二輪の雑貨屋と襲撃の来訪者
Μタマゴの里Μ
Μ初太視点Μ
「女の人がバイクを運転していたのか」
「初太、紹介するよ、雑貨屋の店主フルーフさん、サイドカーに乗車してるのは夫のエイスさん。二人はばいくに乗って、他の町から商品の仕入れ及び運送をしているよ」
「マドラちゃん、そっちの男女三人組は?……眼鏡の男女は精と魔力から察するに夫婦、もう一人からはマドラちゃんの魔力を感じる」
「フルーフさん紹介するよ、ぼくの夫の初太と、初太の親友の平也さんと満知子さん」
「夫……そうか、ようやくマドラちゃんも……これでひと安心だな」
「フルーフさん、ぼく達は丁度雑貨屋に行こうとしてたの」
「そうなのか、私も帰ってきたところだから共に雑貨屋に行こうではないか」
Μ雑貨屋Μ
「ここが雑貨屋か」
「キノコの形をした建物に雑貨屋の看板が掛けられてるわね」
「おい、隣の車庫らしき空間にスクーターが二台駐車されてるぞ」
「ピンクとシアンのスクーターなのね」
「それはルーメとメートの愛車だよ。近くの町へ配達するときに使用するんだ」
「ルーメとメート?」
「僕達の妹と弟だよ。店番を担当してるよ」
「ただいま帰ったぞー」
「お帰り、お姉ちゃん」
「ただいま、二人共」
「お帰り、兄さん」
「ヘルメットを被った店員夫妻だとぉ!」
「へーくん驚きすぎ、といいたいけどアタシもびっくりしたわ。フルフェイスヘルメット夫妻と交通用ヘルメット夫妻だから」
「紹介するよ、私の妹、ルーメだ」
「僕の弟のメートだよ」
「今日はマドラさんの誘いで買物に来ました。あの、ここに食料品はありますか?」
「マーチヘアのお姉さんが好む発情効果が高いものが揃ってるよ」
「おおっ、ヤッター、今夜は激しい夜になりそうだー♪」
「へーくん、アタシの声真似しないで、明日は仕事なのよ」
「えーっ」
「媚薬成分が無い普通の食料品をお願いします」
「勿論媚薬無しの食料品もあるよ、媚薬無しで激しく交わりたい夫婦が購入するよ」
「良かった」
「ほぉーまかいもチップスか」
「へーくんはそこら辺で暇を潰していいから」
「えーっ、そんな〜」
「おい平也、白いのがいっぱいあるぞ」
「初太の言うとおりだ、色が白い食料品ばかりだ」
「そこの陳列品は精補給剤を食べやすくした精補給食品だよ」
「エイスさん、精補給食品って?」
「グルメな女王様が、未婚の住民達の為に提案してくれた物だよ。不思議の国限定で作られた食料品が多い」
「エイスさん、このプラスチック製の牛乳瓶は?」
「それは精補給剤をミルク風に飲みやすくした甘さ控えめの『精乳』」
「精クリームとは違うのか」
「クリームだと甘すぎるから、この里の住民達は精乳を飲むんだよ」
「シチュールウのような白い固形物は?」
「それは家庭料理用の『精シチュー』」
「生キャラメルもあるのか。何故か形が楕円形だけど」
「睾丸を舐めるように精を補給する『精丸』」
「こっちは水飴とグミか」
「ネバネバした精液風の『精液飴』に、精液の塊の食感が味わえる『精液グミ』」
「アイスキャンデーもあるのか。見た目がタケリダケっぽいな」
「フェラ感覚で舐めるのが主流の『精殖キャンデー』」
「アイスだとすぐ溶けそうだな」
「大丈夫、冷凍魔術によって食べるまでは決して溶けることはなく、賞味期限もない」
「アイスに賞味期限が無いのは口に出さずとも知っている」
「確かにそうだね」
「粉末入りの瓶、まるで調味料だな」
「調味料としてちょい足しできる『精糖』と『精塩』だ。精の補給量は雀の涙だけど、料理の味を損なうことはない」
「白い物のフルコースだな」
「精液だからね」
Μ満知子視点Μ
「食料品以外にも品があるのね」
「姉さん達が他所から仕入れてきた限定商品や独自の技術で作った製品もあるんだよ」
「次は外部の商品を紹介しよう」
「タマゴの里から東にある、物流の町『ラピッドタウン』にあるサバト支部の発明品、掛けた状態で夫や妻を見ればマーチヘアのように妄想が膨らむ、三月眼鏡」
「アタシこれ知ってる、ブルーグさん自慢の発明品よ。アタシの色眼鏡とは真逆だけど」
「里から北にある、触手と眠りと精液の牧場『ソーンファーム』に住むドーマウスの魔力を栄養源にした、居眠花。磨り潰して紅茶に混ぜてよし、直に食べてドーマウスのように眠りながら番いに犯されてもよし」
「ドーマウスごっこが楽しめるのね」
「因みに雑貨屋で販売してる精補給食品の大半がその牧場で作られている」
「へぇー、未婚の魔物娘にとっては有難い場所ね」
「ジャバウォックの棲家の一つ『ジャーバレー』の大気から採取した、吹き掛ければ忽ち発情する、ブレスプレー」
「ジャバウォックのブレスと似た効果なのね」
「チェシャ猫の研修場、淫らな性交を憩いとする森林公園『酒池肉の森』で使用されている、チェシャ猫のように相手に言葉を吹き込める、吹き込メガホン」
「誘導に使えそうね」
「アンデッド属が多く住むお菓子と悪戯の街『トリックストリート』名物、夫婦で食べれば貴族と召使の関係になれるパイ菓子、ヴァンパイ」
「ヴァンパイアっぽくなれるのか」
「町外れにある吸血鬼の城の模型もあるぞ」
「吸血鬼の城?」
「吸血鬼が住む噂が流れる謎の古城さ」
「ジパング出身の住民が集う『寺欲静』の一品、味無し、媚薬無し、人気無し、三拍子揃った干菓子、禁欲落雁」
「媚薬無しだから、禁欲なのね」
「男子禁制魔物娘同士の楽園『小百合の花園』で実る夫婦の果実の赤い実だけを材料とした、赤百合飴」
「両端がキノコの形をして凄く卑猥……」
「常に甘いものが噴火し続ける火山が並ぶ『菓山地帯』から採取した粉砂糖、菓山灰」
「お菓子作りに最適ね」
「まるで海を泳いでるような浮遊感が楽しめる『天水浴場』限定、浮き綿飴。浮き輪代わりになるから金槌でも安心して天水浴を楽しめるし、綿飴として食べることも出来る」
「浮き輪の形をしてる、ふわふわしてるけど結構丈夫ね」
「どう?いい品揃えでしょう」
「これとこれをください」
「毎度、銀貨十枚だよ」
Μ初太視点Μ
「満知子、買物終わったか」
「うん、色々な物を見たわ」
「ふっふっふ、今までの序の口、本命はこれ、不思議美術館の土産物、導きの英雄フィギュア」
「「おおー」」
「芸術家夫妻が長年掛けて製作した限定品だぞ」
「やっと完成したのね」
「スゲー、見事な迄の再現性」
「きゃーフェイさま♪」
「凄いね、正に導きの英雄に恥じない姿だ」
「住民達だけで納得してないで、オレ達にも判るよう解説しろよ」
「そうよ、アタシ達は英雄の魅力を聞かれてもさっぱりなんだから」
「マドラ、説明してくれ。平也と満知子が困ってる、俺も含めて」
「ごめん初太、ついノリに乗って。実はぼくも詳しくは知らないんだよね」
「マドラも知らないの?」
「ぼくも後から住民になった方だから、フルーフさん達が詳しいよ」
「私達がフィギュアの解説をしてやろう」
「解説にするにあたってまず外せないのが、服装」
「魔物娘らしからぬ露出が少なめの服だな」
「露出も何も彼女は男装をしているのだよ」
「男装?マッドハッターでもないのに」
「彼女曰く、瞬時に行動できるからと、男性服を着用しているらしい」
「だから長ズボンを履いてるのか」
「更に長ズボンを取り外し可能で、外せばチャームポイントの生足が見られるぞ」
「木々を飛び移る足腰でがあるにも関わらず」
「細くて綺麗な足だったよね♪」
「無感情な表情だな」
「人形は無表情だが、夫を愛する乙女の顔を持つと言われてる」
「流石魔物娘だな」
「ただ、彼女をよく知る者だけが気付く微かな違いだそうだ」
「最後に忘れてはならないのが、彼女の両腕に備わった魔界鉄製の武器」
「鎌なのか」
「彼女が突撃すれば、それは金貨兵を一突きで倒す槍となる」
「槍?どう見ても鎌じゃないか」
「何ですって?」
「妹さん、顔近い近い」
「初太、それはルーメさんの地雷ワードだよ」
「そうなの?」
「ごめんね、初太は英雄をまだ知らないからさ」
「……マドラに免じて許すわ。次からは気を付けなさいよ」
「はい」
「ルーメは俺以上にフェイトさんを心酔してるからね」
「それも彼女が住民達を、未婚の魔物娘の襲撃から守ってくれた由縁だよ。住民達は静かな麗人に感謝し、彼女のように冷静さを保つ精神を持とうと誓った。それに伴い彼女の衣服に魅了された者も多く、男女問わず燕尾服を着用する風習が出来た」
「それが皆さんを導いてくれた英雄なのね」
「オレもその英雄に会いたくなってきたな〜」
「平也君、多分それは難しいと思うよ」
「そうなの?」
「彼女は夫や仲間達と共に元いた世界へと帰ったから」
「ふーん」
「今は彼女の意志を受け継いだ自警団がこの里を守ってくれるよ」
「おらぁー!」
「食い物をよこせー!」
「きゃあーっ」
「外が騒がしいな」
「行ってみよう」
Μ
「カウ、ベレ、何があった?」
「フルーフさん、兵士の徒党が里にやってきて」
「空腹で辛そうだったから食べ物を渡そうとしたら、急に暴れだして」
「オラァ!まともな食料寄越せ!」
「あの鎧は、討伐隊か」
「討伐隊?」
「来訪者の集まりだよ。どうやら一万人いるとか」
「一万人!?そんなに?」
「大半が不思議の国の色に染まったけどね」
「ただ、彼らは抵抗中の集団のようだ」
「このままだと被害がでるかもしれない」
「自警団が来るまで私達が足止めをしよう」
「フルーフさん達だけで足止め?相手は十数名もいるのよ」
「心配いらないさ、満知子ちゃん」
「こんな時こそ、仕入れてきた商品の出番だ」
「それは浮き綿飴」
「これを身体に嵌めて、ジャンプをすると」
「ルーメさんとメート君が宙に浮いたぞ」
「お姉ちゃん、メガホンを貸して」
「兄さん、スプレーを使わせてもらうよ」
「それで何するつもりだ?」
「平也君」
「百聞は一見にしかず」
「何だ?ジャバウォックっぽく飛翔してるぞ」
「ジャバウォックの息吹を食らえ」
「うわーあの時と同じブレスだ!」
「発情して狂ってしまう〜〜ムズムズしてきたよ〜〜」
『ムズムズしてきたのは、隣の男と気持ち良くなりたいよねー?』
「違う、これはスプレーのせいで、オマエラ空に浮いてないで、地上で戦え!」
『戦うといっても、男にムズムズを治めて貰わないと戦えないよー?』
「うっ、うぐぐ……」
『遠慮しないで襲っちゃいなよー咎めはしないからさー』
「えーい、どうにでもなれー」
「まて、襲うなー正気に戻れーっ」
「にゃん、にゃん、にゃおーん♪」
「チェシャ猫化したぞ」
「また一人狂ってしまった……」
「アアァァ魔王城を襲撃するはずが、変な国に飛ばされた挙句、仲間たちが次々と変になってゆくぅぅぅ!」
「落ち着けN-964、正気を失ったらお終いだぞ!」
「だって〜もうやだよ〜お家に帰りたいよ〜うわぁぁん」
「なぁ満知子、あの男、名前通りの泣き虫だな」
「そうねへーくん、あれはこの国の狂気に馴染めないタイプね」
「残党弓矢兵、構えろ!」
「弓矢兵がルーメとメートに狙い撃ちの準備だと!」
「二人共逃げて!」
「放てブッ!」
「弓矢兵達に、魔力塊が投げ込まれた?」
「あの二人だ、野球帽と虎縞模様の燕尾服の夫婦が投げたんだ」
「ベスさんとボルさんの野球コンビだよ」
「弓矢兵が魔物化したわ」
「ぬゎんて強力な魔力塊なんだ!」
「遅い」
「ぐはぁっ」
「魔界斬り!」
「ぎゃっ!」
「西洋兜を被った二人組が魔界銀製の剣で兵士を斬り倒しただと!?」
「ヘイルムとカーブ夫妻の剣士コンビだ。自警団の中で指折りの実力者だ」
「おや?奥から王冠を被ったマッドハッターが銀貨兵の神輿に乗ってやってきたぞ」
「彼女はクラウン。自警団の長だ」
「ぬゎに?アイツ、頭の王冠を外して、息を吹き掛けたぞ」
「クラウンの胞子だ」
「胞子だと!?」
「見ろ、胞子を浴びた連中を」
「はぁーはぁー」
「腹ペコで力が出ない」
「何か食わせてくれー」
「ぬゎにぃ、兵士達の動きが止まっただと!?」
「クラウンの胞子を吸う事で、無意識のうちに戦意を喪失したんだ」
「皆の衆、争いを終わりにしてお茶会を開こうではないか!食べ物でお腹を心を満たすぞ」
「そうだな」
「まずは飯にしよう」
「賛成ー♪」
「瞬く間に暴動が収まった」
「初太」
「マドラ」
「ぼく達もお茶会に参加しよう」
「そうだな、一緒に行くか」
「うん♪」
Μ続くΜ
Μ初太視点Μ
「女の人がバイクを運転していたのか」
「初太、紹介するよ、雑貨屋の店主フルーフさん、サイドカーに乗車してるのは夫のエイスさん。二人はばいくに乗って、他の町から商品の仕入れ及び運送をしているよ」
「マドラちゃん、そっちの男女三人組は?……眼鏡の男女は精と魔力から察するに夫婦、もう一人からはマドラちゃんの魔力を感じる」
「フルーフさん紹介するよ、ぼくの夫の初太と、初太の親友の平也さんと満知子さん」
「夫……そうか、ようやくマドラちゃんも……これでひと安心だな」
「フルーフさん、ぼく達は丁度雑貨屋に行こうとしてたの」
「そうなのか、私も帰ってきたところだから共に雑貨屋に行こうではないか」
Μ雑貨屋Μ
「ここが雑貨屋か」
「キノコの形をした建物に雑貨屋の看板が掛けられてるわね」
「おい、隣の車庫らしき空間にスクーターが二台駐車されてるぞ」
「ピンクとシアンのスクーターなのね」
「それはルーメとメートの愛車だよ。近くの町へ配達するときに使用するんだ」
「ルーメとメート?」
「僕達の妹と弟だよ。店番を担当してるよ」
「ただいま帰ったぞー」
「お帰り、お姉ちゃん」
「ただいま、二人共」
「お帰り、兄さん」
「ヘルメットを被った店員夫妻だとぉ!」
「へーくん驚きすぎ、といいたいけどアタシもびっくりしたわ。フルフェイスヘルメット夫妻と交通用ヘルメット夫妻だから」
「紹介するよ、私の妹、ルーメだ」
「僕の弟のメートだよ」
「今日はマドラさんの誘いで買物に来ました。あの、ここに食料品はありますか?」
「マーチヘアのお姉さんが好む発情効果が高いものが揃ってるよ」
「おおっ、ヤッター、今夜は激しい夜になりそうだー♪」
「へーくん、アタシの声真似しないで、明日は仕事なのよ」
「えーっ」
「媚薬成分が無い普通の食料品をお願いします」
「勿論媚薬無しの食料品もあるよ、媚薬無しで激しく交わりたい夫婦が購入するよ」
「良かった」
「ほぉーまかいもチップスか」
「へーくんはそこら辺で暇を潰していいから」
「えーっ、そんな〜」
「おい平也、白いのがいっぱいあるぞ」
「初太の言うとおりだ、色が白い食料品ばかりだ」
「そこの陳列品は精補給剤を食べやすくした精補給食品だよ」
「エイスさん、精補給食品って?」
「グルメな女王様が、未婚の住民達の為に提案してくれた物だよ。不思議の国限定で作られた食料品が多い」
「エイスさん、このプラスチック製の牛乳瓶は?」
「それは精補給剤をミルク風に飲みやすくした甘さ控えめの『精乳』」
「精クリームとは違うのか」
「クリームだと甘すぎるから、この里の住民達は精乳を飲むんだよ」
「シチュールウのような白い固形物は?」
「それは家庭料理用の『精シチュー』」
「生キャラメルもあるのか。何故か形が楕円形だけど」
「睾丸を舐めるように精を補給する『精丸』」
「こっちは水飴とグミか」
「ネバネバした精液風の『精液飴』に、精液の塊の食感が味わえる『精液グミ』」
「アイスキャンデーもあるのか。見た目がタケリダケっぽいな」
「フェラ感覚で舐めるのが主流の『精殖キャンデー』」
「アイスだとすぐ溶けそうだな」
「大丈夫、冷凍魔術によって食べるまでは決して溶けることはなく、賞味期限もない」
「アイスに賞味期限が無いのは口に出さずとも知っている」
「確かにそうだね」
「粉末入りの瓶、まるで調味料だな」
「調味料としてちょい足しできる『精糖』と『精塩』だ。精の補給量は雀の涙だけど、料理の味を損なうことはない」
「白い物のフルコースだな」
「精液だからね」
Μ満知子視点Μ
「食料品以外にも品があるのね」
「姉さん達が他所から仕入れてきた限定商品や独自の技術で作った製品もあるんだよ」
「次は外部の商品を紹介しよう」
「タマゴの里から東にある、物流の町『ラピッドタウン』にあるサバト支部の発明品、掛けた状態で夫や妻を見ればマーチヘアのように妄想が膨らむ、三月眼鏡」
「アタシこれ知ってる、ブルーグさん自慢の発明品よ。アタシの色眼鏡とは真逆だけど」
「里から北にある、触手と眠りと精液の牧場『ソーンファーム』に住むドーマウスの魔力を栄養源にした、居眠花。磨り潰して紅茶に混ぜてよし、直に食べてドーマウスのように眠りながら番いに犯されてもよし」
「ドーマウスごっこが楽しめるのね」
「因みに雑貨屋で販売してる精補給食品の大半がその牧場で作られている」
「へぇー、未婚の魔物娘にとっては有難い場所ね」
「ジャバウォックの棲家の一つ『ジャーバレー』の大気から採取した、吹き掛ければ忽ち発情する、ブレスプレー」
「ジャバウォックのブレスと似た効果なのね」
「チェシャ猫の研修場、淫らな性交を憩いとする森林公園『酒池肉の森』で使用されている、チェシャ猫のように相手に言葉を吹き込める、吹き込メガホン」
「誘導に使えそうね」
「アンデッド属が多く住むお菓子と悪戯の街『トリックストリート』名物、夫婦で食べれば貴族と召使の関係になれるパイ菓子、ヴァンパイ」
「ヴァンパイアっぽくなれるのか」
「町外れにある吸血鬼の城の模型もあるぞ」
「吸血鬼の城?」
「吸血鬼が住む噂が流れる謎の古城さ」
「ジパング出身の住民が集う『寺欲静』の一品、味無し、媚薬無し、人気無し、三拍子揃った干菓子、禁欲落雁」
「媚薬無しだから、禁欲なのね」
「男子禁制魔物娘同士の楽園『小百合の花園』で実る夫婦の果実の赤い実だけを材料とした、赤百合飴」
「両端がキノコの形をして凄く卑猥……」
「常に甘いものが噴火し続ける火山が並ぶ『菓山地帯』から採取した粉砂糖、菓山灰」
「お菓子作りに最適ね」
「まるで海を泳いでるような浮遊感が楽しめる『天水浴場』限定、浮き綿飴。浮き輪代わりになるから金槌でも安心して天水浴を楽しめるし、綿飴として食べることも出来る」
「浮き輪の形をしてる、ふわふわしてるけど結構丈夫ね」
「どう?いい品揃えでしょう」
「これとこれをください」
「毎度、銀貨十枚だよ」
Μ初太視点Μ
「満知子、買物終わったか」
「うん、色々な物を見たわ」
「ふっふっふ、今までの序の口、本命はこれ、不思議美術館の土産物、導きの英雄フィギュア」
「「おおー」」
「芸術家夫妻が長年掛けて製作した限定品だぞ」
「やっと完成したのね」
「スゲー、見事な迄の再現性」
「きゃーフェイさま♪」
「凄いね、正に導きの英雄に恥じない姿だ」
「住民達だけで納得してないで、オレ達にも判るよう解説しろよ」
「そうよ、アタシ達は英雄の魅力を聞かれてもさっぱりなんだから」
「マドラ、説明してくれ。平也と満知子が困ってる、俺も含めて」
「ごめん初太、ついノリに乗って。実はぼくも詳しくは知らないんだよね」
「マドラも知らないの?」
「ぼくも後から住民になった方だから、フルーフさん達が詳しいよ」
「私達がフィギュアの解説をしてやろう」
「解説にするにあたってまず外せないのが、服装」
「魔物娘らしからぬ露出が少なめの服だな」
「露出も何も彼女は男装をしているのだよ」
「男装?マッドハッターでもないのに」
「彼女曰く、瞬時に行動できるからと、男性服を着用しているらしい」
「だから長ズボンを履いてるのか」
「更に長ズボンを取り外し可能で、外せばチャームポイントの生足が見られるぞ」
「木々を飛び移る足腰でがあるにも関わらず」
「細くて綺麗な足だったよね♪」
「無感情な表情だな」
「人形は無表情だが、夫を愛する乙女の顔を持つと言われてる」
「流石魔物娘だな」
「ただ、彼女をよく知る者だけが気付く微かな違いだそうだ」
「最後に忘れてはならないのが、彼女の両腕に備わった魔界鉄製の武器」
「鎌なのか」
「彼女が突撃すれば、それは金貨兵を一突きで倒す槍となる」
「槍?どう見ても鎌じゃないか」
「何ですって?」
「妹さん、顔近い近い」
「初太、それはルーメさんの地雷ワードだよ」
「そうなの?」
「ごめんね、初太は英雄をまだ知らないからさ」
「……マドラに免じて許すわ。次からは気を付けなさいよ」
「はい」
「ルーメは俺以上にフェイトさんを心酔してるからね」
「それも彼女が住民達を、未婚の魔物娘の襲撃から守ってくれた由縁だよ。住民達は静かな麗人に感謝し、彼女のように冷静さを保つ精神を持とうと誓った。それに伴い彼女の衣服に魅了された者も多く、男女問わず燕尾服を着用する風習が出来た」
「それが皆さんを導いてくれた英雄なのね」
「オレもその英雄に会いたくなってきたな〜」
「平也君、多分それは難しいと思うよ」
「そうなの?」
「彼女は夫や仲間達と共に元いた世界へと帰ったから」
「ふーん」
「今は彼女の意志を受け継いだ自警団がこの里を守ってくれるよ」
「おらぁー!」
「食い物をよこせー!」
「きゃあーっ」
「外が騒がしいな」
「行ってみよう」
Μ
「カウ、ベレ、何があった?」
「フルーフさん、兵士の徒党が里にやってきて」
「空腹で辛そうだったから食べ物を渡そうとしたら、急に暴れだして」
「オラァ!まともな食料寄越せ!」
「あの鎧は、討伐隊か」
「討伐隊?」
「来訪者の集まりだよ。どうやら一万人いるとか」
「一万人!?そんなに?」
「大半が不思議の国の色に染まったけどね」
「ただ、彼らは抵抗中の集団のようだ」
「このままだと被害がでるかもしれない」
「自警団が来るまで私達が足止めをしよう」
「フルーフさん達だけで足止め?相手は十数名もいるのよ」
「心配いらないさ、満知子ちゃん」
「こんな時こそ、仕入れてきた商品の出番だ」
「それは浮き綿飴」
「これを身体に嵌めて、ジャンプをすると」
「ルーメさんとメート君が宙に浮いたぞ」
「お姉ちゃん、メガホンを貸して」
「兄さん、スプレーを使わせてもらうよ」
「それで何するつもりだ?」
「平也君」
「百聞は一見にしかず」
「何だ?ジャバウォックっぽく飛翔してるぞ」
「ジャバウォックの息吹を食らえ」
「うわーあの時と同じブレスだ!」
「発情して狂ってしまう〜〜ムズムズしてきたよ〜〜」
『ムズムズしてきたのは、隣の男と気持ち良くなりたいよねー?』
「違う、これはスプレーのせいで、オマエラ空に浮いてないで、地上で戦え!」
『戦うといっても、男にムズムズを治めて貰わないと戦えないよー?』
「うっ、うぐぐ……」
『遠慮しないで襲っちゃいなよー咎めはしないからさー』
「えーい、どうにでもなれー」
「まて、襲うなー正気に戻れーっ」
「にゃん、にゃん、にゃおーん♪」
「チェシャ猫化したぞ」
「また一人狂ってしまった……」
「アアァァ魔王城を襲撃するはずが、変な国に飛ばされた挙句、仲間たちが次々と変になってゆくぅぅぅ!」
「落ち着けN-964、正気を失ったらお終いだぞ!」
「だって〜もうやだよ〜お家に帰りたいよ〜うわぁぁん」
「なぁ満知子、あの男、名前通りの泣き虫だな」
「そうねへーくん、あれはこの国の狂気に馴染めないタイプね」
「残党弓矢兵、構えろ!」
「弓矢兵がルーメとメートに狙い撃ちの準備だと!」
「二人共逃げて!」
「放てブッ!」
「弓矢兵達に、魔力塊が投げ込まれた?」
「あの二人だ、野球帽と虎縞模様の燕尾服の夫婦が投げたんだ」
「ベスさんとボルさんの野球コンビだよ」
「弓矢兵が魔物化したわ」
「ぬゎんて強力な魔力塊なんだ!」
「遅い」
「ぐはぁっ」
「魔界斬り!」
「ぎゃっ!」
「西洋兜を被った二人組が魔界銀製の剣で兵士を斬り倒しただと!?」
「ヘイルムとカーブ夫妻の剣士コンビだ。自警団の中で指折りの実力者だ」
「おや?奥から王冠を被ったマッドハッターが銀貨兵の神輿に乗ってやってきたぞ」
「彼女はクラウン。自警団の長だ」
「ぬゎに?アイツ、頭の王冠を外して、息を吹き掛けたぞ」
「クラウンの胞子だ」
「胞子だと!?」
「見ろ、胞子を浴びた連中を」
「はぁーはぁー」
「腹ペコで力が出ない」
「何か食わせてくれー」
「ぬゎにぃ、兵士達の動きが止まっただと!?」
「クラウンの胞子を吸う事で、無意識のうちに戦意を喪失したんだ」
「皆の衆、争いを終わりにしてお茶会を開こうではないか!食べ物でお腹を心を満たすぞ」
「そうだな」
「まずは飯にしよう」
「賛成ー♪」
「瞬く間に暴動が収まった」
「初太」
「マドラ」
「ぼく達もお茶会に参加しよう」
「そうだな、一緒に行くか」
「うん♪」
Μ続くΜ
14/03/27 21:35更新 / ドリルモール
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