第三話
「ふぅむ、困ってしまいました」
うろうろとボロい我が家を歩き回っていたシュドネアが、眉を八の字にしている。
「なに?どうかした?」
「ああ、いえ。そういえば貴方がお腹を空かせていたのを思い出したので、一つ手料理でも振る舞おうと考えたのですが……」
まさしく困り果てた様子で、シュドネアが話を続ける。
「どれだけ探せど、キッチンが見当たらなかったので、どうしたものかと……」
「あー、ないよ」
「おや?」
「ウチ、キッチンないよ」
「おや……………」
ボクの言葉を聞いたシュドネアが、さらに眉を寄せる。
「キッチンがなくて、今まで困ることがなかったのですか?」
「まぁ、料理とかしないし……」
別に調理が必要な物は食べないければいい。そう考えると調理設備がなくとも問題はないわけで。
そういうわけで、ボクは今までキッチンがないことに不便さを感じることはなかった。
「少々恐ろしいのですが……貴方は普段、なにを食べているのですか?」
文化的な生活をしてきたシュドネアからすれば、調理なしで一体なにが食べられるのかと疑問に思ったのだろう。
「えーと、虫とか草とか……………冗談だよ」
シュドネアが泣きそうになっていたので、この話はとりあえず誤魔化すことにした。
「ああ、安心しました。一応は、ちゃんとした物を食べているのですね?」
「………………………うん!」
ごめんシュドネア。虫と草とゴミ箱の残飯ばっかり食べてる。
ただ、それを話すと本当に泣き出しそうなので、ここは黙っておくことにした。
「にしてもさ、申し訳なく思うよ。シュドネアもお腹が空いてるだろうし……」
別にボクは慣れているからいいのだけど、シュドネアまで空腹に苦しむことになるのは、どうにも悲しい。
彼女にだけはなにか食べさせてあげたい。なのに、それを叶えるだけの力がボクにはなかった。
「ああ、私のことは気にしないでください。魔物に食糧問題はないので。それよりも、エノの食べる物がないことが困ります」
ボクの思いはよそに、うんうんと唸るシュドネア。
顎に手を当て、なにやら打開策を考えているようだ。
「あっ、思いつきました」
ポンっと手を叩いて、シュドネアが明るく笑う。
はてさて、なにを思いついたのだろうか?
「母乳飲みますか?」
「……………………………………………え?なんだって?」
ちょっと何を言っているのか分からなくて、思わず聞き返してしまった。
「私がミルクを出せば万事解決かと」
なにが万事解決なのか。
問い詰めたい。シュドネアを小一時間ほど問い詰めたい。
「ああ、ご安心を。私は子を孕んだ経験もなければ交わった経験もありません。100パーセント処女です。ですが私は魔物ですので、魔法で“ちょい”すれば母乳ぐらい出せます」
この子は一体なにを言っているんだ………?
「なので、私のを飲んでください。こう、ちゅぱちゅぱ、っと」
「いや、駄目だよ!」
どう考えても駄目だ。
要するにアレだ。シュドネアは、ボクに吸えと言っている。
シュドネアの胸に吸いつき、母乳を飲ませてもらうボクの姿が思い浮かぶ。
酷い状況だ。これが許されるとは到底思えない。
「大丈夫です。セーフです。合意の下ならセーフです」
「完全にアウトだよ!」
合意だろうがなんだろうが、まったくセーフではない。人間として終わってる。
赤子にするならともかく、ボクは今年で17になる男性だ。
それが同じくらいの年頃の少女から授乳されるというのはあまりに危ない。
「まぁまぁそう言わず。合法ですから。みんなもヤッてますから」
「いやいやいや」
「いえいえいえ」
「…………………………………」
「…………………………………」
「「……………………………………………」」
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「押し切られた………!」
一時間にわたる話し合いの末、ボクはシュドネアに言いくるめられてしまった。
「まぁまぁ、味と栄養は保障しますから」
硬いベッドの上に座るシュドネアが、それはそれはニコニコと笑いながら、ボクの肩をポンと優しく叩いた。
「さぁ、それでは早速、始めましょうか……♡」
どこか熱っぽい息を吐いて、シュドネアがシャツのボタンを開け始める。
プチ、プチとゆっくり、しかし躊躇わず。
ボタンを外す音が部屋に響いて……やがて止む。
「開けました………おや?何故目を瞑っているのですか?」
「見たら不味いかなって…!」
きつく瞼を閉じ、シュドネアの姿を見ないようにする。
いくら相手が魔物とはいえ、彼女は女の子だ。
ただの他人でしかないボクがシュドネアの素肌を見てしまうのは、なにかいけない気がした。
「おやおや…………」
「あっ、力技で目を開けさせようとするんじゃ………ちょっ、強い強いっ!?」
瞼の上に指が触れ、無理矢理にこじ開けようとしてくる。
「まったく。ほら、見えなければちゅっちゅっ出来ませんよ?」
「『ちゅっちゅっ』とか言わないでよ、恥ずかしい」
なにが「ちゅっちゅっ」だ。
なにが悲しくて乳首に吸いつかなけばならないのか。
今ボクは、貧民に生まれた我が身の不幸を本気で呪っている。
くそぅ………富裕層に生まれていればこんな恥ずかしい目には……!
「ほらほら、その目を開けて、私を見てください」
「でも…………」
「私は、貴方を拒みません…♡さぁ、私を、よく見てください……♡」
「っ……」
そうやって色っぽく囁かれると、なぜだかシュドネアを見たいという欲望がふつふつと湧いくる。
彼女は今、どのような姿をしているのだろうか?
衣服の下、彼女の本当は、どんな姿なのだろうか?
見たい、見たい、見たい。
好奇心とは違う、もっと暗くてゾクゾクとした衝動で脳が侵されていく。
「うぅ………………目、開けるよ」
「ええ、どうぞ…♡ご覧ください…♡」
衝動を抑えきれず、おそるおそる目を開く。
目の前にあったのは、白くてきめ細かな素肌。
小さな胸と、その頂点で勃ったピンク色の乳頭。
どうしようもなく色香を纏った、白い淫魔の姿がそこにあった。
「どうですか、エノ…♡私の身体…♡」
ほんのりと頬を赤く染めて、どこか潤んだ瞳でボクを見つめて、シュドネアが感想を求めてくる。
「……綺麗で、かわいいよ」
「っ♡」
率直な感想を伝えると、シュドネアの表情が綻んだ。
とても嬉しそうな、とても幸せそうな、そんな顔を見せてくる。
「ねぇ、もっと……聞かせてください…♡」
「えぇ……なんか恥ずかしいっていうか……」
「お願いします…♡もっと、エノに褒めて欲しいです…♡」
こうやって懇願されると、どうしてか断る気になれない。
なにか、シュドネアの良いように操られているような気分だが、それでも悪い気はしなかった。
そうしてボクは、滅茶苦茶恥ずかしかったが、どうにか感想を述べることにした。
「…肌が白くて、きめ細かくて綺麗だと思う。おへそがなんか可愛らしいし……む、胸も控えめでかわいくて…その、乳首も……ええと、色っぽいよ」
なんの拷問だ。
顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
「ああ、やはり。貴方の褒められると、私……っ♡」
そんなボクとは反対に、シュドネアは容姿を褒められて悦に浸っている。
「もういいですかね?リリム的には合意ですよね?襲っても問題ありませんね?」
「ノー!ノー、ノー、ノー!!」
何を言っているのかは分からないが、なにやら不穏な気配を感じたので全力で静止する。
「むぅ……まぁ、仕方がありません。焦らされていると、そう思うようにしましょう」
どこか不服そうではあるものの、シュドネアは停止してくれた。
「本日は、あくまで栄養補給。授乳だけ。ええ、そうですね」
するり。シュドネアの細い腕が、ボクの後頭部に回される。
「さぁ……私を食べてください……♡」
ぐっ、っと腕に力が入り、シュドネアの胸に引き寄せられる。
「っあ………!」
瞬間、甘い匂いが鼻孔をくすぐった。
花とか香水とかの匂いじゃない。もっと純粋で、女性特有のそれ。
言うならば、“シュドネアの匂い”。
それを嗅いでいると、少しずつ理性が蕩けていくような……そんな気分になっていく。
「ふふっ♡遠慮なさらずに……♡」
最早ボクはどうすることもできない。
そうしてボクは意を決して、シュドネアのピンと勃った乳頭を口に含んだ。
「ひゃんっ♡♡」
乳首に口をつけた瞬間、シュドネアが可愛い声を上げた。
「す、すいません……こんなに感じるとは、思っていなくて…♡」
そう言うシュドネアは、内股をもじもじと擦り合わせて、どこか落ち着かない様子だった。
「あの……嫌では、ありませんから…♡エノの思うように、シテ、ください……♡」
この場合、はたしてボクはどうするのがいいのだろうか。
このまま吸いつくことが正しいのか、あるいはここでやめるべきなのか。
もうボクには何も分からない。
「………じゃあ、するよ」
分からないが、ボクはシュドネアの言う通りにすることを選んだ。
おずおずと、彼女の乳首を吸っていく。
「んんっ……♡はぁ……っ♡んぁっ♡」
乳首が吸い上げられると、シュドネアは悩ましい声を上げ始める。
「んっ♡そうやって吸われると、私っ……♡♡」
彼女の感じ入った声を聞いていると、こちらも変な気になりそうだ。
やめよう、深く考えないようにしよう。
今のボクは赤ちゃんだ。母乳を飲ませてもらってる赤ちゃんだ。
深く考えるな。赤ちゃんが“変な気”なんて起こすだろうか?
起こさない。なぜなら赤ちゃんだから。ボクもそうだ。
(母乳、出ない………)
カオスに突入しつつある思考を振り切ろうと、おっぱいのことを考える。
当初ボクは、ちょっと吸ったらミルクが出てくるものだと思っていた。
だが現実は違ったようで、シュドネアの乳首からは母乳が全く出てこない。
どうしよう、とりあえず刺激したらなにか変わるかな。
クソ真面目にボクはなにを考えているんだ………?
ともかく、早く母乳を飲まないとこの時間は終わらない。
ならば、手段を選んでなどいられないのではないだろうか。
「…………ひゃぁぁっ♡」
ただ吸いつくだけでなく、舌で乳頭を舐めてみる。
すると、シュドネアが甲高い声を上げ始めた。
「それっ♡ぺろぺろ、やぁ…っ♡きもちいいっ♡」
硬くて、どこか甘い乳首を舐め転がすたびに、シュドネアの身体がびくびくと跳ねる。
「んんっ♡舌でコリコリされたら…っ♡♡ひうっ♡♡」
舐めたり、舌先でつついたり、吸ったり。
乳首を弄り続ければ、彼女の口から甘ったるい声が漏れてくる。
でも、母乳は出てこない。
これではまだ足りないのだろうか。
ならばもっと強い刺激をと。
ボクは優しく、その硬くなった乳首を噛んだ。
「ひゃぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡♡」
噛まれるのが良かったらしく、シュドネアの身体が大きく震える。
「あっ♡そんなにしたらっ♡♡」
痛くないようにフニフニと歯で挟んで刺激していく。
どうやらシュドネアはこれが好きみたいで、一つ甘噛みされるごとに身をよじった。
………けど、動かれるとやりにくい。
「え?……やぁぁっ♡抱き寄せるのっ♡だめですぅっ♡」
両腕を背中に回し、シュドネアを抱き寄せる。
これで彼女は逃げられない。
「んぁっ♡♡ひぃぃんっ♡私、もう…っ♡♡」
しっかりと抱きしめ、集中的に乳頭を刺激していく。
舌を押し当て、潰すように這わせたり。根本を舌先で擦ったり。ときどき、軽く噛んであげたり。
そうやって、シュドネアから官能を引き出していく。
「きちゃう…っ♡乳首だけで、イッちゃいますぅ…っ♡♡だめぇ…♡♡」
辛抱たまらないと言うかのように、びくびくと震えるシュドネア。
その乳首を、最後に優しく噛む。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ♡♡♡」
絶頂に達したシュドネアが、大きくのけ反って跳ねる。
瞬間、その乳頭から母乳が噴き出した。
口いっぱいに、甘くて、こってりとしたミルクの味が広がる。
今まで食べたなによりも美味しくて、幸せな味。
いつまでも飲んでいたくなるような幸福感に包まれる優しい味だった。
「はぁーっ♡はぁーっ♡胸だけで、イかされちゃいました…♡♡」
肩で息をするシュドネアが、うっとりと蕩けた顔でボクを見つめてくる。
「あんっ♡……ふふっ、そんなに吸って…♡エッチな赤ちゃんですね♡」
そう言って彼女は、自らの胸を吸って噴き出した母乳を飲むボクの頭を優しく撫でる。
「そんなにちゅうちゅうして…♡私のミルク、美味しいんですか…♡」
「ん………」
今やボクは、母乳の味に夢中だった。
ずっと胸を吸い上げて、溢れる液体をこくこくと喉に流し込んでいく。
もうこのまま、ずっとこのまま。
なにも考えず、シュドネアに抱き着いて、おっぱいを飲ませてもらいたい。
などと人間として終わったような思考さえ浮かんでくる。
「ふふっ♡いいんですよ、ずっとこのままでも♡だって、気持ちいですもの♡♡」
そんなボクを見透かすかのように、シュドネアが優しく声をかけてきた。
腕と羽でふわりとボクを包んで、堕落へと誘うその姿。
彼女がリリムである所以を、垣間見たような気がした。
「………おや、おねむですか?」
そうやって優しく抱きしめられると、なんだか眠くなってきた。
久しぶりにお腹いっぱいになって、安らかな心地になったからだろうか。
「もう、このまま眠っちゃいましょうか♡私がずぅっと、こうしていてあげますから…♡」
ああ、多幸感が胸いっぱいに溢れてくる。
シュドネアにこうされるのが、ボクはひたすらに好きなのだろう。
こうやって彼女に抱きしめられ、優しく声をかけられると、ただそれだけで心が温かくなる。
「………おやすみ、シュドネア」
「はい、おやすみなさい、エノ♡」
そうしてシュドネアに言われるがまま。
彼女に抱き着き、胸に顔を埋めたまま。
ボクの意識は、暗闇に落ちていった。
うろうろとボロい我が家を歩き回っていたシュドネアが、眉を八の字にしている。
「なに?どうかした?」
「ああ、いえ。そういえば貴方がお腹を空かせていたのを思い出したので、一つ手料理でも振る舞おうと考えたのですが……」
まさしく困り果てた様子で、シュドネアが話を続ける。
「どれだけ探せど、キッチンが見当たらなかったので、どうしたものかと……」
「あー、ないよ」
「おや?」
「ウチ、キッチンないよ」
「おや……………」
ボクの言葉を聞いたシュドネアが、さらに眉を寄せる。
「キッチンがなくて、今まで困ることがなかったのですか?」
「まぁ、料理とかしないし……」
別に調理が必要な物は食べないければいい。そう考えると調理設備がなくとも問題はないわけで。
そういうわけで、ボクは今までキッチンがないことに不便さを感じることはなかった。
「少々恐ろしいのですが……貴方は普段、なにを食べているのですか?」
文化的な生活をしてきたシュドネアからすれば、調理なしで一体なにが食べられるのかと疑問に思ったのだろう。
「えーと、虫とか草とか……………冗談だよ」
シュドネアが泣きそうになっていたので、この話はとりあえず誤魔化すことにした。
「ああ、安心しました。一応は、ちゃんとした物を食べているのですね?」
「………………………うん!」
ごめんシュドネア。虫と草とゴミ箱の残飯ばっかり食べてる。
ただ、それを話すと本当に泣き出しそうなので、ここは黙っておくことにした。
「にしてもさ、申し訳なく思うよ。シュドネアもお腹が空いてるだろうし……」
別にボクは慣れているからいいのだけど、シュドネアまで空腹に苦しむことになるのは、どうにも悲しい。
彼女にだけはなにか食べさせてあげたい。なのに、それを叶えるだけの力がボクにはなかった。
「ああ、私のことは気にしないでください。魔物に食糧問題はないので。それよりも、エノの食べる物がないことが困ります」
ボクの思いはよそに、うんうんと唸るシュドネア。
顎に手を当て、なにやら打開策を考えているようだ。
「あっ、思いつきました」
ポンっと手を叩いて、シュドネアが明るく笑う。
はてさて、なにを思いついたのだろうか?
「母乳飲みますか?」
「……………………………………………え?なんだって?」
ちょっと何を言っているのか分からなくて、思わず聞き返してしまった。
「私がミルクを出せば万事解決かと」
なにが万事解決なのか。
問い詰めたい。シュドネアを小一時間ほど問い詰めたい。
「ああ、ご安心を。私は子を孕んだ経験もなければ交わった経験もありません。100パーセント処女です。ですが私は魔物ですので、魔法で“ちょい”すれば母乳ぐらい出せます」
この子は一体なにを言っているんだ………?
「なので、私のを飲んでください。こう、ちゅぱちゅぱ、っと」
「いや、駄目だよ!」
どう考えても駄目だ。
要するにアレだ。シュドネアは、ボクに吸えと言っている。
シュドネアの胸に吸いつき、母乳を飲ませてもらうボクの姿が思い浮かぶ。
酷い状況だ。これが許されるとは到底思えない。
「大丈夫です。セーフです。合意の下ならセーフです」
「完全にアウトだよ!」
合意だろうがなんだろうが、まったくセーフではない。人間として終わってる。
赤子にするならともかく、ボクは今年で17になる男性だ。
それが同じくらいの年頃の少女から授乳されるというのはあまりに危ない。
「まぁまぁそう言わず。合法ですから。みんなもヤッてますから」
「いやいやいや」
「いえいえいえ」
「…………………………………」
「…………………………………」
「「……………………………………………」」
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「押し切られた………!」
一時間にわたる話し合いの末、ボクはシュドネアに言いくるめられてしまった。
「まぁまぁ、味と栄養は保障しますから」
硬いベッドの上に座るシュドネアが、それはそれはニコニコと笑いながら、ボクの肩をポンと優しく叩いた。
「さぁ、それでは早速、始めましょうか……♡」
どこか熱っぽい息を吐いて、シュドネアがシャツのボタンを開け始める。
プチ、プチとゆっくり、しかし躊躇わず。
ボタンを外す音が部屋に響いて……やがて止む。
「開けました………おや?何故目を瞑っているのですか?」
「見たら不味いかなって…!」
きつく瞼を閉じ、シュドネアの姿を見ないようにする。
いくら相手が魔物とはいえ、彼女は女の子だ。
ただの他人でしかないボクがシュドネアの素肌を見てしまうのは、なにかいけない気がした。
「おやおや…………」
「あっ、力技で目を開けさせようとするんじゃ………ちょっ、強い強いっ!?」
瞼の上に指が触れ、無理矢理にこじ開けようとしてくる。
「まったく。ほら、見えなければちゅっちゅっ出来ませんよ?」
「『ちゅっちゅっ』とか言わないでよ、恥ずかしい」
なにが「ちゅっちゅっ」だ。
なにが悲しくて乳首に吸いつかなけばならないのか。
今ボクは、貧民に生まれた我が身の不幸を本気で呪っている。
くそぅ………富裕層に生まれていればこんな恥ずかしい目には……!
「ほらほら、その目を開けて、私を見てください」
「でも…………」
「私は、貴方を拒みません…♡さぁ、私を、よく見てください……♡」
「っ……」
そうやって色っぽく囁かれると、なぜだかシュドネアを見たいという欲望がふつふつと湧いくる。
彼女は今、どのような姿をしているのだろうか?
衣服の下、彼女の本当は、どんな姿なのだろうか?
見たい、見たい、見たい。
好奇心とは違う、もっと暗くてゾクゾクとした衝動で脳が侵されていく。
「うぅ………………目、開けるよ」
「ええ、どうぞ…♡ご覧ください…♡」
衝動を抑えきれず、おそるおそる目を開く。
目の前にあったのは、白くてきめ細かな素肌。
小さな胸と、その頂点で勃ったピンク色の乳頭。
どうしようもなく色香を纏った、白い淫魔の姿がそこにあった。
「どうですか、エノ…♡私の身体…♡」
ほんのりと頬を赤く染めて、どこか潤んだ瞳でボクを見つめて、シュドネアが感想を求めてくる。
「……綺麗で、かわいいよ」
「っ♡」
率直な感想を伝えると、シュドネアの表情が綻んだ。
とても嬉しそうな、とても幸せそうな、そんな顔を見せてくる。
「ねぇ、もっと……聞かせてください…♡」
「えぇ……なんか恥ずかしいっていうか……」
「お願いします…♡もっと、エノに褒めて欲しいです…♡」
こうやって懇願されると、どうしてか断る気になれない。
なにか、シュドネアの良いように操られているような気分だが、それでも悪い気はしなかった。
そうしてボクは、滅茶苦茶恥ずかしかったが、どうにか感想を述べることにした。
「…肌が白くて、きめ細かくて綺麗だと思う。おへそがなんか可愛らしいし……む、胸も控えめでかわいくて…その、乳首も……ええと、色っぽいよ」
なんの拷問だ。
顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
「ああ、やはり。貴方の褒められると、私……っ♡」
そんなボクとは反対に、シュドネアは容姿を褒められて悦に浸っている。
「もういいですかね?リリム的には合意ですよね?襲っても問題ありませんね?」
「ノー!ノー、ノー、ノー!!」
何を言っているのかは分からないが、なにやら不穏な気配を感じたので全力で静止する。
「むぅ……まぁ、仕方がありません。焦らされていると、そう思うようにしましょう」
どこか不服そうではあるものの、シュドネアは停止してくれた。
「本日は、あくまで栄養補給。授乳だけ。ええ、そうですね」
するり。シュドネアの細い腕が、ボクの後頭部に回される。
「さぁ……私を食べてください……♡」
ぐっ、っと腕に力が入り、シュドネアの胸に引き寄せられる。
「っあ………!」
瞬間、甘い匂いが鼻孔をくすぐった。
花とか香水とかの匂いじゃない。もっと純粋で、女性特有のそれ。
言うならば、“シュドネアの匂い”。
それを嗅いでいると、少しずつ理性が蕩けていくような……そんな気分になっていく。
「ふふっ♡遠慮なさらずに……♡」
最早ボクはどうすることもできない。
そうしてボクは意を決して、シュドネアのピンと勃った乳頭を口に含んだ。
「ひゃんっ♡♡」
乳首に口をつけた瞬間、シュドネアが可愛い声を上げた。
「す、すいません……こんなに感じるとは、思っていなくて…♡」
そう言うシュドネアは、内股をもじもじと擦り合わせて、どこか落ち着かない様子だった。
「あの……嫌では、ありませんから…♡エノの思うように、シテ、ください……♡」
この場合、はたしてボクはどうするのがいいのだろうか。
このまま吸いつくことが正しいのか、あるいはここでやめるべきなのか。
もうボクには何も分からない。
「………じゃあ、するよ」
分からないが、ボクはシュドネアの言う通りにすることを選んだ。
おずおずと、彼女の乳首を吸っていく。
「んんっ……♡はぁ……っ♡んぁっ♡」
乳首が吸い上げられると、シュドネアは悩ましい声を上げ始める。
「んっ♡そうやって吸われると、私っ……♡♡」
彼女の感じ入った声を聞いていると、こちらも変な気になりそうだ。
やめよう、深く考えないようにしよう。
今のボクは赤ちゃんだ。母乳を飲ませてもらってる赤ちゃんだ。
深く考えるな。赤ちゃんが“変な気”なんて起こすだろうか?
起こさない。なぜなら赤ちゃんだから。ボクもそうだ。
(母乳、出ない………)
カオスに突入しつつある思考を振り切ろうと、おっぱいのことを考える。
当初ボクは、ちょっと吸ったらミルクが出てくるものだと思っていた。
だが現実は違ったようで、シュドネアの乳首からは母乳が全く出てこない。
どうしよう、とりあえず刺激したらなにか変わるかな。
クソ真面目にボクはなにを考えているんだ………?
ともかく、早く母乳を飲まないとこの時間は終わらない。
ならば、手段を選んでなどいられないのではないだろうか。
「…………ひゃぁぁっ♡」
ただ吸いつくだけでなく、舌で乳頭を舐めてみる。
すると、シュドネアが甲高い声を上げ始めた。
「それっ♡ぺろぺろ、やぁ…っ♡きもちいいっ♡」
硬くて、どこか甘い乳首を舐め転がすたびに、シュドネアの身体がびくびくと跳ねる。
「んんっ♡舌でコリコリされたら…っ♡♡ひうっ♡♡」
舐めたり、舌先でつついたり、吸ったり。
乳首を弄り続ければ、彼女の口から甘ったるい声が漏れてくる。
でも、母乳は出てこない。
これではまだ足りないのだろうか。
ならばもっと強い刺激をと。
ボクは優しく、その硬くなった乳首を噛んだ。
「ひゃぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡♡」
噛まれるのが良かったらしく、シュドネアの身体が大きく震える。
「あっ♡そんなにしたらっ♡♡」
痛くないようにフニフニと歯で挟んで刺激していく。
どうやらシュドネアはこれが好きみたいで、一つ甘噛みされるごとに身をよじった。
………けど、動かれるとやりにくい。
「え?……やぁぁっ♡抱き寄せるのっ♡だめですぅっ♡」
両腕を背中に回し、シュドネアを抱き寄せる。
これで彼女は逃げられない。
「んぁっ♡♡ひぃぃんっ♡私、もう…っ♡♡」
しっかりと抱きしめ、集中的に乳頭を刺激していく。
舌を押し当て、潰すように這わせたり。根本を舌先で擦ったり。ときどき、軽く噛んであげたり。
そうやって、シュドネアから官能を引き出していく。
「きちゃう…っ♡乳首だけで、イッちゃいますぅ…っ♡♡だめぇ…♡♡」
辛抱たまらないと言うかのように、びくびくと震えるシュドネア。
その乳首を、最後に優しく噛む。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ♡♡♡」
絶頂に達したシュドネアが、大きくのけ反って跳ねる。
瞬間、その乳頭から母乳が噴き出した。
口いっぱいに、甘くて、こってりとしたミルクの味が広がる。
今まで食べたなによりも美味しくて、幸せな味。
いつまでも飲んでいたくなるような幸福感に包まれる優しい味だった。
「はぁーっ♡はぁーっ♡胸だけで、イかされちゃいました…♡♡」
肩で息をするシュドネアが、うっとりと蕩けた顔でボクを見つめてくる。
「あんっ♡……ふふっ、そんなに吸って…♡エッチな赤ちゃんですね♡」
そう言って彼女は、自らの胸を吸って噴き出した母乳を飲むボクの頭を優しく撫でる。
「そんなにちゅうちゅうして…♡私のミルク、美味しいんですか…♡」
「ん………」
今やボクは、母乳の味に夢中だった。
ずっと胸を吸い上げて、溢れる液体をこくこくと喉に流し込んでいく。
もうこのまま、ずっとこのまま。
なにも考えず、シュドネアに抱き着いて、おっぱいを飲ませてもらいたい。
などと人間として終わったような思考さえ浮かんでくる。
「ふふっ♡いいんですよ、ずっとこのままでも♡だって、気持ちいですもの♡♡」
そんなボクを見透かすかのように、シュドネアが優しく声をかけてきた。
腕と羽でふわりとボクを包んで、堕落へと誘うその姿。
彼女がリリムである所以を、垣間見たような気がした。
「………おや、おねむですか?」
そうやって優しく抱きしめられると、なんだか眠くなってきた。
久しぶりにお腹いっぱいになって、安らかな心地になったからだろうか。
「もう、このまま眠っちゃいましょうか♡私がずぅっと、こうしていてあげますから…♡」
ああ、多幸感が胸いっぱいに溢れてくる。
シュドネアにこうされるのが、ボクはひたすらに好きなのだろう。
こうやって彼女に抱きしめられ、優しく声をかけられると、ただそれだけで心が温かくなる。
「………おやすみ、シュドネア」
「はい、おやすみなさい、エノ♡」
そうしてシュドネアに言われるがまま。
彼女に抱き着き、胸に顔を埋めたまま。
ボクの意識は、暗闇に落ちていった。
20/12/02 07:46更新 / めがめすそ
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