだ。どんな状況でも勝てるようにしなきゃなんねぇ。その為にはナイフが無くなったときの事も考える。」 ってことでまずは基礎能力を底上げしようって事だとか。 「お前さんは確かに不意打ちとかは一流だが、それ以外は二流三流。それじゃあいけねぇな。」 「だからって、一日二日でどう変わるってんだ。」 「すぐ変わらないが、今始めなきゃ何時まで経ってもかわらねぇぞ。」 正論で返されてはグウの音も出ない。 今は火照った体を冷ます意味も含めて、川の流れに逆らいながら上流、一定距離を進んだら今度は逆に下流へと歩く、というのを繰り返している。 流れに逆らって歩くには力が要るし、逆に流れに乗って歩こうとすると足元をすくわれる。 水中と言うのはタダでさえ歩きにくいのに、緩やかと言っても腰まで浸かった状態で歩くのはかなり堪える。 「いよぉっし。じゃあ後30往復だ。」 「増えたな、増やしたな、このエロボケおっさんが。」 「じゃあ40往復だ。」 「……それ以上は歩かんぞ。」 反論する気力も尽きた。 こと運動関係に関しては、ガイツは容赦ない。 やってられるかと放り投げたい所だけど、困った事に筋力不足は俺も気にしていたのだ。 真正面から戦った時、俺はとても弱い。 俺が全力で打ち据えても相手には牽制程度、では勝負にならない。 一撃弾かれてよろめいた所へトドメの一撃。 容易に想像できる末路を指摘され、苦々しくもその事を認めた。 「ぜー、ぜー、ぜー。」 「なかなか頑張ったじゃないか。ホラ、水、」 「お疲れサマー、はい、お水だよー!」 岸に上がった俺を迎えたのはバゥル、と彼女を押しのけるように現れたコリンだった。 先日の「どきっ、全裸の狼娘事件」以来、コリンの積極性が増した。 というかあからさまにバゥルをライバル視している様で、この二人は競うように俺に構ってくる。 「いやー、明らかにコレは競い合いー。血で血を洗う、女同士の戦いー。」 どこから現れたか、というより何時から見ていたのか。 小屋の外壁に「水平に寝そべっている」女性が、俺の脳裏を覗いていたかのようなタイミングで二人に対するコメントを口にする。 おおなめくじのネイルだ。 最近は屋根の上で過ごす事が多かったけど、そろそろ小屋の中にでも入るのかな。 「なんだい、ゴブリン娘。あたしの方が先に水を出していただろう?」 「やだ。レックスに水あげるのは、あたしだよー。」 「こんなのは誰があげたって良いだろう。だったらさ、冷たい汲み立ての水を飲ませる方がいいに決まってるじゃないか。」 「うぅー、でも、やだー!」 「ダダ捏ねるんじゃないよ。ほら、レックスだって困ってるだろう。」 「うぅー!」 「『困っているのは確かだけど、この状況をどうしたら良いかで困っているんだ、まいはにー』って所かなー。」 「後半の一部を除いて大体合ってるが、そこまでわかるんなら何とかしてくれ。」 「えー。」 こういう時のネイルは本当に何もしない。 待っていても茶化すか、何もしないか。 どちらにせよコリンに分が悪い以前にこの毎度おなじみのケンカをやめさせないといけない。 大きく息を吸う。呼吸も整ってきた。 「みず貰うぞ。」 そう言ってコリンから水を受け取る。 途端にコリンは表情を明るくして抱きついてくる。 「レックスー。」 「こら、暑いだろうが。」 「やれやれ。あたしの方が先だったというのに。切ないねぇ。」 「ケンカするくらいなら、おっさんにでも水を持ってったらどうだ。」 「彼はあたしの好みじゃないし、何よりマーメイドの目が怖い。」 ちょうどおっさんに水を上げていたマリンの肩がびくりと揺れる。 「うぉわっ、つめてぇ。」 「あ、ごめんなさい、ガイツ。」 「あーゆーことだよ。」 「わかりやすい。」 「じゃあ、はい。つめたーい水だよ。」 「ん、おう。」 「あ〜〜〜!」 「ちょ、コリン、みず、冷たいって、みず!」 狼娘の水を飲もうとすると、コリンが暴れだした。 冷えた川の水が顔やらにかかって冷たい。 「なにやってんだ、コリン。」 「う〜〜。」 「水なら幾らでも汲んでくるよ、ちょっと待ってな。」 「ん? おう。」 「う〜〜〜!」 「何なんだ一体。」 俺は水を飲んじゃいけないのか。 よくわからないので怒るコリンを宥めるように頭を撫でる。 「修羅場って言うにはちょっと微笑ましいねー。」 「子供のー、ケンカー。」 「相手がゴブリンじゃさすがにねぇー。」 「それよりー。今日のーお客さんはー?」 「もうすぐ来るってさ。」 小屋で眺めているネイルとフェアリーは完全に保護者の眼差しで川の光景を眺めると、客を迎える準備を始めた。 魔物の住処に客が来るとなれば、魔物か人間の商人くらいだ。 普段は魔物の集落や巣にやって来て、ハニービーからは蜜を、ゴブリンからは鉱石や工芸品。 オーク達が盗んだ品物を買い取る、なんて商人まで居る。 基本的に魔物は嘘をつかず、商人同士でやるようなあざとい真似もしない。 ゴブリンやオークのする悪戯も歴戦の商人からすれば余暇の戯れみたいなもんだ。 人魚の血を探して回るのが得なら、採算が合う限り海の底へでも追い掛け回す。 人魚相手に商売するのが得なら、魔物の巣にだって足を運ぶ。 それが商人だ。 魔物相手は楽勝だから商人相手より気楽に商売できる。 ……ほんの1時間前まではそう思っていたんだけどなぁ。 「服、いいのある?」 「ああ。こいつなんてどうだ?」 「私のサイズには合わないかなー。」 「だったら採寸させてくれるんならサイズぴったりの服を持ってくるぞ。」 「でも葉っぱの服とかの方がいいしねー。」 「葉っぱか。葉っぱを材料に使う服飾店もどこかに居ると思うし、それに服の材質ってのは本をただせば葉っぱの繊維だ。広い意味なら、こういう服も葉っぱの服じゃないか?」 「んー?」 まさかフェアリー相手に「商売」するなんて思いもよらなかった。 フェアリー相手に「売る」んじゃない。「商売」だ。 この森に住んでいるほかの魔物の服はどうなんだと聞いたが、大抵は服を着ていないか興味が無い。 おまけに商売ごとは面倒だとか、下手に人間に会ったら襲ってしまうとか(そんなに危なくないよとか聞いたが、行方不明者は続出している)、人間相手のほうが気楽なんじゃないかってぐらい神経を使う。 服に興味があるのは妖精であるこのフェアリーくらいなもんらしいが、金銭感覚が無いというより会話を楽しんでいるだけのようにも見える。 だが妖精の国の工芸品はかなり貴重な代物だ。白髪の商人や貴族ご用達の商人でさえ見たことが無いらしい。 せっかく妖精と出会える数少ない機会なんだ。これを逃せば伝説の「妖精品」は手に入らない。 「だから、葉っぱがいいんだよ。ほら、試しに着てみたらわかるんじゃない?」 「また今度、家に帰ってから試すとする。」 ……会話が成立していないんじゃないかと思うが、へこたれちゃあ駄目だ。 かといって例の「人魚ご一行」用の服はどうかと思ったが、こちらはもう一回り厄介だ。 一行の中には人間も混じっているので上手くやれるかと思ったが、交渉役が粘着質だった。 いや、会話とか性格がどうこうというより、見た目が。 おおなめくじという魔物は初めて見たが、行動全てがスローペースでやり辛い。 一行の情報を売ればそれだけで金になるので色々と聞き出そうとしたが、上手くいかない。 ある時なんて逆に自分の情報を引き出されてしまう、なんてこともあった。 他の商人達も似たり寄ったりのようで、今では「あのおおなめくじは一体何者なんだ」という事の方が重要になりつつある程だ。 バルトワン領内の商業はさほど盛んでも無く腕利きは少ないが、それを差し引いても商人たちを手玉に取るあの魔物は一体どういう経緯であの手管を学んだのだろう。 その疑問が頭の片隅にへばりついて、ついついまたここに足を運んできてしまう。 ジャイアントアントは体から発するフェロモンの効果で、外に出て(働いて)帰るだけで男を手に入れることが出来るのだとか。 知らずの内に吸い込んだ甘いフェロモンは麻薬の様に脳を犯し、火に寄る羽虫の様に彼女達について行ってしまうのだとか。 これは彼女達と取引をしようとして行方不明になる事件が多発した為、商人仲間では周知の事実である。 あのおおなめくじも似たような事をしているのだろうか。 「おやー。また変な悩み事してるー。」 「な、い、いや、べつに悩み事は無いんだが。」 「魔物とのー、会話はー、たいくつー?」 「そうでもない。いや、粘液は勘弁して欲しい。」 どろりと彼女の手から垂れる透明な液体。 下半身がなめくじになっているため、会話のために彼女はテーブル上に乗って話をしている(私は普通に椅子に腰掛けている)。 そのテーブルの上へと、粘度の高い滴が糸を引いて落ちていく。 自然と、その様を目で追ってしまう。 常にしっとりと濡れているのはおおなめくじの特徴だが、襲われる心配が無いからとじっくり眺めている内に、妙な色気の漂う姿だと気づいてしまった。 もしかすると、人間の女性にはあり得ない「常に濡れた姿」に誘惑されているとでも言うのか。 あるいはあのどろりとした粘液で扱いて欲しいとでも。 「んん〜?」 「っ、な、なんだ?」 こちらの内心を読んだ様に、おおなめくじがにたりと笑う。 魔物は人間の男に襲いかかり子を成そうとする。 彼女達に理性はあっても人間が持つ道徳心は無い。 ゆえに性欲を堪える事は無く、人目憚らず「行為」をするのだ。 巣につれて帰るのは単に安全で落ち着くからというだけで、見られて恥ずかしいからと言うのではない。 うわさではそういう魔物も居るらしいが、実際に見たことが無い。 「ふふー。お得意様だからー、ちょっとだけー、さーびすしようかー?」 「い、いや、えんりょする!」 くちゅくちゅと手を動かすたびに響く湿った音に、危うく反応してしまうところだった。 声が上ずってしまうのは、それだけ彼女が娼婦顔負けの妖しい笑みを浮かべているからだ。 「おおなめくじはー、ふつうにおいかけてもー、かんたんにー、にげられるー。」 「そ、それは俺も知っている。それがどうしたんだ。」 当然の疑問だが、口に出してすぐにそれが失敗だと気づいた。 訊ねれば応えるのは普通だ。だが、何を返答されるのだろう。 胸の内に抱いた戦慄に気づいてか、おおなめくじは笑みを一層深いものに変えていく。 「だからー、逃げられないようにーするー。たとえばー、粘液を飛ばして歩けないようにしたリー、それからー。」 「そ……それから?」 もはや失言と気づいていながらも、問う言葉を抑えきれない。 飲まれている。そう感じた。 「ふふー。」 のろりのろりと、テーブルの木目に粘液の後をつけながらおおなめくじが近付いてくる。 逃げろ、逃げないといけない。そう心の中で叫び続けながら、心の片隅では商人としての意地が逃げる事を許さない。 取引相手から逃げるのは、危険を感じた時だ。 だが単に「犯される」だけなのに危険と感じてしまうのはおかしい。 じりじりと焦げるような葛藤さえも愉しむかのように、おおなめくじはゆっくりと近付いてくる。 粘液の垂れる手が、近付いてくる。 とろりと垂れる粘液が糸を引いてゆっくりと滴を落としていく。 アラクネの糸に絡まれているわけでも無く、ラミアに巻きつかれているわけでも無いのに、体が全く動かない。 近付いてくる手からは湧き水のような量の粘液が溢れていく。 ふと、ある事に気づいた。 彼女の分泌する粘液は、まるでローションのようだと。 「うわぁああっ!?」 にゅるりとした感触に思わず声を上げてしまう。 手が頬に触れただけなのだが、生暖かい粘液がべったりと頬についている。 「ふふー。毒はー、ないよー。」 「い、いや、ここはひとつ落ち着いてくれ。商談を、」 「おんなにー、恥かかせるのー?」 魔物なのになんで、とは思わなかった。 そんな冷静な判断が出来るほど落ち着いていなかった。 掌全体で粘液が頬に塗りこまれる。 気持ち悪い、と思ったのはほんの一瞬だけ。 まるで液体に溶けていくのかと思うほど気持ちのいいマッサージ。 強くなく、長旅を労わる様な優しい動き。 気づけばおおなめくじの表情は穏やかなものへと変わっている。 「どうー、きもちいー?」 「あ、ああ。はじめてだ、こんなのは。」 「ふふー。」 感想がお気に召したのか、嬉しそうに目を細めてもう片方の手を伸ばしてくる。 「じゃあー、もっとー、がんばろー。」 ねちょりと粘液まみれの手で挟まれる。 「あ、あぁ、ぁぁ。」 手で顔を挟んでもみくちゃにしているだけ。 本当にそれだけなのだが、あまりの心地よさにすっかり体の力は抜けていく。 にちょにちょとした音も淫猥と言うより、泥遊びをしていた頃を思い出すようで、妙な安堵感に浸る。 「はい、しゅうりょうー。」 「……、……え?」 唐突な終了を告げられて、はっと意識を取り戻す。 あまりの心地よさにうたた寝をしていたのか。 いつの間にか、室内のベッドに寝かされていた。 「商売はいいけどー、たまにはー、ゆっくりとしとくよーにー。」 ぺちぺちと額を叩かれる。 まるで子供に戻ったような気分だ。 しかも魔物相手にだ。 だが、悪い気分じゃない。 「ああそうだな。肝に銘じておく。」 「それじゃーだめー。のんびりーゆったりー。」 マイペースでスローペースな日々。 そんな生き方もたまには良いかもしれない、そう思わされるのんびりとした表情だ。 1秒でも早く利益を得るために駆け回る商人には有るまじき考えだな。 「わかった。だが俺も商人だ。のんびりだけでは、生きていけない。」 「それもまたー、ひとつの生き方ー。」 「そうだな。」 心なしか肩の荷が下りたような気がする。 明日もまた忙しい日々が続くだろうが、今までとは何か違った気持ちで商売の望めそうだ。 「またくる。次は食べ物でも持って来ようか。」 「んー、またー。」 荷物を手に取り外へ出ようとして、扉の前に少年が立っていることに気づいた。 いつから居たのだろうと疑問を抱いていると、彼から話しかけられる。 「帰るのは明日にしとけ。」 「え、いや、しかし。」 こちらの言葉を制するように、彼は窓を指差す。 「ん、……げ。」 「さすがにこの時間帯じゃあ、俺らも保障は出来ないぞ。外まで連れて行く気もしないし。」 外は既に真っ暗闇だった。 「どれくらい寝ていたんだ。」 「あれー、帰らないのー?」 「いやだからさ、もう夜だぞ。」 「あれー、もうー、よるー?」 「すまない。こんなに長居する事になるとは思わなかった。」 「ネイルのペースに乗せられたら、すぐまた朝になるって。」 聞きなれない単語を耳にし、すぐさまそれがおおなめくじの名前だと気づく。 「今日は俺ら、狼娘んとこに泊まるから、ゆっくりしとけって。」 「いや、しかし、」 「ちなみにあんたが寝てたのは俺のベッドだ。」 「でもー、このいえはー、私のものー。」 「そりゃ知ってるっての。」 少年は会話はもうコレで終了だとばかりにドアを開ける。 夜独特の冷えた空気が入り込む。 「えっと、君。ずっとそこにいたのか?」 「いや。夜の見回りをしてついでにネイルの様子見に来ただけだ。」 彼は不機嫌そうだ。理由を尋ねる前に、予想を立ててみる。 見回り、と言う事は彼は森の防衛役と言う事か。 室内からは月の位置がわからないが、恐らく夜も遅いのだろう。 彼は何度かゴブリンの少女やワーウルフの少女と共に行動している。 恐らくは今すぐにでも彼女達の元へ戻りたいのだろう。 考えをまとめ終わってから、彼の表情を伺おうとして、既に彼がいないことに気づく。 いや、彼が何時居なくなったのかがわからなかった。 「え、あれ、彼はどこへ。」 「よそんちー。」 少女達の所へ向かったと言うのか。 予想通りとはいえ、一つ腑に落ちないというか、しっくり来ない所がある。 行商人は基本的に危険に対して敏感である。 野宿をすることもあるため、盗賊や魔物に出くわさないようにひっそり隠れて周囲を警戒する癖がついている。 幾ら考え事をしていたからといって、あの程度の軽い思索で歩き去る気配に気づかないなんてのはおかしい。 「ねぼすけはー、ねてなさいー。」 「え、あ、ああ。」 寝起きでぼんやりとしていたから気づかなかったのか。 新たな疑問が沸いたが、おおなめくじ……ネイルに誘われるままに、ベッドへ横たわった。 「って、え、な!?」 その上に、ネイルが乗ってきた。 髪から、顎から、粘液が垂れて薄い外の明かりを反射させる。 不味い、ヤバイ。 頭の中でやかましいくらいに警鐘が鳴り響く。 「やどだいはー、はらってもらうよー。」 「か、かねなら、はらうから。」 「きゃっかー。」 嬉しそうに笑って顔を近づけてくるネイル。 「ま、まて、その、」 「んー、わたしとするのはー、いやー?」 僅かだけ顔を引くネイル。 その不安そうな顔を見て、自分の敗北を悟った。 やはり彼女には、勝てそうに無いな。 「人魚の血」騒動はバルトワン領内の商人じゃ知らない者はいないほど知れ渡っている。 領内西側にある森の奥に人魚が居ると、噂が広まった。 一説によれば噂を流したのはセンハイム公直属の兵士であり、彼らで太刀打ちできないから傭兵達に採って来させようとしているんじゃないかとの事。 ことの真相はさて置き。噂が流れてからすぐにあちこちから傭兵が、冒険者が集まって森へと突撃して行った。 だが半数、下手すれば全員帰ってこないことさえあった。 森には大抵魔物が住み着き、特にこの「西の森」は近くの山を飲み込むほど広大で、密度の濃い森は昼でさえ視界に困るほどの影を地面に落としている。 ドリアードやマンドラゴラ、アルラウネといった植物系の魔物の他に、ワーウルフやジャイアントアントにハニービーなどの魔物の群れが跋扈している。 おまけに昼にはハーピーが、夜にはワーバットやオークが山からやってくる。 さらに生還者の話では森には罠までもが仕掛けられているという。 これだけの悪条件が揃っていれば誰も行かないだろうが、ここにもう一つ困った話が出てくる。 それは「通行路」だ。 森の中に木々もまばらで草も刈り取られている「道」があるのだ。 ここを通るなら魔物は襲ってこないし、罠も無い。 ただし、「通行路」の入り口にある看板の条件を満たす場合に限る。 ---------------------------------------------------------------------- 1.この道を通っていいのは「商人」だけ 2.護衛役を連れてきても良いけど、合計人数は「8人以下」 3.「人魚ご一行」「西の森の住民」には一切の危害を加えない事 (本人達が嫌だと思ったら、それが「危害」) 4.上記に反した場合、袋叩きにしてお持ち帰りします 西の森代表 フィン ---------------------------------------------------------------------- この看板の指示に従った者達は全員無事生還して来ている。 逆に彼女達を出し抜いて「人魚の血」を手に入れようとした商人は、帰ってこなかった。 何時しか西の森と最寄の街とは互いに交易をする奇妙な関係へと変化していった。 「マリン、なにやってるんだ。」 夜の川でする事なんて決まっているんだろう、と言いたいが生憎いまはマリン一人だけだ。 人の姿に化けていなく、マーメイド本来の姿で川岸に座っている。 「あら、レックス? どうかしたの。」 「いやまーそりゃこっちの科白だ。俺はいつものよーに見回りして、ついでにネイルの様子見に来ただけだ。」 「いえ、私はその、少し涼んでいただけよ。」 「おっさんはどうしたんだ。いつでもマリンにべったりだっただろ。」 「ガイツはもうすっかり寝てしまっているわ。あの子、一度寝たらぜんぜん起きないんだから。」 くすりと笑う声が聞こえる。 俺からすれば可愛げも何もありゃしないおっさんだが、マリンからすればまだまだ甘えん坊の男の子なのかもしれない。 時々思うんだけど、魔物って見た目以上にすっごい年上なのか? 色々と考え事してふと気づいた。 「今日のマリンは口数が少ないな。なんかあったのか。」 「何も無いわよ。あるといえば、そうね。少しだけ海が恋しいかしら。」 「ネイルが言うには、ここに居る限りは安全だってことだけど。」 「それは間違いないわね。ネイルからその理由を聞いたけど、私も彼女の意見に同意よ。」 「でも、何で森は安全なんだ。」 「森に逃げ込んだ獣を追い払うのに、最終手段として森を焼き払うという手があるのよ。でも、彼らはソレを使えない。」 「は? 何でだ。」 森を焼かれたら不味いと常々思っていたが、それがあり得ないと言われて首を傾げる。 「バルトワン領内の端には幾つもの森があるのよ。領主は代々、その森を隣国との境に利用しているの。」 「なんで森なんていう曖昧なもんを領域線代わりに使っているんだ。後々問題が出るだろう。」 「この辺りは元は一つの大きな領地だったの。けれど家督騒動で領地は分かたれ、今のようになっている。そして周囲の領主はみな、領地を一つにすることを目指しているのよ。」 「うわー、馬鹿みたいな話だな。魔物がどうとか言いながら、昔の血縁との争いにも気を配ってんのか。」 「私たちはそのお陰で生きているようなものよ。」 「人間の馬鹿さ加減で追われて、人間の馬鹿さ加減に助けられるってのか。」 自分で言ってて頭が痛くなってきた。 魔物と共に過ごすようになって以来どんどんと、人間に対しての嫌悪感が増していく気がする。 「……レックス。」 「ん、なんだ。」 「少し、いいかしら。」 マリンが自分の隣に座るよう、手で呼んでいる。 呼ばれるままにマリンの隣に座る。 「ん、なんだ。」 実はマリンと二人きりになるのは初めてだ。 マリンはずっとガイツの傍だったし、俺はずっとコリンの傍だった。 この距離になるのは今までなかった。 隣を見れば、月明かりに照らされるマリンの顔が見える。 何かに悩んでいる、沈んだ顔だ。 「私は、どうしたらいいの。」 「唐突になんだよ。」 「私がいるから、レックスは言いたくも無い名前を口にして、コリンは貴方とずっと二人きりでいたいのにそれができない状態になっていて、ネイルも自分だけが住んでいた小屋に私たちが入り込んできたからきっと困っているのでしょうね。それにガイツだって口には出さないけど、あの子は嘘が苦手だから。今、あの子は私のことでとても困っている。」 愚痴か。いきなり愚痴なのか。 同情するとか意外だとか思うより先に、げんなりとしてしまう。 「あのさ。迷惑半分嬉しい半分ってのはあると思うぞ。第一、あのおっさんがマリンと離れ離れになるなんてもう無理だろ。」 「ええ。でも私はガイツが寄せてくれる好意に甘えているだけで、何もしてあげられていない。」 そんなに気を遣うものなのかな。 何か鬱になる事でもあったか。 「考えすぎだろ。考えても仕方ないことはよくあるこった。」 「でも、私は、迷惑をかけてばかりで、本当にどうしようもなくて。」 「ったく。ネイルにまかせりゃ何とかなりそうなのに。こりゃほんとどうしようか。」 ネイルに任せようかと本気で考えたが、それはさすがに失礼なのでやめておく。 ちなみに同刻のネイルは、お楽しみの真っ最中だった。 「私が「人魚の血」を与えれば、もしかすると引いてくれるのかもしれない。」 「それはやめとけってネイルが言ってたんだろ。図に乗らせたら幾らでも付け上がるって。」 「でもこのまま放置していれば、いずれ強攻策に出てくるかもしれないでしょ。」 「そんときゃそんときだ。」 「森の皆が、どんな目に合うかもわからないのよ!」 徐々にヒートアップしていくマリン。 相当、色々な鬱憤が溜まっていたんだな。 どうすりゃいいかな。どうするかな。 「じゃあさ。マリンはどうしたんだ。」 「……。」 黙り込む。煮立ったお湯がいきなり水になったような印象だ。 「答えなんてすぐで無いんだ。もう少し様子見てていいだろ。」 「私が、出て行けば解決するのよ。」 「出て行くって、捕まったら二度と帰って来れないぞ。」 「それでも。他の皆が助かるなら、それでいい。」 どうするかな。どうしようかな。 延々と、自分が悪い、自分のせいだと。 自分を追い込むマリンの姿から目を逸らす。 似て非なるものだとはわかっているけど。 自分の過去っていう負い目を感じている俺自身の事を思い出した。 暴れて悪戯するコリンと自分は、本当に一緒にいて良いのか。 悩んで悩んで、でも一緒に居るのが居心地良くて、ずるずると旅を続けてきた。 「一緒にいればいるほど別れ辛くて、でも一緒にいればいるほど申し訳なくて。」 やがて申し訳なさが一緒にいたい気持ちを上回ったら、自分から離れていくんだろうな。 「どうするかな、ほんと。」 コリンは俺とは違う。 誰かを殺すなんてとてもじゃないけど出来ない。 あの襲撃の夜もそうだった。 本当はあの夜、襲撃者は全滅させるつもりだった。 全員、二度と襲撃できないようにするつもりだった。 俺が得意な方法で、確実な方法。 じいさんから教わった暗い夜の技でサクサクと終わらせるつもりだった。 俺の特技は、暗殺。 夜の森にのこのこ兵士がやってくるなら、俺は全員を暗殺できる。 ガイツとネイルの2人だけに打ち明けて、それから森で敵を待とうとして。 コリンに止められた。 大粒の涙を流して必死になって抱きついて、そんなことして欲しくないと泣いて止められた。 何時から話を聴いていたのかわからない。 コリンは力の加減を忘れたみたいに、必死に抱きしめてきた。 俺はあいつの泣き顔なんて見たくない。 だから誰も殺さない方法を選んだ。 でも今度は俺が死ぬんじゃないかと心配して、必死で止めようとしてきた。 行くなら自分も一緒に行く。そう言って聞かなかった。 西の森の住民に手伝ってもらう、という事にしなければ縄で縛り付けてもついてこようとしたんじゃない勝手ぐらいの剣幕だった。 誰にも死んで欲しくないと心の底から願う姿を見て、やっぱりなと思ってしまった。 魔物は天敵だとか危険だとか色々と聞いてきたけど、コリンは悪戯好きで優しい女の子でしかなくて。 人間の方がよほど危険な存在なんだと気づかされた。 泣きたくなるくらい切実な現実だった。 「レックス?」 「ん、ああ、どうしたんだ。」 もの思いに耽っている最中に声が聞こえて、そういえばマリンと話をしている途中だったと思い出す。 「あの。ええと、あの、その。」 「何なんだよ。ねむいから長くなるんなら明日にしてくれるか。」 言ってから眠気に誘われて欠伸を漏らす。 目を開けるのも億劫なだるい睡魔。 もうこのまま寝てしまおうかと思うくらい体が重い。 「あ、ええと。ごめんなさい。レックスも大変なのに愚痴を零してしまって。」 「んー、ありゃ愚痴だったのか。」 どっちでもいいけど。眠気を思い出したら急にベッドが恋しくなってきた。 「悩んだらおっさんに全部打ち明けたらどうだ。」 話している間に寝てしまいそうだ。 目を擦りながら、首を横に振るマリンを眺める。 「ガイツは優しいから。きっと何を言っても、最後には『自分が何とかする』って。私の重みも全部背負ってしまう。」 「我が侭な悩みだよなー。」 「うん。そうね。」 少しだけ重荷を下ろしたように笑って、マリンが立ち上がる。 既にマリンは人化けを済ませていて、魚身は足首まで隠れるようなロングスカートに変わっていた。 「ありがとう。話を聴いてもらってすっきりした。」 「どーも。おっさんに恨まれない程度なら愚痴も付き合うぞ。」 ああそういえば、と付け足しながら大きく伸びをして、森に背を向けたまま当てずっぽうに声をかける。 「以上だ。マリンの悩みは少しはわかったか。だったらとっととマリン連れて2人で色々と話せよ、おっさん。」 マリンの驚く声が聞こえる。 おっさんの気配を感じ取った、わけじゃない。 いなかったらいなかったで別にいいや。 なんとなくおっさんが居るような気がしたから声をかけてみた。 答えは意外と早く出た。 がさりと森の方から草を掻き分ける音が聞こえた。 「ガイツ。その、私は。」 「いやー参った参った。起きたらマリンさんがいなくって慌ててきた所だ。まさか小僧と逢引だなんて、いやーあっはっは。小僧、明日は覚えてろよ?」 「寝て起きたら忘れてるさ。」 「え、あ、え?」 今のやり取りの意味が判らないのか、マリンはただただ困惑している。 ガイツが歩み寄ってくる音を聞きながら立ち上がり、視線を合わせることなくすれ違う。 「恩に着る。」 「この馬鹿。」 小声のやり取り。 この後マリンとおっさんが何をするのか興味も無いけど、早い所帰らないとコリンが泣きかねない。 いやまぁ困ったもんだな。 「勢い余って領主ン所に殴りこみってのは、分が悪いよなぁ。」 自分がマリンと似たような事を考えていたのだと改めて思い知らされた。 やっぱりネイルに相談するとかそーゆーのはさて置いて、もう少し他の方法を考えよう。 コリンを泣かせたくないから。 |
「レックスー、おそいー。」
「なんだ、おきてたのか。」 「ぎゅー。」 「寝ててくれてもよかったのに。眠かったろ。」 「んー。」 「まったく。困った相棒だよな。……もう寝てるし。」 「すー、すー。」 「俺も眠いしとっととねるか。」 「ん、むにゃ、れっくすー。」 「はー、やれやれ。正統派の剣術も、やっぱりできるようにならないといけないなー。コリンのためにも。」 ----作者コメント 着々とロリ王の階段を昇っていく主人公。 このままフェアリーも入れば、もはや言い逃れも出来ない。 どうする主人公、どうなる主人公!(’’ それはさておいて。 ハッピーエンドがすきなのに、どうしてだろうかな。 鬱展開がそこかしこに出てきて、あぅ〜な状況に(。。; 打開策はやっぱり……えろ?(’’ えろをもっと前面に出した方がいいのかなぁ(。。 ……えろ、上手くないけど(・・ 10/04/06 00:51 るーじ |