続く道〜いまだ幕は下りず〜
広場で、アルトヴィヒが刺されてしばらく後。
今だ、俺はその雪の降る町にいた。季節はもう11月になっている。
俺は、アルトヴィッヒの遺体を引き取った。彼を、婚約者の眠る墓へと埋葬することにしたのだ。明日、俺達は彼女の眠る墓に向けて出発する。墓は、ここから結構な距離があるため、場所に棺桶を積んで向かうことになった。馬車への手配や料金は、全てミシェリスが用意してくれた。
全て、彼女の支払いとなる訳だが、彼女は気にするなと言っている。ジパングには、“タダより高いものは無い”という言葉があるそうだが、あまり考えないことにし、彼女の好意を素直に受けることにした。ある意味、俺はそれだけ参っていたのかもしれない。
この町での最後の夜。俺は、酒場の暖炉の前で考え事をしていた。
今、俺の中にはアルトヴィヒから受け取った手紙がある。
「ん?何それ?」
ミシェリスが何事かと、俺の手の中にある手紙を覗き込んできた。
「これか?これは、広場でアルトヴィッヒが投げてよこした手袋の中に入っていたんだ。今考えると、アルトヴィッヒはこれを俺に渡すために、決闘の申し込み見たいな真似ごとなんてしたんだろうな・・・。」
「なんでそんな回りくどいことを?」
「お前は気づかなかったもしれないが、あの広場には教会の関係者が何人かいた。俺を野放しにしているところを見ると、おそらくアルトヴィッヒの監視がその任務だろうな。」
そういって、俺は声を出さずに読み始める。なぜならば、声を出すにはあまりにも危険な内容だったからだ。
『クラウニスよ、貴殿がこれを読んでいるということは、私はもう生きてはいないのだろう。貴殿に敗れたのか、私を監視している教会の刺客にやられたのかは分からないがな。
と、話がそれたな。私がこれを貴殿に渡したのは、どうしても貴殿に伝えなければならない情報があったかだ。
最初、私が疑問に思ったことは、あの地域が魔界に堕ちたとき、即座にインキュバス化、サキュバス化した元人間の粛清が迅速に行われたことだ。もし、派遣されたのが聖騎士団ではなく勇者であったなら、こう速やかには行われなかったはずだ。明らかに、教会はこれから起こることを予期していた。
魔物目撃の情報が伝えられてからの、教会の動きを考えても見てくれ。どうして、あの短期間にあれだけの錬金術師と、高品質の魔導器を用意できた?どうしてあの短期間に、あれだけの人員を現地に派遣することができた?
貴殿が立ち去ったあと、私は密かにあの事件を独自に調べ始めた。
そして、あの事件の裏に『AM資料』と呼ばれる物が存在することを突き止めた。
だが、その事実にたどり着いてから、私の周辺に教会の監視が着くようになった。どうやら、踏み込んではいけない暗部に私は踏み込んだようだ。
だから、この事実を君に伝えようと思う。
勝手な事だとは分かっている。でも、どうしてもあの事件の裏で何が起こっているのか、何なのか白日の下に晒さなければならないような気がしたのだ。
そうすることが、ディリアーテに対する私の償いになると信じて。
追伸:読み終えたら、この手紙は燃やしてくれ。残しておくには、この手紙の内容はあまりにも危険なものだ。』
手紙を読み終えた俺は、手紙の内容にしたがって、手紙を暖炉の中に入れた。
俺とアルトヴィッヒの因縁のようなモノは、ディリアーテの兄によって幕が下りた。
だが、5年前の事件は、どうやらまだ幕が下りるには早そうだ。この様子だと、アルトヴィッヒの監視はこれが原因なのだろう。どうやら、全てを終わらせるには、そうとう骨がおれそうだ。
「骨が折れても、生きているだけましって事が続きそうだな・・・」
「???」
俺は、アルトヴィッヒを弔った後の行動を考えていた。まず、手始めにあの場所にでも行ってみるとするか。
全てが始まった、5年前のあの場所へ。
今だ、俺はその雪の降る町にいた。季節はもう11月になっている。
俺は、アルトヴィッヒの遺体を引き取った。彼を、婚約者の眠る墓へと埋葬することにしたのだ。明日、俺達は彼女の眠る墓に向けて出発する。墓は、ここから結構な距離があるため、場所に棺桶を積んで向かうことになった。馬車への手配や料金は、全てミシェリスが用意してくれた。
全て、彼女の支払いとなる訳だが、彼女は気にするなと言っている。ジパングには、“タダより高いものは無い”という言葉があるそうだが、あまり考えないことにし、彼女の好意を素直に受けることにした。ある意味、俺はそれだけ参っていたのかもしれない。
この町での最後の夜。俺は、酒場の暖炉の前で考え事をしていた。
今、俺の中にはアルトヴィヒから受け取った手紙がある。
「ん?何それ?」
ミシェリスが何事かと、俺の手の中にある手紙を覗き込んできた。
「これか?これは、広場でアルトヴィッヒが投げてよこした手袋の中に入っていたんだ。今考えると、アルトヴィッヒはこれを俺に渡すために、決闘の申し込み見たいな真似ごとなんてしたんだろうな・・・。」
「なんでそんな回りくどいことを?」
「お前は気づかなかったもしれないが、あの広場には教会の関係者が何人かいた。俺を野放しにしているところを見ると、おそらくアルトヴィッヒの監視がその任務だろうな。」
そういって、俺は声を出さずに読み始める。なぜならば、声を出すにはあまりにも危険な内容だったからだ。
『クラウニスよ、貴殿がこれを読んでいるということは、私はもう生きてはいないのだろう。貴殿に敗れたのか、私を監視している教会の刺客にやられたのかは分からないがな。
と、話がそれたな。私がこれを貴殿に渡したのは、どうしても貴殿に伝えなければならない情報があったかだ。
最初、私が疑問に思ったことは、あの地域が魔界に堕ちたとき、即座にインキュバス化、サキュバス化した元人間の粛清が迅速に行われたことだ。もし、派遣されたのが聖騎士団ではなく勇者であったなら、こう速やかには行われなかったはずだ。明らかに、教会はこれから起こることを予期していた。
魔物目撃の情報が伝えられてからの、教会の動きを考えても見てくれ。どうして、あの短期間にあれだけの錬金術師と、高品質の魔導器を用意できた?どうしてあの短期間に、あれだけの人員を現地に派遣することができた?
貴殿が立ち去ったあと、私は密かにあの事件を独自に調べ始めた。
そして、あの事件の裏に『AM資料』と呼ばれる物が存在することを突き止めた。
だが、その事実にたどり着いてから、私の周辺に教会の監視が着くようになった。どうやら、踏み込んではいけない暗部に私は踏み込んだようだ。
だから、この事実を君に伝えようと思う。
勝手な事だとは分かっている。でも、どうしてもあの事件の裏で何が起こっているのか、何なのか白日の下に晒さなければならないような気がしたのだ。
そうすることが、ディリアーテに対する私の償いになると信じて。
追伸:読み終えたら、この手紙は燃やしてくれ。残しておくには、この手紙の内容はあまりにも危険なものだ。』
手紙を読み終えた俺は、手紙の内容にしたがって、手紙を暖炉の中に入れた。
俺とアルトヴィッヒの因縁のようなモノは、ディリアーテの兄によって幕が下りた。
だが、5年前の事件は、どうやらまだ幕が下りるには早そうだ。この様子だと、アルトヴィッヒの監視はこれが原因なのだろう。どうやら、全てを終わらせるには、そうとう骨がおれそうだ。
「骨が折れても、生きているだけましって事が続きそうだな・・・」
「???」
俺は、アルトヴィッヒを弔った後の行動を考えていた。まず、手始めにあの場所にでも行ってみるとするか。
全てが始まった、5年前のあの場所へ。
11/01/28 15:20更新 / KのHF
戻る
次へ