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リザードマンと少年 |
少年が川遊びをしている。
石を投げたり、枝で刺したりとよくわからない。 試しに岩を投げると、川の水が雨みたいに降ってきた。 私も少年もびしょぬれ。 「うわぁ。これじゃ、釣りどころじゃないよぉ」 少年がへたり込んだ。 私は昼ごはんに良さそうな魚を拾うことにした。 「あれ、魚がいっぱい落ちてる!」 ところで。 釣りって何? 「あはは。君ってすごいけど、時々びっくりするほど何にも知らないんだね」 首をかしげる。 「釣りっていうのはね。銛で突いたり釣り針で魚をひっかけたりして魚を捕まえる事なんだよ」 焼いた魚にかぶりつく。 そして釣りを想像する。 モリで突く。 想像しようと思って、周囲を見回す。 改めて想像しようとして、失敗する。 あんなにたくさんの木をどう使ったら魚を突けるのだろう。 試しに木を一本引き抜いて川に突き刺す。 水飛沫が上がるけど気にしない。 「う、うわ! どうしたの!?」 魚が刺さっているか確認。 刺さっていない。 「いや、モリで突き刺すもんだよ。そんなワイルドな漁は、普通しないよ」 首をかしげる。 次はツリバリ。 辺りを見回す。 良さそうなツリバリがない。 山の方に行けばあると思う。 飛んでいけば直ぐに見つかる。 でも飛んでいくわけには行かない。 私は今、人の振りをしている。 「何を探しているの?」 ツリバリ。 山に良く見かけるもの。 谷を跨って伸びるツリバリ。 「それって、吊り橋?」 首をかしげる。 何度か森で寝たその翌朝、村に着いた。 村の前には、リザードマンがいた。 「あの人、変な鎧を着てるねー」 少年はリザードマンを知らないみたい。 ツリバリを知っているのにリザードマンを知らない。 不思議。 「おい貴様! ……何だ、子供か」 「あの。どうかしたんですか?」 「いや、子供には関係ない。お前は弱そうだし」 「う。ぼ、僕だって、やるときはやるんだよっ」 少年とリザードマンの背丈は違う。 少年は見上げ、リザードマンは見下ろす。 私とリザードマンの背丈も違う。 私は見上げ、リザードマンは見下ろす。 「む。そちらの娘は腕が立ちそうだな。これで男なら、手合わせ願うのだが」 「そうなんですか。それじゃ、よくわからないけど頑張ってください」 少年と私は村に入る。 「待て! やっぱり手合わせ願うぞ!」 「うわっ!」 後ろで声が聞こえた。 振り向くと、少年がリザードマンに捕まっていた。 「最近は私の姿を見るだけで逃げ出す輩までいるのだ。実戦に飢えているのだ! よって、勝負!」 「うぇえ〜!? そんな、無茶苦茶だ〜!」 リザードマンが剣を抜く。 少年も慌てて剣を抜く。 「てい、やぁっ」 少年が振る剣は遅い。 リザードマンは余裕で剣を受ける。 「ふんっ」 「うわっ」 そして少年は弾き飛ばされた。 「口ほどにもない。腕を上げてくるんだな」 「く。もう一度!」 「その意気だけは認めよう。さぁ、来い!」 少年が走る。 滑る。 見事に転んだ。 少年は土汚れでぼろぼろ。 息も切れ切れで、倒れこんでいる。 私は少年を掴んで肩に乗せると村に入る。 「待て。お前も見ているだけというのはつまらんだろう?」 腕を掴まれた。 振り向いた先にリザードマンがいる。 「勇者の素質でもあるのか。自分と同じ体格の脱力した人間を軽々と肩に担ぐとは」 首をかしげる。 このリザードマンは不思議な事を言っている。 今の私は尻尾も翼もない。 鱗も鉤爪もない。 角だってない。 頑張っての人の振りをしているから。 「まぁいい。少年を宿に寝かせるのが先だろう。さぁ、行くがいい」 リザードマンが手を離した。 そして村に続く道の先を見ている。 今日は久しぶりの布団。 早く宿を取って寝よう。 「それにしても。あれほど剣の才がない者は珍しい」 リザードマンの尻尾を掴んで投げる。 悲鳴を上げて木にぶつかったリザードマンがズリズリと地面に落ちた。 ぐったり倒れたリザードマンを見てから、私は村に入った。 |
13/01/10 22:20 るーじ
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