魔王城(後編/ダイヤ視点)
★魔王城廊下★
「成程、トンスケの足音がパール様と柴様のハーレム部屋まで響いたから、私達の帰郷に気付いたということですね」
「そうだぞ、だから妻たちとのラブラブを一旦中止して、パールと一緒に裏口まで駆け付けたのさ」
「足音だけで私や煌羅が帰ってきたことに気付いたの!?」
「トンスケはダイヤが生まれるずっと前から、お兄ちゃん達を背中に乗せていたのよ、足音だけでも判るわ♪」
食堂へ向かいながら、私とお母様、煌羅とお父様で話をする。
まさか、門の前で再会するとは思わなかった。一時は両親のハーレム部屋に足を踏み入れるのを覚悟していたけど。
「それにしても何の連絡もなく帰ってくるから、おかあさんビックリしたわよ♪」
「ゴメンね、煌羅が両親を驚かせてあげましょうって言うからあえて連絡はしなかったの」
「サプライズです」
「はっはっは、僕達はハーレムとの愛で忙しいから、例え連絡しても不通の可能性もあったから、気にしない気にしない」
「お兄ちゃんと嫁達は愛しあってる?」
「うん、相変わらず愛し合ってるよ。旅をしてからも定期的に兄貴と連絡をしてるからね」
「ホント煌羅ちゃんがいてくれて助かったよ。娘は最初、一人で旅するって言ってたから心配で心配で」
「私はお嬢様に忠誠を誓った身、お嬢様が行くところ、どこまでも付いていきます」
「うんうん、やっぱり複数の妻と愛し合うことが一番ね♪」
「うん、いつか私もお母様やお父様のようなハーレムを目指すぞ」
「煌羅ちゃん、良かったらウチのハーレムに入らない?」
「お断りさせていただきます」
「うーん、私達に憧れるのもいいけど、無理しなくてもいいのよ?」
「ううん、無理なんてしてないよー」
「がっくし、いいもんいいもん、もうキキーモラは間に合ってるから」
「私と同じキキーモラがいるのですか?一度見てみたいです」
「……まっ、ダイヤはダイヤなりに頑張ってね。お母さんとお父さんはいつでも子供達の応援してるから」
「うん」
「よーし、煌羅ちゃんに僕とキキーモラのラブラブを見せてやるぞ」
「参考にさせていただきます」
「つかぬことだけど、煌羅ちゃん、勇者襲撃の件、お疲れ様♪」
「ええ、お嬢様を守るために彼女らには犠牲になってもらいました」
私との話が終わったお母様は、煌羅に勇者襲撃の話を始めた。
「よーし、次はダイヤと親子トークだ」
「お父様、ハーレム頑張ってますか?」
話し相手を交換するように私はお父様にハーレムのことを聞く。
「へぇーあっという間に倒して、魔物娘に変えたのね。流石あの娘たちに鍛えられただけのことはあるわね♪」
「いえ、師匠達に比べればまだまだです。フェイ様なら一瞬で片付け、マリア様ならもっと快楽的に魔物に変え、エミ様ならついでにその場で結婚式を開いていたはずです」
「でな、この前、レッサーサキュバスだった娘が、サキュバスになっちゃったんだ〜ハーレムに入れて一年だよ早すぎるよ。うわーん」
「いや、流石に遅すぎでしょ、どれだけ放置プレイしてるのよ……」
「その勇者一行なら、後でクリアちゃん達に連絡して引き取ってもらうわ、特にデュインちゃんは大喜びね。勇者クラスでしかも独身のレッサーサキュバスが入隊するから」
「ええ、見るからに独身のオーラを発してました。これで魔王軍は暫く安泰でしょう」
「だってレッサーだよ。精を注いだら直ぐにサキュバスに開花しちゃうつぼみだよ。儚い花弁でもあるんだよ」
「うーん、よくわからないなぁ……」
「皆様、食堂に到着しました」
「あら、久しぶりだから話が弾んじゃった♪」
「続きは食べた後にしようか、ダイヤ」
「うん」
★魔王城・食堂★
食事を終え家族団らんで話の続きをする私達。
自分たちのハーレム。
魔王様と勇者様の夫婦喧嘩。
太陽の勇者とエキドナの熱い生活。
クリアお姉ちゃんとデュインお姉ちゃんの活躍。
スターシャン。
そこに住む住民達。
その町で暮らした八年間。
旅を始めて今日までの二年間。
煌羅との出会い。
煌羅との暮らし。
煌羅との漫才。
煌羅との……ラブラブ?
家族に色々なことを聞き、話した。
久しぶりの家族団らんはあっという間に過ぎた……兄貴と義姉ちゃん達はいないけど。
★
「パール様、お茶をどうぞ」「ありがとう、煌羅ちゃん」
話が一段落し、煌羅はお母様にお茶を出した。
「柴様、肩をおもみします」
「おお、ありがとな」
お父様がキキーモラに肩を揉んでもらってる。
「さすがは俺の妻だ」
「ええ、柴様の為なら」
ただし、揉んでいるのは、別のキキーモラ。お父様の妻の一人。
「ふふー今度はこっちが揉んじゃおうかな、あれ?肩にしてはマシュマロみたいに柔らかいぞー?」
「駄目ですよ、奥様と子供の前で」
「君が美しいからいけないんだぞーついつい手を出したくなるよー」
「まあ」
「うふふ、今夜も最高のカクテルがご馳走出来そうね」
「これがキキーモラのご奉仕、お嬢様へのご奉仕の参考にさせていただきます」
そんな光景をお母様は妖艶に眺め、煌羅は真面目?に同じキキーモラのご奉仕を見ている。
「でもその前にゴイルちゃんに調教しなきゃ♪」
「調教?ゴイルちゃんって私達を門前払いしようとしたあのガーゴイルのこと?」
「そうよ、ダイヤ達の件で反省したいって」
「私達はそんなに怒ってないわよ。そもそも煌羅のせいであんなややこしい事になったんだから」
「理由はどうあれ、私の家族を門前払いしようとしたのは事実よ。だから二度と同じ失敗をしないために調教するの、ハーレムの長としてね♪」
「……」
「よし、続きは部屋でしようか」
「かしこまりました。柴様」
場の空気を読んだのか、お父様とキキーモラは席を立ち食堂を後にする。
その間もお父様はキキーモラの身体を触り続けるのを怠らない。
「パール様、お嬢様のことは気にせず、自分の役目を果たしてください」
「判ったわ、後は任せるわね♪」
煌羅が頷くとお母様も席を立ち、部屋に戻る。
と、その前に私の前に来て
「ダイヤ、どんな時でも私やおとうさん、お兄ちゃんや義姉ちゃん、そして……煌羅ちゃんがいることを忘れないで」
「……うん」
お母様はスキップしながら、食堂を去った。
四本足でスキップなんてお母様は器用だな。
「……」
お父様とキキーモラ……あれが男性に仕える給仕の姿なんだ……。
もし、あのキキーモラを煌羅に置き換えたらーー
「お嬢様、お風呂の用意をしてきます」
「ひやっ!」
ーーなんて考え事をしていたら煌羅の声に驚いた。
「どうかしましたか?」
「な、何でもないゎ」
「……そうですか。では私はお風呂の用意をしてきます」
「ええ、頼んだゎよ」
煌羅はそれ以上言わずに食堂を後にする。
良かった、気付いてなくて。
☆
「……お嬢様、私はあの時誓ったはずですよ」
★魔王城・個人浴室★
私は服を脱ぎ捨て、シャワーを浴びる。
「ふう、生き返る」
熱すぎず、冷たすぎない、適度な温かさの水が頭から降り注いだ。
「髪をごしごし」
二つの手と十の指を使い、髪と二本角を丁寧に洗う。
「……あれが……キキーモラ本来の特性」
食堂でのお父様とキキーモラの行為を思い出す。
以前読んだ図鑑では、キキーモラは男性に仕え、身の回りの世話をする事が生き甲斐としている。
その『世話』というのは炊事、洗濯、清掃、そして性欲処理も含まれる。
煌羅も例外に漏れず、私の身の回りの世話をしてくれている。
普段は私をからかっているけど、出会った頃と比べれば大分丸くなったほうだ。
煌羅がキキーモラとしての例外があるとすれば、
私に仕えていることだろう。
「腰まで洗ったから、次は下半身ね。って、煌羅いつの間に私の下半身を洗ってるの!?」
「『あれが……キキーモラ本来の特性』の台詞からです」
「マジで!?……自分で洗うわよ、もう子供じゃない……」
「……ごしごし」
「……判ったわ続けなさい」
「……ごしごし」
「……」
「……ごしごし、ここは念入りに」
「って、どこ触ってるのよ!」
「中は桃色ですね。蜜も溜まってる」
「何意味深な事言ってるの!」
「心配ありません。エロありなので」
「意味がゎからん!」
「ああ、これがお嬢様の馬蜜」
「馬蜜言うな!」
「ちゅぱ、ちゅぱ、くんくん、ちゅぱくんくん」
「何、リズムとってるのよ!」
「ああ、お嬢様は最高ですぅ」
「こんな状況じゃなかったら、嬉しかったけどね!」
「うふふ、さぁお嬢様、今度は一緒に洗いましょう将来の夫の為だと思って」
「……了解」
私達は互いの身体洗う。
二本の腕を互いに絡ませ、十の指を互いの胸の膨らみに触れ、優しく、かつ乱暴に一日の汚れを落とす。
特に乳首は念入りに洗う。白い肌と違い洗っても落ちず膨張する。
どちらかが満足するまでそれは終わらない。
★魔王城・ダイヤ個室★
「ふぅ」
「湯加減は如何でしたか?」
「自分だけ浴室にいなかったような台詞を言わないでよ」
「失礼しました。淫蕩加減は如何でしたか?」
「……意味は違うけど、ちょっとだけスッキリした」
「それは良かった。私は荷物整理と進行ルートの確認をします」
「……煌羅、命令よ。質問に答えなさい」
「はい」
「……煌羅は男性の主人に仕えたいと思ったことはないの?」
「ありません。あの日から、今も未来も仕えるのはお嬢様だけです」
「……」
「これ以上の質問はないようなので私は引き続き」
「そんな訳ないでしょ、だって魔物娘じゃない!」
「あっ、怒鳴って、ごめんなさい……」
「……落ち着きましたか?落ち着いたなら続きを」
「……煌羅はいつもそう、何の躊躇いもなく、冷静沈着に、私達に近づく教団の兵士や勇者。特に男を追い払ってる」
「憎しみや下心で、お嬢様に近づくからです」
「私じゃなく煌羅が目的で近づく男もいたよ」
「身体目的の獣は不要です」
「ねえ、煌羅は生まれてから一度も男性に恋したことないの?」
「ありません」
「一度もその身体を男性に捧げたり、逆に捧げるように誘惑したことはないの?」
「ありません」
「煌羅は、変だよ。魔物娘なのに、男性と愛し合おうとしないなんて、ましてキキーモラとして男性に仕えようとしないなんて」
「……」
「私、心配だよ、煌羅が、もしある日突然私の前からーー」
言葉が、途切れた。
私の唇の動きが、煌羅の唇の圧迫によって止められたからだ。
「うぐ、ほぁ、ふぁなひつぇ」
手綱よりも丈夫な唇が私を放そうしない。
「ぷはっ、はぁはぁ……」
「落ち着きましたか、泣くと鼻水が出ますよ」
「……泣いてないわよ」
「私は、お嬢様が好きです」
「その『好き』は文面通りなの?」
「……疑うのですか?」
「疑うよ、私自身を疑うよ、私がいつか旦那に夢中になって、煌羅のことを忘れて、煌羅は黙って去るじゃないかって」
「他には?」
「他って、だから私が」
「お嬢様は、ある日突然、私がお嬢様の前から去ると思っていますね?」
「……どうして、判ったの?」
「お嬢様がさっき言おうとしましたよ」
「……」
「確かに私は、いつか男性に仕える日が来るでしょう」
「やっぱり」
「それは、お嬢様に旦那様が出来た日です」
「……え、私が?」
「お嬢様の旦那様、私はその方にお仕えします」
「そんなのでいいの?」
「お嬢様が選んだ人です。お嬢様と同じ生涯の忠誠を誓える人でしょう」
「わからないよ、兄貴以上の男がいるか、もしいても、その時煌羅が側にいるかどうか」
「お嬢様なら出来ますよ。何故なら」
「お嬢様はバイコーンですから」
あっ……そうだった。
「私、バイコーンだったんだ。夫だけでは満足せず、他の魔物娘を誘い、愛しあうよう調教する。不純の愛を求める魔物娘。だから、夫が出来ても」
「私を交えて愛することが出来ます」
「これからも私の側にいてくれる?」
「あの日、誓ったはずですよ?」
「ありがとう煌羅」
「こちらこそお嬢様」
★エピローグへ★
「成程、トンスケの足音がパール様と柴様のハーレム部屋まで響いたから、私達の帰郷に気付いたということですね」
「そうだぞ、だから妻たちとのラブラブを一旦中止して、パールと一緒に裏口まで駆け付けたのさ」
「足音だけで私や煌羅が帰ってきたことに気付いたの!?」
「トンスケはダイヤが生まれるずっと前から、お兄ちゃん達を背中に乗せていたのよ、足音だけでも判るわ♪」
食堂へ向かいながら、私とお母様、煌羅とお父様で話をする。
まさか、門の前で再会するとは思わなかった。一時は両親のハーレム部屋に足を踏み入れるのを覚悟していたけど。
「それにしても何の連絡もなく帰ってくるから、おかあさんビックリしたわよ♪」
「ゴメンね、煌羅が両親を驚かせてあげましょうって言うからあえて連絡はしなかったの」
「サプライズです」
「はっはっは、僕達はハーレムとの愛で忙しいから、例え連絡しても不通の可能性もあったから、気にしない気にしない」
「お兄ちゃんと嫁達は愛しあってる?」
「うん、相変わらず愛し合ってるよ。旅をしてからも定期的に兄貴と連絡をしてるからね」
「ホント煌羅ちゃんがいてくれて助かったよ。娘は最初、一人で旅するって言ってたから心配で心配で」
「私はお嬢様に忠誠を誓った身、お嬢様が行くところ、どこまでも付いていきます」
「うんうん、やっぱり複数の妻と愛し合うことが一番ね♪」
「うん、いつか私もお母様やお父様のようなハーレムを目指すぞ」
「煌羅ちゃん、良かったらウチのハーレムに入らない?」
「お断りさせていただきます」
「うーん、私達に憧れるのもいいけど、無理しなくてもいいのよ?」
「ううん、無理なんてしてないよー」
「がっくし、いいもんいいもん、もうキキーモラは間に合ってるから」
「私と同じキキーモラがいるのですか?一度見てみたいです」
「……まっ、ダイヤはダイヤなりに頑張ってね。お母さんとお父さんはいつでも子供達の応援してるから」
「うん」
「よーし、煌羅ちゃんに僕とキキーモラのラブラブを見せてやるぞ」
「参考にさせていただきます」
「つかぬことだけど、煌羅ちゃん、勇者襲撃の件、お疲れ様♪」
「ええ、お嬢様を守るために彼女らには犠牲になってもらいました」
私との話が終わったお母様は、煌羅に勇者襲撃の話を始めた。
「よーし、次はダイヤと親子トークだ」
「お父様、ハーレム頑張ってますか?」
話し相手を交換するように私はお父様にハーレムのことを聞く。
「へぇーあっという間に倒して、魔物娘に変えたのね。流石あの娘たちに鍛えられただけのことはあるわね♪」
「いえ、師匠達に比べればまだまだです。フェイ様なら一瞬で片付け、マリア様ならもっと快楽的に魔物に変え、エミ様ならついでにその場で結婚式を開いていたはずです」
「でな、この前、レッサーサキュバスだった娘が、サキュバスになっちゃったんだ〜ハーレムに入れて一年だよ早すぎるよ。うわーん」
「いや、流石に遅すぎでしょ、どれだけ放置プレイしてるのよ……」
「その勇者一行なら、後でクリアちゃん達に連絡して引き取ってもらうわ、特にデュインちゃんは大喜びね。勇者クラスでしかも独身のレッサーサキュバスが入隊するから」
「ええ、見るからに独身のオーラを発してました。これで魔王軍は暫く安泰でしょう」
「だってレッサーだよ。精を注いだら直ぐにサキュバスに開花しちゃうつぼみだよ。儚い花弁でもあるんだよ」
「うーん、よくわからないなぁ……」
「皆様、食堂に到着しました」
「あら、久しぶりだから話が弾んじゃった♪」
「続きは食べた後にしようか、ダイヤ」
「うん」
★魔王城・食堂★
食事を終え家族団らんで話の続きをする私達。
自分たちのハーレム。
魔王様と勇者様の夫婦喧嘩。
太陽の勇者とエキドナの熱い生活。
クリアお姉ちゃんとデュインお姉ちゃんの活躍。
スターシャン。
そこに住む住民達。
その町で暮らした八年間。
旅を始めて今日までの二年間。
煌羅との出会い。
煌羅との暮らし。
煌羅との漫才。
煌羅との……ラブラブ?
家族に色々なことを聞き、話した。
久しぶりの家族団らんはあっという間に過ぎた……兄貴と義姉ちゃん達はいないけど。
★
「パール様、お茶をどうぞ」「ありがとう、煌羅ちゃん」
話が一段落し、煌羅はお母様にお茶を出した。
「柴様、肩をおもみします」
「おお、ありがとな」
お父様がキキーモラに肩を揉んでもらってる。
「さすがは俺の妻だ」
「ええ、柴様の為なら」
ただし、揉んでいるのは、別のキキーモラ。お父様の妻の一人。
「ふふー今度はこっちが揉んじゃおうかな、あれ?肩にしてはマシュマロみたいに柔らかいぞー?」
「駄目ですよ、奥様と子供の前で」
「君が美しいからいけないんだぞーついつい手を出したくなるよー」
「まあ」
「うふふ、今夜も最高のカクテルがご馳走出来そうね」
「これがキキーモラのご奉仕、お嬢様へのご奉仕の参考にさせていただきます」
そんな光景をお母様は妖艶に眺め、煌羅は真面目?に同じキキーモラのご奉仕を見ている。
「でもその前にゴイルちゃんに調教しなきゃ♪」
「調教?ゴイルちゃんって私達を門前払いしようとしたあのガーゴイルのこと?」
「そうよ、ダイヤ達の件で反省したいって」
「私達はそんなに怒ってないわよ。そもそも煌羅のせいであんなややこしい事になったんだから」
「理由はどうあれ、私の家族を門前払いしようとしたのは事実よ。だから二度と同じ失敗をしないために調教するの、ハーレムの長としてね♪」
「……」
「よし、続きは部屋でしようか」
「かしこまりました。柴様」
場の空気を読んだのか、お父様とキキーモラは席を立ち食堂を後にする。
その間もお父様はキキーモラの身体を触り続けるのを怠らない。
「パール様、お嬢様のことは気にせず、自分の役目を果たしてください」
「判ったわ、後は任せるわね♪」
煌羅が頷くとお母様も席を立ち、部屋に戻る。
と、その前に私の前に来て
「ダイヤ、どんな時でも私やおとうさん、お兄ちゃんや義姉ちゃん、そして……煌羅ちゃんがいることを忘れないで」
「……うん」
お母様はスキップしながら、食堂を去った。
四本足でスキップなんてお母様は器用だな。
「……」
お父様とキキーモラ……あれが男性に仕える給仕の姿なんだ……。
もし、あのキキーモラを煌羅に置き換えたらーー
「お嬢様、お風呂の用意をしてきます」
「ひやっ!」
ーーなんて考え事をしていたら煌羅の声に驚いた。
「どうかしましたか?」
「な、何でもないゎ」
「……そうですか。では私はお風呂の用意をしてきます」
「ええ、頼んだゎよ」
煌羅はそれ以上言わずに食堂を後にする。
良かった、気付いてなくて。
☆
「……お嬢様、私はあの時誓ったはずですよ」
★魔王城・個人浴室★
私は服を脱ぎ捨て、シャワーを浴びる。
「ふう、生き返る」
熱すぎず、冷たすぎない、適度な温かさの水が頭から降り注いだ。
「髪をごしごし」
二つの手と十の指を使い、髪と二本角を丁寧に洗う。
「……あれが……キキーモラ本来の特性」
食堂でのお父様とキキーモラの行為を思い出す。
以前読んだ図鑑では、キキーモラは男性に仕え、身の回りの世話をする事が生き甲斐としている。
その『世話』というのは炊事、洗濯、清掃、そして性欲処理も含まれる。
煌羅も例外に漏れず、私の身の回りの世話をしてくれている。
普段は私をからかっているけど、出会った頃と比べれば大分丸くなったほうだ。
煌羅がキキーモラとしての例外があるとすれば、
私に仕えていることだろう。
「腰まで洗ったから、次は下半身ね。って、煌羅いつの間に私の下半身を洗ってるの!?」
「『あれが……キキーモラ本来の特性』の台詞からです」
「マジで!?……自分で洗うわよ、もう子供じゃない……」
「……ごしごし」
「……判ったわ続けなさい」
「……ごしごし」
「……」
「……ごしごし、ここは念入りに」
「って、どこ触ってるのよ!」
「中は桃色ですね。蜜も溜まってる」
「何意味深な事言ってるの!」
「心配ありません。エロありなので」
「意味がゎからん!」
「ああ、これがお嬢様の馬蜜」
「馬蜜言うな!」
「ちゅぱ、ちゅぱ、くんくん、ちゅぱくんくん」
「何、リズムとってるのよ!」
「ああ、お嬢様は最高ですぅ」
「こんな状況じゃなかったら、嬉しかったけどね!」
「うふふ、さぁお嬢様、今度は一緒に洗いましょう将来の夫の為だと思って」
「……了解」
私達は互いの身体洗う。
二本の腕を互いに絡ませ、十の指を互いの胸の膨らみに触れ、優しく、かつ乱暴に一日の汚れを落とす。
特に乳首は念入りに洗う。白い肌と違い洗っても落ちず膨張する。
どちらかが満足するまでそれは終わらない。
★魔王城・ダイヤ個室★
「ふぅ」
「湯加減は如何でしたか?」
「自分だけ浴室にいなかったような台詞を言わないでよ」
「失礼しました。淫蕩加減は如何でしたか?」
「……意味は違うけど、ちょっとだけスッキリした」
「それは良かった。私は荷物整理と進行ルートの確認をします」
「……煌羅、命令よ。質問に答えなさい」
「はい」
「……煌羅は男性の主人に仕えたいと思ったことはないの?」
「ありません。あの日から、今も未来も仕えるのはお嬢様だけです」
「……」
「これ以上の質問はないようなので私は引き続き」
「そんな訳ないでしょ、だって魔物娘じゃない!」
「あっ、怒鳴って、ごめんなさい……」
「……落ち着きましたか?落ち着いたなら続きを」
「……煌羅はいつもそう、何の躊躇いもなく、冷静沈着に、私達に近づく教団の兵士や勇者。特に男を追い払ってる」
「憎しみや下心で、お嬢様に近づくからです」
「私じゃなく煌羅が目的で近づく男もいたよ」
「身体目的の獣は不要です」
「ねえ、煌羅は生まれてから一度も男性に恋したことないの?」
「ありません」
「一度もその身体を男性に捧げたり、逆に捧げるように誘惑したことはないの?」
「ありません」
「煌羅は、変だよ。魔物娘なのに、男性と愛し合おうとしないなんて、ましてキキーモラとして男性に仕えようとしないなんて」
「……」
「私、心配だよ、煌羅が、もしある日突然私の前からーー」
言葉が、途切れた。
私の唇の動きが、煌羅の唇の圧迫によって止められたからだ。
「うぐ、ほぁ、ふぁなひつぇ」
手綱よりも丈夫な唇が私を放そうしない。
「ぷはっ、はぁはぁ……」
「落ち着きましたか、泣くと鼻水が出ますよ」
「……泣いてないわよ」
「私は、お嬢様が好きです」
「その『好き』は文面通りなの?」
「……疑うのですか?」
「疑うよ、私自身を疑うよ、私がいつか旦那に夢中になって、煌羅のことを忘れて、煌羅は黙って去るじゃないかって」
「他には?」
「他って、だから私が」
「お嬢様は、ある日突然、私がお嬢様の前から去ると思っていますね?」
「……どうして、判ったの?」
「お嬢様がさっき言おうとしましたよ」
「……」
「確かに私は、いつか男性に仕える日が来るでしょう」
「やっぱり」
「それは、お嬢様に旦那様が出来た日です」
「……え、私が?」
「お嬢様の旦那様、私はその方にお仕えします」
「そんなのでいいの?」
「お嬢様が選んだ人です。お嬢様と同じ生涯の忠誠を誓える人でしょう」
「わからないよ、兄貴以上の男がいるか、もしいても、その時煌羅が側にいるかどうか」
「お嬢様なら出来ますよ。何故なら」
「お嬢様はバイコーンですから」
あっ……そうだった。
「私、バイコーンだったんだ。夫だけでは満足せず、他の魔物娘を誘い、愛しあうよう調教する。不純の愛を求める魔物娘。だから、夫が出来ても」
「私を交えて愛することが出来ます」
「これからも私の側にいてくれる?」
「あの日、誓ったはずですよ?」
「ありがとう煌羅」
「こちらこそお嬢様」
★エピローグへ★
13/12/14 23:30更新 / ドリルモール
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