03 ここは間をとってスケルトンはどうよ、お兄ちゃん
「いつもエロエロ、お兄ちゃんに這い寄る骸骨、スケルトンのリアナち……」
「いや、それもう二回も聞いてるから、結構です」
「お兄ちゃん、人のネタを途中で遮るのはスゴイシツレイだよ」
「お前はNINJAじゃないだろうに」
……なんでこうなったんだろうなぁ?
※ ※ ※
それは、とある少年の妹が二匹の魔物に分裂(と言ったらやや語弊があるが、あながち間違いでもない)する数日前の事だった。
少年達が住む村の近くに広がる森、その森を一つの影がゆっくりと歩む。
その影は、大きな、大きな熊だった。
その熊は、ゆっくりと森を歩き、そして周囲を見回しては再び歩き出す。
……その熊は、少年の妹、リアナを食らった熊である。
さて、そんな熊が一体何をしているかと言えば……分かりきっているが、餌探しである。
が、その結果は芳しくない。
何せ、最近人がやたらめったら森に踏み入るため、他の動物達が人間を恐れて引きこもってしまい、そんな動物を食らうという事が出来なくなってきたのだ。
さらに、やけに鼻につくにおいを放つ棒……熊は知らないが、それは猟銃と呼ばれる物だ、を持った人間が森を歩き回っており、自分を見たとたんにその棒から何かを放ってくるのだ。
それゆえ、その棒を持った人間になるべく見つからないように行動しているため、さらに活動範囲が制限される羽目になり、ただでさえ見つけれない餌がもっと見つけられないと言う事態になってしまったのだ。
その熊は、空腹ゆえにイラついていた。
もう小さな木の実などでほんの僅かに空腹をしのぐのにも限界を感じている。
もっと腹を満たしたい、もっと食い甲斐のある物が食べたい。
そう、例えば……この前食べた人間の肉みたいな。
そこまで考え、熊はふと思い出す。
そういえば、この前の人間の肉、少しは残していたな、と。
熊はそれを思い出すと、のそのそ巣へと引き返す。
そして巣に近づいたそのときだった。
「あっれ〜? なんかここら辺から恋する乙女センサーに反応があるんだけど……」
巣の入り口に、一人の人間がいた。
その人間は巣の入り口の近くであっちをきょろきょろこっちをきょろきょろ。
熊はそれを見て……
うまそうだ。
そう考えた。
そして、熊は空腹に押されたこともあって、その『白い人影』に向かって駆け出し、その丸太のような太い腕を振り上げ……
「あ、なるほど、あなた……『食べた』のね、文字通り」
そんな人影の声を聞いた直後、熊は意識を失った。
※ ※ ※
その白い人影は、目の前に仰向けで目を回している『グリズリー』を見下ろし、そしてため息をつく。
「……生きるために仕方なかったんだろうけど、ラブ伝道師を自称する私としては納得できないのよね、こういうの。ま、殺しはしないけどさ……せいぜいこれからは人間とラブでコメるような展開を楽しみなさいな」
そう呟くと、その人影は熊の巣に入る。
さっきまで熊だったグリズリーをほっといて。
このグリズリーは……そういえばこの近くの村にグリズリーが住んでたか。
彼女に任せてしまおう、うん。
そんな事を考えながら、再びあっちをきょろきょろこっちをきょろきょろ。
そして、見つけた。
「……そう、あなたが……」
人影はそういうと、腐りかけている肉がまだ少し張り付いている人間の右手と右足の骨をそっと持ち上げる。
そこに骨に対する嫌悪感、恐怖などは一切無く、あるのは哀れみの感情のみ。
「こんな形になっちゃっても、まだまだ想ってるのね……知ってしまったら、見捨てるなんて私には出来ないわ……! 安心してね? 右手と右足しかないから時間かかっちゃうけど、その想い、絶対無駄にはさせないから!」
そういうと、人影は左手を地面にかざす。
やがて、地面に桃色の光を放つ魔法陣が出現した。
その魔法陣の上に、人影は骨をそっと置く。
「この魔法陣があなたの体の足りないところをちょっとづつだけど作ってくれるわ……だから、それまでの辛抱よ?」
そういうと、人影は颯爽と立ち去る。
「……そういえば、さっきの子……どっかで似たような想いを持った子がいたような……?」
そんな呟きを残しながら。
※ ※ ※
そっと目を開く。
それだけの事がとても懐かしいように思える。
ぱちぱちと数回瞬きし、そして周囲を見回す。
なんとも冷たさを感じる洞窟だ。
もっとも、すぐそばから光が入ってきているため、洞窟と言うより洞穴と言ったところか。
ゆっくりと右上を上げ、そして左腕も上げる。
白く、細い腕が見えた。
昔の私のとは違う。でも、確かに私の意志で動く、私の腕。
……うん、あの白い女の人の言ったとおりだ。
そして、次に右足を動かし、次に左足を動かす。
体中をぺたぺたと触る。
どこも欠けたる部位が無い。
「……あはは……治った……ぜんぶ治った……!」
長かった。
ずっと待ちわびていた。
正確にはほんの数日なんだろうけど、それでも、私にとっては一日千秋といったっところだ。
両手を地面につき、上半身を跳ね上げる。
カタカタと体が音を鳴らすが、問題ない。
そしてゆっくりと立ち上がり、そして数歩歩く。
「歩ける……私、ちゃんと動ける!」
これなら、これなら……!
「待っててね……今帰るよ、お兄ちゃん……!」
お兄ちゃんの所に帰れる!
※ ※ ※
今日も今日とて太陽が黄色い。
あぁ、どうしてこういうときって黄色く見えるんだろう?
「自分が白いの一杯出しちゃったから、白を感知する能力が一時的になくなったとか?」
「いや、さすがにそれは無いでしょ、私よ」
「そーかなー?」
「いや、お前等が散々搾り取ったのが原因だからな?」
原因どもはいたって暢気。
ちくせう、人事だと思いやがって。
「だいじょーぶだいじょーぶ。その内インキュバスになればそういう事もないだろうし」
「だから早くインキュバスになるためにワンモアセッ!」
「ワンモアセッ! じゃねぇよ! 俺を殺す気か!?」
非常にイイ笑顔で再び行為を求めてくる妹共。
そんな妹共を前に俺はこれまたイイ笑顔を浮かべて……
逃げ出した。
……ヘタレ言うなし。
とにかくあの二人からなるべく遠い場所。
どうせ追いかけてくる二人に捕まる運命なのは分かりきってるから、つかまるまでの時間を出来るだけ稼げるくらい遠くまで!!
そう思ってどこへ向かうでもなく走っていたのだが……
こんな狭い村の、一体どこへ逃げればあの二人の妹の追跡を振り切れるというのだろう。
結局、家に戻って畑仕事をすることにした。
……考えなしとか言うなし。
と、言うわけで、まぁいつも通り農作業。
そろそろ季節的には秋。
実りが恋しい季節になってきた。
収穫した分のどれくらいを自分達用に残し、どれくらいを商人へ卸すかとかをあーでもないこーでもないと考えつつ、畑を休ませておくために作物を植えていない畑に、今日も今日とて肥料をまき、土を耕す。
土も生き物だ。手入れを怠ってはいけない。
手間かもしれないが、その手間が、来年の実りを豊かなものに変えてくれるのだ。
神頼み? 祈祷?
知らん! 信ずるは己の腕のみよ!!
……テンションがおかしい?
うん、自覚はしてる。
でもしゃあない。
だって、これ現実逃避の為にあえてこのテンションにしてるんだもの。
「…………」
なんかこっちをじっと熱い視線で見つめてくる、なんかどっかで見たことあるような顔したスケルトンからの逃避のためにな!!
……嘘付いた。 どっかで見たことある『ような』じゃない、見たことある顔だ。
つか、見たことあるって言うか、ここ最近毎日見てる顔だ。
……その顔は、あからさまにリアナだったのだ。
「…………」
俺が畑仕事を始めてから程なくしてやってきたこのスケルトン。
なんでか俺を熱っぽい視線でじっと見つめてくるんだよ……
それこそ、穴よ開け! といわんばかりに、じーっと。
「……じー」
しまいにゃ口でじーって言い始める始末。
とり合えず、目を合わせないようにしつつ作業を続ける。
きっと目を合わせたら食べられる。
こう、確信めいた予感がある。
何とか目を合わせないよう、わざとらしい口笛を吹きながら作業を続ける。
まるで台風を家の中でやり過ごすかのように、とにかく刺激してはいけない。
……でもさ、俺、甘く考えてたんだ……
「……はぁ……っ、もう我慢できない……っ!」
「な、なにをするだーっ!?」
……魔物にとっては、放置ってのも十分刺激だったんだなぁって……
※ ※ ※
で、冒頭に戻るわけ。
さて、毎回恒例、どういういきさつでこうなったか、説明はよ。
「なんか扱いが雑ぅ……まぁ良いけど。えっとね、簡単に言うと腕と足の骨だけだった私を、親切な人がこうしてくれたって感じかな?」
「なるほど。つまりお前さんは終ぞ見つからなかったリアナの右手右足の骨から生まれたリアナさんと」
「うん。でも、片腕片足の骨しかなかったからね。こうやって全身の骨を構築するまで、やっぱりすごく時間がかかっちゃったんだ……」
そこまで言うと、リアナ(骨)は俺の腕を抱きしめる力を強める。
「辛かった……動かせる体が無くて、ぼんやりとした意識が少しずつはっきりしてくるけど、でも体は無くて、お兄ちゃんに会いたいのに、会いにいけなくて……すごく辛かった……寂しかった……」
「そっか……」
――俺こそ、ごめん。お前を探しにいけなくて……
なんて事は言わなかった。
たぶん、そんな事言ったら逆にこっちが慰められる側になっちまうから。
……妹が泣いてるなら、そのまま落ち着くまで泣かせてやるのが兄貴ってもんだろ?
拝啓
あるかどうかも分からない天国にいると思われる父さん、母さん。
なんか、妹が二人どころか三人に増えました。
※ ※ ※
どこかの村のとある墓地。
そこに、三つ並んだ墓。
その三つの墓のうち、二つの墓の前に盛られた土が、もぞもぞと蠢き……
「いや、それもう二回も聞いてるから、結構です」
「お兄ちゃん、人のネタを途中で遮るのはスゴイシツレイだよ」
「お前はNINJAじゃないだろうに」
……なんでこうなったんだろうなぁ?
※ ※ ※
それは、とある少年の妹が二匹の魔物に分裂(と言ったらやや語弊があるが、あながち間違いでもない)する数日前の事だった。
少年達が住む村の近くに広がる森、その森を一つの影がゆっくりと歩む。
その影は、大きな、大きな熊だった。
その熊は、ゆっくりと森を歩き、そして周囲を見回しては再び歩き出す。
……その熊は、少年の妹、リアナを食らった熊である。
さて、そんな熊が一体何をしているかと言えば……分かりきっているが、餌探しである。
が、その結果は芳しくない。
何せ、最近人がやたらめったら森に踏み入るため、他の動物達が人間を恐れて引きこもってしまい、そんな動物を食らうという事が出来なくなってきたのだ。
さらに、やけに鼻につくにおいを放つ棒……熊は知らないが、それは猟銃と呼ばれる物だ、を持った人間が森を歩き回っており、自分を見たとたんにその棒から何かを放ってくるのだ。
それゆえ、その棒を持った人間になるべく見つからないように行動しているため、さらに活動範囲が制限される羽目になり、ただでさえ見つけれない餌がもっと見つけられないと言う事態になってしまったのだ。
その熊は、空腹ゆえにイラついていた。
もう小さな木の実などでほんの僅かに空腹をしのぐのにも限界を感じている。
もっと腹を満たしたい、もっと食い甲斐のある物が食べたい。
そう、例えば……この前食べた人間の肉みたいな。
そこまで考え、熊はふと思い出す。
そういえば、この前の人間の肉、少しは残していたな、と。
熊はそれを思い出すと、のそのそ巣へと引き返す。
そして巣に近づいたそのときだった。
「あっれ〜? なんかここら辺から恋する乙女センサーに反応があるんだけど……」
巣の入り口に、一人の人間がいた。
その人間は巣の入り口の近くであっちをきょろきょろこっちをきょろきょろ。
熊はそれを見て……
うまそうだ。
そう考えた。
そして、熊は空腹に押されたこともあって、その『白い人影』に向かって駆け出し、その丸太のような太い腕を振り上げ……
「あ、なるほど、あなた……『食べた』のね、文字通り」
そんな人影の声を聞いた直後、熊は意識を失った。
※ ※ ※
その白い人影は、目の前に仰向けで目を回している『グリズリー』を見下ろし、そしてため息をつく。
「……生きるために仕方なかったんだろうけど、ラブ伝道師を自称する私としては納得できないのよね、こういうの。ま、殺しはしないけどさ……せいぜいこれからは人間とラブでコメるような展開を楽しみなさいな」
そう呟くと、その人影は熊の巣に入る。
さっきまで熊だったグリズリーをほっといて。
このグリズリーは……そういえばこの近くの村にグリズリーが住んでたか。
彼女に任せてしまおう、うん。
そんな事を考えながら、再びあっちをきょろきょろこっちをきょろきょろ。
そして、見つけた。
「……そう、あなたが……」
人影はそういうと、腐りかけている肉がまだ少し張り付いている人間の右手と右足の骨をそっと持ち上げる。
そこに骨に対する嫌悪感、恐怖などは一切無く、あるのは哀れみの感情のみ。
「こんな形になっちゃっても、まだまだ想ってるのね……知ってしまったら、見捨てるなんて私には出来ないわ……! 安心してね? 右手と右足しかないから時間かかっちゃうけど、その想い、絶対無駄にはさせないから!」
そういうと、人影は左手を地面にかざす。
やがて、地面に桃色の光を放つ魔法陣が出現した。
その魔法陣の上に、人影は骨をそっと置く。
「この魔法陣があなたの体の足りないところをちょっとづつだけど作ってくれるわ……だから、それまでの辛抱よ?」
そういうと、人影は颯爽と立ち去る。
「……そういえば、さっきの子……どっかで似たような想いを持った子がいたような……?」
そんな呟きを残しながら。
※ ※ ※
そっと目を開く。
それだけの事がとても懐かしいように思える。
ぱちぱちと数回瞬きし、そして周囲を見回す。
なんとも冷たさを感じる洞窟だ。
もっとも、すぐそばから光が入ってきているため、洞窟と言うより洞穴と言ったところか。
ゆっくりと右上を上げ、そして左腕も上げる。
白く、細い腕が見えた。
昔の私のとは違う。でも、確かに私の意志で動く、私の腕。
……うん、あの白い女の人の言ったとおりだ。
そして、次に右足を動かし、次に左足を動かす。
体中をぺたぺたと触る。
どこも欠けたる部位が無い。
「……あはは……治った……ぜんぶ治った……!」
長かった。
ずっと待ちわびていた。
正確にはほんの数日なんだろうけど、それでも、私にとっては一日千秋といったっところだ。
両手を地面につき、上半身を跳ね上げる。
カタカタと体が音を鳴らすが、問題ない。
そしてゆっくりと立ち上がり、そして数歩歩く。
「歩ける……私、ちゃんと動ける!」
これなら、これなら……!
「待っててね……今帰るよ、お兄ちゃん……!」
お兄ちゃんの所に帰れる!
※ ※ ※
今日も今日とて太陽が黄色い。
あぁ、どうしてこういうときって黄色く見えるんだろう?
「自分が白いの一杯出しちゃったから、白を感知する能力が一時的になくなったとか?」
「いや、さすがにそれは無いでしょ、私よ」
「そーかなー?」
「いや、お前等が散々搾り取ったのが原因だからな?」
原因どもはいたって暢気。
ちくせう、人事だと思いやがって。
「だいじょーぶだいじょーぶ。その内インキュバスになればそういう事もないだろうし」
「だから早くインキュバスになるためにワンモアセッ!」
「ワンモアセッ! じゃねぇよ! 俺を殺す気か!?」
非常にイイ笑顔で再び行為を求めてくる妹共。
そんな妹共を前に俺はこれまたイイ笑顔を浮かべて……
逃げ出した。
……ヘタレ言うなし。
とにかくあの二人からなるべく遠い場所。
どうせ追いかけてくる二人に捕まる運命なのは分かりきってるから、つかまるまでの時間を出来るだけ稼げるくらい遠くまで!!
そう思ってどこへ向かうでもなく走っていたのだが……
こんな狭い村の、一体どこへ逃げればあの二人の妹の追跡を振り切れるというのだろう。
結局、家に戻って畑仕事をすることにした。
……考えなしとか言うなし。
と、言うわけで、まぁいつも通り農作業。
そろそろ季節的には秋。
実りが恋しい季節になってきた。
収穫した分のどれくらいを自分達用に残し、どれくらいを商人へ卸すかとかをあーでもないこーでもないと考えつつ、畑を休ませておくために作物を植えていない畑に、今日も今日とて肥料をまき、土を耕す。
土も生き物だ。手入れを怠ってはいけない。
手間かもしれないが、その手間が、来年の実りを豊かなものに変えてくれるのだ。
神頼み? 祈祷?
知らん! 信ずるは己の腕のみよ!!
……テンションがおかしい?
うん、自覚はしてる。
でもしゃあない。
だって、これ現実逃避の為にあえてこのテンションにしてるんだもの。
「…………」
なんかこっちをじっと熱い視線で見つめてくる、なんかどっかで見たことあるような顔したスケルトンからの逃避のためにな!!
……嘘付いた。 どっかで見たことある『ような』じゃない、見たことある顔だ。
つか、見たことあるって言うか、ここ最近毎日見てる顔だ。
……その顔は、あからさまにリアナだったのだ。
「…………」
俺が畑仕事を始めてから程なくしてやってきたこのスケルトン。
なんでか俺を熱っぽい視線でじっと見つめてくるんだよ……
それこそ、穴よ開け! といわんばかりに、じーっと。
「……じー」
しまいにゃ口でじーって言い始める始末。
とり合えず、目を合わせないようにしつつ作業を続ける。
きっと目を合わせたら食べられる。
こう、確信めいた予感がある。
何とか目を合わせないよう、わざとらしい口笛を吹きながら作業を続ける。
まるで台風を家の中でやり過ごすかのように、とにかく刺激してはいけない。
……でもさ、俺、甘く考えてたんだ……
「……はぁ……っ、もう我慢できない……っ!」
「な、なにをするだーっ!?」
……魔物にとっては、放置ってのも十分刺激だったんだなぁって……
※ ※ ※
で、冒頭に戻るわけ。
さて、毎回恒例、どういういきさつでこうなったか、説明はよ。
「なんか扱いが雑ぅ……まぁ良いけど。えっとね、簡単に言うと腕と足の骨だけだった私を、親切な人がこうしてくれたって感じかな?」
「なるほど。つまりお前さんは終ぞ見つからなかったリアナの右手右足の骨から生まれたリアナさんと」
「うん。でも、片腕片足の骨しかなかったからね。こうやって全身の骨を構築するまで、やっぱりすごく時間がかかっちゃったんだ……」
そこまで言うと、リアナ(骨)は俺の腕を抱きしめる力を強める。
「辛かった……動かせる体が無くて、ぼんやりとした意識が少しずつはっきりしてくるけど、でも体は無くて、お兄ちゃんに会いたいのに、会いにいけなくて……すごく辛かった……寂しかった……」
「そっか……」
――俺こそ、ごめん。お前を探しにいけなくて……
なんて事は言わなかった。
たぶん、そんな事言ったら逆にこっちが慰められる側になっちまうから。
……妹が泣いてるなら、そのまま落ち着くまで泣かせてやるのが兄貴ってもんだろ?
拝啓
あるかどうかも分からない天国にいると思われる父さん、母さん。
なんか、妹が二人どころか三人に増えました。
※ ※ ※
どこかの村のとある墓地。
そこに、三つ並んだ墓。
その三つの墓のうち、二つの墓の前に盛られた土が、もぞもぞと蠢き……
16/05/28 01:29更新 / 日鞠朔莉
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