打たせ湯
〜何事もほどほどに〜
今日は久しぶりに遠出だぁー、ヒャッフゥー♪この風を切る瞬間が堪らないねー。あ、下で誰かが手を振ってる、ハーィ♪両手振って喜んでる。うん、いいねいいね。こうやって遥か下を見下ろしながら飛ぶのって最高だよ。翼持ちの特権だよ。おっ、あの子は・・ひっさしぶりー。
「ウィナーちゃんおっひさー♪今日はどこまで飛ぶのー?」
「んー、今日は海見たい気分だから。・・・うん、海だ!」
私の隣を同じ速度で飛んでいるシルフは時々こうして出会う子だ。しかし、おっかしいなー、この子こんなに速かったっけ?前会った時はもうちょっと遅かったような気がするんだけど。
「ねぇねぇ。アンタってさー、そんなに速かったっけ?」
「ふっふっふー♪よくぞ聞いてくれましたー♪」
「何々?何か特訓でもしてきたの?」
「違うのー、私にマスターが出来たからなの♥」
「あーーーーっ!いいないいなあー!」
いいなぁ、マスターって事は旦那持ちになったって事だよねー。羨ましいなー。私には全く出会いが無いっていうのに。ま、毎日飛んでばかりの私は見つからないのは当たり前だけどねー。でも、いいなあ・・私も男欲しいなー。海から帰ってきたら良い男でも探しに行こうかな。
「それじゃアタシはそろそろ降りるね〜♪お兄ちゃーーん、すぐ戻るからね〜♪」
「・・・・いいなあ」
海・・・行くかあ。
あんな惚気話聞いた後に独り身で海なんて見るんじゃなかった。すっごく寂しいよ。たまに通りかかる漁船とか見ても皆夫婦でいちゃついてるし。リア充爆ぜちゃえ!あ、岩場にメロウが・・、って、ちっくしょう!男と一緒に居るし。あれ?これってもしかして、私すっごい寂しい女?どこ見渡しても男持ちばかりだし。・・・帰ろう。目から何か出てるけどこれは涙じゃないんだからね!
「はぁ〜〜・・・、海なんて行くんじゃなかったよ。こんな事になるんだったら・・・『お〜〜ぃ・・・』ん?」
「はぁ・・はぁ・・、追いついた〜・・」
ありゃ?さっきのシルフじゃないの、何か用でもあったんかな?
「ふぅ・・・はぁ・・。ねぇねぇウィナーちゃん一緒にお風呂入らない?」
「なんで急にお風呂なの?今はあんまり入りたくない気分なんだけど・・」
旦那持ちは余裕でいいなぁ。一人身のお風呂とか禁句だよ。
「ぁ、ごめん、間違えたの。一緒に銭湯に行かない?」
「・・・銭湯?なんで銭湯なの?」
「いいからいいから!ね、一緒にいこ♪」
「ぁ、おいおい。どこに連れていく気なのよ?」
あ・・・あ・・・・ああ・・・、うわぁあぁぁぁぁぁっぁーー!?なんで急に手引っ張って急降下させるのよーー!危ない!危ないってばーー!ヤダヤダヤダヤダヤダ!地面にぶつかるっ!・・・・ッ!?
「ウィナーちゃん大丈夫だよー、目開けてもいいよー♪」
「・・・・?え・・・こ、此処って・・」
「うん♪銭湯だよ〜、ね、入ろうよ」
確かに銭湯・・だよね。って、私お金持ってないよ!ど、どうしよう・・。
「あ、あのさ、やっぱり今度にしない?」
「えー、どうしてー?」
「えーと・・えー・・、私今・・持ち合わせ無くてさ・・」
「大丈夫だよー♪私が出しておくから」
ああああ、・・もう、先に入っちゃうし。う〜ん・・・しょうがない、入っちゃおう!
「もぅ、おっそいよー!はい、二人分で400円ね」
「まいどあり♪」
「・・・二人分で400円って・・まさか一人200円なの!?」
なにここ!?すっごく安いじゃないの。・・・でも、200円すら持ってなかった私って何。また目からしょっぱい水が零れてきちゃうよ。
「そんなとこで突っ立ってないで早く入ろうよー」
「うぅ・・・、私ってなんて悲しい女なの・・」
お金持ってなかったわ、友達に先越されるわ、踏んだり蹴ったりじゃないの。それもこれもみ〜〜んな世の中が悪いのよ!そうよ、私に彼氏が出来ないのは世の中が世知辛いからなの!
「はぃはぃ・・・、世の中が世知辛いのはわかったから早くお風呂に入りなさいな。お友達はもう入っちゃったわよ」
「・・へ?」
や、やだ、もしかして独り言聞かれてたの!?いやぁぁーー、もう最悪!
「ウィナーちゃん何してたの?」
「なんでもない・・」
とりあえずさっさとお風呂に入っちゃおう。んっと・・フロントホックで良かった。翼を上手く引っ掛けてっと・・。
「わぁ・・・、ウィナーちゃん意外と大きい・・・」
「ふっふ〜ん♪実はCあるからね♪」
え、何々?なんで急に睨まれるの?私何か悪い事したの!?特に後ろに居るセイレーンの子すっごく睨んできてるし。こ、怖いから早く入ろう。
「わ、・・・結構広いんだね。これなら私の翼も邪魔にならないかも」
「でしょでしょー、それじゃ私はサウナ入ってくるねー♪」
サウナかぁ・・・、私はどうしようかな。良し、露天風呂行ってみよ。わぁ♪ここすっごくいいじゃないの。大きいし見晴らしもいいし・・・、ん。私が湯に浸かってもすごく余裕あるし。んー、気持ち良い。は〜極楽極楽♥海風で体中に潮っ気付いちゃってちょっと気持ち悪かったんだよね〜。んふぅー♥
「ぁ、隣に打たせ湯あったんだ。・・・ちょ、ちょっとだけ・・」
ふぁぁぁ〜〜〜♥この翼の生え際に当る瞬間が気持ちいいの〜♪ここって洗いにくいし、誰かに擦ってもらわないとどうしようもない場所だし。
「ぁぁぁぁぁぁ・・・・、イ・・イイ・・。これだけでイっちゃいそう・・」
次は・・翼の裏側を・・・。あぁぁぁぁぁぁ・・・♪超気持ちいいのぉっ!皮膜がプルプルして超気持ち良い!!ダメ・・・これ絶対癖になりそう♥アアアアアア・・・。打たせ湯がこんなに激しいなんて・・・あぁん♪
-ピキッ!!-
「・・・ぁ」
今すごく嫌な音みたいなのが聞こえたんだけど・・って、いたたたたああああああーーー!?もしかしてこれって攣ったの!?ねぇ、攣っちゃったの!?痛い痛い痛い痛い!翼の根元がすっごく痛いのぉ!早く誰かを・・・。
「ヒィ・・・ヒィ・・・だ、だめ・・上手く歩けない・・」
お、お願い・・、誰か・・・・助け・・・て。もう・・・意識が・・・。
「・・だ・・・ぅぶ・・!?」
あれ?何か聞こえる。
「しっ・・・て。聞こ・・・る?」
あー、もうちょっとだけ寝かせてよー。今なんだか良くわかんないけどすっごく気持ちいいんだからさー。あ〜、そこそこ。
「起きなさい!」
-バシンッ!!-
「いっだぁぁああぁぁぁーー!今私のお尻叩いたのは誰よ!?」
「私ですけど?」
うっ、・・さっきの番台さんだ。なんだかこの人に逆らっちゃいけない気がする。
「まったくもう・・長い間打たせ湯に居たせいで翼が攣るだなんて」
「あぅ・・・」
「もぅ・・心配したんだからね!」
あ、あれ?そういえば翼の痛みが和らいでる。どうして・・。
「ほら、この人に礼を言いなさいよ?打たせ湯で倒れてた貴女を今まで介抱してくれてたのよ」
「・・・・」
あ、やだ・・イケメンなうえに不精髭が似合っててワイルド♪って、この人誰?
「あ・・あのぉ・・」
「もう少しだけうつ伏せで寝ていろ」
「んぅっ!?ふぁぁぁ〜〜・・・翼の根元がぁ〜〜♥」
「・・・この辺りか・・」
ひぅっ!?何、今の!?今のすっごく気持ち良かったの!もっとやって!もっと強く擦って!そこぅ・・・、そこがいいの〜♪
「ふっ・・・んっ・・、ふぅ、これで良くなっただろう」
ぁ、やだぁ・・手、離さないでぇ。折角気持ち良かったのにぃ。お願い、お願いだから後少しだけ私の翼を揉んでよぉ・・・。ダメ・・行かないで。
「・・・なんだ?まだ痛む所があるのか?」
「・・ぅ、うん」
「どの辺りがまだ痛むんだ?すぐに治してやるぞ」
「ここ・・・この辺りが痛むの・・」
起き上がり、翼の先端で自分の胸を突付いてみる。
「悪いがそれは自分で治してくれんとなー。それは俺が治せるもんじゃないし」
「ヤダ!治してくれなきゃヤダ!」
私は必死にばたばたと足を馴らして駄々を捏ねる。なんだか生温かい目で見てるけど気にしない。折角見つけた好みの男をこのまま帰らせるわけにはいかないんだから。
「・・・はいはい、んじゃ続きはウチの診療所でしてやるよ」
「・・・ぇ?診療所?」
ま、まさか・・この人は。
「あー・・腕が鳴るなあ。今夜は時間もあるしたっぷりと治療出来そうだ」
「ぇ、ぁ・・ぃゃ・・・ち、違うの。そうじゃなくて・・・」
や、ダメ。ダメだってば!どこ連れていこうとするの!でも、密室で二人っきりに・・・♥って、そうじゃないってば!ヤダヤダヤダヤダヤダ、病院やだああああ!
『アァーーーーッ♥』
14/10/30 22:06更新 / ぷいぷい
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