連載小説
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スペードの間:絶頂インディアンポーカー(前編)
【スペードの間】

 扉をくぐった先は、ホテルの一室のようなこじんまりとした部屋だった。部屋の中央には大きなベッドがあり、そこに快活そうな少女が腰を下ろしていた。
「やあ、よく来たね」
 少女は、ぴょんと跳ねるようにしてベッドから立ち上がる。
 短く、邪魔にならないように切り揃えられた髪。ところどころにスペードの衣装が施されたミニワンピースと、その裾からちらちらと覗く、健康的な太腿。
 ギャリーが無遠慮に少女のことを観察していると、彼女もまたギャリーを値踏みするような様子でゆっくりと歩み寄ってきた。
「ふぅん。君がジョーカーの言ってた人間界の勝負師か。意外と男前だね。まあ、目元のクマだけはどうにかした方がいいだろうけど」
 少女は悪びれもせずにケラケラと笑った。
「君が……俺の対戦相手か?」
「うん! 女王様にお仕えするトランパート。その中でも賭け勝負において敵無しと誉れ高き『勝負師四枚札(フォーカード)』の一人。スペードって呼んで!」
 ギャリーは表情にこそ出さなかったが、正直意外に思っていた。精鋭などというから、海千山千のギャンブルの魔物のようなものが出てくると踏んでいたのだが、まさかこんな少女が相手とは。
 だが、油断してはならない。勝負の世界で年齢など当てになるものではないし……なによりギャリーの勝負師としての勘が、目の前の少女の奥底に潜む『魔性』を感じ取っていた。
「では、スペード。俺と君は、いったい何のゲームで勝負するんだ?」
 少女はニコリと屈託のない……それでいて腹の内を見透かすような笑顔を浮かべ、ギャリーの手を引く。そして彼を部屋の隅にある簡素な椅子に座らせ、自身もテーブルを挟みその正面に座った。
「僕たちがやるのはね……絶頂インディアンポーカー!」
「絶頂……インディアンポーカー?」
「うん、絶頂! ほとんど普通のインディアンポーカーだけど、詳しいルールを説明するね」

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【絶頂インディアンポーカーのルール】
プレイ人数:二人
プレイ時間:互いのテクニックによる
使用カード:1〜10の数札、J、Q、Kの13枚 × 4種のスート + ジョーカー1枚の計53枚

@プレイヤーには、それぞれ手札として1枚のカードが裏向きで配られる。

Aプレイヤーは、手札の表面を見ないようにして、手札を自分の額に当てる。この時、対戦相手からは書かれた数字が分かるようにする。

B互いにベット(賭け)し終えたら、額のカードをオープン。エースを最強、2を最弱として、より手札が強かった方の勝利。もし互いの手札の数字が同じであった場合、引き分けとして扱われ、何も起こらない。

C手札に使われたカードは山札には戻さず、互いの見える場所に並べて置いておく。

Dこれを繰り返し、最終的に先に絶頂した方が敗者となる。
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「……確かに、概ね普通のインディアンポーカーだな。だが、敗北条件にもある絶頂というのは?」
「それは、これから説明するね。絶頂インディアンポーカーには『親と子』、そして『賭けるモノ』についての特殊ルールがあるんだ」

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【特殊ルール1:親と子】
絶頂インディアンポーカーにおいては、常に直前のゲームで勝った者が『親』、負けた者が『子』として扱われる。

【特殊ルール2:ベット】
絶頂インディアンポーカーのベットは、以下の手順で行われる。

@まず、子が時間を決める。(最短1分、最長30分)

A親がそれを受け、プレイ内容を決める。(キス、フェラチオ、ペッティング(部位指定)など)

B子が、親の宣言を確認したうえで、コール、またはフォールドを宣言する。
 ※コール:その条件で勝負。
 ※フォールド:勝負を降り敗者となる代わりに、時間を宣言の半分に減らす。

C敗者は、ベットで決められたプレイ内容を、決められた時間受けることになる。

【特殊ルール3:ジョーカーと倍付け】
53枚の山札に1枚のみ存在するジョーカーは最弱のカード。自分の手札がジョーカーで勝負に出た場合、必ず敗北となる。加えて、決められた時間の倍の時間、プレイを受けることになる(倍付け)。
ただし、ジョーカーを引いた者が子であり、かつフォールドした場合、この倍付けルールは適用されない。
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「成程、理解はした。聞きたいことは多々あるが……ハートの女王ってのは、こういうのが趣味なのか?」
「そうだよ! 女王様は、楽しくて気持ちいいことが大好きなの! ……当然、その精鋭である僕たちトランパートもね!」
 ギャリーは、スペードの屈託ない笑みの中に、一瞬娼婦の嗤いを見た気がした。痛くなるような頭を押さえつつ、ルールについて反復する。
「このルール、親は勝負を降りられないんだな?」
「うん! でも、代わりに親はプレイの内容を決められる。だから、もし自分が負けそうだと思ったら、自分が感じにくい性感帯を指定したりしてやり過ごすのがセオリーだね。一度負けてやり過ごせば、次は子になれるから、勝負を降りる権利も得られるよ!」
「なるほど……。親でジョーカーを引いてしまった場合、かなり不利だな」
「ふふっ。このゲーム、最後はどれだけ持ちこたえるかのスタミナ勝負。こう見えても、僕はスタミナには自信があるからね。女だからって、甘く見ないでよ……?」
 顎に手を当て考え込むギャリーを横目に、スペードが不敵に笑う。
 ギャリーもそれに射抜くような視線を返す。
「当たり前だ。ギャンブルで、相手を甘く見たことはない」
「そうこなくっちゃ!」
 スペードが、テーブルの下から未開封のトランプデッキを取り出す。互いにカードに問題がないか確認し……勝負の幕が開いた。


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「じゃあ、まずは僕が親だね」
 互いにカード一枚持ち、進行を確認する。第一ゲームはスペードが親、子はギャリーだ。
「それじゃ……インディアンポーカー!」
 元気の良い掛け声に合わせ、双方手札を額に掲げる。
(ハートの8か)
 ギャリーはまずはスペードの掲げたカードを確認する。8は、強さ的にはちょうど中間のカードだ。
「さ、子はギャリーだよ。まずは時間を決めて貰おうかな」
 ニコニコと笑いつつ、催促するスペード。
「分かっている。10分だ」
 即答するギャリー。
「ふーん……。ギャリーって驚くほど顔に出ないけど、その感じだと僕の札は結構弱いのかな? まあ、いいや。最初だし、ペッティング(耳)で!」
「俺は降りないぞ。コールだ」
「いいね! じゃ、オープン!」
 掛け声と共に、同時に額のカードを公開する。結果は、スペードが8、ギャリーが6。
「やった! 僕の勝ち!」
 スペードが、手を万歳して喜ぶ。
 ギャリーはそれに対して一切感情を見せず、淡々と互いのカードをテーブル中央に並べた。
「さ、ギャリー。負けたんだから、賭けた分のプレイ、受けて貰うよ?」
 耳元で囁く様にそんな声がしたかと思うと首にするりと細い腕が回される。
 その主は当然スペードだ。いつのまに背後に回っていたのか。
「……当たり前だ。賭けに負けたんだからな」
「いいね。それじゃ、始めようか……」
 耳元で、スペードがクスリと笑った。

♠♠♠♠♠♠

「肩に力入ってるよ……。もっとリラックスして……。大丈夫、10分もあるんだから……」
 吐息のような囁きが、耳を撫でる。それはゾクゾクとした快感となって、ギャリーの背中を走った。
「耳、結構弱いのかな? 10分も宣言しちゃったこと、後悔してたりして」
 柔らかく、冷たい感触が耳の縁を食んだ。スペードの唇だろう。ぷにぷにとした感触の奥からぬめった舌先が伸びてきて、まるで蛇が舌をチロチロと伸ばすように、耳の縁を微かに撫でる。
「ぐ……」
「今ちょっとピクッてなったね? 感じてるんだ」
 スペードの手が、するりと下腹部に伸びる。
「ほら、ここ見て? 服の上からでも分かるよ。すごく脈打って……」
「おい、プレイ内容は耳だけのはずだぞ」
 ギャリーの股座に伸びた白い腕が、ぴたりと動きを止めた。スペードの舌が、べろりと耳全体を舐める。
「……分かってるよ。ちょっと報告しただけ」
 スペードの手は、ギャリーの怒張をぎりぎり触らないようにして、それをすりすりと撫でるジェスチャーをする。
「でも、苦しそうだよ……? 案外、期待してるんじゃない? わざわざ僕の手札を見て、10分なんて指定したのも、そういうことを望んでたからだったりして」
「馬鹿なことを。俺は……ああああ!?」
 途端、耳の中にスペードの舌が侵入してきた。頭の中に響くぬちゃぬちゃという水音。息継ぎのための色っぽい吐息が、脳を揺さぶる。
「大丈夫だよ? したくなったら、いつでもフォールドしてくれて……。ちゃんと、最高の敗北をあげるから……」
 ここで、壁に掛けられた振り子時計がゴーンゴーンと音を鳴らした。
「ありゃ、もう10分経っちゃた。楽しい時間は早く過ぎるねー」
 先程までの淫靡な雰囲気はどこへ消えたのか、スペードはギャリーに首に回した両腕をするりと解くと、最初に部屋に入ってきたときと同じような快活な笑みと共に、跳ねるように自分の席に戻る。
「さ、ゲームの続きしよ? 引き続き、僕が親、ギャリーが子だよ!」
 そしてまた、屈託なくも人の心を見透かすような、満面の笑みを浮かべた。

♠♠♠♠♠♠

 2ゲーム目。
「じゃあいくよ……。インディアンポーカー!」
 合図とともに、互いのカードを額に掲げる。
(今度は……Jか)
 ギャリーはスペードの手札を確認し、顎に手を当て押し黙る。
「ふふ……今思ったんだけど、右手で額にカードを掲げて、左手を顎に当てるって、なかなか笑えるポーズだよね。真剣な表情ってのがまた……」
「今考えてるんだ。静かにしててくれ」
 スペードの投げかけをバッサリと切り捨て、ギャリーは真剣な顔で長考に入る。スペードも、鼻を一度ふんと鳴らして、腕を組み口を閉じた。
「……」
「……」
 ……時間だけが過ぎる。
「……」
「……」
「……」

「……ちょっと待った!」
 スペードが突然、跳ねるように椅子を立った。
「……なんだ?」
「ギャリー、キミ時間稼ぎしてるだろう!」
「時間稼ぎ? それはどういう……」
「この絶頂インディアンポーカーは、先に絶頂した方の負け! 当然、連続でプレイを受ければそれだけ絶頂に近づく! でも、責める側に回っている間は基本的にインターバル……自分の体を快感から休めることができる! ギャリー。キミ、長考の振りをして体を休めていないか!?」
 捲し立てるスペードを前に、ギャリーはいつものポーカー・フェイスを崩さない。
「おいおい誤解だ。別にそんなつもりはない。なんなら、今、時間を宣言しよう。10分だ」
「……っ!」
 一転しての即決。スペードの顔に動揺の色が浮かぶが、咳払いの後、ひとつ息を吐いて席に座り直す。
「……まあ、悪気が無かったなら、別にいいよ。でも、今後はこういう事の無いようにね」
「ああ、勿論。というか、ルールに追加した方がいいんじゃないか?」
「……それもそうだね。じゃあ、特殊ルールとして以下の通り追加しよう」

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※追記
【特殊ルール2:ベット】
互いのベット(@〜Bの手順)において、宣言に30秒以上の時間をかけることは遅延行為とし、それが認められた時点で宣言内容を対戦相手が決めてよいものとする。
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「まあ、妥当だろうな」
「よし、じゃあ互いの同意も得られたところで、ゲーム再開だ。僕はペッティング(乳首)を賭ける」
「コール」
「オープン!」
 互いの手札が提出される。スペードはJ。ギャリーは……3!
「よし! また僕の勝ち!」
 ぐっと拳を握るスペード。
「悪いねギャリー! 連敗はないと思ったのか、それとも焦ってつい口に出しちゃったのかは知らないけど、10分は悪手だよ! この状況、Jに勝てる札はQKA各4種の12枚、確率にして1/4以下! テキサスホールデムやルーレットじゃどうか知らないけど、インディアンポーカーでは分の悪すぎる賭けさ!」
 スペードの姿が、まるで二次元のビジョンが閉じるかのようにその場から消え去る。そして背後から、ギャリーの肩と脇にそっと手が回される。『魔物』となったスペードの、妙に股間に来るねっとりとした声が耳にかかる。
「それとも、また僕が欲しくなってつい口に出ちゃったのかな……? だとしたら嬉しいな。ふふふ、感じさせてあげるね……」

♠♠♠♠♠♠

「さ、もっと僕に体重預けて大丈夫だよ。そう、リラックスね、リラ〜ックス」
 ギャリーはスペードに促され、部屋の中央に配置された大きなベッドに連れられていた。
 ふかふかの布地に腰を下ろし、後ろからはスペードが抱きかかえる様にして体重を支えてくれている。自分より小柄な少女に支えられるというのも妙なものだが、スペードの力は成人男性よりも遥かに強いらしく、苦しい様子ひとつ見せる様子はない。
「それじゃ、服に手を入れるけど、冷たかったらゴメンね」
 上着の裾から細い腕が侵入してくる。
 まだ温まっていない、ひんやりとした人肌に、うっと喉から声が漏れる。
「ふふ、大丈夫。すぐに暖かくなるから……」
 指先で、周囲を確認するように、肌の上を這い上る両手。それはギャリーの胸板に到達し、乳首を掠める様にして動いた。そして、乳首自身には触れずに、円を描く様にしてその輪郭を弄ぶ。
「ふふ、ここかな? ここかな?」
 背後から、嬉しそうなスペードの声がする。
(くっ……)
 ギャリーは刺激から逃げようと、反射的に腰をずらした。すると、首元を柔らかな二つの感触が挟み込んだ。どう考えてもスペードの乳房だ。
「あれあれ? もしかして、こっちでもされたいの?」
 頬を紅潮させ、満面の笑みを浮かべるスペードが、頭の上から覗き込んできた。
「……別に。首を支えるのにちょうどいいかと思ったが、余計な刺激が増えちまった」
 スペードが、愉快そうにくつくつと笑う。
「今回は乳首だけだけど、もしおっぱいでもして欲しいなら、次のゲームこそフォールドしてね!」
 くっ、と乳首を左右から挟む力がかかった。
「ぐ……」
「声我慢しなくていいよー」
 くりくりと、ソフトな力で摘まみ、こねくり回される。
「じゃあ、ちょっと脱がせるね」
 そう言って、スペードはギャリーの服をぐっとたくし上げる。そのままギャリーの背後からするりと抜け出ると、悪戯っぽい笑みを浮かべ、その細くて白い指をぺろりと舐めた。
「いくよ……」
 次の瞬間、乳首から電流のような刺激が流れ込んでくる。
 唾液に濡れたスペードの指が、本丸たる乳頭を、ゆっくりと押しつぶしたのだ。くるくると回転する指先から逃げようと、乳頭がぬめりの中を滑る。
「まだまだだよ!」
 そう言って、スペードはギャリーの乳首に吸い付く。乳輪を甘噛みし、乳頭に下の先端を這わせ、頭ごと動かすようにして敏感なそれを刺激していく。
「ぐぐぅぅぅぅ〜〜〜〜!!」
 いよいよ、ギャリーの口から苦悶の声が漏れた。足をバタつかせようとするが、スペードの足が押さえつけるように上から絡まり付いていて、それさえままならない。
 目の中に、一瞬火花が飛んだ。

 ゴ〜ン、と振り子時計の鈍い音が響いた。
「ありゃ、もう10分か」
 またも一瞬で、淫靡な雰囲気が消え去る。
 スペードは首をもたげ、時計を確認する。すっとギャリーから体を離し、ぐったりとする彼の目の前で手を振る。
「お〜い、起きてる?」
「ああ、なんとかな……」
 ギャリーは、よろめきつつも身を起こし、ふうと大きく息を吐いた。
「危なかったねー。乳首弱いの? ズボンにガマン汁でシミできてるよ? ここで倒しきれなかったのは、手落ちだったなー」
 ケラケラと笑うスペードに、流石のギャリーも若干表情を崩しつつ、疲れた笑いを浮かべる。
「俺も一応男だからな。乳首だけでイかされたとあっちゃ、尊厳に関わるのさ」
「格好つけちゃって〜。その威勢が、次も続けばいいけどね!」
 そう言って、スペードはテーブルへと戻っていく。ギャリーもそれに続き、再度卓上に身を置くのであった。

♠♠♠♠♠♠

 3ゲーム目の準備が整う。
 互いに、配られた手札に手を掛ける。
「ふふふ、そろそろ辛そうじゃない? ギャリー・トランプマン」
 スペードは、内心の喜びを隠せずに、うきうきとした口調で目の前の男に問いかけた。
「……余計なお世話だ」
 相変わらず表情は鉄仮面そのものだが、紅潮した頬は明らかに性的な興奮が高まっていることを示している。そこで、スペードは彼に精神的な揺さぶりをかけてみることにした。
「ところで……キミは負けた時の処遇を聞いていないらしいね」
 ギャリーは反応を示さない。
「僕たちは聞いているよ。君を負かした者は、君の身柄を自由にしていいんだって」
「そうか……」
 一言だけ、反応を示す。
(やはり)
 心の中で、スペードはほくそ笑んだ。彼はこの部屋に入る前、「自分は負けない」などと豪語したらしいが、実際に負けが込んできて敗北を実感し始めているのだろう。もうひと押し、もうひと押しだ。
「ギャリー、僕に負けちゃいなよ」
 まるで子供がふざけてヒソヒソ話をするみたいに、耳元で彼に囁く。
「キミ、僕らに勝っても現実世界に戻されちゃうんだろ? ギスギスしてて、陰気臭くて、勝負に負けるとお金やら命やら大切なものを取られちゃう世界に。だったらさ、僕の元にいなよ。僕と、永遠にここで絶頂ポーカーで遊ぼう? キミのこと、大事にするよ?」
 これは本心だ。確かに彼は今、無様な二連敗を晒しているが、スペードの中の勝負師の勘が彼は強者であると告げていた。きっと、楽しい遊び相手になる。お互いに気持ちよくもなれるし、こんなに最高なことはない。
 が、ギャリーはそんなスペードの心を知ってか知らずか、彼女をぐいと押し返す。
「悪いが、俺はこんなポーカー以外にも、挑みたい勝負がたくさんある。それに、命を賭けたゲームってのも、悪くないもんだぜ?」
 ポーカーフェイスを崩し、にやりと不敵な笑みを浮かべるギャリー。
「ふーん……。そっか」
 スペードは、自分の心にメラメラと闘志の炎が宿るのを感じた。これが、自分の誘いを断られたことに対する怒りでないことはすぐに分かった。何故なら、目の前の男性が一層魅力的に見えてきたからだ。
(この男、いい根性してるよ……。同じ勝負師として、彼を完膚なきままに叩きのめしたい!)
「なら、やることは一つだね」
 互いに目を見てこくりと頷く。
「いくよ……インディンポーカー!」
 その宣言は、今までのどの宣言よりも重く強く。
 彼女の、スペードのプライドをかけた勝負が今、改めて幕を開けた。
17/01/15 06:40更新 / 万事休ス
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■作者メッセージ
お読みいただきありがとうございます。
万事休スです。
こういうゲームものって初めて書きましたが、意外と書いてる方はかなり楽しいです。
心がザワザワなってきます。
ただ、もし展開や描写などで分かり辛い点などがありましたら、ご指摘いただけるとありがたいです(修正するやもしれません)。

今回、各スートごとに計四つのゲームを考えましたが、実はこの「絶頂インディアンポーカー」が一番難産だった気がします。
正直、これけっこうエロゲームとして成立してる気がするんですが……。当方、年末という事で嫁のリャナンシーが実家に帰っておりますので、魔物嫁がいる方は是非プレイしてみて感想聞かせて下さい(ゲス顔)。

今後とも、よろしくお願いいたします。

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