風呂上りの娯楽
〜白熱した後には〜
んー・・・、今日は水曜か。平日休みってのは暇だな。知り合いの大半は土日が休みだし。暇だ。すごく暇だ。どうにかして時間潰せないものか。かと言って金が掛かる暇潰しは御断りだしな。お、そうだ。スクワットでもしてみるか。
「ふんっ!ふんっ!ふんっ!」
はぁー、さっぱりした。やっぱ体動かすのは最高だ。ん、まだ30分しか経ってないぞ。案外時間経たないんだな。じゃ、もうちょいやってみるか。
「ふんっ!ふんっ!ふんっ!」
・・・、結局1時間程度しか潰せないのか。しょうがない、溜まってたゴミでも出しに、・・と昨日出したばかりだ。平日って本当にやる事が少ない。あ、思い出した。昨日買った『輝く魔物娘達(アスリート編)』を読まなくては。
「おぉ〜〜、いいなあ。ハンマー投げしてるオーガかっこいいな。おおっ、高飛びしてる雪女の太腿エロい・・。ふむふむ、・・・クレー射撃してるダンピールって様になってる・・。なんというかあれだな・・。むさっくるしいおっさんアスリート達の雑誌見るより断然こっちだな。ま、あっちはあっちで魔物娘達がこぞって買うんだろうけど」
いやぁ〜、堪能したな。来週はどこが紹介されるかと思うだけでワクワクしてくる。先週のOL編も最高だったな。経理のワイトとか凛々しくて最高だったし、社長秘書の妖狐と人事課のユニコーンとかマジたまらん。うちの会社にも居たらなあ。別に誰かの嫁でもいいから誰か来ないもんかな。会社には華が必要なんだよ!別に人妻でもいいんだ。華があればそれだけでやる気が沸いてくるんだよ。
「・・・俺、何を熱く妄想してたんだろう」
あんまりにも暇すぎて訳わからん事を考えてしまった。どうしたもんかなー。うーん、今から出掛けたとしてもどうせ夕方には戻ってきてるし・・。何かいい時間潰しないか。・・・そういや銭湯は14時から開いてたな。もうすぐ時間だし向こうで長風呂するか。それじゃ用意して。
「・・・ついでに帰りに飯でも食っていこうかな」
多めに金持っていこう。これで良し、それじゃ一番風呂でも行くか。
ああ、この道を通るのも久しぶりだな。最近は忙しくてなかなか銭湯に行けなかったし。銭湯自体あまり行かないけど。お、金玉見るの本当に久しぶりだ。おっしゃ一番乗り。
「ちわー」
「いらっしゃーい♪久しぶりねー」
「どもー。はい、二百円」
「まいどあり♪」
いやあ、やっぱ番台の妖狐さん美人だなー、うんうん。久しぶりに見たけど、・・やっぱエロ・・じゃなく魅力的だな・・。
「ん?どうしたの?」
「・・・えっ?や、なんでもないです」
あー、やばかった。もう少しで顔に出るとこだった。さっさと脱衣所に入ろう。おー広い広い。誰も居ないとやっぱこうなるよな。前に来た時は晩かったから人が多かったし、しかも風呂上りに休めるスペースも無かった。今日は大丈夫だな。
<カラララララ・・・>
「・・・一番風呂って静かだな。これはこれでなんだか寂しい気分になってくる」
とりあえず掛け湯して先に体洗うとするか。うーん、誰も来ないってのもこれはこれで案外暇なもんなんだな。近所のおっちゃんとか居たら話し相手になってもらいたいんだが、そう上手くはいかないか。そんな都合良く物事が進んだら大金持ちになってるはずだし。
「よく考えりゃ、今日は平日だもんな。夕方辺りまでなかなか来ないかもしれないな」
<カララララ・・・・>
おっしゃ、誰か来た。なんだ、向こうの音か。振り向いて誰も居なかった時の寂しさって強烈だよな。ま、とりあえずさっさと体流して長風呂しよう。
「・・・・」
だ、誰も来ない。もう一時間近く経ってるのに誰もこねぇ・・。なんかすっげー寂しいんですが!・・そういや女湯のほうもあれっきり誰も来てないみたいだが・・。向こうの客も同じ事考えてたりしてな、ってそれは無いか。うーん、どうしようか。まだ15時をちょい回ったばかりか。・・・やっぱ出よう。うち帰ってゴロ寝でもすっか。
<カララララ・・・・>
「ぁ〜、涼しいな。あ、そだ。休憩場に時間潰せるもんあったはず」
久しぶりに来たんですっかり忘れてた。何があったかな・・・確か雑誌も置いてあったはずだし、将棋・・・は一人でするもんじゃないな。囲碁?さっぱりわからん。んー、他に何かあったはず。まあ、見れば思い出すだろ。んじゃ、さっと着替えて、と。良し。
「そうだ・・「『牛乳一本くれないか』』・・・・む?」
「む・・・」
女湯から出てきたリザードマンと目が合った。何故だろうか、妙な闘争心が沸いてくる。
「はい、どうぞ〜」
「はいよ、・・・んぐっ・・んぐっんぐっ・・んっ!ぷはぁ!」
「ああ、すまない、・・んぐっんぐっ・・んぐ・・・ぷはぁ!」
同時に瓶を空にして番台さんに返す。
「・・・・」
「・・・・」
またもや目が合う。向こうもなんだか対抗意識を持ってるみたいだ。俺としては別にどうでも良かったんだが、妙に心が躍り出す。何故だろうか、目の前に居るリザードマンを見てるとこちらも対抗したくなってくる。こんな感情なんてとっくの昔に無くなったと思ったのに。
「・・・・ん」
「・・・?」
なんだかよくわからないが顎を軽く振って『休憩場へ来い』、と誘ってるみたいだ。どうやら何か勝負したいみたいだな。おもしろい、その誘いに乗ってやる。
「そこのお前、私とこれで勝負しろ!」
「・・・こ、これって・・」
休憩場にあった一台のゲーム機。いや、これはゲーム機というより軽いスポーツ機だな。隅に置いてあったエアホッケーの台を軽く叩きながら向かいに立て、と目で合図してくる。
「くくくっ・・、おもしろい。その勝負、乗ってやるよ!」
「そうこなくてはな!」
財布から百円玉を出し、投入口に投げ込む。パックは俺のポケットから出てきたのでこちらが先行だ。
「リザードマンってのは勝負事は好きな種族だが・・。これで俺に挑んだのは間違いだったな」
「はっ!能書きはいいからさっさと掛かってこい!」
「んじゃ、お言葉に甘えて・・・と、ほらよ!!」
<カン!・・・カッ!ガコン!>
「んなっ!?そんなバカな・・。確かに当て返したはずなのに・・」
ふふ・・、悩め悩め。気付いた時には負けてるだろうしな。
「さ、次はそちらの番だぞ」
「・・・クッ!・・今のはただのまぐれだ!調子に乗るなよ!」
<カン!・・カコン!・・カコン!カツン・・カンッ>
「そこだ!」
<カンッ!・・・ガコンッ!!>
「なっ!?・・この私が連続で負けるだと・・」
焦ってる焦ってる。
「貴様・・このエアホッケーを知り尽くしているな!」
「ばれたか」
エアホッケーはガキの頃から好きだったから何度やりこんだ事か。おかげでパックを打ち返す時にわざとゆるく回転を加えれるぐらいまで上達しちまった。
「ほら、次もそちらの番だぞ」
「くぅっ・・・!こ、これならどうだ!」
「甘い!!」
<ガコンッ!!>
これで俺の3連続シュート。力任せだけのシュートでは俺には通用しないぞ。ただ単調にまっすぐポケットを狙うだけのシュートなんて軽く弾けれるからな。
「ふっ・・、どうやらお前を甘く見ていたようだ・・。だが・・・これならどうだ!」
<ガッ!!>
「それが甘すぎるっての!」
<カッ!・・・ガコン!!>
あ〜ぁ、すっごい落ち込んでるし。流石に一方的に4-0はきついか。手加減してもいいんだけど、種族的に駄目だろうし。そんな事してプライドを傷付けたくない。
「ふふふ・・・、いきなり4-0か・・。まさか私がここまで一方的にやられるとはな・・」
「ま、運が無かったと思ってくれ。これでもかなりやりこんでるんでな」
「だが私とて、リザードマンの端くれ・・。せめて一矢・・・!」
<カッ・・・カン・・・カン・・・カン・・カン・・>
ん?いい感じに打ち返してくるな。さっきまでの単調なリズムじゃなくペースを作ってるみたいだ。だけど残念ながら・・・。
「そこ!」
<カンッ・・ガコン!!>
「クッ・・・私がここまで追い込まれるとは・・」
さーて、この調子で一気に勝負に出ますかね。単調なリズムからほどよい流れになってきた所で一気にトドメを刺す。あんまり付き合ってるとこちらのリズムが読まれそうだし。
「さて、・・・もう9-0だけど・・。どうする?」
「ウウッ・・・」
あ、やばい。涙目になってるよ。泣かす気なんて無かったのに。
「こ・・今度こそ・・入れてやる!」
「えー・・と、とりあえず涙を・・『今だ!!』えっ?」
<ガコンッ!!>
「ちょ、お前卑怯すぎる!?」
「か・・勝てば・・・良いのだ!・・・ううっ」
それ、泣きながら言う事じゃないだろ。・・・しょうがないなあ。それじゃ一気に終わらせてやるよ。
「さて、・・・これが実質最後の1ゲームだ。んー、そうだな。このゲームで俺に勝てたら飯奢ってやるよ。シュート出来たら・・の話だけどな」
「ば・・馬鹿にするなっ!私は絶対にシュートを決めて・・」
「決めて?」
「うぐ・・・」
そんじゃ最後の勝負と行きますか。やっとこっちに回ってきた先行だ。手加減せずに一気に勝たせてもらう。そらよ!
<カンッ・・・カツン・・カツン・・カンッ・・・>
「くっ…!」
流石にこれ以上は駄目だな。んじゃま、トドメと行きますか・・・、ぉ?
「くぅっ!・・・はっ・・」
おお、良く見れば乳が上下にぷるぷるして・・・・。はっ!?
「・・・・あ!?」
<ガコンッ!!>
か、空振り・・・。よりにもよって揺れる乳に見惚れて空振りとは。それに勝気な性格のわりには結構可愛らしい顔してるし・・。
「・・・えっ・・?か、勝てた・・のか?何故・・」
「・・・・くっ・・。まさかこんな落とし穴があったなんてな・・。負けは負けだ。約束通り飯を奢るよ」
何故か勝てて呆然としてるようだが、どちらかというとそれは俺の心境だよ。乳揺れに見惚れて空振りなんて。まぁ、・・・負けたけどなかなか楽しかったし、これはこれで!
「な・・なぁ・・。何故私は勝てたのだ・・・?」
うわ、そこで聞いてくるんか。一番聞かれたくない所なのに。
「頼む!教えてくれ!本当は手加減してたんじゃないのか!?もしそれなら!」
「・・・・乳・・」
「は?・・・乳?」
「お前の揺れる乳に一瞬だけ見惚れてしまっただけだ・・。それに可愛い顔してるしな。って・・言わせんなよ!ちくしょうっ!」
「・・・そ、そうなのか・・、って私が可愛いなど・・」
ああ、くそっ。もじもじしてる姿が妙に可愛すぎだろ。・・さて、約束は約束だ。飯でも食いに行くとすっか。エアホッケーで白熱してたらいつの間にかちょうどいい時間になってたし。
「じゃ、飯食いに行こうぜ」
「・・・い、いいのか?私が言うのもなんだが・・あのような勝ち方で・・」
あれは俺が余所見してたのが悪かっただけの事。もし余所見しなかったとしても、もしかしたら負けてたかもしれないしな。
「勝負は勝負だ。あれは俺の負け、んで、あんたの勝ちだ。それじゃ、腹も減ってきたし何か食おうぜ」
「・・わかった。それなら厚意に甘えさせてもらおうか」
二人のんびり金玉を出た途端に突然肩を組まれた。一体何事かと思ったが、こっそり俺の耳元で『再戦』を求めてきた。やっぱそうこなくっちゃな。俺もちょっとばかし不完全燃焼だったし。でも、・・・もしかしたらまた乳の誘惑に負けるかもな。でも、それはそれで役得か。
「んじゃ、近い内にまた勝負しようぜ」
「ああ・・次こそは私が勝ってみせる」
でも、今はそんな事より飯だ。腹が減ってどうしようもない。久しぶりにエアホッケーで熱くなったから空腹だ。隣では俺と同じように腹を鳴らしてるし。今日は思いっきり食ってやるか。
『いつでも再戦受けてやるよ!!』
14/09/19 00:04更新 / ぷいぷい
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