連載小説
[TOP][目次]
ラミアラミアロード・仮装パーティー
★ラミアラミアロード★
★ダイヤ視点★


「いらっしゃいませ〜」
「ダイヤちゃん、今日も元気がいいわね。ダイヤちゃんを見ているとわたしもはりきっちゃうわ」
「滅相もありません。白石さん、今日もいつものですか?」
「ええ、わたしとだんな様の分をお願いね」
「どうぞ」

まかいも団子の包み一つを白石さんに渡す。

「ありがと、うふふ、家に帰ったら、ペースト状にしてだんな様に口移しをうふふ」

白石さんは妖艶な笑みを浮かべながら、白い蛇の体を這ってゆく。


「ここで働き始めて、数ヶ月。バイコーンが集まる二角獣会に参加するはずなのに、どうしてこうなった」
「仕方ありませんよ、会場であるエネミス帝国が突然の親魔物国家の鞍替えで、国の方はてんやわんやでしたから」
「っていうか、あそこってとっくの昔に親魔物国家だったそうじゃない?何で反魔物国家と偽ってたのかしら?」
「魔物にもそれぞれ事情があるのですよ。それに国の方も落ち着いてきたから、もう少しですよ」
「まあ、別にここでの暮らしも悪くはないと思うけど、ラミアさんたちは浮気を許さないことを除けば基本いい人だし」
「確かにそうですね、ですがお嬢様にとっては浮気を否定すること自体が死活問題ですが」
「確かにそうよね〜」
「それにしても、お嬢様、大分様になってきましたね。白石さんも嬉しそうでしたよ」
「ホント、煌羅」
「はい」
「確かに以前と比べたら、ちゃんと接客が出来るようになったけど……」

「いえ、様になってきたのはミニスカメイド服を着こなしていることですが?」
「ってそっちかい!」

「何せ私の自信作ですから」
「自画自賛かよ」

「まず夜なべして作成したスカート、そこから見える生足とニーソックスが客を引き寄せるのです」
「テーブルクロスが視角になって見えないけど?」

「極度に短くしたスカート丈は、見えそうで見えない絶対領域」
「風が吹くたびに慌てて抑えてるわ……」

「黒い服の上に纏う白のエプロン、シワのないすらっとした体に可愛らしさが引き立っています」
「今さらっと馬鹿にしなかった?胸とか、胸とか?」

「そして極めつけは長い黒髪を両端に結った髪型」
「いつも煌羅が結ってくれるツインテールのことね」

「いえ、正式にはツーサイドアップですよ」
「マジで!?」

「ですが、お嬢様のような可愛らしく、かつ、いじりがいのある者にはツインテールと言葉が相応しい!」
「いじることは確定かよ!」

「弄って当たり前です、お嬢様にお仕えするキキーモラたる者、令嬢に相応しい待遇が必要なのです」
「そんな待遇、煌羅じゃなかったらメイド相談所に密告してるやるゎよ!」

「お嬢様、メドゥーサのお客様が来ましたよ」
「スルーしやがった……」
「お嬢様、スマイル、スマイル、商売の秘訣は笑顔ですよ」
「わかってるわよ……いらっしゃいませ、おいしいおいしいまかいも団子はいかがですか?」

「ふーん、どうしょうかな?」

メドゥーサさんからは夫の匂いを確認した私は。

「良かったら旦那様へのお土産にいかがですか? 今なら団子一つで銅貨一枚ですよ」
「それじゃあ、二つください」
「はーい、どうぞ」

私は団子二つを包みに入れてメドゥーサさんに渡す。

「はい、代金……ん?」

銅貨二枚を渡そうとしたメドゥーサさんが首を傾げ、クンクン、と私の匂いを嗅ぐ。

「あの?私の顔に何かついてますか?」



「……あなた、人間じゃないでしょ?」



ぎくっ



ひょっとして、バレた?

「は、はい……」
「どんな相手でも受け入れるスタンダードなサキュバスなんだからもっと自信を持ちなさいよ」
「はい、でもここはラミア属が経営する露店が多いので、この姿の方がやりやすいんです」

「まぁいいけどさ、じゃあね〜アイツ喜ぶかな〜喜ばなかったら固くするけどね〜」

メドゥーサさんはウキウキしながら蛇の身体を這いずってゆく。


「……クロ魔女特性香水の効力は抜群ですね。お嬢様」
「そうね、あのメドゥーサさん、私をサキュバスだと思い込んでたわ」


「はっはっは、戻ってきたぞ」
「店番ご苦労様」

「お帰りなさい、ティーダさん」

店主であるマンティコアのティーダさんとその旦那さんが戻ってきたわ。

「二人とも今日はあがっていいわよ」

「いいの?予定よりも早いけど」

「はっはっは、今日は仮装パーティーだ。煌羅ちゃんと一緒にパーティーを楽しむといい」
「クロ姉も待ってるよ?」

「わかりました、ではお言葉に甘えて。行きましょうお嬢様」
「ありがとうございます」
「お嬢様、お手を」

煌羅から手を差し出され、私は受けとる。

「足元には気をつけてくださいね」
「勿論よ」

私と煌羅にリードされて、慣れない二本足でクロ魔女さんの下へ向かったわ。


★クロ魔女の家★


「お帰り、ダイヤちゃん」
「ただいま、クロ魔女さん、うわぁ服がいっぱい」
「反魔物領出身の商人から安く仕入れてきたわ」

煌羅が服を一着とり

「安いとはいえ、それなりの値段がするものばかりですよ?」
「教団が管轄する反魔物領が急進派一行に侵略されたから、古服の処分に困ってたって」
「クロ魔女さんは、相変わらず反魔物領の品を購入するのが好きですね。前も古本商人から古本を大量購入しましたし」
「反魔物領の文化を知ることも商売の秘訣よ。ただ、あの時はクリアちゃんに本を送ることが目的だったけど」

煌羅とクロ魔女の会話を耳にしながら、私も服を一着ずつ手に取る。

「反魔物領だけあって露出の少ない服ばかりね」
「だからこそ、今夜の仮装パーティーでは重要になってくるのですよ。お嬢様」

「じゃあ早速着替えましょ、ダイヤちゃん、人化を解くから、ニーソを脱いで」
「うん」

私はニーソックスを脱ぎ捨てる。
クロ魔女さんが私に呪文を念じると。

「んっ……」

身体中に熱が発せられる。

「あうっ……」ニョキニョキ

頭から二本の角が生えて

「あああっ……」シュシュ……ポンッ

人間の足から黒馬の足へと変わってゆく。

「ふぅ……んんっ!」

本来の姿であるバイコーンに戻った私はストレッチをする。

「じゃあ早速仕立てを行うわね」
「私も手伝います」

クロ魔女さんが服を一着選び、私の身体に合わせながら呪文を唱える。

服が光り輝くと、服が縮み、私に合うサイズへと変わる。

「呪文ひとつで服のサイズが変化するなんて凄いわね。アラクネ店長でさえも仕立て直しは手作業なのに」
「人間の女性がラミア化する際はその時に着用していた服が蛇の身体に合わせて変化するケースを参考にしたの」
「へぇー魔物化に合わせて服も変わるなんて魔物娘の世界って奥が深いわね」
「ダイヤちゃんの場合は馬の身体に合わせたけどね。これでサイズはわかったわ。これをベースに服を仕立て直すわ」

「ほう、お嬢様にビッタリですか」
「煌羅、何で私の胸をチラチラ見ながら言うわけ?」


「ジャマするで〜」


「栗恵さん達が来たようですね」
「話を切り替えやがった……私が出迎えるわ」

「久しぶりやな〜ダイヤちゃん」
「失礼します」

玄関には丸眼鏡に研究者の白衣を纏ったバイコーンとその夫

「おじゃましまス」
「フンカー」

そしてハーレムであるゴーレムのレームとラーヴァゴーレムのフンカ

と、

「あの〜栗恵さん、背中に乗せている人形は一体……?」
「これか?これはリビングドール……」
「ああ、新しい嫁ね」
「……の可能性がある人形や」
「それってつまりただの人形じゃ……」

「アホ!もしかしたら人形のフリをしてるかもしれへんやろ!」
「どうどウ、マスター」
「フンカ〜」

栗恵さんが怒鳴り、ゴーレムコンビが宥める。ちなみにフンカは「カッカしちゃだめ」と言っている。

「そもそもな、人形は元来、魔力を宿しやすい媒体であってな、魔物の魔力と人形の情念が結び付いて生命が宿るんや――」

そういえば、兄貴も道具を大切に使うと感謝の念が宿って付喪神になるって言ってたわね。

「だからこうして、大切に持ち歩いたら、いつか英斗に襲いかかって――」



「ダイヤちゃん、準備出来たわよー」



と、話の途中でクロ魔女さんが私を呼んできた。

「取り込み中やったか、長話してすまんな」
「ううん、クロ魔女さんが今夜のパーティーで着る服を仕立て直していただけだから気にしないで」

「お嬢様、試着をしますよ」
「はーい」

「試着か……そや、こんなこともあろうかと思ってレームにある『プログラム』を組みこんだんや!」
「ぷろぐらむ?」
「百聞は一軒にしかず、上がらせてもらうで」
「乗り込みまス」
「フンカー」

「ダイヤちゃん、わざわざ栗恵の我侭に付き合ってくれてありがとう」

と、栗恵さんの夫である英斗さんが申し訳なさそうに言った。


「成る程、それなら着替える手間が省けますね」
「そやろ」

戻ってみると煌羅が栗恵さんの話を聞いていた。

「お嬢様、彼女の前に立ってください」

なぜか煌羅がレームを指しながら言った。
レームは白い絹のワンピースを一着持ちながら棒立ちしている。

「う、うん」

私はレームの前に立つ

「そのまま後ろを向いてください」

煌羅に言われるがまま、私は後ろを振り向く。

「よし、レーム、瞬着プログラム発動やで!」
「了解しましたマスター、瞬着プログラム発動」

シュパパパパ 「ひゃうっ!」

レームは素早い手つきで私の背中を弄くる。

「ちょっと、何するのよ!」

私は後ろを振り向くとレームが持っている服が変わっていた。

「あれ?それ、私が来ていたミニスカメイド服……よね?」
「お嬢様、ご自身が着ている服を見てください」
「私が着ていた服は……ええっ!」

狐に化かされたのか、はたまた、これがうわさに聞く、人間の女性がラミアへと変わる際に服も合わせて変化する奴なのか。

着ている服が白い絹のワンピースへと変わっていた。
正確には服が入れ替わったと言ったほうがしっくりくるけど。

「どや、レームが一瞬のうちにダイヤちゃんを着替えさせたんや」
「マジで!?あの一瞬で」
「これでわざわざ、時間を掛けなくても、カーテンを閉める→すぐにカーテンを開けたら着替えが完了するんやで」

「うーん……」
「どうしたの?煌羅」
「仮装にしてはイマイチぱっとしませんね」

「じゃあ次はこの服にしましょう」
「レーム、瞬着プログラム再施行や」

シュパパパパ 「あひゃあっ」

「水色のロングドレスに蒼のマーメイドスカート、大人っぽすぎます」
「瞬着プログラムや!」

「えっ、別にこれでもいいけど……」シュパパパパ「あひっ!」

「黒をベースに赤の刺繍が入ったドレス、胸元が開きすぎで谷間に風が吹いています」
「瞬着や!」

「谷に風が吹くのは当たり前じゃない」シュパパパパ「うわぅ!」

「紫のチャイナドレスに銀色の宝石が装飾されていますが、スリットが開きすぎです」
「瞬着!」

「っていうかこれ反魔物領にあったの」シュパパパパ「ひゃああああ!」

「薔薇色のランジェリーに、紐式のパンツとガーターベルト、クロ魔女さんや栗恵さんはともかくお嬢様じゃちょっと」
「しゅんちゃく!」

「これホントに教団に認可されたたの」シュパパパパ「あひゃひゃひゃひゃ!」

「どうかしら、このコーデは?」
「……ええ、いいと思います。お嬢様らしくて」

「レーム、瞬着プログラムは終了や」

「あ、あうう……」

着替えが終わったことを告げられ、私はその場でへたれ込む。
立て続けによるレームの早着替えによる手捌きで、背中の敏感なところに触れられた私は、あやうく絶頂しかけていた。

「っていうか、この瞬着プログラム、欠陥品じゃないの?何度も着替えさせられたら身体が持たないわよ……」
「お嬢様、魔物娘の世界ではエロ絡みはつきものですよ?」
「うぐぐ……」
「それよりも、ご自身で見てみたらどうですか?今のお姿を」

私は鏡の前に立つ。

「レインコート?」

ピンク色の雨合羽にピンクの色の長靴という雨の日スタイル。

「ちょっと、子供過ぎない?」
「いえ、とても可愛く仕上がってますよ。何だか昔のお嬢様を思い出すみたいで」
「ちょっと、やめてよ煌羅」
「あとは、オプションにこれをつければ」

「あっ」

煌羅が取り出した物を見て、懐かしさが込みあがってきた。

「何や、えらい小さな棒状の物やな」
「棒に布が巻いてあるわね、しかもピンク色の」

「これはね……ただの棒じゃないわ」

私は布の縛りを解き、棒を伸ばし、布を広げる。

バサッ

「傘や」
「傘ね」

「落書きらしきものを発見しましタ」

レームは傘の表面にある落書きに気づく

「子供が書いたような顔の落書きだね、顔を書けば動き出しそうな雰囲気だ」

「これはね、小さい頃、私が落書きした奴なの」

「しかし、こんな形でコンパクトに纏まる傘は中々見かけへん代物やで」
「しかも、布地はあちこち補修した形跡があるわね……ダイヤちゃん、これどこで手に入れたの?」

「これはね、折りたたみ傘というの」

私は自分で書いた落書きを優しく撫でながら、物置の中で見つけたこと、悪戯したこと、マリア姉さんに見つかって叱られた事、兄貴が許してくれたこと、そして、自分のものになったときのことを回顧する。


「兄貴からの贈り物よ」


★仮装パーティー★


「これが仮装パーティー……」
「街ん中は様々な仮装をする魔物娘達でごったがえしとるな♪」

英斗さんと栗恵さんが装飾に驚いている。

木の枝にはカボチャとカブの提灯が吊り下げられ、道路一面にオレンジ色のカーペットが敷き詰められている。

「周りは提灯だらケ、提灯おばけがいそうですネ」
「フンカ〜」

レームやフンカも私が着ていた白のワンピースと赤のドレスを着用している(因みに両者とも試着時に胸部がきついと主張したためクロ魔女さんが仕立て直した模様)。

「フンカさん、サイズはまだしも溶岩の身体での着衣は問題はないのですか?」
「フンカー、フンカー」
「成る程、身体全体の温度を下げれば着衣は可能なのですね」

「人間の女の子が多いわね」
「彼女達はラミアの子供よ、このパーティーではラミア属の殆どが人化をするのよ」
「確かにある意味仮装ね……」
「彼女達は、意中の男性や男の子を一人だけ選んでお菓子を要求するの」
「流石ラミア属、誰も彼もお菓子をねだるわけじゃないのね」
「中にはバイコーンの仮装をして次々とお菓子をねだる強者もいるけどね」
「だから本来の姿でも視線が集まらないのか……ところでクロ魔女さん」
「何かしらダイヤちゃん?お菓子が欲しいの?」

どうぞと、クロ魔女さんが私にキャンディを渡す。

「いやそうじゃなくて、背中に背負ってる大きなカボチャは……?」
「これはね。いずれわかるよ、いずれね」

「お嬢様、トリックオアトリートですよ」

二人の少女が露店の店主に駆け寄り

「お菓子をくれなきゃ」
「巻きついちゃうぞ―」
「ちょっと、今日はイタズラする日よ」
「あ、そうだった♪」

「はい、どうぞラミアのお嬢さん」

店主は笑顔で少女達にキャンディを渡した。

「キャンディだーわーい」
「いきなり走っちゃ危ないよ〜」
「きやっ」コケッ

「やっぱり、転んだわね」
「蛇の身体と人間の足で歩行するのはバランス感覚が違いますからね」
「うんうん、慣れないうちは歩くのだって一苦労よ、私も何度膝を擦りむいたことか……」

「だからこそ、カーペットが敷かれてあるのよ」

と、クロ魔女さんがウインク。

「イテテ……」
「大丈夫?」
「うん、カーペットがクッションになってくれたから」

「成る程、カーペットの上なら転んでも平気なのね」
「身体を傷つけない魔界銀を練り込んだ素材で出来てるのよ」
「ちゃんと転倒した場合の配慮がなされてるのね」

「人化したお嬢様が手すりに捕まりながら隣の部屋まで歩いていた時の事を思い出しますね……プークスクスイテッ」

いつも通り頭の角で煌羅の腰を突いた。

「傘は使わないんか?」
「うん、粗末に扱いたくないから」
「そっか、大事にされて嬉しそうやな〜イマちゃんもそう思うやろ〜」

栗恵さんは人形を抱え、人形の手で傘の落書きを撫でる。

「そっか〜イマちゃんも嬉しいんやな〜」
「栗恵さん、子供っぽいですよ……」
「リビングドールは人間の少女と一緒に遊ぶこともあるんや〜こうして少女の気持ちになって遊べば情念が宿るかもしれへんやろ〜」

「遊びと言っても性的な遊びだけどね」

と英斗さんが補足する。

「ほら英斗も〜イマちゃんを抱っこしいな〜」
「いや、いいよ、僕には女の子みたいな遊びは似合わないよ」
「遠慮せんと〜」

栗恵さんは人形を強引に渡す。

「……どうしたん英斗?ほらはよ撫でり」

人形を抱えた英斗さんの様子がおかしい。

「いや、さっきからこの人形を見ていると妙にそわそわして……」

「もしかして……」
「どうしたの?クロ魔女さん」
「そろそろ頃合いだし、パーティーを始めるわ」

クロ魔女さんが箒に股がり、飛翔する。

『皆さん、ただいまより、パーティーを始めます。イタズラされたくなかったらお菓子の準備を怠らないように』

「おや、クロ魔女さんがカボチャを天高く掲げて詠唱してるようです」

『トリックオアトリート!』

「カボチャの目と口から光が放たれたようです」

夜空に光のルーンが刻まれた。

「あれは……『悪戯のルーン』」
「知ってるの!?煌羅」
「クロ魔女さんが教えてくれました」

「お兄ちゃーん」
「もっとお菓子をちょうだい〜」

さっきの少女達がお菓子を再度ねだりに戻ってきた。

「はいはい、キャンディーだよ」
「「わーい」」
「お菓子はいっぱいあるから、イタズラはしないでね♪」
「「わかったー」」

子供達が先程よりもお菓子を要求している。

「ねぇねぇ〜あたしにもお菓子ちょうだい」

「お嬢様、パン屋のラミアが夫に巨乳を押し付けながらお菓子をねだってますよ」

「ごめん、お菓子は子供達のしか用意してなくて」
「じゃあ〜イタズラしちゃお♪」シュルシュル〜

「お嬢様、ラミアが巨乳を押し付けながら、蛇の身体で夫を縛りだしましたよ。巨乳を押し付けながら」
「流石、夫一筋のラミアね……それにしても栗恵さん達、どうしたんだろ?」

「思い切りや〜思い切りやで〜」
「うう……でも」

栗恵さんが、人形を凝視している英斗さんにエールを送っているような……

「ズボンを脱がせまス」

「きゃっ、英斗さん勃起してる」
「先端から汁が滲み出てますね」

「男やろが〜思い切りぶちかませ〜」

「フンカッ!フンカッ!」

フンカさんも「パンツ履いてないから、即ハメできます」と叫んでいる。

「フゥー、フゥー」

「お嬢様、ちゃんと見ていますか?英斗さんが息を荒げながら男性器を人形のスカートへと標準を合わせていますよ」
「わ、わかってるわよ……」
「本当にわかってるのですか?バイコーンの栗恵さんに新たなハーレムが加わろうとしているのですよ?」

私はバイコーンとして、目をそらさず、見つめる。

「ぶちかませ〜英斗、インキュバスの本能さらけだせ!」

それは英斗さんへの調教なのか
または英斗さんへの応援なのか

栗恵さんの目がギラギラと赤く輝いて見える。

あれが、バイコーンがハーレムを増やす瞬間……

「いつヤルか〜?」
「イマだよねっ!」

ズボオッ!

英斗さんが人形を降り下ろし、男性器をスカートの中へと導いた。



「イタズラしちゃうぞ〜」「貴方はずっと私のモノよ」「お菓子〜」「動かないで…私だけを見て…」「あまーい」「あなたに青白い明かりを灯しましょう〜」「お兄ちゃんにはじめてをあげる〜」「そうよ、あたしにどんどん種付けして、エキドナ以外の娘も、欲しいの」

掛け声が収まり周囲のおねだりと独占欲の思いだけが聞こえてくる。

栗恵さんが息を呑んでいる。

おそらく結果を待っているのだろう。

私と煌羅も結末を見守る。

「うっ……うう…うう」

英斗さんの付け根から赤い線が流れる。

「ヤったカ!?」
「まだや!英斗自身の傷の可能性がある、止血の準備をしとき」

「だ、大丈夫だよ……栗恵」

英斗さんが、辛うじて声を出して

笑った。


「時刻は午後10時31分……」

「だ、誰?」

謎の声に戸惑う。

だが、私は声の正体に気づく。

英斗さんが持っていた人形の首がカタカタと、動き……



「今、純血を奪われましたー!」



人形の目が光りだした。


「よっしゃー!リビングドールの誕生やー!」
「うおおおおおおお!」

英斗さんが人形を上下に動かす。

「今、思い切りおかされてまーす!」


「お嬢様、すばらしいですね」
「そうね、って、思わず見とれたけど、何なのよ、このパーティーは」

「仮装パーティーですが?」
「いや、どう見てもあれなんですけど、エロありなんですけど!」

「仮装しながらヤっちゃうパーティーですね」
「いや、ラミアの殆どが人化を解いてるんですけど」

「別に問題ないのでは、私達は魔物娘、エロありは当然なのです」
「まあ、確かにそうだけど」

「それよりもお嬢様、空を見てください」
「空?」

夜空に刻まれた刻印。

「確か『悪戯のルーン』だっけ?」
「はい、心に決めた人に思わず悪戯したくなっちゃうルーンだそうです」
「ひょっとして空に刻んだから、空の下にいるみんなに影響を与えたの?」
「はい、彼も人形に悪戯をしたくなったのでしょう」
「悪戯ねぇ」
「それより、私がいいたいのは刻印の模様です」
「模様?」

私は、光り輝く模様を眺める。

ルーンひとつひとつがお化けの形をしており、星空に触ったり、食べる動作をしたり、ひときわ光り輝く星の周りをぐるぐるまわったり。

「なんだか、楽しそう」
「ええ、今日はパーティーですから、ルーン達も楽しいのですよ」


私はお化けたちの悪戯をもっと見ようと傘をおろそうと


したけど、やめた。


「お嬢様?」
「せっかくの記念よ、この娘にも見せてあげたいのよ」

私は傘に描かれた顔を夜空に向ける。


『みんな、パーティーはまだまだ続くよ〜今夜はルーンもお星様も楽しもう〜』


「よっしゃー次はレームとフンカも参加や!」
「了解、マスター」
「フンカ〜」


小さい頃に描いた落書きが微笑んだような気がした。



★続く★
14/10/31 23:19更新 / ドリルモール
戻る 次へ

■作者メッセージ
ドリルモールです。

 約九ヶ月半ぶりのダイヤと煌羅のお話です。
 今回はハロウィンということで、ハロウィンの話を書いてみましたが……書いてみたらハロウィン要素が少なかったです(汗)

 次回はダイヤ達がバイコーンの集まりである二角獣会に参加するためエネミス帝国へ向かいます。
 前回出てきたあの男も出てくるよ。





用語集
【悪戯のルーン】
 バイコーンのクロが開発した快楽のルーンの亜種。
 光り輝くお化けの形をした刻印で、魔物娘の身体もしくは空間に刻む。
 身体に刻めばルーン自体が生きているかのように動き、脳を活性化させ夫に(性的な)悪戯したくなるか、夫から(性的な)悪戯をしてもらうように誘惑する効果を持つ。
 空間に刻んだ場合はその範囲にいる魔物娘およびその夫に悪戯心を植え付けされる効果を持ち、意中の相手に甘いお菓子をねだるか性的な悪戯をしたり、促したりするようになる。
 尚、意中の相手がいない場合は効力を発揮しない。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33