ゼェ……ゼェ……やっと誤解が解けた……」 「お、おつかれさまです……」
あの後、街中を走り回っているヴァリーをやっとの事で捕まえた後、僕とタニアルは恋仲ではないという事を説明し、なんとか理解してもらえた。
「町長の……家の前まで行ってて……捕まえるのが遅かったら結納させられてた……」 「えっ……ざんねん……」 「なんか……はぁ……はぁ……言ったか?」 「い、いえ……! なにも」
とりあえず、喉が渇いて仕方がない……冷めてしまったけど、ハーブティーでリフレッシュをはかろう……。
「んくっ……んくっ…………くはぁ……」 「あ……あの…………」 「ん?」
なんかタニアルが顔真っ赤になってる、口も鯉みたいにパクパクしてるし……どうしたんだろうか?
「ケルトさんのカップ……向こうです」 「あ…………あ!」
言われて初めて気がついた……これはさっきまでタニアルが使っていたカップだ。と、いうことは……これは俗に言う間接k……
「わ、わ、わたしそろそろお暇しますね! ま、また来ますから〜〜!!」
タニアルはバタバタしながら出て行ってしまった。ちなみに僕は固まったままだ。
「……………………」←固まったまま微動だにしない
ガチャ……カランカラン
「うーっす、ガルザだぞ〜。 今そこですごい顔が真っ赤ながらも笑顔なアルラウネとすれ違ったんだが…………ってお前も大丈夫か!? さっきの娘に負けないくらい顔真っ赤だぞ!?」
十分後
「大丈夫か?」 「ああ……少し、取り乱しただけだ」
顔の熱は引いていたし、心も落ち着いた。だが不覚……! 僕とした事があの程度で冷静を欠くなんて……。
「お前は案外純粋だからな……にしてもこのお茶美味いな。 あのアルラウネ、相当な腕だな」
そういえば……なぜガルザはタニアルがアルラウネだと分かっているのだろうか? 彼女は一応、見た目を誤魔化していたはずなんだけどな……。
「ガルザは……魔物か人か識別できるのか?」 「ああ、分かるんだよ。 違和感みたいなのが頭をよぎって、これは人じゃないなって分かるんだ。 伊達に街の警備を担当してないからな」
何気にハイスペックなんだなコイツ……。
「まぁ、なんにしろあまり気に病む事はないな。 あの娘も照れてはいたが喜んでもいたぞ?」 「そうか? 悪い事になってなければいいんだけどな……」
思い返すだけで顔から火が出る……これもヴァリーのせいか……!
ガチャ……カランカラン
「いらっしゃ……ヴァリーか……少しは反省したか?」 「あ、ああ………………」 「ん? 疲れてるのか? 何があった?」
やけにヴァリーの顔が青い、足も震えているようだし……何かあったのか?
「け、ケルト……あ、ガルザもいたのか……」 「どうした? まずは落ち着いたらどうだ?」
ガルザも様子がおかしい事に気が付いたのだろう。ヴァリーに駆け寄り、震える足を見て身体を支えてやっている。
「ケルト……心して聞くんだ」 「お、おう……」
いつものふざけたヴァリーからは想像できないような真剣なまなざしを受けて、思わず僕も身構えてしまう。そんな僕を見てからヴァリーはゆっくりと口を動かした。
「噂が……町長に伝わっちまった……」 「「な…………!!?」」
ガルザと僕に衝撃走る。街では別名『The お節介』と呼ばれている町長にあの噂が入ってしまった……だと?
「あの町長は何故かケルトが結婚しないのをこれでもかというくらい気に掛ける。 そこに今回の噂が耳に入ってみろ……誤解を解くのにどれだけ時間が掛かるか……」
ヴァリーの言っている事はよくわかる。むしろあの町長の事だ、誤解と分かった上で開き直って結納させられるかもしれない……!
何か対策を立てなければいけないと思ったその矢先……!
ガチャ……カランカラン
「「あ……」」 「ちょ、町長……」
神は残酷だ……準備の時間すら与えてくれないのか……!!
翌日
「あ、あの……タニアルです。 昨日は突然飛び出してすみませ……ってケルトさん!? 大丈夫ですか!? ケルトさん!!」
一晩かけて町長に結婚はまだ考えていない事を理解してもらえた……店に残ったのは大量の結婚案内と…………燃え尽きた男が3人(僕含む)。
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