2.彼女な死人がヤンデレで
「…おい始。帰って早々お前が俺に突きつけているそれは何だ」
サークルの練習とアフターを終えて帰ってくると、玄関口に血塗れのナイフを持った始が立ってました。
…何が言いたいのかわからねーだろうが俺にも訳がわからねー。
頭がおかしくなりそうだ。
「…ねえ太一。ボクは太一の事が大好きだよ。
こんな風に骨と出来損ないの体しかないボクを、何も変わらずに受け入れてくれたんだから」
始がやたらぼそぼそした声で話しだす。
俯き加減なので、どんな顔をしてるのかよくわからない。
「だからね、すごく不安なんだ。太一がこうして遅く帰ってくると、他の誰かの匂いをつけて帰ってくると、もしかして太一に変な虫がついてるんじゃないかなって、すごく不安になるんだ。
…太一はボクの物だ。初めて会った時から、ずっとずっとボクの物だ。他の誰かなんかには絶対に渡さない」
「…お前、いったい何言って…っ!」
始が顔を上げる。その瞬間、俺は言葉を失った。
始の笑顔が、あまりにも歪んでいたから。
始の瞳が、あまりにも濁っていたから。
そんな俺を尻目に、始は言葉を続ける。
「だからボクは考えたよ。どうすれば太一が、完全にボクだけの物になるのかなって。
…それでやっとわかったんだ。ボクが君を殺して、それからボクも死ぬんだ。そうすれば、ボクと太一は永遠に一緒にいられるんだよ。誰にも邪魔されずに。
…どう、素敵でしょ?それこそがボクと太一にとって、最高の幸せなんだ」
狂った笑みを浮かべたまま、始がとんでもない事を言う。
「…なあ、おい、冗談だろ?頼むから冗談だって言ってくれ!」
「冗談でこんな事言う訳ないでしょ。ボクは今から太一をこれで刺すんだよ。わかる?ねえ、今から、ボクが、君を、この手で、刺して殺すんだよ!あはっ、あはっ!あはははははははははははははははははははははははははははははは!」
「…待て、止めろ!来るな!来るなぁーーーーーーっ!」
「…ボクと一緒に、地獄に堕ちよ?
…愛してるよ、太一」
どすっ。
…俺の必死の抵抗も虚しく、始のナイフは俺の胸に突き刺さった。
俺はきっと死ぬのだろう。
いったい、どうしてこんな事に…
〜BAD END〜
…あれ?
俺はナイフを思いっきり突き立てられたはず…だよな?
…なんか、血も出てないし全然痛くないんですけど。
「…ぷっ、あっはははははははははは!」
気づいたら始が笑い転げている。
さっきまでの狂った高笑いと違って、実に健康的な大爆笑だ。
「あーおっかしい!いくらなんでもここまであっさり引っかかるとは思ってなかったよ!」
…え?引っかかる?
「ちょっと待ておい。もしかして、さっきのって全部冗談?」
「冗談以外でこんな事する訳ないでしょ!いくらなんでもサークルで帰りが遅いくらいで刃傷沙汰にはならないって!流石にボクでも引くよ!あっはっは!」
「え、じゃ、ナイフは?たしか思いっきり刺さってたよな?」
「あー、ナイフ?ナイフねえ、これでしょ?確かにナイフだよ」
さっきまで俺に向けていたナイフの刃先を押す始。
…刀身は、あっさり中に引っ込んだ。
「…ナイフはナイフでもギミックの方だがなぁぁぁぁぁぁぁーっ!」
「…なん…だと…」
「だいたいはじめから血塗れの時点でおかしいって思わなかったのかい?今の流れでボクが君以外の誰を刺すっていうんだい。
…何はともあれ、今回の太一弄りネタその一『深夜の愛憎劇!ヤンデレと化した恋人』は大成功だね」
「…はぁじぃめぇぇぇぇぇぇ!」
「まあそんなに怒らないでよ。十月馬鹿さ。英語で言うとオクトーバーフール」
「…通るかっ…そんなもんっ…!」
「まあそんなにカッカしないで。
…それより、さっきのボク相手にガチでビビってる太一がさぁ、なんだかおもったより、キュンときちゃってさ。それでますます、おなか、すいてきた。…タイチ、たべさせて」
「ナチュラルに欲情してんじゃねえよこのドS骨格標本!…って待て!押し倒すな服脱がすなくぱぁすんな!こっちはまだ文句が…待て、ちょっ…アッー!」
「ああん、タイチ、おっきい!」
結局今回の事は始にヤり倒されたためうやむやになり、新たな黒歴史として始にネタにされ続ける事になったのでした。
…あの骨野郎、いつかバラす。
サークルの練習とアフターを終えて帰ってくると、玄関口に血塗れのナイフを持った始が立ってました。
…何が言いたいのかわからねーだろうが俺にも訳がわからねー。
頭がおかしくなりそうだ。
「…ねえ太一。ボクは太一の事が大好きだよ。
こんな風に骨と出来損ないの体しかないボクを、何も変わらずに受け入れてくれたんだから」
始がやたらぼそぼそした声で話しだす。
俯き加減なので、どんな顔をしてるのかよくわからない。
「だからね、すごく不安なんだ。太一がこうして遅く帰ってくると、他の誰かの匂いをつけて帰ってくると、もしかして太一に変な虫がついてるんじゃないかなって、すごく不安になるんだ。
…太一はボクの物だ。初めて会った時から、ずっとずっとボクの物だ。他の誰かなんかには絶対に渡さない」
「…お前、いったい何言って…っ!」
始が顔を上げる。その瞬間、俺は言葉を失った。
始の笑顔が、あまりにも歪んでいたから。
始の瞳が、あまりにも濁っていたから。
そんな俺を尻目に、始は言葉を続ける。
「だからボクは考えたよ。どうすれば太一が、完全にボクだけの物になるのかなって。
…それでやっとわかったんだ。ボクが君を殺して、それからボクも死ぬんだ。そうすれば、ボクと太一は永遠に一緒にいられるんだよ。誰にも邪魔されずに。
…どう、素敵でしょ?それこそがボクと太一にとって、最高の幸せなんだ」
狂った笑みを浮かべたまま、始がとんでもない事を言う。
「…なあ、おい、冗談だろ?頼むから冗談だって言ってくれ!」
「冗談でこんな事言う訳ないでしょ。ボクは今から太一をこれで刺すんだよ。わかる?ねえ、今から、ボクが、君を、この手で、刺して殺すんだよ!あはっ、あはっ!あはははははははははははははははははははははははははははははは!」
「…待て、止めろ!来るな!来るなぁーーーーーーっ!」
「…ボクと一緒に、地獄に堕ちよ?
…愛してるよ、太一」
どすっ。
…俺の必死の抵抗も虚しく、始のナイフは俺の胸に突き刺さった。
俺はきっと死ぬのだろう。
いったい、どうしてこんな事に…
〜BAD END〜
…あれ?
俺はナイフを思いっきり突き立てられたはず…だよな?
…なんか、血も出てないし全然痛くないんですけど。
「…ぷっ、あっはははははははははは!」
気づいたら始が笑い転げている。
さっきまでの狂った高笑いと違って、実に健康的な大爆笑だ。
「あーおっかしい!いくらなんでもここまであっさり引っかかるとは思ってなかったよ!」
…え?引っかかる?
「ちょっと待ておい。もしかして、さっきのって全部冗談?」
「冗談以外でこんな事する訳ないでしょ!いくらなんでもサークルで帰りが遅いくらいで刃傷沙汰にはならないって!流石にボクでも引くよ!あっはっは!」
「え、じゃ、ナイフは?たしか思いっきり刺さってたよな?」
「あー、ナイフ?ナイフねえ、これでしょ?確かにナイフだよ」
さっきまで俺に向けていたナイフの刃先を押す始。
…刀身は、あっさり中に引っ込んだ。
「…ナイフはナイフでもギミックの方だがなぁぁぁぁぁぁぁーっ!」
「…なん…だと…」
「だいたいはじめから血塗れの時点でおかしいって思わなかったのかい?今の流れでボクが君以外の誰を刺すっていうんだい。
…何はともあれ、今回の太一弄りネタその一『深夜の愛憎劇!ヤンデレと化した恋人』は大成功だね」
「…はぁじぃめぇぇぇぇぇぇ!」
「まあそんなに怒らないでよ。十月馬鹿さ。英語で言うとオクトーバーフール」
「…通るかっ…そんなもんっ…!」
「まあそんなにカッカしないで。
…それより、さっきのボク相手にガチでビビってる太一がさぁ、なんだかおもったより、キュンときちゃってさ。それでますます、おなか、すいてきた。…タイチ、たべさせて」
「ナチュラルに欲情してんじゃねえよこのドS骨格標本!…って待て!押し倒すな服脱がすなくぱぁすんな!こっちはまだ文句が…待て、ちょっ…アッー!」
「ああん、タイチ、おっきい!」
結局今回の事は始にヤり倒されたためうやむやになり、新たな黒歴史として始にネタにされ続ける事になったのでした。
…あの骨野郎、いつかバラす。
10/10/24 13:06更新 / 早井宿借
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