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020.宴会と調理される魔物 |
暴れたり食べたり寝たりしたけど、気づいたら色んな物が増えていた。
食べ物が増えたり、人が増えたり、物が増えたり、巣が増えたり、たっくさん増えた。 床を寝そべっていたら、ひんやりする物が乗っかってきた。 なんだろ、これ。 「申し訳ありません。踏んでしまいました」 見上げると半透明のメイドさん。 なぜかびしょぬれ。 濡れているのに水の匂いがしない。 「私、ぬれおなごなのですよ」 首を傾げてから、思い出す。 ジパングお土産の一人に、そーゆーのがいた。 「今は、清掃係のまとめ役をさせていただいています」 清掃係には色々いるけど、スライムたちは床や壁や天井の汚れを落としている。 スライムが歩くだけで掃除が出来るって評判だけど、汚れを食べているのかな。 それならベルゼブブを呼んだ方がいいって思ったけど、ベルゼブブは人の汚れは好きだけど建物の汚れは好きじゃないのかもしれない。 凄く汚れているところはバブルスライムが掃除しているって聞いたけど、どうなんだろう。 「ジパングの魔物は家事全般に精通していますので、大変役立っていますよ」 隊長さん、こんにちは。 「最初は何事かと思いましたが。結果的に密かな問題になっていた城内の清掃も解決しましたね」 「他にもジパングから来た妖怪の人たちも活躍されているようなのですよ。私も、精一杯頑張りますね」 他にジパングから来たのは、ジパングハーピーと、ジパングオーガ赤と青? 「カラステングにアカオニとアオオニ、ですね」 カラステングは速いし、アカオニとアオオニは、んー。 「酒の強さはさすがですが。あなたの相手を出来るほどの戦闘力はなさそうでしたね」 「酒だ! 酒だ酒だ酒だぁ!」 「やめなって。酒臭い息だけで酔っちまいそうだよ」 酒盛り酒盛り、お酒飲むー。 「お、竜の嬢ちゃんも飲むかい? 最近作られたって言うこの酒、うめえよなぁ!」 アカオニが飲んでるのは、お酒用リュウマカイモで造ったお酒。 お酒もいっぱい飲みたいから作ったら、簡単にお酒が作れるマカイモが出来た。 元々リュウマカイモはお酒を作りやすかったみたいだけど、これはもっと作りやすいみたい。 一晩つけたら、おっきな樽一杯のお酒が出来上がり。 「酒か? 宴会かぁ?」 「お? 酒じゃねえか。いいじゃねえか」 オーガとかミノタウルスとか、色んな魔物がやってきた。 ラミア達もやってきて、とぐろを巻いて座り始めた。 お酒好きが集まるとわいわいがやがや、屋上が騒がしくなった。 空が見えるドラゴンたちの遊び場兼暴れてもちょっとは大丈夫な場所兼、皆でわいわい騒ぐ場所。 倉庫から独身ドラゴンたちがおっきな樽を沢山持ってきて、ついでに狩ってきた魔界豚の焼肉と揚げたリュウマカイモを食べながらお酒を飲んでる。 他にも色々と持ち込んで飲んで食べて暴れての大騒ぎ。 「お? 竜の嬢ちゃん。そりゃなんだ?」 ふかしたリュウマカイモにホルスバターのっけ。 「すっげぇ美味そうな匂いがするぜ」 おいしい。 マカイモとホルスバターは合いやすいって聞いたからやってみたら、美味しかった。 他の魔物たちも色んな食べ方をしてるみたい。 「なんだこりゃああ! 火を吹くぞこいつ!」 あ、リュウマカイモに焼かれてる。 リュウマカイモはここでも作ってるから、減ってきたら魔力で増やす。 お酒用のリュウマカイモも簡単に作れるから、食べながら育てて、育ったら焼いたりして、出来上がったら食べたり飲んだりする。 「もっとおいしーお酒を造りなさいよ〜」 ラミアがとぐろを巻いて絡んできたので、小さい樽のお酒を一気飲みさせた。 「あんたさ。今度は酒盛りしてるわけ?」 半分くらいが潰れて、追加の人がちょっとずつ増えてきた頃、ディリアがやってきた。 「あの馬鹿でかいイモの亜種で酒を作ったんですって? 私にも飲ませなさいよ!」 私の樽が取られた。 「はい、おまたせ。即席だけど、カクテル作ったよ」 お酒用リュウマカイモで造ったお酒の濃度を上げて、魔界の果物のジュースを混ぜたみたい。 みんな沢山飲むから基本的に樽でカクテルを作ってるみたいだけど、美味しい。 「あ、その樽もおいしそうね。貰ったわ」 いつの間にかスライムたちも混ざって飲んでいた。 スライムがお酒を飲んだらどうなるのかと思ったら、すっごい楽しそうに飲んでるというか、すっぽり楽しそうに樽の中に収まってる。 「おいひ〜の〜。はふ〜」 青いスライムが赤くなってるけど、あのスライムのスライムゼリーってお酒の味がするのかな? 「食べれば分かるでしょ」 食べてみよー。 「たべるの〜? ど〜ぞ〜」 はむはむ。 「味が変わってるわね。新発見。沢山食べれないけれど、これだけあれば十分ね」 もっと食べたいけど我慢する、もっと食べたいけど。 「クィーンスライムでも捕まえてきなさい」 行って来る、から、手を離して欲しい、隊長さん。 「スライムの国との貿易ですか。まぁ、その国全てを酒塗れにしないというのであれば考えますが」 隊長さん、お酒入りスライムゼリーの味は? 「スライムたちとの交渉を検討に入れる程度には美味ですが。先ほども言いましたが、食べ過ぎないように。暴走しないように」 うなずく。 「カクテルにスライムが入っても、味が変わるけど見た目は変わらないのね」 何だかんだでディリアも良く食べる。 「限度はわきまえているわよ。ちゃんと、食べるスライムも変えているし」 「おさけおいし〜、もっと飲む〜」 果物みたいなマカイモは作れないから、果樹園に行って魔力をたっぷり注いで育ててから持ち帰る。 「また面白い物を作ったものじゃのぉ。食い意地と酒好きが高じて、マカイモに影響を与えるとはのぉ」 戻ってきたらバフォメットがお酒を飲んでいた。 果物をコックのサキュバスに渡して、ついでに拾ってきたものをおく。 「……勇者?」 果樹園の魔物を苛めてたから拾ってきた。 「勇者と、他は魔法使いと戦士とシスターと言ったところか」 「こんな人数で魔物の巣に攻め入るなんて、馬鹿かしら?」 やってきた勇者たちの配分をしながらお酒再開。 何でか知らないけど、お酒のおつまみに勇者のパーティが混ざってる。 勇者と戦士は力自慢戦闘自慢の魔物たちが取り合いをしたし、魔法使いはバフォメットと魔女たち、シスターはどこからやってきたのか知らないけどシスターっぽいサキュバスたちが襲ってる。 「どうして堕落教の人たちがいるのですか。え、ダークエンジェルが手引きを? はぁ、まったく」 勇者の武器を見ながら、首をかしげる。 「ああ、これは雷の剣ですね。雷を生み出す魔法がかかっているのですよ」 振ってみるけど出ない。 「魔力を込める必要があるのですよ。こう、ですね」 隊長さんが剣を振ると、雷がバリバリーっと、お酒を飲んでいた魔物に当たった。 怒った魔物がやってきたので軽く投げる。 「済みません。色々と狂いました」 だいじょうぶだ、もんだいない。 その後、隊長さんが勇者の武器を使ったり道具を使うのを眺める。 見よう見まねで使ってみるけど、うまくいかない。 「ドラゴンとは相性が悪いのかもしれませんね」 「そうじゃのぉ。単純に切れ味だけを追求するなら、サイクロプスにでも頼めばよかろうに」 よくわからないけど、その辺は全部バフォメットに任せることにした。 「……なんじゃと? 武器や道具を使いたいのかや?」 便利そうだし強そうだから。 「……やるだけやってみるわい」 ドラゴンたちは今日も賑やか。 ドラゴンの聖地に食べ物やお酒を持って行ったら、凄く元気になった。 みんなおなかが空いていたみたい。 今度はえっちに良く効くイモでも作ろうかな。 バフォメットは良い武器を作るには、鉱山に行って色んな鉱石を取ったりするのがいいって言っていた。 魔力に反応してその人特有の色になる宝石もあるみたいだけど、割れない宝石を捜すのが大変だから私は何もしないようにって言われた。 石のことはよくわからないから、ご飯だけ食べてよう。 明日は何を食べようかな。 後は人間のマネをして、魔物の爪や鱗を素材にする武器や防具があるみたいだから、幾つかとって渡したらバフォメットが急に黙った。 翼とかちょっと痛いけどご飯を食べてればきっと治るし。 ドラゴンの目を使ったアイテムがあるみたいだから試そうとしたけど、皆に止められた。 後でこっそり取ろうかな。 首についている宝石を指で抓む。 魔力を封じているこの首輪は、私から吸った魔力を石に変えているみたい。 寝る時にちょっと邪魔だけど前より沢山封印できるようになったから、これでいいかな。 たまに宝石を外さないと、全部一杯になって邪魔になるけど。 そういえば、今日はカナシャが帰ってきていた。 ディリアもカナシャもお酒好きだから、宴会をすると直ぐに顔を出す。 カナシャの自慢はお酒飲みと力自慢。 カナシャの体の半分はきっと、お酒で出来ている。 カナシャが今日つれて帰ってきたのは、長いドラゴン。 地面を掘ったり巣を掘ったりするからドラゴンの巣には入れないので、別の巣を用意した。 バフォメットがジャイアントアントのアリ塚みたいだなって言ってたこの巣は、見た目の中も穴だらけ。 たまにジャイアントアントが手入れをしないと崩れちゃうみたいだから、蟻さんも住んでる。 あとは、んー、何かあったかな。 あ、そうだ。 勇者たちは結局、魔物になったり旦那さんになったりしてた。 戦士はアマゾネスになって笑いながら勇者と交わって、僧侶はそこに混ざって堕落だーって交わって、魔女は実験します〜って交わってた。 結局なにしに来たんだろうと思ったら、昔聞いたことのある「英雄譚(えーゆーたん)」で、少人数で魔王を倒したって話があったからだって。 あんまり強くなかったけど、普通の勇者たちよりはちょっと強かったみたい。 勇者も普通の魔物よりえっちが強いから、1人じゃ厳しいってアマゾネスが笑ってた。 今は3人の勇者メンバーに襲われてる。 バフォメットとか他の魔物が言っていたけど。 こうやって勇者を呼んで取り込んだら、いい戦力になるって言ってた。 それを聞いてから、私と遊べるぐらいになるの?って聞いてみたけど、誰も私の方を見なかった。 ものすごく残念。 最近は、ひとりで過ごすのが好きなはぐれドラゴンが来るようになった。 ドラゴンは強いから自分の住んでいる周りの魔物のボスになったりするんだけど、もっと強いドラゴンはちっちゃな魔物の王様になっているみたい。 群れで暮らすドラゴンより強いから、力自慢で巣にやってくるんだけど、あんまり強いドラゴンがいなかった。 でも次に会う時はちょっと強くなってるから、いつか遊べるくらいになるかなーと思うんだけど、ディリアが言うには「時間が経っても差が開くだけよ」って言われちゃった。 だんだんと、封印をした状態でもディリアやカナシャと遊べるようになってきた。 また別の封印を考えないといけないかなーってバフォメットと話をしてる。 首輪の封印を強くすれば今は対処できるって言ったけど、いつまでもつのかな。 魔界デザートを食べながら、欠伸をする。 バフォメットが言ってた。 まだ私の魔力が強くなるって。 もっと強くなりたいけど。 遊び相手がいなくなったら、どうやって過ごしたらいいんだろ。 |
13/08/29 11:48 るーじ
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