小悪魔系後輩
夕暮れ時。とある学園の教室。
とっくに放課後を迎え、生徒と担任がいなくなったがらんどうの空間。そこに二つの人影があった。
一人は女子、もう一人は男子だった。女子の方は角と翼と尻尾を生やし、人外の存在であることを自ら声高に主張していた。一方の男子はそうした特徴を欠片も備えず、ただ真っ当な人間の姿をしていた。
そんな二人が共に学園指定の制服を身に纏い、窓際と出入口のドア付近にそれぞれ立ち、机の群れを挟んで向かい合っていた。女子の姿に関して不必要に騒ぐことはせず、ただ向き合うだけだった。
「待ってましたよ、先輩」
その時、窓際に立つ女生徒が、男子生徒に声をかける。にこやかに微笑み、窓から差し込む夕陽を浴びて佇むその姿は、ある種神秘的な美しさを放っていた。
その神々しい輝きに惹かれるように、男子生徒が女生徒の方へ無言で歩き始める。相手の言葉には反応せず、規則的に並んだ机の間を通り、ただまっすぐに女生徒を目指す。彼の顔はどこか気まずそうであり、実際彼は困っていた。
困惑の原因は、眼前に立つ女生徒にあった。
「ふふっ。僕、前からこういうシチュエーションに憧れてたんですよね」
近づいてくる男子生徒を見つめながら、女生徒が悪戯っぽく笑って言った。その間にも男子生徒は歩みを止めず、やがて二人が至近距離で相対する。そしてそこまで来たところで男子生徒が歩みを止め、女生徒に問いかける。
本当にここでするのか? 彼の言葉は良心の呵責に喘ぐかのように、苦しげな気配を漂わせていた。
「もちろん。僕はそのつもりですよ」
あからさまに渋る男子生徒に対し、女生徒は実に楽しそうな態度で答えた。それを聞いた男子生徒は嫌そうに眉間に皺を寄せ、彼の表情を見た女生徒は笑ったまま彼に言った。
「嫌なら別にいいんですよ。どうぞこのまま帰ってください。僕は引き留めたりしません」
それは。男子生徒が反論しようと口を開く。しかし彼がそこまで言った瞬間、女生徒が一歩前に飛び出す。
細く華奢な体が正面から突っ込んでくる。躱すことも出来ないまま、互いの影が一つになる。軽い衝撃を感じた男子生徒が、反射的に彼女を抱き留める。
「でも」
男子生徒の胸に飛び込んだ女生徒が、そこに顔を押し付けたまま声を出す。
「先輩は僕のこと、拒めませんよね?」
彼女の全身からふわりと芳香が漂う。彼女自身の匂いと香水の匂いが混ざり合った、爽やかな香り。それが男子生徒の鼻腔をくすぐり、彼の脳から正常な思考能力を奪う。
「だって先輩、僕のこと好きなんですから」
男子生徒は何も言い返せなかった。図星だったからだ。
制服越しに感じる暖かく柔らかな感触。全身から放たれる芳香。耳に吸い込まれていく声。彼はその全てを愛しいと感じていた。
本気で好いていた。彼は女生徒を心から愛していた。
「僕も先輩のこと、大好きですよ」
女生徒が追い打ちをかける。しかし彼女の言葉もまた真実だった。
一方で彼女は奔放だった。良識や理性を鼻で笑い、己の欲望を何より優先して動く。ある意味悪魔のような女だった。
そんな人の常識に縛られない悪魔が、今日も人間の枠からはみ出せずにいる男に堕落を囁く。
「今ここには誰もいませんし、誰も来ません。だから先輩、僕と共犯になってください」
男子生徒の胸元に顔を押し付けたまま、女生徒が言葉の刃を突き付ける。
男が生唾を飲み込む。答えはもう決まっていた。
彼は最早流されるがまま、その女生徒の甘い言葉と香りに、溺れていくしかなかった。
好きになった先輩を翻弄する小悪魔系後輩になってみたい。それがエバのリクエストだった。
一足先に制服を着た彼女の注文を聞いた男は、まず最初にそれをやってみたい理由を聞いてみた。
「エッチする時、大体は君が主導権持ってるでしょ? 僕はそれでも全然構わないんだけど、たまには僕が攻めに回ってみたいなって思ったんだよね」
それがエバの「理由」だった。エバは続けて申し訳なさそうな表情を浮かべ、男に確認を取ってきた。
「……駄目かな?」
駄目なわけが無かった。寧ろ望むところだった。エバが男の意思を尊重してきたのと同じように、男もまたエバの意見を取り入れてあげたいと常々思っていた。いつもはエバが遠慮してくれているのだから、こういう時こそ自分が譲歩すべきだ。
男はそんな自分の考えを正直に打ち明けた。それを聞いたエバの顔が明るく華やいだのは言うまでもない。
「ありがとう! 嬉しいなあ!」
弾んだ声でエバが礼を述べてくる。ここまで嬉しくされると、こっちも嬉しい気分になる。男は自然と笑みをこぼし、エバもつられて笑顔の色を濃くした。
「僕、頑張るから! 絶対君を喜ばせてあげるからね!」
俄然やる気になったエバが、力強い口調で男に告げる。男もそれに頷き、エバの攻めを全て受け入れようと決意した。
そしてその数分後、エバの魔力によって再び変貌した空間の中で、二人のプレイが開始された。エバ主導で始まったのは言うまでもない。
「ほら先輩、力を抜いて。楽にして、僕に任せて」
そんなこんなで本番。要望通り小悪魔系後輩と化したエバが、早速先輩役の男を手玉に取っていた。この時エバは自分から男に寄りかかることで彼の体の自由を奪い、それから悪戯を開始した。
「じゃあ、まずは邪魔なお洋服を脱ぎ脱ぎしましょうねー♪」
エバはまず陽気な声でそう告げつつ、最初にブレザーとワイシャツのボタンを外していった。ついでにネクタイも取り払い、脱がした服をまとめて放り捨て、あっという間に彼の上半身を露出させた。
その間、男はされるがままだった。服を剥かれ、上半身を裸にされても、まるで抵抗しなかった。エバを突き放すという選択肢は、可愛い後輩の温もりに包まれた今の彼には存在しなかった。
「ああ、先輩の体……何度見ても素敵です……」
そんな男の裸を至近距離で見つめながら、エバがうっとりした声でそう告げる。そして間髪入れずに、エバがその胸板に向かってはあっと熱い吐息を吹きかける。
後輩の息を肌で直接感じ、男が軽く身震いする。当然エバはそれを見逃さない。
「相変わらず先輩って敏感なんですね。でもまだですよ。気持ちよくなるのはこれからなんですから」
男の鳩尾にこめかみを押し当て、エバが熱く囁く。高鳴る心音を耳で聞き取りつつ、彼の胸に手を添える。
直後、掌のある一点に硬い感触を覚える。そこだけが盛り上がり、硬質な手触りを与えた。
エバはそれが何なのか、とうに理解していた。
「先輩ってば、もう乳首勃起してるんですねっ」
半分楽しげに、そして半分小馬鹿にするように、エバが声を弾ませて男に話しかける。男は恥ずかしげに顔を逸らし、黙秘を貫く。
そのいじらしい反応が、逆にエバを燃え上がらせる。
「もう、黙ってたって無駄ですからね。体は正直なんですから」
そう言って、まず掌で乳首を弄る。円を描くように手を動かし、突起の先端と掌を擦り合わせる。大きくゆっくり、焦らすような動きで、赤く膨れ上がった新芽のこりこりとした感触を掌全体で味わう。
「ほらほら。くりくり、くりくり。乳首捏ねちゃいますよー?」
男の乳首を玩具にしながら、エバが愉快そうに声をかける。男にそれに答える余裕はない。
暖かな快感の波が優しく理性の皮を剥がし、内に眠る獣性を剥き出しにさせていく。もっと弄ってほしいと本能が訴える。
あ、ああ、ああっ。男の口から喘ぎ声が漏れ始める。まだか細く小刻みな声だったが、それは彼がエバの与える快感に反応していることを如実に示していた。
「もっと欲しいんですよね?」
当然エバもそれに気づく。大好きな先輩をもっと喜ばせてあげようと、責めの手を一段階強くする。
「いいですよ。もっと気持ちよくなってください。我慢したって無駄なんですから」
そう言って今度は両手を動かし、親指と人差し指で左右の乳首を摘まみ上げた。
ひぃっ! 男の口から短い悲鳴が漏れる。それは明らかに情けないものであった。
「あははっ! 酷い声! 叫んじゃうほど気持ちよかったんですか?」
思わずエバが笑い声を上げる。男は咄嗟に口を閉ざすが、エバは攻撃の手を緩めない。摘まんだ乳首を上下左右に動かし、強く引っ張り、優しく捻り上げる。二本の指で側面を静かに撫で、爪で先端をつつき、指の腹で一気に押し込む。
幸せと恥と期待が一気に押し寄せる。男の心が肉に傾き、平衡を失っていく。先に進むのが怖い。常人の感覚を持つ男は、そこで思わず二の足を踏む。
エバは心の機微に敏感だった。乳首を玩具にしながら、小悪魔が言葉を紡ぐ。
「いいんですよ。それでいいんです。もっとエッチになって、先輩の無様なよがり声、もっと僕に聞かせてください」
いいのか?
「はい。僕が許します。抵抗しないで気持ちよくなってください」
ああ――。
許しを得た男の喘ぎが一段と大きくなる。恥も外聞もなく、ただ目の前の快楽を受け入れ始める。
追い打ちをかけるようにエバが声をかける。
「先輩のここ、ぷっくりしてますよ。くりくりでこりこりで、女の子みたいに膨らんでます」
エバが鳩尾から顔を離し、男を見上げて話しかける。その瞳は子供のようにキラキラ輝いていた。自分の愛撫で男が感じてくれている。それが何より嬉しかった。
もっと感じてほしい。エバの欲望に火が点く。
「もっと、もっと……」
エバが舌を伸ばし、首筋を舐める。唾液をたっぷり舌の上に載せ、男の首をべちょべちょに汚していく。同時に右手を乳首から離し、まっすぐ股間へ持って行く。ズボンのチャックを降ろし、下着の隙間に手を差し込み、先輩の愚息を掴んで外に解放する。
解き放たれた肉棒は、既に猛々しく勃起していた。
「もうこんなにおっきくなってる」
硬くそそり立つ肉棒に手を添えながら、エバが驚きの声を放つ。そしてますます頬を紅潮させていく男に対し、小馬鹿にするような口調でエバが問う。
「男のくせに女の子におっぱい弄られて興奮しちゃったんですか? 先輩って凄く変態なんですね」
問いながら、エバが男の肉棒を優しく握りしめる。細く滑らかな五本の指が、血管が浮き出るほど怒張したそれを丁寧に包み込む。
電流が走る。脳髄が刺激される。乳首を弄ばれ、肉棒を後輩に触られる。その恥辱と喜びが、男の被虐心と情欲をかきたてていく。
「扱いてほしいですか?」
重ねてエバが問う。男が即座に首を縦に振る。思考して行った行動ではない。本能が快楽を求めていた。
「ほしいんだ? 性欲に負けた今の先輩、けだもの以下ですよ。本当情けないですね」
優しい声色で放たれるエバの言葉が、男の精神に鋭く突き刺さる。肉欲に負けたことを自覚し顔を歪ませる男に、エバがすぐさま助け舟を出す。
「でもいいんです。先輩はそれで。もっと僕に溺れてください」
もっと貪欲になっていい。もっとエッチになっていい。
いいんだ。
後輩から許しを得た男が、体から力を抜いていく。
エバが肉棒を扱き始める。そっと指を絡ませ、ゆっくり焦らすように。こそばゆい感覚を与えるように手を動かす。
乳首を弄る手も止めない。上と下から送り込まれる快楽の電流が、崩れかかった男の良心を更に壊す。
「そう、その調子。いい子、いい子」
上下から責めながら、あやすように声をかける。男の体が小刻みに震える。裸身を晒す上半身がしっとりと汗ばんでいく。
エバが舌を伸ばし、浮き出た汗を舐め取る。顔を動かし、涎の跡を残しながら、赤いナメクジが方々を這い回る。
火照った肌の上を冷たい舌が滑り、さらなる刺激と快感を男の脳に刻み付ける。
「れろ、じゅうっ、えろえろっ……イって、イって。だらしない先輩、可愛い先輩、僕でイって……れろぉっ……」
わざと下品な音を立てて汗を舐めながら、エバが男に絶頂を促す。乳首を弄る手と肉棒を扱く手の動きも、同時にペースアップさせていく。
男の喘ぎ声が一段と高くなる。下半身が炎のように燃え上がる。股間がいきりたち、鈴口から透明な我慢汁が溢れ出す。
「ああ、汁出てる。汚い、好き、汚い先輩大好き……」
その液体がエバの手を濡らす。湿り気を感じたエバがうわ言のように呟く。
水気を含んだ手が滑り気を増し、より速いスピードで肉棒を扱いていく。
ぐちゃぐちゃ、ずちゃずちゃ。無人の教室に下品な音が響き渡る。うっとりした表情でその音を聞きながら、エバが男を見つめて声をかける。
「ほら、イけっ、イけっ、イけっ、後輩手コキでだらしなくイけッ!」
肉棒を扱く手のスピードが更に速くなる。摩擦熱で熱くなり、痛いほどの快感を生み出す。
もう限界だった。白濁の波はすぐそこまで押し寄せていた。腰を前に突き出し、すぐに出したいと体で懇願する。
許可が欲しい。許してほしい。けだもの以下な自分にお情けをかけてほしい。
男が目線で訴える。エバがそれに気づき、男の眼差しを正面から受け止める。
二人の視線が交錯する。直後、慈母の如き暖かな笑みを浮かべながら、エバが男に命令する。
「――イっていいですよ♪」
そして視線を降ろして目を閉じ、乳首に噛みつく。
スイッチを入れるように、上下の歯で優しく甘噛みする。
「かぷっ」
それが引き金になる。
「あ――」
ああああああっ!
男が絶叫する。
ぷっくり膨らんだ亀頭の先端から、真っ白な粘液が盛大に吐き出される。
「うわあ――」
それを感じ取ったエバが乳首から口を離し、幸福に満ちた顔で言い放つ。
「イっちゃったんだぁ……♪」
それに応えるように男が咆哮する。叫びながら、さらに腰を前に押し出す。
醜悪な剛直が上を向き、生臭い精液がアーチを描く。
濃厚な精臭が教室を満たしていく。言葉に出来ない悦楽が男の魂を燃やしていく。
「いいんですよ、もっとイって。もっともっと気持ちよくなってください」
エバが油を注ぐ。後輩の催促を受け、男の精神がさらに快楽に沈んでいく。
そんな男を、エバが優しく抱きしめる。背中に両手を回し、肩の上に顎を載せ、慰めるようにじっと彼を暖める。
「いい子、いい子。だらしなくてエッチで、素敵な子。もっとエッチになっていいんですからね」
男の耳元でエバが囁く。射精を促すように背中をさする。全てを許す小悪魔の甘言が、ますます男を駄目にしていく。
そして男はそれを無防備に受け入れた。エバの言葉を受けいれ、彼は幸せという甘く痺れる快感の沼にどんどん沈んでいった。
男の射精と体の痙攣は、その後暫く続いた。
「あーあ、凄いイっちゃいましたね」
数十秒後。ようやく体を落ち着かせた男に対し、エバが体を離しながら声をかける。
「年下の女の子にいいように遊ばれて、恥ずかしくないんですか? 普通の人からしたら気持ち悪すぎて絶交ものですよ」
彼女の声は冷めきった、突き放すような声色を持っていた。男はそれを聞いて急激に頭が冷え、それまで味わっていた快楽の波が一気に引いていった。そうして後に残るのは、身を裂くほどの気まずさと恥ずかしさだけだった。
男の顔色が見るからに青ざめていく。弁解も出来ず、ただ力なく項垂れる。
そこにエバが続けて声をかける。
「でも安心してください。僕はそんな先輩が大好きですから」
それまでとは百八十度異なる、暖かく慈愛に満ちた声だった。その変化に気づいた男が、思わず顔を上げてエバを見つめる。
男の視界の先にいたエバは、文字通り慈母の如き笑みを浮かべていた。アルカイック・スマイル――全てを許す仏の笑顔である。
「僕は全部受け入れます。例え先輩がどうしようもない淫乱でも、先輩が男の人に欲情するような変態さんでも。僕は全部受け入れます」
男の過去――人間だった頃には唾棄すべき物と見做されていた彼の情愛をさらりと漏らしながら、エバが言い切る。そのままエバは男から距離を取り、男を見つめたまま後ろに下がっていく。
「先輩を受け入れていいのは僕だけ。先輩を愛していいのは僕だけなんです」
やがてエバの尻が机の一つに接触する。そこでエバが歩みを止め、その机の上に腰かける。
「だって、僕も変態だから」
机の上で仰向けになる。その場で足を持ち上げ、膝を曲げ、大きく開脚する。両手を使ってスカートをまくり上げ、隠していた部分を自分から明かす。
桃色の下着、レースの刺繍が入った隙間だらけのそれが白日の下に晒される。
「こんな所で、こうやって先輩を誘惑出来る変態だから」
桃色の下着は股の部分がぐっしょり濡れていた。変態の小悪魔は既に出来上がっていた。男がそれに気づき、食い入るようにそこを凝視する。
男の鼻息が荒くなる。エバの顔が見るからに赤くなっていく。
「先輩、一緒に堕ちよう?」
頬を染める悪魔が両手を伸ばす。
男が欲しいと体で訴える。
「一緒に堕ちて、幸せになりましょう?」
エバが満面の笑みを浮かべる。
男の肉棒が再び硬さを増していく。
二人だけの世界。堕落への誘い。
答えはもう決まっていた。
「先輩」
――エバ!
彼女の言葉に応えるように、男が動く。
エバの元に駆け寄り、下着の股間を隠す部分を横にずらす。
陰唇が露わになる。ぷっくりと熟れた桃色の割れ目は、もう瑞々しく潤っていた。
挿れるよ。男が言う。
エバのここに、俺のちんちん挿れるよ。
「うん、来てっ。先輩のぶっといおちんちん、僕の中に突っ込んでっ♪」
後輩の許可が下りる。
直後、男が一息に肉棒をワレメにぶち込む。亀頭の先から根元まで、一気に膣の中へ突き込んでいく。
子宮口と亀頭の先端が激突する。膣内から起こった衝撃が全身の細胞を揺さぶる。
相手のコンディションを全く考慮しない、暴力的な挿入だった。
「かひゅッ――!」
男の容赦ない一撃に、エバがほんの僅か息を詰まらせる。しかしその微かな苦しさの後、エバの胸の中に幸せと気持ちよさが湧き上がってくる。
「あっ、はははっ……最っ低……」
その喜びに心躍らせながら、エバが男に罵声を浴びせる。
「女の子にっ、こんな乱暴なことするなんて……今の先輩、盛った猿より酷いですよ……?」
涙目のまま放つ、手加減なしの痛罵。男はお構いなしにエバの太腿を掴む。
この後の展開は読めている。予想通り、エバが表情を和らげ、それを微笑みに変えて言う。
「でも、そんな先輩、大好き♪」
俺も意地悪なエバが大好きだよ。
「僕が意地悪するの、先輩だけなんですからね?」
愛情の裏返し。好きだから虐めたくなる。
男はエバの心を誰より理解していた。
「それより先輩、そろそろ動いて……?」
愛しい後輩が瞳を潤ませて催促する。男が頷き、大きく腰を振り始める。
互いの腰がぶつかり合う。二人の体液で濡れた部分が衝突し、ぱちゅんぱちゅんと瑞々しい打突音がテンポよく響く。
男の息が荒くなる。エバの口から艶めいた喘ぎ声が漏れ出す。
「あっ、あッ、あンっ! ふッ、うにゃぁんっ!」
一つ突く度に声が大きくなる。タガが外れ、あられもない嬌声を空の教室に轟かせる。
「もっとっ、先輩っ、もっとっ! もっと僕を愛してッ!」
最中、エバが悲鳴に近い声を上げる。即座に男がもちろんだと吼える。
腰の振りが更に速さを増す。それに負けじとエバの膣内も収縮し、根元から食い千切らんほどに肉棒を締め上げる。
「絡まってるっ! おまんことおちんちんが絡み合ってるっ!」
深々と突き刺さったその瞬間、襞の一枚一枚が一斉に表皮に食いつく。我慢汁でびしょ濡れになった膣肉が、離したくないと剛直に纏わりつく。柔らかなエバの分身が、猛り狂った男の分身を優しく包み込む。
「このままでいて? 先輩抜かないでっ?」
そして互いの腰が触れ合ったその瞬間、顔を上げてエバが懇願する。このまま一つでいたい。涙と涎を垂れ流し、エバがピストン運動を止めるよう訴える。
それを無視して男が一気に引き抜く。汁まみれになった肉棒がずるりと表に飛び出し、擦れあう皮と襞の感触がエバを更に高みに昇り詰める。
「ひいぃん!」
エバが絶叫する。そのまま男がピストンを続行する。
襞と皮が擦れあう。途切れることのない快楽の波が、二人を容赦なく飲み込んでいく。
「せんぱいのきちくっ、けだものっ! 僕をいじめてっ……ひン! にゃああん!」
もはやエバの訴えは男に届かなかった。男は最早自分の欲望を満たすためだけに、ひたすら腰を振っていた。
小悪魔の言う通り、彼は最低の変態になろうとしていた。エバはその変貌ぶりを口では罵りながら、心ではそれを喜んで受け入れていた。
「や、やっぱりっ、あン! 最低な先輩は、はっ、やン! 僕が受け止めてあげないとっ、駄目みたい、あぁんっ! ……ですねっ!」
快感に喘ぎながら、エバが途切れ途切れに宣言する。浅ましく腰を振りながら、けだものと化した男がニヤリと笑う。
そのまま静かに言い放つ。じゃあ受け止めてもらうぞ。
「来るの? ひぃっ、来るのっ?」
期待と歓喜に顔を歪ませながら、エバが確認を取ってくる。
男が頷く。
「出すんだね? 僕の中に先輩の精液、どばどばってぶちまけちゃうんだねっ?」
先輩に突かれながら、再びエバが問う。
後輩を串刺しにしながら、再び男が頷く。
「――ああっ、ああああっ!」
次の瞬間、エバが両手で顔を包み喜びの雄叫びを上げる。全身の細胞が幸福に打ち震え、頭の中で最後の理性が音を立てて弾け飛ぶ。
「だして! だしてっ! 先輩の精液っ! 僕だけのザーメン! いっぱい僕の中にくださいっ!」
男の眼前で悪魔が獣に堕ちる。二匹の獣が手を取り合い、最後の高みに向かって歩を進める。
腰の振りが速さを増す。肉のぶつかる音がドラムロールの如きテンポで鳴り狂い、そこに雄と雌の激しい吐息が混ざり合う。
「きて、きて、きて、きて――」
エバが小声で連呼する。
肉棒が根元まで突き刺さる。
男が精を放つ。
「きっ――」
エバの言葉が遮られる。
鈴口から溢れ出す白濁液が、膣と子宮を真っ白に染め上げていく。
胎内に異物を叩き込まれる衝撃と快感が体中を駆け巡り、エバの思考回路と言語中枢を破壊する。
「いっ」
臭くて汚い孕み汁が、亀頭の穴から勢いよく吐き出される。
腹の中から先輩に征服されていく。
踏み躙られていく。蹂躙されていく。
気持ちいい。
気持ちいい――!
「い、いいぃぃぃぃぃ……♪」
エバが絶頂する。だらしなく口を開け、目から涙を流し、静かに精神を飛翔させる。
絶叫する余裕すらなかった。閾値を超えた快楽を注ぎ込まれた脳味噌が生存本能から機能を停止し、それに代わるように心の底から深々とイく。
エバは今、脊髄反射で幸せを噛み締めていた。
「あ、あは、あはあぁぁぁぁ……っ♪」
もう言葉も話せない。体中の穴から体液を垂れ流し、男の齎す快感にただ身を沈める。命令を受け取らなくなった筋肉が弛緩し、結果だらりと手足を投げ出す。
そうして動くことすら出来なくなったエバを、男がそっと抱きかかえる。繋がったままエバの背中に手を回し、静かに持ち上げ、優しく抱きしめる。
「あっ」
体がふわりと浮く感覚を受け、エバが小さく声を漏らす。構うことなく男が抱擁を続ける。
男の体温がエバに移る。大好きな人の匂いと温もりで、エバの体が段々暖かくなっていく。
「ああ――」
絶頂で空っぽになった心に愛と喜びが再充填されていく。フリーズした脳味噌が再び動き出す。
再起動完了。同時に呆然となっていたエバの顔に熱が灯され、直後ふにゃっと柔らかくなる。
「――えへへっ♪」
幸せな気持ちを隠すことなく、エバがだらけきった笑顔を浮かべる。力を取り戻した両手を男の背中に回し、自分から男を抱き返す。
「女の子をすっからかんにするなんて、先輩かなりのヤリチンですね」
口を開けば悪態をつく。しかしナチュラルに飛び出す暴言に対し、男はただ微笑むだけだった。
それでこそ俺の恋人だ。男は心からそう思っていた。そして聡い小悪魔もまた、自分の本心が男に筒抜けであることを理解していた。
「でも僕を滅茶苦茶にしていいのは、先輩だけですっ」
だから正直に断言する。愛する者にしがみつきながら、本当の気持ちを男に告げる。
「僕のこと、これからも絶対離さないでくださいね?」
彼のリクエストに応え続けるのは、怖いから。
何かアクションを起こしていないと、彼が自分の元から離れていってしまいそうだから。
だから気を引き続ける。挑発し、誘惑し、常に自分を意識させる。
そんなことは絶対に無いとわかっている。でも、時折どうしようもなく不安になる。
面倒臭い性分。でもそんな自分を、彼はちゃんと見ていてくれる。
「先輩、大好きですっ!」
演技一割、本心九割。背中の翼を嬉しそうにはためかせながら、エバが至福の笑みで以て男に言い放つ。
そのあまりの可愛さに、男の本能に再び火が点く。膣内に刺さったままの肉棒が一瞬で硬さを取り戻し、腹の中を圧迫する。
二回戦目を始めたのは言うまでもない。
とっくに放課後を迎え、生徒と担任がいなくなったがらんどうの空間。そこに二つの人影があった。
一人は女子、もう一人は男子だった。女子の方は角と翼と尻尾を生やし、人外の存在であることを自ら声高に主張していた。一方の男子はそうした特徴を欠片も備えず、ただ真っ当な人間の姿をしていた。
そんな二人が共に学園指定の制服を身に纏い、窓際と出入口のドア付近にそれぞれ立ち、机の群れを挟んで向かい合っていた。女子の姿に関して不必要に騒ぐことはせず、ただ向き合うだけだった。
「待ってましたよ、先輩」
その時、窓際に立つ女生徒が、男子生徒に声をかける。にこやかに微笑み、窓から差し込む夕陽を浴びて佇むその姿は、ある種神秘的な美しさを放っていた。
その神々しい輝きに惹かれるように、男子生徒が女生徒の方へ無言で歩き始める。相手の言葉には反応せず、規則的に並んだ机の間を通り、ただまっすぐに女生徒を目指す。彼の顔はどこか気まずそうであり、実際彼は困っていた。
困惑の原因は、眼前に立つ女生徒にあった。
「ふふっ。僕、前からこういうシチュエーションに憧れてたんですよね」
近づいてくる男子生徒を見つめながら、女生徒が悪戯っぽく笑って言った。その間にも男子生徒は歩みを止めず、やがて二人が至近距離で相対する。そしてそこまで来たところで男子生徒が歩みを止め、女生徒に問いかける。
本当にここでするのか? 彼の言葉は良心の呵責に喘ぐかのように、苦しげな気配を漂わせていた。
「もちろん。僕はそのつもりですよ」
あからさまに渋る男子生徒に対し、女生徒は実に楽しそうな態度で答えた。それを聞いた男子生徒は嫌そうに眉間に皺を寄せ、彼の表情を見た女生徒は笑ったまま彼に言った。
「嫌なら別にいいんですよ。どうぞこのまま帰ってください。僕は引き留めたりしません」
それは。男子生徒が反論しようと口を開く。しかし彼がそこまで言った瞬間、女生徒が一歩前に飛び出す。
細く華奢な体が正面から突っ込んでくる。躱すことも出来ないまま、互いの影が一つになる。軽い衝撃を感じた男子生徒が、反射的に彼女を抱き留める。
「でも」
男子生徒の胸に飛び込んだ女生徒が、そこに顔を押し付けたまま声を出す。
「先輩は僕のこと、拒めませんよね?」
彼女の全身からふわりと芳香が漂う。彼女自身の匂いと香水の匂いが混ざり合った、爽やかな香り。それが男子生徒の鼻腔をくすぐり、彼の脳から正常な思考能力を奪う。
「だって先輩、僕のこと好きなんですから」
男子生徒は何も言い返せなかった。図星だったからだ。
制服越しに感じる暖かく柔らかな感触。全身から放たれる芳香。耳に吸い込まれていく声。彼はその全てを愛しいと感じていた。
本気で好いていた。彼は女生徒を心から愛していた。
「僕も先輩のこと、大好きですよ」
女生徒が追い打ちをかける。しかし彼女の言葉もまた真実だった。
一方で彼女は奔放だった。良識や理性を鼻で笑い、己の欲望を何より優先して動く。ある意味悪魔のような女だった。
そんな人の常識に縛られない悪魔が、今日も人間の枠からはみ出せずにいる男に堕落を囁く。
「今ここには誰もいませんし、誰も来ません。だから先輩、僕と共犯になってください」
男子生徒の胸元に顔を押し付けたまま、女生徒が言葉の刃を突き付ける。
男が生唾を飲み込む。答えはもう決まっていた。
彼は最早流されるがまま、その女生徒の甘い言葉と香りに、溺れていくしかなかった。
好きになった先輩を翻弄する小悪魔系後輩になってみたい。それがエバのリクエストだった。
一足先に制服を着た彼女の注文を聞いた男は、まず最初にそれをやってみたい理由を聞いてみた。
「エッチする時、大体は君が主導権持ってるでしょ? 僕はそれでも全然構わないんだけど、たまには僕が攻めに回ってみたいなって思ったんだよね」
それがエバの「理由」だった。エバは続けて申し訳なさそうな表情を浮かべ、男に確認を取ってきた。
「……駄目かな?」
駄目なわけが無かった。寧ろ望むところだった。エバが男の意思を尊重してきたのと同じように、男もまたエバの意見を取り入れてあげたいと常々思っていた。いつもはエバが遠慮してくれているのだから、こういう時こそ自分が譲歩すべきだ。
男はそんな自分の考えを正直に打ち明けた。それを聞いたエバの顔が明るく華やいだのは言うまでもない。
「ありがとう! 嬉しいなあ!」
弾んだ声でエバが礼を述べてくる。ここまで嬉しくされると、こっちも嬉しい気分になる。男は自然と笑みをこぼし、エバもつられて笑顔の色を濃くした。
「僕、頑張るから! 絶対君を喜ばせてあげるからね!」
俄然やる気になったエバが、力強い口調で男に告げる。男もそれに頷き、エバの攻めを全て受け入れようと決意した。
そしてその数分後、エバの魔力によって再び変貌した空間の中で、二人のプレイが開始された。エバ主導で始まったのは言うまでもない。
「ほら先輩、力を抜いて。楽にして、僕に任せて」
そんなこんなで本番。要望通り小悪魔系後輩と化したエバが、早速先輩役の男を手玉に取っていた。この時エバは自分から男に寄りかかることで彼の体の自由を奪い、それから悪戯を開始した。
「じゃあ、まずは邪魔なお洋服を脱ぎ脱ぎしましょうねー♪」
エバはまず陽気な声でそう告げつつ、最初にブレザーとワイシャツのボタンを外していった。ついでにネクタイも取り払い、脱がした服をまとめて放り捨て、あっという間に彼の上半身を露出させた。
その間、男はされるがままだった。服を剥かれ、上半身を裸にされても、まるで抵抗しなかった。エバを突き放すという選択肢は、可愛い後輩の温もりに包まれた今の彼には存在しなかった。
「ああ、先輩の体……何度見ても素敵です……」
そんな男の裸を至近距離で見つめながら、エバがうっとりした声でそう告げる。そして間髪入れずに、エバがその胸板に向かってはあっと熱い吐息を吹きかける。
後輩の息を肌で直接感じ、男が軽く身震いする。当然エバはそれを見逃さない。
「相変わらず先輩って敏感なんですね。でもまだですよ。気持ちよくなるのはこれからなんですから」
男の鳩尾にこめかみを押し当て、エバが熱く囁く。高鳴る心音を耳で聞き取りつつ、彼の胸に手を添える。
直後、掌のある一点に硬い感触を覚える。そこだけが盛り上がり、硬質な手触りを与えた。
エバはそれが何なのか、とうに理解していた。
「先輩ってば、もう乳首勃起してるんですねっ」
半分楽しげに、そして半分小馬鹿にするように、エバが声を弾ませて男に話しかける。男は恥ずかしげに顔を逸らし、黙秘を貫く。
そのいじらしい反応が、逆にエバを燃え上がらせる。
「もう、黙ってたって無駄ですからね。体は正直なんですから」
そう言って、まず掌で乳首を弄る。円を描くように手を動かし、突起の先端と掌を擦り合わせる。大きくゆっくり、焦らすような動きで、赤く膨れ上がった新芽のこりこりとした感触を掌全体で味わう。
「ほらほら。くりくり、くりくり。乳首捏ねちゃいますよー?」
男の乳首を玩具にしながら、エバが愉快そうに声をかける。男にそれに答える余裕はない。
暖かな快感の波が優しく理性の皮を剥がし、内に眠る獣性を剥き出しにさせていく。もっと弄ってほしいと本能が訴える。
あ、ああ、ああっ。男の口から喘ぎ声が漏れ始める。まだか細く小刻みな声だったが、それは彼がエバの与える快感に反応していることを如実に示していた。
「もっと欲しいんですよね?」
当然エバもそれに気づく。大好きな先輩をもっと喜ばせてあげようと、責めの手を一段階強くする。
「いいですよ。もっと気持ちよくなってください。我慢したって無駄なんですから」
そう言って今度は両手を動かし、親指と人差し指で左右の乳首を摘まみ上げた。
ひぃっ! 男の口から短い悲鳴が漏れる。それは明らかに情けないものであった。
「あははっ! 酷い声! 叫んじゃうほど気持ちよかったんですか?」
思わずエバが笑い声を上げる。男は咄嗟に口を閉ざすが、エバは攻撃の手を緩めない。摘まんだ乳首を上下左右に動かし、強く引っ張り、優しく捻り上げる。二本の指で側面を静かに撫で、爪で先端をつつき、指の腹で一気に押し込む。
幸せと恥と期待が一気に押し寄せる。男の心が肉に傾き、平衡を失っていく。先に進むのが怖い。常人の感覚を持つ男は、そこで思わず二の足を踏む。
エバは心の機微に敏感だった。乳首を玩具にしながら、小悪魔が言葉を紡ぐ。
「いいんですよ。それでいいんです。もっとエッチになって、先輩の無様なよがり声、もっと僕に聞かせてください」
いいのか?
「はい。僕が許します。抵抗しないで気持ちよくなってください」
ああ――。
許しを得た男の喘ぎが一段と大きくなる。恥も外聞もなく、ただ目の前の快楽を受け入れ始める。
追い打ちをかけるようにエバが声をかける。
「先輩のここ、ぷっくりしてますよ。くりくりでこりこりで、女の子みたいに膨らんでます」
エバが鳩尾から顔を離し、男を見上げて話しかける。その瞳は子供のようにキラキラ輝いていた。自分の愛撫で男が感じてくれている。それが何より嬉しかった。
もっと感じてほしい。エバの欲望に火が点く。
「もっと、もっと……」
エバが舌を伸ばし、首筋を舐める。唾液をたっぷり舌の上に載せ、男の首をべちょべちょに汚していく。同時に右手を乳首から離し、まっすぐ股間へ持って行く。ズボンのチャックを降ろし、下着の隙間に手を差し込み、先輩の愚息を掴んで外に解放する。
解き放たれた肉棒は、既に猛々しく勃起していた。
「もうこんなにおっきくなってる」
硬くそそり立つ肉棒に手を添えながら、エバが驚きの声を放つ。そしてますます頬を紅潮させていく男に対し、小馬鹿にするような口調でエバが問う。
「男のくせに女の子におっぱい弄られて興奮しちゃったんですか? 先輩って凄く変態なんですね」
問いながら、エバが男の肉棒を優しく握りしめる。細く滑らかな五本の指が、血管が浮き出るほど怒張したそれを丁寧に包み込む。
電流が走る。脳髄が刺激される。乳首を弄ばれ、肉棒を後輩に触られる。その恥辱と喜びが、男の被虐心と情欲をかきたてていく。
「扱いてほしいですか?」
重ねてエバが問う。男が即座に首を縦に振る。思考して行った行動ではない。本能が快楽を求めていた。
「ほしいんだ? 性欲に負けた今の先輩、けだもの以下ですよ。本当情けないですね」
優しい声色で放たれるエバの言葉が、男の精神に鋭く突き刺さる。肉欲に負けたことを自覚し顔を歪ませる男に、エバがすぐさま助け舟を出す。
「でもいいんです。先輩はそれで。もっと僕に溺れてください」
もっと貪欲になっていい。もっとエッチになっていい。
いいんだ。
後輩から許しを得た男が、体から力を抜いていく。
エバが肉棒を扱き始める。そっと指を絡ませ、ゆっくり焦らすように。こそばゆい感覚を与えるように手を動かす。
乳首を弄る手も止めない。上と下から送り込まれる快楽の電流が、崩れかかった男の良心を更に壊す。
「そう、その調子。いい子、いい子」
上下から責めながら、あやすように声をかける。男の体が小刻みに震える。裸身を晒す上半身がしっとりと汗ばんでいく。
エバが舌を伸ばし、浮き出た汗を舐め取る。顔を動かし、涎の跡を残しながら、赤いナメクジが方々を這い回る。
火照った肌の上を冷たい舌が滑り、さらなる刺激と快感を男の脳に刻み付ける。
「れろ、じゅうっ、えろえろっ……イって、イって。だらしない先輩、可愛い先輩、僕でイって……れろぉっ……」
わざと下品な音を立てて汗を舐めながら、エバが男に絶頂を促す。乳首を弄る手と肉棒を扱く手の動きも、同時にペースアップさせていく。
男の喘ぎ声が一段と高くなる。下半身が炎のように燃え上がる。股間がいきりたち、鈴口から透明な我慢汁が溢れ出す。
「ああ、汁出てる。汚い、好き、汚い先輩大好き……」
その液体がエバの手を濡らす。湿り気を感じたエバがうわ言のように呟く。
水気を含んだ手が滑り気を増し、より速いスピードで肉棒を扱いていく。
ぐちゃぐちゃ、ずちゃずちゃ。無人の教室に下品な音が響き渡る。うっとりした表情でその音を聞きながら、エバが男を見つめて声をかける。
「ほら、イけっ、イけっ、イけっ、後輩手コキでだらしなくイけッ!」
肉棒を扱く手のスピードが更に速くなる。摩擦熱で熱くなり、痛いほどの快感を生み出す。
もう限界だった。白濁の波はすぐそこまで押し寄せていた。腰を前に突き出し、すぐに出したいと体で懇願する。
許可が欲しい。許してほしい。けだもの以下な自分にお情けをかけてほしい。
男が目線で訴える。エバがそれに気づき、男の眼差しを正面から受け止める。
二人の視線が交錯する。直後、慈母の如き暖かな笑みを浮かべながら、エバが男に命令する。
「――イっていいですよ♪」
そして視線を降ろして目を閉じ、乳首に噛みつく。
スイッチを入れるように、上下の歯で優しく甘噛みする。
「かぷっ」
それが引き金になる。
「あ――」
ああああああっ!
男が絶叫する。
ぷっくり膨らんだ亀頭の先端から、真っ白な粘液が盛大に吐き出される。
「うわあ――」
それを感じ取ったエバが乳首から口を離し、幸福に満ちた顔で言い放つ。
「イっちゃったんだぁ……♪」
それに応えるように男が咆哮する。叫びながら、さらに腰を前に押し出す。
醜悪な剛直が上を向き、生臭い精液がアーチを描く。
濃厚な精臭が教室を満たしていく。言葉に出来ない悦楽が男の魂を燃やしていく。
「いいんですよ、もっとイって。もっともっと気持ちよくなってください」
エバが油を注ぐ。後輩の催促を受け、男の精神がさらに快楽に沈んでいく。
そんな男を、エバが優しく抱きしめる。背中に両手を回し、肩の上に顎を載せ、慰めるようにじっと彼を暖める。
「いい子、いい子。だらしなくてエッチで、素敵な子。もっとエッチになっていいんですからね」
男の耳元でエバが囁く。射精を促すように背中をさする。全てを許す小悪魔の甘言が、ますます男を駄目にしていく。
そして男はそれを無防備に受け入れた。エバの言葉を受けいれ、彼は幸せという甘く痺れる快感の沼にどんどん沈んでいった。
男の射精と体の痙攣は、その後暫く続いた。
「あーあ、凄いイっちゃいましたね」
数十秒後。ようやく体を落ち着かせた男に対し、エバが体を離しながら声をかける。
「年下の女の子にいいように遊ばれて、恥ずかしくないんですか? 普通の人からしたら気持ち悪すぎて絶交ものですよ」
彼女の声は冷めきった、突き放すような声色を持っていた。男はそれを聞いて急激に頭が冷え、それまで味わっていた快楽の波が一気に引いていった。そうして後に残るのは、身を裂くほどの気まずさと恥ずかしさだけだった。
男の顔色が見るからに青ざめていく。弁解も出来ず、ただ力なく項垂れる。
そこにエバが続けて声をかける。
「でも安心してください。僕はそんな先輩が大好きですから」
それまでとは百八十度異なる、暖かく慈愛に満ちた声だった。その変化に気づいた男が、思わず顔を上げてエバを見つめる。
男の視界の先にいたエバは、文字通り慈母の如き笑みを浮かべていた。アルカイック・スマイル――全てを許す仏の笑顔である。
「僕は全部受け入れます。例え先輩がどうしようもない淫乱でも、先輩が男の人に欲情するような変態さんでも。僕は全部受け入れます」
男の過去――人間だった頃には唾棄すべき物と見做されていた彼の情愛をさらりと漏らしながら、エバが言い切る。そのままエバは男から距離を取り、男を見つめたまま後ろに下がっていく。
「先輩を受け入れていいのは僕だけ。先輩を愛していいのは僕だけなんです」
やがてエバの尻が机の一つに接触する。そこでエバが歩みを止め、その机の上に腰かける。
「だって、僕も変態だから」
机の上で仰向けになる。その場で足を持ち上げ、膝を曲げ、大きく開脚する。両手を使ってスカートをまくり上げ、隠していた部分を自分から明かす。
桃色の下着、レースの刺繍が入った隙間だらけのそれが白日の下に晒される。
「こんな所で、こうやって先輩を誘惑出来る変態だから」
桃色の下着は股の部分がぐっしょり濡れていた。変態の小悪魔は既に出来上がっていた。男がそれに気づき、食い入るようにそこを凝視する。
男の鼻息が荒くなる。エバの顔が見るからに赤くなっていく。
「先輩、一緒に堕ちよう?」
頬を染める悪魔が両手を伸ばす。
男が欲しいと体で訴える。
「一緒に堕ちて、幸せになりましょう?」
エバが満面の笑みを浮かべる。
男の肉棒が再び硬さを増していく。
二人だけの世界。堕落への誘い。
答えはもう決まっていた。
「先輩」
――エバ!
彼女の言葉に応えるように、男が動く。
エバの元に駆け寄り、下着の股間を隠す部分を横にずらす。
陰唇が露わになる。ぷっくりと熟れた桃色の割れ目は、もう瑞々しく潤っていた。
挿れるよ。男が言う。
エバのここに、俺のちんちん挿れるよ。
「うん、来てっ。先輩のぶっといおちんちん、僕の中に突っ込んでっ♪」
後輩の許可が下りる。
直後、男が一息に肉棒をワレメにぶち込む。亀頭の先から根元まで、一気に膣の中へ突き込んでいく。
子宮口と亀頭の先端が激突する。膣内から起こった衝撃が全身の細胞を揺さぶる。
相手のコンディションを全く考慮しない、暴力的な挿入だった。
「かひゅッ――!」
男の容赦ない一撃に、エバがほんの僅か息を詰まらせる。しかしその微かな苦しさの後、エバの胸の中に幸せと気持ちよさが湧き上がってくる。
「あっ、はははっ……最っ低……」
その喜びに心躍らせながら、エバが男に罵声を浴びせる。
「女の子にっ、こんな乱暴なことするなんて……今の先輩、盛った猿より酷いですよ……?」
涙目のまま放つ、手加減なしの痛罵。男はお構いなしにエバの太腿を掴む。
この後の展開は読めている。予想通り、エバが表情を和らげ、それを微笑みに変えて言う。
「でも、そんな先輩、大好き♪」
俺も意地悪なエバが大好きだよ。
「僕が意地悪するの、先輩だけなんですからね?」
愛情の裏返し。好きだから虐めたくなる。
男はエバの心を誰より理解していた。
「それより先輩、そろそろ動いて……?」
愛しい後輩が瞳を潤ませて催促する。男が頷き、大きく腰を振り始める。
互いの腰がぶつかり合う。二人の体液で濡れた部分が衝突し、ぱちゅんぱちゅんと瑞々しい打突音がテンポよく響く。
男の息が荒くなる。エバの口から艶めいた喘ぎ声が漏れ出す。
「あっ、あッ、あンっ! ふッ、うにゃぁんっ!」
一つ突く度に声が大きくなる。タガが外れ、あられもない嬌声を空の教室に轟かせる。
「もっとっ、先輩っ、もっとっ! もっと僕を愛してッ!」
最中、エバが悲鳴に近い声を上げる。即座に男がもちろんだと吼える。
腰の振りが更に速さを増す。それに負けじとエバの膣内も収縮し、根元から食い千切らんほどに肉棒を締め上げる。
「絡まってるっ! おまんことおちんちんが絡み合ってるっ!」
深々と突き刺さったその瞬間、襞の一枚一枚が一斉に表皮に食いつく。我慢汁でびしょ濡れになった膣肉が、離したくないと剛直に纏わりつく。柔らかなエバの分身が、猛り狂った男の分身を優しく包み込む。
「このままでいて? 先輩抜かないでっ?」
そして互いの腰が触れ合ったその瞬間、顔を上げてエバが懇願する。このまま一つでいたい。涙と涎を垂れ流し、エバがピストン運動を止めるよう訴える。
それを無視して男が一気に引き抜く。汁まみれになった肉棒がずるりと表に飛び出し、擦れあう皮と襞の感触がエバを更に高みに昇り詰める。
「ひいぃん!」
エバが絶叫する。そのまま男がピストンを続行する。
襞と皮が擦れあう。途切れることのない快楽の波が、二人を容赦なく飲み込んでいく。
「せんぱいのきちくっ、けだものっ! 僕をいじめてっ……ひン! にゃああん!」
もはやエバの訴えは男に届かなかった。男は最早自分の欲望を満たすためだけに、ひたすら腰を振っていた。
小悪魔の言う通り、彼は最低の変態になろうとしていた。エバはその変貌ぶりを口では罵りながら、心ではそれを喜んで受け入れていた。
「や、やっぱりっ、あン! 最低な先輩は、はっ、やン! 僕が受け止めてあげないとっ、駄目みたい、あぁんっ! ……ですねっ!」
快感に喘ぎながら、エバが途切れ途切れに宣言する。浅ましく腰を振りながら、けだものと化した男がニヤリと笑う。
そのまま静かに言い放つ。じゃあ受け止めてもらうぞ。
「来るの? ひぃっ、来るのっ?」
期待と歓喜に顔を歪ませながら、エバが確認を取ってくる。
男が頷く。
「出すんだね? 僕の中に先輩の精液、どばどばってぶちまけちゃうんだねっ?」
先輩に突かれながら、再びエバが問う。
後輩を串刺しにしながら、再び男が頷く。
「――ああっ、ああああっ!」
次の瞬間、エバが両手で顔を包み喜びの雄叫びを上げる。全身の細胞が幸福に打ち震え、頭の中で最後の理性が音を立てて弾け飛ぶ。
「だして! だしてっ! 先輩の精液っ! 僕だけのザーメン! いっぱい僕の中にくださいっ!」
男の眼前で悪魔が獣に堕ちる。二匹の獣が手を取り合い、最後の高みに向かって歩を進める。
腰の振りが速さを増す。肉のぶつかる音がドラムロールの如きテンポで鳴り狂い、そこに雄と雌の激しい吐息が混ざり合う。
「きて、きて、きて、きて――」
エバが小声で連呼する。
肉棒が根元まで突き刺さる。
男が精を放つ。
「きっ――」
エバの言葉が遮られる。
鈴口から溢れ出す白濁液が、膣と子宮を真っ白に染め上げていく。
胎内に異物を叩き込まれる衝撃と快感が体中を駆け巡り、エバの思考回路と言語中枢を破壊する。
「いっ」
臭くて汚い孕み汁が、亀頭の穴から勢いよく吐き出される。
腹の中から先輩に征服されていく。
踏み躙られていく。蹂躙されていく。
気持ちいい。
気持ちいい――!
「い、いいぃぃぃぃぃ……♪」
エバが絶頂する。だらしなく口を開け、目から涙を流し、静かに精神を飛翔させる。
絶叫する余裕すらなかった。閾値を超えた快楽を注ぎ込まれた脳味噌が生存本能から機能を停止し、それに代わるように心の底から深々とイく。
エバは今、脊髄反射で幸せを噛み締めていた。
「あ、あは、あはあぁぁぁぁ……っ♪」
もう言葉も話せない。体中の穴から体液を垂れ流し、男の齎す快感にただ身を沈める。命令を受け取らなくなった筋肉が弛緩し、結果だらりと手足を投げ出す。
そうして動くことすら出来なくなったエバを、男がそっと抱きかかえる。繋がったままエバの背中に手を回し、静かに持ち上げ、優しく抱きしめる。
「あっ」
体がふわりと浮く感覚を受け、エバが小さく声を漏らす。構うことなく男が抱擁を続ける。
男の体温がエバに移る。大好きな人の匂いと温もりで、エバの体が段々暖かくなっていく。
「ああ――」
絶頂で空っぽになった心に愛と喜びが再充填されていく。フリーズした脳味噌が再び動き出す。
再起動完了。同時に呆然となっていたエバの顔に熱が灯され、直後ふにゃっと柔らかくなる。
「――えへへっ♪」
幸せな気持ちを隠すことなく、エバがだらけきった笑顔を浮かべる。力を取り戻した両手を男の背中に回し、自分から男を抱き返す。
「女の子をすっからかんにするなんて、先輩かなりのヤリチンですね」
口を開けば悪態をつく。しかしナチュラルに飛び出す暴言に対し、男はただ微笑むだけだった。
それでこそ俺の恋人だ。男は心からそう思っていた。そして聡い小悪魔もまた、自分の本心が男に筒抜けであることを理解していた。
「でも僕を滅茶苦茶にしていいのは、先輩だけですっ」
だから正直に断言する。愛する者にしがみつきながら、本当の気持ちを男に告げる。
「僕のこと、これからも絶対離さないでくださいね?」
彼のリクエストに応え続けるのは、怖いから。
何かアクションを起こしていないと、彼が自分の元から離れていってしまいそうだから。
だから気を引き続ける。挑発し、誘惑し、常に自分を意識させる。
そんなことは絶対に無いとわかっている。でも、時折どうしようもなく不安になる。
面倒臭い性分。でもそんな自分を、彼はちゃんと見ていてくれる。
「先輩、大好きですっ!」
演技一割、本心九割。背中の翼を嬉しそうにはためかせながら、エバが至福の笑みで以て男に言い放つ。
そのあまりの可愛さに、男の本能に再び火が点く。膣内に刺さったままの肉棒が一瞬で硬さを取り戻し、腹の中を圧迫する。
二回戦目を始めたのは言うまでもない。
18/03/29 19:14更新 / 黒尻尾
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