連載小説
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聞蜘蛛の居らず
「なぁ、自分らワイとの付き合い悪なってへん?」

ふと気になってから目の前で愛妻弁当を広げている伊藤健司に聞いてみた。

「はあ?何言ってんだよ。もとから付き合いなんてないだろ。」

「酷っ!?あんさんの仲をとりもったキューピッドにそんなん言いはる!?」

「アレをとりもったなんて言うか!また殴ってほしいのか?」ゲシッ

「もう殴ってますやん!?」

相変わらず健司は酷い奴だ、自分はどれだけ頑張ったことか…

まぁ、女の子の字体で手紙書いただけやけどな!

「まぁまぁ落ち着いて。健司も感謝はしているんですよ…ね?健司?」

いつものように仲裁に入る白井潤一郎、健司と違って物腰柔らかく、優しい奴だ。

「誰が康太に感謝するんだよ。逆に謝って欲しいくらいだ。」

「それもそうですね。」

「オイ!仲裁はどないしたんや!?」

訂正、二人とも酷い奴や。


「ほんで、お二人さんは今日は彼女さんと食べへんの?」

「ああ、今日は女子と食べるみたいだぜ」

「あそこの集まりではないでしょうか、西田さんと沙耶様もおられますし。」
と白井が女の子の集まりに目を向けた。
チラッと見てみると確かに三人のかたまりがあった。



「ふーん、いっつも「あーん」とか見せられてるワイにとっては嬉しいことやわ。ずっとあれじゃいつかワイは便所飯デビュー果たしてまうで。」

「んじゃお前も彼女作れよ。それなら気にならないだろ。」

その持つ者の余裕にキレてしまった。

「舐めてんのか、ワレぇ!?そんな簡単にできるか!第一自分らは「幼なじみ」とかいうアクションリプレイもんの反則があるからやろが!!ワイの人生もリセットしてくれえ!!ってか誰か弁当くれえ!!」

最後少し願望が混じった。




ところかわって、女の子達の会話

「でねー、健司がぎゅぅ〜ってしてくれるのよ!」

「……いつまでこれ聞かなきゃいけないの…?」

うっとりと惚気話を話すワーキャットの西田美羽とは対照的に、げっそりとその話を聞くラミアの白川沙耶が言った。
心なしか自慢の白い髪も艶を無くしている。

「いいじゃん、いいじゃん!美羽もそれだけ長年の夢が叶って嬉しいんだって。そういう沙耶も白井と主従関係を越えることができて嬉しいんじゃない?」
といつものニコニコとした笑顔がニヤニヤに変わっているアラクネの飯田八重が答えた。

「確かにジュンとそういう関係になれて嬉しいんだけど…、そんなに前と変わらないわよ?」

「またまたぁクールぶっちゃって、どうせ家ではベタベタしてるんじゃ?」
「しっ、してないですっ!!///」

「おやおやぁ〜?何で顔が真っ赤なのかなぁ〜?」

「もう!八重!」

「アハハ、ゴメン、ゴメン。つい苛めたくなっちゃって」
と笑いながら謝罪する八重

「ったく、そういう貴方は好きな人とかいないの?」

「ん〜、考えたこともなかったな〜。アタシ、そういう状況になったことないから、アッハッハ」
一瞬思案顔をするもまた直ぐにカラカラと笑いだした。
ホントに八重ってよく笑うわねと沙耶は思った。


「まぁ、そんな奥手な沙耶ちゃんのために皆で彼氏さんに愛に…もとい会いにいきますかぁ!丁度美羽の彼氏も一緒にいることだし」

「なんでそうなるのよ!?」

「美羽だって彼のところに行きたいよな〜?…って美羽?」

「…の終わりには「好きだよ…」って言いながらキスしてくれるのよ!!早く帰ってまた耳元で囁いて欲しいな〜♪」


まだ惚気話は終わっていなかったらしく、流石の八重も目頭を押えた。
10/09/10 20:26更新 / 迷える子執事
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■作者メッセージ





あー、健司もげろ

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