連載小説
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エネミス帝国領域
★エネミス帝国領域★
★ダイヤ視点★


トンスケが草木が乏しい平地を歩く。

トンスケは私と煌羅専用の騎獸だが、今回はいつもより多くの人数を乗せてエネミス帝国へ向かっている。


「いい眺めね。箒に乗って空を飛ぶのもいいけど、魔界豚に乗って移動するのも悪くないかも」
「ダイヤちゃん、ウチらも乗せてくれておおきに〜」


魔女の格好をした女性と研究者の格好をした女性が私にお礼を言う。

「クロ魔女さんや栗恵さんも運ぶ荷物が多くて大変でしょ?」

「ゴメンね、魔術具の注文が予想以上に多くて」
「ウチの発明品が思い切り自慢出来るで」

個性的な女性二人に共通するもの。
腰から下は黒い馬の下半身、頭部に生える二本の角。

そして


「久しぶりに複数の女性が一人の男に群がる光景が見られると思うとわくわくするわ」
「英斗〜ちゃんと嫁三人と仲良く遊んどるか〜?嫁一人増えたからこそ仲良う遊ばなきゃアカンで〜」


一人の男性が多くの女性と戯れることを良しとする思考


彼女たちは不純の象徴、バイコーン


無論、そういう私もバイコーンだけど


「悲しい事に貰い手がいないために、夫探しの旅に出ているバイコーンなのです」
「煌羅!余計な補足事項を言わないで!」

「旅を始めて約二年、親魔物領へ足を運んでも貧相なお嬢様は誰にも見向きしてくれません」
「貧相で悪かったゎね!」

「仮にお嬢様に声を掛けるロリコ……勇気のある男がいても私が片っ端から追い払っていますが」
「今、何を訂正したの!」

「お持ち帰り目的で教団と魔物娘との戦闘に介入しようとしても、お嬢様のしかめ面に恐れをなしたのか、教団はおろか魔物娘たちまで退散する始末」
「多分それ、トンスケの大きさにビビッて逃げただけだと思う」

「そんなお嬢様にも、やっと夫に見つけられるチャンスがやってきたのです」
「ええ、今まで知らなかったわ……」

「それは、バイコーン達が夫とハーレムを引き連れて秘かに集まる――」



「二角獣会」



「そこではバイコーン達が自分の夫とその妻達がいかに淫らに愛し合っているかを語り合い、夫と妻たちに性交を促し、会場中を様々な魔物娘の魔力で包み込む」
「バイコーンは、ハーレムという形で多くの女性達に最愛の夫の味を知らしめることが何よりの悦びだからね」

「さらに未婚の魔物娘や純潔の女性を連れ込み、自身のハーレムに加える選別が行われ、逆にバイコーンの夫に魅了された者が自らハーレム入りを志願するのです」
「うんうん、バイコーンの夫の精は他の魔物娘を引き寄せる力があるのよね」

「そして、バイコーン達は彼女達に調教を施し、夫が好む淫乱な魔物へと仕立て上げるのです」
「調教、ね……」

「しかし、それはまだ前座の段階。真の見せ場は新たなハーレムの結成といえる――」



「――誕生と婚姻の儀式」



「前にクロ魔女さんが言っていた……」

「儀式に選ばれた男性とバイコーンがその場で契りを結ぶの」

と、クロ魔女さん。

「さらに未婚の魔物娘達と契りを結んで、新たなハーレムの誕生ってわけや」

と、栗恵さん。

「自慢の夫との淫らな行為を自慢できて、ハーレムの素晴らしさを知る者が増える」

と、煌羅。

「「「これぞ、バイコーンが理想とする会合の形」」」

笑顔が眩しい二匹のバイコーンに挟まれる形で、仏教面のキキーモラが息を合わせる。

「っていうか煌羅、何時の間にクロ魔女さんたちと仲良くなったのよ」

「お嬢様のノリが悪いだけです」
「いやいや、私は基本ツッコミ役だし」

「少しはクロ魔女さんと栗恵さんを見習っては如何ですか?」
「だからそんなノリノリになれないわよ」

「いえ、私が言ってるのはハーレム作りのことです」
「そっちかよ」

「そっちかよで済む問題ですか、お嬢様はいずれ夫を手に入れたら、多くの魔物娘を誘ってハーレムを作らなければなりません」

「いや〜私は煌羅がいれば充分だし」
「お嬢様は良くても、夫や他の魔物娘はそうはいきませんよ?」

「うーん、ハーレムを築くって言ってもイマイチ想像がつかなくて……栗恵さんはどうなの?」

「ウチか?ウチは物を作ったり改良するのが好きやから、嫁はゴーレムやガーゴイルとか自由に身体を弄れる物質系と決めとるんや。英斗、ちゃんとレームやフンカ、イマと交わっとるか?」

「あ゛ぁぁ、レームのバイブ機能がぁぁ、気持ちぃぃ」ビュルリルル

「精液の噴射を確認。一定量溜まりましたので交代しまス」
「フンカ〜♪」
「今、フンカちゃんが挿入しましたー!」

「ホント、三人のコンビネーションは抜群ね。休憩を除いたら交互に繰り返して精を搾ってるわ」
「こんなんまだまだ序の口や、ウチ制作の石像がガーゴイル化すれば新たな研究や開発が捗るで」

栗恵さんは目を輝かせながら石像を撫でている。

「魔物娘の魂はーん、いい器があるから入ってきてな〜」

「あの石像がガーゴイル用と聞いたときは正直目を疑ったわ。てっきり魔除けの類いかと……」
「魔王城で門番をしてたゴイルが絶世の美女だと思えてきました」


「話は変わるけどクロ魔女さん」
「どうしたの?ダイヤちゃん」

「クロ魔女さんは独身だけど、ハーレムを作るつもりは無いわよね?」
「どうして?」

「だって、クロ魔女さんが住んでる町はラミア属が多いでしょ」
「確かにそうね。彼女達は一夫一妻を望んでるわ」



「だからラミア属以外の女性を集めたハーレムを沢山作るつもりよ」
「マジで!?」



「ただ、ハーレムに加える娘は真面目に商売を手伝ってくれる人を求めてるわ」
「手当たり次第加入するわけじゃないのね」

「どのみち商売のノウハウを徹底的に叩き込むけど」
「結局は調教かよ」

「判りましたかお嬢様、お二人が目指すハーレム像が」
「ええ」
「二角獸会でも様々なハーレムと出会えるでしょう。お嬢様にとってはいい刺激になるかと」
「だけどね、腑に落ちないことがあるのよね」
「何か不満でも?」
「不満という訳じゃないけどさ、誕生と婚姻の儀式に参加するバイコーンがね――」



「――最終的にバイコーンでさえあれば、手段は選ばないということよ……」



「お嬢様の言いたい事が判りました」
「主催者側の話によると、今回の相手はユニコーンだと聞いているわ。相手が人間の女性なら魔術やらバイコーンの魔力が込められた装備品を使って魔物化させるけど……」

私は一拍置いて

「ユニコーン相手だと他の女性の魔力が混じった男性の精を体内に注ぐ事で、バイコーンへと堕落させるのでしょ?」
「確かにユニコーンの魔力は他の魔物の魔力が混じると、バイコーンの魔力へと変化しますからね」
「純潔を保とうと努力してきたユニコーンの気持ちはどうかなって思うの」

クロ魔女さんと栗恵さんが「あ〜」と言う。

「確かにダイヤちゃんの言うことにも一理あるわね。ラミア属も一人の男性を愛し、男性が自分だけを愛するよう涙ぐましい調きょ……努力をするから、純粋な愛は大切よね」
「研究というのは一つの事ばかり拘ってちゃ成り立たへんけど、逆に一つの事に徹底して拘れば実を結ぶこともあるからな〜」


「ですがお嬢様のお母様は元ユニコーンじゃないですか」
「うん、知っているよ。でもお母様はバイコーンになった時はハーレムも悪くないかなって思うようになっただけで、大して変わらないと言っていたわ。ましてや人間だった頃の変化の方が強いって」


「ユニコーンからバイコーンへの変化か……エキドナから生まれた身としては想像がつかないわ」
「ウチはリリムの手で人間から直接バイコーンになったからな〜もし、逆にバイコーンからユニコーンになれたら、ユニコーンたちの気持ちもわかるんやろか?」


「そうかもしれないわね、私もユニコーンの経験が無いから、何とも言えないけど」
「……」
「どうしたの?煌羅、私をじっと見て……」
「……」
「煌羅?」
「すみませんお嬢様、私は今までお嬢様に対して黙っていたことがあります」
「何よ、煌羅、またいつものからかい?」

だが、煌羅が真剣な顔つきで私を見つめる。



ゴクッ



私は息を呑み込む。

「煌羅、教えて、私に黙っていたことって……」
「それは――」















「あの男のことです」















煌羅が指した先には

「ふっ、みんなしてこの僕を会話の中に混ぜないなんて、僕が加わると緊張して何も言えなくなるのかな?」

前髪を掻き分ける仕草でそう呟く男がいた。

「そうだよね、この僕、コーハを見れば未婚でも既婚でも誰だって緊張しちゃうね」

と、片目をパチリする男、コーハ。

「あっ、そういえばいるの忘れた」
「全く、お嬢様とあろうお方が声を掛けてきた男の顔を忘れるなんて」

「いや〜私と煌羅、クロ魔女さんと栗恵さん達で話が進んでいたからつい……」
「一人一人声を掛けてきた男の顔を忘れるようでは、将来の夫を見つけるのは夢のまた夢ですよ?」

「うぐっ、っていうか、声かけてきた野郎の顔なんか忘れなさいと言ってきたのは煌羅でしょう?」
「ですが今回の二角獣会で必要な生けに……ハーレムの主になるべき男なのです」

「でも、私は関係ないし、それに好みのタイプじゃないもん」
「確かに魔物娘は外見の美醜より、心の美醜を気にします」

「でしょ?あんな男よりも兄貴やお父様の方がよっぽどいいわよ」
「彼はイケメンな見た目をいいことに、私やお嬢様、クロ魔女さんに声を掛け捲るいけ好かない軟派野郎です」

「そうよ、手当たり次第女の子に声を掛ける男より、百を超える妻達全員に愛を注ぐお父様や、三人の嫁一筋の兄貴のほうがずっとマシよ」
「お嬢様のおっしゃるとおり、彼は女の子なら誰でもいいやという浅はかな考えの男です、ですがそんな男がバイコーンの妻に、ハーレムの主になるかもしれないのです!」

「ホントにそうかな?私としては順調にいくとは思えないけど。相手がドタキャンするかもしれないし」
「その可能性もないとは言えません。しかし、例え軟派が服を着て歩いているような男でも、いつかお嬢様が作るハーレムの参考になるのかもしれません。例え中身が残念な男でも、引き寄せられる娘もいるのだと」

「へぇ〜私としてはあんな男に引き寄せられる物好きなユニコーンの顔が見てみたいわ、どうせ何らかの事情でバイコーンにならざるおえなくなったのでしょうけど」
「お嬢様、言っていい事と悪い事がありますよ!」

「ご、ごめん、煌羅、少し言い過ぎた。お母様も好きでバイコーンになったわけじゃないのよね……」
「そうです。そのユニコーンも何らかの事情があってバイコーンになる必要があるのです。さらに追い討ちをかけるように夫候補は残念男という悲劇、ああ、夫候補がもう少しまともな人間ならばバイコーンになることも抵抗は無かったでしょうに」

「うん、相手があんな男じゃなければね……せめてお父様のように分別のある人だったら」
「わかっていただけましたかお嬢様」

「ええ、どんな理由であれ魔物娘を冒涜しちゃいけない」
「相手を思いやってこそ、ハーレムを築くバイコーンの役目なのです」


「あの〜いくらなんでも言いすぎだと思うけど、コーハのこと」
「そや、いくらコーハでも、そこまで言われたら落ち込むと思うで」


「ふっ、ダイヤちゃんや煌羅さんにそこまで心配してくれるとは、僕も罪な男だ」


「……特に落ち込んでいる様子はなさそうね」
「心配したウチがアホやったわ」


「三人とも、続きをやるよ」
「了解、ご主人様」
「フンカ〜」
「今、エッチを再開しまーす!」


「僕も透明な箱の中から君たちの交わりをじっくりと見学させてもらうよ。いずれ僕の身に起こりうる事だと思ってね」


「栗恵さん、改めて確認させてもらうけど、コーハはしばらくの間、透明なケースで隔離されていることでいいよね」
「そうよダイヤちゃん、成人一人がギリギリで入れるサイズのケースの中で隔離してるわ」
「そやでダイヤちゃん、二角獣会が始まるまでは決して逃げへんよう、また他の魔物に襲われんよう透明なケースが守ってくれるんや!」

私達の会話を聞いたコーハは


「そこまで僕の事を大事にしてくれるなんて、僕も罪深き男だ」


ある意味おめでたい人ね……。


★続く★
14/11/19 23:28更新 / ドリルモール
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■作者メッセージ
夜遅く失礼します。
ドリルモールです。


ようやくダイヤ、クロ、栗恵のバイコーントリオが二角獸会に参加するためエネミス帝国へと向かいます。

バイコーン達の生け……新たなハーレムの主となるであろうコーハを連れて。


今回はここで一区切り、次回はエネミス帝国を取り囲む断食砂漠へと足を踏み入れます。

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