第三話 糸口を求めて
んちゅぷ……はむ……ふー、ふー、れろれろ、にゅるぅう
なんだか妙な音が聞こえる、よくわからないけど健全ではない音だ。
ぬちゅ……ちゅるる、れろれろ、ぎゅう
音の発生源は下の方、瞼が重い、なんだか股間が温かい、というか湿ってる?
まさかと思い気合を入れて目を見開いて俺の下半身を見ると、俺の予想とは違ったがある意味それ以上にとんでもない事態が発生していた。
明らかに朝立ちのレベルじゃないほど大きくそそり立った俺の肉棒に、プラムが胸とお口で奉仕している。俗にいうパイズリフェラってやつだ。
昨晩は夕食を頂いてから近くの川で数人のクルツ住民の方々と一緒に体を洗ってから、プラムのテントに間借りして眠りについたわけだが恐らく先に目が覚めたプラムが俺を起こすためと誘惑するためにこんなことをしているんだろう。
「なっ!? おまぅっ!? 何をしてんだよ!」
パニックになりながらも、熱に浮かされたような表情で俺の肉棒を舐めあげ、胸を押し付けて堪らない乳圧をかけてくるプラムに怒鳴りつける。
「えー? 朝のご奉仕、ほら、こんなに大きくできたんだよ? ぺろ……」
ぐにゅぐにゅ、ぎゅむっぎゅぎゅぎゅっ
何食わぬ顔で俺の怒声を受け流し、カリ裏を舐めあげながら胸を上下に擦る。
「はをぅっ! だからなんで、朝の奉仕をっ!?」
「お嫁さんなら当然じゃないのー? クリムとシェンリもやってるって言ってたよー。」
クリムとシェンリって誰だよとか思いながらも、胸を強く押し付けられたり舌で軽く舐められるだけでも腰が浮きそうに気持ちいい、しかしやっぱり必死にこらえる。
相手は幼女だいくら相手からこんなことをしてきたとしても倫理的にまずい。
「えへー♥ 気持ちいい?」
「よく……ないっ」
搾りだすように嘘をついたが、嘘だと見破られているだろう。
「ふーん、じゃあもっと、激しくしてあげる♪」
はぷっ ちゅろろろろ、ぎゅむぎゅむむにぃっ
プラムは今まで舐めるだけだった胸の間からはみ出した俺の肉棒の先端を咥えると、唇をもごもごと動かして刺激しながら舌先で鈴口をちろちろと攻めてくる。
勿論胸の動きも容赦なく俺を昂ぶらせにかかっている、強く乳圧をかけながら両側から擦りつけたかと思うと一瞬力を抜き代りに口が喉奥まで一気に飲み込んでから舌で弱いところを狙いつつ引き抜いていく。
「うくぁっ ああっ!」
ついにこらえきれず俺が腰を浮かしてしまうと、プラムはそれに気を良くしたらしく。
「ぢゅるるるるるるるるぅっ!!」
止めと言わんばかりに、一気に吸い上げて強烈な快感を与えてきた、それに耐えきれず俺はとうとうプラムの口の中に大量の精液をぶちまけてしまう。
「んっ♥ ぺろぺろ……ごくん。あはぁ、美味しいよぉ♥」
蕩けた表情で扇情的に精液を飲み込むプラムに、更に余計に興奮してしまう。
「ねぇ、ほらー。ロットもまだ、できるよね? 今度はこっちに、お願い。」
そう言って俺の目の前で横になりながら下半身に唯一身に着けていた若草色の下着をずらし、湿ってひくひくと俺の逸物を求める陰唇を見せつけてくる。
「きて……? ロットのおちんちんで、私の初めて、貰って?」
その言葉にゾクゾクと冷ややかに、しかし蕩けるように甘い背徳感が胸に満ちてくる。
荒い息を吐きながら、俺は彼女の期待に応えるべく覆いかぶさるような姿勢で照準をつけながら陰唇に肉棒を近づけていく。
どこかで誰かが止めろと言っている。どこかで俺が道に迷っている。
俺の目の前で、愛しい少女が期待と情欲に満ちた目で俺を見つめている。
「ロット、プラム、起きてるかな? お客さんが来てるよ。」
テントの入り口から、ハロルド氏の声がした。
ハッっと我に返った俺は、しかし何もしないでいるには収まりがつかずプラムにキスをすると脱がされていた寝巻を着なおしてハロルド氏にテントの仕切り布越しに
「お客さん? どんな人です?」
と聞き返した。
「四十代半ばくらいの女の人、広場に待たせてあるから早く来てね。」
と答えていなくなった、俺たちが中で何をしそうだったのか察知したのかもしれない。
そして振り向くとプラムが不満そうな顔で座っていた、途中で邪魔が入ったのも俺が結局シなかったのも不満なんだろう、あのまま行けば俺は一時の情欲に身を任せて倫理を踏み外していたわけだ。
「悪かったから、お前が大人になるまで何年でも待つから、だから今は許してくれ。」
「………………わかった。」
凄く不満そうな声でそう答えたプラムもしっかり服を着ると、俺たちは一緒にテントを出た。もしかしたら「お客さん」がプラムの母親に関して何か情報を持っているかもしれないと思ったから、プラムも大人しく引き下がったんだろう。
一緒に広場まで行くと、既に起きて食事をとっていたみんなが一斉に俺たちを見た。
「随分、仲睦まじくなったんだね。」
ハロルド氏が何か意味ありげな笑顔で俺たちに言う、何のことか少し考えて理由を見て理解した。俺たちは全く意識することなく自然と、テントからここまで短い距離でも手をつないで歩いてきていた。
「えへへ……」「いや……あの……はい。」
照れたように笑うプラムに言い訳する気もなくなり肯定する、今朝の一件で理解したが俺はプラムに惚れてしまってるらしい、断じて俺はロリコンじゃないぞ。
「来たようですね、ゴブリンの少女を連れた青年、君のことですよね?」
テーブルに座っていた中年女性が俺に向かってそう言ってきた、どこの町にもいそうな割かし普通のおばさんに見えるが、妙に眼光が鋭い。
「………私も正確な場所は知りませんが、レクターンの北西部に形成されたスラムの奥深くで魔物を見たという話を聞きます。魔物狩りを逃れた魔物ならそこにいる可能性が高いでしょう。」
「なぜ、そんな話を俺たちにしてくれるんです?」
むしろ罠の可能性を疑わずにはいられない、罠を仕掛ける気ならこんなところまでわざわざ出てこないとも思えるが、疑わずにはいられないのが人情だ。
「どーでもいーじゃん、ほら行こうよロットー」
食事もまだだというのに、プラムは俺の腕をつかむと少し強引に引っ張りだした。
「そうなると思ったから、はいお弁当。」
そう言って近くのクルツ人女性が俺たちにバスケットを渡してくれた、中に入っているのはサンドイッチだろうか、用意が良いもんだ。
プラムに引っ張られながらレクターンの町に入る、やはり町はそこそこに活気があり、俺たちはしっかり手をつないで人混みの中を進むことにした。
『北西スラムの奥に魔物の姿を見た。と、言う話を聞いたことがある。』
怪しすぎる情報でも、今は信じて進んでみるしかない、それほどまでに俺たちは情報に困っていた昨日一日だけでも驚くほど、この都市の人々が魔物に無関心であることが理解できたからだ。むしろ知ろうともしない、自分たちの生活に関わらないならどうでもいい。
「ハロルド氏や、他の皆は何をしてるんだ?」
苛立ちを打ち消すために、プラムに訊ねる。そのころにはもう俺たちは大通りを抜けて、人もまばらになってきたスラムと一般市街の境界線に踏み込んでいた。
「キサラギがくるまでは、レクターン周りの村を復興するために物資を運んで廻ってるってー。キサラギが来たら、本格的な反乱分子の掃討に当たるんだってさー。」
「クルツ部隊に警察能力はないのか? その方が効率よさそうだけど。」
「念のため、だってさ。外国勢力に国内の強権を持たせると関係悪化の原因になるとも言ってたよー。」
プラムはやはり呑気に答える。言われてみればその通りだ、一応同盟とはいえローディアナとクルツは他国ということになる。それなのにクルツの部隊に大きな権力を持たせたらその部隊が暴走した際に困るだろう。
そんなことを考えながらも、俺たちはスラムの奥に向かって歩を進めていく。
「………人がまるっきりいないな、これはこれで怪しいぞ。」
「そうかなー?」
そんなのんきな会話をしつつ少し俺が奥まで進むと、
「おい、お前そこの魔物のガキおいてけ。」
さびかけた鎧を着こんだ男が一人いきなり俺に向かって命令してきた。
鎧に旧王国軍のエンブレムがある、恐らくはこの男は旧王国軍の元仕官、それもおそらく将校クラスの男だろう、ほとんどが捕まったと聞いていたがまさか無事なやつがいると思わなかった。
「お断りだ。」
当然俺は拒んだ、すると男は持っていた銃を空に放った、赤色の光が迸る。
「信号弾かよ、一人で女の子一人浚えないのか。」
「ふん、念には念を入れて、だ。逃げられると思うなよ? ルドヴィッヒと名乗る野郎の情報提供のおかげで待ち伏せもしやすかったし、ここの知事は俺たちからたんまり袖の下を貰ってる。」
随分と自慢げに語る男の周囲に大量のならず者が集まってくる、軽く二十人は下らない数だ。直接しかもプラムを庇って戦うのは、無理。
それに、ハロルド氏に伝えるべきこともわかった。
「プラム、逃げるぞ。」
「うんっ!」
俺がそう言うと同時に、プラムは持っていた棍棒を男たちに向けて投げつけた。
その隙に回れ右してスラムの細い路地に駆け込む、正面から向かってきた男を剣で切り倒し、倒れた男の上を飛び越えてさらにその先に進む、後ろから男たちが追ってきているのがわかる、あてもなく進んではそのうちに袋小路だ。
「どこか、隠れる場所なりないもんかな!」
ひたすら走って前に出てきた相手だけを一瞬で倒す戦術を用いて逃げていく、プラムは殆ど俺に引きずられているようなものだが、無理に一緒に走ろうとしない分帰って都合がいい。
「ロット! あの家!」
プラムが珍しく大きな声を出して指差したのは石造りの小さな家、どうやら無人らしくドアが僅かに開いていて、中に入れそうではある。
プラムが俺を引っ張り中に入るとすぐにドアのカギを閉める、入るところは見られていないはずだがまだ窓がある以上そこから発見されて侵入される可能性も普通にある。
古い家だ、住人はもう長いこと不在らしく、埃かぶった家具ばかりが散乱している。
「こっち、ここに……やっぱり。」
プラムが床を開いた、どうやら地下に格納庫か何かがあるらしい。
プラムに続いて地下室に入り、地下室の入り口を閉める。
真っ暗で良く見えないが、少なくともここに隠れていれば見つかる可能性は低いだろう。
「……なんで知ってたんだ? こんな構造の家だって。」
暗い中を彼女を抱きしめて息をひそめながら、俺は訊ねてみた。
そこで帰ってくるだろう答えも予想がついていたが、それがある事実を認めることになるとわかっていたからそうではないと言ってほしかった。
「わかるよ……ここ、私のおうちだもん……」
震える声で、プラムが答えた。
明らかに無人のこの家が、彼女の実家。
つまり、彼女の母親はもう、この町にはいないということだ。
『クソ、どこに消えた……』『周囲の家も探ってみろ! 逃がすんじゃないぞ!』
俺たちの頭上から声が聞こえた、どうやらあいつら、扉を破って家の中まで侵入してきたらしい。家具は荒れ放題で埃もひどかったが床の埃は妙に少なかったから気づかれることも考えづらいとはいえ俺たちに緊張が走る。
『まだ捕獲できないのかよ、何のために情報寄越してやったと思ってる。』
確実にどこかで聞いた声が聞こえる、やっぱり思った通りあいつはこいつらに情報を流してたらしい。
「この声…………」
『お前か、わざわざここに来ていいのか?』
『新しい情報を伝えに来たんだよ、ヒラサキ監査官がハロルドたちと接触した。じきにここにも捜査の手が伸びるだろうし対策しとかないとまずいんじゃねーか?』
『……予想より早いな。チッ、引き上げるぞ!』
その声とともに、たくさんの足音が響いて男たちが去っていくのがわかる、どこかあいつらの隠れ家になってる場所があるんだろう。突き止めておいた方が良いかもしれない。
「行ったか……やれやれ……」
クルツ人の内側の裏切者に、スラムに隠れた大量の旧王国軍。
そいつらと袖の下で繋がった知事、ただの母親探しのはずが本当に何でこんなことになってしまったんだろうか。
「お母さん…………」
俺の腕の中で、プラムが震えている。
「会えるって……もう一度私の名前を呼んでくれるって……」
声を抑えてプラムは泣き出してしまった。
「駄目かもなんて何度も思った……でも、会いたかったから信じてたのに……」
せっかく偶然とはいえ見つけたかつての自宅、そこに行けば会えるかもしれないと思っていた生き別れの家族がそこにいなかった、そのショックは計り知れないだろう。
とりあえずもうこの地下室から出よう、そう思って動いた時何か音が聞こえた。
「…………?」
気のせいかと思ったが違う、俺の正面から気配がする。真っ暗でわからなかったが、この地下室には「奥」がある。そこから何かが接近してきている。
「っ!? 誰?」
姿を現したのは、小柄な魔物。
ラージマウスだ、プラムより若干背が高い程度のラージマウスが奥から現れた。
「人探しをしてたら旧王国軍に絡まれた可哀そうな傭兵とホブゴブリンだ。」
「…………ホブゴブリン? まさか、プラム?」
ラージマウスは当たり前のようにプラムの名前を言い当てて見せた。
「ついてきて、会ってほしい人がいるの。」
ラージマウスは、俺たちにそう言うと、奥へとまた引っ込んでいった。
「……行こうぜ。」
「うん。」
その声は、力強かった。
なんだか妙な音が聞こえる、よくわからないけど健全ではない音だ。
ぬちゅ……ちゅるる、れろれろ、ぎゅう
音の発生源は下の方、瞼が重い、なんだか股間が温かい、というか湿ってる?
まさかと思い気合を入れて目を見開いて俺の下半身を見ると、俺の予想とは違ったがある意味それ以上にとんでもない事態が発生していた。
明らかに朝立ちのレベルじゃないほど大きくそそり立った俺の肉棒に、プラムが胸とお口で奉仕している。俗にいうパイズリフェラってやつだ。
昨晩は夕食を頂いてから近くの川で数人のクルツ住民の方々と一緒に体を洗ってから、プラムのテントに間借りして眠りについたわけだが恐らく先に目が覚めたプラムが俺を起こすためと誘惑するためにこんなことをしているんだろう。
「なっ!? おまぅっ!? 何をしてんだよ!」
パニックになりながらも、熱に浮かされたような表情で俺の肉棒を舐めあげ、胸を押し付けて堪らない乳圧をかけてくるプラムに怒鳴りつける。
「えー? 朝のご奉仕、ほら、こんなに大きくできたんだよ? ぺろ……」
ぐにゅぐにゅ、ぎゅむっぎゅぎゅぎゅっ
何食わぬ顔で俺の怒声を受け流し、カリ裏を舐めあげながら胸を上下に擦る。
「はをぅっ! だからなんで、朝の奉仕をっ!?」
「お嫁さんなら当然じゃないのー? クリムとシェンリもやってるって言ってたよー。」
クリムとシェンリって誰だよとか思いながらも、胸を強く押し付けられたり舌で軽く舐められるだけでも腰が浮きそうに気持ちいい、しかしやっぱり必死にこらえる。
相手は幼女だいくら相手からこんなことをしてきたとしても倫理的にまずい。
「えへー♥ 気持ちいい?」
「よく……ないっ」
搾りだすように嘘をついたが、嘘だと見破られているだろう。
「ふーん、じゃあもっと、激しくしてあげる♪」
はぷっ ちゅろろろろ、ぎゅむぎゅむむにぃっ
プラムは今まで舐めるだけだった胸の間からはみ出した俺の肉棒の先端を咥えると、唇をもごもごと動かして刺激しながら舌先で鈴口をちろちろと攻めてくる。
勿論胸の動きも容赦なく俺を昂ぶらせにかかっている、強く乳圧をかけながら両側から擦りつけたかと思うと一瞬力を抜き代りに口が喉奥まで一気に飲み込んでから舌で弱いところを狙いつつ引き抜いていく。
「うくぁっ ああっ!」
ついにこらえきれず俺が腰を浮かしてしまうと、プラムはそれに気を良くしたらしく。
「ぢゅるるるるるるるるぅっ!!」
止めと言わんばかりに、一気に吸い上げて強烈な快感を与えてきた、それに耐えきれず俺はとうとうプラムの口の中に大量の精液をぶちまけてしまう。
「んっ♥ ぺろぺろ……ごくん。あはぁ、美味しいよぉ♥」
蕩けた表情で扇情的に精液を飲み込むプラムに、更に余計に興奮してしまう。
「ねぇ、ほらー。ロットもまだ、できるよね? 今度はこっちに、お願い。」
そう言って俺の目の前で横になりながら下半身に唯一身に着けていた若草色の下着をずらし、湿ってひくひくと俺の逸物を求める陰唇を見せつけてくる。
「きて……? ロットのおちんちんで、私の初めて、貰って?」
その言葉にゾクゾクと冷ややかに、しかし蕩けるように甘い背徳感が胸に満ちてくる。
荒い息を吐きながら、俺は彼女の期待に応えるべく覆いかぶさるような姿勢で照準をつけながら陰唇に肉棒を近づけていく。
どこかで誰かが止めろと言っている。どこかで俺が道に迷っている。
俺の目の前で、愛しい少女が期待と情欲に満ちた目で俺を見つめている。
「ロット、プラム、起きてるかな? お客さんが来てるよ。」
テントの入り口から、ハロルド氏の声がした。
ハッっと我に返った俺は、しかし何もしないでいるには収まりがつかずプラムにキスをすると脱がされていた寝巻を着なおしてハロルド氏にテントの仕切り布越しに
「お客さん? どんな人です?」
と聞き返した。
「四十代半ばくらいの女の人、広場に待たせてあるから早く来てね。」
と答えていなくなった、俺たちが中で何をしそうだったのか察知したのかもしれない。
そして振り向くとプラムが不満そうな顔で座っていた、途中で邪魔が入ったのも俺が結局シなかったのも不満なんだろう、あのまま行けば俺は一時の情欲に身を任せて倫理を踏み外していたわけだ。
「悪かったから、お前が大人になるまで何年でも待つから、だから今は許してくれ。」
「………………わかった。」
凄く不満そうな声でそう答えたプラムもしっかり服を着ると、俺たちは一緒にテントを出た。もしかしたら「お客さん」がプラムの母親に関して何か情報を持っているかもしれないと思ったから、プラムも大人しく引き下がったんだろう。
一緒に広場まで行くと、既に起きて食事をとっていたみんなが一斉に俺たちを見た。
「随分、仲睦まじくなったんだね。」
ハロルド氏が何か意味ありげな笑顔で俺たちに言う、何のことか少し考えて理由を見て理解した。俺たちは全く意識することなく自然と、テントからここまで短い距離でも手をつないで歩いてきていた。
「えへへ……」「いや……あの……はい。」
照れたように笑うプラムに言い訳する気もなくなり肯定する、今朝の一件で理解したが俺はプラムに惚れてしまってるらしい、断じて俺はロリコンじゃないぞ。
「来たようですね、ゴブリンの少女を連れた青年、君のことですよね?」
テーブルに座っていた中年女性が俺に向かってそう言ってきた、どこの町にもいそうな割かし普通のおばさんに見えるが、妙に眼光が鋭い。
「………私も正確な場所は知りませんが、レクターンの北西部に形成されたスラムの奥深くで魔物を見たという話を聞きます。魔物狩りを逃れた魔物ならそこにいる可能性が高いでしょう。」
「なぜ、そんな話を俺たちにしてくれるんです?」
むしろ罠の可能性を疑わずにはいられない、罠を仕掛ける気ならこんなところまでわざわざ出てこないとも思えるが、疑わずにはいられないのが人情だ。
「どーでもいーじゃん、ほら行こうよロットー」
食事もまだだというのに、プラムは俺の腕をつかむと少し強引に引っ張りだした。
「そうなると思ったから、はいお弁当。」
そう言って近くのクルツ人女性が俺たちにバスケットを渡してくれた、中に入っているのはサンドイッチだろうか、用意が良いもんだ。
プラムに引っ張られながらレクターンの町に入る、やはり町はそこそこに活気があり、俺たちはしっかり手をつないで人混みの中を進むことにした。
『北西スラムの奥に魔物の姿を見た。と、言う話を聞いたことがある。』
怪しすぎる情報でも、今は信じて進んでみるしかない、それほどまでに俺たちは情報に困っていた昨日一日だけでも驚くほど、この都市の人々が魔物に無関心であることが理解できたからだ。むしろ知ろうともしない、自分たちの生活に関わらないならどうでもいい。
「ハロルド氏や、他の皆は何をしてるんだ?」
苛立ちを打ち消すために、プラムに訊ねる。そのころにはもう俺たちは大通りを抜けて、人もまばらになってきたスラムと一般市街の境界線に踏み込んでいた。
「キサラギがくるまでは、レクターン周りの村を復興するために物資を運んで廻ってるってー。キサラギが来たら、本格的な反乱分子の掃討に当たるんだってさー。」
「クルツ部隊に警察能力はないのか? その方が効率よさそうだけど。」
「念のため、だってさ。外国勢力に国内の強権を持たせると関係悪化の原因になるとも言ってたよー。」
プラムはやはり呑気に答える。言われてみればその通りだ、一応同盟とはいえローディアナとクルツは他国ということになる。それなのにクルツの部隊に大きな権力を持たせたらその部隊が暴走した際に困るだろう。
そんなことを考えながらも、俺たちはスラムの奥に向かって歩を進めていく。
「………人がまるっきりいないな、これはこれで怪しいぞ。」
「そうかなー?」
そんなのんきな会話をしつつ少し俺が奥まで進むと、
「おい、お前そこの魔物のガキおいてけ。」
さびかけた鎧を着こんだ男が一人いきなり俺に向かって命令してきた。
鎧に旧王国軍のエンブレムがある、恐らくはこの男は旧王国軍の元仕官、それもおそらく将校クラスの男だろう、ほとんどが捕まったと聞いていたがまさか無事なやつがいると思わなかった。
「お断りだ。」
当然俺は拒んだ、すると男は持っていた銃を空に放った、赤色の光が迸る。
「信号弾かよ、一人で女の子一人浚えないのか。」
「ふん、念には念を入れて、だ。逃げられると思うなよ? ルドヴィッヒと名乗る野郎の情報提供のおかげで待ち伏せもしやすかったし、ここの知事は俺たちからたんまり袖の下を貰ってる。」
随分と自慢げに語る男の周囲に大量のならず者が集まってくる、軽く二十人は下らない数だ。直接しかもプラムを庇って戦うのは、無理。
それに、ハロルド氏に伝えるべきこともわかった。
「プラム、逃げるぞ。」
「うんっ!」
俺がそう言うと同時に、プラムは持っていた棍棒を男たちに向けて投げつけた。
その隙に回れ右してスラムの細い路地に駆け込む、正面から向かってきた男を剣で切り倒し、倒れた男の上を飛び越えてさらにその先に進む、後ろから男たちが追ってきているのがわかる、あてもなく進んではそのうちに袋小路だ。
「どこか、隠れる場所なりないもんかな!」
ひたすら走って前に出てきた相手だけを一瞬で倒す戦術を用いて逃げていく、プラムは殆ど俺に引きずられているようなものだが、無理に一緒に走ろうとしない分帰って都合がいい。
「ロット! あの家!」
プラムが珍しく大きな声を出して指差したのは石造りの小さな家、どうやら無人らしくドアが僅かに開いていて、中に入れそうではある。
プラムが俺を引っ張り中に入るとすぐにドアのカギを閉める、入るところは見られていないはずだがまだ窓がある以上そこから発見されて侵入される可能性も普通にある。
古い家だ、住人はもう長いこと不在らしく、埃かぶった家具ばかりが散乱している。
「こっち、ここに……やっぱり。」
プラムが床を開いた、どうやら地下に格納庫か何かがあるらしい。
プラムに続いて地下室に入り、地下室の入り口を閉める。
真っ暗で良く見えないが、少なくともここに隠れていれば見つかる可能性は低いだろう。
「……なんで知ってたんだ? こんな構造の家だって。」
暗い中を彼女を抱きしめて息をひそめながら、俺は訊ねてみた。
そこで帰ってくるだろう答えも予想がついていたが、それがある事実を認めることになるとわかっていたからそうではないと言ってほしかった。
「わかるよ……ここ、私のおうちだもん……」
震える声で、プラムが答えた。
明らかに無人のこの家が、彼女の実家。
つまり、彼女の母親はもう、この町にはいないということだ。
『クソ、どこに消えた……』『周囲の家も探ってみろ! 逃がすんじゃないぞ!』
俺たちの頭上から声が聞こえた、どうやらあいつら、扉を破って家の中まで侵入してきたらしい。家具は荒れ放題で埃もひどかったが床の埃は妙に少なかったから気づかれることも考えづらいとはいえ俺たちに緊張が走る。
『まだ捕獲できないのかよ、何のために情報寄越してやったと思ってる。』
確実にどこかで聞いた声が聞こえる、やっぱり思った通りあいつはこいつらに情報を流してたらしい。
「この声…………」
『お前か、わざわざここに来ていいのか?』
『新しい情報を伝えに来たんだよ、ヒラサキ監査官がハロルドたちと接触した。じきにここにも捜査の手が伸びるだろうし対策しとかないとまずいんじゃねーか?』
『……予想より早いな。チッ、引き上げるぞ!』
その声とともに、たくさんの足音が響いて男たちが去っていくのがわかる、どこかあいつらの隠れ家になってる場所があるんだろう。突き止めておいた方が良いかもしれない。
「行ったか……やれやれ……」
クルツ人の内側の裏切者に、スラムに隠れた大量の旧王国軍。
そいつらと袖の下で繋がった知事、ただの母親探しのはずが本当に何でこんなことになってしまったんだろうか。
「お母さん…………」
俺の腕の中で、プラムが震えている。
「会えるって……もう一度私の名前を呼んでくれるって……」
声を抑えてプラムは泣き出してしまった。
「駄目かもなんて何度も思った……でも、会いたかったから信じてたのに……」
せっかく偶然とはいえ見つけたかつての自宅、そこに行けば会えるかもしれないと思っていた生き別れの家族がそこにいなかった、そのショックは計り知れないだろう。
とりあえずもうこの地下室から出よう、そう思って動いた時何か音が聞こえた。
「…………?」
気のせいかと思ったが違う、俺の正面から気配がする。真っ暗でわからなかったが、この地下室には「奥」がある。そこから何かが接近してきている。
「っ!? 誰?」
姿を現したのは、小柄な魔物。
ラージマウスだ、プラムより若干背が高い程度のラージマウスが奥から現れた。
「人探しをしてたら旧王国軍に絡まれた可哀そうな傭兵とホブゴブリンだ。」
「…………ホブゴブリン? まさか、プラム?」
ラージマウスは当たり前のようにプラムの名前を言い当てて見せた。
「ついてきて、会ってほしい人がいるの。」
ラージマウスは、俺たちにそう言うと、奥へとまた引っ込んでいった。
「……行こうぜ。」
「うん。」
その声は、力強かった。
13/03/31 00:11更新 / なるつき
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