Μ郷愁の霧Μ
Μ初太視点Μ


｢そうか、それがマドラがマッドハッターになったきっかけか……｣

｢そうではありません｣

意外なことにマドラは首を横にふる

｢帽子を被った直後はまだ人間の要素が多かったです。男言葉を使うのを躊躇ったり、男の格好をするのもとても恥ずかしくて、だから最初の頃はマッドハッターではなく――｣

そして、マドラの口から思わぬ言葉が飛び出す

｢トランパートになるべきだったのかなと思ったくらいでした｣


※不思議の国・不思議美術館・映写室※
※満知子視点※


『この度は皆様の多大なご協力により討伐隊の半数以上が不思議の国の住人となりました』

｢すみませんでした。エリーゼ隊長、これもちゃんとお客様を真面目に案内していまして、真面目に仕事を取り組んでいます｣

『しかし、未だに不思議の国の狂気に馴染めない者が多いのです』

｢シュークリームのシューを一気に作って、後でクリームをいれようとして時間ギリギリでするようことはしませんから｣

『そんな膠着が続くなか、向こう側の世界で女王様が討伐隊全員を彼等の国へ帰す準備を始めました』

｢女王様へ献上するおもちゃを残業してまで作ったりしてませんから｣

『準備が完了する時間はこの国での今の時間の流れから推測して、今から約五十時間後』


｢えいっ！｣ﾊﾟﾝｯ!｢ギウム、落ち着いて｣

エリンは自らの帽子を叩いて、胞子をギウムに飛ばす

｢だからお仕置きの雷は放つのを止め……あれ？｣
｢今流れている映像はただの業務連絡だよ｣

『そこで私は四十八時間後に討伐隊を強制的にトランパート及び彼女達専用のインキュバスへと変異させる魔術を放ちます』

｢エリーゼ隊長の雷の魔術を通して国中にある映像媒体に流れているものだと思う｣

『トランパート以外でなりたいもしくは嫁にしたい種族がいるなら今のうちに選別してください』

｢なんだ…エリーゼ隊長が直接連絡してきたのかと思ったぞ…｣

ギウムは気が抜けたように胸を撫で下ろす

『心配いりません。怖がらずともやがてこの国の狂気に馴染むことでしょう。それでは四十八時間後にまた会いましょう――』

そこで映像が途切れる

｢参ったわ、どういうことなの、コレ？｣

｢解りやすくいえば四十八時間後には討伐隊全員がこの国の住人となるのさ｣

正確にはトランパート及びその夫にだけど、とコルヌさんは説明する



ｶﾁｯ



アタシのウサ耳が鍵が開く音を拾う

｢どうやら今の放送の影響で貴賓室へ行く扉が開いたようだね｣
｢その扉はフィルムをセットをしないと解錠しないハズじゃなかったの？｣
｢この部屋にある装置は電気に弱くて、フィルムをセットをしなくても電気を流すだけで扉を開けることが出来るのさ。今の放送はエリーゼ隊長の雷の魔術によるものだから部屋全体に電気が流れた訳｣

｢じゃあこれで貴賓室へ行けるのですね。良かった…｣

エリンはほっとしたように胸を撫で下ろしている

｢参ったわ、いくらなんでも唐突すぎるでしょ、『この後滅茶苦茶セックスした』じゃないんだから。へーくんも思うよね？｣

｢うーん…｣

へーくんが何故か首を傾げているみたい

｢どうしたの？へーくん。この滅茶苦茶セックスしたいの｣
｢違う、あのエリーゼって人の発言に違和感を感じてる｣
｢え、感じてるの!?｣

反射的にへーくんの言葉を曲解するあたし

へーくんも感じているのね……どんな風に感じているかしら？

アタシはへーくんの言葉を拾おうと耳をすませ――



ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ…



ウサ耳は別の音を拾う

振り向くと映写機が一人でに回っている

｢参ったわ、まだ映像が流れるの？ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗうるさくてへーくんの声が聞こえ辛いわ｣

アタシは回転を止めようと映写機に近づき


｢満知子ちゃん、映写機から離れるんだ！｣


コルヌさんが大声をあげる


ｼｭﾙｼｭﾙ…ｼｭﾙｼｭﾙｼｭﾙｼｭﾙｼｭﾙｼｭﾙ

高速に回転する映写機からフィルムが飛び出し


｢きゃあ！｣
｢ひゃっ！｣

フィルムがアタシとエリンに襲い掛かる

｢電気の影響で映写機が暴走しているんだ｣

フィルムは腕や脚、腰に次々と巻きつき、瞬く間に全身を拘束

締め付けによる痛みや圧迫は無いけど、ほどくことは出来ない絶妙な締め付け

いや、痛みというより擽ったいというイメージがアタシの思考を染め上げる

｢いやっ、そこは、ひゃあ……ワキはくすぐったい、はぁはぁ……｣
｢うう……やめて、腰は敏感…｣

フィルムがアタシの服に、パンツに入り込んでゆく

｢満知子！今助けるぞ！｣
｢駄目だ、下手にフィルムを触れば平也クンも巻き込まれるぞ｣

ｼｭﾙｼｭﾙとフィルムがアタシの襞に入り込むぅ……やんっ、その襞は、へーくんのニンジンで刺激するトコ…

｢じゃあ、どうしろと！｣
｢身体毎引きずって、映写室から出て……くっ！｣

乱暴に襞を刺激され意識が朦朧しかけたアタシの視界には、フィルムがコルヌさんに襲い掛かる寸前で、身体から生やしたキノコに巻き付かせるのが映る

｢満知子、我慢しろ！｣

うん、へーくん、我慢するよ、我慢するから

｢ボクがフィルムを止めている間に、急いで扉を閉めて！｣

ああ、フィルムが、フィルムが、アタシの乳首が……立っちゃう、あ、おまた漏れちゃった…

｢くそっ！｣

バタン、と廊下全体に響く音を立てるようにへーくんが扉を乱暴に閉めるのが視界に映る


駄目だよ……へーくん……そんな乱暴に扉を閉めたら……患者さんから舌打ちされるよ……看護師さんから遠くからも聞こえて迷惑だって怒られちゃうよ……


それにベッドで安眠しているママが困るよ――


へーくんの扉を閉める行為が、アタシの脳が郷愁へと曲解してゆく――



｢止まれよ、このポンコツフィルムがぁ！｣



アタシの視界と耳が閃光と雷鳴に染まる


はぁ……


はぁ……


はぁ……

｢ギウムの雷の魔術がフィルムの暴走を止めたのか？｣
｢エリーゼ隊長の雷で暴走したのなら雷を当てれば止まるかと思った｣
｢満知子を助けてくれたことには一応礼を言っておく｣

アタシは呼吸を繰り返しながら、巻き付いたフィルムを剥がす

動きが止まったフィルムを剥がすのは割りと簡単だった

｢んっ、ん……｣

エリンもスカートに手を入れてぺりぺりとフィルムを剥がしている

下着の中に入り込んだフィルムは直接下着を脱がないと取れないみたい

参ったわ、どれだけ器用なフィルムなのよ

現にエリンも白のショーツを少しずり下ろしてショーツに貼り付いたフィルムを剥離している

ショートパンツのアタシは脱いだら下半身が丸見えになるけど、へーくんに見られるなら恥ずかしくはない

下着に貼りついたフィルムを剥がし、フィルムにパチパチと電気の火花が飛ぶ

参ったわ、エリンとアタシの愛液のせいでぬるぬるでぬれぬれのフィルムが出来上がったわ

フィルムで刺激された部分はまだ疼く

｢へーくん……あそこがムズムズする｣

そんな疼きを治めてもらおうとへーくんを押し倒す

｢いいよ、ギウムのキノコがエリンの襞に擦れてるよ。とっても気持ちいいよ｣

エリンもいつの間にかギウムのズボンを脱がせてスマタしてるし

アタシも負けてられないと根元まで挿入し、ゆっくりと腰を振る


｢確かエリンちゃんの母親ってトランパートだっけ？｣


参ったわ、へーくんはアタシの交わりそっちのけでエリンとトークを始めたわ

きっと腰使いが足りないのね

挿入をあえて先っちょだけにして、小刻みに動かす

｢はい、レストラン『part』の城下町本店で接客の仕事をしています｣
｢真面目だな〜｣
｢前の世界では兄妹が多くて家計が苦しかったので……エリンたちのために生活費を稼ごうと頑張るからこそ、女王様は母のことを気に入ってトランパートに変えました｣
｢それだ！｣

へーくん、ソレって何を指してるの？

｢トランパートっていうのは、ハートの女王が独断と偏見で気に入った女性を魔物化させた種族のハズだろ？｣

参ったわ、へーくんのエロなしトークは継続中

先っちょだけ作戦は失敗したので再度根元に挿入

｢あのエリーゼっていう奴の独断で来訪者達をトランパートに変えるなんてアリなのか？ただのアリスにそんな力があるとは思えないぞ｣

｢お前はバカか、エリーゼ隊長はただのアリスじゃねーぞ、雷落とされるぞ！バカ！バカ！むぐっ……ん〜｣

あはっ、エリンが怒ったギウムにキスしてる
アタシもへーくんにキスしよっと、ﾁｭｰ

｢はぁはぁ……｣
｢そういう感情的な態度を取ってしまうほうが、エリーゼ隊長に叱られちゃうよ？｣
｢すまん｣
｢代わりにエリンが説明するから｣

ｷﾞｭｯｷﾞｭｯと、スマタを持続しながらエリンは語る

｢エリーゼ隊長は女王様直属の兵隊を率いる隊長であると同時に、女王様の教育係を務めていたことがあります｣
｢マジか!?我が儘で傲慢不遜な女王様でさえも彼女の前では頭が上がらないのかよ！｣
｢いえ、そこまではありません。女王様もエリーゼ隊長に極刑を執行することもありますので｣
｢なんだ、てっきり影の女王ポジションかと思ったぞ｣

残念そうに言うへーくん、影の女王って…何を期待してたのよ

どうせなら他のことを期待しなさいよ

アタシと女王様プレイするとか

｢平也クンの考えは強ち間違っていないかもよ｣

と、コルヌさんもへーくんのエロなしトークに加わる

｢彼女は三千年前の魔王を倒した勇者と言われているからね｣
｢倒した？……そういえばこの世界はかつて人間と魔物は敵対関係で、魔王と勇者の戦いが何度も繰り広げられていたって聞いたことがある｣
｢その魔王が消滅する間際に放った呪いのせいで、永遠に歳をとらないかつ子供を宿せない少女の身体にされたそうだよ｣

幼化はまだしも子供を宿せないのはメスにとってはキツイわね

｢その体質と長年の経験もあってか、今の魔王様が娘である女王様の類いまれなる魔術の才能に気づいた時は、エリーゼ隊長に女王様の教育係を頼んだわけ｣

そりゃ三千年も生きてたら色々と知ってるよね

エッチなこととかエッチなこととか

｢後に女王様が造った不思議の国のおかげで、エリーゼ隊長は交わりの記憶を失わず子供を宿せる真のアリスへ変わることが出来たけどね｣

よかった、子供を産める身体になったのね

｢国の全てを自分で決める女王様だけど、時々エリーゼ隊長に国の方針を相談することもあるよ。だからエリーゼ隊長によってトランパートが増えても、ちゃんとした理由があれば女王様は納得すると思うよ｣
｢成る程……話も終わったことだし、出すか｣

へーくんは激しく腰を振り

アン、熱ぃ♥

愛する人の精液がアタシの子宮に注がれ、身体と心が満たされてゆく

｢疼きは収まったか？｣
｢うん…｣

交わりを終えたアタシは下着を履いていると

｢これが満知子を犯していたフィルムか――｣

へーくんはフィルムを手に取り

｢はむっ｣

それを口に加える

｢んーﾁｭﾊﾟﾁｭﾊﾟ、まちこのあいえき｣

アタシの愛液つきのフィルムを頬張るへーくんは嬉しそう

するとフィルムがパチッと電気を発する

｢ん！？｣
｢どうしたの、へーくん？｣
｢今、満知子の母親の姿が頭に入ってきたぞ、これは満知子の母親が入院している頃の記憶？｣
｢何でアタシの記憶が流れるワケ？｣

｢満知子ちゃんとエリンちゃんの愛液、そしてギウムの雷が魔学反応を起こしたのかもしれない。フィルムに刻まれた記憶が頭の中に流れるように｣
｢フィルムに焼き付けたのはコルヌさんだけでしょ？アタシは記憶をフィルムに焼き付けた覚えはないけど｣
｢ほら、暴走したフィルムが二人を犯した時だよ。愛撫されたことで記憶の一部がフィルムに刻まれたと思う｣

そういえばあの時ママの入院のことを考えていたっけ…

｢ん、映像が切り替わったぞ？変な群れがゆっくりと近づいてきてる｣

へーくんが妙な反応をする

｢エリンと同じクリーム色の髪をした青年が人々を避難誘導している｣
｢それってまさか、アロンお兄ちゃん？｣
｢わかるのか？｣
｢うん、だってそれはエリンの記憶……旧時代の記憶だよ｣


※続く※

■作者メッセージ
ドリルモールです。

多忙の中、ようやく更新出来ました。

今回の解説はエリンの台詞から出てきたレストラン『part』です。


Μ


用語集
【レストランpart】

不思議の国にあるレストラン、城下町を本店に、不思議の国中でチェーン店が展開されている。

オーナー及び従業員の九割がトランパート及び彼女達の夫で構成される。

店の経営はトランパートのスート毎にそれぞれが役割を持っており

スペード：料理
クローバー：材料の仕込み
ダイヤ：店の経営・改装
ハート：接客

それぞれの技術は数字に比例していると言われており、Ａクラスになると神の料理人や最高の接客業等とお客様から伝説扱いされている。

なお店内での性行為は「周囲の客に迷惑をかけなければ」ある程度の行為は黙認されている(そもそも従業員自身が調理や接客の最中に夫と交わっていることが多いので)

内装は『ダイヤ』の気まぐれにより大幅に変わることは珍しくもなく、昨日は普通のファミレスだった内装が、翌日には店全体が回転寿司用の機械が設置されメニューは全て寿司に変わっていたという一例がある。

支払いはこの世界の通貨で払うのが原則で、金銭が無い場合は『身体』で払ってもらうことなり、それはタダ働きもしくは性行為の２パターンがあり、特に後者目的でトランパート以外の種族も日雇いで勤めることが多い。