巨大な城門と巨大なお茶会
Μ不思議の国・キョウシュウマウンテン第三階層Μ
Μ初太視点Μ
「マドラ本当にこの道であってるのか?」
「わからない、だけど今すぐ下山しないと」
「そんなに焦らなくても」
「焦るよ、郷愁の霧に飲みこまれたら、本当の意味で迷子になってしまうんだ」
「本当の意味で迷子?今でも十分迷ゴオッ!」
「初太大丈夫!?」
「いや、下り坂から平地になってバランスを崩しただけだ」
「平地、そうか、ぼくたちは下山したんだ」
下山出来た喜びに、マドラは安堵の表情を浮かべる。
「マドラ、あくまで下山しただけだろ、近くの村を探すぞ」
「そうだね、確かキョウシュウマウンテンから近くに集落が――」
下山した先には、妖艶な光景が広がっていた。
夫婦の果実が次々と成長し、受粉を繰り返していたのだ。
先程見た受粉の比ではない。
右を見ても左を見ても果実同士が交わり合う。
ときには複数の赤い果実が一つの青い果実を取り込もうとしており、まるで果実のハーレムを彷彿させていた。
そんな果実達の姿に、俺は魔物娘達が意中の男性を思うがままに交わっていると錯覚してしまう。
思わず息を飲むと、甘ったるい空気が体内に広がる。
ふと、隣にいるマドラがいとおしく思えてくる。
今すぐマドラを押し倒したい。
いや、押し倒されたい。
そして、あの果実達のようにマドラに取り込まれたい。
俺の種を受粉してほしい。
「夫婦の跡地」
マドラの一言が、俺を現実へと引き戻してくれた。
それに安堵から一転の絶望した表情も加えて。
「夫婦の跡地?」
我に帰った俺はオウム返しをする。
「かつてフェイトさん達が激しく交わった場所だそうです。ここで実る夫婦の果実は彼等の交わりで放たれた魔力の名残なのです」
「いやいや、一体どんな交わり方をしたら、こんなクレーターが出来――マドラ、口調が……」
「初太、わたしたちは山を下りたのではありません――」
「頂上まで登ってしまったのです」
Μパラサイ峠Μ
Μ満知子視点Μ
アタシ達を乗せたタクシーは自然豊かな山道を登る。
同じく山道を登る住人達、寄生スライム&スライムキャリア。
そして、何故か所々に設置された帽子。
「ここはどこ?何で帽子が設置されてるの?」
「ここがパラサイ峠だよ。マッドハッターの帽子の中に寄生スライムが潜んでいるんだ」
「道理で寄生スライムとスライムキャリアが多いわけだ、ウヒヒ」
「心なしかへーくんの目線はスライムキャリアだけに向いてる気がするけど?」
「見ろよ満知子、リリラウネ夫妻がタクシーに乗ろうとしてるぞ」
「おーい、アタシの話聞いてますか?」
「ほらほら、リリラウネの片割れが運賃として寄生スライムに寒天菓子を三つ渡してるぞ」
「だから話を逸らさ「乗車拒否?ふざけんな!」
反対側で怒鳴り声がした。
男性兵士が別の寄生スライムに抗議していた。
「何で宝石や金貨じゃダメなんだ!」
どうやら彼は金貨袋及び宝石の類を運賃に乗車しようとしているようだが、寄生スライムは首を横にふるばかり。
「せいしぃ、せいしぃが身体中にぃとろとろぉするぅ」
因みにスライムキャリアの方は、そんなことお構い無しに夫と交わっている。
「ニャ〜あれじゃダメですニャ」
「チェル、どうして?」
「パラサイ交通ではいくら金銭や宝石をつぎ込んでも乗車出来ニャいですニャ」
「へぇー、アタシ達の世界のタクシーは走行した分だけお金を支払うのが普通だったけど」
「スライムキャリア達の頭は常にエロありニャので、運賃は媚薬といった性行為に使える物が人数分必要ですニャ」
「頼むよ、何なら形見であるペンダントもやるから」
「あんな必死に頼んでるんだから乗せてやってもいいのに」
「もし強引に乗車する等して寄生スライムの機嫌を損ねれば、未婚の住人の下へ連れていかれるか、寄生されますニャ」
「ギャー、助けてくれー」
「あっ、スライムの中に取り込まれた」
「スライムが怒ったような表情をしてるぜ」
寄生スライムは、兵士をマッドハッター達が座るテーブルへ放り出す。
「いらっしゃ―い。パラサイ峠第69休憩所へようこそ」
「お茶をどうぞ」
「お菓子も召し上がれ」
お茶会の住人が次々と色とりどりのお菓子を差し出す中、マッドハッターの一人が兵士に寄り添い
「寄生スライムに無理矢理帽子を被らされた私にもやっと夫が出来るのね」
「いゃぁぁぁぁ!犯されるぅ!」
「パラサイ峠は休憩所が多く設置されてるから、近くのお茶会に強制的に出席されますニャ」
「すごく気持ちいいよぉぉぉ!」
「私の中を白い水分で潤してね」
「お幸せに〜」
アタシはマッドハッターの夫となった兵士に手を振る。
「しかし城下町へ行くのにわざわざパラサイ峠を経由するなんてね」
「パラサイ峠は寄生スライムたくしーが集まる場所だからね」
寄生スライム達は案内板に従い、それぞれのルートへ向かう。
「白百合の花園に不思議美術館、観光スポットのルートが多いわね」
「ヨツンバウェイが出来る前は国の東側と南側を繋ぐ中継地だったらしいよ」
アタシ達が乗るタクシーは『城下町』へ向けて下山する。
「歩いて下山する住人も多いわね」
「うーん、ここでも同じか」
「どうしたのへーくん、下山する住人ばかり見て」
「歩いてる住人全員警戒しながら登山してる気がするんだ」
「彼等は寄生スライムに襲われないよう警戒してますニャ」
「襲われる?」
「あれですニャ」
「やめてよ〜くすぐったい〜」
「そこをまさぐっちゃいやーん」
「すげぇ!宿主のいない寄生スライム達が住人に襲いかかってる、人間だったら即寄生だぜ!」
「何でスライム達が性的に襲ってるのよ?」
「パラサイ峠の寄生スライムはとても悪戯好きですニャ。もしうっかり転んだ時には、草影や帽子に潜んでいた寄生スライム達が一斉に群がりますニャ」
「アタシも転ばないように気をつけよう」
パラサイ峠を下山したタクシーは赤と白を基調とした城の方角へ向かう。
Μ城下町Μ
「到着しましたニャ」
城下町だけあって町の奥には城がよく見える。
城の前に巨大な門、城へ入るにはあの門を通る必要があるのだろう。
アタシはタクシーを降りて辺りを見渡す。
「結構整備された町だな」
「アタシが住んでるラピッドタウンに似てるわね」
「国の中心部ですから多くの住人が集まってますし、更に近くに女王様の城がありますから、女王様の傲ま……お考えが反映されてますニャ」
「確かにラピッドタウン以上に奇妙な植物や場違いな建物が多いわね」
「見ろよ満知子、家が無造作に積まれてるぞ」
「これはまんしょんと言う建物で僅かな土地でより多くの住人が住めますニャ」
「いやいや、アタシ達の知ってるマンションとは全然違うから」
「別世界から来る来訪者が言うタイプもありますニャ」
「良かった、普通のマンションもあるのね」
「そして人型へと変形しますニャ」
『変形完了、マンションオー!』
「んな機能はないわ!」
「因みにアパート同士で合体するタイプもありますニャ」
『合体完了、アパートダイオー!』
「そんな機能もない!」
「これは女王様が執行した極刑の一つ『ゴーレム変刑』で、凄く画期的な極刑ですニャ」
「どこが画期的よ、住む人の気持ちを考えなさいよ」
「彼等の行動を見れば考えが変わりますニャ」
巨大ゴーレム二体が巨大テーブルへ向かって歩き出し、
椅子型の建物に腰掛け、マンションオーは巨大ポット型のカフェを持ち上げ、アパートダイオーはバスケット型の店を持ち上げ
『これより、空はとっても青いから記念お茶会を開催します!』
「ニャんと大規模なお茶会を開催しますニャ」
「大規模の意味が微妙に違う気がする!」
「そうか、だからティーポットとバスケットの形をしてるのか」
「へーくんも納得しないで!」
『今日の紅茶は格別だな、アパートダイオーもそう思うだろ?』
『ああ、部屋の住人達も運ばれてくるお菓子に大層喜んでるよ』
「紅茶や菓子がゴーレムの口を通して各部屋の住人に送られますニャ」
「成る程、一見巨大ゴーレム同士のお茶会に見えてそこに住む住人達も紅茶とお菓子を楽しんでるのか――ってアタシも納得してるし!」
「因みにティーポット型のカフェにはドーマウスのウェイトレスが働いてますニャ」
『おおっ、もうシたいのか?』
『マンションオーのところもか?こっちも家内が股を広げて準備万端だ』
『では交わりに入る』ブツッ
『よーし、たっぷり中へ出してやるかなら』ブチンッ
「大家さん達が交わりのため自動操縦モードに切り替えましたニャ。お茶会はまだまだ続きますニャ」
「参ったわ、まさに不思議の国クオリティね……」
「そろそろ初太を探そう。チェル、初太クンの匂いを辿れるかい?」
「おまかせくださいニャ!」
チェルの案内に従い、アタシ達は城下町の奥、門へと進む。
Μ城下町・巨大門Μ
「デカっ」
「満知子、それって俺の勃起したチン「門のことですが?」
アタシは巨大な門を眺める。
遠目で見たときは大きいと思ったが、近くで見るとより顕著だ。
「驚いたかいお嬢ちゃん、ここは女王様の城へ直結する門、その名も『巨大門』」
門番の一人がアタシに説明する。
「安直ね」
「女王の城へ向かうルートは何百通りもあるが、その中で代表的な四つのルートの一つさ」
「四つ?」
「城の東西南北に設置されたルートで、東は不思議美術館、西は競技場、北は断頭の峡谷、そしてはここは南側だ」
「へぇーやっぱり城へ入るにこの門を通ればいいのね」
「ところがそうもいかない」
「どうして?」
「巨大門は女王様が監視していて、すんなり通してくれる時もあれば、一定の条件が無いと開門してくれないし、相手次第では門前払いされる時もある。今は女王様不在の為、閉門中だよ」
「ホント気まぐれな門ね」
「確かにそうだね、だけど時折女王様がお忍びでこの門を通ることもあって――」
ブロロロ、キキッ
「おーい交代の時間だ」「時間だ」
バイクに乗った男とジャバウォックが番兵に声をかけてきた。
「お帰りライド、早かったな」
「ああ充分休憩したぜ」「したぜ」
「よし、休憩するぞ」
番兵がマーチヘアを連れベタベタしながらその場を去った。
「満知子、俺達も休憩「しません!初太やまどっちを探すんでしょ!」
「君達も討伐隊なのか?」「なのか?」
と、ライドと呼ばれた番兵夫妻がバイクから降りてアタシに訪ねる。
「いえ、アタシ達は行方不明になった友達を探してるだけで、討伐隊とは無関係です」
「そうか、最近は頻繁にここを訪れる討伐隊が多くて」「多くて」
「討伐隊も来るんですね」
「この前も討伐隊の一行が強引に門に入ろうとするトラブルがあってさ」「あってさ」
「必死ね」
「その最中に彼等の前に突然若いマッドハッターの夫婦が現れてね、その混乱に乗じて取り押さえることが出来たけど」「出来たけど」
「へぇー、若いマッドハッターの夫婦……まさか……すみません、そのマッドハッターの夫婦って、こんな感じの帽子を被ってませんでしたか?」
「そうそう、二人ともそんな感じの帽子を被ってたよ」「たよ」
「やっぱり……あの、二人の行方は判りますか?」
「判らない、兵士を抑えてる間に消えたんだ」「消えたんだ」
「そんな、せっかく手掛かりが掴めたと思ったのに」
「いや、これは大きな進展だ」
「コルヌさん?」
「珠が指示通り、討伐隊の下へとワープしたことさ、つまり二人の行くところ討伐隊の影あり」
「じゃあ討伐隊を探せば初太の居場所も判るのか」
「その通りだよ、平也クン」
「討伐隊……そう言えば俺達の行きつけの店にも討伐隊がいたな」「いたな」
「そうなんですか?その店を教えてください、ライドさん」
「それはな」「それはな」
「こいつだよ」「だよ」
と、優しくバイクを撫でた。
Μばいく屋Μ
「ここがライドさんとバックさんが言ってたばいく屋ね」
「チェル、感じるかい?」
「はい…この店に微かかニャがら…初太の形跡が…ありますニャ」
「じゃあ入ろう」
「うう…結局入るのですニャ…」
アタシ達はばいく屋に足を踏み入れる。
紅茶の香りがするばいく屋に。
Μ続くΜ
Μ初太視点Μ
「マドラ本当にこの道であってるのか?」
「わからない、だけど今すぐ下山しないと」
「そんなに焦らなくても」
「焦るよ、郷愁の霧に飲みこまれたら、本当の意味で迷子になってしまうんだ」
「本当の意味で迷子?今でも十分迷ゴオッ!」
「初太大丈夫!?」
「いや、下り坂から平地になってバランスを崩しただけだ」
「平地、そうか、ぼくたちは下山したんだ」
下山出来た喜びに、マドラは安堵の表情を浮かべる。
「マドラ、あくまで下山しただけだろ、近くの村を探すぞ」
「そうだね、確かキョウシュウマウンテンから近くに集落が――」
下山した先には、妖艶な光景が広がっていた。
夫婦の果実が次々と成長し、受粉を繰り返していたのだ。
先程見た受粉の比ではない。
右を見ても左を見ても果実同士が交わり合う。
ときには複数の赤い果実が一つの青い果実を取り込もうとしており、まるで果実のハーレムを彷彿させていた。
そんな果実達の姿に、俺は魔物娘達が意中の男性を思うがままに交わっていると錯覚してしまう。
思わず息を飲むと、甘ったるい空気が体内に広がる。
ふと、隣にいるマドラがいとおしく思えてくる。
今すぐマドラを押し倒したい。
いや、押し倒されたい。
そして、あの果実達のようにマドラに取り込まれたい。
俺の種を受粉してほしい。
「夫婦の跡地」
マドラの一言が、俺を現実へと引き戻してくれた。
それに安堵から一転の絶望した表情も加えて。
「夫婦の跡地?」
我に帰った俺はオウム返しをする。
「かつてフェイトさん達が激しく交わった場所だそうです。ここで実る夫婦の果実は彼等の交わりで放たれた魔力の名残なのです」
「いやいや、一体どんな交わり方をしたら、こんなクレーターが出来――マドラ、口調が……」
「初太、わたしたちは山を下りたのではありません――」
「頂上まで登ってしまったのです」
Μパラサイ峠Μ
Μ満知子視点Μ
アタシ達を乗せたタクシーは自然豊かな山道を登る。
同じく山道を登る住人達、寄生スライム&スライムキャリア。
そして、何故か所々に設置された帽子。
「ここはどこ?何で帽子が設置されてるの?」
「ここがパラサイ峠だよ。マッドハッターの帽子の中に寄生スライムが潜んでいるんだ」
「道理で寄生スライムとスライムキャリアが多いわけだ、ウヒヒ」
「心なしかへーくんの目線はスライムキャリアだけに向いてる気がするけど?」
「見ろよ満知子、リリラウネ夫妻がタクシーに乗ろうとしてるぞ」
「おーい、アタシの話聞いてますか?」
「ほらほら、リリラウネの片割れが運賃として寄生スライムに寒天菓子を三つ渡してるぞ」
「だから話を逸らさ「乗車拒否?ふざけんな!」
反対側で怒鳴り声がした。
男性兵士が別の寄生スライムに抗議していた。
「何で宝石や金貨じゃダメなんだ!」
どうやら彼は金貨袋及び宝石の類を運賃に乗車しようとしているようだが、寄生スライムは首を横にふるばかり。
「せいしぃ、せいしぃが身体中にぃとろとろぉするぅ」
因みにスライムキャリアの方は、そんなことお構い無しに夫と交わっている。
「ニャ〜あれじゃダメですニャ」
「チェル、どうして?」
「パラサイ交通ではいくら金銭や宝石をつぎ込んでも乗車出来ニャいですニャ」
「へぇー、アタシ達の世界のタクシーは走行した分だけお金を支払うのが普通だったけど」
「スライムキャリア達の頭は常にエロありニャので、運賃は媚薬といった性行為に使える物が人数分必要ですニャ」
「頼むよ、何なら形見であるペンダントもやるから」
「あんな必死に頼んでるんだから乗せてやってもいいのに」
「もし強引に乗車する等して寄生スライムの機嫌を損ねれば、未婚の住人の下へ連れていかれるか、寄生されますニャ」
「ギャー、助けてくれー」
「あっ、スライムの中に取り込まれた」
「スライムが怒ったような表情をしてるぜ」
寄生スライムは、兵士をマッドハッター達が座るテーブルへ放り出す。
「いらっしゃ―い。パラサイ峠第69休憩所へようこそ」
「お茶をどうぞ」
「お菓子も召し上がれ」
お茶会の住人が次々と色とりどりのお菓子を差し出す中、マッドハッターの一人が兵士に寄り添い
「寄生スライムに無理矢理帽子を被らされた私にもやっと夫が出来るのね」
「いゃぁぁぁぁ!犯されるぅ!」
「パラサイ峠は休憩所が多く設置されてるから、近くのお茶会に強制的に出席されますニャ」
「すごく気持ちいいよぉぉぉ!」
「私の中を白い水分で潤してね」
「お幸せに〜」
アタシはマッドハッターの夫となった兵士に手を振る。
「しかし城下町へ行くのにわざわざパラサイ峠を経由するなんてね」
「パラサイ峠は寄生スライムたくしーが集まる場所だからね」
寄生スライム達は案内板に従い、それぞれのルートへ向かう。
「白百合の花園に不思議美術館、観光スポットのルートが多いわね」
「ヨツンバウェイが出来る前は国の東側と南側を繋ぐ中継地だったらしいよ」
アタシ達が乗るタクシーは『城下町』へ向けて下山する。
「歩いて下山する住人も多いわね」
「うーん、ここでも同じか」
「どうしたのへーくん、下山する住人ばかり見て」
「歩いてる住人全員警戒しながら登山してる気がするんだ」
「彼等は寄生スライムに襲われないよう警戒してますニャ」
「襲われる?」
「あれですニャ」
「やめてよ〜くすぐったい〜」
「そこをまさぐっちゃいやーん」
「すげぇ!宿主のいない寄生スライム達が住人に襲いかかってる、人間だったら即寄生だぜ!」
「何でスライム達が性的に襲ってるのよ?」
「パラサイ峠の寄生スライムはとても悪戯好きですニャ。もしうっかり転んだ時には、草影や帽子に潜んでいた寄生スライム達が一斉に群がりますニャ」
「アタシも転ばないように気をつけよう」
パラサイ峠を下山したタクシーは赤と白を基調とした城の方角へ向かう。
Μ城下町Μ
「到着しましたニャ」
城下町だけあって町の奥には城がよく見える。
城の前に巨大な門、城へ入るにはあの門を通る必要があるのだろう。
アタシはタクシーを降りて辺りを見渡す。
「結構整備された町だな」
「アタシが住んでるラピッドタウンに似てるわね」
「国の中心部ですから多くの住人が集まってますし、更に近くに女王様の城がありますから、女王様の傲ま……お考えが反映されてますニャ」
「確かにラピッドタウン以上に奇妙な植物や場違いな建物が多いわね」
「見ろよ満知子、家が無造作に積まれてるぞ」
「これはまんしょんと言う建物で僅かな土地でより多くの住人が住めますニャ」
「いやいや、アタシ達の知ってるマンションとは全然違うから」
「別世界から来る来訪者が言うタイプもありますニャ」
「良かった、普通のマンションもあるのね」
「そして人型へと変形しますニャ」
『変形完了、マンションオー!』
「んな機能はないわ!」
「因みにアパート同士で合体するタイプもありますニャ」
『合体完了、アパートダイオー!』
「そんな機能もない!」
「これは女王様が執行した極刑の一つ『ゴーレム変刑』で、凄く画期的な極刑ですニャ」
「どこが画期的よ、住む人の気持ちを考えなさいよ」
「彼等の行動を見れば考えが変わりますニャ」
巨大ゴーレム二体が巨大テーブルへ向かって歩き出し、
椅子型の建物に腰掛け、マンションオーは巨大ポット型のカフェを持ち上げ、アパートダイオーはバスケット型の店を持ち上げ
『これより、空はとっても青いから記念お茶会を開催します!』
「ニャんと大規模なお茶会を開催しますニャ」
「大規模の意味が微妙に違う気がする!」
「そうか、だからティーポットとバスケットの形をしてるのか」
「へーくんも納得しないで!」
『今日の紅茶は格別だな、アパートダイオーもそう思うだろ?』
『ああ、部屋の住人達も運ばれてくるお菓子に大層喜んでるよ』
「紅茶や菓子がゴーレムの口を通して各部屋の住人に送られますニャ」
「成る程、一見巨大ゴーレム同士のお茶会に見えてそこに住む住人達も紅茶とお菓子を楽しんでるのか――ってアタシも納得してるし!」
「因みにティーポット型のカフェにはドーマウスのウェイトレスが働いてますニャ」
『おおっ、もうシたいのか?』
『マンションオーのところもか?こっちも家内が股を広げて準備万端だ』
『では交わりに入る』ブツッ
『よーし、たっぷり中へ出してやるかなら』ブチンッ
「大家さん達が交わりのため自動操縦モードに切り替えましたニャ。お茶会はまだまだ続きますニャ」
「参ったわ、まさに不思議の国クオリティね……」
「そろそろ初太を探そう。チェル、初太クンの匂いを辿れるかい?」
「おまかせくださいニャ!」
チェルの案内に従い、アタシ達は城下町の奥、門へと進む。
Μ城下町・巨大門Μ
「デカっ」
「満知子、それって俺の勃起したチン「門のことですが?」
アタシは巨大な門を眺める。
遠目で見たときは大きいと思ったが、近くで見るとより顕著だ。
「驚いたかいお嬢ちゃん、ここは女王様の城へ直結する門、その名も『巨大門』」
門番の一人がアタシに説明する。
「安直ね」
「女王の城へ向かうルートは何百通りもあるが、その中で代表的な四つのルートの一つさ」
「四つ?」
「城の東西南北に設置されたルートで、東は不思議美術館、西は競技場、北は断頭の峡谷、そしてはここは南側だ」
「へぇーやっぱり城へ入るにこの門を通ればいいのね」
「ところがそうもいかない」
「どうして?」
「巨大門は女王様が監視していて、すんなり通してくれる時もあれば、一定の条件が無いと開門してくれないし、相手次第では門前払いされる時もある。今は女王様不在の為、閉門中だよ」
「ホント気まぐれな門ね」
「確かにそうだね、だけど時折女王様がお忍びでこの門を通ることもあって――」
ブロロロ、キキッ
「おーい交代の時間だ」「時間だ」
バイクに乗った男とジャバウォックが番兵に声をかけてきた。
「お帰りライド、早かったな」
「ああ充分休憩したぜ」「したぜ」
「よし、休憩するぞ」
番兵がマーチヘアを連れベタベタしながらその場を去った。
「満知子、俺達も休憩「しません!初太やまどっちを探すんでしょ!」
「君達も討伐隊なのか?」「なのか?」
と、ライドと呼ばれた番兵夫妻がバイクから降りてアタシに訪ねる。
「いえ、アタシ達は行方不明になった友達を探してるだけで、討伐隊とは無関係です」
「そうか、最近は頻繁にここを訪れる討伐隊が多くて」「多くて」
「討伐隊も来るんですね」
「この前も討伐隊の一行が強引に門に入ろうとするトラブルがあってさ」「あってさ」
「必死ね」
「その最中に彼等の前に突然若いマッドハッターの夫婦が現れてね、その混乱に乗じて取り押さえることが出来たけど」「出来たけど」
「へぇー、若いマッドハッターの夫婦……まさか……すみません、そのマッドハッターの夫婦って、こんな感じの帽子を被ってませんでしたか?」
「そうそう、二人ともそんな感じの帽子を被ってたよ」「たよ」
「やっぱり……あの、二人の行方は判りますか?」
「判らない、兵士を抑えてる間に消えたんだ」「消えたんだ」
「そんな、せっかく手掛かりが掴めたと思ったのに」
「いや、これは大きな進展だ」
「コルヌさん?」
「珠が指示通り、討伐隊の下へとワープしたことさ、つまり二人の行くところ討伐隊の影あり」
「じゃあ討伐隊を探せば初太の居場所も判るのか」
「その通りだよ、平也クン」
「討伐隊……そう言えば俺達の行きつけの店にも討伐隊がいたな」「いたな」
「そうなんですか?その店を教えてください、ライドさん」
「それはな」「それはな」
「こいつだよ」「だよ」
と、優しくバイクを撫でた。
Μばいく屋Μ
「ここがライドさんとバックさんが言ってたばいく屋ね」
「チェル、感じるかい?」
「はい…この店に微かかニャがら…初太の形跡が…ありますニャ」
「じゃあ入ろう」
「うう…結局入るのですニャ…」
アタシ達はばいく屋に足を踏み入れる。
紅茶の香りがするばいく屋に。
Μ続くΜ
14/12/15 23:14更新 / ドリルモール
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