いけない個人レッスン
周りを白一色の壁に囲まれた密室。
その壁は普通とかなり違っていて、クッション素材のようなもので全面が覆われていた。
それはこの部屋の中で発生する音を外に漏らさないためのもので、ドアもノブを90度回転させることで固く閉まり、僅かな音漏れもしない作りになっている。
そんな外部から隔絶された空間に存在するのは部屋の隅に置かれた二人がけの椅子と長机。
そして、部屋の中央に陣取る一台のグランドピアノだった。
「な、なんでこんなことになったんだ！？！？！？！？」
長机に向かって椅子に腰掛けていた俺は、今のこの状況にパニックを起こしていた。
目の前にあるのは会議室にあるような足がパイプの安物などではなく、いい具合に年月を感じさせるアイアンと古材で作られたアンティーク調の長机。
そして、その長机の上で恥ずかしそうに頬を紅く染めた一人の女の子。
その子の視線は戸惑いから左右に泳ぎ、たまに俺の視線とかち合うと恥ずかしそうに閉じられてしまう。
瞳は涙で潤み、両手を胸の上で重ね、どこか居心地悪そうにモジモジと身体を動かしていた。
『せ、せんせぇ・・・』
パニックになっている頭とは裏腹に、目の前の女の子の事を見つめてしまっていた俺に声がかかった。
俺の身体はその呼びかけにびくりと反応し、今一度冷静になろうと目を閉じてここまでの今日一日を振り返る。
・・・そう、今日は週四で入れてるピアノ講師のアルバイトの日。
都内の音大に通いながら実益や勉強も兼ねて始めたこのアルバイトも二年目に突入し、今日はある事情から特別に訪問レッスンを組んでいる生徒の自宅でレッスンをしていたんだ。
その子は中学校に上がったのをきっかけにピアノを始めたばかりの女の子で、名前はあおいちゃんといった。
大百足という種族の魔物娘であるあおいちゃんは、お腹から下が文字通りムカデの姿をしていた。
しかし、ムカデの体は同年代の子どもには刺激が強すぎるらしく、怖がったり泣いたりする子もいたらしい。
それでピアノ教室でのレッスンではなく、訪問レッスンをお願いされているのだ。
『先生・・私、この部分がうまく弾けないんです。。。何かコツとかないですか？』
さっきまでぎこちないながらも一生懸命にピアノを弾いていたあおいちゃんの指が楽譜のある記号を指差す。
そこは曲が盛り上がる少し前、おたまじゃくしが並ぶ5本の線の上の方にクレッシェンドのマークがあった。
『ここかぁ・・・あおいちゃん、クレッシェンドは分かる？』
楽譜を手に取り「うーん」と考えをまとめながら、俺はあおいちゃんに質問を投げかける。
『だんだん、・・・強く？』
俺の質問に少し考えてから、あおいちゃんは自信なさ気にそう答えた。
『うん、正解。よくできました』
俺の顔色を伺うように見上げるあおいちゃんを安心させるように、笑ってそう答える。
正しく答えられたことが嬉しいのか、あおいちゃんはとても嬉しそうに顔を綻ばせて小さな声で「やった」と呟いた。
『でも、その「だんだん」って言うのが分からなくなっちゃって・・・』
だが、すぐに表情を曇らせると楽譜に目線を向けながら頭を悩ませる記号を指で突いた。
俺もそんなあおいちゃんの言葉に、「ああ、それすごく分かる」と頭の中で力強く頷いて同意する。
小学校でも習うことだが、音楽には「だんだん」や「すこし」など感覚的な表現の記号が非常に多い。
普段はあまり気にならないことも、何かのきっかけで躓いてしまうとその部分が頭にこびり付いて全体の演奏が崩れてしまう。
あおいちゃんは今、まさにその真っ只中なんだろう。
『そうだ！ねぇ、先生・・・』
さて、どう説明したものかと腕を組んで考えをまとめていた俺にあおいちゃんが声をかけてきた。
そして、あおいちゃんの方へ向き直った俺に予想外な言葉が飛んでくる。
『私の手の平を鍵盤だと思って、ピアノを弾くみたいにしてもらえませんか？』
両手の平を俺に向け、目を輝かせているあおいちゃん。
『あおいちゃんの手に？』
『い、いやならいいんです・・・』
しかし、俺の反応があまり良くないことに気付くと、その手を下げ、さらには目線まで下に落としてしまう。
どうやら悪い印象を与えてしまったらしく、頭の触覚も元気なさ気にうな垂れていた。
『ああ、違う違う！嫌なんじゃなくて、ちょっと予想外だったからびっくりしただけ。・・・気にさせちゃってごめんね？』
俺の配慮のなさであおいちゃんを傷つけてしまったのが申し訳なくて、謝罪して真意を伝える。
おそらく、自分の体の事を必要以上に気にしているのだろう。
『本当・・・ですか？』
『もちろん！むしろ、あおいちゃんは平気なの？』
レッスンとは言え、この年頃の女の子は異性に体を触られるのに対して嫌悪感を抱くのではないだろうか。
ピアノを上手くなるためとは言え、嫌なことを我慢しては長くは続かない。
あおいちゃんの気持ちを確認するべく、なるだけプレッシャーを与えないように尋ねた。
『はい、いいですよ？・・・先生なら』
『・・・へ？』
『な、なんでもないです！それじゃ・・・はい』
最後の言葉の意味はよく分からなかったが、あおいちゃんは満面の笑みでもう一度両手の平を俺の正面に持ってくる。
ご機嫌も直って一安心した俺は「任せなさい！」と胸を張っておどけてみせると、あおいちゃんも楽しそうに笑った。
しかし、実際にやってみるとコレが意外に難しい。
そもそもピアノの鍵盤と触った感触が全然違うし、何よりも中学生になったばかりのあおいちゃんの小さな手ではすぐに幅が足りなくなってしまう。
何とか今までの経験で誤魔化しながら、あくまでもクレッシェンドの感覚が伝わるように悪戦苦闘する。
『・・・分かったかな？』
『・・・な、なんとなく？』
しかし、結果はやはり思った通り。
あおいちゃんと顔を見合わせて、お互いに苦笑いを浮かべてしまった。
『やっぱり私の手じゃ小さすぎるのかなぁ・・・』
『う〜ん、そうだねぇ・・・』
二人して向き合って腕を組み、あーでもないこーでもないと考えを巡らせていると、あおいちゃんが「あ！」と何かを思いついたように声を上げる。
『先生！今度は私の手全体を使ってみてください！』
あおいちゃんはそう言うと、ワンピースの袖から伸びる白い腕を俺の目の前に差し出し、内側を上にしてピアノの鍵盤の上に置いた。
確かに、腕全体なら鍵盤と同じように幅も足りる。
子どもならではの豊かな発想に感心しながら、「今度こそ！」と意気込んで演奏してみる。
『・・・今度も失敗ですね』
だが、結果は先ほどと同じ。
唯一改善したのは横幅が足りたと言う事くらい。
やはりと言うべきか鍵盤とあまりにも違う触り心地と、腕の内側を触られるくすぐったさをあおいちゃんが我慢できないという新たな問題も発生した。
これは次のレッスンまでに解決策を考えておこうと決意した俺だったが、突然椅子から立ち上がったあおいちゃんに手を握られる。
続けて、「こっちに来てください」とだけ言われるとそのまま手を引かれ、部屋の隅まで連れて行かれた。
その先にあったのは一度も使ったことのない長机。
これが一体何なのか良く分からない俺を他所に、あおいちゃんは「ちょっとお行儀悪いですけど」と断りを入れて机の上に上がり始めた。
『あ、あおいちゃん！？』
その行動の真意が未だに理解できずにうろたえる俺を気にも留めず、あおいちゃんは長机の上に仰向けに横たわると、長いムカデの体を真っ直ぐに伸ばす。
そして、「ふぅ」と深呼吸をすると、意を決したように俺を見つめてきた。
『せ、先生・・・いやじゃなければ、私の体を使って教えてくれませんか？』
聞こえてきた言葉は俺の耳から入り、脳へ伝わって意味を理解する前に処理能力を超えてしまった。
言った本人は恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俺の顔をじっと見ている。
『え、・・今、なんて・・・え、あおいちゃん？』
あおいちゃんには申し訳ないが、今の言葉の意味が全く理解できない。
まるであおいちゃんの体をピアノに見立てて、俺に触ってくれと言っているようにしか聞こえなかった。
いくら俺に懐いてくれているとは言え、まさかそんなはずはないだろう。
きっと俺の耳と脳が馬鹿になってしまったのだと、そう思った。
『えと・・・私の手じゃ小さすぎるし、腕だとくすぐったいので・・・だから、ムカデの体なら大丈夫かなって・・・』
どうやら、聞き間違いでも俺の耳や脳が馬鹿になってしまったわけでもないらしい。
何と答えたらいいのか、慎重に言葉を選んで考えをまとめていると、その無言に堪えられなくなったあおいちゃんが先に口を開く。
『やっぱり、ムカデの体の女の子なんて、触るのいやですか・・・？』
『い、嫌じゃないよ！？嫌じゃないけど、さすがにそれは色々とマズイ気が・・・』
犯罪的な意味ではなく、あおいちゃんのように素直でかわいい女の子と仲良くなることは決して嫌ではない。
しかし、体を触るとなるとそれは非常にマズイんではなかろうかと脳が警報を鳴らす。
前段の話を知らない人からしたら、「未成年のいたいけな少女の体をまさぐる変態」と捉えられかねない。
何とか穏便に別の方法に誘導するべく、あまり賢いとは言えない脳をフル回転させる。
『いやじゃないならお願いします！・・・先生みたいに、ピアノが上手になりたいんです！』
あおいちゃん、その心意気は非常に頼もしい。
・・・が、方向がズレていることに気が付いていないのだろうか。
ここは密室で、ましてや二人きりで、しかも完全防音の部屋。
・・・俺は今に至るまでの全てを思い出した。
改めて確認するまでもなく、俺の目の前には長机に仰向けになって寝転がる一人の女の子。
薄青色のワンピースの裾を少したくし上げてムカデの腹を晒し、恥ずかしそうに裾を握り締めている。
そんなに恥ずかしいのであれば今すぐにでも止めてはどうかと何度提案しても、「ピアノが上手になりたい」の一点張り。
涙目で懇願され、これ以上その気持ちを無碍にすると違う意味で悪い誤解を与えてしまうかもしれないと考えた俺は腹を括る。
あおいちゃんの意思を最後にもう一度だけ確認し、それが変わらないことを理解した俺は「分かった」と答えた。
ようやく俺が納得したことに安心したあおいちゃんは肩の力を抜き、そして体全体を脱力させる。
確かによく見てみると、あおいちゃんのムカデの体の節の一つ一つが、まるで大きなピアノの鍵盤のように見えた。
そのままそっと指を置くと、本物と全く同じとは言えないが指先に優しく触れる感触と、象牙の鍵盤のようにほんの少ししっとりしている。
「それじゃあ、弾くよ？」と確認の言葉をかけると、あおいちゃんは固く目を閉じたまま頷いた。
本物の鍵盤よりも節の幅も広いし、何より黒鍵にあたる部分がなかったがそれでもあおいちゃんの覚悟を無駄にしないためにも全神経を指先に集中させる。
『・・・んっ・・ひっん・・・ふあ・・・は・・ぁ・・・』
しかし、俺の指が触れるたびにあおいちゃんの口からは何とも悩ましげな吐息が漏れ、その度に演奏している指が止まりそうになってしまう。
もちろん、あおいちゃんにそんな気がないことは重々承知している。
だが、そんな気持ちとは裏腹にひっきりなしに聞こえる吐息や指先から伝わる微かな震え、そして体温が俺の理性や集中力をガリガリと削っていった。
目線をあおいちゃんの顔へ向けると、頬は紅潮して口からは熱い息を漏らし、時折ぴくんと体を反応させる。
不謹慎ながら、子どもとは思えない、色っぽい顔に無意識に喉がなった。
それでも、何とか邪念を振り払い演奏を続ける俺の目の前で更なる事態が発生する。
なんと、あおいちゃんの着ていたワンピースの生地が肌に張り付き、上半身のラインや毒腺の模様が透け始めたのだ。
『あ、あおいちゃん・・・！ふ、服が・・・』
これにはたまらず、あおいちゃんに声をかけるが当の本人は俺の指の動きに集中しているのか、俺の声が耳に届いていないのか気付く素振りがない。
これ以上はさすがにまずいと判断した俺は演奏する手を止めて指をあおいちゃんの体から離す。
『・・あ、だ、だめっ・・です・・！』
しかし、すぐにあおいちゃんの震える手が俺の手に重なり、弱弱しい力で自分の体に引き寄せる。
自分の体の異変を承知の上で、それでもなおピアノを上手くなりたい一心で耐えているのだろう。
なら、俺がすることは決まっている。
『・・・分かった。最後まできちんと演奏するよ、だからしっかり指の動きを憶えるんだ』
あおいちゃんのために、俺の持てる全ての技術を総動員して指運びや演奏の強弱を伝えること。
俺の言葉にあおいちゃんは小さく頷くと、「お願いします」とだけ答えた。
『これがスタッカート。跳ねるように指先で鍵盤を押すんだよ』
『んっ！・・ひぅっ！すた、ぁ・・すたっ・・かぁと・・っ・』
あおいちゃんの幼い未成熟な体の上をスキップするように俺の指が跳ね回る。
普通の演奏とは違い、幾分か力を篭めた動きに柔らかな肌は沈み込み、その度にあおいちゃんは声を上げた。
人肌より少し固いムカデの体の上を指が動くたびに、均等に並んだムカデの肢もビクビクと戦慄き、指を握り込むようにきゅうっと収縮する。
そんな肢がかわいくて悪戯で触れると、より一層高い声を上げてあおいちゃんはいやいやと首を横に振った。
『次はマルカート。一つ一つの音をはっきり演奏するんだ』
『ま、マル・・っ・・まるかぁっ・・あっ！・・はぅっ・・』
指を高く上げ、さっきよりも強く肌を押すとドレミの代わりにあおいちゃんの口から卑猥な声が飛び出した。
両手で演奏していることや音階の移動もあり、指が触れる範囲はムカデの体はおろか、人と同じ部分まで移動する。
『ひあっ！！！・・や、ぁ、そこ、だめ・・っ！！！』
ぷにゅっと沈む柔らかなお腹。
意図せず触れた毒腺に指先がジュプッと沈むとあおいちゃんはより大きな声を上げて体を仰け反らせた。
上半身から垂れる毒はムカデの体まで垂れてしまい、演奏を続ける俺の指に執拗に絡みつく。
目の前の女の子・・・いや、楽器として自らの体を差し出し快感に悶えるあおいちゃんに男としての欲望が膨らみ、当初の目的はすっかり塗り替えられてしまった。
『これはスラーだよ。音と音を途切れさせないように、滑らかにつなげて』
『やっ・・はぁ・・っ・・ふ、ふぁ・・いじっ・・わる・・ぁん・・やだぁ・・っ！』
もうすっかり出来上がってしまったあおいちゃんの耳には俺の言葉は届いていないのか、長机のふちを握り締め転げ落ちてしまわないように体を押さえ込んでいた。
毒でぬるぬるになってしまった指先はあおいちゃんの肌から離れる度に糸を引き、それまでとは違う、ねっとりと肌の感触を確かめるような指使いにあおいちゃんは非難の声を上げる。
しかし、言葉とは裏腹に表情はすっかりトロけきって、口の端からはだらしなく涎まで垂らしているほどだった。
『そして、ここからがクレッシェンド。だんだん強く、曲のリズムを感じながら音を盛り上げる』
『はっ・・はぁぁぁっ・・あ、あ、ああっ・・す、すごいぃ・・っ・・・』
いくつもの小節を乗り越えて最後に待っていたのは、あおいちゃんの頭を悩ませるクレッシェンド。
ねっとりした指使いの中に、だんだんと力を乗せて一つ、また一つと指を運ぶ。
何度も何度も毒腺を突かれ、その度に声を上げるあおいちゃんがかわいくてもっともっとと、今までにないほど演奏に力が篭もる。
それに合わせてあおいちゃんの小さな口からは卑猥な声が溢れ、下の口からもドプドプと厭らしい毒を吐き出した。
『ひぃっ！！！・・はっ、あ、あああぁぁっあっ！！！』
そして、曲を〆る和音を奏でる右手の人差し指と中指が一番淫らな毒穴に浅く突き刺さった瞬間、あおいちゃんは目を見開き喉を仰け反らせて声を上げると、衝動のままに最上まで登りつめた。
あおいちゃんのはぁはぁと乱れる息に混じって、ごぽりと音を立てて毒が溢れると長机に紫色の大きな染みが生まれる。
俺は指でそれを掬うと、焦点の定まらないままのあおいちゃんの目の前まで持ってきて、見せ付けるように指先でねちゃねちゃと弄んでみせた。
『や、らぁ・・せん、せぇっ・・いじわる、しないでっ、・・くださぃ・・・』
瞳にこぼれんばかりの涙を溜めたあおいちゃんは顔を真っ赤に染めていやいやと首を振り、自らの体から溢れさせてしまったそれを否定する。
しかし、かわいいあおいちゃんのこんな痴態を見せ付けられて我慢していられるほど俺も人間ができていない。
『あおいちゃんは俺とのレッスン中にお漏らししちゃうえっちな子だったんだね。先生、意外だなぁ・・・』
ぬるぬるとした指先を目の前で動かすと、「ぬちゃねちゃ」と想像以上に興奮する音が聞こえた。
そのままワザと冷たい言い方であおいちゃんに話しかけると、溜めた涙をほろほろと零しながら弱弱しく手を伸ばしてくる。
『や、やだぁ・・嫌いに、ならないで・・・せん、せぇっ・・・』
『それじゃあ、コレを綺麗にしてくれる？』
素直すぎるほどに俺の言葉を真に受けるあおいちゃんに少しだけ罪悪感を感じたが、それ以上にもっと虐めてあげたくなる。
自分でも知らなかった性癖に驚きつつ、濡れる指先を仰向けのままのあおいちゃんの口元に持っていく。
すると、あおいちゃんは一瞬ためらいの表情を浮かべるが、俺の顔を一瞬だけ見つめると、羞恥に耐えるように目を閉じて指先を口に含んだ。
『あむ・・んっ・・ちゅぅ・・はぁ・・っ・・んぐ・・・っ・・じゅる・・・ぐ・・ぅ・・ぷあ・・・』
小さな口で精一杯指を頬張り、口の中で舌を絡めて自らの涎とともに毒を啜り上げる。
柔らかくて温かいぬるぬるの舌があまりにも気持ちよすぎて、ついつい指先で挟んだり擦ったりひっぱたりしてしまう。
その度にあおいちゃんは苦しそうな顔をするが決して吐き出そうとはせず、むしろ俺の手首をがっちり掴んで離そうとしない。
しばらくそうやって多少満足したのと同時に、もう抑えきれなくなってしまった欲望を静めるべく、半ば無理やりあおいちゃんの口から指を引き抜く。
口からぬるりと抜き出された指先とあおいちゃんの舌とを唾液の糸が結び、ぷつりと切れて服を汚した。
『あ・・・せんせっ・・なんで・・・？』
急に口の中が寂しくなったことに対する不満と、俺の行動の意図が分からない不安とで今にも泣きそうな顔をしているあおいちゃんの体を引き寄せワンピースを胸の上まで捲り上げる。
するとまだまだ小ぶりで微かに膨らみを確認できる程度の幼い胸が、心臓の鼓動に合わせてふるふると小さく揺れていた。
あおいちゃんの唾液でぬるぬると厭らしく光る指で胸の先端を触れると、あおいちゃんは声を上げて悦んだ。
『あおいちゃんはどうしたい？もっとレッスン続けたい？』
指先でころころとねちっこく胸を弄られるあおいちゃんの口からは抜けるような吐息が漏れ、真っ直ぐになると俺の身長よりも長いであろうムカデの体をくねくねと波打たせた。
小さな肢の一本一本が俺の足にぴたぴたと触れ、お伺いを立てるように触れては離れ、そしてまた触れては離れを繰り返す。
しかしやがては巻きつかせるように俺の体を這い回り、自らの毒を余すことなく塗りたくる。
『・・・せんせぇ、もっと、ねぇ・・いっぱい、教えてください・・・』
あおいちゃんは仰向けのまま両手を広げ、俺の股下から背中側へ通したムカデの体で背中を押してレッスンの続きをせがんだ。
先ほどとは真逆に興奮で覚束ない指でガチャガチャとベルトを外した俺は自らの昂ぶる性器をあおいちゃんの毛も生えていない毒穴に宛がうと、ゆっくり狭さを確かめるようにずぶずぶと沈めていく。
ぷちゅぷちゅと小気味いい感触に大きく息を吐いて目の前のあおいちゃんを見ると、胸や肩の毒腺から先ほど以上の毒を垂れ流してびくんびくんと痙攣している最中だった。
しかし、無意識のうちにムカデの肢が俺の体を抱え込むとゆさゆさと前後に揺らして抽挿を急かす。
『な、なんっ・・でぇ・・？だめっ・・、動いたら、だめ・・なのにぃっ、なんで、いうこと・・きいてくれなぃ、の・・？』
まるで自分の意思ではないと言わんばかりに否定するあおいちゃんだったが、その口から出るのは覚えたての性行為にどっぷり嵌った嬌声混じり。
戸惑う少女と淫らな魔物。
相反する二つの心と体に振り回されて涙を流すあおいちゃんはとても背徳的な魅力に満ちていた。
『大丈夫、安心して。あおいちゃんのえっちでかわいい顔も体も声も全部見ててあげるからね』
そんな言葉をかけながらムカデの動きに合わせて腰を打ち付けると、あおいちゃんの毒穴からは紫色の液体が弾け飛び俺の体に匂いを染み付ける。
弾む嬌声と時に切ない吐息。
それに合わせて肌のぶつかる高い音が部屋に響き、低く粘着質なじゅぽじゅぽという音が耳に残る。
あおいちゃんの体を抱きしめた俺の背中をムカデの肢が抱え込み、腰を叩きつけるように俺の体を動かされる。
それはまるで俺の体をあおいちゃんが操って、自分で自分の体を犯しているようだった。
ここは観客のいないコンサートホール。
惹かれ弾かれた奏者と楽器は終わらない演奏会に酔いしれる。
その壁は普通とかなり違っていて、クッション素材のようなもので全面が覆われていた。
それはこの部屋の中で発生する音を外に漏らさないためのもので、ドアもノブを90度回転させることで固く閉まり、僅かな音漏れもしない作りになっている。
そんな外部から隔絶された空間に存在するのは部屋の隅に置かれた二人がけの椅子と長机。
そして、部屋の中央に陣取る一台のグランドピアノだった。
「な、なんでこんなことになったんだ！？！？！？！？」
長机に向かって椅子に腰掛けていた俺は、今のこの状況にパニックを起こしていた。
目の前にあるのは会議室にあるような足がパイプの安物などではなく、いい具合に年月を感じさせるアイアンと古材で作られたアンティーク調の長机。
そして、その長机の上で恥ずかしそうに頬を紅く染めた一人の女の子。
その子の視線は戸惑いから左右に泳ぎ、たまに俺の視線とかち合うと恥ずかしそうに閉じられてしまう。
瞳は涙で潤み、両手を胸の上で重ね、どこか居心地悪そうにモジモジと身体を動かしていた。
『せ、せんせぇ・・・』
パニックになっている頭とは裏腹に、目の前の女の子の事を見つめてしまっていた俺に声がかかった。
俺の身体はその呼びかけにびくりと反応し、今一度冷静になろうと目を閉じてここまでの今日一日を振り返る。
・・・そう、今日は週四で入れてるピアノ講師のアルバイトの日。
都内の音大に通いながら実益や勉強も兼ねて始めたこのアルバイトも二年目に突入し、今日はある事情から特別に訪問レッスンを組んでいる生徒の自宅でレッスンをしていたんだ。
その子は中学校に上がったのをきっかけにピアノを始めたばかりの女の子で、名前はあおいちゃんといった。
大百足という種族の魔物娘であるあおいちゃんは、お腹から下が文字通りムカデの姿をしていた。
しかし、ムカデの体は同年代の子どもには刺激が強すぎるらしく、怖がったり泣いたりする子もいたらしい。
それでピアノ教室でのレッスンではなく、訪問レッスンをお願いされているのだ。
『先生・・私、この部分がうまく弾けないんです。。。何かコツとかないですか？』
さっきまでぎこちないながらも一生懸命にピアノを弾いていたあおいちゃんの指が楽譜のある記号を指差す。
そこは曲が盛り上がる少し前、おたまじゃくしが並ぶ5本の線の上の方にクレッシェンドのマークがあった。
『ここかぁ・・・あおいちゃん、クレッシェンドは分かる？』
楽譜を手に取り「うーん」と考えをまとめながら、俺はあおいちゃんに質問を投げかける。
『だんだん、・・・強く？』
俺の質問に少し考えてから、あおいちゃんは自信なさ気にそう答えた。
『うん、正解。よくできました』
俺の顔色を伺うように見上げるあおいちゃんを安心させるように、笑ってそう答える。
正しく答えられたことが嬉しいのか、あおいちゃんはとても嬉しそうに顔を綻ばせて小さな声で「やった」と呟いた。
『でも、その「だんだん」って言うのが分からなくなっちゃって・・・』
だが、すぐに表情を曇らせると楽譜に目線を向けながら頭を悩ませる記号を指で突いた。
俺もそんなあおいちゃんの言葉に、「ああ、それすごく分かる」と頭の中で力強く頷いて同意する。
小学校でも習うことだが、音楽には「だんだん」や「すこし」など感覚的な表現の記号が非常に多い。
普段はあまり気にならないことも、何かのきっかけで躓いてしまうとその部分が頭にこびり付いて全体の演奏が崩れてしまう。
あおいちゃんは今、まさにその真っ只中なんだろう。
『そうだ！ねぇ、先生・・・』
さて、どう説明したものかと腕を組んで考えをまとめていた俺にあおいちゃんが声をかけてきた。
そして、あおいちゃんの方へ向き直った俺に予想外な言葉が飛んでくる。
『私の手の平を鍵盤だと思って、ピアノを弾くみたいにしてもらえませんか？』
両手の平を俺に向け、目を輝かせているあおいちゃん。
『あおいちゃんの手に？』
『い、いやならいいんです・・・』
しかし、俺の反応があまり良くないことに気付くと、その手を下げ、さらには目線まで下に落としてしまう。
どうやら悪い印象を与えてしまったらしく、頭の触覚も元気なさ気にうな垂れていた。
『ああ、違う違う！嫌なんじゃなくて、ちょっと予想外だったからびっくりしただけ。・・・気にさせちゃってごめんね？』
俺の配慮のなさであおいちゃんを傷つけてしまったのが申し訳なくて、謝罪して真意を伝える。
おそらく、自分の体の事を必要以上に気にしているのだろう。
『本当・・・ですか？』
『もちろん！むしろ、あおいちゃんは平気なの？』
レッスンとは言え、この年頃の女の子は異性に体を触られるのに対して嫌悪感を抱くのではないだろうか。
ピアノを上手くなるためとは言え、嫌なことを我慢しては長くは続かない。
あおいちゃんの気持ちを確認するべく、なるだけプレッシャーを与えないように尋ねた。
『はい、いいですよ？・・・先生なら』
『・・・へ？』
『な、なんでもないです！それじゃ・・・はい』
最後の言葉の意味はよく分からなかったが、あおいちゃんは満面の笑みでもう一度両手の平を俺の正面に持ってくる。
ご機嫌も直って一安心した俺は「任せなさい！」と胸を張っておどけてみせると、あおいちゃんも楽しそうに笑った。
しかし、実際にやってみるとコレが意外に難しい。
そもそもピアノの鍵盤と触った感触が全然違うし、何よりも中学生になったばかりのあおいちゃんの小さな手ではすぐに幅が足りなくなってしまう。
何とか今までの経験で誤魔化しながら、あくまでもクレッシェンドの感覚が伝わるように悪戦苦闘する。
『・・・分かったかな？』
『・・・な、なんとなく？』
しかし、結果はやはり思った通り。
あおいちゃんと顔を見合わせて、お互いに苦笑いを浮かべてしまった。
『やっぱり私の手じゃ小さすぎるのかなぁ・・・』
『う〜ん、そうだねぇ・・・』
二人して向き合って腕を組み、あーでもないこーでもないと考えを巡らせていると、あおいちゃんが「あ！」と何かを思いついたように声を上げる。
『先生！今度は私の手全体を使ってみてください！』
あおいちゃんはそう言うと、ワンピースの袖から伸びる白い腕を俺の目の前に差し出し、内側を上にしてピアノの鍵盤の上に置いた。
確かに、腕全体なら鍵盤と同じように幅も足りる。
子どもならではの豊かな発想に感心しながら、「今度こそ！」と意気込んで演奏してみる。
『・・・今度も失敗ですね』
だが、結果は先ほどと同じ。
唯一改善したのは横幅が足りたと言う事くらい。
やはりと言うべきか鍵盤とあまりにも違う触り心地と、腕の内側を触られるくすぐったさをあおいちゃんが我慢できないという新たな問題も発生した。
これは次のレッスンまでに解決策を考えておこうと決意した俺だったが、突然椅子から立ち上がったあおいちゃんに手を握られる。
続けて、「こっちに来てください」とだけ言われるとそのまま手を引かれ、部屋の隅まで連れて行かれた。
その先にあったのは一度も使ったことのない長机。
これが一体何なのか良く分からない俺を他所に、あおいちゃんは「ちょっとお行儀悪いですけど」と断りを入れて机の上に上がり始めた。
『あ、あおいちゃん！？』
その行動の真意が未だに理解できずにうろたえる俺を気にも留めず、あおいちゃんは長机の上に仰向けに横たわると、長いムカデの体を真っ直ぐに伸ばす。
そして、「ふぅ」と深呼吸をすると、意を決したように俺を見つめてきた。
『せ、先生・・・いやじゃなければ、私の体を使って教えてくれませんか？』
聞こえてきた言葉は俺の耳から入り、脳へ伝わって意味を理解する前に処理能力を超えてしまった。
言った本人は恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俺の顔をじっと見ている。
『え、・・今、なんて・・・え、あおいちゃん？』
あおいちゃんには申し訳ないが、今の言葉の意味が全く理解できない。
まるであおいちゃんの体をピアノに見立てて、俺に触ってくれと言っているようにしか聞こえなかった。
いくら俺に懐いてくれているとは言え、まさかそんなはずはないだろう。
きっと俺の耳と脳が馬鹿になってしまったのだと、そう思った。
『えと・・・私の手じゃ小さすぎるし、腕だとくすぐったいので・・・だから、ムカデの体なら大丈夫かなって・・・』
どうやら、聞き間違いでも俺の耳や脳が馬鹿になってしまったわけでもないらしい。
何と答えたらいいのか、慎重に言葉を選んで考えをまとめていると、その無言に堪えられなくなったあおいちゃんが先に口を開く。
『やっぱり、ムカデの体の女の子なんて、触るのいやですか・・・？』
『い、嫌じゃないよ！？嫌じゃないけど、さすがにそれは色々とマズイ気が・・・』
犯罪的な意味ではなく、あおいちゃんのように素直でかわいい女の子と仲良くなることは決して嫌ではない。
しかし、体を触るとなるとそれは非常にマズイんではなかろうかと脳が警報を鳴らす。
前段の話を知らない人からしたら、「未成年のいたいけな少女の体をまさぐる変態」と捉えられかねない。
何とか穏便に別の方法に誘導するべく、あまり賢いとは言えない脳をフル回転させる。
『いやじゃないならお願いします！・・・先生みたいに、ピアノが上手になりたいんです！』
あおいちゃん、その心意気は非常に頼もしい。
・・・が、方向がズレていることに気が付いていないのだろうか。
ここは密室で、ましてや二人きりで、しかも完全防音の部屋。
・・・俺は今に至るまでの全てを思い出した。
改めて確認するまでもなく、俺の目の前には長机に仰向けになって寝転がる一人の女の子。
薄青色のワンピースの裾を少したくし上げてムカデの腹を晒し、恥ずかしそうに裾を握り締めている。
そんなに恥ずかしいのであれば今すぐにでも止めてはどうかと何度提案しても、「ピアノが上手になりたい」の一点張り。
涙目で懇願され、これ以上その気持ちを無碍にすると違う意味で悪い誤解を与えてしまうかもしれないと考えた俺は腹を括る。
あおいちゃんの意思を最後にもう一度だけ確認し、それが変わらないことを理解した俺は「分かった」と答えた。
ようやく俺が納得したことに安心したあおいちゃんは肩の力を抜き、そして体全体を脱力させる。
確かによく見てみると、あおいちゃんのムカデの体の節の一つ一つが、まるで大きなピアノの鍵盤のように見えた。
そのままそっと指を置くと、本物と全く同じとは言えないが指先に優しく触れる感触と、象牙の鍵盤のようにほんの少ししっとりしている。
「それじゃあ、弾くよ？」と確認の言葉をかけると、あおいちゃんは固く目を閉じたまま頷いた。
本物の鍵盤よりも節の幅も広いし、何より黒鍵にあたる部分がなかったがそれでもあおいちゃんの覚悟を無駄にしないためにも全神経を指先に集中させる。
『・・・んっ・・ひっん・・・ふあ・・・は・・ぁ・・・』
しかし、俺の指が触れるたびにあおいちゃんの口からは何とも悩ましげな吐息が漏れ、その度に演奏している指が止まりそうになってしまう。
もちろん、あおいちゃんにそんな気がないことは重々承知している。
だが、そんな気持ちとは裏腹にひっきりなしに聞こえる吐息や指先から伝わる微かな震え、そして体温が俺の理性や集中力をガリガリと削っていった。
目線をあおいちゃんの顔へ向けると、頬は紅潮して口からは熱い息を漏らし、時折ぴくんと体を反応させる。
不謹慎ながら、子どもとは思えない、色っぽい顔に無意識に喉がなった。
それでも、何とか邪念を振り払い演奏を続ける俺の目の前で更なる事態が発生する。
なんと、あおいちゃんの着ていたワンピースの生地が肌に張り付き、上半身のラインや毒腺の模様が透け始めたのだ。
『あ、あおいちゃん・・・！ふ、服が・・・』
これにはたまらず、あおいちゃんに声をかけるが当の本人は俺の指の動きに集中しているのか、俺の声が耳に届いていないのか気付く素振りがない。
これ以上はさすがにまずいと判断した俺は演奏する手を止めて指をあおいちゃんの体から離す。
『・・あ、だ、だめっ・・です・・！』
しかし、すぐにあおいちゃんの震える手が俺の手に重なり、弱弱しい力で自分の体に引き寄せる。
自分の体の異変を承知の上で、それでもなおピアノを上手くなりたい一心で耐えているのだろう。
なら、俺がすることは決まっている。
『・・・分かった。最後まできちんと演奏するよ、だからしっかり指の動きを憶えるんだ』
あおいちゃんのために、俺の持てる全ての技術を総動員して指運びや演奏の強弱を伝えること。
俺の言葉にあおいちゃんは小さく頷くと、「お願いします」とだけ答えた。
『これがスタッカート。跳ねるように指先で鍵盤を押すんだよ』
『んっ！・・ひぅっ！すた、ぁ・・すたっ・・かぁと・・っ・』
あおいちゃんの幼い未成熟な体の上をスキップするように俺の指が跳ね回る。
普通の演奏とは違い、幾分か力を篭めた動きに柔らかな肌は沈み込み、その度にあおいちゃんは声を上げた。
人肌より少し固いムカデの体の上を指が動くたびに、均等に並んだムカデの肢もビクビクと戦慄き、指を握り込むようにきゅうっと収縮する。
そんな肢がかわいくて悪戯で触れると、より一層高い声を上げてあおいちゃんはいやいやと首を横に振った。
『次はマルカート。一つ一つの音をはっきり演奏するんだ』
『ま、マル・・っ・・まるかぁっ・・あっ！・・はぅっ・・』
指を高く上げ、さっきよりも強く肌を押すとドレミの代わりにあおいちゃんの口から卑猥な声が飛び出した。
両手で演奏していることや音階の移動もあり、指が触れる範囲はムカデの体はおろか、人と同じ部分まで移動する。
『ひあっ！！！・・や、ぁ、そこ、だめ・・っ！！！』
ぷにゅっと沈む柔らかなお腹。
意図せず触れた毒腺に指先がジュプッと沈むとあおいちゃんはより大きな声を上げて体を仰け反らせた。
上半身から垂れる毒はムカデの体まで垂れてしまい、演奏を続ける俺の指に執拗に絡みつく。
目の前の女の子・・・いや、楽器として自らの体を差し出し快感に悶えるあおいちゃんに男としての欲望が膨らみ、当初の目的はすっかり塗り替えられてしまった。
『これはスラーだよ。音と音を途切れさせないように、滑らかにつなげて』
『やっ・・はぁ・・っ・・ふ、ふぁ・・いじっ・・わる・・ぁん・・やだぁ・・っ！』
もうすっかり出来上がってしまったあおいちゃんの耳には俺の言葉は届いていないのか、長机のふちを握り締め転げ落ちてしまわないように体を押さえ込んでいた。
毒でぬるぬるになってしまった指先はあおいちゃんの肌から離れる度に糸を引き、それまでとは違う、ねっとりと肌の感触を確かめるような指使いにあおいちゃんは非難の声を上げる。
しかし、言葉とは裏腹に表情はすっかりトロけきって、口の端からはだらしなく涎まで垂らしているほどだった。
『そして、ここからがクレッシェンド。だんだん強く、曲のリズムを感じながら音を盛り上げる』
『はっ・・はぁぁぁっ・・あ、あ、ああっ・・す、すごいぃ・・っ・・・』
いくつもの小節を乗り越えて最後に待っていたのは、あおいちゃんの頭を悩ませるクレッシェンド。
ねっとりした指使いの中に、だんだんと力を乗せて一つ、また一つと指を運ぶ。
何度も何度も毒腺を突かれ、その度に声を上げるあおいちゃんがかわいくてもっともっとと、今までにないほど演奏に力が篭もる。
それに合わせてあおいちゃんの小さな口からは卑猥な声が溢れ、下の口からもドプドプと厭らしい毒を吐き出した。
『ひぃっ！！！・・はっ、あ、あああぁぁっあっ！！！』
そして、曲を〆る和音を奏でる右手の人差し指と中指が一番淫らな毒穴に浅く突き刺さった瞬間、あおいちゃんは目を見開き喉を仰け反らせて声を上げると、衝動のままに最上まで登りつめた。
あおいちゃんのはぁはぁと乱れる息に混じって、ごぽりと音を立てて毒が溢れると長机に紫色の大きな染みが生まれる。
俺は指でそれを掬うと、焦点の定まらないままのあおいちゃんの目の前まで持ってきて、見せ付けるように指先でねちゃねちゃと弄んでみせた。
『や、らぁ・・せん、せぇっ・・いじわる、しないでっ、・・くださぃ・・・』
瞳にこぼれんばかりの涙を溜めたあおいちゃんは顔を真っ赤に染めていやいやと首を振り、自らの体から溢れさせてしまったそれを否定する。
しかし、かわいいあおいちゃんのこんな痴態を見せ付けられて我慢していられるほど俺も人間ができていない。
『あおいちゃんは俺とのレッスン中にお漏らししちゃうえっちな子だったんだね。先生、意外だなぁ・・・』
ぬるぬるとした指先を目の前で動かすと、「ぬちゃねちゃ」と想像以上に興奮する音が聞こえた。
そのままワザと冷たい言い方であおいちゃんに話しかけると、溜めた涙をほろほろと零しながら弱弱しく手を伸ばしてくる。
『や、やだぁ・・嫌いに、ならないで・・・せん、せぇっ・・・』
『それじゃあ、コレを綺麗にしてくれる？』
素直すぎるほどに俺の言葉を真に受けるあおいちゃんに少しだけ罪悪感を感じたが、それ以上にもっと虐めてあげたくなる。
自分でも知らなかった性癖に驚きつつ、濡れる指先を仰向けのままのあおいちゃんの口元に持っていく。
すると、あおいちゃんは一瞬ためらいの表情を浮かべるが、俺の顔を一瞬だけ見つめると、羞恥に耐えるように目を閉じて指先を口に含んだ。
『あむ・・んっ・・ちゅぅ・・はぁ・・っ・・んぐ・・・っ・・じゅる・・・ぐ・・ぅ・・ぷあ・・・』
小さな口で精一杯指を頬張り、口の中で舌を絡めて自らの涎とともに毒を啜り上げる。
柔らかくて温かいぬるぬるの舌があまりにも気持ちよすぎて、ついつい指先で挟んだり擦ったりひっぱたりしてしまう。
その度にあおいちゃんは苦しそうな顔をするが決して吐き出そうとはせず、むしろ俺の手首をがっちり掴んで離そうとしない。
しばらくそうやって多少満足したのと同時に、もう抑えきれなくなってしまった欲望を静めるべく、半ば無理やりあおいちゃんの口から指を引き抜く。
口からぬるりと抜き出された指先とあおいちゃんの舌とを唾液の糸が結び、ぷつりと切れて服を汚した。
『あ・・・せんせっ・・なんで・・・？』
急に口の中が寂しくなったことに対する不満と、俺の行動の意図が分からない不安とで今にも泣きそうな顔をしているあおいちゃんの体を引き寄せワンピースを胸の上まで捲り上げる。
するとまだまだ小ぶりで微かに膨らみを確認できる程度の幼い胸が、心臓の鼓動に合わせてふるふると小さく揺れていた。
あおいちゃんの唾液でぬるぬると厭らしく光る指で胸の先端を触れると、あおいちゃんは声を上げて悦んだ。
『あおいちゃんはどうしたい？もっとレッスン続けたい？』
指先でころころとねちっこく胸を弄られるあおいちゃんの口からは抜けるような吐息が漏れ、真っ直ぐになると俺の身長よりも長いであろうムカデの体をくねくねと波打たせた。
小さな肢の一本一本が俺の足にぴたぴたと触れ、お伺いを立てるように触れては離れ、そしてまた触れては離れを繰り返す。
しかしやがては巻きつかせるように俺の体を這い回り、自らの毒を余すことなく塗りたくる。
『・・・せんせぇ、もっと、ねぇ・・いっぱい、教えてください・・・』
あおいちゃんは仰向けのまま両手を広げ、俺の股下から背中側へ通したムカデの体で背中を押してレッスンの続きをせがんだ。
先ほどとは真逆に興奮で覚束ない指でガチャガチャとベルトを外した俺は自らの昂ぶる性器をあおいちゃんの毛も生えていない毒穴に宛がうと、ゆっくり狭さを確かめるようにずぶずぶと沈めていく。
ぷちゅぷちゅと小気味いい感触に大きく息を吐いて目の前のあおいちゃんを見ると、胸や肩の毒腺から先ほど以上の毒を垂れ流してびくんびくんと痙攣している最中だった。
しかし、無意識のうちにムカデの肢が俺の体を抱え込むとゆさゆさと前後に揺らして抽挿を急かす。
『な、なんっ・・でぇ・・？だめっ・・、動いたら、だめ・・なのにぃっ、なんで、いうこと・・きいてくれなぃ、の・・？』
まるで自分の意思ではないと言わんばかりに否定するあおいちゃんだったが、その口から出るのは覚えたての性行為にどっぷり嵌った嬌声混じり。
戸惑う少女と淫らな魔物。
相反する二つの心と体に振り回されて涙を流すあおいちゃんはとても背徳的な魅力に満ちていた。
『大丈夫、安心して。あおいちゃんのえっちでかわいい顔も体も声も全部見ててあげるからね』
そんな言葉をかけながらムカデの動きに合わせて腰を打ち付けると、あおいちゃんの毒穴からは紫色の液体が弾け飛び俺の体に匂いを染み付ける。
弾む嬌声と時に切ない吐息。
それに合わせて肌のぶつかる高い音が部屋に響き、低く粘着質なじゅぽじゅぽという音が耳に残る。
あおいちゃんの体を抱きしめた俺の背中をムカデの肢が抱え込み、腰を叩きつけるように俺の体を動かされる。
それはまるで俺の体をあおいちゃんが操って、自分で自分の体を犯しているようだった。
ここは観客のいないコンサートホール。
惹かれ弾かれた奏者と楽器は終わらない演奏会に酔いしれる。
15/03/07 01:31更新 / みな犬