「ん……まぶしっ……!」 昨日は騒ぐに騒いだな……おかげでかなり眠ってしまった……。朝食作るのめんどくさいな……。 「いてて……完全に二日酔いだ……」
「当たり前ですよ、あの後も飲み続けたんですか?」
…………相当酔ってるな、タニアルの姿が見える。
「…………よし、寝直そう」 「寝ないで下さいよ! 鍵も掛けないで……すんなり入れちゃったじゃないですか……」
……いい加減に認めた方がいいかもしれないな……目の前にいるのはタニアルだ、うん。
「わざわざ来てもらって悪いけど……今日は定休日で……」 「知ってますよ。 むしろ知ってたから来たんですよ。 まずは顔を洗って来てください」 「あ、ああ……」
言われるがままに井戸へ出向き冷水を浴びて目を覚ます。途中、階段でつまづいたが、何とか踏みとどまった。二日酔い怖い。
「ふぅ……昼前とは言え、結構遅く起きたな……」 「朝ごはん出来てますよ。 勝手にキッチンお借りしちゃいました」
そういえば……なんかいい匂いが……。
「タニアルは料理出来るのか?」 「はい、最近はもっぱら土から養分吸ってるのでたまに味を楽しむ程度ですけど」 「…………食べていいか?」 「はい♪ どうぞ」
流石に空腹だ、御相伴に預かろう。
タニアルの食事はスープなどの軽めのものが中心だった。酒で弱ってる胃には優しく、尚且つ味もすごくいい。母さんが生きてた頃の味を思わず思い出してしまった。
「…………ふふふ♪」 タニアルはと言えば、テーブルの上に肘をついて笑顔で僕の食事を見守っている。少し恥ずかしいが、食事の手を遅くする程の理由にはならなかった。
「美味いな……優しい味だ」 「そうですか? 喜んでもらえて嬉しいです」 「毎日食べてもいいな、コレは」 「えっ!? そ、そそそれは……プ……プロポ……」 「……?」
急に顔を赤くして両手をバタバタし出したけど……大丈夫か?
「ふぅ……ごちそうさま」 「えっ……あっ……お粗末さまでした」
食事開始から30分と経たないうちに全て食べ終えてしまった。軽めとはいえかなり早い方だ。
「じゃあ、片付けますね」スッ…… 「あ、いや……流石にそこまでしてもらうのは……」スッ……
「「あ……」」
食器の前で交差する僕とタニアルの手。き、気まずい……
「あ……えっと……だな……」 「………………」
きゅっ……!
「……!?」 手を離すどころか握ってきた!? 少し表情がトロンとして……トリップしてる?
「ケルトさん……ケルト……さん……」 「あ……その……」
気まずい……いや、恥ずかしい? もう……自分の感情が分からない……。
「けるとさん♪」
ちゅっ☆
唇に柔らかい感触。
「ってまたかっ!」 「えへへ……2回目ですね♪」
この変なタニアルのテンションはしばらく続いた。
1時間後 「ごめんなさい……わたしどうかしてました」 「いや……いいんだけどさ…………いつもこうなるのか?」 「まさかっ! ケルトさんだけですよ!」 「そ、そうか……///」
マズイ、かわいい……。
「と、とにかく! 今日はもう帰りますね。 早く治してくださいね?」 「ああ、ホントににありがとうな。 いつでも遊びに来てくれよ。 基本暇だからな」 「はいっ、また会いましょう!」
お互い少し赤い顔のままタニアルとは別れた。部屋に戻ったらいつの間に入れたのかお茶がポットに入っていた。
「なんて早業だ……」 まだまだ未知数なアルラウネの魅力に惹かれながら、お茶を堪能する。 「うん、美味い」
これなら今夜には酔いも覚めてそうだな。
コンコン…… 「ごめんください。 リアです……起きてますか?」
そこで来客、ドアを開けると修道服に身を包んだ双子シスターの妹さんの方が立っていた。
「リアさん……? どうしたんですか? 昨日ぶりですね」 「実は……コレを持ってきたんです。 昨日かなり飲まれていたので……」
おずおずとリアさんは一つの小瓶を差し出した、中には錠剤のようなものが入っている。
「これは……? あっ、よかったら上がってください。 教会からここまで距離あったでしょう? 少し休んで行ったらどうですか?」 「そうですか? では……少しだけ」
部屋のテーブルに向かい合って座る。 小瓶の中身をよく見ると、なかなかキレイな色をしていた。 薬というよりかは飴に近いかもしれない。
「これは何ですか?」 「それは、酔い覚ましの薬です。 二日酔いに効くんで持ってきました」 「それは……わざわざどうもありがとうございます」
早速一つ口に放り込んでみる。 少し苦いが、良薬口に苦しというし、我慢した。
「神父さまもそれですっかり良くなりました。 効き目は保証しますよ」 「助かります。 頭が痛いと鍛冶もロクに出来ないもんで……」 「そうでしょう………………ケルトさんのお宅は変わった香りがしますね」 「え? そうですか?」
住んでるとあまり気にならないが、他人の家の匂いはやはり気になるものなのだろうか?
「そうですね……私はあまりこの香りは好みません……………………花の香りがするんですもの…………不快で仕方がないです」
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