連載小説
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〜それぞれの楽しみ〜
side/レグザ

俺とザイードは目一杯闘うべく闘技場を訪れていた、のだが・・
「あー、すいません。明日の闘技大会の準備中でして・・」
「なっ・・・いえ・・そうですか・・」
どうやら使えそうにない。
落胆していると・・

「あら・・あの時の傭兵さん」「・・誰だ?」
振り返った先には見知らぬ女性がこちらを向いて立っていた。
いや、立っているというよりは蛇の体を半分柱に巻き付けているという所か。
失礼だとは思うが、口をついて出たのは名を問うものであった。
そんな言葉に目の前の女性と、なぜかザイードも顔を顰めた。

「覚えてないのか、あたしとあんたを合わせた恩人だよ?」
「まぁ、ちらっと言葉を交わしただけだしねぇ」
・・ん?この声、聞き覚えが・・

『ほら、わたしよりもあの子の方が楽しめるわよ・・』

「あのときの・・え?えええええ!?あんたか!?なんか変わってないか?」
「そんなに驚かなくったっていいじゃない」
確かに覚えがあった。
かつて傭兵として過ごしていたとき、半ば荒んでいた俺の目の前に現れ
ザイードに逢わせたエキドナ、タリアその人だ。

「見る限り、夫婦円満みたいね」「まぁ、おかげさんでね」
「そういや、なんであんたが此処に居るんだ?」
返ってきたのは、予想だにしない答えであった。
「ああ、ここのオーナーあたしだもん」「・・え?」
いや、だもんって言われても。
驚く俺を傍目にザイードは話を続ける。

「へぇ〜あんたがオーナーだったのか・・
それはそうと、なんとかして使えないかな?闘技場。」
その問いに彼女は、少し考えた後
「そうねえ・・確かにどの辺りまで暴れられてもいいか、
確かめたくもあったしいいわ、あなた達なら」
「「本当か!恩にきる!」」
聞くが早いか、俺はザイードとともに闘技場へと走り出していた。
その途中後ろからこんな声を聞きながら。
「ほんと、彼女に会わせてよかったわ・・二人ともあんなに幸せそうで・・」


side/ミーア
私は、アルと一緒に買い物に来ていた。
これは酒場の仕込みなどではなく、正真正銘の私事だ。
何を買うでもなくただぶらぶらとアルと見て回る、まぁデートかな。
「ねぇねぇ、これなんてどうかな?」「あぁ、良いんじゃないか」
むー・・返事といえば、まずこれだもんなぁ・・

「え〜・・・アルはそれしか言わないよ・・」
「あ〜・・うん、ごめんな。良く分からんから似合ってるとしか・・」


まぁ仕方ないと言えば仕方ないんだけど・・
これ以上ここにいてもつまらないので私たちは店を出ることにした。

side/アルべス

むぅ・・ミーアが服を着て見せてくれるのだが、
その度に俺はあんな感想しか言えないことを悔しく思う。

過去を言い訳にしたくは無いが、
ミーアと出会うまで、生きるか死ぬかの生活しかしていなかったので
正直なところ、何を着てもミーアが綺麗だということしか言えない。

・・ん、待てよ?俺はミーアにそう言ってやったことが有ったか?

随分前にした会話を思い出す。
『なぁ・・ミーアは素朴な答えと、飾った答えどっちが良い?』
『そんなの素朴な方がいいよ、分かりやすくって』

そうだ!言ってみるか。
「なぁ・・ミーア、さっきの服のことだが・・」
「・・何よ」
う・・やっぱり怒ってるか・・
「ごめんな、いつも同じ答えしかできなくて」
「・・いいって言ってるじゃない・・」
そう言いつつも彼女は目を合わせようとしない。

やはり言うなら今しかないか。
「あれはな、俺には違いが分からないんだ。」「・・っ!」
でもな・・と続ける。
「俺にわかるのは、どんな服を着ても
ミーアは変わらず綺麗で可愛いって事だけなんだ。」
伝わってくれたか・・?
「なによ・・もう・・アルったら・・」
そう言って俯いてしまった、伝わらなかったか・・?
少々不安になった俺だったが

「・・うんありがとう、すっごく嬉しい!」
ミーアは一転笑顔で巻きついてくる。どうやら伝わったようだな・・
「嬉しい・・ああ俺も嬉しいよ、やっぱり気持ちは素直が一番だな。」
「もう・・アルはアルなんだから、そのまんまが良いんだよ。」

素直が一番、肝に銘じておくことにしよう。

side/ガザルア

私はバルズと酒場に来ていた。
なぜ、デートで酒場かというとホテルを出た後の会話に原因がある。

「な、ガザルア行ってみたい所あるか」
「ふむ・・酒場かな、この辺りはどんな酒が有るか気になる。
それに任務で来るやもしれんからな、情報はほしい。」
「よっし分かった。じゃ、行こうか。」

我ながら色気のいの字も無いな・・そんな自虐に耽っている間にも
バルズはあっちへ行ったりこっちへ来たりと忙しないものだ。
いつもならば注意するところだが、
情報を集めると言う時にはバルズの右に出る者は居ない。
元盗賊だけに話の進め方も、切り上げ方も見事だからだ。

「そうなのか、それはそうとアンタ、ガザルアって奴知らないか?
おれの主人が、まぁ主人っつっても女房だがよ、会いたいってんだ」
「ガザルア・・あの結婚して魔界の外に移り住んだって言うデュラハンか。
そんなのに会いたいって、あんたの主人は何物なんだ?」

おまけに知らぬ振り、私には出来ないことだ。

彼がかつて言ったことだが、
『信用できるか解るまでは騙し合い。信用できなきゃおさらば。
信用できる奴はそんくらいの嘘じゃ怒んないよ。
それに俺は義理堅いんでな、処刑寸前で助けてもらったわけだが
肝心のあんたが居なくなったんじゃ恩返しなんて出来ねえ。
だから、情報はあんたにやる。俺を捕まえて見せたアンタへ、
俺からの敬意と、ちょっぴりの下心を込めてな。』

彼が私の専属情報屋、
ひいては伴侶になるとはあのときは思ってもいなかった。
人生とは分からぬ物だ・・

「ああ、ヴァンパイアだよ。アルクって言ってな。」
「あ、アルクだと!?」「お、おいどうしたガザルア」
私はつい立ち上がっていた。
というのも、しばらく前に行方知れずになっていた友の名だったからだ。

「お、ガザルアさんってあんたか。」
「ああそうだ!それよりアルクは、どこで何をしている!」
「お、落ち着けって、魔界でゆっくり過ごしているよ。
あと、酒を酌み交わそうという事だ、伝えたぜ」「そうか・・。」
元気なようだな・・
酒・・か。相変わらずのようだな、よかったよかった。

「ガザルア、今度一緒に行こっか?」
「ああ・・また会えるとはな・・嬉しいものだ。」
酒と・・肴は恋の話でいいかな・・ふふ。

side/椿
「観光・・か」
「椿はそういうのあんまり興味ないだろうな」「ああ・・」

俺は特に何もすることも無く、ただただラーシュと話し込んでいた。
ラーシュと出会った時から、いやそれよりも前からだったろうか。
俺は景色は見るのは好きだったが、
見ている横で「あれはこうだからああなっている」などと
ぐだぐだと説明をされるのは嫌いだった。
だから、観光も一回だけ行ったが正直物足りないと思いやめてしまったのだ。

しかもその時に、半泣きで
「何故観光など行ったんだ、見たいものがあれば私と飛べばいいだろう!」
といった感じで怒られてしまってから、何かを見に行く時は
ラーシュに乗せて行ってもらっている。

「しかし聞いたか?明日闘技大会があるそうだ。」
「闘技大会・・か。レグザ達が張り切っていたのはそれだな。」
休暇中といえども、竜騎士として闘技大会には興味が湧く。
故に空から眺めさせてもらっていたのだが、生憎先客がいた。
「もらったぁ!」「させるかぁっ!」

互いに魔界銀製の得物を使っているとはいっても
下手をすれば致命とはいかずとも、やはり痛手となる。
にも関わらず、二人の表情は明るかった。
あいつらなりのデートといった所なのだろう。
流石にそこに分け入るほど野暮でもないのでさっさと退散した。

「ふぁ・・ラーシュ、茶でも飲みに行くか?」
「茶か、構わないが・・あれは私には少し苦く感じるんだよな。
前お前が入れてくれた薄いのなら飲めるんだが。」
「そっか・・じゃあ薄めの奴頼むか。」

そしてやってきた茶屋の前、店番の稲荷に注文をする。
「いらっしゃいませ、何になさいますか?」
「お茶を二杯、妻の分は少し薄めで。」
「分かりました。旦那様は薄めなくても?」「ああ、構わない。」

そして程無くして、少し薄めのお茶と俺の分のお茶をもらう。
「・・ぁあ。やはりいいな、茶というものは。
体の隅まで沁み渡る感じがする。」
「私にはよく分からないが、確かに美味しいな。」

その後お代を払い少しラーシュと眠ることにした。
「ふぅ・・お前の首は気持ちいいな、やっぱり。」
「ふふ、木などにはお前の枕はさせないからな」

side/ザイード
「そこ!もらったぁ・・っ!」
裂帛の気合とともに振り降ろした大剣は、しかし二槍に阻まれてしまった。
「っ・・はぁっ!」
瞬間の静止の後、交差された槍の柄が勢い良く迫る。
咄嗟に腕で止めるが、その代償は鈍い痛みだ。
そのまま持って行かれそうになる腕をなんとか引き抜く。
だが槍はそのまま喉元へと迫り・・

「は〜いそこまで、もう掃除しなきゃいけないのよね」
タリアの声によってすっぽ抜けた。
そしてレグザと同時にへたり込む。
先程までは異常なほど気分が高揚していて気付かなかったが、
度重なる戦闘の果てに腕は痺れ、足はもつれかかっている。
それはレグザも同じようで息も荒く、突き立てた槍によりかかっていた。

「そんなに疲れるまで、よく闘い続けられるわね・・」
「ああ、あたし達なりのデートって奴だからね!」
見上げた空はすっかり焼けていた。
相当な時間闘い続けていたらしい。
しかし、そこまでやっても疲れはすれど、飽きることなど有りはしない。
どのように攻めるのか、それに対してどのように守るのか。
攻めと守りが移り変わる瞬間の駆け引きを楽しんでいるからだ。

旦那であるという色眼鏡を外しても、レグザは強く面白い。
闘う度に、新しい技と知恵でもって対抗してくれる。
だからこそ闘わずには居られず、鍛練にも精が出るのだ。

「あ〜そうそう、明日の闘技大会なんだけどあなた達出ない?」
「・・え、良いのか?申し込みもしていないのに。」
驚く私達に、彼女は付け加えた。
「もちろん、本選には無理よ。でも盛り上げるための前座でなら一戦だけね」

一戦だけ・・元より参加するつもりでは無かったのでその条件は良い。
だが・・前座かぁ。
「有難いが・・タッグマッチはあるのかい?」
「ええ、もちろん」
「前座・・か。それは加減してやれっつうことか?」
同じような不満を抱いたようでレグザも会話に加わってくる。
「まさか。思いっきり暴れてオッケーよ。
だって相手は荒くれだもの、それも反魔物領からのね。」
そして、彼女は説明を始めた。

side/レグザ
なるほど、納得のいく話だ。
つまりは俺とザイードの睦まじさを見せつけてやれ、ということか。
そういう意味なら・・と少し無理な注文をしてみる。
「なら・・今皆で旅行中でさ、闘える奴が何人かいるんだが
もし誘えたらそいつらの分まで試合を用意できるか?」
「ええ、多ければ多いほど良いわ。」「わかった、じゃそろそろ行くな。」
そして俺はあのホテルへと向かった。
・・またもやこんな言葉を聞きながら。
「試合が終わったら、未婚の子達は押し寄せるわね・・ふふ」

side/アルべス
ミーアに巻きつかれながら他の面々と共にレグザを待っていると、
試合に出てみないか、などと言われた。
「ふざけるな、何故出なくてはいけないんだ。確かに腕に覚えはあるが・・」
「でもでもアル?お店の宣伝にもなるかも知れないよ。
それに、私は初めて会った時の荒々しい貴方も好きだもん。」
「・・宣伝なら出てみるのも悪くないか。元騎士団の実力、見せてやる。」
上手くミーアに乗せられた気がしないでもないが、とりあえず承諾。
椿とラーシュはそれはもう良い返事だった。
あの二人はもともと出るつもりだったらしい。

side/ラーシュ
外での話が終わり、ホテルに入り部屋に向かうとそこには料理があった。
約束の時間より遅かったはずだが意外にも出来たてのような温かさだ。
量が少なく少々物足りないものの、遅れたこともあってそれは我慢する。

「なぁ椿、温泉に行かないか・・?」「ああ、行こうか。」
確かディナーの後は各自自由行動だったはずだ。
ならば二人きりで温泉に行っても文句はなかろう。
思い立てば行動とは速いもので、着替えを持ち窓から夜の街へと飛翔する。
そのまま一気に闇を駆け抜け、銭湯へと降り立った。

上空ですさまじい音で止まったため店番の妖狐は相当驚いていた。
「い、いらっしゃいませぇ・・ご夫婦ですか・・?」
「ああ、出来るならば二人きりの風呂が良いんですが・・」
なるべく穏やかに話したつもりだったが先程の件もあってか
目の前の妖狐の表情は強張ったままだ。
どうしたものかと戸惑っていると奥から女将と思しき稲荷が出てくる。

「あらら、貴方震えてるわよ。
私がお相手するから、奥の方で休んでなさいな。」
「は・・はぃ・・失礼します・・」
金色の尾が垂れている所を見ると、相当怯えさせてしまったらしい。
そんな後ろ姿を見送った後私は口を開いた。
「すまない、怯えさせるつもりは無かったんですが・・」
「ああ、あの子は新入りだったものですから。」
とそこへ椿も入ってくる。
「いえ、こちらの責任です。そこまで速く飛ぶ必要もありませんでしたから。」
「ああいえ、良いんですよその方が・・あら、もしかして椿ちゃん?」

何を言っているんだ、この狐は・・
いや、それよりも椿ちゃん・・だと・・私の伴侶に、椿に向かって!?
憤る私をよそに、椿は目を見開いた。
「・・まさか、成亜(なりあ)さん?」
「やっぱり!久しぶりね、椿ちゃん。」

なんだなんだ、何故盛り上がれるんだ?
そんな表情を見せていたら、
「あ〜ラーシュは見た事ないよな、悪い。
この人は、俺がこっちに来る前に世話になったんだ。」
「ごめんなさいね、奥さんとは気付かなくって。
安心して、私には夫がいるから。」
その言葉通り確かに精の匂いがする。
そう言えば以前、椿からジパングの話を聞いたときにこの人の話をしていたな。

「すまない。あんまり親しそうに話すものだったからつい・・」
「ふふ、ワイバーンなのに随分と礼儀正しいのね。それはそうと、んんっ・・」
そう言って、成亜は一つ咳払いをすると、

「夫婦の湯ですね、空いておりますのでどうぞ。」
流石は女将、切り替えの速さも伊達ではない。
このまま話し込んで迷惑をかけるのも悪いので私達は脱衣所に行った。

side/ガザルア
私は部屋に戻りバルズと共に星空を眺めていた。
「なぁなぁ、武闘大会どうするよ?」
「・・私はいい。
あまり見せつける戦いというのは好きではないからな。」
これは事実だ。
護るための戦い以外は好きではない。

「・・こんな事を言うから堅物などと言われてしまうんだろうな・・」
それはあくまで独り言の自虐のつもりであったのだが、
至近距離にいたバルズにはもちろん聞こえていたようで
「あのなぁガザルア・・世の中を見てきた俺から言わせてもらうけど、
そんな堅物だからこそ、信頼したり好きになったりする奴もいるんだぜ?」
そう言い私の体を抱きすくめ軽くキスをしてくる。
取り外せるとはいっても、それは確かに私の一部なのだ、
キスをされれば気持ちがいいし、応えることもできる。
「俺みたいにな。だからさ、そんなに気負うなよ?潰れちまうぞ。
大丈夫だって、ちゃんとやることやれてるじゃないか。」

ああ、そうだな・・もう十分仕事はしたか。
ならば、彼だけの顔無き顔を見せるとしようかな。
そう思いおもむろに顔を取り外す。
瞬間、彼への想いが溢れ出しソファーに半ば押し付けるように倒れ込んだ。
「お前はいつもそうやって私を助けてくれる・・だから私は・・んっ・・」
好きだ・・そう続けようとした言葉は指によって阻まれる。
その代わりに彼は先程よりも強く抱きしめた。
まるでその続きは体で示せとでも言うかのように。
いいだろう、ならば示してやろう。
私がどれほどお前が好きかという事を・・

side/椿
脱衣所で服を脱ぎ体を洗い、湯船につかると疲れがどろりと溶けていく。
ラーシュとの交わりには敵わないが、これもなかなか良いものだ。
そのラーシュはというと水を浴びた後の癖で、体を伸ばしていた。
翼はもちろん肩から爪先まで濡れて艷やかに光っているのを見ると、
その美しさにいつも溜息がこぼれてしまう。
何を隠そう、この姿に惚れたと言ってもよいほどなのだ。
「はぁ・・いつ見てもいいな。濡れたお前は・・」「ふふ・・そうか?」
言いつつ湯船に入ってくる。
翼がつっかかりかけたが、そこは抱きつくことで解決した。
「なぁ・・椿・・今・・此処で・・」
言ったラーシュの顔は火照っており、息は荒い。
応えてやりたいが・・貼ってあった張り紙を思い出す。

|風呂中での性行為は、11:00から
守れなかったら、今後一切の出入りを禁ず。|

時間的に今は10:30程。
ならば、此処でしてしまうわけにはいかない。
「ラーシュ、駄目だ。」「うぅ・・何故だ・・」
軽く泣きそうになっている。
マズイな、何か、何かないか・・そうだ。
「我慢してくれたなら部屋でお前とする。どうだ?」
「絶対・・だな?」「ああ、二言はない」
聞いた途端、ザパァッと音を立て湯船から上がる。
「ならば、早く行こう。私は・・今でも相当我慢しているんだから・・」
その言葉通り、俺たちは早々に上がりホテルへと急ぐ。

「そんなにしたいプレイとはなんだ?」
「ふ・・誰が作戦の内容を相手に漏らすというのだ・・」
なるほど、不意打ちか。そういうの嫌いじゃないぞ。
首を撫でてやると、嬉しそうに喉を鳴らして答えてくれた。

side/ミーア
「ふぁん・・!アルぅ・・もっと撫でてぇ・・」
私はアルに愛撫して貰っていた。
アル曰く、私の体は大きいから撫で甲斐があるという。
「ミーアはここが弱いからな・・ほれほれ・・」
まるでピアノを弾くように蛇体と人体とが撫でられる。
自分でも息が荒いのがわかる。

・・抱きつきたい・・

思ったときには彼の体に絡みつきキスをしていた。
「ふむぅ・・ありゅぅ・・んんっ・・」
「ん・・んぅ・・はむぅ・・」
蛇体は足、腕は肩に回しての抱きつき。
その間にもアルは撫で続けてくれる。
あ・・だめ・・そこはぁ・・
「っむぅううぅ・・!」「んっ・・ミーアあ・・」
ああ、繋がりたい・・・アルと・・
「ねぇ・・アルもういい・・?」
「ん、ミーアは我慢弱いな。ああ、構わない。」
待っててね、今日も楽しもうアル・・

side/椿
「着いたな・・で、ラーシュのやりたいプレイってなんだ?」
ここまで我慢させたのだ。
さぁ、どんな要望だろうと応えなければな・・
意気込む俺にラーシュは
「じゃ、先に寝ていてくれ。」「え・・!?」
まさか怒らせたのか。
確かに無理やりっぽい止め方ではあったが。
「ラ、ラーシュ。なんでもいいんだぞ?やりたいことを・・」
「いいから、寝ていてくれ。怒ってなどいないから。」
む・・どうしたんだ。
さっきまであんなにやりたがっていたのに・・
しかし、なにやら有無を言わさぬ雰囲気だったので素直に寝る事にする。

「ん・・眠れん。」
ラーシュがいないだけでこんなに寂しいとは・・
ドスッ・・ドス・・
ん・・なんの音だ?ラーシュと違い、暗闇では見えづらい俺では・・
ドンッ!
っ!のしかかられた!?
抵抗するものの、相当力が強いのか押し退けられない。
そして口元に何者かが・・

「ラーシュ!?なんだラーシュだったのか」
「む・・もう少し気づかないでいてくれると良かったんだが、まぁいい」
そのまま腕を押さえつけ、足を入れてくる。
なるほど、やりたいプレイとはそういうことか。
ならばできる限り抵抗する。もちろん覆す事などできない、がそれでいい。

「ふふ、分かっているな。あむっ・・れむっ・・むうぅぅっ・・!」
「んんん〜っ!はぁ・・はぁ・・初めての時思い出すな・・」
しかしラーシュは答えず、爪で翼で俺の体をこね回してくる。
「んぁっ・・はぁ・・ああっ・・や、やめっ・・」
「ふふ、はじめての時もこうやって焦らしたのを覚えてるか・・?」
覚えているに決まっている、そう答えたかったが快感が先に立った。
「あ・・覚えて・・うあっ・・いるさ・・あぁっ・・」
つまりラーシュの望んだプレイとは、
襲うワイバーンと、襲われる人間の男と言うものであったのだ。
俺は割とMであるので、このプレイは好きだったりする。

そのまま、舌を入れてもっと激しいキスに移っていく。
「あむ・・れぅ・・ふぅ・・」「んっ・・ふふ・・」
足も絡めていよいよ気分も盛り上がってくる。
「やめろ・・っ!ふぅあっ・・このっ・・」
もちろんやめて欲しくなどない。
「そんなことを言うなら、もっと抵抗して見せてくれ・・」
次は首筋を舐めてくる。

流石にやられっぱなしでも悔しいので足を無理やり出し、尻尾を擦る。
その瞬間ラーシュの体がビクッと震えた。
「ふぁっ・・」「ん・・ふふ・・可愛い顔だな?」

ラーシュは強い。
だからこそ、こんな風にゆっくりしてやると途端に緩むのだ。
それを見れるのは自分だけという優越感もある。

先程のお返しとばかりにこちらも首筋を舐める。
そして手の拘束が緩んだ隙に翼膜を擦り上げた。
「はぁぁぁ・・っ・・」
ラーシュはここがすごく弱い。
そのままラーシュを横にひっくり返し、今度はこちらが乗っかる。

いつの間にか俺が攻めてしまっているな・・
それにしても良い眺めだ、と満悦しつつ今度は胸を虐めることにした。
下から手を突っ込み、乳首をこねまわす。
「あ・・っ・・椿・・あうぅあぁぁ・・そこ、よりぃ・・」
その表情は蕩けるどころかもはや崩れている。


そして意地悪いとは思いながらも一つの質問をする。
「ここより・・なんだ?どうして欲しいんだラーシュ。」
ぐっ、と顔を近づけ耳に囁く。
「いれて・・もう・・私に挿れてくれ・・」
「挿れる・・?何処に挿れて欲しいんだ?」
するとラーシュはもう我慢ならぬといった真っ赤な顔で、

「私に・・私の膣に、挿れてくれと言ってるんだ・・っ」
「ふっ・・よく言えたな、ラーシュ・・」
軽く頭を撫でて、全裸になりラーシュに跨る。
しかしすぐには挿れずに濡れ具合を確かめる。
・・よし、思った通りグチョグチョだ。
いつものように首を手で挟んで準備完了。

「よし・・挿れるぞ、ラーシュ。」
ラーシュは膣内の締め付けが恐ろしく強いので
ゆっくり腰を沈めていくつもりだったが、
「ああ・・もう待ちきれん・・!」
その逞しい両足に腰を抱え込まれ無理やり奥へ突っ込まれた。
俺の肉棒を食いちぎりそうな程、肉が噛みついてくる。
「くぅあっ!?・・っ」
その瞬間、体から力が一気に抜けラーシュに崩れ込む。
手にも力が上手く入らずそのまま翼に包まれていた。

「・・形勢・・逆転だな・・?」
そのまま腰をグリグリ動かされ体全体が揺らされる。
足が擦れ腰の一振り毎に意識が揺れ、それでも眼はラーシュに釘付け。
そうしている間にも下半身はグチョグチョといやらしい音を立てている。
「うっ・・相変わらず、凄い・・っ・・締め付けっ・・!」
言葉はそれだけ、後はもはやされるがままになっている。
心の中にはラーシュも楽しませなければと思っていたが、
その一心の我慢の壁も次の瞬間壊れてしまった。

「椿・・何を我慢しているんだ。
何度でも・・イって良いんだぞ・・大丈夫、私は幸せだから・・」
そのまま顔を胸に苦しくないように埋められる。
頬に当たるやわらかい感触と、先程の言葉が壁を壊した。

「ごめん・・また・・考えすぎて・・っ・・ああっ・・ああああーっ・・!」
体から、いろいろなものが抜けていき、ラーシュにしがみつく。
その衝撃で膣内の奥にペニスが呑みこまれた。
「あ、ふふ奥まで・・温かいのが・・来たぞ、椿。」
「ああ・・もっと・・何回でも・・っ・・」

(俺は何故我慢したのだろう。)
快楽に浸る頭で俺はそんな事を考えていた。
恐らくは昼も風呂でもラーシュに耐えさせたのだから、と気負って居たのかもしれない。
さっきの言葉はそんな事を見抜いてのものだろう。

(やはりお前には敵わない。愛している。)
舌を絡めてキスをしながら、念話で言葉を送る。
(私もだ・・愛している。だが今は・・)

束の間の後彼女からも言葉と愛撫が返って来る。
竜騎士等に使えるこの念話、キスの最中等に便利ではあるのだが

「ん・・はぁ・・お前自身の声が聞きたいんだぞ・・?」
ラーシュには少し不満に思われてしまう。

「ごめんな、どうしても伝えたかったから・・」

言った瞬間、背中に爪を立てられてしまう。何を馬鹿なことをという意味だ。
そんなにおかしな事を言っただろうか。

「そんなに焦らずとも・・」

その言葉と共に、膣から強い締め付けがまた襲ってくる。
突然の事に体がビクッとなるが、それが彼女の膣を刺激した。
「っ・・そう、そんなふうに体でも示してくれ・・そろそろ続きと行きたいだろう・・?」
その言葉に、腰を動かしつつ応じる。

「うっ・・ああ、今度は俺もガンガン動かすからな?」
二回戦からが本番だ。
俺もラーシュもその辺から気分が出てくる。
ひしと抱き合い、再び腰を振り始めた。

「あ・・いい・・お前のが私のなかに・・っ・・」
「うっ・・引き込まれる・・いいぞもっとだ、もっと奥に・・」
襲い来る圧力に体が小刻みに揺れる。
その度に俺も彼女も喘ぎ声を漏らしてしまう。

「お前の感じてる顔・・好きだぞ・・」
「あっ、うん・・お前こそ私が大好きな・・いい顔をして・・っ!」
そこでペニスが引き込まれる動きが止まる。
代わりにグチュグチュとさっきよりさらに締め付けが強くなった。
少し動くだけでも快感に震えてしまっている。

「あ・・ブルブルと・・いいっ!その動きぃ・・っ!」
「はあっ・・凄・・い・・あっ・・はぅあっ・・!」
もう限界だ・・彼女に、ラーシュの膣内に流し込みたい・・!
それは彼女も同じようで早く出してくれと言わんばかりに首を寄せて来る。

「あっ・・出すぞっ・・お前に・・っ!」
「ああ・・出してくれ・・たっぷり私のナカに・・!」
もはや喘ぎ声すら自分の物にしてしまいたい。
キスをして彼女の口の中をかき回し・・てっ・・!

「むうぅぅっ!むぅわっ・・あぁぁっ!」
「はぁっ・・熱いのがっ・・お前のがっ・・ナカにいぃっ・・ひゃうあっ・・!」
ひしと抱き合いながら快感の余韻に震える。

「はっ・・はっ・・今度は、気持ち良かったな・・」
「うん・・お前のが・・まだドクドクって・・」
ああなんと可愛らしいのだろう。
ラーシュは快感に酔ったときにだけクールが抜けるのだ。
普段よりもっと甘え方もベタベタになる。

「あ・・椿の心臓・・とくとくって安心するよ・・。」
「お前のもだ・・うん・・安心するな・・温くって・・
ふふ、ラーシュ・・目がとろんとしているぞ・・眠いのか・・?」
口は半開きになり、こちらの首に自分の頭を擦り付けてくる。
こればっかりは騎士団でいくら言われても俺だけのものだな。

「ふ・・俺の胸で寝たい?」
「うん・・抱きしめて・・私のこと、ギュッとして・・」
頷いてやると、胸の方に顔をうずめて来た。
ギュッと抱きしめながら、耳に話しかける。
「愛している・・好きだよ、ラーシュ・ラグナス。」
「私も・・大好き・・竜風・・椿・・うっ・・ん・・すぅ・・す・・」

寝ちゃったな。
俺達の間では、寝る前はフルネームで呼び合ってからと言う決まりをしていた。
だから、こうして呼び合ったし幸せな気分にもなれている。

「すー・・つば・・き・・ふふ・・好き・・だ・・」
「・・ああ、俺も大好きだよ、ラーシュ。」
二つの角の間に顎をのせ自分自身も眠りに入っていく。
明日も・・これからもよろしくな・・。
そんなことを思い、落ちる意識の中ラーシュが頷いてくれたように見えた。
13/08/02 21:00更新 / GARU
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■作者メッセージ
お待たせしました。
ワイバーンは結構のお気に入りなので、書き入っていました。

クールな人が見せる崩れた表情って素敵ですよね。

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