第4話 執事の姉妹
勇者一行の奇襲から数日ようやく目的地に到着した。
ここプルミエは魔界都市レスカティエへ繋がる通路の一つで、交易都市として栄えている町である。
ここの町長にリリムが嫁いだと知らせを受けていたので、デルエラ様の次に尋ねる姉妹に選んだのだ。
この町はレスカティエとは違い明緑魔界だから昼間は太陽が上がり、夜は月が上がる。
レスカティエの近くで中々珍しい都市である。
この町は入る為に城門で手続きをして入り、あとはリリム様の元に訪れるだけだ。
訪れるだけなんだが…。
「…一体どこに行ったんだ?」
ヘカテーが迷子になってしまった。
理由は、人混みに紛れてしまったという事と、ヘカテーが興味が様々なところに行ってしまい見失ってしまった事が原因である。
「全く、さっそくこのコンパスの出番ですか」
そういうと、リリムの居場所を指し示すコンパスを取り出すと、そのコンパスにヘカテーの魔力を込めた。
すると、コンパスは俺の後ろを指した。
針の振れ具合を見ると、それほど離れていないようだ。
これならすぐに見つかると思い、針の指す方向を振り向いた。
すると、その先に人だかりが出来ていた。
しかも、その集団の中から「おりゃー!!」や「とりゃー!!」といった聞きなれた声が聞こえる。
確信をもって、その集団の中に入っていくと、ヘカテーが輪投げの屋台で遊んでいた。
一心不乱に、楽しそうに…。
「ヘカテー?何しているの…?」
「あっ、ロイ。ねぇねぇ、あれ見て!!」
そういって、指を指す方向を見てみると、輪投げの商品で掌大の小さな熊のぬいぐるみがあった。
どうやらそれを狙っているようだ。
「あれ、すごく可愛くない!?」
「うん、可愛いね。でもね、俺はそれを言いたいんじゃないだ」
「もしかして、ロイはあっちのワンちゃんの方がいい?」
そういって、熊のぬいぐるみの隣にある犬のぬいぐるみを指さすヘカテー。
「うん。あっちも可愛いね。でも、そうじゃないだ」
「あ、もしかして、反対側のリスの方が良かった?あっちも可愛いよね」
「そろそろ、話を聞け!!」スパーン!!
「ひぶっ!!」
テンションが高くなりすぎて暴走を始めたヘカテーにおなじみのハリセンで突っ込みを入れた。
あまりにも素早くハリセンを叩きこんでしまったため、周りのギャラリーからは「おぉ〜」と感嘆の声が上がった。
「さぁ、早くいくよ」
「ま、待って!!せめて、あのクマさんだけ!クマさんだけ取らせて!!」
「そいっ!!」
ごねるヘカテーが欲しがるクマのぬいぐるみ目掛けて、ヘカテーが持っていた輪を投げると、きれいな放物線を描いてクマのぬいぐるみに入った。
それを見て、ギャラリーから再び感嘆の声が上がった。
「店主さん。それ頂けますか?」
「あ、ああ。ほら、もっていきな」
そう言って、渡されたクマのぬいぐるみを受け取った。
「ほら、ヘカテーこれあげるから行くよ」
「わーい!ロイからのプレゼントだ!!」
と、心底嬉しそうに受け取ったクマのぬいぐるみを抱きしめた。
喜んでくれたのは凄くうれしいけどさ、そういうのは自分で取った方がうれしいものでは?
まぁ、いいか。今は仕事を優先させよう。
そして、嬉しそうにするヘカテーを連れてこの町にいるリリム様の許へ行くことにした。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
さて、町の人にリリム様の事を聞くと町の中央にある屋敷にいるそうだ。
コンパスの指す方向とも合っているし、間違いは無いようだ。
さて、教えてもらった通りに進んだところ大きな屋敷があった。
周りの建物に比べると数倍の大きさもあってすごい存在感がある。
他の町の住人も出入りしているところを見ると住居だけでなく役所としても利用しているようだ。
「ここに私の妹がいるのね」
「ええ、ここにリリム様がいらっしゃいます。というか、姉妹の魔力位感じないの?」
「リリムの魔力は分かるけど、ロイに教えて貰いたかっただけよ♪」
嬉しそうに私の腕に抱きつきながらそう言うヘカテー。
不覚にもドキッとしてしまった。
「そう。それじゃあ、会いに行こうか」
「うん!」
そう言って、ヘカテーを連れて建物の中に入っていった。
建物に入ると受付をしていたアヌビスに魔王様からの使いという事と、この町のリリム様に面会しに来た旨を伝えると、驚いて少し犬に戻ってしまったが、何とか面会まで話を進めてくれた。
隣で業務を行っていたのがこのアヌビスの夫だったらしく、犬に戻ったアヌビスが襲いかかってしまった。
何とか私のシャドー・プラントで抑えることができたが、まさか、こんな所でシャドー・プラントを使うとは思わなかったよ…。
さて、そんなトラブルはあったが、今は面会室で物凄くソワソワしているヘカテーと共に待機している。
自分の妹に会うだけなのになんでそんなに緊張しているのだろう。
「お待たせしました。私がこの町の長をしている『エルス=フェールス』です」
「そして、私がエルスの妻の『ティナ』よ。お久しぶりね。ロイ義兄さん、ヘカテーお姉ちゃん」
しばらく待っていると、扉が開きお目当ての人物が現れた。
この町の町長でもあり、リリム様の夫でもあるエルス様。
そして、エルス様の妻にして、魔王皇女第12代目のティナ様である。
「ティナ様、エルス様、お久しぶりです」
「ティナちゃんお久しぶり〜!!!」
「ヘカテーお姉ちゃん久しぶり!!!」
そういって、ヘカテーとティナ様はお互いの手を握りしめながら跳ねる。
この二人は魔王城にいた時から仲が良かったからな〜。
まぁ、ヘカテーは基本他の姉妹と仲は良かったけど。
「今日はどうしたの?」
「今日はね。ロイがお母さんから頼まれた仕事の付添できたのよ」
「お母さまからの仕事?それって何?」
ヘカテーが作ってくれたきっかけを使い、ティナ様に魔王様からの手紙を渡すことにした。
「ティナ様、こちらが魔王差からの手紙でございます」
「ありがとう」
そういって、魔王様からの手紙を手渡すと、さっそく封を切り中身を確認し始めた。
しばらく読み進めると、嬉しそうに頬を緩めた。
「ティナちゃん。お母さんはなんて?」
「『いつでもいいから帰っていらっしゃい』って。あと、『孫が出来たら教えてね』だってさ」
なんというか魔王様らしいことだね。
子を心配する母親の母性がにじみ出てる。
「まぁ、大半が『夫との営みを見せ会いっこしましょう』っていうのなんだけどね」
…本当に魔王様らしいな…。
「あはは、本当にお母さんらしいね。それじゃあ…」
そういうと、ねっとりとした視線をこちらに送ってきた。
あ、嫌な予感…。
「私たちと見せ合いっこ(スワッピング)しましょう!!」
「絶対に言うと思ったよ!!」スパーン!!
嫌な予感が的中してしまい、思わず突っ込みを入れてしまった。
リリム、というか魔物娘の事を考えるとこんな提案が出るのは分かっていた。
期待を裏切らないところは流石としか言いようがない。
「うぅ…。ダメ…?」
「ダメじゃないけど、やめてくれ」
俺の秘密を知っているならなおさらだ。
「えぇ〜。ティナちゃん達はいいよね」
「私はいいよ〜!!エルスはいいよね」
すると、エルス様も『俺もいいよ』と承諾の返事を返してきた。
エルス様が承諾をしたのと同時にヘカテーがドヤ顔で私の方を見てきたので、とりあえず一発ハリセンで叩いておいた。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
そして、その日の晩。
俺はティナ夫妻の自宅の寝室にいた。
二人掛けのソファーにヘカテーと座っていた。
その向かいには、ティナ夫妻がベッドに下着姿で腰掛けていた。
「えへへ、なんかドキドキするね」
「そうだね。裸はお城にいた時に何度か見たけど、交わっている姿は見たことないもんね」
ヘカテーとティナが楽しそうに談笑する。
なんでこんな事になったのだろう…。
まぁ、理由は言わずともなんだがな…。
数の暴力ってひどいよね…。
「ねぇ、そろそろ始めましょう。エルスもいっぱい気持ちよくしてあげるね」
「ありがとう。なら、私もティナをいっぱい感じさせてあげるね」
すでにあっちは始める気満々である。
ヘカテーも顔を真っ赤にして発情しきった表情をしている。
「ところで、ロイ義兄さん。なんでシャツ着ているの?」
と、そんな時、ティナが俺の格好が不服だったのか抗議の声を上げてきた。
それもそうだろう。今この場で下着姿じゃないのは俺だけだ。ヘカテーもピンク色の下着姿で俺の腕に抱きついているのだ。
この場での俺の格好は場違いなのだろう。
「裸を見られるのはあまり好きじゃないんだ」
「お城でもそうだったけど、今は私とエルス、ヘカテーお姉ちゃんしかいないんだよ。恥ずかしがらずに裸になった方がいいよ♥」
と、手をワキワキさせながらそんな事を言ってきた。
一理あるようなことを言っていても、ただ俺の裸が見たいだけであろう。
魔王城にいた時でも、ヘカテー以外に裸は見せたくなかったからな…。
「それでも、ヘカテー以外に裸は見せたくないんだ」
「むぅ…、脱ぎたくないのなら、私が剥いでやる!!」
そういうと、俺に向かって飛びかかってきた。
「ちょっ!!」
いきなりのティナの襲撃に体を硬直させてしまった。
「ティナちゃん!!」
だが、そんな時に助けてくれたのがヘカテーだった。
とびかかってきたティナを少し険しい表情で受け止めた。
「ティナちゃん。ロイが嫌な事をなんで無理やりやろうとするの?」
「無理やりじゃないよ。正直になれないロイ義兄さんを手伝ってあげようとしただけよ」
「それがだめなの。ティナちゃん、今貴女がしようとしたことはロイを悲しませることよ。ティナちゃんは血は繋がっていないけど、自分の兄妹を悲しませる悪い子なの?」
口調自体は優しいが、しっかり相手を責めるように言葉を紡ぐヘカテー。
こういう時はしっかりとしたお姉さんになるから不思議である。
「でも、秘密にすると知りたくなるわよね」
ティナを抱きしめて説教をしていたヘカテーはティナを離すと俺のところへやってきた。
そして、何を思ったのか、俺の来ていたシャツをめくりあげティナ達に俺の腹部を見せた。
「なっ!!」
「え…、これって…」
「痣?いや、これは…」
ヘカテーの行動に驚いたが、ティナとエルスは俺の左腹部にあるものを見て驚いていた。
ティナとエルスが驚いて見つめる俺の左腹部には円形の痣がある。
これはただの痣じゃない。『“出来損ないの”吸収のルーン』なのである。
普通のインキュバスでは不可能な特定の魔物の魔力の行使が出来るのはこれが理由である。
「分かった。ロイはね、これを他の人に見せたくないの。それは私達家族にもね」
そういって、めくり上げたシャツを元に戻し、唖然とする俺を優しく抱きしめた。
「ごめんね。でも、これはロイの為でもあるのよ」
ヘカテーが俺の耳元でそんな風に囁いた。
「ティナちゃん。分かった?だから、ロイを脱がすのは止めてね。あと、エルスさんもだけどこの事は他言無用でね♥」
ティナ達へウインクをしてそういうヘカテーであったが、その言葉には逆らえない威圧感があったと、のちにティナは語っていた。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
その後、ヘカテーが『さぁ、しんみりした空気は終わりにして見せ合いっこ(スワッピング)を始めましょう!!ティナちゃん達に私とロイの愛の深さを教えてあげる!!』と言って、スワッピングの開始。
先ほどまでとは打って変わってピンク色の雰囲気でお互いにお互いの交わりを見せながら交わった。
誰かがいる中でやる交わりは中々に燃えるものがあった。
言葉には出さないが機会があったら、またやってみようかと思う。
「では、お世話になりました」
「また、この町に寄る事がありましたら是非遊びに来てくださいね」
「ティナちゃん。またね〜!」
「ヘカテーお姉ちゃん、元気でね!」
この町での用事も終わらせたので、次の町へ旅立つことにした。
私たちは別れの挨拶をすると、次の町へ向かって出発した。
ティナ様は私とヘカテーの姿が見えなくなるまで手を振っていた。
エルス様もその隣で少し寂しそうに見守っていた。
「ねぇ、次の町はどれくらいで着くの?」
「約1週間で着くよ。でも、途中にある町に寄るから食糧は気にしなくていいよ」
もしかしたら、その途中でリリム様に会うかもしれないけどね。
もし、他の姉妹に会ったら数日伸びるかもしれないが、問題はないだろう。
「食べ物はロイの精子があれば大丈夫よ♥」
「それじゃあ、ヘカテーは私の料理は食べたくないの?」
「そんな事ないよ!!ロイのご飯食べたいよ〜!!」
と、少し意地悪なことを言ってみると、頭を左右にブンブン振って否定してくれた。
「冗談だよ」
クスクスと笑いながらヘカテーの頭を撫でてあげた。
気持ち良さそうにされるがままになるヘカテー。
「えへへ、ロイの手はやっぱりあったかいね」
「手が温かい人って心が冷たいらしいよ」
「なら、それはガセネタだね。こんなにあったかいロイが冷血なんてないもん」
撫でていた私の手を宝物のように手で包んでそんなことを言ってきた。
ちょっと恥ずかしいけど、ここまで信用してくれると嬉しいな。
「ロイ。だ〜い好き♥」
ド直球に、そして疑いようもなく好意をぶつけてくるこの天使のような悪魔と一緒に次の町への旅を再開させた。
ここプルミエは魔界都市レスカティエへ繋がる通路の一つで、交易都市として栄えている町である。
ここの町長にリリムが嫁いだと知らせを受けていたので、デルエラ様の次に尋ねる姉妹に選んだのだ。
この町はレスカティエとは違い明緑魔界だから昼間は太陽が上がり、夜は月が上がる。
レスカティエの近くで中々珍しい都市である。
この町は入る為に城門で手続きをして入り、あとはリリム様の元に訪れるだけだ。
訪れるだけなんだが…。
「…一体どこに行ったんだ?」
ヘカテーが迷子になってしまった。
理由は、人混みに紛れてしまったという事と、ヘカテーが興味が様々なところに行ってしまい見失ってしまった事が原因である。
「全く、さっそくこのコンパスの出番ですか」
そういうと、リリムの居場所を指し示すコンパスを取り出すと、そのコンパスにヘカテーの魔力を込めた。
すると、コンパスは俺の後ろを指した。
針の振れ具合を見ると、それほど離れていないようだ。
これならすぐに見つかると思い、針の指す方向を振り向いた。
すると、その先に人だかりが出来ていた。
しかも、その集団の中から「おりゃー!!」や「とりゃー!!」といった聞きなれた声が聞こえる。
確信をもって、その集団の中に入っていくと、ヘカテーが輪投げの屋台で遊んでいた。
一心不乱に、楽しそうに…。
「ヘカテー?何しているの…?」
「あっ、ロイ。ねぇねぇ、あれ見て!!」
そういって、指を指す方向を見てみると、輪投げの商品で掌大の小さな熊のぬいぐるみがあった。
どうやらそれを狙っているようだ。
「あれ、すごく可愛くない!?」
「うん、可愛いね。でもね、俺はそれを言いたいんじゃないだ」
「もしかして、ロイはあっちのワンちゃんの方がいい?」
そういって、熊のぬいぐるみの隣にある犬のぬいぐるみを指さすヘカテー。
「うん。あっちも可愛いね。でも、そうじゃないだ」
「あ、もしかして、反対側のリスの方が良かった?あっちも可愛いよね」
「そろそろ、話を聞け!!」スパーン!!
「ひぶっ!!」
テンションが高くなりすぎて暴走を始めたヘカテーにおなじみのハリセンで突っ込みを入れた。
あまりにも素早くハリセンを叩きこんでしまったため、周りのギャラリーからは「おぉ〜」と感嘆の声が上がった。
「さぁ、早くいくよ」
「ま、待って!!せめて、あのクマさんだけ!クマさんだけ取らせて!!」
「そいっ!!」
ごねるヘカテーが欲しがるクマのぬいぐるみ目掛けて、ヘカテーが持っていた輪を投げると、きれいな放物線を描いてクマのぬいぐるみに入った。
それを見て、ギャラリーから再び感嘆の声が上がった。
「店主さん。それ頂けますか?」
「あ、ああ。ほら、もっていきな」
そう言って、渡されたクマのぬいぐるみを受け取った。
「ほら、ヘカテーこれあげるから行くよ」
「わーい!ロイからのプレゼントだ!!」
と、心底嬉しそうに受け取ったクマのぬいぐるみを抱きしめた。
喜んでくれたのは凄くうれしいけどさ、そういうのは自分で取った方がうれしいものでは?
まぁ、いいか。今は仕事を優先させよう。
そして、嬉しそうにするヘカテーを連れてこの町にいるリリム様の許へ行くことにした。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
さて、町の人にリリム様の事を聞くと町の中央にある屋敷にいるそうだ。
コンパスの指す方向とも合っているし、間違いは無いようだ。
さて、教えてもらった通りに進んだところ大きな屋敷があった。
周りの建物に比べると数倍の大きさもあってすごい存在感がある。
他の町の住人も出入りしているところを見ると住居だけでなく役所としても利用しているようだ。
「ここに私の妹がいるのね」
「ええ、ここにリリム様がいらっしゃいます。というか、姉妹の魔力位感じないの?」
「リリムの魔力は分かるけど、ロイに教えて貰いたかっただけよ♪」
嬉しそうに私の腕に抱きつきながらそう言うヘカテー。
不覚にもドキッとしてしまった。
「そう。それじゃあ、会いに行こうか」
「うん!」
そう言って、ヘカテーを連れて建物の中に入っていった。
建物に入ると受付をしていたアヌビスに魔王様からの使いという事と、この町のリリム様に面会しに来た旨を伝えると、驚いて少し犬に戻ってしまったが、何とか面会まで話を進めてくれた。
隣で業務を行っていたのがこのアヌビスの夫だったらしく、犬に戻ったアヌビスが襲いかかってしまった。
何とか私のシャドー・プラントで抑えることができたが、まさか、こんな所でシャドー・プラントを使うとは思わなかったよ…。
さて、そんなトラブルはあったが、今は面会室で物凄くソワソワしているヘカテーと共に待機している。
自分の妹に会うだけなのになんでそんなに緊張しているのだろう。
「お待たせしました。私がこの町の長をしている『エルス=フェールス』です」
「そして、私がエルスの妻の『ティナ』よ。お久しぶりね。ロイ義兄さん、ヘカテーお姉ちゃん」
しばらく待っていると、扉が開きお目当ての人物が現れた。
この町の町長でもあり、リリム様の夫でもあるエルス様。
そして、エルス様の妻にして、魔王皇女第12代目のティナ様である。
「ティナ様、エルス様、お久しぶりです」
「ティナちゃんお久しぶり〜!!!」
「ヘカテーお姉ちゃん久しぶり!!!」
そういって、ヘカテーとティナ様はお互いの手を握りしめながら跳ねる。
この二人は魔王城にいた時から仲が良かったからな〜。
まぁ、ヘカテーは基本他の姉妹と仲は良かったけど。
「今日はどうしたの?」
「今日はね。ロイがお母さんから頼まれた仕事の付添できたのよ」
「お母さまからの仕事?それって何?」
ヘカテーが作ってくれたきっかけを使い、ティナ様に魔王様からの手紙を渡すことにした。
「ティナ様、こちらが魔王差からの手紙でございます」
「ありがとう」
そういって、魔王様からの手紙を手渡すと、さっそく封を切り中身を確認し始めた。
しばらく読み進めると、嬉しそうに頬を緩めた。
「ティナちゃん。お母さんはなんて?」
「『いつでもいいから帰っていらっしゃい』って。あと、『孫が出来たら教えてね』だってさ」
なんというか魔王様らしいことだね。
子を心配する母親の母性がにじみ出てる。
「まぁ、大半が『夫との営みを見せ会いっこしましょう』っていうのなんだけどね」
…本当に魔王様らしいな…。
「あはは、本当にお母さんらしいね。それじゃあ…」
そういうと、ねっとりとした視線をこちらに送ってきた。
あ、嫌な予感…。
「私たちと見せ合いっこ(スワッピング)しましょう!!」
「絶対に言うと思ったよ!!」スパーン!!
嫌な予感が的中してしまい、思わず突っ込みを入れてしまった。
リリム、というか魔物娘の事を考えるとこんな提案が出るのは分かっていた。
期待を裏切らないところは流石としか言いようがない。
「うぅ…。ダメ…?」
「ダメじゃないけど、やめてくれ」
俺の秘密を知っているならなおさらだ。
「えぇ〜。ティナちゃん達はいいよね」
「私はいいよ〜!!エルスはいいよね」
すると、エルス様も『俺もいいよ』と承諾の返事を返してきた。
エルス様が承諾をしたのと同時にヘカテーがドヤ顔で私の方を見てきたので、とりあえず一発ハリセンで叩いておいた。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
そして、その日の晩。
俺はティナ夫妻の自宅の寝室にいた。
二人掛けのソファーにヘカテーと座っていた。
その向かいには、ティナ夫妻がベッドに下着姿で腰掛けていた。
「えへへ、なんかドキドキするね」
「そうだね。裸はお城にいた時に何度か見たけど、交わっている姿は見たことないもんね」
ヘカテーとティナが楽しそうに談笑する。
なんでこんな事になったのだろう…。
まぁ、理由は言わずともなんだがな…。
数の暴力ってひどいよね…。
「ねぇ、そろそろ始めましょう。エルスもいっぱい気持ちよくしてあげるね」
「ありがとう。なら、私もティナをいっぱい感じさせてあげるね」
すでにあっちは始める気満々である。
ヘカテーも顔を真っ赤にして発情しきった表情をしている。
「ところで、ロイ義兄さん。なんでシャツ着ているの?」
と、そんな時、ティナが俺の格好が不服だったのか抗議の声を上げてきた。
それもそうだろう。今この場で下着姿じゃないのは俺だけだ。ヘカテーもピンク色の下着姿で俺の腕に抱きついているのだ。
この場での俺の格好は場違いなのだろう。
「裸を見られるのはあまり好きじゃないんだ」
「お城でもそうだったけど、今は私とエルス、ヘカテーお姉ちゃんしかいないんだよ。恥ずかしがらずに裸になった方がいいよ♥」
と、手をワキワキさせながらそんな事を言ってきた。
一理あるようなことを言っていても、ただ俺の裸が見たいだけであろう。
魔王城にいた時でも、ヘカテー以外に裸は見せたくなかったからな…。
「それでも、ヘカテー以外に裸は見せたくないんだ」
「むぅ…、脱ぎたくないのなら、私が剥いでやる!!」
そういうと、俺に向かって飛びかかってきた。
「ちょっ!!」
いきなりのティナの襲撃に体を硬直させてしまった。
「ティナちゃん!!」
だが、そんな時に助けてくれたのがヘカテーだった。
とびかかってきたティナを少し険しい表情で受け止めた。
「ティナちゃん。ロイが嫌な事をなんで無理やりやろうとするの?」
「無理やりじゃないよ。正直になれないロイ義兄さんを手伝ってあげようとしただけよ」
「それがだめなの。ティナちゃん、今貴女がしようとしたことはロイを悲しませることよ。ティナちゃんは血は繋がっていないけど、自分の兄妹を悲しませる悪い子なの?」
口調自体は優しいが、しっかり相手を責めるように言葉を紡ぐヘカテー。
こういう時はしっかりとしたお姉さんになるから不思議である。
「でも、秘密にすると知りたくなるわよね」
ティナを抱きしめて説教をしていたヘカテーはティナを離すと俺のところへやってきた。
そして、何を思ったのか、俺の来ていたシャツをめくりあげティナ達に俺の腹部を見せた。
「なっ!!」
「え…、これって…」
「痣?いや、これは…」
ヘカテーの行動に驚いたが、ティナとエルスは俺の左腹部にあるものを見て驚いていた。
ティナとエルスが驚いて見つめる俺の左腹部には円形の痣がある。
これはただの痣じゃない。『“出来損ないの”吸収のルーン』なのである。
普通のインキュバスでは不可能な特定の魔物の魔力の行使が出来るのはこれが理由である。
「分かった。ロイはね、これを他の人に見せたくないの。それは私達家族にもね」
そういって、めくり上げたシャツを元に戻し、唖然とする俺を優しく抱きしめた。
「ごめんね。でも、これはロイの為でもあるのよ」
ヘカテーが俺の耳元でそんな風に囁いた。
「ティナちゃん。分かった?だから、ロイを脱がすのは止めてね。あと、エルスさんもだけどこの事は他言無用でね♥」
ティナ達へウインクをしてそういうヘカテーであったが、その言葉には逆らえない威圧感があったと、のちにティナは語っていた。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
その後、ヘカテーが『さぁ、しんみりした空気は終わりにして見せ合いっこ(スワッピング)を始めましょう!!ティナちゃん達に私とロイの愛の深さを教えてあげる!!』と言って、スワッピングの開始。
先ほどまでとは打って変わってピンク色の雰囲気でお互いにお互いの交わりを見せながら交わった。
誰かがいる中でやる交わりは中々に燃えるものがあった。
言葉には出さないが機会があったら、またやってみようかと思う。
「では、お世話になりました」
「また、この町に寄る事がありましたら是非遊びに来てくださいね」
「ティナちゃん。またね〜!」
「ヘカテーお姉ちゃん、元気でね!」
この町での用事も終わらせたので、次の町へ旅立つことにした。
私たちは別れの挨拶をすると、次の町へ向かって出発した。
ティナ様は私とヘカテーの姿が見えなくなるまで手を振っていた。
エルス様もその隣で少し寂しそうに見守っていた。
「ねぇ、次の町はどれくらいで着くの?」
「約1週間で着くよ。でも、途中にある町に寄るから食糧は気にしなくていいよ」
もしかしたら、その途中でリリム様に会うかもしれないけどね。
もし、他の姉妹に会ったら数日伸びるかもしれないが、問題はないだろう。
「食べ物はロイの精子があれば大丈夫よ♥」
「それじゃあ、ヘカテーは私の料理は食べたくないの?」
「そんな事ないよ!!ロイのご飯食べたいよ〜!!」
と、少し意地悪なことを言ってみると、頭を左右にブンブン振って否定してくれた。
「冗談だよ」
クスクスと笑いながらヘカテーの頭を撫でてあげた。
気持ち良さそうにされるがままになるヘカテー。
「えへへ、ロイの手はやっぱりあったかいね」
「手が温かい人って心が冷たいらしいよ」
「なら、それはガセネタだね。こんなにあったかいロイが冷血なんてないもん」
撫でていた私の手を宝物のように手で包んでそんなことを言ってきた。
ちょっと恥ずかしいけど、ここまで信用してくれると嬉しいな。
「ロイ。だ〜い好き♥」
ド直球に、そして疑いようもなく好意をぶつけてくるこの天使のような悪魔と一緒に次の町への旅を再開させた。
13/12/09 03:23更新 / ランス
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