連載小説
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前編

 「すすむーすすむーばしゃはすすむよー♪」

 あたしが作ったオリジナルのうたを歌いながら、いつもの森を進む。
 右手にはいつものこんぼうと左手には小さな枝。その枝で木をてちてち叩いてはおさんぽを楽しんでいた。何も考えずに気ままで楽しく。それがあたしのいつものおさんぽ。
 今日もいい天気でぽかぽか。それだけであたしは楽しくなってきちゃう。団員のみんなはいまごろお昼寝してるはず。みんなといっしょにいたずらするのは楽しいし、道を通りかかったしょうにんさんをみんなで囲んでからこんぼうでなぐっちゃうぞーって言えば食べ物とかぜんぶおいていってにげちゃう。いつもあたしの持ってるこんぼうを見てすたこらさっさ。なんでだろ?でもおいしい食べ物が食べられるからいいや。
 
 「のをこえーやまこえー♪ いつまでもばしゃはすすむよー♪」

 じつは、お昼のおさんぽはみんなにはないしょなの。みんなでどこかへおでかけするのも楽しいけれど、こうやって歌いながらきままにおさんぽするのも楽しいの。おいしそうな木の実があったらぴょんってとんで食べたり。
 
 「んゅ?」

 きいろのちょうちょさんがあたしの前を通っていった。
 どこにいくんだろう?
 気になっちゃったからちょうちょさんの後をおいかけてみよう。

 「ちょうちょさんどこいくのー?」

 あたしの声もなんのその。きいろのちょうちょさんはぱたぱた飛びながらじゅうおうむじん(むずかしいことばも知ってるんだよっ)に飛びまわる。
 
 「まって〜」

 来たことないばしょまで来ちゃったことも気づかないであたしはちょうちょさんの後をおいかける。
 ずっとおいかけっこしていたら、ちょうちょさんはつかれちゃったみたい。大きな木から出てるちゃいろのもじゃもじゃに止まった。

 「んー?」

 なんだろうこのもじゃもじゃ。
 あたしも近づいてみると、そこにはにんげんさんがいた。
 でもにんげんさんはにげない。
 よーく見たら、にんげんさんはねちゃってるみたい。きもちよさそうな顔でねてる。
 こんなにあったかいおひさまがあるんだもん。ねむたくなっちゃうのもしょうがないよね。
 あたしもにんげんさんのとなりにすわってみた。ちょうどあたしとにんげんさんで並べるくらいの太さの木だったからなんだかうれしい。あたしにおいかけられてたちょうちょさんもねむたくなっちゃったのかな?あたしが近づいてもにげない。
 
 「ふぁぁぁ……」

 にんげんさんのとなりにいたらなんだかあたしもねむくなってきちゃった。

 「えへへ……ぴとっ」

 にんげんさんのうでにぎゅってして、あたしもねることにした。
 おやすみなさーい。



 ……やべ、寝ちまった。
 昼食休憩に入って、日向の当たる丁度いい大木があったもんだからそこに腰掛けて飯を食って、それから日向ぼっこしていたらこの有様だ。まぁ誰にも怒られることはないだろうが。
 しがないただの薬剤師な俺はこうして一人、薬草になるものや木の実を求めて近くの森へとやってきた、というわけである。小さな村でひっそりとやらさせてもらっているからさほど忙しくはない。それになりたいからなっただけで、試験だとかそういうのは全く受けていない。無免許薬剤師である。
 それでも需要はあるらしく、それなりに村の人々にはご好評を頂いている。周りにはじいさんばあさんぐらいしかいないから作るもんはいつも同じだから楽な仕事ではある。
 今日も今日とて腰痛などの痛みに効く薬草を採りに来たのだ。うむ。我ながら見事な説明文だ。

 「……ぁふ」

 なんというか、この暖かな日差しは罪だ。いい具合に腹が満たされてこの日差しのコンボは寝ろという天啓と受け取らざるを得ない。太陽を見上げればまだそれほど時間は経過していないようだ。寝惚け眼でぼさぼさの頭を掻くと、突然黄色の蝶が目の前にやってきた。

 「んん?」

 上から?
 もしかして俺の髪に止まっていたのか?

 「おう、驚かせて悪いね」

 気にするなとでも言うかのように蝶は俺の前で円を描くように飛び、そのまま何処かへ行ってしまった。
 なんともまったりな午後だ。じいさんばあさんののんびり症がうつっちまったかな。

 「…………?」

 ここでやっと、俺の左腕に違和感がある事に気がついた。それはまるで日向のように温かく、パンの生地のように柔らかい。
 その正体を確かめると、そこには……。

 「すぅ……すぅ……」
 「…………」

 ゴブリンだ。
 頭の角、そして横においてあるでかい棍棒。
 間違いなくゴブリンだ。
 そのゴブリンがメロンのような豊満すぎるおっぱいを俺の腕に押し付けているように抱きついて寝ている。
 ん?
 このゴブリン、他のゴブリンと決定的に違う何かがある。

 「……おっぱい」

 そうだ、それだ。今まで見た事のあるゴブリンはどれもひん……慎ましいおっぱいだったのに、俺の隣に居るゴブリンはまさにダイナマイト。ボンッキュッキュッ。
 思わずその魅力的なおっぱいに目を奪われそうになったが、現状はよくないのだ。まず、魔物娘に捕らわれている。しかもゴブリンは怪力だ。試しに腕を引っこ抜こうとしても、

 「ぐ……ぐっ、ビクともしねぇ」

 本人は幸せそうによだれを垂らしながら眠っているのに、抱きついた腕にはがっちり固定。おかげで動けない。
 強引な手で脱出するのは不可能だ。参った。
 となると……。

 「おーい、起きろー」

 このゴブリンを起こして、解放してもらうしか他にない。とても幸せそうに眠っているゴブリンの表情を崩してしまうのは心が痛むが、ここは心を鬼にしなくてはいけない。
 単純に起こすだけではいけない。ゴブリンは気に入った相手を夫にしようとする。もしかすると俺はそれに選ばれているかもしれないのだ。そこをどうやって諦めさせるかが重要だった。

 「んゅぅ……」
 「起きてくれー」

 ぷにっとしたほっぺをつついてみれば、だんだんゴブリンの目が開いていく。もうそろそろだ。

 「おーきーろー」
 「んに……。あ、おはようございまふ〜」

 にへ〜と笑うおっぱいの大きなゴブリン。
 ずる賢いイメージとは全く違う。思わず彼女の空気に飲まれそうになるが我慢。

 「あのー……」
 「はいー?」
 「えっと、はじめまして」

 ってそうじゃねぇだろう馬鹿がぁぁぁぁぁっ!!
 ……いや、挨拶は重要だ。初めて会った同士なんだからきちんと挨拶はすべきだよな。うん。我ながら苦しい言い訳だ。

 「はじめましてぇー♪」

 とってもいい笑顔で答えてもらえました。

 「その、ゴブリンさん―――」

 その手を離してくださいと言おうとした瞬間、ゴブリンがぷくーっと頬を膨らませた。

 「ちがいますぅー。あたしはぁー、ホブゴブリンってしゅぞくなんですぅ」
 「ホブゴブリン?」
 「あたしのような、おっぱいおっきいゴブリンのことみたいですぅー」

 へ、へぇ……。初めて知った。
 果たしてその知識はこの先必要になるかどうかだが。

 「改めて……。ホブゴブリンさん―――」

 その手を離してくださいと言おうとした瞬間、またホブゴブリンがぷくーっと頬を膨らませた。

 「そうですけどぉ。あたしはメルって名前があるんですぅ」
 「……そうですか」

 一向に進まない。だがここで怒鳴り散らしてはいけない。相手の機嫌を損ねれば俺の命が危ない。
 きっと。

 「メルさん……あのですね?」
 「にんげんさんのおなまえはなんですかー?」

 だああああああああっ!だから進めさせろよもおおおおおおおおっ!!

 「あ、僕はシルドです」

 至って紳士的に返事をした。礼儀には礼儀で返さなくてはいけないと祖母から教えられている。自分から自己紹介しなかったのは減点対象になってしまいかねないが、相手は魔物娘である。その辺勘弁して欲しい。

 「しるどさん」
 「そうです。で、ですね。メルさん」
 「はいー?」
 「僕の腕を離して頂けないでしょうか?」

 ホブゴブリンのメルさんはにへーと笑った。

 「やだー」

 やっと話を進められたと思ったらたったの三文字で終了した。
 しかもさっきよりもより強く抱きついている。同時におっぱいの形も変わり、感覚的にも視覚的にも色々と危ない感じになっている。ホブゴブリンのダイナマイトおっぱいで俺の股間がヤバイ。

 「いや、離していただかないとですね……」
 「やぁー。だってきもちいいんですもん」

 さらにおっぱいを押し付けられる。
 正直に言おう。ナイスおっぱい。

 「僕もメルさんのおっぱいが気持ちいい―――ゴホン。これから帰って薬を作らないとダメなんですよ」
 「おくすり?」
 「そうです。僕の住んでいる村にはご老人が多く、腰痛や膝が痛くなりがちなんです。それに利く薬を作らなければいけないんです」
 「あらまー」
 「わかっていただけました?」
 「でもいやですぅ」

 …………。
 真摯な態度をやめようと思った瞬間であった。

 「だーかーら!村のじいさんばあさんに薬作ってやらないと困るんだって!」
 「たいへんですねぇ」

 他人事だ。ものすっごく他人事だ。俺と彼女の温度差が余りにも違いすぎる。何を話してもほんわかムードを崩す事無く笑いながら喋る。なんかやっかいな子供に懐かれた気分だ。一部が大人だが。

 「俺は帰りたいんだよ!だからさ、離してくれよ」
 「やぁーです」
 「この、離してくれ、ぐぬ、ぐぬぅぅっ」
 「ぎゅぅぅー」

 恐るべき怪力に俺の腕は一向に抜ける気配がない。のんびりな顔しておいて力が俺よりも遥かに強いってどういう事だよ。
 ……と、ここで名案が俺の脳に降り立った。これはかなり大きなリスクを伴うだろう。しかし俺にはそれに縋るしかなかった。

 「…………わかった。離せとはもう言わない」
 「わーい」
 「そのまま抱きついていて構わんから、俺と一緒に村に来い!」
 「ほぇ?」

 もはや村の評判など知った事ではない。幸い村のご老人たちは魔物嫌いではない。しかも息子の結婚相手が魔物だった、なんて話も聞くくらいだ。ホブゴブリンが突然村に来たって驚きはしないだろう。多分。
 それに彼女も、ずっと抱きついていたら飽きるだろう。それまでの辛抱だ。

 「それってぇ……」

 急にメルの顔が紅くなっていく。

 「ぷろぽーず、ですかぁ?」
 「………………ゑ?」

 いや、俺はただ単に家に帰って採った薬草を煎じて薬にしようと思っただけで、君が一向に離してくれないからじゃあそのままでもいいから…………。

 「あれ?」

 俺はさっき何と言った?
 俺と一緒に村に来い。
 それは聞きようによっては、プロポーズに聞こえるのではないか?

 「シルド、さん……♪」

 メルはもうその気満々である。出会ってほんの十分程しか経っていないのに、まるで十年の歳月を経て結婚するかのような幸せな表情だった。

 「…………あれ?」

 どうしてこうなった。



 えへへ。
 きょうのあたしはとってもきげんがいいの。
 だってね、だってね?
 にんげんさんからぷろぽーずされちゃったんだもんっ♪
 あ、これからふうふになるんだからにんげんさんなんて言っちゃいけないよね。
 きょうからあたしのだんなさまになるシルドさん。
 これがあのあおいドラゴンさんの言っていたすてきなひとなんだよね。
 シルドさんとおひるねするのはきもちよかったし、それにおっきなうでをぎゅってしたらあたしのむねがきゅんってなっちゃうの。
 だから、あたしはシルドさんのおよめさんになりたいの。




 所変わり、シルドとメルからは離れた場所にて。

 「聞いたか?」
 「聞いた。メルだんちょー、あの人間と結婚するんだな!」
 「だんちょおぉぉ……あたい、あたい嬉しいよぉぉぉ……えぐっぐすっ」
 「そうだな、あのドラゴンに言われたとおりだんちょーにぴったりな人間が見つかってよかった!」
 「じゃあボクたちは……?」
 「静かに見守ってやるのさ。だんちょーの、新しい門出を……っ」
 「う゛あぁぁぁぁぁあん……」
 「泣くなよ……アタイまで泣いちまう……だろぉ……っ」
 「だんちょぉぉぉ……」
 「お幸せに゛ぃぃぃ……」

 人知れず、ホブゴブリンの部下であったゴブリン達は大声をあげて泣きじゃくるのだった。



 俺はただ、薬草を採りに行っただけなんだ。それなのにちょっと昼寝しただけで何故こんな荷物が増えたのだ……。
 あぁ、どうしよう。
 結局メルは俺の腕を離す事無く村に着いてしまった。何て言われるだろう……。
 村の出入り口となっている門をくぐると、早速ご老人に発見された。

 「おーシルド君おかえり、って……そこの娘は?」
 「あぁどうも…………これは深い事情がありまして」
 「つまのメルですー♪」
 「コルァァァァ!余計な事を言うンじゃねーッ!」
 「そうかそうかー、ついにシルド君もこんな可愛い女子を娶ったかぁ」
 「こ、これは違うんですッ!そうじゃなくッ!」

 身振り手振りで必死に伝えようとするが、めでたいめでたいと言いご老人は、

 「おーいみんなー!シルド君が奥さんを連れて帰ってきたぞーい」
 「ちょッ!?」

 ……気がつけば、村中のご老人たちが俺たちを囲んでいた。

 「あらあらまぁまぁ。こんな可愛いゴブリンちゃんがシルドくんのお嫁さんだなんてねぇ」
 「えへへー♪」

 いつも腰痛でお悩みのセーラさんが、俺でも見た事がない笑顔で言った。

 「いやあのですからね、セーラさん」
 「若いのに色恋に疎いから心配じゃったが、これでこの老いぼれも安心して逝けるのぅ」
 「えへへへー♪」

 元気に夫婦仲良く暮らしているグレイさんが冗談を言って高笑い。

 「滅多な事言うもんじゃないですよグレイさん。あとこの子は」
 「つまですぅー♪」
 「だあああああッ!!ややこしくなるから喋るなぁァアッ!!」
 「おやおや照れ隠しかい?可愛いとこあるんだねぇシルド君」
 「…………アハハ、アハハハハ」

 もうやだ。



 シルドさんといっしょに村に来たら、たくさんのおじいさんとおばあさんにおいわいされちゃった。
 あたしもなんだかうれしくなっちゃって、だんなさまをついじまんしちゃった。
 シルドさんったらおかおをまっかにしちゃってはずかしがってて、かわいー♪
 だからもっとうでをぎゅってするの。
 なんだかしあわせ。
 うれしいとあったかいがたくさんで。
 これからそれがもっとふえるのかなって思うと、あたしはこのひとに会えてよかったな、なんて。
 あたし、シルドさんのためにがんばる。



 ご満悦なご老人方質問責めを越え、心身ともにくたくたになった。もう薬草とかどうでもいいから寝たい。俺の家へ帰る足取りは少し重かった。
 ここまで疲れさせた原因となったホブゴブリンはまるで噛み付いたら離さないスッポンのように、未だ俺の腕を抱いている。

 「みんなにおめでとーって言われたねー♪」
 「ソウダネ」

 もはや突っ込む気力すら残されていない。
 全ての原因はこのホブゴブリン娘、とも思ったがさらに元を辿ればあそこで俺が昼寝していたのが悪い。この村の周辺で凶暴な魔物は見かけないが、それでもあそこで眠ってしまったのは人生最大の失敗と言っていい。気がつけば左腕におまけがついてきた。

 「…………」
 「んぅ?」

 しかしまぁ、なんというか。
 これほどまでに気の抜けた魔物も居るものだな。なんにも考えていなくて、ただ楽しそうにしているだけに見える。凶暴な性格だったら即犯されていただろう。アラクネだったら糸に拘束されレイプ。ラミアだったら全身に巻きつかれレイプ。グリズリーだったら羽交い絞めにされてレイプ。
 なんだこの世界。
 だがこのホブゴブリン、メルは俺の腕に抱きついて眠っていただけ。いつの間にか服に着いていた産毛みたいなのがすっげぇある、ゴマよりちょっとでかいアレのように俺の腕から離れてくれないが。現在進行形で。
 それでも俺を押し倒して、羞恥なんてなんのそのな行動に移らないというのも珍しいものだ。世の魔物たちはみんなそうだと思っていたのだが、俺の知っている世界がどれだけ狭かったのかを思い知らされた。

 「…………」
 「……すりすり〜」

 口が裂けて一周したとしても言葉にはしないが、この場を借りて俺は正直に言わせてもらう。
 メルが可愛いと思った。
 貪欲に求めたりなどはしないのだが、こうして今も俺の腕に抱きついて頬擦りしてくる。本人独特の雰囲気に俺まで毒されてしまいそうだ。
 正直男としてここまで好かれるのは男冥利に尽きるというか悪い気はしない。
 だがここまでストレートな好意を向けてきた事などなく、戸惑っているのも事実だ。

 「…………」
 「…………えへ」
 「……仕方ないか」
 「?」

 人間の順応力がここで発揮された。
 人間を文字通り喰う魔物が変わり、人間と変わらないやり方で子孫を作る魔物娘に変わった今の時代。人間が今もこうして暮らしているのは順応力があるからだろう。それだけとは言い切れないが。
 やがて俺の家の前まで辿りつき、俺はメルの目を見た。
 彼女の目は大きく、茶色の虹彩で濁りはない。それはまるで彼女自身を表しているかのようだ。

 「メル」
 「はい?」
 「森に戻る気はあるか?」
 「ないですぅ」
 「寂しいとは思わないのか?」
 「はいー♪」

 屈託のない笑顔。本心からそう思っている証拠だろう。

 「その……まだ結婚だとかは早いけど、俺と一緒に暮らしてみるか?」
 「…………」

 と、メルの表情が何か珍しいものを見たかのように変わり、そして春を待つ花が満を持して咲くように、

 「はいーっ♪ ふつつかものですがよろしくおねがいしますぅ♪」

 そう言った彼女を、今更突っぱねる事など出来なかった。
 メルなら……いいか。
 いつの間にか俺は彼女を受け入れ始めようとしていた。



 ふうふになったのだから、あたしは森にはかえらないの。
 団員のみんながいるけれど、あたしはシルドさんが好きになったんだもん。
 だからあたしはシルドさんのそばにいるの。ずっと。ずぅーっと。
 あたしたちは知り合ったばかりだからシルドさんがとまどっているのはわかる。あたしだってシルドさんのこと、まだ何も知らないもん。
 でもね?
 シルドさんにあたしのことをもっともぉーっと知ってほしいし、もっともぉーっと知りたいの。
 あたしのちょっかんはあたるんだよ。
 このひとなら、あたしといっしょにしあわせになってくれるって。



 やれやれ。
 いつもなら薬草の香りと薬品作りの為の本があるだけの我が家だったが、新たな一員が増えた。
 メル。
 自称俺の妻らしいが俺にはまだその気持ちはない。
 真っ直ぐな好意は嬉しいのだが、まだ心の準備というか。我ながらなんとヘタレなのだろうと頭を抱えそうになるが、そこは大目に見て欲しい。何せ、魔物とはいえ女性と触れるのは初めてなのだ。
 メルと俺が家に入ると、メルは眩しい笑顔で家中を見渡した。
 
 「ここがあたしたちのあいのす、なんですね♪」
 「愛の巣かは知らんが、ここが俺の家だ」
 「すんすん……なんだか、ふしぎなにおいがしますぅ」
 「それは薬草の香りだな。いつも薬品を作っているからな……」
 「おじいさんおばあさんたちのために、ですか?」
 「あぁ。それが俺の仕事だから」

 そう言うと見ているだけで眩しい笑顔がさらに輝いた。

 「シルドさんってすごいんですねっ♪」
 「そ、そう……か?」
 「はいっ♪ そんなひとがあたしのだんなさまなんて、とってもうれしいですっ♪」
 「さいですか……」

 彼女は良くも悪くもマイペースだ。見知らぬ場所に来たというのにそれを喜んだ。まぁ……悪い気はしない。

 「とりあえず、俺は今日採った薬草やら何やらを煎じたりせにゃならん。そろそろ腕を離してもらえるとありがたいんだが……」
 「……むぅ。しかたないです。おっとのおしごとをじゃましちゃ、つまとしてしっかくですから」

 そう言ってメルは名残惜しそうにしぶしぶ腕を離してくれた。
 よかった。一応これで仕事に取り掛かる事が出来る。
 と、メルが裾をちょい、と引っ張った

 「おしごとがんばってね、だんなさま♪」

 …………。

 「あぁ、ガンバル……」

 まだ俺は揺らいでいない。大丈夫だ。クラッとなど来ていない。落ち着け。薬草の香りで落ち着くのだ。
 心の中で無、無、と唱えながら薬草の加工に取り掛かる。ごりごりしたり挽いたり。基本的に本を見ながら試行錯誤を繰り返してやっとの事で形に出来た完全な独学なので、本当にこれで正しいのかはわからない。所詮俺はヤブ医者だ。正しい道を歩んだ訳でもないのに、実際に老人達に処方している。端から見れば立派な犯罪行為だろう。
 何らかの理由で、何処かの国の者が見れば俺はきっと連行され処刑される。だが俺は彼達を騙しているつもりなどない。本当に助けたいと思っているし、少しでも健康でいられる時間の延長の手伝いをしたいと思っている。
 だから毎度、こうして薬を作成する作業には細心の注意を払っている。何度もやって慣れている作業でも、成功した時の過程、注意すべき点を書いたメモを見つつ行っている。預かっているのは命だ。悪化などさせてはいけない。

 「調合の分量は……この量。こっちは……うん、これだ」

 鎮痛剤の調合もそうだ。混ぜる薬草の分量を1mgもずれる事無く計る。
 神経を思いっきり使うが、これもまた必要とされているから故。

 「…………よし、これを混ぜて……」

 暑い季節でもないのに、俺は汗を流しつつ作業を続けるのだった。



 つまのしごとって一体なんだろう?
 できればシルドさんのおしごとをてつだってあげたいけれど……。
 おしごとしているのをのぞいてみれば、

 「よし、いいぞ……このまま」

 すっごくしんけんにおしごとしてるから、じゃましちゃいけないの。
 じゃあ、ほかにすることは?
 んむぅ。
 ごはん?
 うん、それにしようっ。
 おしごとでがんばっただんなさまにおいしいごはんを作ってあげるのはあたしだけなの。
 がんばるっ。
 これでもあたしは団員のみんなのためにごはんを作っていたからちょっとはできるの。
 台所にあるほぞんこを見てみると、たくさんの野菜と木の実。見たことがあるものばかりだから、あの森でとったものみたい。
 あたし的にはおにくもほしかったけど……。
 おにくは大好物なの。あの森にはいっぱいのどうぶつさんがいてどれもおいしいの。大物がとれたらみんなでわけあってたべてたなぁ。
 どうしよ。今からかりにいっちゃおうかなぁ……?
 と思っていたあたしのみみに、とんとん、と音がきこえた。
 おきゃくさんかなぁ?入り口からきこえるから。

 「はーい」

 へんじをしてからドアをあけると、さっきのおじいさんが手ににわとりさんをつかんで立ってた。

 「やぁやぁ、ホブゴブリンちゃん」
 「はいーメルですぅ」
 「今日からシルド君と一緒に暮らすのだろう? いつも世話になっているシルド君が結婚するのは嬉しくてねぇ。老いぼれにはこういう形でしか祝えんが、受け取ってくれんかね?」
 「わぁっ。いいんですかー?」

 おにくー♪
 ちょうどほしかったからうれしいっ。

 「いいんじゃよ。沢山食べて精をつけなさい」
 「わーい♪」

 おにくっ♪おにくっ♪
 にわとりさんをもってきてくれたおじいさんにおれいして、さっそくつまのおしごとかいしなのっ!



 額に流れる汗を拭い、一息つく。
 なんとか上手く出来たようだ。今日は患者も来なかったから、作業を中断する事もなかった。患者か来ないという事はいい事だ。
 緊張すると汗が止まらなくなる体質の俺は、作業が終わるとまず風呂に入る事にしている。汗で濡れた服を着たままだと風邪を引くかもしれないしな。
 いつものように上着を脱ぎ、風呂場へ向かう。
 すると、薬品の匂いとは違う、食欲をそそるような美味そうな匂いが漂ってきた。台所からだろうか。

 「……?」

 覗いてみると、背の低いメルが楽しそうに動き回っていた。
 へぇ、あいつって料理出来るのか。
 ゴブリンの作る料理がどんなものなのか興味が沸いた俺は、メルに声をかけてから見てみる事にした。

 「メル、何作ってるんだ?」
 「あっシルドさーん。えっとですねぇー、おじいさんからにわとりさんをもらったからそれの丸焼きとー、それから…………」

 それから、と言いかけて振り返ったメルはこっちを見て固まった。
 どうしたのだろう。いつもの笑顔からきょとんとした顔になり、そして次には両手で頬を押さえてくねくねしだした。な、なんだいきなり。

 「あのぉ、そのぉー……」
 「どうした?」

 真っ直ぐにこちらを見ていた瞳は泳ぎ始めて、さっきと同じようなあの、とかその、とかを繰り返し言っている。
 急に態度が変わったのは何故だろうか?

 「えっと……あのぉ……今はまだ、ゆうがたまえだから……」
 「そうだな」

 あぁ、なるほど。
 まだ夕食の時間ではないから我慢して欲しいのだろう。確かにいい香りがするし、今にも空腹の音が鳴ってしまいそうだ。今までは全て俺一人で済ませていた食事も、メルがやってくれると心の何処かで期待していたらしい。料理が出来るのは意外だったが、変な匂いもしないしこれは期待してもいいかもしれない。

 「えっちはおゆうはんのあとで……しましょ……?」
 「…………は?」

 何故そうなる。まさかいきなり発情したとは言わないだろうな。いや、魔物娘なのだからおかしくはない。ちら、ちら、と見ながらメルは小さな声で言った。

 「シルドさんのからだ……たくましいんですね♪」
 「あ」

 今、俺、上半身裸。
 作業が終わり、大汗をかいたのでいつもの癖で上着から脱いで風呂に行こうとしていた。
 もしかして、勘違いされてる?だからメルはあんなに恥ずかしがって……。
 まんざらでもなさそうなのは気のせいだろうか。

 「ち、ちち違うぞっ!俺は今から風呂に入ろうと―――」
 「そのあとぉ……えっち……するんですかぁ……?」
 「だから違うっつーのッ!」
 「…………ぽっ」

 ああもうッ!
 一人照れているメルを置いて俺は風呂場へ飛び込んだ。
 くそ、ンなこと言われたら変に意識しちまうだろうがっ。
 本人の性格はほんわかしてるが、魔物としての本能は忘れてないって訳か……。
 
 「えっちな幼な妻……」

 う、うおお!?
 落ち着け、落ち着け、股間が大変な事になっているが落ち着け、落ち着けおち、おちつけ。まだあわて、あわ、あわわ。



 おりょうりしてたら、シルドさんにこえをかけられて、おしごとおわったのかなっておもって見たら、うえがはだかのシルドさんがいてびっくりしちゃった。
 ちょっとほそいなぁって思ってたけど、ぬいだらたくましくってあたしドキドキしちゃった。
 でも、いまはおりょうりつくってるからめーなの。
 その……あたしもだんなさまとえっちはしたいなっておもってるけど。
 ああ、でもでも。
 したいっておねがいされちゃったら、めってするのもかわいそうだったかも……。ちょっとはんせい。
 はずかしいけど、つぎにおねがいされちゃったら、そのときはがんばるっ。
 だからごめんね、だんなさま。



 「はい、あ〜ん♪」
 「あ、あーん……」

 まだ、これだけのイベントが残っていようとは……。
 風呂からあがると丁度料理が出来上がったらしく、そのまま食事となった。
 のんびりなメルだが、料理の腕はいいみたいだ。味付けも申し分ない。本人曰く、団員のみんなにいつもご飯を作ってあげていたからだそうだ。

 「って事は、ゴブリンの仲間達が居たってことだよな」
 「はいー」
 「何の断りもなく出てきてよかったのか? 挨拶しても遅くはなかっただろう」

 するとメルは俯き、

 「ちょっぴりさみしいですけど、でもぉ……」

 こちらを見て笑顔で言った。

 「だいすきなだんなさまのためですからっ」
 「……そっか」

 俺と出会うまでは彼女なりの生活があったのも当然か。
 本人がいいと言うから深く言及はしないが、その日常と別れを告げてまで俺と居たいと言ってくれている。ならそれを受け入れるのが男の甲斐性なのではないか?
 メルが家にやってきてくれた事で、こうして美味い飯が食える。一人の寂しさもなくなる。俺が損する事などないのだ。

 「…………」
 「シルド、さん?」

 ……軽く自己嫌悪に陥った。
 メルの好意を損得勘定で考えた事に対してだ。裏表もない、ただひたむきな好意。なのに失礼な事を考えてしまった。
 仕事の関係上生涯孤独だと思っていた俺に、メルは嫁になりたいと言うのだ。
 
 「なんでもない。ありがとう、美味いよ」

 俺も彼女との関係に前向きになろう。
 こんなにも可愛い、女の子がそばにいてくれるのだから。
 せめてのお礼に、栗色の髪を撫でた。

 「えへへぇ♪」
 「ほら、メルもあーんしろ」
 「いいんですかぁ?」
 「いいから、ほら、あーん」
 「えへ。あーんっ♪」

 それに、この子の笑顔を守るというのも悪くはないだろう。



 がんばってつくったはじめてのごはんに、シルドさんはいっぱいよろこんでくれた。
 いっしょにあーんってしたりして、もうドキドキ。
 あたしがつくったごはんだけど、あーんしてもらっちゃったときのごはんはとってもおいしかったんだよ。
 これからこうしていっしょにごはんがたべられるのが、あたしはしあわせ。
 ごはんをたべおわった後に、あたしもおふろにはいった。
 そのとき、あたしのあそこがぬれちゃってたのに気がついた。
 たくさんのしあわせとちょっとのドキドキ。いつのまにかあたしのからだはシルドさんをほしがっちゃっていたみたい。
 それにきづいてからはもう、あのときのシルドさんのはだかをおもいだしちゃって……。
 おふろでのぼせちゃいそうになった。
 ごめんね、シルドさん。
 あたし、えっちなつまで……。



 我が家は二階建てになっており、一階は俺の仕事用の部屋、台所とリビングとダイニング。決して広くはないが十分な広さと言える。そして二階は寝室となっている。当然寝室にあるのはシングルベッドであり、今まで一人暮らしだったのだからそれは仕方のないことだ。
 本当ならば俺は一階のリビングで寝ようと思ったのだが、メルが俺の腕を掴んで首を振ったのでやむを得ず同じベッドで眠る事となった。

 「…………あのさ」
 「はいー?」
 「そうしないと落ち着かないの?」
 「えへ。……ぎゅっ」

 今日初めて出会った時からそうかもしれないと思っていたが、メルは俺の腕を抱くのが好きらしい。おかげでその豊満な胸が押し付けられ、俺の心臓が破裂しそうなくらい早鐘を打つのだが。

 「はぁ……。仕方ないな」
 「わーい」
 「寝てる時はいい子にしてるんだぞ?」
 「えー」

 何故そこでえーが出るんだよ。一体何をするつもりだこのロリ巨乳は。

 「だってぇ、シルドさんったら……」
 「っ!?」

 腕に抱きつきながら、メルは俺の股間を一撫でした。女の子と同じベッドで密着。さらにおっぱいが押し付けられて、俺のズボンにはテントが思いっきり張られている。バレないようにしていたのだが、やはりバレてしまった。

 「えっちなきもちに、なってますよね?」
 「うあ……っ」
 「さわるのはじめてだけど、あたししってますぅ」

 メルの表情はとろんとした顔になり、瞳は潤んでいた。完全に発情した顔になっている。
 小さな手が俺の股間を服の上からまさぐる。

 「これ……おとこのひとがこうふんするとこうなっちゃうんですよね?」
 「うっ……否定、出来ない」
 「えへっ」

 急にメルが俺の耳元に口を近づけた。

 「シルドさんのおちんぽ……おっきしてますぅ♪」
 「く……っ、うあっ!?」

 股間を服の上からさすりながら、耳元でそんな言葉を囁かれ、急に腰が跳ねた。
 や、やばすぎるだろ。見た目は幼い少女でおっぱいが大きく、その上えっちなんて。膨れ上がる興奮は、もっとその形を肥大化させていく。というか、今ので出そうになった。

 「いいですよね……っ。シルドさんのおちんぽ、くるしそうですぅ……」
 「あ、あぁ……頼む」

 所詮俺の心などそういうものだ。
 女性に触れる事もなく二十数年生きてきたのだ。俺の為に奉仕してくれる可愛い女の子がホブゴブリンだろうと、もはや関係ない。

 「あたしもぉ……はじめてなのにぃ、こうふんしてるんですぅ……♪」

 メルと身体を向き合う格好になり、俺の右手をゆっくりと引かれると、その先にはまるでもらしてしまったかのように濡れ、熱くなっているメルの大切なところへ。

 「あぁ、メル……っ」
 「あんっ♪」
 「すご……濡れてる……」
 「あはっ。シルドさんのおちんぽ、びくんってしましたよぉ……?」
 「メルだって……こんなにもびしょびしょじゃないか」
 「言っちゃ……やですぅ……。あんっ」
 「人の事は言えない、がな」
 「えへ。いたずらのしあいっこ、ですね……♪」

 彼女の言う悪戯のしあいとは、つまりこういう事なのだろう。
 こういう行為が初めてな俺には丁度いいのかもしれない。
 それにメルも恥ずかしがって、恐る恐るな手つきだ。

 「その、出来るだけ優しくするから……。痛かったら言ってくれよ?」
 「あぅっ、はい……♪」
 「あと、気持ちいいところがあったらそれも……」
 「しるどさんも、ですよぉ?」
 「あぁ」

 向かい合っていた身体は少しでも隙間を埋めるように密着し、お互いの敏感な場所を手で触りあう。
 俺の年齢から考えたらなんともお子様な行為だが、初めて同士なのだし、これが俺たちらしくていいのかもしれない。

 「はぁ……あっあぁんっ」
 「う、く……メル……」
 「しるどさぁんっ」

 そして俺たちは唇を重ねる。
 先にお互いの性器を触ってしまい、順序が違うがもうそれもどうでもいい。
 メルのぷにぷにな唇と、蜜が溢れる秘所の感触を同時に楽しんで、その上自分の股間を触ってもらう。
 その快楽の波に今にも精を放ってしまいそうになる。

 「ちゅ、ちゅっ、ちゅっ、らいふきれふぅ……」
 「メル……」

 それだけじゃない。
 今目の前に居るえっちで可愛いホブゴブリンの女の子が愛しく感じるのだ。

 「あ、あぁぁあんっ!」
 「……ここ、感じるのか?」

 溢れ出した蜜によって、メルのあそこは指が滑るほどに濡れている。いきなり指を入れる勇気もなく、メルの秘所をなぞるように動かしていたのだが、柔らかい感触以外の硬い部分に触れた瞬間、キスしていたメルが耐え切れずに嬌声を上げた。

 「そこ、そこぉ……っ」
 「ここ、だな……?」

 一応本で読んだ事があるのだが、俺が今触っている部分は恐らく陰核。クリトリスと言う所だろう。女性器の図を思い出しながら触っているので間違いない。
 メルの愛液で濡れた手でそっと触れば、大袈裟なくらいメルの身体はビクビクした。
 
 「あッ、あうぅうっ♪ そこ、びりびりしちゃいますぅ……っ」
 「気持ちいい、か?」
 「はいぃ……っ。とんじゃいそぉなくらい、かんじちゃいますぅっ」
 「そう、か……」

 いつもほんわかな笑顔のメルがここまで乱れるなんて。
 そのギャップに俺までその快感が伝わったかのようだ。いつの間にか俺のペニスをこすっていたメルの手がぬるぬるして、腰が震える。

 「ふぁあぁぁぁンッ、しるどさぁんっ」
 「く……っ。メル……」
 「はぁぁぅっ♪ きもち、いいれすぅ、ふぁぁあっ」
 「俺も、だ」

 もう片方の手で、メルの大きな胸を揉んだ。パンの生地よりも柔らかく、指が沈んでしまうほど。その感触を楽しむように揉むと、急にメルが大きく震えた。

 「ああぁあぁああンッ!?」
 「胸も、感じるのか……?」
 「おっぱいらめぇっ!かんじすぎちゃ、あっ、あっあっあぁぁああッ!」
 
 ダメと言いつつ、メルは押し付けるように俺の身体に密着させる。

 「おっぱい、きゅんきゅんしちゃいますぅっ」
 「ここも弱いんだな」
 「あ、あぅっ、いわないでぇ……♪」

 俺の手じゃ収まりきらないほどのおっぱいを出来るだけ優しく揉む。

 「もっと、触りたい……」
 「はぁぅっ、いい、ですよぉ……。あんっ、しるどさんにならぁ……ぁ、あああっ!」

 胸と秘所を同時に触られて、メルの身体は可愛く反応する。
 呼吸も荒くなり、蕩けた目で俺を見ている。
 もっと楽しみたい、感じていたいのだがそろそろ限界がやってきそうだ。

 「あ、あああっ!? しるどさ、んっ、なにか、なにかきちゃいそぉっ」
 「メル……イきそうなのか……?」

 お互いがもう興奮の絶頂まで近いと悟る。
 俺はメルを片腕で抱き、唇を奪った。

 「んぅっ♪ ちゅ、ちゅぱっ、しあわせ、れすぅ……っ、あンっ」
 「あぁ、そうだ、な」
 「くちゅ、ちゅっ、あぁああンっ、ちゅぷっ、ちゅるっ」
 「はあ、はあ……っ」
 「ひゃあんっ!? おやゆびでぐりぐりらめれすぅっ♪」
 「う、くぅっ」
 「あ、あぁあ、あぁぁンっ♪ らめ、らめらめぇ♪ とんじゃ、とんじゃいますぅっ♪」
 「俺も、もう、ヤバ……ッ!」

 もう余裕なんて微塵も残されていなかった。このまま一緒に絶頂へと向かうだけ。

 「ぎゅって、ぎゅってしてっ、しるどさぁんっ」
 「あぁ……ッ」
 「あと、あと、ちゅー、やぁっ、ちゅーしてっ、おねがいぃ♪」
 「わか、った……ちゅ……」
 「ン……っ♪ ちゅっ、ちゅぱっ、ちゅうぅっ、あぁんもうらめぇぇぇっ♪」
 「メル、メル……ッ!」

 そしてついに、一緒に登りつめた。

 「―――あぁぁぁぁああぁぁぁああああっ♪」
 「うぁああッ!?」

 俺の欲望の塊が、メルの身体にかかる。メルの身体も大きくびくびくして、絶頂の真っ只中だ。
 今までこんなにも出した事のないくらい、長い射精。

 「あつっ♪ あついの、かかってぇっ♪」
 「まだ、とまらな……ッ」
 「もっと、もっとくださいっ♪」

 メルの手が俺のペニスをこすると、最後の一滴まで出し切るかのように出た。
 ……やがてその快楽も収まり、射精は止まった。
 情欲に濡れた瞳のメルも、呼吸を乱してだらしなく口をあけている。
 
 「あ……あぁ……♪ しるどさんの、あたしの手にもいっぱいかかってますぅ……」
 「あ、ごめ……」
 「いいんですぅ。それに……」
 「め、メル!?」

 何をするかと思いきや、俺の精液で汚れた手を舐めている。

 「そんな事しなくても……」
 「ぺろ、ぴちゃ……。しるどさんのえっちなせーえき……美味しい……♪」
 「メル……」

 本能で男の精を欲するからなのか。メルは俺の出した精液を、まるで蜂蜜を舐めるかのように舐め取ってしまった。

 「こく……、こくん……。これぇ、くせになっちゃいますぅ♪」
 「あ……あぁ……」

 それを目の前でやられると、気恥ずかしいのだが。
 そのまま俺たちは気だるい余韻に浸り、いつの間にか眠ってしまった。



 あのねっあのねっ。
 はじめてあたしはシルドさんとえっちなことしちゃったの。
 あたしばっかりきもちよくなってるんじゃないかなって思ったけど、しっかりきもちよくしてあげられたみたい。
 えへへ。いっしょにイッちゃった。
 それで、はじめておとこのひとのせーえきをなめたんだけど、すごくこくておいしかったの……♪
 ほんとうにくせになっちゃう……。でもいいの。
 もっとシルドさんの味をしりたい。
 もっときもちよくしてあげたい。
 あいするシルドさんとのえっちはとても、しあわせだから。
 だーいすき。
 おやすみなさい、だんなさま……♪
11/03/07 01:23更新 / みやび
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■作者メッセージ
という事で、前作「知識の竜と半端な勇者」に登場したホブゴブリンのお話です。
超のんびり。超ほんわか。

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