連載小説
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竜宮風呂
 
〜痛いの痛いの飛んでいけー〜


ん、たまの休日にゆっくり釣りするのも案外楽しいもんだ。今まで釣りなんてマイナーな趣味だと思ってたがやってみると心が落ち着いて冷静になれる。そう・・・冷静に・・垂らした先だけを見つめて。

_…ピクッ♪

「ほら来たぁああぁぁっ!!」

おおっ!これは良い手応えだ。こりゃあ大物の予感がする!くっくっくっ・・・この強さだと鱸かもなぁ・・うへへ♪

「来いよぉ・・・さぁ来いよー・・いつでもタモは用意出来るぜー」

近い!魚影が見えて・・・見えて・・。

「は〜ろ〜♥」

「帰ってください」

「酷っ!?折角釣れた美少女をお持ち帰りしようとか思わないの!?釣れたてピッチピチのメロウちゃん要らないって言うの!?今なら可愛い妹二人も付いてくるのよ!?超お得よ!」

要らないっての!っていうか妹二人も付いてくるってどういう事だよ!俺は!静かに!魚を!釣りたいんだよ!

「ねぇねぇ・・・ほんとにイラナイの?今なら私と妹二人で3枚破れるんだよ?後悔しちゃうよ?」

「頼むから釣りに集中させてくれ。休日はゆっくりしたいんだ」

「竿は立ててるのに竿勃ててくれないなんて・・でも、操は立ててるのね」


−チャポン…−


はぁ〜・・やれやれ諦めて帰ってくれたか。んじゃ、釣り続行。

・・・・掛からないなあ、なんで急に静かになった?おっかしいなぁ・・、まぁ釣りはこんな時もあるしここは我慢一択。待てば海路の日和あり、だ。獲物が掛かるの待ってる間に湯を沸かして・・・と、お次にこれこれ。じゃーん!新発売のカップヌードル・激辛サラマンダー味をペリッとな!この辛さがたまんねぇ〜んだよ♪本当はとんこつオーク味も欲しかったんだけど、売り切れてたんだよなぁ。ちょっとばかり味が濃いのが珠に瑕だが好きな人はこぞって買っていくし。おっと、湯が沸いたな。注いで注いで〜蓋閉めて〜3秒待って〜。

「3、2、1、はい出来上がり〜。いっただきまーす」

こんな時は魔力が普及してくれて便利良くなったなーと思う。時間短縮してくれたり暗くなったらどこからともなく光球が出てくれて明るくしてくれたりとか。ま、そんな事はさておき・・・ズズズゥゥ〜〜、んー・・・これこれ!辛いけど美味い!ズズッ・・・スープも最高!

「・・・はふ、食った食った。さて釣りの続きを」


・・・掛からないな、と言ってもメロウが掛かってしまったが。ま、こんな日もある。今日は諦めて帰りますか。・・・ちょっと惜しかったかな、メロウの3姉妹・・・って何考えてんだ俺。



ただいまーって誰も居ないけど。そろそろ俺も『ただいま』と言える相手を見つけないとなあ。ただし10歳未満は除く。いくらなんでも犯罪レベルでの御付き合いだけはしたくないぞ。知り合いの中には小学生と婚約という名の出来ちゃった婚とかしてるやつも居るけど。あれはもう犯罪だろ。いや、犯罪されて出来ちゃったんだよな。どっちがどっちなんだか…、まあいいか。夕方まで暫く時間空いたし横になっておくか。


「んん・・・、もう6時過ぎか。んじゃ用意して風呂行くかー・・ふぁぁぁ〜・・」

あー眠い、もうちょい眠りたかったけど風呂だけは絶対行かないと・・なぁ、ふあぁぁ〜・・。不潔にしてたら厄介なのが寄ってくる世の中だし身の回りは綺麗にしておかないといつ喰われるやらわからんからなー。・・200円は、ん・・持ってるな。じゃ、用意オーケーだ。


「いらっしゃ〜い…まいどあり〜♪」

今日はどの風呂から順番に浸かるかな。久しぶりに潮湯から浸かるかー。・・・と、ほい♪ほい♪ほい♪、っと脱いだ服は華麗に籠にシュート!よっし!!


-カララララララ……-


潮湯にまっすぐ一直線、の前に先に体洗わないとマナー違反だぞい。それか最低でも掛け湯はしないと他の客に迷惑が掛かる。皆だって汗まみれ、埃まみれ、変な汁まみれの臭い体の男がそのまま同じ浴槽の中に浸かってきたら嫌だろう?なのできっちり洗ってから浸かるか、掛け湯してから風呂に浸かろう。ちなみに俺は掛け湯してから浸かる派だ。

「んぷっ・・、浸かるか」

あぁ〜、最高。暫く浸かってから水風呂入ってその後に・・んー、薬湯浸かるか。別にどこか怪我してる訳でもないけどたまに浸かりたくなるんだよな。気分転換したい時や落ち着きたい時は何故か浸かってしまう。さて、塩茹でになる前に軽く水風呂に行くか。・・・くぅ〜、つめてぇ。おおおお・・・この季節に水風呂はきつい。さっさと上がって薬湯に・・。

「あ、そうだ。地下風呂あったよな、そっち浸かりに行こ」


「・・・・うはぁ」

洗い場の前に直径60cmぐらいの窓がある。窓の外側には小さな小魚が泳いでるのが見える・・ということは、どうやら大きな水槽の中に風呂が造られてるみたいだなー。ん、タオルを腰に巻いてください?なんだこれ?所々にタオルが置かれてるぞ?まぁよくわからんけど巻いておくか。

「さて、と・・まずは体洗おう。ここに座るか、よっと・・」


おお〜、目の前を烏賊が泳いでいった。って、今度は鰈がひらひらと・・。これじゃあまるで御伽噺の竜宮城だな。悪くない。あー・・こいつ今日狙いたかったなー。・・・美味そう。

「眺めてる場合じゃないな。さっさと体洗っちまおう」

体洗いながら魚が泳いでるのを内側から眺める事が出来るなんて最高だなあ。まるで海底都市にでも居る気分だ。ん〜〜・・・ん?今なんか大きな尾鰭がチラッと見えたような気が・・?でかい魚も泳がせて大丈夫なのか?

「・・・ま、大丈夫だろ。あの女将さんがお客に食物連鎖を見せつける悪趣味なんて持ってないだろうし」

別の意味で食物連鎖をしそうな気はするんだけどな。

「・・・ッ!?」

今確かに見えたぞ!やっぱり何か居る!こ、これは・・間違いなく1.5m越えの大物!一体何が泳いでるんだ!?見たい!どうしても見たいぞ!さぁ、さぁ来い!

「・・・」

ま、そんなに都合良く出てきてくれないよな。ちょっとだけこちらから覗いてみるか・・。そんなに広く見えないだろうけど。

「ん〜〜…?居ないなぁ、今どの辺泳いでんだろ?」

裏側のほうにでも移動したのか?小さいフグが通ってくるぐらい・・・かああああ!?

(・・・・!?)

「ほわぁっ!?シー・ビショップさんがああーー!」

-ガラーーン・・・ベチン!!-

「いっつ〜〜っ・・・いたたた・・・。驚いておもいっきり滑ってこけたわ・・」

(・・・・・・!!)バンバン

ん?真っ赤な顔してガラス窓叩いて何を・・腰に手を当てて・・?手をくるくる回して・・何だ?へ?こ、股間辺りを両手で隠して・・・あぁっ!

「タオル落ちてる!ちょ、ちょっと見ないで!すぐに隠す・・・ツゥッ!!」

さっき派手にこけた時に右膝の横を強打したせいで少しだけ出血が・・。ううう・・今頃になって膝が痛みで痺れてきて・・・。

(・・・!)バンバン

「な、何?手招き?近づく?近づけばいいのか?」

今度は自分の尾を叩いて・・曲げて窓枠にくっつけて。もしかして同じように足を差し出せばいいの?

(・・・♪)ウンウン

「こうかな・・ツッ!!」

水槽の中でシー・ビショップさんが何か言ってるようだが何だ?・・・ん?おおおお、傷が塞がっていく!?

「見てる間に傷が・・完全に消えた」

(♪)

「ありがとうございます!!」

はぁ〜〜・・やっぱシー・ビショップさんは海の女神って讃えられるだけあってすごいなぁ。全ての人に慈愛を与えて、傷付いた人には癒しを与えて・・・本当に感謝というか・・


(・・・・!?)バンバンバン!!

ん?なんでまた赤い顔してガラス叩いてるの?何?下を向け?

「・・・・んあああああああっ!?またタオル落ちてるーー!」

ひいいぃぃぃーーー・・一先ず此処から退散だーー!



「あー・・・とんでもない事してしまった」

脱衣所で反省してもしょうがないし、今日はもう帰ろう。あー、かっこわりぃとこ見られたな。次からは暫く地下風呂に入れないぞ。はぁ・・・、今回の事は運が悪かったと思うしか無いか。

「女将さーん、みかん水貰ってくよー」

さて、そこの椅子にでも座って飲むか・・・・ッ!?

「待ってました♪」

「な、なんでここに座って・・」

「それはもちろん癒す為ですわ」

あれ以上の何を癒すつもりなんだろ。もう傷は塞がったしこれといって怪我はしてない。それとも自分ではわからない病気でも持ってるんだろうか。

「あの時の後遺症が出ないように、これから私が一生付きっきりで看病させて頂きますね♪」

「・・・って、ちょっと待って!こけただけなのに大袈裟すぎるよ!?」

「いいえ、いけませんわ。それにあの怪我は私が驚かせてしまったせいで起きた事故・・・、それに不可抗力とはいえ・・・アレを見せられてしまっては・・もうお嫁にいけませんわ。だ か ら 責任取ってくださいね♥」

くっ・・・シー・ビショップさんは俺の心の中では嫁にしたい魔物娘No,1・・・。どうする俺、早く決断しないと諦めて去ってしまうぞ。それに据え膳食わぬは・・よっし言ってやる!

「俺を一生看病してください!」

「はい!喜んで!」

すんなりOKされてしまった。で、でもこれから一生癒されて尽くされて・・・。でもこれがまさしく・・・、


              『怪我の功名ってやつか!』


15/11/13 23:06更新 / ぷいぷい
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■作者メッセージ
最近サボリ気味の私です。そろそろ最終話に向けて頑張らないと・・・

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