連載小説
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3話:カフェは探しにくいが街は有名である
元旦である。


よく解からんが風習みたいな物で、何日か一度「元旦」というイベントを行い、気持ちを切り替えていこう、という日である。

そんなに興味も無いので、気にしていなかったのだが・・・。


「今回こそ私が勝つぞ!カラム!」

今、俺に絡んできているこいつはリザードマンのリタル。
なぜこいつから俺が喧嘩を売られてるかというと・・・

事は前の元旦にさかのぼる、何回前だったかは覚えていない。

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「あー、だるい・・・。
 給金がいいからといって草原の悪党退治なんてうけるんじゃなかった・・」

愚痴りながら気絶した男を背負い、運ぶ。

これが女だったら背中が幸せなのに・・・、と考えていると後ろから声をかけられる・


「待て!それは私の獲物だ!」
「あー・・・?」

声をかけられたほうに目を向けると、仁王立ちしながら指を刺してくるリザードマンがいた、いや女っぽいからリザードウーマンなのか・・・?
いや細かいことはいいか・・・

「聞いているのか!それは!私が退治する予定だったんだ!」
矢次に話しかけてくるリザードマン。

おそらく俺と同じ依頼を受けたのだろう、そして先取りされたから怒っている、と。

「ええい何か反応しろ貴様!」

相手は非常に怒っているが、こういうことはよくある。
依頼は基本的に早い者勝ちだし、それに文句をいう人間はいない。
いや人間じゃないから関係ないんじゃね?という質問は受け付けていない。

「そこまで無視するなら問答無用!死ねぇ!」
「うぉっ!あぶねえ!」

突然切りかかってくるリザードマン、ひらりと避ける。

「避けるとは、貴様やるな!」
「いきなり切りかかってくるとかプライド無いのか!それでもリザードマンか!」
「無視する貴様が悪い、が、確かに失礼だった」

持っていた剣をしまいながら、話始める。

「私はリザードマンのリタル、ここらに悪党がいると聞いてやってきたのだが・・・、貴様が背負っているそいつがそうだろう?」
「貴様って言うな、俺にはカラムっていう名前があるんだ・・・。
 悪党は背中の奴だ」
「カラムか、良い名前だな。
 しかしそんな事は関係ない、それは私の獲物だ」
「お前・・・、いやリタルも依頼を受けてきたんだろうけど、もう倒したぜ?」
「私の獲物をお前が倒したのなら、お前が獲物、わかったか?」
「いやわからん」
「ええい貴様はアホか!もはや問答無用だ!決闘だ!」

ヒュンと音をたてながら剣を抜くリタル。

「私が勝ったら獲物もお前も私が頂く、文句ないな!」
「いや俺何も言ってないし、いつの間にか俺も景品になってるし、文句しかないんだが」
「うるさい死ねえ!」

切りかかって来るリタル、振り方はさまになっているがスピードは遅い。
いや戦闘なれしていない奴なら早いレベルだが・・・。

「おちつけ」

そう言いながら、剣を避け、手刀を首に叩き込んでやる。

「戦闘なれしてない奴ばっかり相手にしてたのか?
 もうちょっとコンパクトに動いたほうが・・・」

そう話しかけながらリタルのほうを見る。



そこにはうつ伏せで気絶しているリタルがいた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?
 いやいやいや、えっ?ええっ?
 ここはコレからバトルシーンだろ!?
 ギャグ?ギャグなの?」


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・・・・と、まあそんな事があってから「元旦」を迎えるたびに俺はこいつに喧嘩を売られている。
結果は毎回同じ、先程の回想通りだ。
毎回一撃で勝負をつけられているから向こうも意地になっているらしい。


「今回は秘策があるんだ、勝つ!」

そういうと後ろから人が出てくる

「いや援軍かよ、リザードマンなのにプライド無いのかお前」
「問題ない、この人は私の師匠になってもらったお方で、『戦い方を見せてあげよう』との事だ。
 戦うのは師匠のみ」
「・・・はあ。」

それでいいのか、と思いながら師匠と呼ばれたほうを見る、

「・・・ん?どっかで見たことある・・・・・・マスターじゃねえか!何やってるんだこんなところで」
「さっきリタルちゃんが言ってた通り勝負だけど・・・。」
「カフェはどうしたんだよ・・・・・・・マジで言ってるか?」
「はっはっは、冗談で戦うとは言わないよ、私も男なんでね」
「怪我してもしらねえぞ?」

やるからには本気でやるぞ?という目でマスターを見る、
俺も傭兵をやっているからには負けられない、こんな街中で負けたとあっては評判が下がる。

「別に本気でもいいんだよ?」

別にいいよ?という顔をしながら答えるマスター、
じゃあ早めに終わらせるか、とリタルにも出した手刀をマスターに振るう。
これで終わり、そう思ったが、意外な一言が返ってくる。


「カラム君ちゃんと本気を出してよ、遅すぎて剣を盗ってしまったじゃないか」
剣を地面に投げるマスター、確かにあの剣は俺のだ。


「・・・どうやった?」
あの手刀は確かに本気で出したのだが、


「サクッと避けてサクッと盗っただけだよ、練習すれば誰でも出来る
 因みにカラム君が今だした手刀も」

姿が消えるマスター


「練習すれば出来る」
背後に立たれ、そう呟かれる。首には手の触感。
当てられただけで、攻撃では無かった。


次元が違う、なぜこんな奴がカフェのマスターなんぞやっているのだ。
これは勝てない、そう思い負けを認める。


「・・・俺の負けだ」
「お、いいのかい?悪いね勝っちゃって」

これで俺も景品か・・・そう思いリタルのほうを見る。

「で、俺のことをどうするつもりだ?」
「どうもしない」
「・・・・はっ?」
「今の私はマスターの物だ、お前のような景品なんぞいらん」
「・・・えっ?」
「いやー、何故か好かれてしまってね」

いやその強さだと思うが・・・、
まあ、リタルが尻尾振りながらマスターに抱きついているから思いは本物だろう・・・。


「これからどうしますか師匠!」
「マスターでいいよ、
 まあとりあえず私のカフェに行こうか」
「はい!」


カフェの方向へ消えていく二人組み。
俺はそんな二人を見ながら寂しい気持ちになる。


あれっ・・・、何だろう・・・、目からしょっぱい汁が・・・。



かくして今回の「元旦」はしょっぱい結果となったのだった。
12/01/04 01:49更新 / ミササギ
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■作者メッセージ
四話。

カフェじゃない場所でだって物語りやってもいいじゃない!(タイトルはどうした


元旦だし、それに絡めたネタをやろうと思ったらこんなことになった。

こんな感じの話を続かせていく予定ですので、
気が向いたときに読んでいただけたら、と思っております。



コンゴトモヨロシク・・・

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