連載小説
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学園の映写と突然のお知らせ
Μ郷愁の霧Μ
Μ初太視点Μ


「聞くことは出来なかった?」
「すみません、話を飛ばしすぎましたね。順を追って話します」


「私が初めて出席したお茶会『お店の帽子虫干し記念パーティー』の時でした」


「沢山の帽子が春の暖かい日射しに包まれる中、わたしはこの帽子…いえ、この娘に目が止まりました。無地のシルクハットに二本のリボンが巻かれたこの娘に」


「ふと、被りたい、と思ったのです。まるでずっと前からわたしのような人に被ってもらうのを待っていたかのように――」


※不思議の国・不思議美術館・映写室※
※満知子視点※


『はぁ…朝なのに熱いです』
『今の天候はが夏の暑さと同じだね』

寮から校舎へ登校する場面ね

『昨日は春のような暖かさだったのに』
『ここは不思議の国、昨日は春でも翌日は夏になっても不思議じゃないよ』
『日陰になれるところを探さないと…ちょうど彼処に木が』

まどっちが安心したかのように木の根本に腰をおろすけど

『マドラちゃん、それは木じゃない!』

木が形を崩して触手の形をとる

『きゃあ!』

コルヌさんが咄嗟にまどっちを木から遠ざけてくれたので巻きこれなくて済む

『ごめんなさい、木が人を襲うとは思わなくて…』
『あれは木に擬態した触手だよ?捕まっても、危害が加える訳じゃないけど、胸や女性器が触手で弄られてしまうよ』
『それは、恥ずかしいです…』


「さて、改めて早送りするよ」

まどっちが更衣室らしき部屋で燕尾服に着替えている場面

『男の人の服って、ボタンの位置が逆なんですね…』

まどっちが燕尾服の試着に戸惑っている

『あー服着るの面倒くさいカナー』

ブーナはシャツのボタンをとめず胸元をさらけ出す格好をしたり

『お兄ちゃんのお下がりを着てたのを思い出しちゃう…』

エリンは恥ずかしながらお尻を押さえている

「エリンの家は大家族でしたので、お兄ちゃんやお姉ちゃんのお下がりを着ていました」

『ショロさんはちゃんと着こなせるのですか?』
『こんなのスポーツのユニフォームを着るような感覚だよ』

『椎太さんはちゃんと襟元を正してますね』
『まぁ、武士たるものどんな服も着こなす必要があるからな』

『これなら男を誘惑出来そうカナ〜』
『拙者は男には屈せぬ!』


「あの人は堂々と着ているわね」
「しいさんは立派な雌紳士ですから」
「メス紳士?」
「しいさんは卒園後は、ドSな男性に犯されてメスとしての快楽を叩きこれたそうです」

……


『もう一度言おう、拙者は男には屈せぬ!』


「参ったわ、四つんばいにされたのが妄想つくわ」
「今ではキョウシュウマウンテンの麓にある言伝集落でくっ犯な毎日を過ごしてますよ」

参ったわ、くっ犯のフレーズを聞くとはね…


「あのように生徒達は燕尾服に着替えてから授業を受けるのさ」

眼鏡を掛けた女性がまどっち達に世界の歴史を語っている

『――こうして魔王がサキュバスに交代したことで全ての魔物は美しい女性、魔物娘へと変わりました。しかし、情報の統制・伝達が各国及び各大陸によって非常に不安定であり、未だに魔物は人を喰らう異形の姿である信じている者は決して少なくなく、教団は故意に旧時代の情報を流しているため、魔物を脅威として現魔王を討伐しようとする勇者もおり――』

「アタシの世界とは大違いね。テレビとかネットとかの情報源が普及してるから世界中のニュースや情報なんて簡単に知ることが出来るわ」

「簡単に、か。僕達の世界もそんな感じで今の魔物の情報を得ていたらどれたけ良かったことか」

アタシの一人言に反応するかのように、ギウムが呟く

「僕達が住んでる世界…具体的には領地だが、そこの情報源は授業で言ったように口頭や公認の情報誌しか無くて、自分から調べることは困難でさ、神父や上層部の連中が語ったことを何の疑いもなく信じてたよ…」
「ネットが無い世界か…アタシには想像がつかないわね」

「さっきからてれびやねっととか聞きなれない言葉を使うが、お前ら二人は異世界から来たのか?」
「っていうか、俺らから見ればお前らも異世界出身も同然だぞ」

と、へーくん

「確かに僕もエリンも人と魔物が住まう世界で生まれ育った、君たちにとっては異世界も同然か」

ギウムはただ、と言って

「僕とエリンの場合は住む時代が違うらしい」

「ギウムは旧時代から来た訳じゃないのか?」
「エリンは旧時代、僕は今の時代出身だ。魔物娘に襲われて真実を知った。それでも僕にとって魔物娘は…不思議の国に来るまでは…その…魔性の女というイメージがあったけどな。それからエリンと出会って、中身が人間と大して変わらない魔物娘もいるんだなと思った。あとエリンの母親も」

「へぇー、エリンの母親もマッドハッターなのね」

と、アタシの言葉にエリンは慌てるのかようにいえ、と否定し

「母はマッドハッターじゃありません。トランパートの『ハートの7』です」
「トランパート…そういえば職場の娘から聞いたことわね。トランプの中を自由に出入り出来る兵士の話」
「因みにエリン達に歴史の説明をしている講師もトランパートですよ」

教壇で隠れて判らなかったけど、講師の足の辺りには巨大なトランプが浮いているのに気づく


「また早送りするよ。そんなこんなでマドラちゃん達の学園生活は続いて――」


『ブーナちゃん』
『おはよー』

幼い固有種の少女達がブーナに集まる

『ブーナちゃん、またアレ見せて』
『見せて、見せて』

『オッケーカナ〜海よ、この辺りから生まれろ〜『生みの海』』

ブーナは呪文みたいなものを唱えると周りの子供達が宙に浮かび上がる

『わーい、海だ!海だ』
『泳ぐよ〜』

『まるで海を泳いでるみたい…』

「ブーナさんの周囲に水中と同じ空間を作り出す魔術です。まるで水の中を泳いでるような気分を味わえます」
「今は『透海の魔法使い(シー・メイジ)』の異名を持ってるよな」


『せ、拙者は泳げないのだー!』

しいは手足をバタつかせて慌てふためく

『ブーナちゃん、今日もたのしかったよ。ばいばーい』
『じゃあなー』

少女達は一緒に手を繋いでさよならをする

『ふふーん、あの二人はいつでも仲良しなのが素敵カナ〜』

『ブーナさんはすっかり子供達の人気者ですね』
『この前もアリスから差し入れが来たよな』

『ここに通って大分経つけど、女の子同士が仲良くしているのも悪くはないと思うカナ〜?』

「あの娘、間違いなく百合百合なタイプね。きっと雄はいないわね」
「いえ、ブーナちゃんも夫がいますよ」
「いるのかよ」
「ただ、夫との出会いはちょっと変わっていまして、肉体と心が入れ替わる仕掛けに掛かって今の夫の身体と入れ替わったそうです」
「入れ替わり!?」

「聞いたことあるな、不思議の国には男女の人格が入れ替わるトラップや道具があるって」

と、解説してくれるへーくん

「本人曰く男の快楽を知ることで、男女の交わりの素晴らしさを理解したようです」

入れ替わり、ね…
アタシがへーくんの身体になる…
そしてへーくんがアタシの身体でアタシを押し倒して…


ドキドキ


参ったわ、想像しただけで胸がドキドキしてきた…

「入れ替わったその男が羨ましいぜ」


えっ、へーくんもアタシと同じ考えを――


「きっと柔らかなおっぱい揉み放題だったんだろうな。女らしい身体を味わえてよ。満知子もそう思うだろ?」
「……へーくん、アタシの胸元を見ながら言わないで」
「満知子、次はボインな牛乳(うしちち)の女教師が来たぜ」
「ああん?」

額に血管を浮かべながら映像を見る

『皆さん、おはようございます。臨時講師のせさみと申します』

一瞬、爆乳ホルスタウロスかと思ったけど、ちょっと違うみたいね…


「あの人は白澤のせさみ先生だよ」
「白濁?」
「白澤(ハクタク)という種族だよ。精液のことじゃないから」

流石マーチヘア化したアタシの思考、素で聞き間違えたわ

「臨時講師ということは、ここは外部の魔物娘も来るの?」
「カミラ先生は不思議の国中の魔物娘と交流が多いのです。ああやって臨時講師と招いて生徒に色々なことを教えていますよ」
「ただし、女に限るでしょ?」
「はい、一応男性もいるにはいましたが、性転換させて女性講師として招いていましたね…」


『今日は収穫したばかりの胡麻を使って、子供化する饅頭を作ってみましょう』


「せさみ先生は自家栽培した胡麻でジパングのお菓子を作るのが得意なのです。エリン達は白澤の能力でレシピ等を直接脳内へと伝えられました」
「白濁…じゃなかった白澤から頭を撫でられることで料理が出来るなんてズルくない?」
「レシピがわかっていても実際にやってみると意外と難しいですよ」


『わーコンロの炎が勢いよく燃え上がったカナー』


「手順を守らず、適当に作ったら事故を起こしたり」


『調理器具に手足が生えて逃げ出したよ?』
『包丁め、拙者と真剣勝負を挑む気か!?』


「仕掛けが発動して料理どころじゃなくなったり」


『きゃあっ、背が高くなって、胸が…苦しい』


「胡麻の成分によってはグラマラスな美女になったりします…」
「正に不思議の国クオリティね…」

「おおっ、エリンちゃんナイスバディだな。満知子もそう思うだろ?」

アタシはへーくんを無視して、映像を見続ける

園の外で、ショロが男の人とサッカーをしている。あの人がショロの彼氏かしら?

「えー男が出てくるの?これは女の子オンリーの記憶じゃなかったのか?」
「へーくん、学園の外だから男が出てきても不思議じゃないわよ?」

アタシはほくそ笑みながら試合を観戦する

競技場で開催されてるサッカーとは違って、男女が一対一でボールを奪いあう従来のサッカーのようね

ショロがゴールポストにボールを入れ込むことで決着がつく


『よし、ゴール!』

勝負がつき一汗かいた二人は仰向けになる

『はぁはぁ…練習を怠ってなかったようだな、ショロ』
『ふぅーリュフこそ練習を続けてくれてしいよ、流石はあたしの親友だな』

パチパチ 『素晴らしい試合だったよ』

と、映像からコルヌさんの拍手と声がして、観戦しているまどっちのほうに視線を向ける

『みんなもそう思うよね……どうしたの四人ともポカンとして』


『『『『あれが本当のサッカーなんだ…(カナ〜)』』』』


「普通そうよ!」
「満知子、映像にツッコミをいれるなよ」

「いくらマッドハッターとはいえども想定外のことには驚くよ。ボク達が知るサッカーとは全く違っていたから」
「想定外って、サッカーはボールを蹴りあうスポーツでしょ」
「住む世界が違う故の認識の違いだよ。ボク達がイメージするサッカーはラケットでボールを打ち返したり、投げ技を決めたり、巨大魚が飲み込んだボールを取り戻すため相手チームと協力して釣りもするし」
「いや、ラケットを使う時点でおかしい」

『汗かいたし、シャワー浴びないか?』
『いいね』

と、二人は近くの小屋に入る

「あの後ショロさんとリュフさんは激しくセックスをしたそうです。卒園後も毎日のようにセックスしていて……確か一昨日は妊娠したとメールが来ました」
「それを知ったエリンはまるで自分のことのように喜んでたよな」
「別にそこまで喜んでいないよ。大体妊娠といっても産まれてくるのは女の子でしょ?」

「に、妊娠…!?」

それって夫の精子と妻の卵子が出会って、子供を宿す妊娠

魔物娘って中々妊娠しないはず

アタシはへーくんの顔をじっと見る

よーし、事が済んだら一晩中へーくんに中出しして――





突如、映像にノイズが入る





『皆様、狂ったように交わっていますか?』

ノイズが収まると軽装の鎧を着た少女がアタシ達に挨拶をする

『エリーゼから皆様に大事なお知らせです』

見た目からしてアリスと思われる少女は微笑みながら語る

「あれもコルヌさんの記憶?」
「いや、違うよ。これは…とうとうこの時が来たか」

冷静なコルヌさんに対し

「え?え、え、え!エリーゼ隊長!?」

動揺するギウム


参ったわ…また暴走しなきゃいいけど


※続く※
17/01/03 23:58更新 / ドリルモール
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■作者メッセージ
 ドリルモールです。

 ようやく公式サイトで新種族のトランパートが解禁されましたので、心置きなく彼女を出せます。

 ギウムを動揺させるエリーゼ隊長とは一体何者なのか?
 そして、彼女は何を告げるのか?

 それは次回明らかになる!といいな…

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