彼女の体
ヘルゲは、気を失ったフリストを抱えて山を下りた。
山の周囲は平原で、近くに街がある。が、ヘルゲは敢えてそこには向かわず、もっと遠くの、森を目指した。
街に入らなかったのは、ヘルゲの今の格好がすこぶる悪いことと、背のフリストの外聞を思ってのことだ。
裸同然のヘルゲに、ヴァルキリーが抱えられて街に入ったなどと知られれば、どのような悪評が立たぬとも限らない。
刃を向けたとはいえ、やはりフリストに対しては敬意がある。師に悪評が立つのは、弟子として我慢ならない。
森に着いた頃には夜になっていた。ファーヴニルの住処を見聞した時に、森の泉の位置も調べていたので、迷うことなく辿り着く。
フリストを下ろし、べっとりと掻いた額の汗を拭う。泉の水を手で掬い、一息に飲み干すと、五体に力が蘇るように感じられた。
と同時に、ヘルゲの下腹部が膨らんできた。
(ファーヴニルが、あんなことを言うからだ・・・・・・)
フリストを見る。
ヴァルキリーの生命力の為せる業なのか、体のあちこちに付いた裂傷はもう塞がりかけている。腹に突き立てられた穂先は、運ぶ前に抜いたが、その際に見た傷はもう跡形もない。
傷が次々と治っていくのに対し、寝顔は苦しげで、時折うめき声まで漏れている。
これで表情までが平然としたものであったら、ヘルゲもさすがに、
「やはり俺たちとは違う生き物なのだ」
と思わざるを得ないが、そうではなかったために、対等の生き物として見ることが出来る。出来てしまう以上、ファーヴニルの話を聞いた後で、欲情を掻き立てられるのは仕様のないことであった。
ファーヴニルは言った。
「あの女は魔物になりかけている。どういう経緯で魔物の魔力に汚染されているのかは知らん。だが、その抵抗力は凄まじいものがある。無意識に、体が魔力に抗っているのだろう。
一年か、或いはもっと以前。下手をすれば地上に降り立った時より、空気に含まれる魔力に汚染されたのかもしれん。略歴を聞けばその詳細も判ろう。過去に魔物を討伐したことがあるのなら、その最後っ屁でも食らったか、瘴気に触れたのかもしれん。
ともかく、あれは魔物化を自身の抵抗力で抑えつけている状態だ。もしその状態で手籠めにして、女の悦楽を身に刻めば、一気に進むだろう。
生殖に対し、偏見と誤解、無知と嫌悪を抱いている奴らだ。一度嵌まれば泥沼になろう。まずは肉の悦びを刻め。機会は、気を失っている今しかないぞ」
要は、抵抗出来ない現状で、犯せ、ということである。
「・・・・・・」
ヘルゲは、生唾を飲み込んだ。
今からやろうとするのは、下司の所業である。
傷ついた女を、介抱するのではなく犯す。己の意のままに、欲を満たし、女を穢す。世にこれ以上、醜悪な罪があるだろうか。
人の自由意思を踏みにじり、尊厳を嘲う行為である。知恵を持って生まれ、その知恵で以て秩序を作り、それを遵守するという倫理観に従ってこそ、人間と言える。
だから、ヘルゲがこれからやろうとすることは、畜生の所業である。ヘルゲは己にそれを強く言い聞かせ、フリストに痛みを強いることだけは絶対にすまいと、固く誓った。
その反面、欲情がないではない。
というより、欲情が強いがために、己を強く律する必要がある。空腹の人間に食料を与えれば、満足するまで貪るように。果ては、その途中で邪魔をされたら、食い物を恵んでくれた者にさえ牙を剥きかねない。
原始的で動物的な欲求なのだ。食事も性交も。
それらは、理性というタガで抑えつけるしかない。そしてそれが出来てこそ、人間である。
ヘルゲは、そっとフリストの衣服に手を伸ばした。
鎧の残骸が痛々しい。音を立てぬよう、慎重に外す。鎧を外せば、腰布と一体になったアンダースーツだけになる。
それも、ファーヴニルの咆哮を受けて、繊維が裂けてしまっているところが夥しい。
傷は、先にも言った通りそのほとんどが治癒している。
柔らかな白い肌に浮かんだ汗と、その汗が放つ芳香が、ヘルゲの意識を一瞬奪うほど、艶めかしい。
「フリスト・・・・・・?」
蚊の鳴くような声で呼びかけながら、初めて、師の素肌に触れる。
柔らかい。
鍛えた筋肉の上を、うっすらと覆う脂肪と肌の柔らかさ。押せば程よい弾力を指先に与えてくる。
汗を掻いているため、指に吸い付いてくる。
フリストは、まだ目覚めない。
少し、ヘルゲは大胆になった。
アンダースーツの裂け目から指を入れ、指先でフリストの腹をなぞる。
上質な絹の上を滑るような、状況を忘れて楽しくなってしまう感触であった。
しばし、ヘルゲは状況を忘れて夢中になった。
初めて触れる女体であるというのに、己に強く律したためか、それとも相手があの恐ろしいフリストであるためか。男の劣情に支配され、強引に、ということにはならなかった。
腹をなぞり、臍をみつけ、その周りを無意味にくるくると指先で円を掻く。それに飽いたら次は脚。
(今まで触れるどころか、ほとんど見ることさえ叶わなかったが、これは、なんという・・・・・・)
脚を終え、腕。肩、首。
意識して避けた女性的な部位以外の全てを撫で終えて、ヘルゲはため息が出るほどそう思った。
理想的な体である。
瞬発力と持久力を紙一重のバランスで熱心に鍛えられ、それでいて女体の魅力を僅かなりとも損なうことのない肉体。正に黄金の女体と言うべきであろう。
(いや、それすらも超えている。白金の体だ)
勇者を目指す戦士として、この時ほどフリストに感動したことはない。勇者を教導する立場上、勇者より余程優れていなくてはならない。
ヘルゲは、フリストはやはり自分より上位の生き物なのだと、痛感した。
(そのフリストを、俺が今から―――――)
昏い欲望であった。上位の生き物をこれから己の意のままに穢すのだ。強く律した欲望が鎌首をもたげてくるのを感じた。
心なしか、フリストの体は上気している。
触れるか触れないかのフェザータッチで、神経の敏感な部位以外の全身を撫でられたのだ。無理もないことではある。
いよいよ、ヘルゲはフリストの胸に触れた。
ここまで来て、繊維の上から触るなどという控えめな真似は出来ない。アンダースーツの裂け目に指を掛け、乳房が露わになるまでゆっくり引き裂いた。
桃色の突起が、顔を出した。
(おお・・・・・・!)
感動する思いである。ここ一年のフリストへの鬱屈した怒りが、一瞬で晴れるような気分であった。
すぐさま突起には触れず、たわわに実った乳房に触れる。
下部を掌で多い、突起には触れぬよう、五指をゆっくりと付けていく。
ピアノを弾くように指を遊ばせると、筋肉がない分、純粋な肌の張りと脂肪の柔らかさが伝わってくる。欲情すら忘れて、癒される心地になる。それほど甘美な感触だった。
「こ、これは、なんと・・・・・・」
手つきは優しい。
フリストが起きればすぐさま殺されてしまうという現実的な危機感もあったが、このおそらく二度とは訪れぬであろう瞬間を、少しでも長く味わっていたい。
そういう思いと、師を慕う気持ちが、ヘルゲの手つきを穏やかなものにさせた。
指を少し深く食い込ませると、それに応じて乳房が形を変える。
上気した肌と、僅かに身を湿らせる汗。それが呼ぶ芳香。
フリストの意識は未だ彼岸にあるが、此岸の体はヘルゲを誘っている。
指を吸い付いて離さないこの乳房が、良い証拠ではないか。
粘土細工で遊ぶ子供のように、ヘルゲは無邪気に乳房を弄ぶが、ふと、指に先端の突起が触れた。
「ん・・・・・・!」
フリストが、声を挙げた。
「っ!」
目を覚ましたと思い、びくりと体を震わせるが、手は甘美な感触に縫い付けられて離せない。
もしこの姿を見られたら、言い訳のしようもないが、幸い目覚めてはいない。夢寐に迷いながら、体の反応に驚いただけであろう。
「・・・・・・」
安心するや、ヘルゲは不意に触れた突起に意識を縛られた。
度重なる刺激で、フリストの桜色の突起は屹立している。今まで女体のありのままの姿を目にしたことのないヘルゲであるが、フリストのそれが、平均より大きいことは判った。
軽く指先で触れただけであの反応である。敏感なのも間違いはない。
そう思うと、俄かに欲情が昂った。
(あの高慢な顔の裏に、あの分厚い鎧の下に、このようなものを隠していたとは・・・・・・)
ヘルゲの脳裏に浮かぶ、フリストのこれまでの仕草。
焚火を背にして野盗相手に勇壮なる戦い様を見せた時。
ヘルゲの覚えが悪く、呆れながら叱った時。
自尊心を傷つけられ、真っ赤になってヘルゲを打擲した時。
あの空色の鎧の下に、こんなにも卑猥な突起を覆い隠していたというのか。
(これは、フリストの恥部に違いない)
そう思えば、可愛くもある。
この程度、充分人並みと言える。確かに比べてしまえば目立つだろうが、フリストの美しさを損なう要因には決して成り得ない。
しかし、気高いフリストである。自身にも厳しく、他人の侮りを許せないあの性格なら、余人より少し発達した乳頭にコンプレックスを抱いている可能性は高い。
(こんなことが、劣等感なのか)
思い込みに近い、一方的な所見でそう決めると、急にフリストが愛しくなる。
男の生態は単純なものだ。欲情を正当化させる、心の防衛機能の働きもないではないが、恐れと畏れしか抱いたことのない師の僅かな恥部が、愛情を芽生えさせた。
その愛しさを自覚してしまうと、ごく自然に、乳頭に吸い付いた。
乳輪を覆うように唇を埋め、徐々に吸って狭めていく。決して乳首のみを吸わない。こうすれば徐々に刺激が体に浸透して、不意に目覚める危険性が少なくなる。
上下の唇が乳首に触れだした時、舌を動かす。
飴を舐めるような舌触りである。舐め上げれば、抵抗があるほど硬くなっていた。
(妙なものだ。女を愛する時も、子が母を求める時も、やることは変わらない)
舌の心地の良い感触に任せて舐め上げると、不快そうでないフリストの声が漏れる。唇で吸ってやっても同じである。
片方を熱心に愛撫すると、もう片方も同じだけ愛してやった。
やがて口を離した時には、両の乳房はヘルゲの唾液でべとべとに汚れていた。
(無邪気な・・・・・・)
と、ヘルゲはフリストの寝顔に思う。
僅かに紅潮した頬を除けば、穏やかな寝顔である。鎧と服を剥ぎ取られ、乳房を思うまま弄ばれた無惨な肢体との対比が、凌辱者の欲情を煽る。
が、この時ヘルゲは気づくべきであった。
フリストの寝顔が穏やかなのは、既に体が傷の修復を完全に終えているということだ。ならば脳震盪からの回復ももうじき行われる筈であり、とすれば、目覚めるのは遠い話ではない。
ヘルゲはそんなことには気づかず、いよいよ下腹部に手を伸ばし始めた。普段の臆病者のヘルゲなら、おそらく気づいただろう。
欲情が、ヘルゲを知者から獣にした。
また、邪魔なアンダースーツを、今度は幾分乱暴な手つきで破り、露わになった股間を探る。
柔らかな陰毛が、まず指先に触れる。恥部に触れぬまでも、この感触が思いの外楽しい。
が、やはり獣になってしまった以上、目的は性器である。
すぐに指を滑り込ませて、足の間に侵入する。
すぐさま感じたのは、その滑りの良さであった。
(フリストの体が、俺を迎えている・・・・・・!)
既にフリストの恥部は、濡れそぼっていた。
分泌された愛液が膣口を越え、尻に向けて一筋垂れている。陰唇が血液を含んで膨張し、陰核が僅かな屹立を見せている。
男を迎える女の反応であった。
喜びと共にそれを感じ取ったヘルゲは、我を忘れてそこに触れた。
手つきの優しさは既に獣欲に紛れて失せている。乱暴なまでに熱い仕草で、フリストのそこを愛撫する。
肉びらの開いた小陰唇を抜け、膣口に指を滑り込ませる。ぴっちりと閉じた肉襞が、初めての男の侵入を阻む。
その抵抗と、火傷しそうな程に熱くなった感触が、またもヘルゲを昂らせる。
と、その時である。
「ヘ、ヘルゲ・・・・・・?」
夢寐より這い出たフリストが、定まらぬ瞳でヘルゲを見ていた。
山の周囲は平原で、近くに街がある。が、ヘルゲは敢えてそこには向かわず、もっと遠くの、森を目指した。
街に入らなかったのは、ヘルゲの今の格好がすこぶる悪いことと、背のフリストの外聞を思ってのことだ。
裸同然のヘルゲに、ヴァルキリーが抱えられて街に入ったなどと知られれば、どのような悪評が立たぬとも限らない。
刃を向けたとはいえ、やはりフリストに対しては敬意がある。師に悪評が立つのは、弟子として我慢ならない。
森に着いた頃には夜になっていた。ファーヴニルの住処を見聞した時に、森の泉の位置も調べていたので、迷うことなく辿り着く。
フリストを下ろし、べっとりと掻いた額の汗を拭う。泉の水を手で掬い、一息に飲み干すと、五体に力が蘇るように感じられた。
と同時に、ヘルゲの下腹部が膨らんできた。
(ファーヴニルが、あんなことを言うからだ・・・・・・)
フリストを見る。
ヴァルキリーの生命力の為せる業なのか、体のあちこちに付いた裂傷はもう塞がりかけている。腹に突き立てられた穂先は、運ぶ前に抜いたが、その際に見た傷はもう跡形もない。
傷が次々と治っていくのに対し、寝顔は苦しげで、時折うめき声まで漏れている。
これで表情までが平然としたものであったら、ヘルゲもさすがに、
「やはり俺たちとは違う生き物なのだ」
と思わざるを得ないが、そうではなかったために、対等の生き物として見ることが出来る。出来てしまう以上、ファーヴニルの話を聞いた後で、欲情を掻き立てられるのは仕様のないことであった。
ファーヴニルは言った。
「あの女は魔物になりかけている。どういう経緯で魔物の魔力に汚染されているのかは知らん。だが、その抵抗力は凄まじいものがある。無意識に、体が魔力に抗っているのだろう。
一年か、或いはもっと以前。下手をすれば地上に降り立った時より、空気に含まれる魔力に汚染されたのかもしれん。略歴を聞けばその詳細も判ろう。過去に魔物を討伐したことがあるのなら、その最後っ屁でも食らったか、瘴気に触れたのかもしれん。
ともかく、あれは魔物化を自身の抵抗力で抑えつけている状態だ。もしその状態で手籠めにして、女の悦楽を身に刻めば、一気に進むだろう。
生殖に対し、偏見と誤解、無知と嫌悪を抱いている奴らだ。一度嵌まれば泥沼になろう。まずは肉の悦びを刻め。機会は、気を失っている今しかないぞ」
要は、抵抗出来ない現状で、犯せ、ということである。
「・・・・・・」
ヘルゲは、生唾を飲み込んだ。
今からやろうとするのは、下司の所業である。
傷ついた女を、介抱するのではなく犯す。己の意のままに、欲を満たし、女を穢す。世にこれ以上、醜悪な罪があるだろうか。
人の自由意思を踏みにじり、尊厳を嘲う行為である。知恵を持って生まれ、その知恵で以て秩序を作り、それを遵守するという倫理観に従ってこそ、人間と言える。
だから、ヘルゲがこれからやろうとすることは、畜生の所業である。ヘルゲは己にそれを強く言い聞かせ、フリストに痛みを強いることだけは絶対にすまいと、固く誓った。
その反面、欲情がないではない。
というより、欲情が強いがために、己を強く律する必要がある。空腹の人間に食料を与えれば、満足するまで貪るように。果ては、その途中で邪魔をされたら、食い物を恵んでくれた者にさえ牙を剥きかねない。
原始的で動物的な欲求なのだ。食事も性交も。
それらは、理性というタガで抑えつけるしかない。そしてそれが出来てこそ、人間である。
ヘルゲは、そっとフリストの衣服に手を伸ばした。
鎧の残骸が痛々しい。音を立てぬよう、慎重に外す。鎧を外せば、腰布と一体になったアンダースーツだけになる。
それも、ファーヴニルの咆哮を受けて、繊維が裂けてしまっているところが夥しい。
傷は、先にも言った通りそのほとんどが治癒している。
柔らかな白い肌に浮かんだ汗と、その汗が放つ芳香が、ヘルゲの意識を一瞬奪うほど、艶めかしい。
「フリスト・・・・・・?」
蚊の鳴くような声で呼びかけながら、初めて、師の素肌に触れる。
柔らかい。
鍛えた筋肉の上を、うっすらと覆う脂肪と肌の柔らかさ。押せば程よい弾力を指先に与えてくる。
汗を掻いているため、指に吸い付いてくる。
フリストは、まだ目覚めない。
少し、ヘルゲは大胆になった。
アンダースーツの裂け目から指を入れ、指先でフリストの腹をなぞる。
上質な絹の上を滑るような、状況を忘れて楽しくなってしまう感触であった。
しばし、ヘルゲは状況を忘れて夢中になった。
初めて触れる女体であるというのに、己に強く律したためか、それとも相手があの恐ろしいフリストであるためか。男の劣情に支配され、強引に、ということにはならなかった。
腹をなぞり、臍をみつけ、その周りを無意味にくるくると指先で円を掻く。それに飽いたら次は脚。
(今まで触れるどころか、ほとんど見ることさえ叶わなかったが、これは、なんという・・・・・・)
脚を終え、腕。肩、首。
意識して避けた女性的な部位以外の全てを撫で終えて、ヘルゲはため息が出るほどそう思った。
理想的な体である。
瞬発力と持久力を紙一重のバランスで熱心に鍛えられ、それでいて女体の魅力を僅かなりとも損なうことのない肉体。正に黄金の女体と言うべきであろう。
(いや、それすらも超えている。白金の体だ)
勇者を目指す戦士として、この時ほどフリストに感動したことはない。勇者を教導する立場上、勇者より余程優れていなくてはならない。
ヘルゲは、フリストはやはり自分より上位の生き物なのだと、痛感した。
(そのフリストを、俺が今から―――――)
昏い欲望であった。上位の生き物をこれから己の意のままに穢すのだ。強く律した欲望が鎌首をもたげてくるのを感じた。
心なしか、フリストの体は上気している。
触れるか触れないかのフェザータッチで、神経の敏感な部位以外の全身を撫でられたのだ。無理もないことではある。
いよいよ、ヘルゲはフリストの胸に触れた。
ここまで来て、繊維の上から触るなどという控えめな真似は出来ない。アンダースーツの裂け目に指を掛け、乳房が露わになるまでゆっくり引き裂いた。
桃色の突起が、顔を出した。
(おお・・・・・・!)
感動する思いである。ここ一年のフリストへの鬱屈した怒りが、一瞬で晴れるような気分であった。
すぐさま突起には触れず、たわわに実った乳房に触れる。
下部を掌で多い、突起には触れぬよう、五指をゆっくりと付けていく。
ピアノを弾くように指を遊ばせると、筋肉がない分、純粋な肌の張りと脂肪の柔らかさが伝わってくる。欲情すら忘れて、癒される心地になる。それほど甘美な感触だった。
「こ、これは、なんと・・・・・・」
手つきは優しい。
フリストが起きればすぐさま殺されてしまうという現実的な危機感もあったが、このおそらく二度とは訪れぬであろう瞬間を、少しでも長く味わっていたい。
そういう思いと、師を慕う気持ちが、ヘルゲの手つきを穏やかなものにさせた。
指を少し深く食い込ませると、それに応じて乳房が形を変える。
上気した肌と、僅かに身を湿らせる汗。それが呼ぶ芳香。
フリストの意識は未だ彼岸にあるが、此岸の体はヘルゲを誘っている。
指を吸い付いて離さないこの乳房が、良い証拠ではないか。
粘土細工で遊ぶ子供のように、ヘルゲは無邪気に乳房を弄ぶが、ふと、指に先端の突起が触れた。
「ん・・・・・・!」
フリストが、声を挙げた。
「っ!」
目を覚ましたと思い、びくりと体を震わせるが、手は甘美な感触に縫い付けられて離せない。
もしこの姿を見られたら、言い訳のしようもないが、幸い目覚めてはいない。夢寐に迷いながら、体の反応に驚いただけであろう。
「・・・・・・」
安心するや、ヘルゲは不意に触れた突起に意識を縛られた。
度重なる刺激で、フリストの桜色の突起は屹立している。今まで女体のありのままの姿を目にしたことのないヘルゲであるが、フリストのそれが、平均より大きいことは判った。
軽く指先で触れただけであの反応である。敏感なのも間違いはない。
そう思うと、俄かに欲情が昂った。
(あの高慢な顔の裏に、あの分厚い鎧の下に、このようなものを隠していたとは・・・・・・)
ヘルゲの脳裏に浮かぶ、フリストのこれまでの仕草。
焚火を背にして野盗相手に勇壮なる戦い様を見せた時。
ヘルゲの覚えが悪く、呆れながら叱った時。
自尊心を傷つけられ、真っ赤になってヘルゲを打擲した時。
あの空色の鎧の下に、こんなにも卑猥な突起を覆い隠していたというのか。
(これは、フリストの恥部に違いない)
そう思えば、可愛くもある。
この程度、充分人並みと言える。確かに比べてしまえば目立つだろうが、フリストの美しさを損なう要因には決して成り得ない。
しかし、気高いフリストである。自身にも厳しく、他人の侮りを許せないあの性格なら、余人より少し発達した乳頭にコンプレックスを抱いている可能性は高い。
(こんなことが、劣等感なのか)
思い込みに近い、一方的な所見でそう決めると、急にフリストが愛しくなる。
男の生態は単純なものだ。欲情を正当化させる、心の防衛機能の働きもないではないが、恐れと畏れしか抱いたことのない師の僅かな恥部が、愛情を芽生えさせた。
その愛しさを自覚してしまうと、ごく自然に、乳頭に吸い付いた。
乳輪を覆うように唇を埋め、徐々に吸って狭めていく。決して乳首のみを吸わない。こうすれば徐々に刺激が体に浸透して、不意に目覚める危険性が少なくなる。
上下の唇が乳首に触れだした時、舌を動かす。
飴を舐めるような舌触りである。舐め上げれば、抵抗があるほど硬くなっていた。
(妙なものだ。女を愛する時も、子が母を求める時も、やることは変わらない)
舌の心地の良い感触に任せて舐め上げると、不快そうでないフリストの声が漏れる。唇で吸ってやっても同じである。
片方を熱心に愛撫すると、もう片方も同じだけ愛してやった。
やがて口を離した時には、両の乳房はヘルゲの唾液でべとべとに汚れていた。
(無邪気な・・・・・・)
と、ヘルゲはフリストの寝顔に思う。
僅かに紅潮した頬を除けば、穏やかな寝顔である。鎧と服を剥ぎ取られ、乳房を思うまま弄ばれた無惨な肢体との対比が、凌辱者の欲情を煽る。
が、この時ヘルゲは気づくべきであった。
フリストの寝顔が穏やかなのは、既に体が傷の修復を完全に終えているということだ。ならば脳震盪からの回復ももうじき行われる筈であり、とすれば、目覚めるのは遠い話ではない。
ヘルゲはそんなことには気づかず、いよいよ下腹部に手を伸ばし始めた。普段の臆病者のヘルゲなら、おそらく気づいただろう。
欲情が、ヘルゲを知者から獣にした。
また、邪魔なアンダースーツを、今度は幾分乱暴な手つきで破り、露わになった股間を探る。
柔らかな陰毛が、まず指先に触れる。恥部に触れぬまでも、この感触が思いの外楽しい。
が、やはり獣になってしまった以上、目的は性器である。
すぐに指を滑り込ませて、足の間に侵入する。
すぐさま感じたのは、その滑りの良さであった。
(フリストの体が、俺を迎えている・・・・・・!)
既にフリストの恥部は、濡れそぼっていた。
分泌された愛液が膣口を越え、尻に向けて一筋垂れている。陰唇が血液を含んで膨張し、陰核が僅かな屹立を見せている。
男を迎える女の反応であった。
喜びと共にそれを感じ取ったヘルゲは、我を忘れてそこに触れた。
手つきの優しさは既に獣欲に紛れて失せている。乱暴なまでに熱い仕草で、フリストのそこを愛撫する。
肉びらの開いた小陰唇を抜け、膣口に指を滑り込ませる。ぴっちりと閉じた肉襞が、初めての男の侵入を阻む。
その抵抗と、火傷しそうな程に熱くなった感触が、またもヘルゲを昂らせる。
と、その時である。
「ヘ、ヘルゲ・・・・・・?」
夢寐より這い出たフリストが、定まらぬ瞳でヘルゲを見ていた。
16/08/22 12:00更新 / 一
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