恋心 − それは竜へ変わる力
凱は病院に付き添いで来ていた。
彼の眼に映るのは、息も絶え絶えに苦しむ《少女(瑞姫)》の姿…。
気や魔力の動きから、ドラゴンの力が解放されずに暴発寸前の状態だった。
その力は瑞姫の体内を蝕み続け、臓器の働きを急激に弱めている。
診断の結果、彼女はあらゆる臓器の病にかかっているのと同じ状態だった。
言ってみれば多臓器不全に近い状態である。
瑞姫を診察した医者もあっさり匙を投げる有様。
両親はあらゆる手を尽くして、別の医者を探し始めている。
病室も個室に移され、意識を失い、ただ苦しそうに呼吸を続ける瑞姫の姿はあまりにも痛々しい。
脈拍も僅かながらに弱り始めている状態では、医療知識の欠片も無い凱ではどうにもならない。
そこで凱は学園長に携帯で直接連絡を取り始めた。
『どうした龍堂君。妹の事か?』
「はい。このままでは……。恐らくは多臓器不全で……」
『そうか……。お主に分かる事であれば教えて貰えんか? もしかしたら力になれるやもしれん』
「本当ですか!?」
『賭けじゃ。お主が分かる事を聞いてからじゃからな』
自分に対するエルノールの呼び方が突如変わった事に、この時の気持ちが向く筈も無い。
賭け、の言葉に逸る気持ちを抑え、凱は説明を始める。
「私が見たのは白い……、翼にまで腕を持ったドラゴンが瑞姫を捕らえている事です」
『……っ!! それは本当か!』
「黒い水晶玉が私に見せたものですが……」
『何じゃと?! それとお主、以前リリムに会うたと言っておったな。その者の名前は分かるか?』
「マルガレーテ……と名乗ってました」
この瞬間、空間を飲み込む様な漆黒の魔力が廊下から吹き上がった。
「えっ!?」
『龍堂君? どうしたんじゃ! もしもし!』
漆黒の魔力はやがて形を成し、現れるのは魔王の娘であった。
彼女は念動力のようなもので凱から携帯を奪い取り、電話を替わる。
「もしもし。風星学園の学園長さんね?」
『もしかしてお主が!?』
「わたくしが、ご紹介に預かりましたマルガレーテですわ」
『ならば話は早い。そこにいる男の妹を診て貰えぬか、頼む! わしもすぐそっちに行く!』
そう言いながらすぐに通話を切ったエルノールに対し、少々の沈黙をするマルガレーテ。
だが、彼女は瑞姫を見て、答えを出す。
「よかった……。まだ、間に合いますわ」
「一体どう言う事だ」
電話を切りながら安堵するマルガレーテとは反対に、凱は瑞姫の事が気掛かりでならず、警戒心剥き出しで彼女に問う。
「貴方の妹さんの中にあるドラゴンの魔力が急激に増しています。このままでは身体どころか命がもちませんわ」
「つまり瑞姫は……死ぬしか無いって事か!」
「有体に言えばそうなりますわね。このままではドラゴンの力に耐えられないですわ。ですが、わたくしも初めて見ましたわ。最高位の力を持つ魔物娘の適性を……」
マルガレーテはリリムとしてはまだ若い、と言う事か。
凱がすかさず問う。
「瑞姫を助ける方法は無いのか!?」
「魔物娘に変える以外に方法はありませんわ。さもなくば――」
「ま……も、の……むす、め、に……?」
二人の問答に瑞姫が弱々しく意識を取り戻し、問いかける。
覚悟を決めなければいけない、と意識が遠ざかる程の激痛に耐えつつもマルガレーテの姿をうっすらと黙視し、息も絶え絶えにゆっくりと言葉を紡いでいく。
「もし……わたし……が……まも、の、むすめ、に、なった……ら…、お、にい、さん、は……どう、なる…ん……です……か?」
その様はマルガレーテの心を締め付ける。
愛する義兄への強い想いと自分がどうなってしまうのかという恐怖が瑞姫に重く圧し掛かっていたのを感じたからだ。
「今から言う事を……、良くお聞き下さいませ」
マルガレーテの顔が真剣なものになり、再び言葉を紡ぐ。
「ミズキさん。貴女はドラゴンの適性を持っていますわ。けれど、今の状態では貴女の体が耐えられませんわ」
「……?」
「ですので、わたくしがこれから魔力を送り、ドラゴンの力の暴走を鎮めます。後は貴女が想う殿方への愛にかかっていますわ」
「あ、い……?」
「ええ。でも、わたくしは強制する事が大嫌いですの。決めるのはミズキさん、あなたの意志ですわよ」
リリムの力は強制的に魔物娘へ変える程に強大。
なれど、その者の意志を問うのがマルガレーテの信条だ。
面白半分に人間の女性を魔物にしても、後にあるのは残された者達による、終わりの無い怨嗟と報復。
それを嫌と言う程見せられて育った彼女だからこそ、どんな場所であっても魔物になるか否かの意志を問うてしまうのだ。
一方の瑞姫も、愛しい義兄と共に歩めるならば、と残された力を振り絞って答えを出す。
「なり、ます……。まも、の……むすめ、に……。おにい、さん、と……いっしょ、に……いき、たい」
「その言葉、貴女の意志と認めましょう。その病弱な身を捨て、生まれ変わって下さいませ。日の光にも、病にも、もう怯える必要は無くなりますわ」
「間に合った! わしもやろう!」
そこにエルノールが転移魔法で駆けつけてきた。
マルガレーテとエルノールは両の掌に魔力を集約しつつ、これを合わせて練り上げるとそっと前にかざし、魔力を瑞姫に注ぎ込んでいく。
急にぶつけては瑞姫の身体が魔物娘への変化に耐えられない事を危惧し、注ぐ魔力は少しずつ、ゆっくりとしたものであった。
「う……っ! くうぅ……う……、あ、あぁああ……」
瑞姫の命を食らう程に暴走していたドラゴンの力が、二人の魔物娘の魔力によってようやく鎮静化した。
少なくとも命の危機は回避出来たのだ。
「今のは、あくまでも急激な進行を抑えたに過ぎません。ドラゴンは魔物娘の中でも、わたくし達リリムに匹敵する力を持つ最高位種族の一つ。この子の命を助けるには魔物娘にする以外に方法はありませんでしたわ……。遅くても一時間、あるいは二時間後には魔物化が始まるでしょう」
ほんの少し安堵はしたものの、マルガレーテは考え直す。
リリムである自分に何の反応も示さない男が目の前にいる。
二年前の夏に初めて出会ったあの時と変わっていない。
どんな男も欲情させる、リリムだけが持ち得る魅了の力を受け付けない存在をマルガレーテは改めて認識する。
「では、わたくしはこれにてお暇致しますわ。いずれまた。学園長さん、この娘をよしなに」
マルガレーテはエルノールにそう伝えると、漆黒の魔力を放って消え去ってしまう。
これ以後、マルガレーテの心の中に、この時の出来事が鮮明に焼き付いて離れなくなる。
それは後に彼女が正式に凱の元へやってくる、大きなきっかけとなるのだから――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時刻は既に夜を回り、空は黒く染まっていた。
瑞姫はマルガレーテとエルノールの処置によって、一命は取り留めた。
脈拍も正常に戻り始め、生存を絶望視していた看護師もこれを見て、大慌てで駆け出して行った程だ。
両親もその報せを受けて駆けつける。
だが、凱が目を離した間に起こっていた変化に凱と両親は驚きを隠せなかった。
瑞姫の未成熟な肢体には、それに合わせたかのように角が申し訳程度に生え、手足も鱗らしき何かに覆われ始めていた。
マルガレーテの言葉通り、瑞姫の魔物化が始まったのだ。
凱はそれまでに起こった事を両親に打ち明ける。
学園長であるエルノールもそれに補足する形で説明に加わった。
しかし、その説明があろうとも、娘が魔物娘とならねばならない事に最もショックを受けたのは母親である紗裕美だった。
魔物化以外に助かる道が無かったとは言え、自分の腹を痛めて産んだ子供が人間の身では無くなる事にショックを覚えない母親はそういないだろう。
信隆はすぐに妻を宥めつつ、凱に娘の看病を頼みながら、二人で病室を後にする。
内臓の病で苦しんでいたのが嘘であるかのように、瑞姫は安らかな寝息を立てている。
凱は腕を差し出し、瑞姫の前髪をそっと整える。
すると彼女はその感触に気付いたのか意識を取り戻し、ゆっくり目を開けながら凱を見つめる。
「ん……。あぁ……、お兄、さん……、学……園、長……」
「瑞姫……。良かった……」
「良かった。本当に良かったのう……」
凱が瑞姫の姿に安堵した次の瞬間、蛇のような尻尾が飛び出て来る。
義妹の姿はドラゴンへと急速に変化し始めていたのだ……!
「わたし、夢を見たの……」
瑞姫は語り出す。
「大きな腕のような翼を持った白いドラゴンが、わたしを踏みつけて、雷みたいなのを浴びせてきた……」
驚く凱を尻目に、一拍を置き、話を続ける
「でも……、いきなり暗くなった。するとドラゴンが大人しくなって、私の身体に溶け込むように入っていったの……」
瑞姫は体を動かした事で知る。
自分の手足が鱗と甲殻に覆われ、尻尾も出ているのだ。
諦めとは違う何かが彼女の中に浮かんでくる。
「わたし、本当にドラゴンになるんだね……。でも……後悔、してない。お兄さんと、生きたいから!」
言うが早いか、瑞姫は突然動き出し、凱の唇を奪った。
更に彼女は凱の口内に舌を侵入させ、乱暴に蹂躙していく。
つい先刻まで指一つ動かせなかったのが、嘘であるかのように。
「んちゅ、ちゅぱ、ぴちゅ、ぬちゅ、ふんぐぅ、れちゅ」
「んく、う……!」
凱も突然の事に体が固まり、初めてのキスの気持ちよさに己の意思とは関係なく、体に何かが駆け巡っていた。
「ぷはぁっ……! お兄、さん、す……き。大、好き」
「瑞……姫……」
口を離した瑞姫が放つ言葉もまた突然であったが、瑞姫はお構いなしに押し倒した。
そのか細い身体からは想像もつかない剛力が凱の体に襲いかかったのである。
曲がりなりにも魔物娘に変じ始めた者の力をまともに受けられる者は滅多にいない。
一方で凱には、本当に人間だったのかと言わしめる、ある秘密を持っていたのを瑞姫は知らない。
そんな彼女の眼が獲物を捉えた獣の眼に変わっている。
同時に形相も獣性を孕み、とてもではないが少女のものでは無かった。
「いち早く魔物娘となったお主と、愛しい者との逢瀬を邪魔してはいかんな。わしはこれで帰らせて貰うが、ちょっとだけ仕掛けはさせて貰うでのう」
エルノールは何らかの呪文を唱え、終わると共に二人に暇を告げて去って行った。
彼女が仕掛けたのは防音と人避けの結界である。
その途端、凱は義妹を咄嗟に抱きしめてしまう。
何故そうしたのか、恐らく自身でも分からない。
その行動が逆に瑞姫を刺激してしまい、彼女はますます興奮してしまっていた。
瑞姫の吐息が甘ったるい匂いを放つ。
恋という感情が独占欲、肉欲、色欲…ありとあらゆる欲情によって塗り替えられ、目の前の愛しい男のみしか見えなくなっている。
荒い息遣いと獣のような唸り声を上げる中で、彼女は言葉を紡ぎ出す。
「熱い、の。わたしの、服、脱がして」
「自分で脱げないのか?」
「お兄さんに、脱がして、欲しいの」
息遣いは荒いままだが、懇願するように瞳を潤ませる義妹の姿に、凱はそれ以上抵抗する事が出来なかった。
優しい手つきで病衣を脱がせていくが、それが瑞姫の心を更に揺さぶってしまう。
「いや、焦らさないで……」
自分を気遣う気持ちが痛いほど伝わるのに、自分を力ずくで求めて欲しいと言う欲求の方が、どうしても瑞姫の心の中で勝ってしまう。
好きな人、それも愛しい許嫁の男性に脱がされるのが何にも代え難い悦びになっている事を、瑞姫は嫌でも自覚していたのだから。
病衣を脱がされ、ジュニアブラとショーツだけになった彼女の姿は魔物への変化の途中もあって、腕が鱗で覆われ始めていた。
上気立ち、火照った体から放つ熱い吐息が淫気を強め、ブラの上からでも分かるくらい乳首が硬く勃起している。
しかもよく見れば、彼女の手の指が四本に減っていた。
瑞姫は更に凱に迫り、顔を近づけて告げる。
「……大好き」
「何度も言わなくても……」
「何度も、言わずに、いられない……。どうしようも、ないくらい……」
瑞姫は荒く淫らな息遣いをしながら返答する。
更に彼女は片手で無抵抗な凱の衣服を脱がそうとするも、無意識に爪で全て引き裂き、全裸にさせてしまう。
いつの間にか大きくなっていた凱の剛直を瑞姫は恍惚とした表情で見つめていた。
「大きい……。これが……男の人の、匂い、なのね。ああ、わたし……、頭が、蕩けて、しまいそう……ふあ、んっ……」
「……!」
瑞姫は愛おしい人の大きくなっているソレを口に含む。
「んぅ、ちゅぱ、んちゅはぁ、ちゅぴ、ぢゅぢゅは……ちゅぱぁ……んぁ……ふぅ」
「ぐ、うぅぅぅ……」
生暖かく、唾液でネバつく口内の気持ちよさに歯を食いしばり何かを耐えようとしている凱。
反対に瑞姫は舌で凱のペニスを巧みに舐め、カリや先端の部分を締め付ける。
初めてとは到底思えない舌使いは、魔物と化した事で刷り込まれた本能なのだろうか。
「で、出るっ……!」
青年のペニスがドクンッ!と脈打ち、少女の口内へ精液が撃ち込まれていく。
「んんぅっ!? んぐぅうぅぅぅぅっ! んく、こく、ごくっ……ぷはぁっ! こんなに出て、凄い匂い……。癖に、なっちゃいそう……」
その瞬間、凱の身体の中でガコンッ! と空耳めいた何かが聞こえた。
それと同時に波動のように流れ出したそれは、非常に芳しい精の匂いを発していた。
突如として発せられた精の匂いは、瑞姫をたちまち陶酔させる。
そう、非常に奇跡的な確率での事例なのだが、凱は何と精通していなかったのだ。
精子は男性の身体構造として三日に一回は作り変える為、排泄として精通が行われる。
けれどそれが凱に無かったのは、ひとえに老若男女からの苛烈なイジメによる人間への絶望がもたらした、性欲の無自覚な封印であろう。
インキュバスとなり、加えて瑞姫の魔物化による求愛と行為が、凱の体をようやく生殖可能にさせたという事になる。
瑞姫は凱の精液を少し零しつつも飲み干し、優しくも妖しく艶めかしい笑顔で彼の上から退く。
丁度、女陰のある部分からは愛液が溢れており、下半身を際限なく濡らしていく。
「今度は、わたしを……気持ちよく……して。お兄さんの……で、気持ちよくして、欲しい、の」
「本当に……、本当に俺なんかでいいのか?」
求める瑞姫に対し、未だ躊躇する凱。
が、彼女は凱に向けて両手を伸ばす。
「お兄さんじゃなきゃイヤ! きて……。お願い!」
そう言われた瞬間、凱は襲い掛かるようにして、瑞姫を押し倒した。
まだ身に着けていたブラを剥くと、平坦に近い、ほんの僅かな膨らみに不釣り合いなほどの大きな乳首が勃起している。
凱は未成熟の乳房とはアンバランスな大きさをしている瑞姫の乳首に唇を寄せ、ついばむように何度もキスする。
すると彼女の乳首が更に硬く敏感になっていく。
「ぅうぅあ、はぁ、あっ、あぁっ、ひゃぁぁ、あうぅぅ〜ん…」
羞恥と性的快感に体をよじる仕草が、悩ましさを更に高める。
間髪入れずに勃起した乳頭を舌先で舐め転がされ、喘ぎ声と共に体をのけ反らす。
「あひぃっ! い……意地悪……んあぁっ……しない、で……っ。お願い……、欲しい、……はあぁんっ!」
その言葉に応えるように凱はペニスを女陰に当たる部分にあてがうと、ぬちょり、と先端が入口にあてがわれる。
荒い吐息は暴走を必死に抑えている証。
「貴方のを、入れて…っ! お願い!」
それに応えるようにゆっくりと先端を中へと挿入(い)れ、一拍を置いた瞬間、一気に突き入れる。
「くあぅっ! んぐううううううう!」
肉棒が何かを突き破る感覚と共に瑞姫が呻き声を上げ、更に挿入した隙間から赤い血が垂れてくる。
「は……、はいっ……た……」
「わた、し、……やっと……。うれし、い……」
「う……、動く……ぞ」
「き、て。おね……がい……」
初めてで処女膜を破った事に驚きつつも凱は腰を前に出した。
凱の下半身に滾る、焼けるような情欲。
それは封印を解かれた獣となり、愛しい義妹を犯し始めてしまう。
「うっ、ああぁぁぁぁっ」
彼が動くたびに、瑞姫の体には痛みが走る。
だがそれは程無く性的快感に変わり、彼女は口を開けて淫らに涎を垂らしながら喘ぐ。
「ふ、あふぅ、あぁあぁぁん!」
少女の体温や、ペニスに絡みついてくる愛液のぬめり、肉襞の微細な凹凸を感じながら奥へと進み、かき回す。
「んぅ! あ! あぁぁあぁぁっ!」
若干の苦痛が瑞姫の身体を襲うが、それは始めだけだった。
「なにこれぇぇぇぇぇぇ! いいっ、いいよおぉっ! 気持いひいぃっ!」
腰が動く毎に血混じりの愛液が淫らな水音と共に溢れ出し、瑞姫の喘ぎ声が更に響き渡る。
きつく、それでいて弾力に富んだ、温かい肉穴。
高まりきった凱の陰茎を、みっちりと包み込む襞はどんなものにも比べようがない快感をもたらし続ける。
瑞姫も無意識に尻尾を使い、離さんとばかりに凱の身体に巻きつけていく。
「んおほおおぉぉぉぉっ! ひゅ、ひゅごひぃぃっ! おっきくって、かてゃ、くて、きもひ、よひゅぎぃいぃぃぃっ!」
「クッ……! 締め、つけ、られ、る……、もう…で、射精(で)るっ!」
「らひてぇっ! らひてぇえええっ! わらひの、ひきゅうぅにぃ! いっぱい、びゅーびゅー、あかひゃんのたにぇ、らひてぇえええええ!」
魔物に変じた事で全てが解放されたのか、瑞姫の放つ言葉は最早、生娘の物では無い。
そうする内に凱の肉棒を瑞姫の肉壺がきゅんきゅんと締め付けていくと、剛直が再び脈打ち、彼女の膣内(なか)へ射精していく。
ビュルビュルビュルウウウウウウ!
凄まじい量の白濁液が竜になり立ての少女の子宮を満たす。
気が遠くなりそうな程の解放感と共に、精液が信じられない勢いで尿道を駆け抜け、撃ち出されていた。
初めての性交でしかも長い射精。
脈動も止まらない。
瑞姫もその迸りに同調し、その胎内を蠕動(ぜんどう)しながら白濁液を受け止めている。
淫襞の動きは、彼の精液をねだっていた。
甘美な温もりが互いを包み、萎えずに硬いままの肉棒が引き抜ぬかれようとした瞬間、瑞姫の体に変化が起きる。
「うぐぅっ! あぁあぁぁぁぁぁあああ!」
絶頂したばかりの彼女の体内から噴き出した魔力が、奔流となって瑞姫の身体を覆う。
ドラゴンとしての力と魔力が体のあらゆる所にまとわりつく。
直後に手足が急激に成長してしっかりしたものに変わり、爪は鋭く、角と尻尾も太く、立派なものになる。
腰からは禍々しくも勇壮な翼が飛び出すように出現する。
翼はしっかりした形に形成されながらも更に一回り大きくなり、逞しく形成されていく。
生まれ持った白金の髪は薄紫のグラデーションを微かに帯びる。
瑞姫は完全なドラゴンとして生まれ変わったのだ。
――ある部分を除いて、なのだが。
「はあぁ……、はあぁ……、わた、し……?」
白金の髪は微かに薄紫を帯び、目もルビーのような深紅に染まっている。
瑞姫は凱の肉槍を自分の肉壺から抜いて離れる。
すると彼女の蜜壺からは和合水(精液と愛液の混合液)が溢れてきた。
行為を終えたばかりの体を引きずるように起こすと、四本指となった腕がその目に入る。
信じられない物を見た瑞姫が慌てて自分の手や体を見回し、触れて行くと、手にはしっかりと甲殻が覆われ、同じように膝から下が甲殻に覆われた両脚が彼女に魔物化と言う非情の現実を知らしめていた。
しかも、胸が未成熟な状態のアンバランスな姿となって…。
「っ! うぅ……ぐす……、ぐす……、ぅぁあああああん!」
「瑞姫!」
泣き出すのも無理からぬ事だろう。
ある意味女性にとっては重要な部分が、全く成長しなかったのだから。
もう一つの非情の現実を思い知らされ、瑞姫は大声で泣いた。
「だって! だって! わたしのおっぱいが……おっぱいがぁぁーーー!」
尚も大声を上げて泣く瑞姫の体を、凱は包むように抱きしめる。
「あ……」
「こんなに小さくて可愛いのに……」
「……え?」
驚いて泣き止む瑞姫の耳元で、凱はもう一度囁く。
「俺は、小さくて可愛い胸も含めて、瑞姫が好きなんだ」
「もし……大きくなったら?」
「その時はまた愛していけばいい」
瑞姫は涙を流しながらも笑顔になる。
「嬉しい……。お兄さんは、やっぱりお兄さんなんだね」
「どう言う意味?」
「わたしを、ずっと見ていてくれたから」
更に瑞姫は告げる。
「もう一度……、わたしを……愛して。めちゃくちゃにして!」
「瑞姫……」
崩れ落ちるかのように二人は抱き合う。
動物も同然にただひたすらに、まさしく本能のままに互いを欲し、与え合い、求め合う――。
・・・
・・
・
「しゅごひぃ……。わらひのお腹の、中……とっても…あったかいぃ……。もう、うごけないよぉ……。でも……でも……、しあわせ……」
幾度かの行為を終え、個室は男女の臭いで充満していた。
凱は床に寝そべりながら瑞姫の左横に寄り添い、右腕を腕枕にして瑞姫の頭に敷く。
向かい合う格好となった二人は言葉を出す事無く、互いの瞳を見つめ合う…。
「お兄さん……、いいえ、凱、さん」
「瑞姫……、……お前の事を……」
「わたしの事を……、なぁに?」
「許嫁とかである前に、お嫁さんにしたいって、思ってた。結婚……してくれないか?」
「わたし……、その言葉を、ずっと待ってた」
視線を放す事無く、それこそ瞬きすらしない勢いで二人は互いを見つめ合い、ほんの少し間をおいて瑞姫は答えを紡いだ。
「わたしを……、わたしを貴方のお嫁さんにして!」
「ああ、子供が出来たら……、一緒に育てていこうな」
「うん……、うんっ!」
気がつけば太陽が昇り始めていたが、窓からの日の光が苦痛とならない。
それはドラゴンとして生まれ変わった証であり、魔物娘となった確かな証。
赤い瞳や人形の如き真っ白な肌も最早、彼女の特徴としかならない。
瑞姫は魔物娘と化した事で、本当の自由と生を手にした。
そして凱を真に愛している事を改めて自覚し、共に歩める事を喜ぶ一方、もう一つの一面に気付く。
――彼が欲しい、彼の傍らにいたい、彼の役に立ちたい。
――彼を感じたい、彼と一緒にいたい、彼をわたしのものにしたい。
魔物娘として目覚めたが故の皮肉な現実とも言えるのだろうか…。
*****
だが、二人が行為に夢中になっている間、病室の扉に忍び寄る影があった。
すらりとしながらも豊満な身体に青い肌、爛々と輝く水色の瞳。
それは明らかに魔物娘だった。
「あいつの魔力を感じる。この結界はそれに協力した不届き者が作ったな。察するにバフォメットか、忌々しい……。我ら急進派に、お嬢様に恥をかかせた報いを死ぬまで思い知れ、マルガレーテめ」
忌々しげな顔で吐き捨てながら、彼女は呪文を結界に向けて唱え始める。
少しして、エルノールが仕掛けた防音と人避けの結界は音も無く破られてしまった。
「クフフ。《マルガレーテ(あのバカ)》に僅かでも関わった不運を呪うがいい」
悪戯が成功して喜ぶ悪ガキの如き愉悦の笑みを浮かべ、魔物娘は足取りも軽く病院を後にしたのだった。
結界が破られた事を知る由も無い二人は巡回でやってきた看護師に病院内での性行為を咎められ、怒髪天となった院長から出入り禁止と即刻退去を言い渡されてしまう。
しかも瑞姫がドラゴンと化した事は病院を通じ、周囲に知れ渡ってしまう事となる。
これが程無くして、更なる事態へ発展する引き金になってしまうのだった――
彼の眼に映るのは、息も絶え絶えに苦しむ《少女(瑞姫)》の姿…。
気や魔力の動きから、ドラゴンの力が解放されずに暴発寸前の状態だった。
その力は瑞姫の体内を蝕み続け、臓器の働きを急激に弱めている。
診断の結果、彼女はあらゆる臓器の病にかかっているのと同じ状態だった。
言ってみれば多臓器不全に近い状態である。
瑞姫を診察した医者もあっさり匙を投げる有様。
両親はあらゆる手を尽くして、別の医者を探し始めている。
病室も個室に移され、意識を失い、ただ苦しそうに呼吸を続ける瑞姫の姿はあまりにも痛々しい。
脈拍も僅かながらに弱り始めている状態では、医療知識の欠片も無い凱ではどうにもならない。
そこで凱は学園長に携帯で直接連絡を取り始めた。
『どうした龍堂君。妹の事か?』
「はい。このままでは……。恐らくは多臓器不全で……」
『そうか……。お主に分かる事であれば教えて貰えんか? もしかしたら力になれるやもしれん』
「本当ですか!?」
『賭けじゃ。お主が分かる事を聞いてからじゃからな』
自分に対するエルノールの呼び方が突如変わった事に、この時の気持ちが向く筈も無い。
賭け、の言葉に逸る気持ちを抑え、凱は説明を始める。
「私が見たのは白い……、翼にまで腕を持ったドラゴンが瑞姫を捕らえている事です」
『……っ!! それは本当か!』
「黒い水晶玉が私に見せたものですが……」
『何じゃと?! それとお主、以前リリムに会うたと言っておったな。その者の名前は分かるか?』
「マルガレーテ……と名乗ってました」
この瞬間、空間を飲み込む様な漆黒の魔力が廊下から吹き上がった。
「えっ!?」
『龍堂君? どうしたんじゃ! もしもし!』
漆黒の魔力はやがて形を成し、現れるのは魔王の娘であった。
彼女は念動力のようなもので凱から携帯を奪い取り、電話を替わる。
「もしもし。風星学園の学園長さんね?」
『もしかしてお主が!?』
「わたくしが、ご紹介に預かりましたマルガレーテですわ」
『ならば話は早い。そこにいる男の妹を診て貰えぬか、頼む! わしもすぐそっちに行く!』
そう言いながらすぐに通話を切ったエルノールに対し、少々の沈黙をするマルガレーテ。
だが、彼女は瑞姫を見て、答えを出す。
「よかった……。まだ、間に合いますわ」
「一体どう言う事だ」
電話を切りながら安堵するマルガレーテとは反対に、凱は瑞姫の事が気掛かりでならず、警戒心剥き出しで彼女に問う。
「貴方の妹さんの中にあるドラゴンの魔力が急激に増しています。このままでは身体どころか命がもちませんわ」
「つまり瑞姫は……死ぬしか無いって事か!」
「有体に言えばそうなりますわね。このままではドラゴンの力に耐えられないですわ。ですが、わたくしも初めて見ましたわ。最高位の力を持つ魔物娘の適性を……」
マルガレーテはリリムとしてはまだ若い、と言う事か。
凱がすかさず問う。
「瑞姫を助ける方法は無いのか!?」
「魔物娘に変える以外に方法はありませんわ。さもなくば――」
「ま……も、の……むす、め、に……?」
二人の問答に瑞姫が弱々しく意識を取り戻し、問いかける。
覚悟を決めなければいけない、と意識が遠ざかる程の激痛に耐えつつもマルガレーテの姿をうっすらと黙視し、息も絶え絶えにゆっくりと言葉を紡いでいく。
「もし……わたし……が……まも、の、むすめ、に、なった……ら…、お、にい、さん、は……どう、なる…ん……です……か?」
その様はマルガレーテの心を締め付ける。
愛する義兄への強い想いと自分がどうなってしまうのかという恐怖が瑞姫に重く圧し掛かっていたのを感じたからだ。
「今から言う事を……、良くお聞き下さいませ」
マルガレーテの顔が真剣なものになり、再び言葉を紡ぐ。
「ミズキさん。貴女はドラゴンの適性を持っていますわ。けれど、今の状態では貴女の体が耐えられませんわ」
「……?」
「ですので、わたくしがこれから魔力を送り、ドラゴンの力の暴走を鎮めます。後は貴女が想う殿方への愛にかかっていますわ」
「あ、い……?」
「ええ。でも、わたくしは強制する事が大嫌いですの。決めるのはミズキさん、あなたの意志ですわよ」
リリムの力は強制的に魔物娘へ変える程に強大。
なれど、その者の意志を問うのがマルガレーテの信条だ。
面白半分に人間の女性を魔物にしても、後にあるのは残された者達による、終わりの無い怨嗟と報復。
それを嫌と言う程見せられて育った彼女だからこそ、どんな場所であっても魔物になるか否かの意志を問うてしまうのだ。
一方の瑞姫も、愛しい義兄と共に歩めるならば、と残された力を振り絞って答えを出す。
「なり、ます……。まも、の……むすめ、に……。おにい、さん、と……いっしょ、に……いき、たい」
「その言葉、貴女の意志と認めましょう。その病弱な身を捨て、生まれ変わって下さいませ。日の光にも、病にも、もう怯える必要は無くなりますわ」
「間に合った! わしもやろう!」
そこにエルノールが転移魔法で駆けつけてきた。
マルガレーテとエルノールは両の掌に魔力を集約しつつ、これを合わせて練り上げるとそっと前にかざし、魔力を瑞姫に注ぎ込んでいく。
急にぶつけては瑞姫の身体が魔物娘への変化に耐えられない事を危惧し、注ぐ魔力は少しずつ、ゆっくりとしたものであった。
「う……っ! くうぅ……う……、あ、あぁああ……」
瑞姫の命を食らう程に暴走していたドラゴンの力が、二人の魔物娘の魔力によってようやく鎮静化した。
少なくとも命の危機は回避出来たのだ。
「今のは、あくまでも急激な進行を抑えたに過ぎません。ドラゴンは魔物娘の中でも、わたくし達リリムに匹敵する力を持つ最高位種族の一つ。この子の命を助けるには魔物娘にする以外に方法はありませんでしたわ……。遅くても一時間、あるいは二時間後には魔物化が始まるでしょう」
ほんの少し安堵はしたものの、マルガレーテは考え直す。
リリムである自分に何の反応も示さない男が目の前にいる。
二年前の夏に初めて出会ったあの時と変わっていない。
どんな男も欲情させる、リリムだけが持ち得る魅了の力を受け付けない存在をマルガレーテは改めて認識する。
「では、わたくしはこれにてお暇致しますわ。いずれまた。学園長さん、この娘をよしなに」
マルガレーテはエルノールにそう伝えると、漆黒の魔力を放って消え去ってしまう。
これ以後、マルガレーテの心の中に、この時の出来事が鮮明に焼き付いて離れなくなる。
それは後に彼女が正式に凱の元へやってくる、大きなきっかけとなるのだから――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時刻は既に夜を回り、空は黒く染まっていた。
瑞姫はマルガレーテとエルノールの処置によって、一命は取り留めた。
脈拍も正常に戻り始め、生存を絶望視していた看護師もこれを見て、大慌てで駆け出して行った程だ。
両親もその報せを受けて駆けつける。
だが、凱が目を離した間に起こっていた変化に凱と両親は驚きを隠せなかった。
瑞姫の未成熟な肢体には、それに合わせたかのように角が申し訳程度に生え、手足も鱗らしき何かに覆われ始めていた。
マルガレーテの言葉通り、瑞姫の魔物化が始まったのだ。
凱はそれまでに起こった事を両親に打ち明ける。
学園長であるエルノールもそれに補足する形で説明に加わった。
しかし、その説明があろうとも、娘が魔物娘とならねばならない事に最もショックを受けたのは母親である紗裕美だった。
魔物化以外に助かる道が無かったとは言え、自分の腹を痛めて産んだ子供が人間の身では無くなる事にショックを覚えない母親はそういないだろう。
信隆はすぐに妻を宥めつつ、凱に娘の看病を頼みながら、二人で病室を後にする。
内臓の病で苦しんでいたのが嘘であるかのように、瑞姫は安らかな寝息を立てている。
凱は腕を差し出し、瑞姫の前髪をそっと整える。
すると彼女はその感触に気付いたのか意識を取り戻し、ゆっくり目を開けながら凱を見つめる。
「ん……。あぁ……、お兄、さん……、学……園、長……」
「瑞姫……。良かった……」
「良かった。本当に良かったのう……」
凱が瑞姫の姿に安堵した次の瞬間、蛇のような尻尾が飛び出て来る。
義妹の姿はドラゴンへと急速に変化し始めていたのだ……!
「わたし、夢を見たの……」
瑞姫は語り出す。
「大きな腕のような翼を持った白いドラゴンが、わたしを踏みつけて、雷みたいなのを浴びせてきた……」
驚く凱を尻目に、一拍を置き、話を続ける
「でも……、いきなり暗くなった。するとドラゴンが大人しくなって、私の身体に溶け込むように入っていったの……」
瑞姫は体を動かした事で知る。
自分の手足が鱗と甲殻に覆われ、尻尾も出ているのだ。
諦めとは違う何かが彼女の中に浮かんでくる。
「わたし、本当にドラゴンになるんだね……。でも……後悔、してない。お兄さんと、生きたいから!」
言うが早いか、瑞姫は突然動き出し、凱の唇を奪った。
更に彼女は凱の口内に舌を侵入させ、乱暴に蹂躙していく。
つい先刻まで指一つ動かせなかったのが、嘘であるかのように。
「んちゅ、ちゅぱ、ぴちゅ、ぬちゅ、ふんぐぅ、れちゅ」
「んく、う……!」
凱も突然の事に体が固まり、初めてのキスの気持ちよさに己の意思とは関係なく、体に何かが駆け巡っていた。
「ぷはぁっ……! お兄、さん、す……き。大、好き」
「瑞……姫……」
口を離した瑞姫が放つ言葉もまた突然であったが、瑞姫はお構いなしに押し倒した。
そのか細い身体からは想像もつかない剛力が凱の体に襲いかかったのである。
曲がりなりにも魔物娘に変じ始めた者の力をまともに受けられる者は滅多にいない。
一方で凱には、本当に人間だったのかと言わしめる、ある秘密を持っていたのを瑞姫は知らない。
そんな彼女の眼が獲物を捉えた獣の眼に変わっている。
同時に形相も獣性を孕み、とてもではないが少女のものでは無かった。
「いち早く魔物娘となったお主と、愛しい者との逢瀬を邪魔してはいかんな。わしはこれで帰らせて貰うが、ちょっとだけ仕掛けはさせて貰うでのう」
エルノールは何らかの呪文を唱え、終わると共に二人に暇を告げて去って行った。
彼女が仕掛けたのは防音と人避けの結界である。
その途端、凱は義妹を咄嗟に抱きしめてしまう。
何故そうしたのか、恐らく自身でも分からない。
その行動が逆に瑞姫を刺激してしまい、彼女はますます興奮してしまっていた。
瑞姫の吐息が甘ったるい匂いを放つ。
恋という感情が独占欲、肉欲、色欲…ありとあらゆる欲情によって塗り替えられ、目の前の愛しい男のみしか見えなくなっている。
荒い息遣いと獣のような唸り声を上げる中で、彼女は言葉を紡ぎ出す。
「熱い、の。わたしの、服、脱がして」
「自分で脱げないのか?」
「お兄さんに、脱がして、欲しいの」
息遣いは荒いままだが、懇願するように瞳を潤ませる義妹の姿に、凱はそれ以上抵抗する事が出来なかった。
優しい手つきで病衣を脱がせていくが、それが瑞姫の心を更に揺さぶってしまう。
「いや、焦らさないで……」
自分を気遣う気持ちが痛いほど伝わるのに、自分を力ずくで求めて欲しいと言う欲求の方が、どうしても瑞姫の心の中で勝ってしまう。
好きな人、それも愛しい許嫁の男性に脱がされるのが何にも代え難い悦びになっている事を、瑞姫は嫌でも自覚していたのだから。
病衣を脱がされ、ジュニアブラとショーツだけになった彼女の姿は魔物への変化の途中もあって、腕が鱗で覆われ始めていた。
上気立ち、火照った体から放つ熱い吐息が淫気を強め、ブラの上からでも分かるくらい乳首が硬く勃起している。
しかもよく見れば、彼女の手の指が四本に減っていた。
瑞姫は更に凱に迫り、顔を近づけて告げる。
「……大好き」
「何度も言わなくても……」
「何度も、言わずに、いられない……。どうしようも、ないくらい……」
瑞姫は荒く淫らな息遣いをしながら返答する。
更に彼女は片手で無抵抗な凱の衣服を脱がそうとするも、無意識に爪で全て引き裂き、全裸にさせてしまう。
いつの間にか大きくなっていた凱の剛直を瑞姫は恍惚とした表情で見つめていた。
「大きい……。これが……男の人の、匂い、なのね。ああ、わたし……、頭が、蕩けて、しまいそう……ふあ、んっ……」
「……!」
瑞姫は愛おしい人の大きくなっているソレを口に含む。
「んぅ、ちゅぱ、んちゅはぁ、ちゅぴ、ぢゅぢゅは……ちゅぱぁ……んぁ……ふぅ」
「ぐ、うぅぅぅ……」
生暖かく、唾液でネバつく口内の気持ちよさに歯を食いしばり何かを耐えようとしている凱。
反対に瑞姫は舌で凱のペニスを巧みに舐め、カリや先端の部分を締め付ける。
初めてとは到底思えない舌使いは、魔物と化した事で刷り込まれた本能なのだろうか。
「で、出るっ……!」
青年のペニスがドクンッ!と脈打ち、少女の口内へ精液が撃ち込まれていく。
「んんぅっ!? んぐぅうぅぅぅぅっ! んく、こく、ごくっ……ぷはぁっ! こんなに出て、凄い匂い……。癖に、なっちゃいそう……」
その瞬間、凱の身体の中でガコンッ! と空耳めいた何かが聞こえた。
それと同時に波動のように流れ出したそれは、非常に芳しい精の匂いを発していた。
突如として発せられた精の匂いは、瑞姫をたちまち陶酔させる。
そう、非常に奇跡的な確率での事例なのだが、凱は何と精通していなかったのだ。
精子は男性の身体構造として三日に一回は作り変える為、排泄として精通が行われる。
けれどそれが凱に無かったのは、ひとえに老若男女からの苛烈なイジメによる人間への絶望がもたらした、性欲の無自覚な封印であろう。
インキュバスとなり、加えて瑞姫の魔物化による求愛と行為が、凱の体をようやく生殖可能にさせたという事になる。
瑞姫は凱の精液を少し零しつつも飲み干し、優しくも妖しく艶めかしい笑顔で彼の上から退く。
丁度、女陰のある部分からは愛液が溢れており、下半身を際限なく濡らしていく。
「今度は、わたしを……気持ちよく……して。お兄さんの……で、気持ちよくして、欲しい、の」
「本当に……、本当に俺なんかでいいのか?」
求める瑞姫に対し、未だ躊躇する凱。
が、彼女は凱に向けて両手を伸ばす。
「お兄さんじゃなきゃイヤ! きて……。お願い!」
そう言われた瞬間、凱は襲い掛かるようにして、瑞姫を押し倒した。
まだ身に着けていたブラを剥くと、平坦に近い、ほんの僅かな膨らみに不釣り合いなほどの大きな乳首が勃起している。
凱は未成熟の乳房とはアンバランスな大きさをしている瑞姫の乳首に唇を寄せ、ついばむように何度もキスする。
すると彼女の乳首が更に硬く敏感になっていく。
「ぅうぅあ、はぁ、あっ、あぁっ、ひゃぁぁ、あうぅぅ〜ん…」
羞恥と性的快感に体をよじる仕草が、悩ましさを更に高める。
間髪入れずに勃起した乳頭を舌先で舐め転がされ、喘ぎ声と共に体をのけ反らす。
「あひぃっ! い……意地悪……んあぁっ……しない、で……っ。お願い……、欲しい、……はあぁんっ!」
その言葉に応えるように凱はペニスを女陰に当たる部分にあてがうと、ぬちょり、と先端が入口にあてがわれる。
荒い吐息は暴走を必死に抑えている証。
「貴方のを、入れて…っ! お願い!」
それに応えるようにゆっくりと先端を中へと挿入(い)れ、一拍を置いた瞬間、一気に突き入れる。
「くあぅっ! んぐううううううう!」
肉棒が何かを突き破る感覚と共に瑞姫が呻き声を上げ、更に挿入した隙間から赤い血が垂れてくる。
「は……、はいっ……た……」
「わた、し、……やっと……。うれし、い……」
「う……、動く……ぞ」
「き、て。おね……がい……」
初めてで処女膜を破った事に驚きつつも凱は腰を前に出した。
凱の下半身に滾る、焼けるような情欲。
それは封印を解かれた獣となり、愛しい義妹を犯し始めてしまう。
「うっ、ああぁぁぁぁっ」
彼が動くたびに、瑞姫の体には痛みが走る。
だがそれは程無く性的快感に変わり、彼女は口を開けて淫らに涎を垂らしながら喘ぐ。
「ふ、あふぅ、あぁあぁぁん!」
少女の体温や、ペニスに絡みついてくる愛液のぬめり、肉襞の微細な凹凸を感じながら奥へと進み、かき回す。
「んぅ! あ! あぁぁあぁぁっ!」
若干の苦痛が瑞姫の身体を襲うが、それは始めだけだった。
「なにこれぇぇぇぇぇぇ! いいっ、いいよおぉっ! 気持いひいぃっ!」
腰が動く毎に血混じりの愛液が淫らな水音と共に溢れ出し、瑞姫の喘ぎ声が更に響き渡る。
きつく、それでいて弾力に富んだ、温かい肉穴。
高まりきった凱の陰茎を、みっちりと包み込む襞はどんなものにも比べようがない快感をもたらし続ける。
瑞姫も無意識に尻尾を使い、離さんとばかりに凱の身体に巻きつけていく。
「んおほおおぉぉぉぉっ! ひゅ、ひゅごひぃぃっ! おっきくって、かてゃ、くて、きもひ、よひゅぎぃいぃぃぃっ!」
「クッ……! 締め、つけ、られ、る……、もう…で、射精(で)るっ!」
「らひてぇっ! らひてぇえええっ! わらひの、ひきゅうぅにぃ! いっぱい、びゅーびゅー、あかひゃんのたにぇ、らひてぇえええええ!」
魔物に変じた事で全てが解放されたのか、瑞姫の放つ言葉は最早、生娘の物では無い。
そうする内に凱の肉棒を瑞姫の肉壺がきゅんきゅんと締め付けていくと、剛直が再び脈打ち、彼女の膣内(なか)へ射精していく。
ビュルビュルビュルウウウウウウ!
凄まじい量の白濁液が竜になり立ての少女の子宮を満たす。
気が遠くなりそうな程の解放感と共に、精液が信じられない勢いで尿道を駆け抜け、撃ち出されていた。
初めての性交でしかも長い射精。
脈動も止まらない。
瑞姫もその迸りに同調し、その胎内を蠕動(ぜんどう)しながら白濁液を受け止めている。
淫襞の動きは、彼の精液をねだっていた。
甘美な温もりが互いを包み、萎えずに硬いままの肉棒が引き抜ぬかれようとした瞬間、瑞姫の体に変化が起きる。
「うぐぅっ! あぁあぁぁぁぁぁあああ!」
絶頂したばかりの彼女の体内から噴き出した魔力が、奔流となって瑞姫の身体を覆う。
ドラゴンとしての力と魔力が体のあらゆる所にまとわりつく。
直後に手足が急激に成長してしっかりしたものに変わり、爪は鋭く、角と尻尾も太く、立派なものになる。
腰からは禍々しくも勇壮な翼が飛び出すように出現する。
翼はしっかりした形に形成されながらも更に一回り大きくなり、逞しく形成されていく。
生まれ持った白金の髪は薄紫のグラデーションを微かに帯びる。
瑞姫は完全なドラゴンとして生まれ変わったのだ。
――ある部分を除いて、なのだが。
「はあぁ……、はあぁ……、わた、し……?」
白金の髪は微かに薄紫を帯び、目もルビーのような深紅に染まっている。
瑞姫は凱の肉槍を自分の肉壺から抜いて離れる。
すると彼女の蜜壺からは和合水(精液と愛液の混合液)が溢れてきた。
行為を終えたばかりの体を引きずるように起こすと、四本指となった腕がその目に入る。
信じられない物を見た瑞姫が慌てて自分の手や体を見回し、触れて行くと、手にはしっかりと甲殻が覆われ、同じように膝から下が甲殻に覆われた両脚が彼女に魔物化と言う非情の現実を知らしめていた。
しかも、胸が未成熟な状態のアンバランスな姿となって…。
「っ! うぅ……ぐす……、ぐす……、ぅぁあああああん!」
「瑞姫!」
泣き出すのも無理からぬ事だろう。
ある意味女性にとっては重要な部分が、全く成長しなかったのだから。
もう一つの非情の現実を思い知らされ、瑞姫は大声で泣いた。
「だって! だって! わたしのおっぱいが……おっぱいがぁぁーーー!」
尚も大声を上げて泣く瑞姫の体を、凱は包むように抱きしめる。
「あ……」
「こんなに小さくて可愛いのに……」
「……え?」
驚いて泣き止む瑞姫の耳元で、凱はもう一度囁く。
「俺は、小さくて可愛い胸も含めて、瑞姫が好きなんだ」
「もし……大きくなったら?」
「その時はまた愛していけばいい」
瑞姫は涙を流しながらも笑顔になる。
「嬉しい……。お兄さんは、やっぱりお兄さんなんだね」
「どう言う意味?」
「わたしを、ずっと見ていてくれたから」
更に瑞姫は告げる。
「もう一度……、わたしを……愛して。めちゃくちゃにして!」
「瑞姫……」
崩れ落ちるかのように二人は抱き合う。
動物も同然にただひたすらに、まさしく本能のままに互いを欲し、与え合い、求め合う――。
・・・
・・
・
「しゅごひぃ……。わらひのお腹の、中……とっても…あったかいぃ……。もう、うごけないよぉ……。でも……でも……、しあわせ……」
幾度かの行為を終え、個室は男女の臭いで充満していた。
凱は床に寝そべりながら瑞姫の左横に寄り添い、右腕を腕枕にして瑞姫の頭に敷く。
向かい合う格好となった二人は言葉を出す事無く、互いの瞳を見つめ合う…。
「お兄さん……、いいえ、凱、さん」
「瑞姫……、……お前の事を……」
「わたしの事を……、なぁに?」
「許嫁とかである前に、お嫁さんにしたいって、思ってた。結婚……してくれないか?」
「わたし……、その言葉を、ずっと待ってた」
視線を放す事無く、それこそ瞬きすらしない勢いで二人は互いを見つめ合い、ほんの少し間をおいて瑞姫は答えを紡いだ。
「わたしを……、わたしを貴方のお嫁さんにして!」
「ああ、子供が出来たら……、一緒に育てていこうな」
「うん……、うんっ!」
気がつけば太陽が昇り始めていたが、窓からの日の光が苦痛とならない。
それはドラゴンとして生まれ変わった証であり、魔物娘となった確かな証。
赤い瞳や人形の如き真っ白な肌も最早、彼女の特徴としかならない。
瑞姫は魔物娘と化した事で、本当の自由と生を手にした。
そして凱を真に愛している事を改めて自覚し、共に歩める事を喜ぶ一方、もう一つの一面に気付く。
――彼が欲しい、彼の傍らにいたい、彼の役に立ちたい。
――彼を感じたい、彼と一緒にいたい、彼をわたしのものにしたい。
魔物娘として目覚めたが故の皮肉な現実とも言えるのだろうか…。
*****
だが、二人が行為に夢中になっている間、病室の扉に忍び寄る影があった。
すらりとしながらも豊満な身体に青い肌、爛々と輝く水色の瞳。
それは明らかに魔物娘だった。
「あいつの魔力を感じる。この結界はそれに協力した不届き者が作ったな。察するにバフォメットか、忌々しい……。我ら急進派に、お嬢様に恥をかかせた報いを死ぬまで思い知れ、マルガレーテめ」
忌々しげな顔で吐き捨てながら、彼女は呪文を結界に向けて唱え始める。
少しして、エルノールが仕掛けた防音と人避けの結界は音も無く破られてしまった。
「クフフ。《マルガレーテ(あのバカ)》に僅かでも関わった不運を呪うがいい」
悪戯が成功して喜ぶ悪ガキの如き愉悦の笑みを浮かべ、魔物娘は足取りも軽く病院を後にしたのだった。
結界が破られた事を知る由も無い二人は巡回でやってきた看護師に病院内での性行為を咎められ、怒髪天となった院長から出入り禁止と即刻退去を言い渡されてしまう。
しかも瑞姫がドラゴンと化した事は病院を通じ、周囲に知れ渡ってしまう事となる。
これが程無くして、更なる事態へ発展する引き金になってしまうのだった――
19/08/08 23:45更新 / rakshasa
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