「ん……」 日差しが眩しい、朝か…… 結局、風邪は引いちゃったか……少し寒いな 「さて、起きるか……ん?」 起き上がれない? 押さえ付けられてるような……
「すぅ……すぅ……」 「………………」 ……なんでリーニが寝てるんだ? しかも一緒に 「むにゃ……ん?」 あ、起きた。 「あ……えへへ、おはよ」 「ああ、おはよう……っじゃない! リーニ! どこから入った? いつからいた? どうしてうちに?」 「そんな一度にたくさん質問しないでよ。 答えるからさ」 リーニはもぞもぞと掛け布団から這い出してベッドの上に正座した。僕も向かい合う形で座るようになる。
「まず、鍵が開いてたよ。 ダメだよ無用心なのは」 また開いていたらしい……心のなかで反省しておこう。 「次に、あたしは日の出の少しあとに来たんだ」 「早いな……」 「種族がコカトリスだからね、早起きは得意なんだよ。 それで、来たらキミはまだ寝てたから、起きるまで二度寝してたの」 「僕のベッドで?」 「うん♪」
要は僕が鍵を開けてたのが悪いのか……
「ところで、敬語だったのになんで崩れてるの?」 いや、別に嫌なわけじゃない。ただ気になっただけで 「ああ、それは先生にキミの話を聞くうちにキミの事をタメ口使ってもいい人だと判断したから」 「馬鹿にされてる!?」 自分の人間ランクの低さを嘆くと、リーニは首を横に振ってこれを否定した。
「違うよ。 あたしが仲良くなりたいって思った人ってコト。 だから安心して?」 マイナス思考とはとことん恐ろしいな……何を言われても気休めにしか聞こえない。
「……と、ところで、さっき言ってた『先生』って誰の事?」
このままだとネガティブにネガティブを重ね泥沼化するのでここらで話題を変えておこうと思い、適当な話題を振るが、リーニの返答は意外なものだった。
「先生? 先生は診療所の先生だよ。 このお店のお得意様でしょ?」 「ああー……確かに贔屓にしてもらってるよ」
この街唯一の診療所の医者もまた、僕の店の常連だったりするのだ。主に医療用メスを納品している。
「あたし、診療所で働いて薬品を配達してるの。 だから街のこともよく聞くんだよ。 キミのこともよく聞いたんだけど、顔は知らなかったからね」 「もしかして昨日も配達中だった?」 「うん、配達の帰りでいつもより遅かったから急いでたらキミにぶつかっちゃったの」 なるほど、コカトリス特有の足の速さを活かした配達か……あの医者も人(魔物?)の使い方が上手いな……僕のように危険が伴うけど。
「話を本題に戻すけど、あたしはこれを持って来たんだ。【即効性の風邪薬】」
リーニが懐から取り出したのは中に液体が入った小瓶だった、風邪薬とは、いまの僕にはありがたい。
「ありがとう、わざわざ持って来てくれて」 「原因を作ったのはあたしだしね……さっ、早く飲んで」 「ああ……それじゃ」
くぴり
「飲んだらすぐに寝る!」 「また寝るの? 店があるんだけど……」 「お店開けるのは治してから! 客に移すわけにはいかないよね?」 「だけど……」 「つべこべ言わずに早く寝るの!」
ボスンッ! と僕は押し倒され、再びベッドに返された。力負けしたのは風邪のせいであって僕の力が弱いわけではない、断じて。
「って言っても目が覚めたばっかりだし寝れないよ……」 「子守唄歌おうか?」 「コカトリスの子守唄って逆に目が覚めそうだな……」 「そう? なら……」
ぎゅっ
「!?」
リーニがいきなり抱き着いてきた? なにゆえ? 「羽毛ぶとーん」 ぶとーんっていまリーニヒト化してるから羽ないだろうに。
「まあ、いいじゃんいいじゃ……ん……すぅ……すぅ……」 「寝るの早いな……」 女の子(魔物といえど)の甘い臭いにドキドキしながら僕は意識を手放した。
. . .
「−−−−!? −−!!」 「−−!!−−−!?」
「ん……?」 なんか怒鳴り声が聞こえる……それも近くで、 「なんだろ……」 原因究明のために意識を覚醒させる。すると……
「どうしてケルトさんと一緒に寝てるんですか!? ケルトさんに何をするつもりだったんですか!?」
「そっちこそいきなりなんなのさ!? どうしてケルトと一緒に寝てるのをジャマするの!?」
「………………」
リアさんとリーニによる修羅場が展開されていた。
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