断食砂漠→エネミス帝国
★断食砂漠★
★ダイヤ視点★
「栗恵さん、エネミス帝国まではあとどれくらいで到着するのでしょうか?」
「そやな、まず断食砂漠を通らなきゃアカン」
「砂漠ですか、水分の補給を考えたら夜まで待ったほうがいいですね」
煌羅と栗恵さんが打ち合わせをする中、私とクロ魔女さんは周囲の景色を見渡す。
「いつになったら砂漠に入るのかしら?」
「うーん、この辺りは山や洞窟、池が所々にあるから、まだ砂漠じゃないわね」
「それにしても変わった形の山ね。黄色くて頂上が茶色、風に煽られてグラグラ揺れているわ」
「洞窟もふわふわした見た目で、内部がチョコレートに見えるわ」
「あーなんとなく判る。あの山を見ているとおやつに出されたプリンを思い出すわ」
「ダイヤちゃんも同意見なのね。あの洞窟には親近感が沸くのよ。パン屋のチョココロネにそっくりで――」
「ふぅ……」
「コーハ、何、額の汗を拭っているのよ。またそうやってカッコつけてさ」
「いや、さっきから暑くてさ」
「あら、ようやく自分自身の暑苦しさに気づいたのかしら」
「違う、太陽がジリジリ照りつけるんだ、もしかしたら僕たちは既に砂漠地帯に入っていると思う」
「はぁ?何言って――」
ポツッ
ふと、頭に水滴の感触を感じた。
空を見上げると、さっきまで青かった空は黒い雲で覆われてゆき。
ザーッ
生温かい雨が降り始めた。
「きゃあっ」
「お嬢様!」
「何なのこの黒い雨は!」
「口に入っ、うえっ、にがっ」
「ご主人様を守りまス」
「フンカー!」
「今、ご主人様を雨から守ってまーす!」
雨はほんの数秒で降り止んだ。
「お嬢様、お体は!?」
「大丈夫よ、煌羅。通り雨だったわね……」
「お嬢様、顔が汚れていますよ」フキフキ
「それにしても、今の雨は何だったのかしら」
「コーヒーでス」
と、ゴーレムのレームが説明してくれた。
「コーヒーやて?ホンマかいな?」
「はいマスター、成分を解析したとこロ、コーヒーに似た成分を検出。ホットコーヒーのようでス」
「ホットコーヒーか、そや、フンカ、体は大丈夫か?」
栗恵さんがラーヴァゴーレムのフンカに声を掛ける。
「フンカ〜フンカ〜」
「何や、暖かくて元気が出たんかいな……ひやひやしたわ〜」
「今、コーヒーが服に染み込んでまーす!」
リビングドールのイマちゃんの白いゴスロリ服がコーヒー色に染まっている。
「コーヒーの染みが出来たら大変や、すぐ洗うからばんざーいし」
「今、ばんざいしまーす!」
栗恵さんがイマちゃんの服を脱がす。
「困ったな〜いくらアラクネはんお手製の服とはいえ、はよ洗わんとコーヒーの染みが出来るかもしれへん」
「心配ないわ」
クロ魔女さんが服に向かって呪文を唱えると、服から泡が吹き出した。
「キャンサーの泡で包み込んだわ」
「おおきに〜」
「煌羅さんも服を脱いで、洗ってあげるから」
「いえ、私は結構です」
煌羅は首を横に振る。
当然、クロ魔女さんは何で?と問う。
「この給仕服は私が生涯お嬢様にお仕えすると誓った証なのです。入浴及び就寝以外では脱がないと決めているのです」
煌羅は一拍置いて
「だからお嬢様を守れるのならば、コーヒー程度の染みは何ともありません」
「そうよ、煌羅は私の傍にいるときは四六時中この服なの」
「へぇ〜どんなに濡れてもメイド服着衣を徹底しているのね」
「ウチの場合は、研究中は近くにレポートは置かんよう気をつけとるのに」
「だけど煌羅も時々、私の目の前で給仕服を脱ぐ時があるわ」
「えっ、ひょっとしてダイヤちゃんを襲っちゃうの?」
「給仕と令嬢の禁断の愛かいな? ルール違反の百合プレイや」
「そうそう、日頃の鬱憤を晴らすかのように煌羅が給仕服を脱ぎ捨てるの、私がやめてやめて言うけどそれでも構わず服を私に押し付けて、最終的にはブラとズロース一丁のまま、ゆっくりと私に近づいて、今度は私の服を強引に脱がしながら、小ぶりな胸に吸い付き、私を快楽の海へと引きずり込み、肉体的にも堕落しかけたところを見計らい、しなやかな手でそっと私の秘所を弄って――って違うゎよ!」
「いえ、強ち間違いではありません」
「煌羅、誤解を生むような発言をしないで!」
「ブラとズロース一丁になる辺りが」
「そっちかよ!」
「それと小ぶりな胸が」
「小ぶりで悪かったゎね!」
「そうです、私脱ぐとすごいんです!」
「でしょうね、煌羅は私と比べ物にならないほどの美乳の持ち主よね!」
「煌羅ちゃんはダイヤちゃんの事が好きなのね」
「漆黒の令嬢に仕える献身的な給仕って感じやな〜」
「はい、お嬢様は私にとって大切な人で、キキーモラとして生涯お嬢様に仕えるつもりです」
「もしこの給仕服を脱ぐときは――」
煌羅は急に声のトーンを落とす。
魔王城以来だっけ、久しぶりにこの煌羅を見たの。
「給仕としての立場を脱ぎ捨ててでも、お嬢様を守るときだ」
ぞくっ
クロ魔女さん達も感じたのだろう
煌羅から発せられた威圧感を
「君たち、話を逸らさないでよ〜」
この男を除いて。
「コーハ、私と煌羅の話に首を突っ込むなんて何様のつもりよ!」
「そうよコーハ、報連相は時と場合を考えなくちゃ商売は成り立たないわ!」
「そやで、コーハのせいでややシリアスな雰囲気が台無しやろ!」
「嫁との交わりを中断してまで、話を聞いているときに」
「空気読メ」
「フンカ!フンカ!」
「今、フンカちゃんは「そうだそうだ」と言ってまーす!」
「ここは絶対砂漠地帯だよ、太陽が眩しいし、暑くて堪らない!」
と、キメ顔で叫ぶコーハ。
こんなときでもキリッとした顔は忘れないのは暑さで頭のネジがやられたか、あるいは当の昔に頭のネジが切れているのか。
「でも流石に砂漠じゃないでしょ、山や洞窟があって、オアシスもたくさん在るし」
「いえ、お嬢様、彼の話に間違いはありません」
「煌羅?」
「先ほど地上の様子を確認してきたところ、砂漠地帯であることを確認しました」
「もう、煌羅まで私をからかうの?」
「いえ、この通り、地面は砂ですよ」
煌羅は掌から砂をパラパラ落とす。
「砂以外の場所も確認したところ、山はプリン、洞窟はパン生地とチョコレート、池はソーダやジュースで出来ていました」
「はぁ?」
「ですから、あの山や洞窟は食べられるのです」
「……それってつまり」
「私が出した結論は、ここはお菓子や飲み物などのデザートが連なる砂漠地帯だということです」
「マジで!?」
「ほら、トンスケも美味しそうにピーチソーダの水を飲んでいますよ」
トンスケは歩みを止めて、気泡が湧き出る桃色の池をゴクゴクと飲んでいる。
「煌羅、あの池がジュースで出来ているのか確かめに行きたい」
「了解です。お嬢様」
私は煌羅に付き添われ地上へ下り、トンスケと共に桃色の水を飲む。
「ピーチの味がする。口の中もソーダのようにシュワシュワする」
「お嬢様、次はソーダの池に参りましょう」
「そ、そうね。次もジュースで出来ているのか確かめなくちゃ」
私は煌羅に抱きかかえられ、次の池へと向かった。
トンスケもそれを察したのかゆっくりと私たちの後を追う。
「まずは私が味見をさせていただきます」
煌羅が池の水を手で掬って口へと運ぶ。
「お嬢様の美しさを照らす青空よりも青いソーダの水に、炭酸がお嬢様の口付けのように私の舌を蹂躙しています」
「うん、水の味を私に譬える元気があるなら害はなさそうね。ごくごく、くーっ、炭酸がシュワシュワする、喉がカラカラだったから余計においしい、何度でも飲みたい」
「ではお嬢様、彼女たちの情事を肴にしては如何でしょうか?」
煌羅が指した先には
「まってよー」バシャバシャ
「やったなー」ザバザバ
「きゃははは」ビショビショ
マーメイドやスキュラ、ネレイスといった海の魔物が池の真ん中を泳いでいた。
彼女たちは互いに水しぶきを浴びている。
「楽しそうね、女同士で」
最初は砂漠のオアシスに浸っていたのかと思ったが
「女同士じゃありませんよ、お嬢様」
よく見ると彼女たちの中心に男性が一人。
「なんだ、カップル達が泳いでいたのね、他の男性はどこにいるのかしら」
私はあと二人の男性の影を探すが
「妙ね、他の男性が見当たらないわ」
「はぁー、あれだけ炭酸飲料を飲んだのにも係わらず、お嬢様の思考は酸欠気味ですか?」
「煌羅?」
「考えてみればわかることでしょ、男が一人しかいないということは彼女達全員がその男の妻だということです」
「あっ、成る程、ハーレムね」
「バイコーンたるお嬢様が一人の男と複数の女性イコールハーレムという方程式を導き出せないようならば、ハーレムどころか、夫探しすらも炭酸のように弾けては消える儚い夢です」
「うぐっ、反論出来ない」
「おや彼女達が一斉に夫を襲う準備を始めたようです。彼女達の情事を見て頭に栄養補給をなさってください」
「わかってるわよ」
私はハーレムの光景を間近で眺める。
「ねぇ、わたしの歌を、聴いてくださいませ」
マーメイドが夫の耳元で愛の歌を唄い
「逃がさないぜ!」
スキュラが八本の足で夫と絡み合い
「水の泡が踊る海へ参りましょう、んっ、ちゅっ」
ネレイスが夫に熱い口づけを交わしながら池の中へ引きずり込もうとする。
私たちが見ているにも係わらず、自分たち以外誰も存在していないかのように躊躇なく夫の精を搾ろうとする。
「お嬢様、何ボーッとしているのですか!」
「……はっ、つい見惚れてしまった」
「気をしっかりしてください。気づかないのですか?」
「言われてみれば、どうして海の魔物が砂漠のど真ん中にいるのかしら」
「そうじゃありません、私が言いたいのは今が自慰のチャンスだということです」
「そうね、あれをオカズに――しないわよ!」
「意外でした、お嬢様は他の魔物娘達との恋愛事情に興味があって、交わりを覗き見しながら自慰をするのが趣味かと」
「私はメロウかよ!」
「どの道二角獣会で、多くのハーレムを見ながら自らを慰めるのですから、今のうちに日ごろから溜まっている性欲を晴らしテッ」ドンッ!ドボン!
私は煌羅を池へ突き落とす。
「少しはコーヒーの染みを洗い流しなさい!」
煌羅が池から飛び出し、私の前足を掴む。
「ちょ、煌羅、放しなさいよ」
「お嬢様も池に浸かれば、少しは心の染みが取れるのでは?」
「やめなさい、私まで巻き込もうとするな!」
「いやです。私だけ池ポチャして、お嬢様だけ平然としているのは不公平です」
「嫌よ、煌羅だけ落ちなさい」
「さては、服が濡れて全身に張りついても、地平線な胸元が強調されるという現実が突きつけられるのが怖いのですか?」ムニュゥ
「やかましい、胸を私の足に押し付けながら言うな」
「感じますかお嬢様、前足から伝わる胸の感触が?」
「ぐぬぬ、屈辱以外の何者でも無いゎー!」
「男だったら、さぞかし嬉しいシチュでしょうねぇ?悔しかったら自ら池に飛び込んで、ピチピチに濡れた胸を揉みしだいてくださいな!」
「そうやって私を池に誘おうとする算段でしょ」
「チッ、もう少しでお嬢様をびしょ濡れに出来たと思ったのに」
「落ちてたまるか!」
「落ちてください!」
「落ちてたまるか!」
「落ちてください!」
「落ちてたまるか!」
「落ちてください!」
私と煌羅の攻防が続く中
「見てください、バイコーンの娘とキキーモラが仲良く遊んでいますわ」
「ケンカするほど仲がいいって奴だな」
「もしかしたらあれが彼女の調教かもよ。ダイバ様とはまた違うタイプの」
海のハーレム達が休憩中で、私と煌羅の行為を遠くから見物
「皆さん、彼女達に習って夫の取り合いをしてみませんか?」
「賛成だ。あの二人に負けないくらい精をたっぷりと絞ってやるぜ」
「勝負するからにはより深みへと沈ませてあげる」
それを肴に夫との交わりを盛り上げようとしていた。
★
「ただいま戻りました」
「はぁー疲れた〜」
「お帰り二人とも。どうだった、池にいたハーレムの様子は?」
「聞いて驚いてください。ソーダの池がクリームソーダの池に変わる勢いで、彼女達の交わりはより激しさを増していました」
「クリームソーダか、新たな商売誕生の予感がするわね〜」
と、クロ魔女さんは妖艶な表情を浮かべている。
「近くにあるお菓子と飲み物を収穫したさかい、これ食べて元気出しい」
「ありがとう栗恵さん。いただきまーす」
私は栗恵さんから渡されたプリンと苺のミルフィーユを口に含む。
プリンの柔らかさとミルフィーユの噛み応え、相反する二つの感触が私の口を蹂躙する。
「ごくごく、ふぅ、砂漠地帯で飲むジュースは格別ね」
「水や食料の確保が出来てホンマ良かったわ、これならわざわざ夜を待たんでも砂漠地帯を越えられるで」
「改めて見ても、砂漠なのにプリンの山やミルフィーユの断層地帯、コーヒーの雨やジュースの池って常識じゃ考えられないものばかりね」
「一体どこにこんな大規模なものを作る材料や技術があったのでしょうか?」
「その件ならお菓子一つ一つを分析したところ、お菓子やジュースは魔力で出来ていることがわかったで」
「交わりで放たれる魔力を特殊な術式でお菓子に変換したみたいなの」
と、栗恵さんとクロ魔女さんが解説する。
「それでもこんな巨大なのはありえないわよ……」
「いずれにしても砂漠地帯をお菓子の地帯に変えた術者は只者では無いことは間違いないでしょう」
「ねぇ煌羅、私が思うにその術者って大の――」
「お嬢様、エネミス帝国が見えてきました。降りる準備をします」
「話の腰を折りやがった……」
★エネミス帝国前★
「トンスケはここで待機してね」
「お嬢様、これを」
煌羅が私にピンクの折りたたみ傘を差し出す。
「また先程のように雨が降らないとは限りませんので」
「判ったわ、肌身離さず持っているわ」
私は折りたたみ傘を腰に装着して、長い階段を上る。
まずはエネミス帝国を治める女帝、アポピスのピスコ様にご挨拶をしにいく。
★エネミス帝国城下町★
「砂漠地帯だからフードや帽子で日光を遮る住民が沢山いるわ」
「軍事国家だけあって武装している兵士も多いわね」
「だけどホンマに親魔物領に鞍替えしたんやな。魔物が仰山おるで」
「男女同士が、交じり合うことは不純なことではありません、本能の赴くままに交わりあってください」
ふと声がする方を振り向くとダークプリーストが大衆の前で広報活動をしていた。
座位の体制で下から夫に突かれながら。
「躊躇しなくていいんだぞ〜堕落しちゃえ〜」
「禁欲こそが禁忌だと知れ!」
ダークエンジェルとダークヴァルキリーらしき二人組がダークプリーストに続く形で大衆に告げる。
「そうよね、セックスって最高の行為かもしれないな」
「テキーラ様が堕落してもあんなに嬉しそうなのは、堕落こそが何よりも幸福だと気づいたからなのね」
「ああ……わざわざ遠路はるばる来ていただきまことにありがとうございます」
「あたしにも何だか神の声が聞こえてくるような気がします」
「ねぇ、せっかくだからここで、やらないか?」
「すごく、賛成です」
「お嬢様、住民達が交わりはじましたよ」
「……恐るべし堕落神の教え」
「ああっ・出ています出ています・命の白が・」
「出ちゃったの〜次はあたしね〜」
「我は戦乙女だから、最後で構わぬ」
ダークプリーストが夫との結合を解くと、すぐさまダークエンジェルが腰を落とす。
妖艶な表情で倒れこむダークプリーストの結合部から精液がボタボタと落ちている。
「ほらほらアアン〜・ただ見する暇があったらアアン〜・さっさと交わっちゃアンアン・もっと突いて突いて・」
「もし夫や妻がいないなら適当な相手と交わればいいのだ!」
ダークヴァルキリーの一押しで、交わりを躊躇っていた男女もペアを作り始めた。
「ラミア属や砂漠出身の魔物娘は当然として、様々な種族がいますね」
「煌羅の言うとおりね、ワーキャットが甘えるような仕草で隣にいた男を誘い始めたわ」
「ワーラビットも意気揚々と腰を振っているわね。あそこまで陽気に交わると逆にすがすがしいわ」
「プライドが高いことで有名なドラゴンさえもメストカゲのように犯されとるわ〜」
「如何でしたかバイコーンの皆さん。私達の教えは?」
「うわっ、びっくりした!?」
「いつの間におったん!?」
先程まで夫に突かれていたダークプリーストが、私達の前に立っていた。
首から下は全裸のままで。
「っていうか何で私たちが遠くで見ていたことに気づいたのよ!」
「うふふ、不純なる御加護を感じたものですから。もし良ければバイブル様直筆の聖典をどうぞ」
彼女は白の斑模様が混じった黒表紙の本を私たちに差し出す
「いえ、結構です」
「聖典の在庫なら十分にありますので」
「そや、ウチらは二角獣会へ行かなアカン」
「すぐに結論を出さなくても結構です、気が向いたらいつでもどうぞ。では私は広報活動の最中なのでこれで失礼します――またお会いしましょう」
ダークプリーストは慈愛の笑みで、万魔殿化した集まりへと戻ってゆく。
丸出しの結合部から垂れ落ちる命の白をマーキングしながら。
「ああやって性なる欲望を引き立たせて勧誘するのが堕落神の教えなのね」
「堕落神は信者に声を語りかける形で、女性をダークプリーストに変えるといいますからね」
「マリア義姉さんが私たちに誘惑に嵌らない強い心を持ちなさいと念を押す気持ちがわかる気がしたわ」
「お嬢様の場合はもう少し欲を持って行動をしたほうがイテッ!」
「クロ魔女さん、栗恵さん、英斗さん。再び勧誘される前にさっさと城へ向かいましょう」
★エネミス帝国中心部★
「昼間は暑いせいか日陰で休んでいる住民も多いね」
「ラージマウス達が日陰ですやすや眠っとるわ」
「普段は落ち着きのない彼女達も暑さにはバテてるね」
「いや、そうでもないよ。あれをみてよ」
と、コーハがカッコつけながら指した先には
「ハッ、ハイッ」
「どうした?動きが鈍いぞ?暑さでばてたのか」
「これしきの暑さでバテていては一人前の闘士にはなれないでごわす」
路地裏でネズミ耳の少女が二刀流のリザードマンとまげを結った河童から稽古をつけていた。
「へぇ〜この暑さの中でも元気なマウス属もいるのね」
「格闘系マウス属って感じやな」
「おーい、みんな」
彼女達の下に、買い物袋を抱えた一人の男性がやって来た。
「お帰りアル、チャンプ」
「おかえ……ちゃんとシロービから頼まれた食材を買ってきたのだろうな?」
「ああ、みんなが稽古の疲れが吹っ飛ぶような食材を厳選してきたぞ」
「すごく美味しいちゃんこが期待できそうでごわす」
「ふ〜ん……夫持ちか。残念だったわね、コーハ」
「ふっ、僕は最初からあの娘達には素敵な旦那様がいると思ったよ。特にムチムチボディなネズミ少女を見た瞬間にね」
「ちょっとカチンときたけど確かにマウス属にしてはスタイルがいいわね……マウス属はドレッサさんのように小柄で一日の大半を眠りに費やす種族だと思っていたわ」
「そうなのかい?僕が以前見かけたラージマウスの群れは一人の夫に射精を強請るせっかちさんで、眠りとはかけ離れた存在だったけど」
「まぁドレッサさんはちょっと特別な部類で、マウス属は基本落ち着きがなく、あちこち動き回るって兄貴が言っていたけどさ……」
ん、待てよ。
「ねぇ煌羅。もしかしてだけど、さっき日陰で横になっていたラージマウスって……」
「……」
「どうしたの、煌羅?」
「……」
「煌羅、ひょっとして私とあの娘を見比べているの?」
「……」
「ねぇ、煌羅」
「……」
「煌羅ってば!」
「はっ、どうしかしましたかお嬢様!?」
「どうしたの煌羅、さっきからネズミの女の子ばかり見て、胸なの?胸が気になるわけ?」
「いえ、あの火鼠が昔の知り合いに似ているような気がして――」
昔の知り合い――それってキタさんやペルシさんと同じ
私がそう推測していると
「チャンプ……身体が火照ってきたアル」
煌羅が火鼠と言った少女がチャンプにすり寄ってきた。
「ここでするのか?」
「もう我慢出来ないアル、体中の火照りを鎮火してほしいアルヨ」
「わかった、オレが夜の稽古をつけてやろう」
「ワシが後ろからチャンプを支えるから、遠慮なく挿入するでごわす」
「だったらわたしはチャンプのズボンを脱がせてやる」
河童が後ろから夫を支え、リザードマンがズボンを脱がせる。
炎天下にも係わらず男性器は元気に直立する。
火鼠もズボンを脱ぎ、夫の肩に体重を掛けて軽く飛び上がり、立位で挿入。
「あうっ、何度挿入しても慣れないアル。だけどチャンプのメスにされるのは、すごく気持ちいいアル」
「よし、そのまま腰の上げ下げ百回だ!」
「例え絶頂しても腰を止めてはいけないでごわすよ」
完全にメスと化した表情で、身体を上下に動かす火鼠。
「二人とも、何してるのー?」
「城門は目の前やで〜」
「門番に荷物チェックしてもらなわないといけないよー」
「行きましょうお嬢様」
「煌羅、あの火鼠に話しかけなくていいの?昔の知り合いかもしれないよ」
「おそらく魔物違いでしょう。私が知る火鼠――廿火(ハツカ)は男を積極的に求める性格とはあまりにもかけ離れていましたから」
「ふーん……だけど性格が変わったって可能性もあると思う」
「どちらにしても声を掛けるのは止しておきます――」
「お嬢様のためにも」
★エネミス城城門★
「はい、荷物チェックよし、次」
門番がクロ魔女さんの所持品検査を終えると今度は栗恵さんの所持品を検査する。
「荷物はこれや」
「ほぅ、蓄音器にレコードとは珍しい。よし合格だ、次は――」
「二角獣会のメインを務めるコーハです」
英斗さんはコーハが入ったケースを門番に差し出す。
「コーハ……そうか、バイコーン達が言っていた例の生贄か」
「栗恵さん、その箱や黒い円盤みたいなのって何なの?」
「これか、これは蓄音器って奴で黒い円盤はレコードっていう音楽を流す道具や。今は内緒やけど、いずれダイヤちゃんや煌羅はん、クロ魔女はんの三人にとって重要な物になるから楽しみにしいや」
「え〜教えてよ」
「楽しみは後でとっとくもんやで」
「煌羅も気になるでしょ?」
煌羅が門の奥を見つめていた。
「煌羅、今度は何を見ているの?」
「お嬢様、奥からバイコーンが来ますよ。数は三頭」
「ほらほら、あたしの言ったとおりだったでしょ」
「運命の女神から送られてきた使者が来たことに感謝します」
「ふーん、身長は180センチで細身の体型、骨格からしてサーフィンに適したタイプね」
奥から三頭のバイコーンがやってきた。
それぞれ白の柔道着、黒と白斑模様の修道服、黒の水着を着用している。
「あらあら、やって戻って来たわね、あなたー、ディマ、コヅナ、廿火ちゃーん!」
柔道着のバイコーンがそう呼んだ相手、
路地裏で見かけたリザードマンと河童がチャンプと共にこちらへと向かっていた。
その先陣をきるのは買い物袋を抱えた火鼠の少女。
「シロービ、材料を買ってきたアル……」
パサッ
火鼠の少女の手から買い物袋が落ちる。
「あらあら……廿火ちゃんが買い物袋を落とすなんてどうしたのかしら?」
「……あの、今、ハツカって言いました?」
「そうよ、あの娘は火鼠の廿火(ハツカ)ちゃん。十年くらい前にバッファちゃんと一緒に「きらきらーっ!」
火鼠の少女がこちらに向かって一目散に走り出す
「きらきらーっ!」
両手両足から火を発しながら。
ドコッ 「ぐはっ……」 ズサササササ!!!!
「煌羅!?」
煌羅の腹へとダイブし、煌羅を吹っ飛ばした。
「この胸の感触〜間違いなくきらきらアル〜会いたかったアル〜」
「あが……この飛び込み具合……まさか……本当に廿火なのですか?」
煌羅や私にとっては衝撃の再会であった。
★続く★
★ダイヤ視点★
「栗恵さん、エネミス帝国まではあとどれくらいで到着するのでしょうか?」
「そやな、まず断食砂漠を通らなきゃアカン」
「砂漠ですか、水分の補給を考えたら夜まで待ったほうがいいですね」
煌羅と栗恵さんが打ち合わせをする中、私とクロ魔女さんは周囲の景色を見渡す。
「いつになったら砂漠に入るのかしら?」
「うーん、この辺りは山や洞窟、池が所々にあるから、まだ砂漠じゃないわね」
「それにしても変わった形の山ね。黄色くて頂上が茶色、風に煽られてグラグラ揺れているわ」
「洞窟もふわふわした見た目で、内部がチョコレートに見えるわ」
「あーなんとなく判る。あの山を見ているとおやつに出されたプリンを思い出すわ」
「ダイヤちゃんも同意見なのね。あの洞窟には親近感が沸くのよ。パン屋のチョココロネにそっくりで――」
「ふぅ……」
「コーハ、何、額の汗を拭っているのよ。またそうやってカッコつけてさ」
「いや、さっきから暑くてさ」
「あら、ようやく自分自身の暑苦しさに気づいたのかしら」
「違う、太陽がジリジリ照りつけるんだ、もしかしたら僕たちは既に砂漠地帯に入っていると思う」
「はぁ?何言って――」
ポツッ
ふと、頭に水滴の感触を感じた。
空を見上げると、さっきまで青かった空は黒い雲で覆われてゆき。
ザーッ
生温かい雨が降り始めた。
「きゃあっ」
「お嬢様!」
「何なのこの黒い雨は!」
「口に入っ、うえっ、にがっ」
「ご主人様を守りまス」
「フンカー!」
「今、ご主人様を雨から守ってまーす!」
雨はほんの数秒で降り止んだ。
「お嬢様、お体は!?」
「大丈夫よ、煌羅。通り雨だったわね……」
「お嬢様、顔が汚れていますよ」フキフキ
「それにしても、今の雨は何だったのかしら」
「コーヒーでス」
と、ゴーレムのレームが説明してくれた。
「コーヒーやて?ホンマかいな?」
「はいマスター、成分を解析したとこロ、コーヒーに似た成分を検出。ホットコーヒーのようでス」
「ホットコーヒーか、そや、フンカ、体は大丈夫か?」
栗恵さんがラーヴァゴーレムのフンカに声を掛ける。
「フンカ〜フンカ〜」
「何や、暖かくて元気が出たんかいな……ひやひやしたわ〜」
「今、コーヒーが服に染み込んでまーす!」
リビングドールのイマちゃんの白いゴスロリ服がコーヒー色に染まっている。
「コーヒーの染みが出来たら大変や、すぐ洗うからばんざーいし」
「今、ばんざいしまーす!」
栗恵さんがイマちゃんの服を脱がす。
「困ったな〜いくらアラクネはんお手製の服とはいえ、はよ洗わんとコーヒーの染みが出来るかもしれへん」
「心配ないわ」
クロ魔女さんが服に向かって呪文を唱えると、服から泡が吹き出した。
「キャンサーの泡で包み込んだわ」
「おおきに〜」
「煌羅さんも服を脱いで、洗ってあげるから」
「いえ、私は結構です」
煌羅は首を横に振る。
当然、クロ魔女さんは何で?と問う。
「この給仕服は私が生涯お嬢様にお仕えすると誓った証なのです。入浴及び就寝以外では脱がないと決めているのです」
煌羅は一拍置いて
「だからお嬢様を守れるのならば、コーヒー程度の染みは何ともありません」
「そうよ、煌羅は私の傍にいるときは四六時中この服なの」
「へぇ〜どんなに濡れてもメイド服着衣を徹底しているのね」
「ウチの場合は、研究中は近くにレポートは置かんよう気をつけとるのに」
「だけど煌羅も時々、私の目の前で給仕服を脱ぐ時があるわ」
「えっ、ひょっとしてダイヤちゃんを襲っちゃうの?」
「給仕と令嬢の禁断の愛かいな? ルール違反の百合プレイや」
「そうそう、日頃の鬱憤を晴らすかのように煌羅が給仕服を脱ぎ捨てるの、私がやめてやめて言うけどそれでも構わず服を私に押し付けて、最終的にはブラとズロース一丁のまま、ゆっくりと私に近づいて、今度は私の服を強引に脱がしながら、小ぶりな胸に吸い付き、私を快楽の海へと引きずり込み、肉体的にも堕落しかけたところを見計らい、しなやかな手でそっと私の秘所を弄って――って違うゎよ!」
「いえ、強ち間違いではありません」
「煌羅、誤解を生むような発言をしないで!」
「ブラとズロース一丁になる辺りが」
「そっちかよ!」
「それと小ぶりな胸が」
「小ぶりで悪かったゎね!」
「そうです、私脱ぐとすごいんです!」
「でしょうね、煌羅は私と比べ物にならないほどの美乳の持ち主よね!」
「煌羅ちゃんはダイヤちゃんの事が好きなのね」
「漆黒の令嬢に仕える献身的な給仕って感じやな〜」
「はい、お嬢様は私にとって大切な人で、キキーモラとして生涯お嬢様に仕えるつもりです」
「もしこの給仕服を脱ぐときは――」
煌羅は急に声のトーンを落とす。
魔王城以来だっけ、久しぶりにこの煌羅を見たの。
「給仕としての立場を脱ぎ捨ててでも、お嬢様を守るときだ」
ぞくっ
クロ魔女さん達も感じたのだろう
煌羅から発せられた威圧感を
「君たち、話を逸らさないでよ〜」
この男を除いて。
「コーハ、私と煌羅の話に首を突っ込むなんて何様のつもりよ!」
「そうよコーハ、報連相は時と場合を考えなくちゃ商売は成り立たないわ!」
「そやで、コーハのせいでややシリアスな雰囲気が台無しやろ!」
「嫁との交わりを中断してまで、話を聞いているときに」
「空気読メ」
「フンカ!フンカ!」
「今、フンカちゃんは「そうだそうだ」と言ってまーす!」
「ここは絶対砂漠地帯だよ、太陽が眩しいし、暑くて堪らない!」
と、キメ顔で叫ぶコーハ。
こんなときでもキリッとした顔は忘れないのは暑さで頭のネジがやられたか、あるいは当の昔に頭のネジが切れているのか。
「でも流石に砂漠じゃないでしょ、山や洞窟があって、オアシスもたくさん在るし」
「いえ、お嬢様、彼の話に間違いはありません」
「煌羅?」
「先ほど地上の様子を確認してきたところ、砂漠地帯であることを確認しました」
「もう、煌羅まで私をからかうの?」
「いえ、この通り、地面は砂ですよ」
煌羅は掌から砂をパラパラ落とす。
「砂以外の場所も確認したところ、山はプリン、洞窟はパン生地とチョコレート、池はソーダやジュースで出来ていました」
「はぁ?」
「ですから、あの山や洞窟は食べられるのです」
「……それってつまり」
「私が出した結論は、ここはお菓子や飲み物などのデザートが連なる砂漠地帯だということです」
「マジで!?」
「ほら、トンスケも美味しそうにピーチソーダの水を飲んでいますよ」
トンスケは歩みを止めて、気泡が湧き出る桃色の池をゴクゴクと飲んでいる。
「煌羅、あの池がジュースで出来ているのか確かめに行きたい」
「了解です。お嬢様」
私は煌羅に付き添われ地上へ下り、トンスケと共に桃色の水を飲む。
「ピーチの味がする。口の中もソーダのようにシュワシュワする」
「お嬢様、次はソーダの池に参りましょう」
「そ、そうね。次もジュースで出来ているのか確かめなくちゃ」
私は煌羅に抱きかかえられ、次の池へと向かった。
トンスケもそれを察したのかゆっくりと私たちの後を追う。
「まずは私が味見をさせていただきます」
煌羅が池の水を手で掬って口へと運ぶ。
「お嬢様の美しさを照らす青空よりも青いソーダの水に、炭酸がお嬢様の口付けのように私の舌を蹂躙しています」
「うん、水の味を私に譬える元気があるなら害はなさそうね。ごくごく、くーっ、炭酸がシュワシュワする、喉がカラカラだったから余計においしい、何度でも飲みたい」
「ではお嬢様、彼女たちの情事を肴にしては如何でしょうか?」
煌羅が指した先には
「まってよー」バシャバシャ
「やったなー」ザバザバ
「きゃははは」ビショビショ
マーメイドやスキュラ、ネレイスといった海の魔物が池の真ん中を泳いでいた。
彼女たちは互いに水しぶきを浴びている。
「楽しそうね、女同士で」
最初は砂漠のオアシスに浸っていたのかと思ったが
「女同士じゃありませんよ、お嬢様」
よく見ると彼女たちの中心に男性が一人。
「なんだ、カップル達が泳いでいたのね、他の男性はどこにいるのかしら」
私はあと二人の男性の影を探すが
「妙ね、他の男性が見当たらないわ」
「はぁー、あれだけ炭酸飲料を飲んだのにも係わらず、お嬢様の思考は酸欠気味ですか?」
「煌羅?」
「考えてみればわかることでしょ、男が一人しかいないということは彼女達全員がその男の妻だということです」
「あっ、成る程、ハーレムね」
「バイコーンたるお嬢様が一人の男と複数の女性イコールハーレムという方程式を導き出せないようならば、ハーレムどころか、夫探しすらも炭酸のように弾けては消える儚い夢です」
「うぐっ、反論出来ない」
「おや彼女達が一斉に夫を襲う準備を始めたようです。彼女達の情事を見て頭に栄養補給をなさってください」
「わかってるわよ」
私はハーレムの光景を間近で眺める。
「ねぇ、わたしの歌を、聴いてくださいませ」
マーメイドが夫の耳元で愛の歌を唄い
「逃がさないぜ!」
スキュラが八本の足で夫と絡み合い
「水の泡が踊る海へ参りましょう、んっ、ちゅっ」
ネレイスが夫に熱い口づけを交わしながら池の中へ引きずり込もうとする。
私たちが見ているにも係わらず、自分たち以外誰も存在していないかのように躊躇なく夫の精を搾ろうとする。
「お嬢様、何ボーッとしているのですか!」
「……はっ、つい見惚れてしまった」
「気をしっかりしてください。気づかないのですか?」
「言われてみれば、どうして海の魔物が砂漠のど真ん中にいるのかしら」
「そうじゃありません、私が言いたいのは今が自慰のチャンスだということです」
「そうね、あれをオカズに――しないわよ!」
「意外でした、お嬢様は他の魔物娘達との恋愛事情に興味があって、交わりを覗き見しながら自慰をするのが趣味かと」
「私はメロウかよ!」
「どの道二角獣会で、多くのハーレムを見ながら自らを慰めるのですから、今のうちに日ごろから溜まっている性欲を晴らしテッ」ドンッ!ドボン!
私は煌羅を池へ突き落とす。
「少しはコーヒーの染みを洗い流しなさい!」
煌羅が池から飛び出し、私の前足を掴む。
「ちょ、煌羅、放しなさいよ」
「お嬢様も池に浸かれば、少しは心の染みが取れるのでは?」
「やめなさい、私まで巻き込もうとするな!」
「いやです。私だけ池ポチャして、お嬢様だけ平然としているのは不公平です」
「嫌よ、煌羅だけ落ちなさい」
「さては、服が濡れて全身に張りついても、地平線な胸元が強調されるという現実が突きつけられるのが怖いのですか?」ムニュゥ
「やかましい、胸を私の足に押し付けながら言うな」
「感じますかお嬢様、前足から伝わる胸の感触が?」
「ぐぬぬ、屈辱以外の何者でも無いゎー!」
「男だったら、さぞかし嬉しいシチュでしょうねぇ?悔しかったら自ら池に飛び込んで、ピチピチに濡れた胸を揉みしだいてくださいな!」
「そうやって私を池に誘おうとする算段でしょ」
「チッ、もう少しでお嬢様をびしょ濡れに出来たと思ったのに」
「落ちてたまるか!」
「落ちてください!」
「落ちてたまるか!」
「落ちてください!」
「落ちてたまるか!」
「落ちてください!」
私と煌羅の攻防が続く中
「見てください、バイコーンの娘とキキーモラが仲良く遊んでいますわ」
「ケンカするほど仲がいいって奴だな」
「もしかしたらあれが彼女の調教かもよ。ダイバ様とはまた違うタイプの」
海のハーレム達が休憩中で、私と煌羅の行為を遠くから見物
「皆さん、彼女達に習って夫の取り合いをしてみませんか?」
「賛成だ。あの二人に負けないくらい精をたっぷりと絞ってやるぜ」
「勝負するからにはより深みへと沈ませてあげる」
それを肴に夫との交わりを盛り上げようとしていた。
★
「ただいま戻りました」
「はぁー疲れた〜」
「お帰り二人とも。どうだった、池にいたハーレムの様子は?」
「聞いて驚いてください。ソーダの池がクリームソーダの池に変わる勢いで、彼女達の交わりはより激しさを増していました」
「クリームソーダか、新たな商売誕生の予感がするわね〜」
と、クロ魔女さんは妖艶な表情を浮かべている。
「近くにあるお菓子と飲み物を収穫したさかい、これ食べて元気出しい」
「ありがとう栗恵さん。いただきまーす」
私は栗恵さんから渡されたプリンと苺のミルフィーユを口に含む。
プリンの柔らかさとミルフィーユの噛み応え、相反する二つの感触が私の口を蹂躙する。
「ごくごく、ふぅ、砂漠地帯で飲むジュースは格別ね」
「水や食料の確保が出来てホンマ良かったわ、これならわざわざ夜を待たんでも砂漠地帯を越えられるで」
「改めて見ても、砂漠なのにプリンの山やミルフィーユの断層地帯、コーヒーの雨やジュースの池って常識じゃ考えられないものばかりね」
「一体どこにこんな大規模なものを作る材料や技術があったのでしょうか?」
「その件ならお菓子一つ一つを分析したところ、お菓子やジュースは魔力で出来ていることがわかったで」
「交わりで放たれる魔力を特殊な術式でお菓子に変換したみたいなの」
と、栗恵さんとクロ魔女さんが解説する。
「それでもこんな巨大なのはありえないわよ……」
「いずれにしても砂漠地帯をお菓子の地帯に変えた術者は只者では無いことは間違いないでしょう」
「ねぇ煌羅、私が思うにその術者って大の――」
「お嬢様、エネミス帝国が見えてきました。降りる準備をします」
「話の腰を折りやがった……」
★エネミス帝国前★
「トンスケはここで待機してね」
「お嬢様、これを」
煌羅が私にピンクの折りたたみ傘を差し出す。
「また先程のように雨が降らないとは限りませんので」
「判ったわ、肌身離さず持っているわ」
私は折りたたみ傘を腰に装着して、長い階段を上る。
まずはエネミス帝国を治める女帝、アポピスのピスコ様にご挨拶をしにいく。
★エネミス帝国城下町★
「砂漠地帯だからフードや帽子で日光を遮る住民が沢山いるわ」
「軍事国家だけあって武装している兵士も多いわね」
「だけどホンマに親魔物領に鞍替えしたんやな。魔物が仰山おるで」
「男女同士が、交じり合うことは不純なことではありません、本能の赴くままに交わりあってください」
ふと声がする方を振り向くとダークプリーストが大衆の前で広報活動をしていた。
座位の体制で下から夫に突かれながら。
「躊躇しなくていいんだぞ〜堕落しちゃえ〜」
「禁欲こそが禁忌だと知れ!」
ダークエンジェルとダークヴァルキリーらしき二人組がダークプリーストに続く形で大衆に告げる。
「そうよね、セックスって最高の行為かもしれないな」
「テキーラ様が堕落してもあんなに嬉しそうなのは、堕落こそが何よりも幸福だと気づいたからなのね」
「ああ……わざわざ遠路はるばる来ていただきまことにありがとうございます」
「あたしにも何だか神の声が聞こえてくるような気がします」
「ねぇ、せっかくだからここで、やらないか?」
「すごく、賛成です」
「お嬢様、住民達が交わりはじましたよ」
「……恐るべし堕落神の教え」
「ああっ・出ています出ています・命の白が・」
「出ちゃったの〜次はあたしね〜」
「我は戦乙女だから、最後で構わぬ」
ダークプリーストが夫との結合を解くと、すぐさまダークエンジェルが腰を落とす。
妖艶な表情で倒れこむダークプリーストの結合部から精液がボタボタと落ちている。
「ほらほらアアン〜・ただ見する暇があったらアアン〜・さっさと交わっちゃアンアン・もっと突いて突いて・」
「もし夫や妻がいないなら適当な相手と交わればいいのだ!」
ダークヴァルキリーの一押しで、交わりを躊躇っていた男女もペアを作り始めた。
「ラミア属や砂漠出身の魔物娘は当然として、様々な種族がいますね」
「煌羅の言うとおりね、ワーキャットが甘えるような仕草で隣にいた男を誘い始めたわ」
「ワーラビットも意気揚々と腰を振っているわね。あそこまで陽気に交わると逆にすがすがしいわ」
「プライドが高いことで有名なドラゴンさえもメストカゲのように犯されとるわ〜」
「如何でしたかバイコーンの皆さん。私達の教えは?」
「うわっ、びっくりした!?」
「いつの間におったん!?」
先程まで夫に突かれていたダークプリーストが、私達の前に立っていた。
首から下は全裸のままで。
「っていうか何で私たちが遠くで見ていたことに気づいたのよ!」
「うふふ、不純なる御加護を感じたものですから。もし良ければバイブル様直筆の聖典をどうぞ」
彼女は白の斑模様が混じった黒表紙の本を私たちに差し出す
「いえ、結構です」
「聖典の在庫なら十分にありますので」
「そや、ウチらは二角獣会へ行かなアカン」
「すぐに結論を出さなくても結構です、気が向いたらいつでもどうぞ。では私は広報活動の最中なのでこれで失礼します――またお会いしましょう」
ダークプリーストは慈愛の笑みで、万魔殿化した集まりへと戻ってゆく。
丸出しの結合部から垂れ落ちる命の白をマーキングしながら。
「ああやって性なる欲望を引き立たせて勧誘するのが堕落神の教えなのね」
「堕落神は信者に声を語りかける形で、女性をダークプリーストに変えるといいますからね」
「マリア義姉さんが私たちに誘惑に嵌らない強い心を持ちなさいと念を押す気持ちがわかる気がしたわ」
「お嬢様の場合はもう少し欲を持って行動をしたほうがイテッ!」
「クロ魔女さん、栗恵さん、英斗さん。再び勧誘される前にさっさと城へ向かいましょう」
★エネミス帝国中心部★
「昼間は暑いせいか日陰で休んでいる住民も多いね」
「ラージマウス達が日陰ですやすや眠っとるわ」
「普段は落ち着きのない彼女達も暑さにはバテてるね」
「いや、そうでもないよ。あれをみてよ」
と、コーハがカッコつけながら指した先には
「ハッ、ハイッ」
「どうした?動きが鈍いぞ?暑さでばてたのか」
「これしきの暑さでバテていては一人前の闘士にはなれないでごわす」
路地裏でネズミ耳の少女が二刀流のリザードマンとまげを結った河童から稽古をつけていた。
「へぇ〜この暑さの中でも元気なマウス属もいるのね」
「格闘系マウス属って感じやな」
「おーい、みんな」
彼女達の下に、買い物袋を抱えた一人の男性がやって来た。
「お帰りアル、チャンプ」
「おかえ……ちゃんとシロービから頼まれた食材を買ってきたのだろうな?」
「ああ、みんなが稽古の疲れが吹っ飛ぶような食材を厳選してきたぞ」
「すごく美味しいちゃんこが期待できそうでごわす」
「ふ〜ん……夫持ちか。残念だったわね、コーハ」
「ふっ、僕は最初からあの娘達には素敵な旦那様がいると思ったよ。特にムチムチボディなネズミ少女を見た瞬間にね」
「ちょっとカチンときたけど確かにマウス属にしてはスタイルがいいわね……マウス属はドレッサさんのように小柄で一日の大半を眠りに費やす種族だと思っていたわ」
「そうなのかい?僕が以前見かけたラージマウスの群れは一人の夫に射精を強請るせっかちさんで、眠りとはかけ離れた存在だったけど」
「まぁドレッサさんはちょっと特別な部類で、マウス属は基本落ち着きがなく、あちこち動き回るって兄貴が言っていたけどさ……」
ん、待てよ。
「ねぇ煌羅。もしかしてだけど、さっき日陰で横になっていたラージマウスって……」
「……」
「どうしたの、煌羅?」
「……」
「煌羅、ひょっとして私とあの娘を見比べているの?」
「……」
「ねぇ、煌羅」
「……」
「煌羅ってば!」
「はっ、どうしかしましたかお嬢様!?」
「どうしたの煌羅、さっきからネズミの女の子ばかり見て、胸なの?胸が気になるわけ?」
「いえ、あの火鼠が昔の知り合いに似ているような気がして――」
昔の知り合い――それってキタさんやペルシさんと同じ
私がそう推測していると
「チャンプ……身体が火照ってきたアル」
煌羅が火鼠と言った少女がチャンプにすり寄ってきた。
「ここでするのか?」
「もう我慢出来ないアル、体中の火照りを鎮火してほしいアルヨ」
「わかった、オレが夜の稽古をつけてやろう」
「ワシが後ろからチャンプを支えるから、遠慮なく挿入するでごわす」
「だったらわたしはチャンプのズボンを脱がせてやる」
河童が後ろから夫を支え、リザードマンがズボンを脱がせる。
炎天下にも係わらず男性器は元気に直立する。
火鼠もズボンを脱ぎ、夫の肩に体重を掛けて軽く飛び上がり、立位で挿入。
「あうっ、何度挿入しても慣れないアル。だけどチャンプのメスにされるのは、すごく気持ちいいアル」
「よし、そのまま腰の上げ下げ百回だ!」
「例え絶頂しても腰を止めてはいけないでごわすよ」
完全にメスと化した表情で、身体を上下に動かす火鼠。
「二人とも、何してるのー?」
「城門は目の前やで〜」
「門番に荷物チェックしてもらなわないといけないよー」
「行きましょうお嬢様」
「煌羅、あの火鼠に話しかけなくていいの?昔の知り合いかもしれないよ」
「おそらく魔物違いでしょう。私が知る火鼠――廿火(ハツカ)は男を積極的に求める性格とはあまりにもかけ離れていましたから」
「ふーん……だけど性格が変わったって可能性もあると思う」
「どちらにしても声を掛けるのは止しておきます――」
「お嬢様のためにも」
★エネミス城城門★
「はい、荷物チェックよし、次」
門番がクロ魔女さんの所持品検査を終えると今度は栗恵さんの所持品を検査する。
「荷物はこれや」
「ほぅ、蓄音器にレコードとは珍しい。よし合格だ、次は――」
「二角獣会のメインを務めるコーハです」
英斗さんはコーハが入ったケースを門番に差し出す。
「コーハ……そうか、バイコーン達が言っていた例の生贄か」
「栗恵さん、その箱や黒い円盤みたいなのって何なの?」
「これか、これは蓄音器って奴で黒い円盤はレコードっていう音楽を流す道具や。今は内緒やけど、いずれダイヤちゃんや煌羅はん、クロ魔女はんの三人にとって重要な物になるから楽しみにしいや」
「え〜教えてよ」
「楽しみは後でとっとくもんやで」
「煌羅も気になるでしょ?」
煌羅が門の奥を見つめていた。
「煌羅、今度は何を見ているの?」
「お嬢様、奥からバイコーンが来ますよ。数は三頭」
「ほらほら、あたしの言ったとおりだったでしょ」
「運命の女神から送られてきた使者が来たことに感謝します」
「ふーん、身長は180センチで細身の体型、骨格からしてサーフィンに適したタイプね」
奥から三頭のバイコーンがやってきた。
それぞれ白の柔道着、黒と白斑模様の修道服、黒の水着を着用している。
「あらあら、やって戻って来たわね、あなたー、ディマ、コヅナ、廿火ちゃーん!」
柔道着のバイコーンがそう呼んだ相手、
路地裏で見かけたリザードマンと河童がチャンプと共にこちらへと向かっていた。
その先陣をきるのは買い物袋を抱えた火鼠の少女。
「シロービ、材料を買ってきたアル……」
パサッ
火鼠の少女の手から買い物袋が落ちる。
「あらあら……廿火ちゃんが買い物袋を落とすなんてどうしたのかしら?」
「……あの、今、ハツカって言いました?」
「そうよ、あの娘は火鼠の廿火(ハツカ)ちゃん。十年くらい前にバッファちゃんと一緒に「きらきらーっ!」
火鼠の少女がこちらに向かって一目散に走り出す
「きらきらーっ!」
両手両足から火を発しながら。
ドコッ 「ぐはっ……」 ズサササササ!!!!
「煌羅!?」
煌羅の腹へとダイブし、煌羅を吹っ飛ばした。
「この胸の感触〜間違いなくきらきらアル〜会いたかったアル〜」
「あが……この飛び込み具合……まさか……本当に廿火なのですか?」
煌羅や私にとっては衝撃の再会であった。
★続く★
14/12/02 19:34更新 / ドリルモール
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